2015.12.11 (Fri)

Hotto Mottoのkiss (むじかく様より)


イタズラなkiss期間2015


またまたむじかく様からお話をいただいてしまいました(^-^)v

タイトルを見てわかる通り、『Zutto Mottoのkiss』のパロディです。
いえいえ、パロディというよりは、しっかりうちのお話の続きのようでちょっとリレー小説ちっくなコラボです。
翌日の直樹目線のお話。
私の話が琴子目線の話なので、ちょうど繋がってる感じで。なので、カテゴリーは頂き物にいれましたが、イタキス期間のバナーも貼らせてもらいました。


できたてほっかほっかです、と先ほど届いたばかりなので、ほっかほっかですよー♪







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『26番ホーム 東京10:57発 博多行 ひかり110号 間もなく発車いたします・・・』

とうとう聞きたくなかった発車のアナウンスが耳に届く。

琴子は無理した笑顔で「あっ」と一言呟いた。

俺はとうとう来たかと覚悟を決め「じゃあな」といつもの顔、いつもの声で挨拶をする。

まるで何事もなく、また明日会えるかの様に・・・。

琴子も「う・・・うん」と言って小さく頷いた。

そう、俺達は別れない。これはただの・・・ただの試練だ。

ちょっとした我慢比べみたいなもの。

でも、我慢比べに弱すぎる琴子は「着いたら電話してね」だの「お弁当食べてね」だの「寝過ごさないでね」だの矢継ぎ早に口を開いては余計な心配をする。

お前じゃねーんだから失敗するかよ。

いつまでも声をかけ続ける琴子に、実は乗り遅れさせて行かせない魂胆か!?と勘ぐって「もう行ってもいいか!?」と声をかけてしまった。

琴子は「う・・・うん」と言いながら、まだグズグズし、挙句の果てに「お、お別れのキスしてもいーよ」と言って来た。

お前・・・kissどころか朝まで寝かせてもらえなかったのに、まだ言うか!?と聞きたくなる。

しかもお別れって何だよ。

こっちは別れじゃないと言い聞かせているのに・・・kissなんかするか。

その代わりに耳に囁く。

「感動の再会まで我慢しておく」と。

今ここでkissなんかしたら手放せない。

だから朝起きれないくらい抱いたのに・・・お前はこうして意地でも見送りにくるんだからな。

本当、恐れ入る。

その調子で俺と一緒に働く為に勉強頑張れよ。

『間もなくドアが閉まります』

そう言われてとうとう新幹線に乗り込んだが、ドアの前を陣取って琴子の顔を目に焼き付ける。

「あ・・・」と声を漏らす琴子に「勉強頑張れよ」と声をかけ、「じゃあな」と最後の挨拶をした。

ドアが閉まりゆっくり動き出す新幹線を琴子が追いながら・・・とうとう最後に涙を流した顔を見る。

平気な訳がない。琴子はいつ来るだろうか!?

本当は俺ですら連れて行こうかと迷ったんだから、お前が我慢できるはずないと分かっていた。

それでも・・・俺は琴子の強さを信じているから・・・。

琴子の色んな顔を思い出しながら、新幹線の指定席に座り過行く東京の景色を眺めた。


そういつまでも干渉に浸るのもガラじゃないので、荷物の中から医学書を取り出そうとして気づいた。

弁当・・・。

新幹線内で食べると言ったが、無理だと気づく。

開ける前から臭いが・・・。

お前、毎度毎度作っているものが弁当だと何故気付かない??

俺はサッと医学書を取り出すと、手早くボストンバッグのファスナーを閉める。

そして医学書を開く前に今日の手順を確認した。

まず駅についたらお茶とブレスケアを買おう。

それから部屋の水道を確認して、窓を開けながら弁当を食う必要があるなと段取りを頭の中で組み立てた。

洗濯機は・・・急いで取り付けないとな。

全く・・・少しの時間だけバッグに詰めておいたのに、こんなに強烈な臭気を放つとはお前一体何を仕込んだんだ??

きっとバッグの中はしばらく使い物にならないだろうと思いながら、タンスにボンを部屋中に吊るしたら何とかなるだろうか!?と早くも実験を試みたくなる。

衣服へのスプレー式消臭剤があると良いのだが・・・(その2年後に発売されるとは当時の直樹は知りようがなかった)

一応掃除用具を買う名目でドラッグストアーを覗いてみる事も視野に入れつつ、早く神戸に着く事を願った俺だった。


3時間少々で着いた時、まず俺がした事はボストンバッグから臭いが漏れてないかの確認だった。

サッと荷物を持ち、脇目も振らずに改札へまっしぐら。

駅構内で売店を探してお茶とブレスケアを買うと新居へ急いだ。

早く・・・早く・・・この弁当をバッグから出さなければ。

契約の折一度だけ足を運んだ新居の鍵を開け、すぐに荷物を紐解く。

バッグの中から即弁当を取り出してキッチンに置き、その他のにおいを確認しながら布団が敷かれていないベッドの上に荷物を並べた。

次、弁当を渡された時はどんなに臭いが大丈夫でも、とりあえずビニール袋で3重に包もうと思う。

しかし・・・朝まで確実に離さなかったという自覚はあるのに・・・あいつは一体どうやってこの弁当を作ったんだか。

その根性と心意気にビックリするやら、嬉しいやら・・・の他に、確実に困惑が含まれているが(決して迷惑ではないと言い聞かせる)それを無視して弁当の蓋を開けた俺。

ああ、やっぱり・・・。

何をどうしたのか真っ黒なから揚げと茶色い玉子焼きらしきものが入っている。

まずハンカチを尻ポケットから出し、シンクの蛇口を捻って水を出す。

しばらくその水を見つめた後、おもむろに手を洗った。

冷たい・・・。

今ここに琴子が居たら・・・なんていう俺らしくもない感傷に浸りながら素早く手を洗い、ハンカチで手を拭き、弁当を前に手を合わせる。

まるで神聖な儀式をしている様で自分でおかしい気持ちになる。

一応「いただきます」と声に出してから箸で玉子焼きを持ち上げた。

まず米に逃げても良かったのだが、米は最後の砦・・・ではなく、やはり琴子の手料理を最初に味わいたかったから。

このカマボコの様にかなり弾力のある物体を噛みしめながら、琴子の作品だなという感想を抱く。

ザリザリとした甘さの中に確実に来る苦味。そして期待するまでもなくガリッと歯ごたえのある触感・・・今日も当たり付きだ。

どこまでも舌触りの悪いそれを胃に収めながら、そう言えば胃薬を持参しなかった事を思い出す。

まあ、きっと大丈夫だろう。

次に憩いの米を口に運んでからメインだろう屈強なから揚げに挑む。

ガブリ・・・と噛んでみたものの、その先に歯が届かず一度口を外した。

俺の歯形ってこうなんだなとから揚げを見つめてから攻略法を考える。

サバイバルナイフを常備しておくべきだったかと後悔しながら、何とか箸で割ろうとしたらバキッとプラスチック製の箸が折れた。

成程・・・。

長さが不ぞろいな箸を器用に使いながら、俺はから揚げをチビチビやりつつ、他のおかずと米を口に運ぶ。

野菜も肉も玉子もきちんと入っているから、栄養的には悪くない。

問題は見た目と味だった。それもまあ、慣れているので問題ない。

俺は食べ終えてブレスケアを飲みながら、この弁当の改善点を考えた。

・・・今日はいうつもりもないが。後で箸だけは買って来ようと思いつつ、プラスチックの箸をさっそくゴミ袋に捨てる。

ノルマの弁当も食べ終えたから、と実家に電話をすれば琴子は疲れて眠っているという事だった。

想定内・・・でも、せっかく食べた弁当の感想を言いそびれて少し歯がゆい気分を味わう。

お前の喜ぶ顔・・・じゃなく、声が聴きたかったと思う俺に、電話を取ったおふくろが言う。

「琴子ちゃんの愛妻弁当は全部食べたんでしょうね。朝から張り切って一人で作ってたんだから、捨てたりしたら承知しないわよ」だと。

知ってたんなら止めろよっっっっっ

良い感じに風が吹きすさぶ室内で微動だにしない俺は返事をする。

「さっき食った」とだけ。

「琴子に宜しく伝えてくれ」と言って電話を切り、無駄にエネルギーを付けた俺は今日一日で全ての引越し作業を終えたのだった。


夕方になり、いくら時間が出来たといっても引越し初日から自炊する気にもなれず、必要な物も買い足しに神戸の街を歩く俺。

フラッと入ったドラッグストアでいの一番に見たのは他ならぬ胃薬だった。

手に取りながら「当分必要ないな」と棚に戻す。

あれから3時間が経過するが、俺はピンピンしているのだから。

実家から持って来た歯ブラシや洗面道具はあったが、裕樹と共同で使っていたシャンプーなどは持ってくる訳にいかずここで買う事にする。

大学生の時以来買っていなかった食器洗剤やティッシュなどもカゴに入れる。

ティッシュを買いながらそういえば・・・とある棚にも足を運んだ。

俺のサイズはあったが、残念ながら使う相手がいない。

今度・・・琴子が来たら買おうと心に決めてレジにカゴを置き、会計をして店を出る。

すると『ほっかほっか亭』なるノボリが目に飛び込んできた。

琴子の弁当は冷めていても強烈だったが・・・弁当は温かい方が上手いに決まっている。

今日の夕食はここに決め、幕ノ内弁当を頼む。

注文を受けた店員が俺の標準語に驚いた顔をしたので、やっぱりここは関西なんだと思い知る。

隣に琴子が居たら、たかが弁当を頼むこの店の店員とのやり取りにも割って入った事だろう。

それを想像し・・・騒がしい日常が少しだけ恋しくなった。

勝手に味噌汁をサービスされ、また来てくださいと言われるが家からそこまで近い訳でもなく、太陽が沈むどころか月が沈む時間に家に帰られたら御の字の俺には日常ではなさそうな店。

心の中で『いつかね・・・』と返事をし、琴子と来る日を想像する。

来年は一緒に来て、無駄に琴子が店員に噛みつく事を想像すると胸が躍った。

今度味噌汁を付けるのは俺かな、琴子と俺の分・・・。

などと考えながら家に着き、さっそく留守電のメッセージボタンが光っているのを見つけた俺。

すぐに再生すると、電話越しながら懐かしい琴子の声。

ずっと待っているから電話が欲しいと言い、電話前に陣取って動かないと脅迫されたら掛けざるを得ない。

俺はすぐに自宅へ電話をかけた。

かけて早速弁当の話をされ、きちんと食った事を報告させられる。そして今日の夕食の心配をされたので「お前の危険な弁当より安全かつほかほかな弁当の店が近くにあるから」と言うと、泣かれる。

喧嘩したい訳じゃない・・・こんな遠距離で・・・。

だから「今日買った弁当が冷めないうちに食いたいから、切るぞ。・・・次はこれに負けない弁当を期待してるから、腕上げてから来い」と言い、琴子の「分かった」と明るい返事を聞いてから電話を切った。

「分かった・・・か」

きっと分かってないと思う。

俺は温かくても食べられる味でも、琴子の作った危険極まりない弁当の蓋を開ける方が高揚感があるのだから。

そして悪態つきながらきっと食うんだろうと思う。

その時は・・・今日買わなかった二つの箱を、確実に買っているだろうと思いながら。





それから15年の時が経ち、俺は神戸に赴任してから1年後斗南大学病院に戻って、今は教授となり、琴子は斗南大学病院で念願の看護師として働きながら子供二人を育てる兼業主婦になっている。

あの1年の神戸生活は懐かしいなんて生易しい表現は出来ないが、あって然るべき期間だったと思う。

こうして琴子が約束通り1年で看護師資格を取り、俺と共に働き、たくさんの仲間に巡りあい・・・子供も二人持てた上に神戸時代の伝手から子供の命を守る事が出来ている。

出張で久しぶりに神戸の街を訪れた俺は、かつて散策と掃除用具を買う為に歩いた道を歩きながら、そこに懐かしい弁当屋さんがある事に気付く。

あの時はほっかほっか亭だったのに・・・今はHottoMottoという名称に代わって、でも変わらずに温かい弁当を提供している様だ。

気まぐれを起こしてその店に入り、かつて頼んだ幕ノ内弁当を頼む。

そして今度は温かい缶コーヒーかお茶がサービスと言われてお茶をもらった。

その弁当を持ちながら昔神戸に来た時とは逆に東京へトンボ返りする。

琴子と子供の待つ東京へ・・・

今や携帯電話が普及して、俺の手元にもそれがある。

携帯電話に着信とメールがある事を表示されていた。

俺はクスッと笑いながらそれを開くと、どちらも家からでメールには写真が添付されていた。

『パパへ 早く帰って来ないとママが寝ちゃうからね』という文面と、琴子のうたた寝の姿・・・の前でピースしている2人の子供が写っている写真。

俺はそれに返信する。

『弁当を買って新幹線車内で食べる事にしたから、お前たちは早く寝なさい』と。

きっと琴美は気付くだろう・・・お前たちに琴子が含まれない事を。

来年辺りにもう一人増えたらいいなと思いながら、俺は帰ったら即琴子を食おうと新幹線の車内でHottoMottoの弁当の蓋を開けた。








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イタキス期間のお題を上げた時から『ずっともっと』を『ほっともっと』に変換したネタいいですかー?とむじかく様からメールいただいて。思わずこのタイトル、何かに似ている、と思っていたので、そーかー『ほっともっと』 かーと思わずスッキリした私です。

そして、しっかりうちの設定に繋げていただきました。
プレスケア必須の爆裂弁当は夏休みにも登場しますしね。
20th anniversaryのうちの未来設定も使っていただいて嬉しいです♪3人目作る気満々ですね(うちは2014年に次女琴梨ちゃんが生まれてます)




むじかく様、毎度毎度ありがとうございます(^-^)/感謝感激、北に足を向けて眠れませんわー











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2015.11.30 (Mon)

バカップルはBarにいる。(むじかく様より)


きゃー♪
前の記事でむじかく様のお話のパロディを書きましたら、なんと!! むじかく様からソッコー「『木婚式の夜に』の第三者目線のお話書いていいですか?」と、まさかのパロディ返し!
しかも相変わらず早い!
メールやりとりした2~3時間後には送られてました(真夜中丑三つ時に)

気になりつつもすっ飛ばしたバーでの他のお客さんの様子……むじかく様得意の第三者目線での突っ込み炸裂です♪
こんな拙作に妄想していただいてめっちゃ嬉しいです(^o^)

アップしてOKと許可を頂きましたので、アップさせていただきます(^w^)
これを一人で楽しむのは勿体ない♪

というわけで、むじかく流『木婚式の夜に』サイドストーリィを続きからどうぞ。





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昨年、このホテルで挙式をして今日が1年目の結婚記念日・・・の前夜。

偶然にも21日の今日が土曜日、22日の結婚記念日が日曜日、その翌日も勤労感謝の日で祝日と3連休なので、少し奮発してこのホテルに泊まりに来た俺達。

まだ1年目という事もあって、目の前の妻ともラブラブ。

このまま来年も再来年も10年後だって、こういう風にいつまでも過ごせたらいいねなんて甘い事を語って居た時に、一人の女性がこのバーを訪れた。

そんな事を言いながら早ければ来年には子供が欲しいかな・・・なんて、今日励んじゃおうかという心の声をその女性に聞かれたくなくて、口を閉ざした俺。

妻からはテーブルの下で足を蹴られ「あの女性に浮気しないでよ」なんて可愛い嫉妬を受ける。

「こんなに綺麗な奥さんが居るのに、浮気なんかしないよ」と歯が浮くセリフを口にしながらもあの女性の視線を感じてやはり見てしまう。

妻も気にしている様で、二人で彼女を見ると「いいえっ 後から連れが来ます」と割と大きな声で言っているのが聞こえてきた。

なんだ、相手がいるじゃん。

少し安心して妻とまた会話を始める。

「そろそろ結婚記念日に相応しいカクテルでも飲もうか」

俺がそう声をかけると妻も喜んでメニュー表に目を通す。

このメニュー表に乗っているのは代表的なカクテルだけで、今日の自分達の気分やイメージを伝えると、そのイメージに沿ったバーテンオリジナルのカクテルを作ってくれるのがここの売りだ。

結婚式の打ち合わせの後とか、何度かここのバーを利用しているのでその説明は既に受けている。

でもそんなにカクテルに詳しい訳じゃなく、バーテンと会話できる様な席でもないから、一般的な日本人としてはメニュー表から頼みたいと思ってしまうけど。

「ねぇ、やっぱり結婚記念日に相応しいカクテルだからピンク色のが飲みたくない!?」

そう妻に問われるが、俺は特に甘い飲み物は好きではなく、酒ならグビグビと飲めるビールみたいのが好きだ。

なかなか、そうだねと相槌を打つ勇気がない。

そうこうしている内に、件の彼女も結婚記念日らしくバーテンに結婚記念日だと明るい声で語っているのが聞こえて来た。

成程な、だから『連れ』で後から来るのか。

妻と二人でそっちに注目していたら、優しそうな色合いのカクテルを提供されているのが見えた。

俺が「あれ、良さそうじゃない!?」と妻に言うと、妻も頷く。

近くのボーイを呼んで「あそこの彼女が飲んでいるカクテルの名前を知りたいんですが・・・」と俺が頼むと、妻が「あの人が飲んでいるカクテルを2つください。主人と乾杯したいので」とあっさり注文してしまった。

「全く・・・君には敵わないよ」

俺は自嘲的に妻にそう告白した。


しかし時計はまだ23時。俺達の結婚記念日には後1時間ある。

「まだ結婚記念日には1時間早いよ」と苦笑しながら言うと、妻も「あら、本当だわ」と困った顔をする。

カクテルは度数が高いから酔いやすい。

あれを飲んで帰ろうと言うならいいけど、そうじゃないならもう1杯は必要そうだった。

妻はまた近くのボーイを呼んで「さっきのカクテル取り消し」と堂々と頼んでいる。

思わず「おいおいっ」ってツッコミしてしまった。

「だって、やっぱり記念日に乾杯したいんだもの」と言われて後1時間粘る事にした。

そしてそのカクテルの名前は「ホワイトローズ」で、意外と度数が高い事も分かった。

今飲むと1時間も粘れなさそうだ。

取り消す代わりに別な注文として、妻にシンデレラというノンアルコールカクテルと、俺にクーニャンという桃の酒のウーロン茶割を頼む。

クーニャンというのは中国語で『娘』という意味。

俺は目の前にいる綺麗な妻よりも、カウンターで一人飲んでいる彼女に似合いそうな酒をつい注文していた。

そして俺達の注文のカクテルがテーブルに届いた頃、事態は急展開してて、彼女は酔っ払ってある男性に暴言を吐いていた。

さっきから彼女の声が聞こえてくるから、こういう場には慣れてないんだろうとは思っていたけど・・・正直酔っ払って男の人に噛みつく彼女に幻滅してしまう。

それでも彼女の良いところは、ご主人を悪く言わない・・・事??

ひりえくん??

待ってるのは確か主人って言ってたよな。

ひりえくんって・・・あだ名か??

急に何かなぞなぞめいて、しかも大声で怒鳴っているから注目しない方が無理だ。

「ひりえくんわーめっちゃつまる男なんですぅーー」

それを聞いた瞬間、妻と噴いた。

二人して咳き込む。

つまる男ってなんだよっ

そんな事を思ってたら、ドアがパーンと開いてキラッキラの美形が登場した。

うわっ ドラマの様な展開か!?

その男がわき目も振らずに彼女の元へ猛スピードで行く。

この先はどうなるのかと固唾を飲んで見守ったら、またとんでもない光景が目に飛び込んできた。

「あにすんのよぉーー!!」

「ぎええええっ」

正直、何が起こったのか分からなかった。

俺の目が・・・脳が・・・今の光景を言葉にする事を拒否している。

ただ茫然と・・・あの男、痛そうだなと思って自分の大事なところを隠した。

彼女に手を出さなくて良かった。

じゃないとこれから妻を抱けそうにないから。

何となく頭でそう考えたが、この壮絶な顛末を見ずに席を立つなんて考えられない。

俺達は椅子に縫い付けられた様にそこから動けなかった。


彼女は自分にkissするんじゃないと怒って『ひりえくん』しかダメなんだと言う。

俺はその『ひりえくん』とやらを見つめた。

するとまた彼女がその男以外とkissしていたと叫びだす。

さっきまで無表情に彼女と間男を見つめていた男の眉間にしわが寄った。

美形なだけにそれだけで迫力がある。

「琴子」と、その男は奥さんを呼ぶ。

奥さんはその男を見つけて嬉しそうにほほ笑んだかと思ったら、すぐに泣きだし男の胸を叩きながら懺悔(?)した。

「理加ひゃんとキスしてたぁーああ、なんてことなの~~~」

「はあ??」

思わず声を上げてしまい、慌てて口を閉ざす。

旦那も慰めている様で「ノーカウント」という言葉を聞いて、俺はホッとすると同時に緊張が解けて噴きそうになってしまった。

グッと歯を食いしばり耐えると、机が揺れている。

ん!?と思って妻を見ると机に突っ伏して声を殺して笑っていた。

そしてまたそのバカップルは「ひりえくんも理加ひゃんとのキスはノーカウントだよーー?」「ああ」なるやり取りをしている。

何なんだよ、この罰ゲームは!!

笑いたい、笑えない・・・机に置いているクーニャンまで俺らの振動でカタカタと震えている。

どーでもいいが、リカひゃんとやら。二人とkissしてんのな。

5歳くらいの子供か!? それともやっぱり人形なのか??

なんて考えてたら、その奥さん脱ぎそうになってて、さすがに旦那さんが止めて・・・うわっ凄んでいる。

「貴様……琴子に、何を飲ませた?」

そんなセリフ・・・ドラマ、そうドラマだよ。

笑って悪かった。カメラはどこだ??

急に笑いが収まり、酔いも冷めてキョロキョロと挙動不審にカメラを目で探す。

ボーイは俺が呼んでいると勘違いしたのか側に寄ってきた。

仕方がないので「撮影ですか!?」と聞いたら、声を出さずに首を横に振って返事をした。

じゃあ・・・目の前で行われているこれって・・・本当の事か!?

け、け、け、警察?? ちょ・・・ヤバいんじゃね??

急ぎで帰りたかったけれど、今度は恐怖で足が動かない。

何かあの奥さんクスリ盛られたって・・・そりゃヤバイよな。

そう思いつつも、目が離せなくて見て居たら相手の男が這うように逃げ出した。

名前は知らないけど悪役の方。ひりえくんじゃない方って事だけど。

奥さんは解決したと分かったのか部屋へ行こうと旦那を誘う。

「お部屋いってぇーーえっちしよーー」

それを聞いた俺の方が赤くなった。

それって・・・と思ったら、更に旦那が輪をかけて凄かった。

「あたりまえだ。せっかくの記念日、しないでどーする」

当たり前・・・当たり前・・・当たり前・・・俺の頭の中でセリフがグルグル回ってる。

しかも俵担ぎで奥さん引き取って帰っていった。

強者だ。。。

これから・・・いっぱいエッチするんだろうなー。

そう思いつつも、決して羨ましいという感想は湧かないのだけど。

ふと時計を見るとその騒ぎで日付を更新し、更に1時間ほど時計の針が進んでしまっていた。

「か、乾杯・・・しよ」

俺がそう声をかけると妻も「そ、そ・・・うね」とぎこちなく手元にあるカクテルグラスを手に持つ。

俺もすっかり氷が解けてしまって水嵩が増したクーニャンのグラスをかかげて静かにグラスを合わせた。

チッと微かな音がすると同時に誰かが噴き出し、俺達もグラスを持ったまま噴き出した。

もちろんグラスの中身が笑いの振動でこぼれ、笑っているから口にも運べない。

結局グラスを置いて、気のすむまで妻と爆笑するしかなかった。

そして乾杯から10分後、喉の渇きを潤す為だけに飲み残していたカクテルを飲んだのだった。


とんだ結婚記念日の思い出・・・しかし、一生忘れそうもない思い出にもなった。

それがきっかけで俺達に子供が出来たのだから。

いっぱいエッチしたお陰・・・とは、子供には言えないけどな。







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むじかく様、本当にありがとうございました♪
むじかく様からのコメントにもあったのですが、この夫婦が斗南の小児科にかかって再びバカップルに再会~~ってのもありそうですね(^w^)


22:22  |  頂き物  |  コメント(8)
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