123456789101112131415161718192021222324252627282930
個別記事の管理2016-11-06 (Sun)
この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力
* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
Comment : (-) * Trackback : (-) |
個別記事の管理2016-10-31 (Mon)




連載のお話でなくてすみません。ちょっと今、新しい仕事で頭が飽和状態になってて妄想ストップしております(ーー;)

かわりに、季節ネタをどうぞ~~(((^^;)







※※※※※※※※※※※※※※







「ちょうど今年は日曜がハロウィンだし。我が家でもパーティしましょうか」

紀子がそんなことを言い出したのは三日前だ。
琴美が参加した英会話教室のハロウィンパーティで、琴子が少しばかり嫌な想いをした。
その意趣返しなのか仕切り直しなのか。

そもそもその英会話教室のパーティとやらに参加するのも直樹にとっては寝耳に水で、聞いたときには思わず眉間に皺を寄せた。琴美がそれは楽しみにしてるようなので、強く反対はしなかったが。

「いったい、いつ琴美は英会話教室なるものに通いだしたんだ。聞いてないぞ」

自分も裕樹も塾など通ったことがない。
琴美にもお受験させるつもりもないし、琴子も「もうお受験目的の幼児教室や習い事をしている子が多いのよ! びっくだよねー」とかなり他人事な様子で話していた。何にしろ紀子も全くセレブな周りの奥さま連中のご意見を無視して、直樹を一番家から近いと言う理由で斗南の幼稚園に入れていた。(一応受験はあったらしいが)
とにかく子供は自由に! それが入江家の教育方針である。
英語が習いたければ自分が教えるし、クリスの娘のアンジーと仲が良いせいで、琴美は4歳にして簡単な会話は話せるのだ。しかもクイーンズイングリッシュだ。少なくとも琴子よりはネイティブな発音で単語や歌を聴かせてくれる。
なのに何故英会話教室?
そこがまず大きな疑問だった。


「お試しみたいなものなのよ。幼稚園のお友だちの咲ちゃんママから誘われたの。ハロウィンやクリスマスみたいなイベントの時には生徒さん以外も参加できるんですって。一種の生徒さん集めよね。参加したからって入塾する必要はないみたいだし、楽しそうだから行ってみようかなーって」

「ふーん」

この頃はまだ家庭でハロウィンパーティなど、それほど一般的ではない。テーマパークでイベントが行われるようになり、認知度は高まってきたが、せいぜい教会や英会話教室で子供たちがちょっとした仮装をしてお菓子を食べるくらいだ。

「へへ、何の仮装しようかなー。みーちゃんは何になる?」

「うーん、お姫さま~~」

「あら、だったら私がお姫さまのドレス作ってあげるわねー」

「わーお義母さん、ありがとうございます!! じゃあママは何にしようかなー」

ワクワクと楽しげな琴子に「なんだよ。付き添いの親まで仮装をするのかよ」と、直樹は呆れたような顔を読んでいた新聞の影から覗かせる。

「うん、最初は子供だけ、ってきいてたんだけど昨日咲ちゃんママから親も仮装するのよ、って連絡あってねー。もう、恥ずかしいわよねーこの年で」

と、いいつつ楽しそうに娘と何にしようか話している。

「いくらそんなに腹が目立ってないとはいえ、妊婦なんだし着られるものは限られているだろう?」

琴子は現在第2子を妊娠中だった。琴美の時ほど悪阻もひどくなく落ち着いた妊娠生活で、漸く安定期に入ったところだった。

「まだ全然普通の服着れるよー。ナース服だってまだまだ大丈夫だし」

子供の為のパーティだし妊婦だし変に露出の高い格好をすることもないだろう、と特に直樹は何も止めだてすることもなかった。外人講師が金髪イケメンの若い男だということは少々引っ掛かりはしたものの。

「お前、ハロウィンってのはそもそもケルト人の収穫祭で、いわゆる『お盆』みたいなもんだぞーー」

と、一応蘊蓄を垂れてみるが、無論女三世代はそんなことは聴いていない。

「やっぱり定番な魔女かなー」

魔女なら全身すっぽり黒ずくめで安心だろう、と思いつつも一応検閲してみたら、ノースリーブにミニスカートの魔女っこスタイルで、妊婦がそんな冷えそうな格好するな、とすっぱり却下したのは云うまでもない。
結局琴美の白雪姫と継母の魔女の設定で、真っ黒のロングドレスに長いつけ鼻をつけてパーティに向かったのが三日前。

てっきりその夜は楽しかったパーティの報告を聞けるかと思いきや、妙にテンションが低くて、どうにも琴子らしからぬ様子だった。

「うん、ちょっと手違いがあったけど、楽しかったよね」

それ以上は語らない琴子に代わり、琴美に訊ねると、年少にしてはかなりしっかりとした説明をしてくれた。

「あのねー。ハロウィンにいったらね、ママたちの中で仮装してたのうちのママだけだったの」

「………親子揃って仮装じゃなかったのか?」

「咲ちゃんママがそう言ってた、ってママいってたのに。咲ちゃんママも普通のお洋服だったの。大人でそんな格好してたのママ一人でーーちょっと恥ずかしそうだったの。みーちゃんもみんなから『ママ変わってるね』っていわれちゃうし」

「ふーん…………」

「……他のママたちが、ママのことクスクス笑っててね。なんだかみーちゃんまでイヤな気分になってきて、あまり楽しくなくなっちゃったの。
先生だけはママの仮装に喜んで受けてて、クリスマス会もぜひって云われたけど、もう行かなくっていいやー」

「そっか。クリスマス会はおうちでやるから大丈夫だよ」

「うん。おうちのパーティの方が楽しいよ」

直樹は琴美の頭を撫でると、疲れたから先に休むと寝室に行っていた琴子の元に向かう。

部屋では琴子がドレッサーの前でヘアブラシを持ったまま、ぼんやりと座っていた。髪をときながら考え込んでフリーズしてしまったようだ。

「……で、結局どんな行き違いがあったわけ?」

後ろから声をかけると、琴子は鏡の中に直樹の姿を認めて、驚いて後ろを振り返る。

「うーん。ちょっと色々ね……なんか、ママ友たちとの付き合いって難しいなぁって思っちゃって。ただの連絡ミスだったのかなーって思ってたけど、あたし、どうもイジワルされてたみたいで」

へへっと恥ずかしそうに笑う。

「ほんとはね。咲ちゃんママが他のママたちからイジワルされてたらしいの。それをあたしが全然気づかなくって、一緒に話したり幼稚園の催しに誘ったりしてたから、今度はどうもあたしの方が目をつけられてたみたい」

たまたま入園式の日に琴美の席の隣が咲ちゃんで、幼稚園に入ってすぐに仲良くなり、親同士もよく話をした。とはいっても琴子は基本仕事にいっていて、送迎も紀子が行くことも多く、他の母親たちのように送迎の際にいつまでも園庭でお喋りに興じたりとか、ついでにランチやお茶をすることなど滅多になかった。忙しい琴子にはそんな付き合いをしている暇はなかったのだ。
だからあまりママ友同士の人間関係や内部事情に詳しくなかった。

咲ちゃんママは地味で目立たないタイプだったが、咲ちゃんが幼児教室の成績がよくて、それまでトップだった陽菜ちゃんを抜かしたことから、クラスのママ友派閥の頂点にいるらしい陽菜ちゃんママの妬みからいじめをうけていたらしい。(ママ友派閥なるものが存在することすら知らなかった琴子である)

「……そんな3歳児の成績の一番二番で親が嫉妬したり苛めたりとか、その発想がよくわからないのだが」

「うん。あたしも理解できない……」

琴子は肩を竦めてため息をつく。

「実は花村さんから電話をもらってたの。陽菜ちゃんママとその一派が通ってる英語教室には行かない方がいいわよって。いっくんとはクラス違うのに、何故か花村さんの方がうちのクラスの内部事情に詳しいみたいで……」

花村一斗は琴美と同じ病院で生まれた幼馴染みである。幼稚園も一緒だがクラスは別れた。

「どうやら入園前の幼児教室時代から、咲ちゃんママと陽菜ちゃんママの間に確執があったのは有名らしくて。
で、陽菜ちゃんは本当は斗南より偏差値の高い幼稚園を受験してたから園が別れればもう大丈夫って思ってたら、陽菜ちゃん本命落ちて斗南に入ったらしいのね。そしたら咲ちゃんとクラスまで一緒になって。そしてまたさりげなく嫌がらせをされてたらしいの。
そういえば、あたしも陽菜ちゃんママから『あの方昔キャバクラに勤めてて成金のご主人に見そめられたそうよ』とかとか『一緒にいて楽しいかしら? 幼児教室の時に少し話したけど話題が噛み合わなくって。やっぱり育った環境が違いますでしょ』とか妙に刺のあることいってくるなーって思ってたんだよね………」

こえーよな、女って。

聞いてて背筋にぞわりとくるものがあるが、特権階級意識の強い勘違い女は確かに高校時代のA組にもいたな、と思う。

「花村さんいわく、斗南付属幼稚園はそこそこの経済力のある家庭でなければ入れない名門私立幼稚園だから、咲ちゃんママが元お水で、旦那さんが成金の居酒屋チェーン店の経営者ってのも気に入らないんだって。
斗南の格が下がるとかなんとか。
……ってか、咲ちゃんママが元お水とか、なんでそんな情報を他のママたちが知ってるのかそっちのが怖いんだけど。
きっと、あたしだってしがない料理人の娘だってばれてるわよねー。別に恥じることもないけどさー。でも、あたしも絶対話題は合わないわー」

「それをいったらうちだって成金だよな。パンダイなんて親父一代ででかくしたようなもんだし」


そして、今回のことは再三咲ちゃんママとは付き合わない方がいい、という忠告を無視した琴子にイジワルの矛先が向いたようなのだ。
しかもその咲ちゃんママを使って嘘の情報を流し、琴子一人に仮装させて笑い者にするあざとさ。
思わず直樹も顔をしかめる。

「咲ちゃんママから『ごめんなさい、言うこときかないと咲までいじめられちゃうから……』って謝られてーー」

でもね、あたし、咲ちゃんママを責めるつもりはないのよ。ただ、なんで真っ先に相談してくれなかったのかしら、ってそれがちょっとショックで。
別に前もって言ってくれればもうちょっと頑張って、一人で乗りきれる気合いのはいった仮装をしていったのになーって!!

なんか悔しいなーって!

少し凹み気味だったのが、段々奮闘モードに変わっていったらしい。
だがそれでこそ琴子だ。

「子供たちは? やっぱり派閥があっていじめみたいのあるのか?」

「ううん。それはないみたいだから、ちょっと救いかな。
幼稚園の先生の話だと、みーちゃん、みんなの人気者らしいの。陽菜ちゃんママが娘に、咲ちゃんと遊んじゃだめ、琴美ちゃんと遊んじゃだめっていっても、子供たちは琴美のことが大好きでみんなが一緒に遊びたがるんですって。それは陽菜ちゃんも同じで。そして、琴美はまず咲ちゃんを誘うから、咲ちゃんが省かれることもないみたい。
ま、陽菜ちゃんママはそれも気に入らないみたいだけど。自分の娘が一番じゃないとイヤみたいね」

「………親の方がよっぽどか子供だな」

「そうだねー。でも、色んなひとがいるから。看護師仲間でもやっぱきっつい人もいるし、変な価値観の患者さんもいるし。だからあたし、きっと耐性は出来てるよ」

ふふっと笑って大丈夫と力こぶを見せる琴子。

「だいたいあたし自分が苛められてると気づかないくらい鈍感だし」

「………知ってる」

そういえば、看護師仲間に嵌められて男湯に飛び込んだこともあったが、自分がそんな嫌がらせを受けたことなどすっかり忘れているだろう。
直樹の方はきっちり覚えていて、しかも密かに真相をつきとめて琴子を嵌めた看護師三人組には病院に戻ってからきっちり釘を刺しておいたのだが、琴子はそんなことは知らないだろう。

「噂にはママ友イジメとかきくけどな。まさかこんな身近にあるとはな。とにかく一人じゃ対処できない時は云えよ。おれも琴美の父親だ。それに妊娠中に変なストレスがかかっても困る」

「うん。ありがとう。嬉しいよ、入江くん」

思わぬ優しさに少し涙ぐむ琴子。
そのあと最初に準備して却下した露出多目の魔女っ子コスチュームの琴子を可愛がったのはまた別の話だ。(一応安定期になったばかりの自粛バージョンで無体はできないので、本当にちょっと可愛がっただけである………)





そして、日曜日。
琴子の話を聞いて憤慨した紀子が、相当の気合いを入れてハロウィンパーティの段取りをした。
もちろん陽菜ちゃんママをはじめとするセレブグループを含めた幼稚園のクラス全員に、いっくんやアンジー、理美やじんこなどの友人たちもを招いての大掛かりなものとなった。
自宅のリビングでは手狭だからと結局レストランを貸しきっての盛大なパーティだ。

会費も手土産もなし。
ただひとつ決められているのは『必ず仮装をしてくること』そして正装はお断りーーのみだった。

琴子をあからさまに馬鹿にした陽菜ちゃんママ一派が来るかどうか心配だったが、やはり何度か姿をちらりと見ただけで、とにかく超絶イケメンと噂の琴美の父親会いたさに参加することにしたらしい。



そしてーー

その会場のレストラン周辺は、奇妙なコスプイヤーたちで溢れかえっていた。


子供たちはお姫様に王子さま、天使に猫耳ウサギ耳モコモコな着ぐるみなどが定番で、みんな可愛らしい。

幼稚園のママ友たちはさらにバリエーションが賑やかだ。〇ッキーやミ〇ーの着ぐるみに、アニメのキャラたち。
アリスにウォー〇ーにハリー〇ッター。
咲ちゃんママも恥ずかしそうにメイドの格好をしてきてくれた。
そして、一番懲りまくっているのが入江家御一同様だった。
全員見事に特殊メイクを施したゾンビに妖怪などのホラー系だ。

紀子はベラだし。
重樹は子泣きじじい。
裕樹は顔なしのお面をつけている。
好美は猫娘。
重雄はどくろスーツを身に付けていた。

さらには琴子の友人たちもホラー系で統一。金之助はフランケンシュタイン。クリスはメデューサ。金之助が食材で作ったと言う蛇を一杯につけたかつらが妙にリアルだ。
理美とじんこは魔女コンビだ。メタルバンドが身に付けているような妖艶な魔女たちだった。


そしてーーこのパーティの主賓夫妻はーー

「それコスプレ?」
と、思わず唯一職場から参加出来た(みんなシフトの都合で来れず)幹から突っ込まれていた。
(ちなみに幹はリアルなゾンビメイク。頬の皮膚がぱっくり割れている)

「別に職場の身に着けてる訳じゃないからコスプレでしょー?」

そう笑って答えた琴子が来ているのはナース服。しかも血まみれ。そして大きなオモチャの注射器を持っている。
ついでに直樹が来ているのも白衣である。やはり血まみれだが。
ドクター&ナースなカップルである。何処がコスプレなんだか、と誰もが突っ込んできたが、直樹が唯一受け入れた仮装がこれだったのだ。

「………ある意味リアルに一番怖いかも」




幼稚園児たちがいるのであまり真に迫ったホラーコスプレは泣き出さないかと心配したが、会場全体は明るいオレンジカラーで飾り付けられているし、何にしろドラキュラも魔女もゾンビもみんな、けらけら楽しそうに笑っているせいか、特に泣き出す子供たちはいなかった。
それに天使の羽とわっかを着けたエンジェル琴美が友達たちにいちいち身内や母の友人を紹介してまわっていたせいもあるだろう。少しゾンビたちにびびっていた子供たちもすぐに打ち解けていた。

浮いている、といえば琴子を嵌めたという陽菜ちゃんママの一派だったろう。
直樹は特に顔を知っているわけではなかったが、会場に入ってきてすぐにわかった。
コスプレというよりは申し訳程度の猫耳をつけて、しかしばっちりブランドのパーティドレスを身に着けている。
それがかえってこの会場では異様だった。


「ふーん、さすがパンダイの御曹司の力よね」

「御曹司っていっても、所詮ただの勤務医でしょ? お給料はたいしたことないはずよ」

「あら、このサンドイッチとっても凝ってるわね」

「こっちのスイーツも……」

「お気に召しましたか? これ、昨日から義母と一緒に作ったんですよ」

琴子がにっこり微笑みながらそのグループに近づいてきた。

「え? ここのお店の料理じゃ……」

「持ち込みオッケーなんです。此処は会場借りただけで。子供だけだったらうちのリビングでもいいかなーと思ったんですけど、ママたちも呼びたかったので、此処にしたんですよ」

「そ、そうなの?」

用意されていた料理やお菓子は文句のないくらい見事なもので、陽菜ちゃんママの一派は会場の片隅で妙な居心地の悪さを感じながらも、何処かにケチのつけ処はないものかときょろきょろと目を光らせていたところだった。

「楽しんでいますか?」

そこににっこりと営業スマイルでやって来たのは血まみれドクター直樹だった。

「あ、入江くん」

「こ、こんにちは。今日は親子でお招きいただいて……」

途端にぽっと赤くなるグループの面々。

「招いたのは私ではなくて、妻と母なので。先日、英会話教室のパーティに誘っていただいたお礼ですよ。妻も娘も大層楽しかったようですから。幼稚園では保護者として今後もお付き合いすることが多いと思いますのでよろしくお願いします」

そういって殊勝に頭を下げる直樹に、「こ、こちらこそ……」
と恐縮して頭を下げる。

先日のパーティの詳細を聞いていないのだろうかと恐る恐る直樹の顔を見ると、にっこりと笑みを浮かべていたがその瞳は冷たく氷のようだった。
一瞬にしてぞくっと寒気が走る。

「妻はまだお腹は目立ってませんが今妊娠5ヶ月に入ったばかりなんです。妊娠中にストレスは大敵ですから。こんな風に日々楽しく過ごしてくれることを願ってるんです。ええ、無論妻にストレスを与えるものがいれば徹底的に排除します。徹底的にね」

「いやーん、入江くんってばー」

直樹の言葉に素直に嬉しがる琴子に反して、陽菜ちゃんママたちグループは凍りついたようにその場にフリーズしてしまった。

「あ、そうそう。連絡が周知されていなかったなら申し訳ないんですが、今日のパーティは正装不可の筈だったんですが」

「え? いえ、あのこれは別に正装では」

「ええ、こんなの普段幼稚園に保護者会とかでも着ているワンピースですから……」

「そうですか。実はパーティ最後のゲームでパイ投げがあるんです。皆さん仮装なので汚れても大丈夫かと。その為に正装不可にしたんですが、そのお召し物は大丈夫ですか? ブランド品のようにお見受けしましたが」

「え……?」

「汚さないよう気を付けてください。では失礼します」

そうして血まみれの白衣を颯爽と翻して、直樹は去っていった。






さてその後パーティは大変盛り上がり、盛況のうちに終会した。
ハロウィンの本来の目的は何なのだと問いたい気もするが、所詮クリスマスもバレンタインも本来の意味合いなど日本ではどうでもいい話なのだ。
琴子や琴美が笑顔ならそれでいい。

最後の罰ゲームでみんなパイまみれになっていたが、流石にセレブな奥さま方には投げないように気を付けていたようだ。しかし結局、自分のパイまみれの子供たちに綺麗なドレスは汚されて、早々に退散していった。

無論その後彼女たちが琴子や咲ちゃんママに何か仕掛けたという話はきかなくなるのだが、それは当然のことだろう。メデューサの如く一瞬にして石に変えるくらいの威力を持った直樹の眼力ビームを浴びてしまったのだから。
琴子は何故だかわからないまま、きっとハロウィンパーティ楽しかったのね~~♪ 良かった! と単純に喜んでいたのだが。


そしてそのハロウィンの夜、ブラッディドクターが愛するにナースに「どうせならお医者さんごっこでもするか?」とお誘いをかけたらしいというのも、また別の話。(でも妊娠中のため本当に『ごっこ』だけで終わったらしい………もしかして、一番忍耐力を試されてストレスがかかっているのは直樹かもしれないーー)





悪霊すら寄り付かない入江家の幸せな夜にーーHappy Halloween!!






※※※※※※※※※※※※※


ハロウィン、ギリギリセーフです。 この時期が琴子ちゃん妊娠中というのをすっかり忘れていて、慌てて書き直して遅くなったというのはちょっと言い訳かしらーf(^^;お陰で直樹さんが不憫かも………



ハロウィンとは全く無縁なわが家ですが……
カボチャすら買い忘れていましたよf(^^;




Return

* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
* Comment : (10) * Trackback : (-) |

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

あはは * by なおちゃん
入江君に、拍手、さすが‼琴子ちゃんや、琴美ちゃんが、泣かされて、黙ってる、入江君じゃないですよね。でも、女の、嫉妬いやですね。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

こんな筈では~~っと叫びたくなるくらい忙しいですが、とりあえず生きてますf(^^;お気遣いありがとうございます(^_^)

本当にここ数年のハロウィンの盛り上がりにはびっくりですが、恋愛事に奥手な人たちが増えたからバレンタイン抜かしたという話もあるようで。
うちも誰も(娘すら)興味ないようですが、イリコトワールドでは定番なイベントのようなので(←?)はずせません笑

東京の私立のそこそこの幼稚園ならママ友同氏のドロドロあったりするのかしらなどと(ドラマの受け売り)妄想してちょっと書いてみました。
そうそう、琴子はターゲットになりやすいでしょうねー。
でもなんだかんだ上手くまとめて仲良くなっちゃうのかな、とも思います。確かに~~自分は苛めてもいいけど他人が苛めるのは許せません。だって琴子は自分のもんですから(^w^)

妊娠中なのでえろが書けなかったのがちょっと失敗でした。ストレスたまってちょっといちゃこらあまーい二人の話を書きたい気分なのですf(^^;

Re.でん様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

ハロウィンで受けた意地悪はハロウィンでお返しなのです。とはいっても特にやり返すつもりもなく楽しいパーティを見せつけらればよかったのですが、入江くんはそーゆーわけにはいきませんよねー笑

素敵なお話と云っていただいて嬉しいです(^_^)

Re.たまち様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ふふ、その通りでございます。おそらく琴子は楽しめなかったパーティをちゃんと楽しみたいだけで特に仕返しとか考えてないと思うのですが、そこは直樹さんが許すはずはないのですよね。

いやー実際そんなことがあるのですねー。ドラマのようだわ~~
うちは田舎ののほほんとした保育園だったので、セレブママはいなかったのですが………うーん、でも役員決めの時なんかは結構ドロドロしてたかもf(^^まあ女の世界はいつの世代でも何かしらあるものですよね(ーー;)

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

本当に女って面倒ですよね。
でも家族のためには氷殺ビームを惜しげもなく発射する入江くんがいるので、常に平和が保たれている入江家なのです♪

Re.ちぴぞう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

ほんと、いつの時代、どの世代でもありますよねー。特に女性ばかりの集団にいるとなんやかんやあります……(ーー;)
ふふ、ちびぞうさんだけですよー。そこに気がついたの!そうヘビウリでしたー笑(みんなどんなビジュアル想像したんだろう?)
しかしメデューサの如く相手を石化できるのは、直樹さんの眼力ビームですよねー。メデューサより怖いの、間違いないです(^w^)

ま、とりあえず琴子や琴美がパーティを楽しんだならそれでよいのです(^_^)v

管理人のみ閲覧できます * by -

Re.ちょこましゅまろ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ほんと、最近のハロウィン凄いですよねー。
ええっ娘さん五回も! 楽しすぎ。うちの娘の時代はなかったなー。未だに盛り上がってないようですが……f(^^;
娘の友達が英会話教室に行ってまして、そこだけはちゃんと、ハロウィンパーティと仮装とかやっていたようで、それを思い出して出来た話です。
10年前もそんなにハロウィンは盛り上がってなかったと思いましたが、入江家ではきっとなんやかんややってたのではと思われます。なんといっても紀子ママがいますもんねー。
入江くんのコスプレといえばドラキュラや狼男が定番な気もしますが、絶対拒否ル気がして、白衣にしましたよ。仮装になってないわーと密かに突っ込みますf(^^;
いやー私もついうっかりこの時期が妊娠中というの忘れていて、お医者さんごっこ妄想しかかっちゃいましたよーf(^^;


個別記事の管理2016-09-28 (Wed)

琴子ちゃん Happy Birthday ♪

もう44歳なのかぁ~~
いやいや、永遠の27歳……ですね(^^)d




では、水族館デート。続きからどうぞ♪


※※※※※※※※※※※※※※※







「わーキレー。見て見て、スゴい魚の群れ……わー海の中散歩してるみたいだねぇ。あ、あっちにマンボウが……あーナポレオンフィッシュっ……!! いやん、エイと目があっちゃった」

「ばあか。あれは目じゃない。鼻だ」

「ええっとっても円らな可愛い瞳だとっ!」

頭上に拡がる蒼い海の風景。
揺らめく水の耀き。極彩色の魚たちの群れが音もなく通りすぎる。
回遊トンネルを潜りながら、琴子たち親子三人は海中散歩を楽しんでいた。

「マーマー。あっちー。クラゲさん」

「ええっ? クラゲ? 無気味じゃない?」

「おまえたち。声が大きいぞ」

「はーい。へへ。怒られちゃった」

母と娘は舌を出しててへっと笑いあう。

久しぶりのお出掛けのせいか、幼い娘よりも母の方がテンションが幾分高いようだ。

「今日は土曜日だから随分混んでる。あまり騒ぐなよ」

「はあい」

ここは都内のど真ん中にある水族館だ。
公園内にあり、都民の憩いの場所でもある。

琴子の願いが叶ったのか、その日は恐ろしいくらいに何もなく、直樹は予定通り午前中には帰ってきた。
しかも夜間急患も急変も全くなく、当直室ではしっかり仮眠を取ることができたというのだから、琴子の願いが必死すぎて神様も奇跡を起こさざるを得なかったのではという気さえする。
お陰で帰宅して着替えると「すぐに出掛けるぞ」と、一休みすることもなくこの水族館に向かうことができた。


「マーマー、ちーでるぅ」

「わ、大変! 」

琴美は既にトイレトレーニングは終わっている。いや、トレーニングということのほどもなく、言葉が出だしたと同時にきちんとお知らせしてくれるようになったので、ほぼ自然にあっけなく、といった感じで、周りのママ友たちに随分羨ましがられた。
とはいえ、やはり外出は心配なのでオムツは着けている。殆ど失敗はないのだが。

「いやーおまえは保育園上がってもオムツ外れなくって、しょっちゅー濡れたパンツ持って帰ってきたのに、みーちゃんは早いなー」
そう、父重雄に感心されたが、直樹は一歳半前に外れたというので、間違いなく父親似でよかったなーと思う瞬間である。





「あのぉ……お一人ですか? 一緒に回りません? まもなくイルカのショーが始まりますよ?」

琴子と琴美がトイレに行った途端に、次から次へと女たちから声をかけられる。
その度に顔をしかめて一言。
「連れがいますので」

周りは家族連れにカップルだらけだ。その中でちらほらいる女同士のグループが、直樹一人になった途端に、狙ったように近付いてくる。
しかし、どうして男一人でこのような処に来てるなどと思えるのか。

「……入江くんっ」

娘の手を引いて戻ってきた琴子の姿を見ると、あからさまに顔をしかめた女が声を潜めて隣の友人とひそひそとこれ見よがしに耳打ちする。
(なに、マジあの女、奥さん?)
( 子供いるし、夫婦じゃないの?)
(えー、子供全然似てないし。『くん』づけだし。子持ちの女にひっかかってるだけじゃないの? ほら、妻がいるじゃなくて連れがいるっていってたし)

「…………」

いつものことだが、ほんの数分離れただけでのこの状況に、琴子は軽くため息をつく。

「ぱっぱーーっ」

すると琴美が館内中を響き渡るような大きな声で叫び、直樹のところに走っていった。

「琴美!」

がしっと足にしがみついてきた琴美を軽々と抱き上げて、
「ダメだろ? そんなに大きな声だしたら」
こつんと娘の額に額をつけて軽く睨む。

「おこっちゃだめよー」

「みーちゃん、ごめんなさいでしょ?」

「ごめんちゃー」

ぺろっと舌を出した様子が天使のように可愛い。

声をかけてきた女たちは鼻白んだように背を向けて足早に過ぎ去っていく。
宝石のような魚たちが行き交う青く揺らめく大きな水槽を前で、若く端麗な容姿の父親と愛らしい幼子の様子はさながら一枚の絵のようだ。周囲の人たちも思わず目を惹き付けられ、ほっこり微笑みながら通りすぎていく。


「………あたし、やっぱり全然入江くんに相応しい女になってないのかなー」

琴美を間に挟んで手をつなぎ歩きながら、琴子がしゅんと目を伏せる。

「相応しいか相応しくないかなんて、下らない価値基準だよな。ひどく主観的で曖昧」

「…………でも、ここをすれ違うたくさんの人たちがみんなそう思うなら、きっとあたしは……」

「ばーか。ここですれ違っただけのまるっきりおれたちの人生に無関係な赤の他人にどう思われようが、そんなのどーでもいいだろうが。いちいち気にすんな」

「……そう? そうだね………」

「おれもおれたちに近しい人たちもみんなおまえが一番おれに相応しい女だと認めてるんだし。なんの問題もねぇだろ」

「入江くん、認めてくれてる?」

「あたりまえ。ってか、おまえ以外におれに相応しい女なんてこの世に存在しないし」

「ほんと……?」

「嘘ついてどーするんだよ。だいたいおれはおまえに相応しい男か?」

「 え? え? えーーっ。それはもう、あたしには勿体ないくらいの旦那様でっ」

「そりゃどうも」

くすっと笑う直樹を見上げる。
直樹だって30歳には見えないが、年齢とともに確実に増していく大人の色香のせいか、素敵度数は年々右肩上がりのような気がする。
結婚して今年で9年目だが、少しも好きな気持ちが減ることはなく、琴子の想いも右肩上がりだ。
未だに夢かと思うことがある。
ある朝目覚めてたら直樹も琴美も夢だったーーなんてことになってたらどうしようと時折不安になる。

「わークラゲ~~~」

「あ………すご……綺麗だね」

この水族館の目玉のひとつであるクラゲの展示は、仄昏い室内の中に、工夫を凝らしたいくつもの水槽が深い青を抱いている。そしてその中を浮遊する白く透明な幽玄的な不思議ないきものたち。

「なんか、無心でぼーっと見てるだけで癒される」

時間や空間の概念がないようなファンタジーな世界がそこにある。ゆらゆらと漂うクラゲたちの様子を見ていると時を忘れそうだ。

「これはミズクラゲ……あっちはタコクラゲだな」

「ふふ。なんか、海の底にいるみたい。ロマンティック……」

「あっちのカツオノエポシなんか、刺されたらアウトだけどな」

「うん、もー。さすがにあれはちょっと無気味だけど、こっちのミズクラゲは可愛いよね~~」

「飼うとかやめてくれよ」

「云わないわよ~~でも入江くんがいないときの癒しにいいかも」

「そんなにストレスな日々かよ」

母娘揃ってぴたーっとアクリルの水槽に顔を張り付かせて、ゆらゆらと漂うクラゲの動きを一心に見つめている。

「………だって、最近擦れ違い多いし」

琴子の育休が終わって1年。 すでに夜勤もこなす通常勤務に慣れてはきている。琴美の面倒を見てくれる紀子あってこそ今のライフスタイルが保てるのだと思うとありがたいが、琴子よりさらに激務の直樹とは、1週間の間一体何度顔を合わせ、食事を一緒にできるだろうかというくらい共有する時間が少なくなってしまった。

こんな風に親子3人で過ごす時間は、直樹が何かプレゼントをくれるよりはずっとずっと貴重なのだ。

「仕事は復帰後内科病棟に移動になっちゃうし……」

ある程度の期間でナースは移動するのが斗南の規則なので仕方ない。というよりも今まで夫婦揃って同じ科での勤務が許されていたというのが不思議なのだが。

「いろんな科を回った方が勉強になるだろ」

「うん。それはそうだし、仕事も1年も経てばそれなりにこなせるようになったけど」

内科と外科の連携が深いので全く院内で顔を合わせないわけではないが、同じ第2外科にいることと思えばやはり格段に職場で会う機会は減っている。
それに気になる噂も耳にした。
数年後には斗南病院に小児科専門センターが新設され、小児外科や小児内科など専門的に細分化した組織編成になるらしいというものだった。そして直樹も創設スタッフに任命されているらしい、という噂もあった。
さらには斗南だけでなく各大学病院にもオファーをかけて小児科と外科から選りすぐりのスタッフが集められるらしいとも。

(きっと奥さんは選ばれないわよー)
(そうそう、入江先生、そういうことには私情挟まないし)

「直樹の手伝いをしたい!」という邪心だらけの最初の願いは直樹が勤務医である以上なかなか儘ならぬものだと理解もしている。
それよりも琴子自身にナースとしての仕事に遣り甲斐を感じているし、子育て真っ只中で他のスタッフに迷惑をかけることも多々ある身で、人事や異動に不満を述べるつもりはないのだ。ないのだけれどーー

そんな風に云われてしまうこととか。
元々あったAとFの格差よりもさらに大きな格差が二人の間に歴然と存在していることとか。
きっとこれからどんどんまた忙しくなってくんだろーなーとか。
今ですらこんなにスレ違いな日々なのにそれがさらに加速化してくんだろうなーとか。
会わない時間が多くなるときっとどんどん忘れられてしまうのかなーとか。

普段は忙しさにかまけて忘れていることも多いけれど、突然ふっと不安になることもある。
琴美を寝かしつけたあと、一人で直樹のいない夜を過ごす時、悶々と考えてしまうーー。

でも、ぼんやりとこのクラゲを見ているとなんだかそんなこと考えるのも馬鹿馬鹿しいくらいな気持ちになってきたりして…………

「…………………ん?」

突然ーー。
あまりにも唐突に、ふわっと直樹の唇が、琴子の唇に触れた。一瞬のキス。

思わず焦って身体を離す。

「え~~~ なんで?」

思わずキョロキョロと辺りを見回す。

「あれ? みんないない……」

混雑していた筈の館内にはいつの間にか人が疎らになっていた。

「さっき、イルカショーのアナウンスが流れてたからな」

「あ、じゃあ、あたしたちも………」

と、琴子の意識がイルカショーに向いた一瞬に、再び直樹が琴子の頤をとらえて唇を塞ぐ。
今度は少し長く。

「も、もう……っ 人が居るよ」

かなり少なくなったがゼロではない。ちらほらといる人が気づいたのか気付いていないのかわからないが、いくつかの視線を感じなくもない。
顔を真っ赤にした琴子に、にやっと意地悪い笑みを浮かべた直樹が、
「こーゆーロマンチックな場所がお好みなんだろ?」と耳元で囁くものだから、さらに真っ赤に沸騰する。

「誕生日サービス。たまにはね」



嬉しい。
嬉しいけれど。
でも、ドラマとかの水族館キスって絶対周りに誰もいないよね………

思わずさっきからキョロキョロと挙動不審に周囲を見渡し、火照る顔をはたはたと手団扇で扇ぎながら、水槽の陰に身を潜める。

「クラゲで癒されなきゃならないほどストレス溜まってるのかよ」

「へ?」

「クラゲに向かってブツブツいうより、目の前にいるヤツにきちんと言いたいことは云ってくれ」

「え……でも、入江くん忙しいのに」

「忙しいのはおまえも変わんねぇだろうが。おまえの方が仕事と子育てと遥かに大変だと思うし。愚痴のひとつやふたつくらい聞いてやるから」

「ほ、ほんと? あー、でも入江くんに云っても甘えるなって怒られそうで」

「昔のおまえと全然違うだろ? そんだけ頑張ってるおまえに甘えてるなんていわねぇよ。たまには甘えろっ! と、いいたくなる」

「………甘えていいの?」

上目遣いに琴子が見上げる。

「…………………………たまにはな」

「嬉しいっ」

がしっと直樹の腕にしがみつく。

「ぱーぱー♪ みーちゃんもー」

直樹の方を見上げておねだりする琴美をふわっと抱えると、ほっぺにキスをした。

「じゃあ、イルカみるか?」

「みーるー!」



その後イルカショーやらアシカショーやらを楽しんだ琴子たちは、公園内で昼食をとり、そして、その隣の公園で琴美と全力で遊んでから家路に着いた時には、もう幼い娘はぐっすりだった。



「……じゃあ、今のうちに行ってらっしゃい。今夜はお泊まりしてきていいですからね。みーちゃんのことは任せてね」

「はい、すみません、お義母さん。よろしくお願いします」

紀子に見送られて、今度は夫婦だけで既に夕闇に包まれ始めた表にでる。
これからが琴子にとってはメインイベントだ。

「やっと3年前のリベンジが出来るわね。頑張って!」

「はいっ」




「で、今回はオウム頭にしなくていいのかよ」

自分で両サイドを軽く編み込んで、フィッシュボーンにしてシンプルな水色水玉のリボンをつけているだけだ。しかし、琴子の綺麗な項が露になって、普段仕事中にはきっちりひっつめている後れ毛も、ふんわりと肩に落ちて色っぽい。

「もう、美容院行ってる時間ないし。それに、美容師さんのお任せなんてもう絶対信じないし」

「いいんじゃない? 十分可愛いよ」

「ほ、ほんと?」

もーやだーっ入江くんってばー!!
と、思わず背中を叩いてしまう。

誕生日のリップサービスにしては今日はもうかなり貰ってしまっている。もう1年分くらいもらったかも。
だから、まあ、いいや。耳にこびりつけておこう。

琴子は頬を染めたまま、にっこりと直樹の腕に自分の腕を絡ませた。

着替えた二人はともにフォーマルだ。
直樹は普段着ているスーツだが、琴子はちょっとしたパーティに着ていくようなノースリーブのワンピース。
薄い水色のワンピースドレスは先程の水族館の海の色にも似ている。白いジャケットを羽織り、その首もとにはワンピースによく合った深い藍色のラピスラズリのペンダント。そして左手の薬指にはサファイヤのリング。
ともに直樹からのバースディプレゼントだった。

「こうして二人でホテルに向かってるんだもの、今年は絶対ディナーに間に合うよね?」

ありがたいことに今まで直樹の携帯に病院からの呼び出しは全くなかった。
なかなか滅多にないことだ。それだけでも奇跡の領域だ。
それとも、今直樹を呼び出せば、琴子が一週間は使い物にならなくなるとみんな判断しているのかもしれない。

とにかく今年の誕生日の大きな目標は、三年前口にすることの出来なかったロイヤルホテルのスペシャルディナーを直樹とともに堪能することだった。
どんなに根回ししようが、プランを練ろうが、当日直樹に急患や急変があったら結局はアウトだし、三年前のように琴子にトラブルが訪れる可能性も大である。
なので、今回はノープランで、とにかくあまり気張ることなく「行けたら行こう」くらいの気分で予約することにしたのだ。
そのせいか、ここまで恐ろしいくらいに順調だった。
とにかく其々で待ち合わせして、悶々と不安に苛まされながら相手を待つ時間を過ごすのは2度と御免だと、ロイヤルホテルには一緒に向かった。

時間に余裕はあったが、途中救急車のサイレンが近づくとドキドキし、急ブレーキの音に心臓が跳ねそうになる。

しかしーー意外なことに実にスムーズにホテルに着いた。

そして、何事もなくレストランに案内されテーブルに着く。

「え? なんか、嘘みたいなんだけど」

食前酒が注がれ、スープが来て、前菜、魚、肉と料理が次々と運ばれて来ても、直樹の携帯は鳴ることもない。

「何もないに越したことないだろ。ほら、おまえがDMみて食いたいと騒いでた神戸牛シャトーブリアンのロッシーニ風。さっさと食えよ」

「う、うん。わーシャトーなんとか、めっちゃ美味しい~~~」

何となく落ち着かず食事をしていた琴子だが、漸く安心したようにシャトーブリアンに舌鼓をうっているとーー

少し離れた入口の方の席で、ガタンと何かが倒れる音がした。
思わず振り返るとーー

一人の老紳士が、テーブルの横で膝まずき踞っていた。

琴子と直樹が二人同時に立ち上がる。

二人が駆け寄るよりも先にウェイターが近づき助け起こすと、
「いやーすみません。飲みすぎてしまったようで……ちょっと椅子に足を引っ掻けてスッ転んでしまって……」ケロッとしたように頭をかきながら起き上がっていた。
「もう、あなたったら恥ずかしいわ」
妻らしき老婦人が立ち上がり、お騒がせしましたと周囲に頭を下げていた。

「あー、よかった。何事もなくて」

「そうだな」

二人はくすっと笑いあって再び席についた。

その後、デザートとコーヒーが出てきた。デザートのクレープシュゼットにはハッピーバースディのデコレーションがお皿に美しく描かれていて、照明を落としピアノの生演奏が流れる中でグランマルニエが注がれ火が灯される。フランベともにウェイターが「お誕生日おめでとうございます」と告げ、周りからも拍手が沸き起こる。そんな演出に感動しつつも妙に照れてあちこちに頭を下げてしまうしまう琴子である。
無事に食事が終わり、「やった! ミッションコンプリート!」と喜ぶ琴子に、
「まだだろ?」と差し出されたのはどうやら誕生日プレゼントらしい。

「え? え? 何? なんだろう」

わくわくして包みを開ける琴子に「手錠」と直樹がにやにやしながら一言。

「あーブレスレットだ。素敵!」

やはりサファイヤがひとつアクセントになっているゴールドのブレスレットだった。

「嬉しいけど……無理しなくていいのよ? 本当は、こういうの考えるの、面倒くさいんじゃない?」

自分のためにプレゼントを選ぶ時間が直樹の中に少しでも存在しているのかと思うとすごく嬉しい。でも、元々こういうことが苦手な直樹の負担になっているのではないかと不安になったりもする。

「ばあか。昔のガキだった頃のおれならともかく、今は誕生日が意味することはよーくわかってるよ。だからいちいちそんなこと気にすんな」

少なくとも30年前のこの日におまえが生まれていなかったら………一体自分はどんな人生を歩んでいたのだろうと、考えるのも恐ろしい。

「………へへ。嬉しい」

「……それと、まだ、コンプリートじゃないからな」

直樹はにやりと笑って、部屋のキーを見せた。

「…………//////////」






部屋に入るとベッドの上には大きな薔薇の花束が置いてあった。

「持ち歩くにはこっぱずかしいし」

「きゃー嬉しい!! 入江くんが用意してくれたの? 30本?」

「店員が間違ってなきゃな」

「ふふ。さすがに横断幕はないね」

「琴美がいるお陰でお袋も身動きとれないだろう」

周囲を見渡してはいたが、流石に今年はシャッターチャンスを狙うハンターがいる気配はなかった。
水族館は危険とは思ったが、今日は昼間は会社関係で会食に同席しなければならないと云ってたから大丈夫なハズだ。(だから大胆にあんなところでキス出来たのだ←一応考えてる)


「今日はありがと。本当に素敵な1日だった」

「ストレス解消になりましたか? 奥さん」

「入江くんの顔見てるだけでストレスなんて吹っ飛ぶよ」

「クラゲよりも?」

「クラゲよりも!」

「愚痴もいっぱい聞いたしな」

愚痴ならおれに言え、の言葉通り、食事しながらついいろんな不安や寂しさを吐露してしまった。
直樹は怒ることも呆れることもなく黙って聴いていてくれた。

仕事と子育ての両立の難しさ。
日々進化していく医療技術に追い付けない戸惑い。
直樹とどんどん離れていくような言い様のない不安ーー。

それが直樹の一言であっさりと解消されてしまった。

「それって全部おれを頼ればいい話だろうが。ここにいるのに何を遠慮してんだか。昔は平然と看護記録おれに書かせたくせに」

「あ~~だからもうそんな愚かなことは2度としたくないのよー。忙しい入江くんにさらに追い討ちをかけるような……」

「子育てはおれもちゃんと協力してるつもりだし、的外れだったらキチンといってくれ。仕事に関しては相談には乗るし。どれだけ助けられるかはわからないけど、フォローはするさ。夫婦なんだから一蓮托生。おまえと結婚した時からたいていのトラブルは覚悟している。耐性はできてるから気にすんな」

「入江く~~ん」




そんな直樹の言葉を思いだしちょっとうっとりしている時に。

「で、シャワーどうする? 一緒に入る?」

「へ? えーっええっ////」

「そんなに仰け反らなくても」

「えーと、そうだけど……いや、どうしようかな……」

真っ赤になって照れてる琴子に、「ま、好きにして。おれ先に入ってくるわ。後からくるかどうかはご自由に」といって、着替えを持ってバスルームに入ろうとした瞬間にーー

まさかの。

携帯の着信音が鳴ったーー。



「どこ? 病院?」

「ううん。家からみたい」

すぐにUターンした直樹が電話に出る。

「どうしたんだよ……え? 琴美が? で、何度? 様子は? 吐いたりとかないんだな? ……顔色は? わかった。ああ。多分、大事じゃないだろう。病院は明日の朝で大丈夫だ。わるいな、おふくろ………」

「入江くんっ! みーちゃん……どうしたの? 熱が出たの?」

直樹の会話の端々で事態を察した琴子の顔が青くなる。

「ああ。熱っても37度7分だからたいしたことないけどね。少し熱っぽいと思って計ったらしいから、特にぐったりしてる訳じゃなく、結構元気らしいし」

「そ、そっかぁ。今日疲れちゃったかな……?」

「で、どうする? おふくろは大丈夫そうなら泊まってけ、って云ってたけど」

「え? 帰るよ、もちろん。今は大丈夫でも夜中に熱が高くなるかもだし」

全く迷いなく即答する琴子にくすっと笑い「そーだな」と直樹も同意する。


結局そのまま二人はチェックアウトして自宅に戻ったのだった。





「結局コンプリートできなかったな」

冷却シートをおでこに貼って、すやすやと眠ってる琴美を間に挟み、琴子と直樹も自宅の寝室ベッドに身を横たえた。

「えー? ちゃんとしたよ。とりあえず今年はディナーだけが目標だったし。ホテルでの甘~いバースディナイトは3年前にしっかりと堪能したので大丈夫! 入江くんが『好きだよ』っていってくれたのも、時折脳内リフレインするくらい耳に残ってるし」

おれは大丈夫じゃねーよ。

無論、直樹の内心など知るよしもない。
直樹にしてみればメインディッシュを食べ損ねた気分だが、今日は琴子の誕生日だし、琴美が熱をだしたのでは諦めるしかない。

家に置いてあったステートで診察した様子では予想通りとくに問題はなかった。だが、それがはっきりわかっていても琴子は家に帰ると云っただろう。

「別に3年前の声をリフレインしなくても、せめて誕生日くらいは云ってやるよ」

「え?」

琴美の上を乗り越えて、琴子の頭の後ろに手をやって引き寄せると、唇を塞いだ。
今日一番の長めのキスを娘の頭上で交わした後、直樹が優しく「好きだよ、琴子」と耳元で囁く。
相変わらず耳まで真っ赤になった琴子が、「あたしも大好き」と答える。
「……でも、年に一度誕生日だけ、なーんて遠慮せずに、毎日言ってくれてもいいのよ?」
と、ふふふっとにんまり笑うのは実に琴子らしい。

「じょーだん。こーゆーのはたまに云うから価値があるんだろうが」

「え? じゃあ、あたしのはもう価値がない? 言い過ぎ?」

「おまえは数で稼げ」

「??? いいんだ。……云っても」

「おまえの『好き』は耳にタコができるくらいがちょうどいいんだよ」

「へへっじゃあ、いっぱい云うね~~30代になっても入江くんへの愛は衰えたりしないからねー 」

「……知ってるよ」


入江くん大好き。

30になっても40になっても、60でも80でも変わらない。きっと、それは永遠に。


「入江くん。今日1日、素敵な誕生日をありがとう。大好きだよ」

ふんわりと、はにかむように微笑むの琴子の唇に誘われるようにもう一度kiss。



きっとこれからもいろんなことがあるのだろうけれど。
入江くんが傍にいてくれるならきっと大丈夫。

ずっとずっと大好きだよ………










※※※※※※※※※※※※※※※※



とりあえず裏テーマは『何もおきない平穏無事な誕生日』でした笑
偶数月の年は何事もない筈なんですよ(((^^;)子供の熱は日常の範囲だしね~
なので、日常会話がだらだらと続く間延びした話になってしまった気がします。



あと、なんだかむしょーにクラゲが描きたくなって水族館デートさせちゃいました。
(の、わりには下手くそなクラゲ……)
し〇がわ水族館調べながらアクアパーク〇川が気になって仕方なかった私です。(この時代にはまだない)サンシャ〇ン水族館も好きだけど、リニューアルしてるみたいで、昔の様子、流石に20年前の記憶だけでは書けないわーと。
実は水族館マニアな私……(((^^;)


なんだか年食うごとにデレ甘になっていくうちの直樹さん……まあ、成長したわね、と笑ってやってくださいませf(^^;





Return

* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
* Comment : (11) * Trackback : (-) |

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

ハッピーバー * by なおちゃん
良かったね?今回の、お誕生日は、入江君、琴美ちゃん、親子三人で、無事に過ごせたみたいですね、前の、お誕生日の、時は、最初こそ悲惨で、最後の時は、琴美ちゃんを、授かったりでしたが、今回は、親子で、楽しく過ごしたり、最後、夫婦で、誕生日ディナーを楽しめたり、最後に、ホテルで、二人で過ごそうと、思ったら、琴美ちゃんが、熱を出したりしてしまいましたね、それ以外は、入江君い、お誕生日、プレゼントの、アクセサリーや、バラの花束をプレゼントをもらったりで、琴子ちゃんも楽しいお誕生日を過ごせたみたいですね、琴子ちゃん、お誕生日、おめでとうございます。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

はい、今回の誕生日の私の中のミッションが水族館キスとリベンジディナーなので、完遂できて良かったです。

ほんと、あんなイケメン一人でこんなとこ来ないだろって普通なら思いますよね~~。あたって碎けろなのか、あるいは隣の琴子を見て勝てると踏んだのか。そーゆー女どもには容赦のない直樹さんなのですf(^^;

そうそう、直樹こそ、琴子不足ピークだったんでしょう。人目を気にしないのは相変わらずですが。
ディナーも無事終了。何事もないと逆に落ち着かないかもな二人ですww

ま、メインディッシュを食べ損ねた直樹さん、そのリベンジは当然倍返しでしょうねー笑

デレアマ直樹さん、堪能していただいたようで良かったです♪


Re.heorakim様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

はい、直樹さん、すっかり成長しましたよ。琴美ちゃん、ナイスです。2歳児とは思えない機転ぶりですね(^w^)
喜んでいただけたようで良かったです♪

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そうですねー何事も起こらない奇跡の1日。間違いなく一途に直樹さんを想い苦難を乗り越えた琴子ちゃんへの神様からの誕プレなのかもしれません。
それとも直樹さんの方が神様の首根っこ捕まえて何も起こすなと脅しているかも(^w^)

琴子の愛情によって人間らしく成長して、子供を得てさらに一回り成長した直樹さん。琴子に甘えてばかりいたお子ちゃま直樹はもう卒業ですね(^w^)ほんと、大人になったよ。
大人になった直樹の言葉が染みていただいたようで良かったです。琴子ちゃんもうるうるですね。

ほんとです。いっくらイケメンでも、琴子以外の人はきっと耐えられないですよねー。こんな厄介なオトコ………f(^^;

琴子ちゃんのバースデイに少しでも感動していただけたなら、良かったです(^_^)

Re.りん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そして、二周年のお祝いのお言葉もありがとうございます(^_^)
私も二次の世界を知って日が浅いですから!そんなに変わりませんよ、きっと(^w^)
りん様にこれからもずっと読んでもらえるように頑張りたいと思います!

ふふ、デレ甘最高といってもらえて良かったです。原作のつんつんな直樹さんとはかけ離れてる気がするので。
でもちょっとずつ成長して、素直に言葉を吐ける人にようやくなれたんですよね。琴子と同じくりんさんにきゅんきゅんしてもらえて良かったです(^_^)

本当に原作の27歳バースデイの夜のエピは神のように素敵ですよね♪
最終回がなくてもあのシーンだけで幸せになれます。
私のつたないお話であのシーンを思い浮かべてもらえて嬉しいです。

まとめての感想、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね♪

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

3年前のバースデイは、初めがトラブルだらけで、でも最後は最高にハッピーな夜でしたが、今回は何事もないわりには、夜はちょっと(直樹さん的には)残念な感じで。でも、琴子ちゃんが最高に幸せだからよいのですよねー(^w^)
それもこれも直樹さんが成長したから。そして、直樹さんを成長させたのは琴子ちゃん。本当に最高なカップルです♪

個別記事の管理2016-09-27 (Tue)


誕生日イヴのお話、と思ったのに。結局日にちを跨いだお話になってしまいました~~~(^_^;)





※※※※※※※※※※※※




「どうよ、琴子。20代ラスト1日の心境は?」

着替えを終えてロッカールームを出たあと、職員通用口でばったり会った幹に声をかけられた琴子は、「やだ、久しぶり、幹ちゃんっ」と少し驚いてから、
「へ? 別に? 変わんないわよー。特に何も……」と、とても29歳とは思えない、いや、人妻で2歳の子供の母とは思えない少女のような顔を幹に向けて、少し頬を膨らませる。
育休復帰した後琴子は内科に異動になり、会う機会は減ったものの、少しも変わらない様子に思わず安堵する。
異動当初は琴子の失敗談がやたら耳に入ってきて、気が気ではなかったが、流石に一年経つと随分減った。

「とうとうあんたもオバサンの仲間入りね~~とか思ってんでしょ?」

「思わないわよー。そんなこと言ったら全国の30代に殺されるわよ」

確かに今どきの30代は一昔と思えば随分若々しい。
自分が子供の頃って、30歳って、すごいオバサンって思ってたけれど、結婚している理美だってじんこだって所帯染みたところなど一つもないもんなー………

自分もそうありたいけれど、自分のことは今一つよくわからない琴子である。
よくわからないが、とりあえず、いつも通りの大口を叩いて見せるのか彼女なのだ。

「ふ、ふん。あたしは年齢に相応しい大人の女を目指すのよ! キャリアアップしてナースとしても妻としても母としてもこれからどんどん華開くのよ~~!」

大きくでたわね、と呆れ返る幹だが、
(ま、この子の一生の目標が『入江くんに相応しい妻になるのよ! 入江くんを助けられるナースになるのよ!』だものねぇ)と得心する。

30どころか、大学生にも見えかねない童顔の彼女の目標は、追いかけても追いかけても追い付かないかもしれない。それくらい、彼女の夫は高いところにいる。

「……今年は誕生日に日本にいてくれてよかったじゃない」

「………まあね」

去年のことを思い出したのか、少し琴子の表情が翳る。
海外にいて、危うくテロに巻き込まれそうになり、連絡のつかなかった恐怖の時間が、ふっと脳裏に浮かんだのだろう。
余計なことを思い出させてしまったと、幹も内心ちょっとした失言を後悔する。

「去年もちゃんと誕生日には帰ってきてくれたもん」

「はいはい。知ってますよ」

あんたの去年のバースデイパーティ、あたしも参加してたでしょうが。
一応入江先生のサプライズ帰還に一役かったんだし。

「忘れないわよ、玄関先で熱烈キッス」

「いや~~ん、モトちゃんてば」

分かりやすく赤くなってバシバシ腕を叩き出すのは止めてよね、と思いつつ。

「……そう。今年は日本に居てくれるだけで喜ばなくっちゃね」

そう言いつつも少し寂しそうだ。
直樹の多忙さは恐らく彼の同期のそれ以上だろう。
優秀なものほど多方面からの要請が多いのは仕方ないとはいえーー。
今年も既に何度かは海外に渡航している。あちこちの研究チームから声が掛かり、全世界からのラブコールは相変わらずだ。
無論、斗南に戻れば戻ったで手ぐすね引いて待っていましたとばかりの人気者なのだ。

「そういえは『ネ〇チャー』に論文が掲載されたって?」

「うん。なんだかとっても凄いんだってね。よくわからないけど」

「修士課程も博士課程もぶっ飛ばして博士だもん、さすがよねー20代で」

普通研修医を終えた後、大学院に戻り研究研鑽を積まなくてはとれない博士の資格であるが、論文3本が権威ある雑誌に掲載されること、という難易度の高い条件をたった2年でクリアして、特例で博士号をもらっている。
しかも臨床医として大学病院に勤務しつつ、かなりなハイペースで着実に手術執刀実績も増やしながらのその快挙は、かつて前例がないとも云われているのだ。

「ふん。どんなに入江くんが偉い人になったって、あたしの方が先に30歳なのよ! これはもう永遠に追い付けないのよ!」

へへんと鼻を鳴らす琴子に、

「それって自慢すること? 先にババァになるだけじゃ……」

「ああーーっそれは云わないの~~どうせモトちゃんはあたしより3つも若くて、まだまだ20代って威張れるでしょうけど、どーせ、すぐなんだからね! あっという間なんだからね!」

指を突きだして高らかに宣言する。

「あら、あたしは永遠の22歳ですので」

「ナニソレ~~ずるーい」

「でも……年を重ねるのは悪いことじゃないわよ」

「うん。まーね。何だかんだいっても、あたしも別に30歳になるのイヤじゃないもの。この10年で何か変わったのかって聞かれるとそんなに成長してない気もするけど、でもやっぱり20歳の誕生日を迎えたあの日よりは少しは大人になってる気がする」

この10年の間に起きた出来事を、20歳の自分に伝えたらどう思うだろう。
きっと信じられないだろうなぁ。
そんなことをぼんやりと思う。
20歳になった初めての夜は、信じられないことに直樹と二人っきりだったけれど、徹夜で試験勉強だった。
ひとつ部屋で男女が二人でいても何も起きない。結局自分に魅力がなくて、直樹は自分のことは全く女として見てはいないのだとーーひしひしと感じながらも諦めきれなかったあの頃ーー。

まさか、その1年と2ヶ月後に結婚して、そして二人して医師とナースとして同じ病院に勤務してるなんて。
夢には抱いても、実現することなど有り得ない未来の筈だった。
妄想に過ぎなかった夢のような未来がここに確かに存在する。
あと10年ーーこれからどんな未来が待っているのかと思うと少し楽しみだったりもする。


「………で、今日は19時だったわね。あなたの誕生日前夜祭は」

「あ、そうそう。ごめんねー。仕事のあとで疲れてるのに」

「いいわよー。入江先生のお母さまのお料理、とっても美味しいし。カラオケも歌いたい放題で楽しいわー」

「今年は新作ゲームも色々入ってるからいっぱい楽しんでね。入江くんは来られないけど」

「入江さんは当直だっけ?」

「そうなのよねー」

肩を竦めてため息をつく。
レジデントも終え、指導医の立場もこなし、さらには助教授並みの重要な仕事を割り振られ、その上当直まで回ってくるってどーゆーことなの!?と、夫の労働状況に物申したい妻ではある。
本人がしれっと涼しい顔でこなしているので誰も気にも留めてないのだろう。
それでもいつかのように過労で倒れないように(半分は階段から落ちた琴子が原因だが)妻としては栄養管理には十分気を使っているつもりだ。(紀子の指導のもと、多少は進歩)

「今回は船津さんに替わってもらわなかったんだー」

何がなんでも当直を替わってもらおうとあれこれ根回しするために奔走していた3年前よりは少しは成長したのか、あるいは諦めが早くなったのか。今回は特に妙な動きはしていない。

「どうせ、何かあったら呼び出されるんだもの。もうあれこれ画策するのやめたの。どうせ、当直のあとは元々休みだったし」

明日は土曜日で通常業務も予約オペもないのが救いだ。いつものように当直の後そのまま連続業務という過酷日程なわけではない。
朝9時には当直が終わる。無論、何事もなければ、の話だが。(可能性として何事もないことの方が少ないのだがーー)

「じゃあ、誕生日当日は入江先生とデートなの?」

直樹は当直明けで、琴子は休みを取っている。そしてパーティを前日にずらしたということは、つまり誕生日当日は二人でお楽しみなのだろうと想像してしまう。

「うん。2人でっていうより、みーちゃんと3人だけどね」

そっか。子供がいると二人っきりってのもなかなか儘ならないものなのね。
あんなに二人だけのデートに固執してた琴子だけど。

幹は特に残念そうでもない琴子の様子をまじまじと見つめる。

ーーとはいえ、子供と一緒のお出掛け休日ってのも実に幸せな光景ではないか。遊園地とかで娘を肩車している直樹を妄想しただけで萌えるわーと、他人の幸せながらもちょっとあったまる。
その隣に自分がいることを妄想しても少しくらいはいいだろう。減るもんじゃなし。

「 何処に行くか決まってるの?」

「当直あけだもの、少し寝てもらって午後からみーちゃんリクエストの近くの水族館に行くつもりなの」

「へぇーいいわねぇ」

「かかりつけの病院の待合室に、おっきな水槽があってね。べたーっと顔つけて熱帯魚とか見るのが大好きなのよ、みーちゃん」

「へー、そーなんだ………」

「そんな話をしたせいか、お義母さん、昨日から熱帯魚ショップの人やら工務店さんやら呼んで、壁ぶち抜いてリビングに巨大水槽造る計画始めて、入江くんに怒られてた」

「………はあ。さすが、やることが相変わらずブッ飛んでるよねー」

「アロワナでも飼うつもりかっ~~ってくらい大きな水槽なつもりらしくて。床を強化しないと抜けちゃうって大工さんに云われてた」

………おうちにアクアリウムでも造る気かしら。やれる財力と行動力があるから怖いわね。
思わず苦笑する。

「今まで近所の公園くらいしかお出掛けしなかったから、ちょっとステップアップしたと思わない? もう少しみーちゃんが大きくなったら遊園地とか行って。そして、いつかは入江くんを憧れの夢の国に連れ出すのが目下の目標なのよ。めっちゃハードル高いけどねっ」

「フツーの家族では当たり前のことが、確かに入江先生じゃ想像しづらいわね。でも、みーちゃんがおねだりしたら案外すんなりじゃない?」

「そーかなー。あたしが頼んでも1度もオッケーしてもらったことないんだけどなー」

とにかく混んでるところが嫌いだし、行列も嫌いなのだ。

「やっぱ、娘のおねだりは違うでしょ。せいぜいみーちゃんにねずみやらお姫さまやらのビデオ見せておきなさないな」

「そーだね。入江くんが行かなくてもじいじとばあばに連れて行かれそうだけど」

「……間違いないわね」

二人、顔を見合わせて笑いあう。

「でも夜は入江くんと二人でロイヤルホテルでディナーするの」

「ロイヤルホテル? あの因縁の?」

「そう! あの因縁の。3年前、色々あって大遅刻でディナー食べ損なったのがちょっと悔しくて。そしたらこの間ホテルから優待券がきてて、予約しちゃった」

「そりゃ良かったじゃん。まあ、また何かある可能性高いけどね」

「う………大丈夫。今年はみーちゃんを家に置いてから二人一緒に出掛けるから」

「入江先生が呼び出される確率が高そうね」

「わかってるわよー。そんなこと」

医者の妻何年やってると思ってるのよ!ーーと、ぷいと横を向く。

ちゃっかりハワイだなんだと家族旅行をしている医者も多いけれど、いつも患者を優先にしている直樹は、科内でもオンコール率が最も高い。
自分が担当でも、他に医者が居なかったらまず真っ先に直樹に連絡するだろう。

「………明日、楽しみね」

からかいつつも何事もないことを祈るしかない。

「うん。あ、今夜も楽しみだよー」

「はいはい。入江さんいなくて残念だけど、めーいっぱいあんたのサヨナラ20代パーティ盛り上げてあげるわよ」

「ふふふ。よろしくね」

職員通用口で立ち止まっていつまでも話していた二人は漸く病院の外へ出て、帰路に着いた。






* * *




「琴子ちゃん、あとは私やっておくから、みーちゃんお部屋に連れてってもう休んだら?」

壁にとりつけられた『Happy Birthday』の横断幕を外していると、洗い物を食洗機にいれていた紀子が声をかけてきた。

パーティの最中に眠くなった琴美は、ソファの上にタオルケットをかけられて眠いまだ夢の世界にいるようだ。
お風呂には入っていたので、このまま寝てくれたら楽チンだなーとは思うけど、今でも時々夜中に目を覚まして夜泣きすることがある。

「今日は主賓だったんだもの。何もしなくてよかったのに」

「いえ、あたしなんて、ほんのちょっとしか手伝ってませんから。毎年すみません。素敵なパーティ準備してもらっちゃって」

「いいのよ。そんなこと。私の楽しみなんだから。あ、プレゼント、そこにまとめておいたから忘れずお部屋に持っていってね」

「はーい。ありがとうございます」





「よいしょっと………」

琴子は、すやすやと眠る娘をそおっと夫婦の寝室にあるキングサイズのベッドに置いた。
ベビーベッドもまだ片づけてないが、どちらかが夜勤や当直でいない夜は夫婦のベッドで添い寝している。
無論三人で川の字で眠ることもよくあり、ベビーベッドの使用率は随分減ってきた。

そのあとで、袋いっぱいの今日もらったプレゼントをひとつひとつ確認する。

うーん、相変わらず理美とじんこはベビードールかぁ。わー綺麗な水色……いやーん、明日着てこうと思ってる水色のワンピと妙にしっくりあっちゃってない……? 着てっちゃおーかなー。

裕樹くんは……好美ちゃんと一緒に、お財布だわ。あー絶対好美ちゃんにお任せだな。うん、でも可愛い。

モトちゃんは………なによーエイジグケアの基礎化粧品セット。さりげない嫌みかしら。私がいつも使ってるブランドの30代用。でも、ある意味一番実用的かも……。

お義母さんは……素敵。シルクのパジャマだわ。ちょっと大人っぽい。でも何故……おまけよって……羊の着ぐるみパジャマまで?……あったかそう。これはもしかして、来年が未(ひつじ)年だから?!
えーと、でもこれをどうしろと?


ひとつひとつ丁寧にみんなからもらったものを机に並べる。

明日の朝、入江くんが帰ってきたら見せびらかそう。着ぐるみには絶対眉を潜めるだろうなぁ。好きなくせして………

ふふっと笑いながら、自分もそろそろ寝ようと時計を見たら、ちょうど0時を回ったところだった。

ーーあ。
30歳だぁ。

琴子はふっとドレッサーの鏡を見た。

なんか、変わったかなー。29歳のあたしと、30歳のあたし。

19からハタチになった時、何だか随分大人になって、自分を取り巻く世界までもが変わってしまった気分になったのは、法的にも世間的にも一人前の成人と認められたからだろう。
それでも……あの頃はまだ全然子供だったような気もする。


今、妻となり母となり、少しはちゃんとした大人の女性になれたのかなぁ……?
ナースとしてはまだまだ半人前だってことは十分過ぎるくらい自覚してる。
それでも少しは患者さんの役にたってるのかな……? 入江くんの役にたってるのかな……?

ねぇ入江くん………

そんなことを考えていたら、携帯の着信音が机の上で鳴り響いた。

「え?」

ーー入江くん?

もしかして、急患があって明日は帰れない、という連絡だろうか?

琴子はドキドキしながら電話にでる。

「もしもし、入江くん?」

「琴子?」

「う、うん。ど、どーした? もしかして、明日ダメになっちゃった? あ、大丈夫だよ、あたし。それくらいで凹んだりしないから……」

「………ちゃんと話を聞けよ」

呆れたような直樹の声が耳元で響く。

「あ、ごめ……」

「琴子、誕生日おめでとう」

「え?」

「一応、記念すべき祝30歳だからな。ちゃんと言葉で伝えようとしたら………何? 明日デート出来なくってもへこまないってか? さすが逞しくなったよなー。いやー大人になったのか、おれへの関心が薄れたのか……」

「えーそんなことないーっ!! 凹むよ~~めっちゃ凹むよー。でも、もし、急患とかあったら仕方ないもの!」

「ぷ。そんなに焦らなくても。とりあえず今のとこ平和。当直室で仮眠しようとしてるとこだよ。ま、このまま何事もないこと祈っててくれ」

「う、うん。神様仏様イエス様、全部の神様に祈っちゃうよ」

「……おまえの願いは強烈だからな。叶うか、真逆なことになるかどっちかだよな」

「へ?」

くっくっと笑い声が聞こえる。

「琴美は? もう寝た?」

「うん。もうぐっすりだよ」

「そっか。明日はぐずらずに、水族館に行けそうかな」

「うん、だといいね」

「まあ、何事もなければ、だけどね。万一の時はおふくろと3人で行ってくるといい。琴美も楽しみにしてるんだろ?」

「うん……でも、いいよ。やっぱり水族館は入江くんと3人で行きたいし。ほら、入江くんとも水族館デートなんてしたことないじゃん?」

「そーだっけ?」

「そーだよ」

「まあ、おまえの誕生日なんだしな。おまえがいいようにすれば?」

「……うん」

「夜はロイヤルホテルディナーだろ?」

「そ、そうだよ。覚えてた?」

「あれだけ毎日しつこく言ってて忘れるかよ。リベンジディナーよーーって」

「今回は二人揃っていくから何事もないはずだし」

「おれに呼び出しがなければね」

「う………」

「少なくとも、おまえがトラブルに巻き込まれる可能性は回避できる」

「………そうだね」

「少しは落ち着いて何もトラブルを呼び寄せない30代になってほしいもんだなー」

「……そ、そんなにあたし落ち着きないかなぁ。そんなにトラブルメーカー? 相変わらず入江くんを困らせてる?」

少ししゅんとした琴子の声に、一瞬、直樹が沈黙する。

「………入江くん?」

「嘘だよ。おまえはそのまんまでいいよ。多分、30歳でも40歳でも変わんないだろうし」

「ええーーっ あたしってそんなに成長しない女?」

「違うよ。もちろん、色んな面で成長してる部分はあるけれど、おまえの本質みたいなのは変わってないし、これからも変わらなくていいよ。昔、ハワイで云ったろ? おまえはそのままでいいよって」

「……うん。覚えてる」

何がどう成長して、何処が変わらなくてもいいのか、自分ではさっぱりわからないのだけれど。

「じゃあ、そろそろ少し寝るから」

「う、うん。そうだね。もうこんな時間」

「もし、予定変更あったら朝に電話する」

「うん……」

「で、おまえ、おれが最初に電話して云ったこと、覚えてる?」

「え? えーと……?」

「誕生日おめでとう、琴子」

「あーー!! あ、ありがとう! よく考えたら入江くんからおめでとうコールってすごくレアだったわっ」

「……ま、明日は、言葉だけじゃなくて、身体ごときちんと祝ってやるよ」

「へ?」

「じゃーな。おやすみ」

ぶちっと切れた携帯電話をしばらく見つめながら、直樹の言葉を反芻し、唐突に意味が分かって顔をぽんっと赤くする。

顔を赤らめたまま、ちらりと親友2人のくれたベビードールの箱を見つつ………

「やっぱり明日着てこうかなー/////」

母の喋り声に起きることなく、未だ心地よい夢の中にいるらしい娘の傍らに身を横たえて、その寝顔を見つめる。

「………とりあえず、ママの30歳になりたての瞬間は、最高に幸せだよ」

大好きな人から真っ先におめでとうっていってもらえる幸せ。

「幸先いいぞー、花の30代……」

これからもきっともっと幸せな時間が過ごせるに違いない。
そう信じて、琴子はゆっくりと瞳を閉じた。






※※※※※※※※※※



水族館デート、リベンジディナー編は28日お昼ごろにアップする予定です(^_^)





Return

* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
* Comment : (9) * Trackback : (-) |

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

* by なおちゃん
琴子ちゃんも、成長したけど、入江君も、成長してますよね?

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメ遅くなって申し訳ありませんm(__)m

そうそう、モトちゃん、三つも下の割りにはずっと大人ですよね~~。つい他の二人の女子より、(頼りになって)書きやすい笑。

ほんと、直樹の今の人生は琴子がいてこそ。色々あったけど、すっかり直樹さんも大人になってよき父よき夫ですよねー。
なんだかんだ3年前も幸せな夜になったんですけどね。でも食べ損ねたディナーのことはしっかり覚えているわけで。(直樹さんは不安に苛まされたあの時間を想起されてしまうかも、ですが)

さて、なにが起こるかはお楽しみに、なのですf(^^;

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメント&コメント、両方ありがとうございます♪

リコメが遅くなってすみません(((^^;)

いつもいつも応援ありがとうございます。heorakimさまの温かいお言葉にいつも癒されております。
さて、琴子のバースデイ、何が起きることやら。ええ、絶対直樹さんが傍にいたら安心ですよね~~(^_^)v

Re.ちゃみ様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

リコメが遅くなってすみません(((^^;)

琴子ちゃんにお祝いのお言葉、嬉しいです。ほんとに、イタキス最高ですよね。楽しみにしてくださってありがとうございます(^_^)

Re.でん様 * by ののの
はじめまして! コメントありがとうございます♪

リコメ遅くなってすみませんm(__)m

そして、二周年のお祝いのお言葉もありがとうございます(^_^)
わー全部のお話読んでもらえたのですね。ありがとうございます!!全部大好きといっていただいて、とっても嬉しいです♪
ふふふっ(//∇//)はーい、エロも(たまには)頑張ります(^_^)v

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そうですね♪ 二人とも30となり、いろんなことを乗り越えて、ちゃんと大人になりましたね(^w^)

個別記事の管理2016-07-08 (Fri)


20040707 ~やっぱり、傘はひとつだけでいい。




暦が文月となってはや1週間。
1年の半分があっという間に過ぎたと思ったら、まだ明けてない筈の梅雨空も、ここ数日は鳴りを潜めて、真夏の灼熱の空に支配を譲っていた。
年々早まる猛暑日はすでに幾度か記録が塗り替えられ、朝から既に気温は高く、突き抜けるような青空は、ついうっかり今がまだ梅雨であるということを失念させてしまいーー



そしてーー。
唐突にぽつりぽつりと降ってきた雨を掌に受けとめながら、彼女は呟くーー。

「傘、忘れちゃった…………」





「朝、あんなに天気よかったのにねぇ」

「そうだよねぇ」

「もしかして、夜、おりひめさんとひこぼしさん、会えない?」

「うーん、多分通り雨みたいな感じだから、すぐ止むと思うんだけどなー」

「夜は晴れるかなー? 天の川見られる?」

「天の川は晴れてても見えないと思うけど……きっと織姫さまと彦星さまは会えるよ」

「ほんと?」

心配そうな琴美の顔がぱっと晴れやかになる。
琴子は娘の手を握りながら、「きっと止むよ」と、恨めしげに突然青空を覆い隠した真っ黒な雨雲を見つめた。

今日は琴美の幼稚園の七夕会だった。
午後から幼稚園に赴き、一緒に七夕飾りを作り願い事を短冊に書いて、園庭に立て掛けられた大きな竹に飾り付けた。
子供たちの織姫彦星の寸劇を観たり、歌を聴いたりしながら、あっという間に過ぎた時間だった。

こうした行事のある日は親子で帰宅が基本だ。
普段はバス通園なので、琴美は母と電車を使って帰れるのが楽しくて仕方ないようだ。
もっとも殆どの親子が車で帰園していた。
ベンツやBMWで帰宅時は道路が渋滞していたくらいだ。
入江家も本当は、紀子が迎えにくる筈だった。
出掛ける直前に親戚の訃報が届き、迎えに行けなくなったと琴子の携帯に連絡があったのは、殆どの親子がすでに帰園し、二人きりで幼稚園の園庭で紀子の迎えを待っていた時だった。

もう少し前なら誰かの車に乗せてもらうということも可能だったが、手遅れだった。すでに残った親子は琴子と琴美のみ。

「電車で帰る?」

と琴子が訊ねると、琴美は嬉しそうに「電車のるーっのりたーい!」と答えたのだった。

僅か二駅だったが、琴美は楽しそうに車窓の風景を眺めていた。
帰宅ラッシュには少し早かったせいで、席がひとつ空いていて、琴美を座らせた。
初めてというわけではないから、きちんと乗車マナーも守って大人しく座っていた。次の駅でお年寄りが乗ってきたら、すぐに立ち上がって譲ってあげた。
車内は琴美のお陰でほっこりとした空気に包まれていたが、あっという間に二人の降りる駅に到着した時には、空は随分と厚い雲に覆われ怪しい色合いとなっていた。
そして、段々混雑してきた改札口を琴美の手をしっかり握って抜け、駅舎から一歩出ようとした途端に、大粒の雨が琴子の頬に当たった。


傘は持っていない。
いや、一応梅雨時だし、天気予報も夕立の可能性は高いと云っていたので傘は持っていくつもりだった。
つもりだっただけで結局忘れた。
何年たってもその辺りの学習能力はないのだ。

「あ、みーちゃんはカッパがあるかも」

琴子は琴美の通園バッグをごそごそと探す。

「あーあった」

小さくコンパクトに畳まれたビニールを広げると、黄色い地に緑のカエルのキャラクターがたくさん張り付いたキッズ用レインコートとなった。

「梅雨時はお散歩出掛けた時に突然降られちゃうかもしれないから合羽を携帯させてくださいねーってことだったけど、良かったねーー」

「うん!」

とはいえ、琴子には何もない。
雨は大粒だが、まだそんなに激しくは降りだしていない。琴美にレインコートを着せてあげれば自分は傘なしでも大丈夫かな? と空を見つめる。

駅前のタクシー乗り場は突然の雨のせいであっという間に行列ができている。
雨が降っていなければタクシーを使うには申し訳ないような距離だ。
琴子には最初からタクシーに乗ろうなどという選択肢はなかった。

「走って帰る?」

「えー、ママ合羽は?」

「ママは合羽ないの」

「じゃあ濡れちゃうよー」

「うーん、でもまだそんなに沢山降ってないから今のうちに……」

そんなことを話しているうちに、少しずつ雨足は強くなってきたようだ。
合羽を着せてもらった琴美はテンション高くくるくると雨の中走り回っている。

「えーい、もう悩んでると雨ひどくなりそうだから行っちゃおう!」

どうせ家に帰るだけだ。
帰ったらシャワーを浴びればいい。
琴子は琴美の手を繋いで、「行くわよー、みーちゃん!」と、雨の中、一歩を踏み出した。


そして、数メートルも行かないうちにーー。


「あ! パパだ~~!」

紺色の大きな傘を差した直樹が、急ぎ足で行き交う人の波の中を縫うようにこちらへ向かっていた。

「入江くん………」

「よお」

「どおしたの?」

「迎えに来たんだよ」

「………へ? 今日は普通に日勤じゃなかったっけ?」

朝いつも通りに出勤する夫を見送った筈である。
琴子は今日は子供の行事だからとシフトを外してもらっていた。こんなとき子持ちは融通を効かせてもらえてありがたい。

「今日は手術だけ。予後も安定してたし、昨日が遅かったから、少し早目に上がらせてもらった。そしたら、おふくろから電話があって、二人を駅まで迎えに行けってさ。多分おまえたち傘持ってないから」

「なあんだ」

仕事の筈の直樹が目の前に現れた時、不思議な既視感に襲われた。
一瞬ーー遠い過去と空間が繋がって、あの日の直樹が此処にやってきたのかとーー。

そんな訳はない。
第一直樹の手には琴美用の小さな黄色の傘があった。

「あれ? 傘はみーちゃんのだけ? ママの傘はないの?」

琴美が不思議そうに訊ねた。
琴子も同感で直樹の顔を伺いみる。

「いいんだよ。パパの傘が大きいから、ママと一つで」

「えーでもみーちゃん合羽あるから傘要らないよー。みーちゃんの傘、ママにあげるよ」

「ありがとう。でもみーちゃんの傘ちっちゃくて」

「そっかあ。じゃあママとパパ、アイアイ傘だね! わーいラブラブぅ」

大きな声で囃し立てる琴美に、周りもくすくすと笑い声をたてながら通りすぎていく。

「さあ、琴美。はしゃいでないで、帰るぞ」

「はーい」

そして親子三人は雨の中、家路へと向かった。




「……それでね、みーちゃんってば短冊に全部同じこと書くのよ? 五枚ともよ?」

「へぇ。どんなこと書いたんだ?」

「あのねあのねあのね。みーちゃんのお願いはねー『いもうとがほしいです』なのー」

「『いもうとをください』、『おねえちゃんになりたいです』『あかちゃんがうちにきますように』『あかちゃんはおんなのこがいいです』」

「おんなじことじゃないじゃん」

「意味は同じでしょ?」

「同じ意味でこれだけバリエーション変えて書けれるなんて、すごいな、琴美」

「へへへ、みーちゃんスゴい~~?」

「確かに、この子、字も上手なの。同級の子達は殆どまだ解読不能で。さすが入江くんの血を引いてるなーって今日は実感したわ」

「ゆーこりんはねぇ、短冊に『 ねがいこと』って書いただけなんだよー」

「先生から『願い事』書いてくださいって云われたから、その通りに書いたんだよねー」

幼稚園児の願い事、面白いのよ。半分も読めないけど!

結構ツボだったのもあったらしく、コロコロと笑いながら話して聞かせる。

「………琴美の願い事が叶うかどうかは琴美次第だよ」

直樹が神妙な面持ちをして娘に告げる。

「えー、どうしたら叶うの~~?」

「とりあえず今夜はおばあちゃんと寝ることかな?」

「えー? どうしてぇ?」

「入江くんっ/////」

琴子の抗議は空しく無視され直樹はさらに真面目くさった風で娘に語る。

「妹を造るには神様に渡す設計図が必要なんだ。夜、パパとママが相談して作らなきゃいけない」

「ふーん。どんなせっけいず?」

「例えば、目はママに似てるとか、鼻はパパに似てるとか。性格はどんな風がいいかな、とか」

「あ。みーちゃんねぇ、お姉ちゃんっこのいもうとがいいなぁ。りんちゃんちのるーちゃんみたいにずーっとお姉ちゃんの後をついてくるの。すんごい可愛いの!」

「わかった。それも設計図に書いておくよ。でも、神様は気紛れだからちゃんと設計図通りに作ってくれることは滅多にないからな。思った通りの妹じゃなくても、いや妹じゃなくて弟でも、もしかして中々生まれなくてもーー神様に文句をいっちゃいけないから」

「うん、わかったぁ」

「とりあえず今夜はおばあちゃんの部屋な」

「うん!」

すっかり娘を丸め込んだ直樹を呆れながら見上げる琴子。

「なんだよ、文句ある?」

少し意地悪そうに、直樹は琴子の耳元で囁く。

「……別にないけど。確かにそろそろ二人目欲しいなーって思ってたし」

「じゃあ家族全員の総意だな」

きっと義母紀子も喜んで琴美を預かってくれるだろう。

妹への期待にテンションが上がったのか、琴美は両親から離れて雨の中、水溜まりを跳び跳ねて遊び始めた。

「………なんか、不思議」

「何が?」

「さっき、入江くんが駅に迎えに来てくれた時、ふっと思い出したの。昔、あの雨の日にあたしのこと待っててくれていてーープロポーズしてくれた日のこと。入江くんの差してくれた傘に入って二人並んで歩いて……ね、ちょうどこの辺りじゃない? 入江くんが突然変なこと訊いて、突っかかってきたと思ったらいきなりひっぱたいてきて、そして突然ーー」

ーーキスしてきたこと。

まざまざと思い出して妄想モードに入りかかったのが分かりやすく顔に出る。

普段は鳥頭のくせして、そんなに細かく覚えていなくてもいいのに。
特に逆ギレして頬を叩いてしまったことに関しては出来れば記憶からすっぱり削除して欲しいのだが、と苦笑する。
若気の至りの一言で済ますには過去の自分の大人気なさに、時折虫酸が走ることがある。
なのに、琴子はすべてを飲み込んで受け入れて、あの日と全く変わらない愛をもって今もなお包み込んでくれる。

「……… 時々思うのよね。あの日、入江くんが駅で待っててくれなかったらどうなってたのかしらって」

「前にもそんなこと言ってなかったか?」

「そうだっけ?」

「そうだよ。鳥頭」

「そっかぁ~~でもね、それだけあたしにとっては大切な出来事なんだよ。人生のき……き……分かれ道ってヤツ?」

岐路と言いたかったらしい。

「分かれ道じゃないよ。道は初めから一つしかなかったんだから」

「え?」

「例え何か掛け違って、あの日におまえにプロポーズすることが出来なくても、きっと必ず何処かでおまえを掴まえたと思う」

「………入江くん……」

いつの間にか雨は小雨に変わっていた。
しとしとと心地よい雨音が、二人だけの空間を作っているようで、傘の外の世界から二人を遮断する。

「 で、そろそろ、例の場所だけど、再現キスでもしたいわけ?」

「そ、そんなわけないでしょっ!」

過去を回顧し、妄想し再現したいと思うのは琴子の定番パターンなのだが、さすがにこの日が高く人通りもある時間に、そんなことは望みはしない。

「あれから10年以上も経ったんだなーって懐かしんでただけだもの」

「そうか」

「そうだよ。まさか10年経って、親子でこんな風に歩くなんて思いもしなかったし」

「そーだな」

同じ街、同じ道。
少しずつ変わった家や建物はあるけれど、変わらず家路へと続く道。

「ママーっ雨、止んだよ~~!」

少し先を歩いて、時折水溜まりを覗き込んだり、跳び跳ねたりしていた琴美が振り返って叫んでいた。

「あ、ほんと」

琴子が傘から手を差し出す。

「ああっママ、虹! 虹が見えるよー」

少し興奮したような琴美の声に、思わず琴子も空を見上げる。

「本当だー。きれい!」

いつの間にか空の雨雲はゆるやかに流れていき、青空が垣間見え、4分の1の弧を描いた虹が空に薄く浮かんで見えていた。

「傘、閉じなきゃ……」

琴子が直樹の持っている傘の柄に手を掛けようとしたら、直樹がすぐに自ら閉じようと傘の上部の上はじきと呼ばれる部分に指を添えて、傘を斜めに傾ける。



「……?」

琴美は一瞬、おや? と思った。
一本の傘に入っていた両親が、傘を自分の方に傾けてその姿が見えなくなったのだ。
ほんのちょっとの時間のような気もしたけれど、少し長いような気もした。傘を閉じようと傾けた割りには、半分閉じられたまま、そのまま止まっている。

ーーと、思ったら、すうっと傘が閉じられて、隠れていた両親の姿がちゃんと現れてほっとする。
何故か母の顔が赤い。

「どうしたの? ママ? 顔が赤いよー」

「な、な、なんでもないわよ」

「ふーん?」

なんだかパパはにやにやしてる。こんなとき、たいていパパはママに何かイタズラしてるんだよねー。

琴美は内心思ったが、すぐに目の前の虹に心が向いた。
いつまでも見ていないとすぐに消えてしまいそうだ。

彼らの横をすーっと通り抜けた一台の自転車の、少しびしょ濡れな部活帰りらしい男子高校生が、妙に赤い顔をしていたことは誰も気がつかなかった。



「さあ……帰ろう」

閉じた傘を持って、彼らは家路に向かう。
消えそうで消えない虹の彼方へ向かって。

「夜、織姫と彦星会えそうだね」

「うんっよかったー!」


梅雨明けは、もうすぐ。
また暑い熱い夏がやって来るーー。







※※※※※※※※※※※※



終わりました~~
本当は、『八月はラムネ色』の直樹さん進化の歴史のように、一話でそのホップステップジャンプを表したかったんですが、三つの話を書き上げるのに梅雨が終わりそうな気がしたので、やむなく3話に分けました~~
そして、結局1週間以上かかり……三景目を七夕にアップすることも叶わず……orz
そして、何よりやっぱり7月から始めちゃ遅いよねーな、感じですっかり晴天続き。ありゃりゃな感じでございましたわ笑
今日はちょっと雨降ったし、明日もうち方面は雨そうなので、ま、いっかf(^^;


直樹さん、娘からは死角になってたけど、後方は全く無頓着……f(^^;
相変わらず人に見られても気にしない性格です笑

そして、琴美ちゃんの願いが叶えられるのは10年後だったりします……
うちでは翌年生まれるのは弟なので(^w^)






* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
* Comment : (13) * Trackback : (-) |

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

管理人のみ閲覧できます * by -

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪
リコメ、はちゃめちゃに遅くなってしまいました。スミマセン! 梅雨はとうに開けてしまいましたね~~f(^^;

そうなんですよねー。七夕の願いは定番といえど、うちではなかなか望みがかないません………10年待たなきゃならないって、織姫と彦星より忍耐強くならなきゃね。

ええ、丸め込むのは得意です笑
この設計図作りが成功したかどうかは…次の納涼祭りを待て、ですが(^w^)

ほんとに、あの時の直樹は「よう」って、なんなんでしょって感じですよね。
「迎えにきた」とはいってないから、傘一本でもアリなのか?
雨の光景は季節は違えど、二人をあの日に連れていく気がします。そうそう、思わずキスしたくなっちゃうんですよー♪

最後に直樹が傘を閉じながら、琴子にキス、そしてその向こうに琴美と虹ーーという挿し絵をいれたいと思いつつ、結局忙しくて描けませんでした……orzいつか、こっそり……

ちょっと構成にこだわってみた、この梅雨シリーズ、直樹の進化の過程とアマアマが描けて満足です笑

『八月……』は、私も気に入ってるお話なので、好きといってくださって嬉しいです。あんなお話がぽんぽん浮かんでくればいいんですがねぇ~~

コメントいただいてだいぶ日が経ってしまったので、もう体調は随分よくなったとは思いますが、暑い夏、十分ご自愛くださいね!


Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメ遅くなりましてスミマセンでした!

本当に、高校時代と思うと雲泥の差ですね~~だてに14年経ってませんね(^w^)
琴美が願うことは、すっかり定番ですがやっぱり『妹』なんですよね(*^^*)
その他の願い事エピはむじかくさまのお嬢さんのエピを拝借しました~~(^w^)

さて、七夕の夜の設計図作成……この願い事は叶うのか?
納涼祭りでそれは判明するのでした(^w^)

Re.ちょこましゅまろ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメものすごーく遅くなってスミマセンでした!

そう、入江くんの進化の歴史を雨と相合い傘で表してみました。
はい、反省してもらいましたよ。(実は10年後の結婚20周年でも謝らせているけど)どーにも、入江くんの平手打ちシーンは(嫉妬事件は特に)いただけません。うん、みんな怒ってますよね~~
はい、直樹さんの娘の琴美ちゃん、素材は賢いのですよ。年少組さんでもばっちり願い事書けます(^_^)

ふふ、傘の中のキス。見られてないようで見られてる。
ろちゅー全然平気な直樹さんでした♪
ほんっと尖ってた奴が随分角が取れて、まんまるになったもんだ笑

Re.mamynon様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメがはちゃめちゃに遅くなって申し訳なかったですm(__)m

梅雨シリーズ、情景が目に浮かぶといってくださって嬉しいです。かなり意識的に雨の風景を文章で描こうと頑張りましたので(^_^)
順番にLOVE度上昇、のつもりでしたが、つい2話目でラブラブ急上昇になってしまいました。アマアマ書きたかったんです~~f(^^;

きゅんきゅんしてもらえてよかったです。mamynon様も妄想がんがんしてイタキス愛を深めてくださいませ♪