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個別記事の管理2014-12-06 (Sat)




小学校も高学年ともなると色々友人関係で面倒なことが多い。
その時期の女の子って、ちょっと残酷な生き物だ。
男の子達より心だけはどんどん背伸びして大人ぶって。
ドキッとするくらい辛辣な言葉を平然と投げつけたかと思えば、影でこそこそと悪口を云ってみたり。人の小さな弱味を見つけてはクスクスと笑い合ったり。
別にあたしたちのクラスであからさまなイジメとがあったわけではないの。
斗南大学付属小学校は、私立だし、家庭環境も似たり寄ったりで格差もない。子供たちもみんな落ち着いている方だと思う。
けれどやっぱり女の子たちのいる世界でトラブルのない日常なんてあり得ないこと。些細ないさかいは、やはり小さなグループのあちこちである。

うちのクラスのトラブルメーカーは、小崎まゆりという子だった。
少しばかり我が儘で、自己主張の激しい子。クラスの中で一人や二人はいるタイプだと思う。
親がIT産業の社長で高級マンションの最上階に棲んでいるとかいう話だった。そのせいか少し鼻持ちならないところがある、とあまり周りの評判はよくなかった。
学習発表会の劇で姫君の役をやりたいから自分を推薦するよう男子たちを懐柔する裏工作をしたりとか、遠足のグループを仲の良い子となりたいからと、いつまでもごねて学級会が終わらないとかーーそんなことが度々あって、いつの間にか彼女は少し浮いていた気がする。

あたしは、席も近くなければ班も一緒になったことはなく、特に彼女とのかかわりはなかったけれど、いちいち彼女に振り回されてクラスの決め事が決まらないのは面倒な事だな、とは思っていた。


そんなある日、突然彼女に話しかけられたのだ。

「入江さんの弟さんて、足が不自由なんでしょう? 可哀想ね」

「え?」

あたしは一瞬何故唐突にそんなことを云われたのか分からずに間の抜けたような、キョトンとしていた顔をしていただろう。

その年一年生になったハルは、ちょっとした有名人だった。
まず容姿が可愛い。成績も優秀。運動神経も抜群。
そして、あたしの弟であるということ。あたし、というより有名なのはパパとママで、その子供ってだけで注目の的なのだ。
そしてハルは自分が義足だということを一切隠さない。体育の水泳の授業でも水泳用の義足に堂々と履き替えている。
義足でも運動神経が抜群で他の子より優れていることが多く、余計注目の的なのだ。

ーー可哀想、の意味がわからない。

本当にそう思ったのだ。
だって、ハルはたったひとつみんなの持っているものが欠けてはいるけれど、みんなの持っていないものを沢山持っている。

なのになんで、可哀想、なんていうのだろう?


「せっかく運動神経がよくても健康な人と同じ競技には出られないんでしょう?
勿体ないよねー。それにあんなに将来イケメンになりそうなのに、芸能事務所とか入るのは無理だよね。ああ、そうでもないのかしら……義足ってこと売りにすれば注目されるかも」


「…………」


ふと、そういえば昼の休み時間に校庭でサッカーをしているハルを2階の窓から見ていて、友人たちと話していたことを思い出した。

「ハルくん可愛いよねー。琴美、履歴書送っちゃえば? よくお姉さんが勝手に送って、とかいってるじゃん」

「は、何のこと?」

「歌って踊るアイドル事務所だよ」

「やめてよーハル、そういうの全然興味ないし」

「そうなの? 絶対売れると思うけどなー」

「うわっ速っ 一年生であんなに速いのー? 凄いね、ハルくん」

「Jリーグとかに入れるの?」

みんながハルのことをあれこれ訊いてくるのは、他意はない、素朴な疑問なのだということがわかっていたから、あたしも普通に応えていた。

「義足でもプロにはなれるよ。ただ試合に出るのは審判や相手チームの了解がいるみたいだけど。どうしても義足の性能が良すぎて健常者よりも超常的な力がでるんじゃないかと誤解されてて」

義足の方が有利。
そんなことあるわけないのに。
ちょうどサッカーのクラブチームの練習でごたごた揉めてたから、あまり詳しく話す気にはならなかった。

彼女たちもそれ以上は訊いてこない。
ただ、グラウンドで走り回ってるハルに声援を送ってくれていた。

その時の会話を、小崎さんは聴いていたのだとーー何となく思い至った。

この『可哀想』のなかに、あたしは一段上から見下したような底意地の悪い優越感を感じた。
でも、そんなの無視すればよかったことだ。
ハルのことで同情や哀れみの言葉をかけられるのはよくあることだ。
人によってはそんなことないんだよ、と説明する時もあれば、適当に受け流すこともある。
今回も適当にかわせばよかったことなのに。


「……別にハルはプロのスポーツ選手になるかどうかもわからないし、芸能界にも興味ないし。小崎さんに可哀想って言われる意味がよくわからないんだけど」

あたしの言い方は随分つっけんどんだったと思う。

「えー? だって、足がないなんて、可哀想じゃない」

直球ストレート。
さすがにぶちっとキレた。

「ハルは足がなくてもなんでも出来るよ。可哀想なんかじゃない」

ここで止めておけば良かったのに。
頭の中には、少し前に友だちの一人が吹き込んでくれた余計な情報がぽんっと沸き起こりーー考える間もなく言葉となって口から発せられていた。

「可哀想なの、小崎さんの方でしょ? お父さんの会社、倒産しそうで、お母さんは家を出ちゃったんでしょ? そっちの方が絶対可哀想だよ」

本当かどうかもわからない話。最近クラスの子達がひそひそと話してた噂。それを聴いた時、そんな根も葉もないこと、しかも彼女には何のその責任もないことを、陰で話していることに嫌悪を感じてたクセにーーなのに、つい出てしまった取り返しのつかない言葉。

小崎さんの瞳が見開いて、そして顔が歪んだ。その表情で、噂が真実なのだとわかってしまった。


ぱあっん


いきなり左頬を思いっきり叩かれた。
その衝撃で足がふらつき、そのまま床にしりもちを付いてしまった。

「何すんの!?」

あたしの声と、周りの叫び声とが同時に教室内に響いた。

「あんたなんかに………あんたなんかに……」

彼女の瞳には大粒の涙が溜まっていた。


ーーそのあとは何だかよくわからないままに、女同士の取っ組み合いになってしまった。
先生に引き剥がされる前に、あたしの腕には大きな噛みつき跡が出来ていた。
どうみても、あたしの方が被害が大きく、そして周りの子達もあたしの方を擁護した。

「まゆりちゃんが先にハルくんのことを侮辱したんですー」

「まゆりちゃんが先に琴美ちゃんのほっぺ、叩いたんですーー」


その後双方の親が呼び出され、夜勤でちょうど出勤前のママが慌ててやって来た。小崎さんの方は、遅れてお父さんがやって来ていた。
皆の云うことを鵜呑みにした先生は、けんかの原因は全部小崎さんの方にある、みたいな言い方をしていた。実際、酷く噛まれたあたしの腕は歯形から血が滲んでいた。ママはそれを見て驚いていたし、小崎さんのお父さんは「申し訳ありません」と平謝りをしていた。


「ああ、いいですよ、土下座までしなくても! けんか両成敗ですし! それに大した怪我じゃないですから」

ママは明るく笑って取りなす。

「でも、とりあえずけんかの理由をきちんと聴かないと」

けれどあたしも小崎さんもはっきりとは云わなかった。互いの心の中にあった醜いものをうまく伝えることなどできなかった。
結局、先生が「今回のことは学校の監督不行き届きということで……」と謝罪し、その場は納まった。


そして学校からの帰り道、ママと並んで歩きながら、漸く事の顛末をぽつりぽつりと話したのだ。

最初に彼女がハルのことを可哀想と云ったこと。

そしてあたしが彼女に、お父さんの会社のことやお母さんのことを可哀想、と云った途端、叩かれたということーー。


ママの足が、パタッと止まった。
そしてあたしの方に顔を向けた。
とても、とても悲しそうな顔をーー。

「みーちゃん、本当にそんなこと云ったの?」

あたしに目線を合わせて少しかがみながら、そう訊ねた。

「……だって、先にあのこがハルのこと可哀想だって……」

「ハルのことは関係ないでしょう?」

ママはこれまで見たことないくらい、厳しい瞳であたしを見据えた。

「実際、多くの普通の感覚をもった人は、たいていハルみたいに障害のある子を見れば、可哀想とか大丈夫?とか、云ってくれるよね? それは同情かもしれないし、寄り添って助けてあげたいという思いかもしれない。でも、同情や憐れみを全て頑なに否定することはないんだよ? 少なくとも、心にかけてもらうだけで救われることだってあるんだから」

そんなのわかってる。
でも、小崎まゆりの『可哀想』は明らかにハルを哀れむことで、自分があたしより一段上にいるのだと、言い放ちたいだけだった。
その感覚は、きっと云われたあたしにしかわからない。

「どうして、小崎さんのお父さんやお母さんのことなんて云ったの? なんでそのことを可哀想、なんて云ったの?
そんなこと、小崎さんにはなんの関係もないじゃない! 小崎さんにはどうすることも出来ないことじゃない!」

わかってるよ。
酷いことを云ったって、すぐに思ったよ。でも、云ってしまった言葉は、放たれてしまった言葉は、もう取り返すことが出来ない。
わかってるけど、あたしはママに云われたことで少し反発してしまったのだと思う。
その場にいなかったママには、わからない。あたしがその時どんな思いでその言葉を発したのか。

「ハルだって、ハルだって、ハルのせいじゃないじゃない! ハルが義足なの、ハルのせいじゃないのに、そんな風に足がなくで可哀想、なんて………!」

「うん、ハルのせいじゃないよ。誰のせいでもない。それは小崎さんのことも一緒でしょ?
それに、小崎さんは多分今そのことは現在進行形で、すごく辛い思いをしているのだと思う。だから、みーちゃんにもそんな言い方をしてしまったんじゃないの? 小崎さんの助けてってサインだったんじゃないの?」

そんなの知らない。
そんな分かりにくいサイン、気付かないよ。


「さあ、今から行こう」

「え? ………何処へ?」

「小崎さんち。謝りに行こう」

ママはきっぱりとそう云ってあたしの手を取った。

「………いや」

でもあたしはその手を振り払った。

「行かない! 謝らないから、あたし!」

「みーちゃん?」

「あたしの方がこんなに痕になるくらい噛みつかれて、叩かれて、ひどい目に遭ってるんだよ? なのに、小崎さんは謝ってないもの! お父さんがペコペコ謝ってだだけであの娘は謝ってないもの! なんであたしが謝らなきゃなんないの?」

少し意地になってただけだと思う。
どうしても素直になれなかった。
そしたら。

ーーぱん。

右頬に小さな衝撃を感じた。


「みーちゃんの傷の痛みはいつか治るし、痕も消えるけど、小崎さんの心の傷は見えないから、その深さも痛みのひどさも他人には決してわからないよ。でも、想像はできるでしょう? どんなに今苦しいのか。どんなに辛いのか。
みーちゃんがどれだけ小崎さんを傷つけたのか………」


生まれて初めてママに叩かれた。
それは、ほんの軽いビンタだった。
しかも左手。
全然痛くなんかないーーはず、なのに、凄く痛かった。心が。

そしてママの方が100倍くらい痛そうな顔をして、叩いた左手を右手で握りしめていた。

そして、「みーちゃん、叩いてごめんね」といってあたしをぎゅっと抱き締めた。

「みーちゃんが謝りたくないっていうなら、無理には云わない。みーちゃんが心から謝りたいって思わなければ意味がないから」



結局、その話はそれでおしまい。
あたしとママは珍しく黙ったまま、おうちに帰った。


そして、その日の夜。
ノックの音とともに、珍しくパパがあたしの部屋にやって来た。

「学校で取っ組み合いのけんかしたんだって?」

ああ、ママから話を聴いたのか、と思った。

「傷、見せてごらん」

あたしはパパに噛みつかれた腕の傷跡を見せた。保健室で軽く消毒用スプレーをつけただけで、手当てらしい手当てはしていなかった。

「特に問題はなさそうだな」

パパはまじまじと腕の傷跡をみて、にっこり笑うと頭をくしゃっと撫でた。

「ママに叩かれたって?」

ベッドに腰かけていたあたしの隣にパパが座る。

「痛かったか?」

あたしは首を振って「左手で、軽く叩かれただけだもん。ママの方がずっと痛そうだったし」と応えた。昼間、小崎さんから喰らった最初の一撃の方が遥かに痛い。

「そうか。よかったな、ママの本気ビンタは痛いぞ」

パパがあたしの顔を覗きこんで笑って云う。

「えー? パパ、ママに叩かれたことあるの?」

「あるよ。ママとアイじいちゃんと一緒に暮らし始めた頃、ママがパパにくれたラブレターの内容をみんなの前で暗唱したんだ。そしたら思いっきりひっぱたかれた」

「えーみんなって、おじいちゃんやおばあちゃんたちの前で?」

「そう」

「なんで? なんでそんなことしたの? ママが恥ずかしがって怒るの当たり前だよ!」

「……そうだな。酷いことしたと思うよ……今ならそう思える。でもあの時はママがパパのこと忘れてない癖に否定するから、頭にきてからかってやろうと思ったんだろうな」

「えーパパって、子供みたいーっ」

あたしは驚いてしまった。好きな子を前に意地悪する男子たちと同じじゃない!

「………そうだよ。パパはママを前にすると小学生と同じ。からかったり、意地悪したり………何度もママを傷付けた」

「かわいそうママ。なのになんでずっとずっとパパのこと好きでいられたのかな……」

「そうだな。ママには感謝してるよ。ママがパパのこと好きでいてくれたお陰で、パパはずっと人間らしくなれた気がする。それまでパパは自分の言葉や態度で、誰がどう思うか、どんな風に受けとめるのか考えたこともなかった。興味もなった。だから、平気で人を傷つけるような言葉を投げつけたり、冷たい態度をとったりもした」

パパの言葉にどきっとする。

「ママが傍にいてくれなかったら、パパはきっと心ない人間になってしまっていたかもしれない。ママが居てくれたから、ママがパパのこと好きで居続けてくれたから、パパは人の痛みを知ることができるようになったんだと思う」

「……ママ、凄いね」

パパにそんなこと云わせるママは、凄い。

「ああ、そうだな」

「パパはママを叩いたことあるの?」
ふと思い付いて訊いた言葉に、パパは一瞬苦いものを噛んだような顔をして見せた。

「……あるよ、2回ほど」

「えー? ママ何かしたの?」

「いや、ママは何も悪くない。2回ともママがパパから離れるようなことを云うから、頭にきて……」

「パパ、サイテーだよ。女の子叩くだけでも最悪なのに、そんなことくらいで叩くなんてDV野郎だよ」

「うん、パパもそう思うよ。若い頃のパパは随分最低な奴だった」

「ちゃんとママに謝った?」

「いや……実はちゃんと謝ったことはないかも。いつもママは謝らなくても許してくれていたから」

「あーそんなの全然だめっ! 謝ろ! パパ! あたしも謝るから」

「琴美?」

「あたしも……小崎さんにちゃんと謝るから………」

パパの肩にことんと頭を乗せて、囁くように云った。

「……だから、パパも、ママに謝って……」

「ああ、そうだな」

そしてそのまま、パパの胸に顔を埋めて泣きじゃくってしまった。
パパはただ黙ってあたしの背中を赤ちゃんにするみたいに優しくさすってくれていた。

わかってるの。
自分が悪いってこと。云ってはいけないことを、云ってしまったこと。
ただ少しも素直になれなくて、意地っ張りで。
ママを悲しませたことーー。





あたしはその翌日、学校で小崎さんに謝るつもりだった。
けれど、彼女は来なかった。
翌日もまたその翌日も。
結局彼女はそのまま一度も登校することなく転校してしまった。
私立の授業料が払えなくて公立に転校したということだった。

あたしは謝ることが出来ないままーーいつのまにか彼女のことを忘れてしまっていた。


そして、昨日。
学校帰りに寄った本屋で偶然彼女に再会したのだ。

「ごめんなさい! 2年前、酷いこと云って、本当にごめんなさい!」

彼女の腕を掴み、唐突に頭を下げて謝ったあたしに、小崎さんはポカンと面食らったような顔をしていた。

「やだ………ずっと気にしてたの?」

彼女は呆れたように云った。
そして、くすっと笑った。

「だって、あたしあなたが一番傷つくこと云ったし」

「そりゃまあ、あん時は腹がたったからね。思いっきり図星だったし。でもあたしもかなりくそ意地の悪い性格してたもんね。それに、怪我の程度でいえばあんたの方が相当悲惨だったよ」

そういってもう一度笑うと、彼女は「ごめんなさい」とあたしに頭を下げた。

そのあとファストフード店に入り、お互いの近況を伝えあった。
そして知らされた衝撃の事実!

「……でも、あんたのお母さんって面白いね」

「え?」

「あの後、あたし学校来なかったでしょ? どうせ転校するから行かなかっただけなんだけど、あなたのお母さん、何度もうちに来てね」

「えええーっ」

「あんたの代わりに謝って、そのあと学校に残れるように奨学金の書類持ってきたりとか、嘆願書を集めてもいいとか、あれこれ云ってきて………あたしもあたしの父親もマンションを売ったことで、学校転校することはもうきっぱり決まっていたから、納得してもらうのに時間がかかったわー」

う、うそー、そんなおせっかい……いや、ママらしいっていえば、ママらしい。

「それに出ていったあたしの母親のところまで行って、あたしとちゃんと話すように説得したらしくて」

「えええ………?」

「うちの母親も呆れてた。何なの、あの人は?って」

「ご、ご、ごめん……」

「でも、お陰で母親と話すことが出来た。あたしたちのこと捨てていった母親のことを全部許せた訳じゃないけど、あの人の気持ちを色々訊いて、わかる部分もあったし。なんかすごくスッキリして、今では時々普通の母娘みたいに会って買い物したりお茶したりしてるの」

「そうなんだ。よかった……」

「うん、あなたのお母さんのお陰だよ。お節介で、かなり外したこともしてくれたけど……」

「うっ……」

「でも、凄く素敵なお母さんだね」

「うん………!」












「………それで、小崎さんに、『素敵なお母さん』って云われて、凄く嬉しくて誇らしかったの。だから、そのこと、ママに伝えなきゃ、って。ちゃんと謝れたことも………伝えなきゃ………って……」

もう、手紙は殆んど泣きながらグズグズのまんま読んでいる。ハチャメチャだわ。無論聴いてるママもグズグズだ。


「……あたし、今は特に夢も将来なりたい仕事も決めてません。パパみたいなお医者さんになるのもいいかな、とも思うし、ママみたいに看護師もいいかなって思う。カウンセラーみたいに人の心に寄り添う仕事も素敵だなって思うし。
でも、はっきりなりたいと思ってることがひとつだけあるの。
あたしはママみたいな素敵な女性になりたい。
パパみたいな素敵な男性を掴まえたママみたいな人になりたい。
そして、あたしも絶対パパ以上の素敵な旦那様を見つけるから! その時はちゃんと許してね? パパ!

えーと、そして、最後に!
パパ、ママーーじゃなくて、お父さん、お母さん。今日から呼び方を変えます! 中学生にもなってパパママは恥ずかしいもんね。

お父さん、お母さん、これからもずっと、20年後も30年後もラブラブで最高の夫婦でいてください。
あたしもハルも、二人の子供に生まれてサイコーに幸せだよ!」




そして、割れんばかりの拍手の中で、花束を持って待っていたハルとともに、パパーーじゃなくて、お父さんとお母さんに大きな花束を手渡す。

そしてお母さんはまた激しく泣き出し、あたしもつられて泣き出してしまった。

「なんで、お姉ちゃんとママ、泣いてるの?」

ハルがきょとんとした顔でお父さんに訊ねる。

「………嬉しいからだよ」

お父さんは、お母さんの背中を擦りながら、ハルににっこり微笑んだ。








「本日は、皆様御多忙の中を私共夫婦の私的な記念の為に集まっていただき、本当にありがとうございました」

お父さんの最後の挨拶が始まった。


「先程の琴美の手紙で思い出しました。まず始めに、琴子には20年の結婚生活の中で手を挙げてしまった2回の失態を詫びたいと思います。
ーー琴子、叩いてごめん」

お母さんが驚いて目を見開いて、そして「いいの、いいの」と手を振っている。
………何よ、お父さん、結局あたしに云われて2年も謝ってなかったんじゃない。


「結婚20年は、陶磁器婚というそうです。磁器のように固くなり、年を重ねて価値が高くなるという意味合いがあるそうです。紙のように薄っぺらで簡単に破れてしまう関係から、ひとつひとつ月日を積み重ね、色々な試練を乗り越えて、ようやく少しは固く価値のあるものに近づくことが出来たとしたならば、それはひとえにここに居られます皆様のお力添えがあってこそでしょう。
しかし、いくら固く、とはいっても磁器は落とせば簡単に割れてしまうもの。
決して落とさないよう細心の注意を払いつつも、私たち夫婦はこれからも互いを労り、高めあい、助け合って、次の5年、10年に向けて歩いて行きたいと思います。
どうぞ皆様も、この先も共に私たちの事を見守っていただければ幸いです。
本日は本当に、ありがとうございました!」


そして、再び沢山の拍手が二人を包む。


「ーーあ、すみません。ひとつ御報告があるのを忘れていました」

パパが再び、マイクを取る。

ーー報告?

「この度、妻、琴子が第3子を懐妊いたしました。現在妊娠5ヶ月です。母子ともに順調で、来年の春頃には出産の予定です。また一人家族が増え、病院関係者の方々にはご迷惑をおかけすることになるとは思いますが、どうか宜しくお願い致します」


一礼するお父さんに、その横でぽっと頬を染めるお母さん。


えええええーーーー!!!

うっそぉぉぉぉーーー!!

会場は叫び声が響き渡り、とんでもないことに。


あたしも叫んだわよ!

「ーーそんなこと、きいてないわよぉぉぉーーーー!」



まったく!
本当にまいったわよっ!












~20th anniversary ( 了)

※※※※※※※※※※※※※※※




ーーと、云うわけで、待望の第3子、2014年4月20日に次女、琴梨(ことり・愛称ぴよちゃん)誕生予定(^_^)

殆んど、入江くんの最後の御報告が書きたいが為に始めたお話でした………(^^;

実は以前10月1日にアップしたお話、『シンデレラ ・エクスプレス』 で、2014年10月1日の時点で子供は3人となっているのです。果たしてそれに気づいて今回のお話で子供二人なの? おかしいなーと思っていた方はおられるのでしょうか? スミマセン、こういう事でした!


さて、あれこれ後書きじみたことも書きたいのですが、もうひとつオマケのお話『陶磁器婚の夜に』をあげてから 書きますね。アラフォーのラブラブなイリコトなお話。そしていつもの如く最初から最後までベッドの中のお話になるでしょう………多分(^^;

しかし、結婚記念日に始めた結婚記念日のお話………気がつけばもう師走です(-.-)
おかしいなあ~


さて。とりあえずライヴだ(笑)




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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

はい、無事ライヴ終了(^^)v非日常空間から現実に戻って参りました(^_^)
うちの陶磁器婚は来年です♪ 果たして何かイベントはあるのでしょうか?

はあい♪ 妊娠中の琴子に、直樹さん魔王に変身するかどうかはわかりませんが(^^;妄想邁進いたします!

Re.sai様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

実を云うとアップしようか悩んでいる連載とはこれではないのです(^^;この話、2~3話で終るつもりだったし(^^;その話は、12月になったらアップしようと思っていたのですが(時期が合うので)予定外にこの話が長くなってしまい、進行が狂いました(-.-)さてどうしよう?

直樹が手を挙げた2回、本当においおい、なんで、叩くん?とあたしも呆れてしまいましたので、是非とも彼に謝っていただきたかったのです。
あたしも無事謝らせることが出来てホッとしております♪

はい、すぐのアップは無理ですが(まだ何も書いていないので……)頑張って書きますねー(^^)v

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

琴美ちゃんと小崎さんの喧嘩から、琴子が琴美ちゃんを叩き、直樹が琴美ちゃんと話をするーーという流れだけを考えて書き始めたお話ですが、自分の暗黒の小5時代やら息子が幼稚園の時の友達とのトラブルから、泣きながら叱ったこととかを思いだしつつ、骨肉をつけていきました。紀子ママさんに琴美ちゃんの思いを深く汲み取っていただいてとても嬉しいです。
ほんとに琴子ちゃんは素敵なママですよね。歳を重ねても琴子ちゃんらしさは失わずに素敵な40代になっていることを想像しています。
はい、そして入江くん! そう、2回とも琴子には何の非もないビンタ! 許せません!
日キス2、まだ観れてないですが、ビンタないんですね、よかったです。確かアニキスもビンタはなかった気がします。今の時代、いろんな団体からクレームがきそうな行為ですよね! 暴力は絶対ダメよ、ダメダメ~(笑)
とにかく、彼に謝罪させたかったんです(^^)v
さて、その入江くんの過保護管理のもと、無事高齢出産クリアの予定であります♪ 琴子ちゃんのご懐妊を祝福して下さってありがとうございました(^^)

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