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個別記事の管理2014-12-25 (Thu)



『カノユメ』の続きではなく、ごめんなさいm(__)m
一応季節ネタで(^^;

琴美ちゃん0歳のクリスマスの夜のお話です。




※※※※※※※※※※※※※







「こっちゃん、サンタクロースって信じてる?」

はなちゃんがあたしの顔を覗きこんでそう訊ねた。

信じてるーーそう言いたいけれど、残念ながら3年生のクリスマスの夜、たまたま目が覚めて、お父さんがそおっとプレゼントを枕元に置くのを見てしまっていた。何となくわかってはいたんだけどね。だって、お父さん、サンタクロースに頼んだプレゼントが何かを訊きだすのが毎年とっても下手くそでもろばれなんだもん。

「……うーんうちは……」

「いるよ! 絶対いる!」

云いかけたあたしの言葉を奪いとって
無理矢理話に割り込んできたのはミキちゃんだ。

「あたしねぇ、毎年おねえちゃんと一緒にサンタさんが来るの布団の中で待ってるの。でも、必ずサンタさんが来る直前に眠くなっちゃって……何か魔法みたいの仕掛けてるのよね、きっと。朝起きると間違いなくお願いしたプレゼントが枕元にあるの」

きらきらと瞳を輝かせて語るミキちゃんに、はなちゃんはただひとこと。
「ばっかじゃないの? 5年生にもなって」

うっ……はなちゃん、きつい。

「な、なによーはなちゃんのイジワルー。絶対、絶対本当にいるんだからね」

ふんっと鼻を鳴らして呆れたような瞳でミキちゃんを見つめるはなちゃん。でもそれ以上何も云わなかった。

ただミキちゃんが行ってしまった後で、ぽつりとあたしに話してくれた。

「あたしなんてサンタクロースの存在を信じたことなんて一度もないもん。あたしのうちなんて完全そんなイベント無視だよ」

確かはなちゃんちもあたしと一緒でお母さんが居ないって聞いたことがある。
でもお父さんは仕事で出張ばかりで、とても厳しいお祖父さんとお祖母さんに育てられているって。

「すっごく幸せだよね、ミキちゃんって。この年でサンタクロース信じられるなんて、ほんっと、馬鹿みたいに幸せってことだよね」

そういうはなちゃんの顔は随分寂しそうだった。

「こっちゃんは……信じてるの?」

「あたしは……」

何と言うべきか一瞬迷った。自分と同じお母さんが居ない者同士で同じ答えを求めているんじゃないかと……そんな気がして。
でも。

「3年生までは何となく信じてたかな?」

本当のことを言った。

「そっか……」

はなちゃんはふんわりと笑った。



6年生になってからははなちゃんとはクラスが離れて余り話すことはなかった。
ただ卒業式の日に配られた文集を見て、はっとあのクリスマスの日の何気ない会話を思い出していた。


『将来の目標』

自分の子供にサンタクロースの存在をいつまで信じさせられるか、挑戦してみたい。





はなちゃんの書いた一言が妙に心の中に残って………ずうっと残ってて。
はなちゃんにとって、それはあたしの書いた『素敵な王子様みたいな人と結婚して幸せな家庭を作りたい』とほぼ同義語なんじゃないかという気がしてーー。


はなちゃんは今どうしてるのかな?
お母さんになって、子供たちにサンタクロースの存在を信じさせているのかな?
………そうだといいな……。






* * *






直樹が自宅に帰りついた時、既に日付が変わっていた。
リビングの扉を開けると、真っ暗な部屋の中に、ライトを消し忘れたらしいX'masツリーが、部屋の片隅でひとりぼっちで点滅を繰り返している。ブルーとシルバーで統一されたオーナメントに彩られたツリーは数週間前に紀子と琴子が飾り付けたものだ。

「来年は琴美ちゃんが喜びそうな可愛らしいオーナメント買ってきましょうね」

「きっと、来年はいたずらしちゃうから置場所考えなきなゃ、ですね」

そんな会話をしながら嫁と姑は和気あいあいと飾り付けていたのを思い出す。

直樹は部屋の灯りを点けてから、ツリーのライトのコンセントを抜いた。

「なんじゃこりゃ」

明るくなったリビングは、パーティーの残骸とでもいうのか、随分と散らかったままだった。
ダイニングテーブルにはワインやシャンパンの瓶が何本も並び、テレビにはゲームのコードが繋がれたままだ。
トランプやUNOといったカードゲームもリビングテープルの上に広げられたままだし、菓子器の中に御菓子がてんこ盛りに入っている。
パーティーゲームの箱が部屋の片隅に積み上げられていた。
片付ける気力もなくなるほど、盛り上がって騒いでいたということか。

キッチンに行って水を一杯飲む。
辛うじて洗い物は食洗機に投入したようで、入りきらなかった大皿やグラスがラックに並んでいた。
冷蔵庫の中にはチキンやポテトやピザの乗ったお皿にラップがかけられ、『良かったら温めて食べてね』とメモが貼られてある。



「あれ、兄貴、今帰ったの?」

風呂上がりらしい裕樹がパジャマ姿でキッチンにやって来た。
いつのまにか『お兄ちゃん』から『兄貴』へと変貌した呼び方に、今だ妙なくすぐったさを感じる。

「ああ、おまえこそ、今頃風呂か?」

「うん、好美を送ってったらこんな時間になっちゃって」

「ああ………」

もう大学生にもなるのにクリスマスイヴの夜に彼女と家族のパーティに参加して、律儀に門限までに送っていくのが実に裕樹らしいと思う。

「いいのか? 二人っきりでホテルとかで過ごさなくて」

「え? え? だって、明日はバイトだし」


明日は月曜で平日だが、学生はもう冬休みだ。恐らく日本中のホテルが今夜は満室御礼だろう。どういうわけか日本ではイヴの夜はカップル同士はそうやって過ごすものだという奇妙な風習がある。
だが、このウブな弟は顔を真っ赤にして慌てて弁明している。

「好美がケーキ屋でサンタの衣装着て外売りするバイトなんか入れたから」

「そりゃ、おまえも横で見張ってなきゃな」

ぷぷっと吹き出しながら、
「でも来年は彼女がバイト入れる前にホテル予約しといた方がいいぞ」
と、進言してやる。

「お、おにーちゃんに言われたくないよっ!」

全くだ。
それに『おにーちゃん』に戻ってるし。

「こ、琴子、ずっと携帯見てはため息ついてたよっ」

意趣返しのように告げてみる。

「今日は緊急オペの患者の術後が不安な状態って話はしてあるよ」

「うん、それは聴いてるけど……もう大丈夫なの?」

「ああ、安定した」

「良かったね。琴子もそれを心配してた」

「そうか」

「早く行けば? 多分部屋で待ってるよ」

「どうかな? 寝てるんじゃないか?」





夫婦の寝室のドアをそっと開ける。琴子も琴美も眠っているだろうと考えていたが、部屋の電気は煌々と点いていた。

「……………!」

琴子は眠っていた。
ベッドの真ん中で、身体を横にして、まだ生後三ヶ月の琴美を抱えるように。
ただ、パジャマの前ボタンを外し胸をはだけて、そして琴美はその胸に張り付いている。

寝ながら授乳していたのか、授乳していて眠ってしまったのか……。

「……器用な技を習得したな……」

琴美もおっぱいを飲みながら眠ってしまったのか、口に含んではいるが全然動いていない。
直樹はそぉっと琴美を琴子から離そうと手を触れた。
すると、はっとしたようにぴくりと一瞬動いた琴美は唇を動かして再び吸いだした。

「………おい、まだ食事中だったのかよ」

そして、琴子もまだ起きない。

つんつんとはだけたままの胸を突っついてみる。
いつも右、左の順番で授乳して、今琴美は左の胸にむしゃぶり付いているから、右の胸の授乳は終わっているのだろう。
空いている方の右の胸をやわやわと揉んでみる。授乳が済んでいるせいか、適度な弾力だ。授乳前のパンパンに張った胸は大きいけれど、なんだか自分のモノではない気がして、琴美のモノを横取りしている気がして、触れるのが躊躇われる。

直樹はそのまま自分もベッドに横たわり、肘を付いて妻と娘の様子を眺めていた。

琴美は時折ちゅぱちゅぱ口を動かしているが、殆ど寝ているようだ。
眠ったかなと思い、ベビーベッドに戻そうと触れた途端に、また吸いだす。
それを三回くらい繰り返した。

「……おまえ、オヤジを翻弄しているのか?」

いい加減、ママを返してくれ……と内心ため息をついていたら、今度こそ漸く落ちたのか、琴美の小さな唇が琴子の胸の先端から完全に離れた。
そおっと琴美の背中に手を入れて、ゆっくりと抱き上げる。


ベビーベッドに寝かせた時、軽く身じろいでどきっとしたが、何とか眼を覚まさずにすんだようだ。布団をかけてやり、暫く娘の寝顔を眺める。ついそのふくふくした赤い頬っぺたを突っつきたくなる衝動を辛うじて押さえる。これだけ寝付けば起きないだろうが安心はできない。

自分達のベッドに戻ると、琴子は寝返りをうって、パジャマのボタン全開のまま胸をはだけて大の字になっていた。

「……おまえ、大胆すぎ」

そして、まだ起きない。
少し前まで、琴美の微かな泣き声一つでぴくりと反応して飛び起きていたのに。

何にしろ、起きてくれないのはつまらない。日付は変わったものの、人がせっかくイヴの夜に帰ってきたというのに。
とりあえずイヴということで思い出して、鞄の中から包装された長細い箱を取り出す。自分でさっさとリボンをほどいて包装を破り、初めて誕生日にプレゼントをした日のように、それをそっと付けてやる。

しかしその一連の動作の中でも琴子は目を覚ます気配がない。

鼻を摘まんで起こそうかとした時。

「…………………!」

琴子の目尻から、つうっと一筋涙が流れた。

「…………はな……ちゃん」


ーー誰だろう? 直樹は首を傾げた。
お喋りな琴子からは常に知り合った色々な名前を聴かされているが、『はなちゃん』には聞き覚えがない。
しかし確実に女の名前でよかった。
これが『ユウちゃん』だの『ケイちゃん
』だの、男女どっちとも取れる名前だと暫く悩むことになるのは必至だ。
だが男であれ、女であれ、自分の妻の夢に勝手に出演し涙を流させるとは、少しばかり許せない気もする。

「琴子、琴子」

直樹は琴子の頬に一筋流れた涙を自らの唇で拭いとってから、唇にキスを落として名前を呼ぶ。

「う……ん……」

やっと目覚めたらしい琴子の首筋に顔を埋め、既に開け放たれているパジャマを肩から外して、手はもちろん先程まで娘に奪われていた胸をさまよい始めている。

「え……? 入江くん……?」

完全に目を覚ましたものの、今一つ状況が把握出来ずにいる琴子は、身体を起こそうとして、すぐにそれが叶わないことを思い知る。直樹にのしかかられて身動きができないのだ。

「……あれ……琴美は……?」

「ベッドに連れてった」

「え……やだ…あたし寝ちゃってた?」

「爆睡してたな」

「え……うそ、なんで……あっ………ダメ」

先程まで琴美に吸い付かれていた筈の胸に直樹が吸い付いているーー。

「入江くん、いつの間にかえ………あ…あん」

「おまえ、せっかくイヴの夜に帰って来たのに寝落ちしてんだもんなー」

「ご、ごめ……あ、クリスマスプレゼント……!」

「いい。今もらってる」

「え? でも……そんな……あ、だめ……ああ~!!」

そして琴子から発せられる声は、しばらく全く意味のなさない音ばかり奏で始めたのであるーー。








「クリスマスプレゼント、書斎の机の上に置いてあるから……」

直樹の腕の中で、琴子は少し身をよじって書斎の扉の方を見つめる。
ちゃんと手渡してあげたいのに、しっかり抱き締められて身動きがとれない。それに互いに生まれたままの姿だ。

「朝になったら貰うよ」

「今年はブリーフケースにしたの。出張が多くなってきたし、そろそろ新しいものをと思って」

「それは助かる」

そういいながらも直樹の手はまだ琴子の胸をしっかり覆っている。

「それと…これ、ありがと……」

去年の誕生日以来、直樹はマメにプレゼントを贈ってくれるようになった。逆に無理をさせてしまっているのではないかと不安になったりするが、それでもプレゼントを選んでいる間自分のことを考えてくれているのかと思うとそれだけで天にも登りそうなくらい嬉しい。

「パールのネックレス……」

さすがに抱かれている間に感じた首筋の違和感に、琴子はいつの間にか自分の首にネックレスが付けられていることに気がついたが、そのことを言及する余裕など最中には全くなかった。

「気に入った?」

紀子から幾つか冠婚葬祭用のものを貰っていたのは知っているが、カジュアルにもフォーマルにも使えるチョーカーレングスはなかったと思い、琴子に似合いそうなピンクパールを選んだ。

「うん、凄く嬉しいよ。似合う? あたしにパールなんて……」

「……なんか裸に真珠のチョーカーって……エロいな」

「え? やんっ////」

「首輪みたい」

「えー………」

「なんか凄くおれのものって感じ」

「…………!!」

「と、いうわけでもう1回、いい?」



ーーそして、2回戦突入……








「何、外しちゃうの?」

自分で直樹からのプレゼントを首から外してサイドテーブルに置いた琴子に、直樹がつまらなそうに囁く。

「……だって……汗とか付いたらダメでしょう? それに髪の毛に絡まっちゃって… 」

言い訳っぽく琴子が弁明する。これを付けていたら直樹が際限なくなりそう……とは云えない。云ったら余計に面白がって加減をしなくなるだろうから。

「そ、それよりね」

そしてとりあえず話題を変えようと話を振る。抱き合うのも嬉しいけれど、話したいことも沢山あるのだ。

「瞬くんの手術は上手くいったんだよね?」

直樹が緊急オペをした少年は、琴子が病棟勤務をしていた時から入退院を繰り返していた子供だ。

「ああ、もう大丈夫だ」

「……よかった」

「クリスマス会までは元気に参加してたのにな」

3日ほど前院内で恒例行事のクリスマス会があった。毎年琴子と幹が仕切っていたが、今年は琴子が育休中の為に、幹は他の病棟の真理奈や智子を巻き込んで準備していた。三人が琴子と琴美のツーショットの動画をとってクリスマス会で流すからと入江家に来たのは先週のことだった。

「琴美が可愛いって凄く受けてたぞ」

「ほんと?」

「目を覚ました瞬くんからも、可愛いから元気になったら嫁にくれと云われたが……」

「え?」

「悪いがそれは無理だと伝えておいた」

「えー? 大手術を終えて生還したばかりの子供に、そんなことを?」

………容赦ない。

「もっと元気になるから手近なところで選んでないで、積極的に出会いを求めていけ、といっておいた」

「……………」

確か瞬くん、まだ7歳だよね………

直樹の親バカぶりに呆れつつも、とりあえず瞬くんは大丈夫なのだろうと安心する。

「それより、『はなちゃん』って誰だよ」

今度は直樹から訊ねられる。

「え?」

「名前呼びながら泣いてたけど……」

「泣いてた? あたし? うそぉ」

泣くような夢は見ていなかったのだけれど………

何となくうっすらと覚えている夢の記憶を辿ってみる。

「………はなちゃんって小学校の頃の同級生で、サンタクロースがいるかいないかの話をしてたの……なんだかその頃の夢みてたみたい」

そんな夢をみたのは、多分ーー
先日、十数年振りに彼女に再会したからだ。立派なお母さんになった彼女に。

「入江くんって、サンタクロース信じてた?」

何だか答は分かっているような気がするが、とりあえず訊いてみる。

「……小学校低学年まではサンタクロースからと称するプレゼントが用意されてはいたが……多分3~4歳くらいで、サンタクロースの起源が4世紀頃の東ローマ帝国、小アジアのミラの司教の教父聖ニコラウスの伝説からだと知っていて、それが何故各国で様々な伝説に変容していったかを調べていたからな、多分信じたことはないだろうな」

「………やっぱり」

そんな予感はしていたが。

「……でも裕樹は低学年くらいまでは信じてたんじゃないか? おれほどひねてない」

「……ひねてたっていう自覚はあるんだ」

くすっと笑う琴子に、少しムッとして、

「それで? おまえは信じてたのかよ?」
頬っぺたをつまみながら問い掛ける。

「小三くらいまでは普通に信じてたよ。お父さん、和食の板前なのに、チキンやケーキも買ってくれてたし……店が忙しくて一緒に食べることはなかったけど」

「……毎年、一人で……?」

「あ、ううん。アパートの大家のお婆ちゃんがいつも面倒見てくれてたの。だから寂しくなかったよ。お父さんもサンタさんのプレゼントちゃんと準備してくれてたし」

にっこりと笑って否定するが、寂しくない筈はないと思う。
母親がいないーー普段は慣れてしまっていても、行事やイベントの度に思い知ることとなったに違いない。

再び強く抱き締められて「……入江くん…?」と不思議そうに彼の顔を見る。
何も言わすにただ黙って抱き締める直樹に、琴子は腕の中でとつとつと、さっき見た夢の話をする。


「でね、……はなちゃんの『自分の子供にサンタクロースの存在をいつまで信じさせられるか挑戦したい』というフレーズが、クリスマスの度に思い出されていたんだけど……ほら、この間、理美やじんこと高校の同窓会の幹事会があるからって久々に琴美を置いて一人で外出したことがあったでしょう? その時に十何年ぶりにはなちゃんに会って……」

「……ん? はなちゃんは小学校の同級生だろ? なんで高校の同窓会の集まりに……」

「あ、違うの。はなちゃんには帰り道にばったり会ったの。駅沿いの商店街で。そしたらさーもう、びっくりしちゃった。はなちゃんって、凄くスリムな美人タイプだったのに、なんかどっしりした恰幅のいい『お母ちゃん』って感じになっててねー。しかも子供5人も連れてるの! 二十歳で結婚して双子やら年子やらで8年で5人! なんか貫禄あったなー」




一人は抱っこ紐で抱っこし、双子はツインのベビーカー。上の二人は近くの本屋さんに入っていった。

「今年のクリスマスプレゼントは絵本がいいっていうからさ。じゃあ好きなの選びな、って選ばせてるの」

あっさり言う彼女に琴子はびっくりした。

「え? サンタクロースは来ないの?」

思わず言ってしまった琴子の科白にからからとはなちゃんは笑った。

「うちはサンタが来るのは保育園までにしたの。小学校上がってからは親がサンタから委託されてプレゼントあげる契約にしたからって言ったら、とりあえず信じてるわ」

「ええー?」

「うちの子、疑い深くて絶対何が欲しいか云わないんだもの。面倒になっちゃってね。どうせこれだけ兄弟いると下に行くほどサンタの存在信じる期間は少ないかな、と思って。とにかくサンタだって世界中の子供にあげるのは大変だから、親は子供が生まれた時にサンタさんに来てもらうか、親が代わりにあげるかはそれぞれ契約で決めてる、という設定にしてあるのよ」

そういって笑うはなちゃんは楽しそうだった。

昔の、卒業文集の言葉は覚えてないのかな? とは思ったけれど、敢えて訊ねなかった。そんな拘りなんかどうでもよくなってしまうくらい、日常は大変で、そして幸せなのだろうーーそう思ったから。



「………で、なんでおまえが昔の夢見て泣くんだよ?」

直樹の問いに琴子も悩む。泣いた記憶は特にない。

「………今のはなちゃんは幸せだけど……昔の寂しかったはなちゃんのあの時の気持ちは何処にいっちゃったのかな?……そんな風に思ったのかも……」

そして、多分……幸せそうにサンタの存在を信じて語っていたミキちゃんを、自分も羨んでいたのかもしれない……

少ししんみりした話題を変えるように、琴子が明るく話す。

「来年からは琴美の枕元にもプレゼント置かないとね。あの子はいつまで信じるのかしら?」

「……おれの子供だからな……やっぱり3歳くらいまで?」

「えーもうちょっとサンタ気分味わいたい」

「どうしても信じさせたいなら色々秘策はあるが……」

「えーなになに?」

他愛ない会話が、聖夜の寝室の中でいつまでも続く。

「それで、高校の同窓会の幹事会とやらはどうだったの?」

「あーあれね、まだ半年先の話だからお茶会しに行ったようなものだよ。でもA組の幹事は一人も来てなかったよ」

「……A組の奴らは地元にいないやつの方が多いだろ?」

「みたいだねー。とりあえずは同窓会便りを毎年送付してるのに戻って来ちゃってる行方不明な人を追跡しようってことで一回目は終わったの。卒業たった十年で消息不明になっちゃう人、結構多いんだね」

「毎月やるの? その幹事会」

「うん、そうらしい。あ、でもあたしは琴美を預けられる時だけ行くって言ってあるの。お義母さんも息抜きがわりに行けば?って言ってくれたし。それにあたしらはメインの幹事じゃなくて卒業20年目の人たちのお手伝いだけで、そんなに大変じゃないの。なんか周年記念の同窓会って斗南の恒例行事らしくて、結構おおごとなの。でも、早いよねー来年高校卒業して10年なんて」

「そうだな。10年の間に結婚して子供生んで……おまえが母親になるんだもんな」

「入江くんだって父親だよ。この間の幹事会でわかったけど、A組の結婚率低いよー」

「そりゃそうだろ」

「でもって、AからF組合わせても結婚したのってあたしたちが」

「一番最初?」

「そう!」

「なんやかんやいっても斗南は進学校だからな。学生結婚する奴はそうそういねーだろ」

「ふっふっふっなんか一番って嬉しくなっちゃった。同窓会も楽しみ。早く来年にならないかなー」

「……俺は行けるかどうかわかんねぇぞ」

「大丈夫! 絶対行けるよ!」

「何? その自信」

「よくわからないけれど、理美が云うには、入江くんが、あたし一人を同窓会に行かせる訳がないって。25回生全員集まる同窓会だよ? AからFまで勢揃いだよ? とにかく入江くんは何が何でも参加するに違いないって言ってたの。だからその理美の予言を信じようと………」

「…………………」

琴子の親友の予言に、直樹が眉間に皺を寄せていたとは気付かないまま、脈絡なくお喋りが続く。


「……来年って、もう21世紀なんだよねーなんか不思議。今日が20世紀最後のクリスマスなんだね」

しみじみ云う琴子に直樹が吹き出す。

「おまえ、去年の今頃は2000年から21世紀って信じてたのにな」

「……うっだって……」

「今年は事あるごとに、『20世紀最後のバレンタイン』『20世紀最後の七夕』『20世紀最後のバースデー』……だもんな」

「……だって、そうでしょ? 琴美は20世紀最後にして最大の贈り物だし」

「琴美が21世紀生まれじゃなくて残念だったけどね」

ちょっと前に突然琴子が、『琴美が大きくなった時に、どうして21世紀に生んでくれなかっての? と拗ねたらどうしよう』と、言い出して真顔で悩んでいたことを思い出す。

「大丈夫よ。そんなことで拗ねたりしないように育てるから!」

直樹がその時に返した言葉をそのまま云う琴子に、もう一度吹き出す。

ほんの数時間前までは緊迫した医療の現場にいて、小さな少年の命を思っていた。
そして今は他愛のない会話と他愛のない日常がこの腕の中にある。

琴子の心の深淵に眠る寂しかった記憶の中のクリスマスも、二人で過ごしてきた10年間のクリスマスも、そしてこれから三人で過ごすであろうクリスマスも……みんなそれぞれいとおしい思い出になるだろう。
さりげない日常の中のほんの小さな非日常。20世紀最後でも、来年も再来年も必ず来るだろうこの一夜。

来年も再来年もこの腕の中に閉じ込めていられるならそれだけで十分ーー

尚もお喋りを続ける琴子に、クリスマスの甘い夜を求めているのは自分の方だけなのか? と苦笑しながら「琴子」と呼び掛けて彼女の止まらない口を塞ぐ。


「…………で、そろそろもう一回、いい?」

「…………!!」


20世紀最後のクリスマスの夜はーー長い……。







※※※※※※※※※※※

ーーそして、三回戦突入(^^)

ムダに長く脈絡のない話になってしまいました。

今回の萌えポイントは、裸に真珠のチョーカー。でもあっさり流してしまいましたな(^^;

はなちゃんは微妙に自己投影。サンタの存在しない家に育った私は、5年生にもなってサンタの存在を信じている友達に「ばっかじゃないの?」と、思ってたひねたお子さんでした。
「いつまで子供にサンタを信じさせるか」結果として、小学三年あたりが限界でしたね………息子は5年生まで知っていることを隠していましたが(^^;

えっちの後に普通の会話の日常感、と思いだらだらとビロートークが続いてましたが、実はどうしてもぶちこみたかった、卒業10年目の同窓会ネタ。2001年5月に開催予定です(^^)v
その前降りを入れたいがためにだらだらだらだら…………


それでは皆様素敵なクリスマスをお過ごし下さいませ♪



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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
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3歳でした… * by たぬき
たぬきと申します。
いつも素敵なお話をありがとうございます。

サンタを何歳まで信じたか?
私は3歳のときに「ミニカーと画用紙が欲しい」とお願いしたら
そっくりそのままのものがクリスマスの朝の枕元にあり、
「やっぱり親が用意しているんだ」と悟りました(^_^;)
どう考えても、サンタが侵入出来る場所がなかったので…
可愛くない子供ですねぇ(-_-;)

今高2の息子は、多分低学年くらいまでは信じていたかな?と思うのですが、とりあえず小学校の間はサンタさんからと称してプレゼントを置いてました。

主人は、4年生のときにクリスマス前にお姉さんと喧嘩したそうで、
その時のクリスマスにはプレゼントが無く、サンタはいないことを悟ったそうです。

いろいろありますね~。


Re.たぬき様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

3歳! 早いですね
いえいえ可愛くないなんて! 聡いお子さんだったんですよ(^^)

実験的な感じででいつまで子供にサンタを信じさせられるかチャレンジしてましたが、小5で何も言ってこなかった時は流石に心配になりました。「この子本当に信じてるの?」それはそれでどうかなあーと。でも子供は子供なりに気を使っていたようです。サンタが親だと知ってしまうともうプレゼント貰えなくなると思っていたのかも?
情報過多の時代ですから、信じさせるのも難しいですよね(^^)

きっといろんなパターンのサンタさんが昨夜訪れたんだろうな、と思います(^^)

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