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個別記事の管理2014-11-25 (Tue)



「パパならあっちだよ」

あたしが指差した方を眺めて、「ふうん、忙しそうだな」と渡辺さんは苦笑していた。

「琴美ちゃんはお手伝い? 偉いな」

「まあこれくらいはね」

にっこり笑うあたしの目の前には、渡辺さんに抱かれているちびちゃんの少し怯えるような目線。
えーと、この娘は、確か4番目の………

「四女の香梨(かりん)だよ。ほら、香梨、お姉ちゃんにご挨拶は?」

香梨ちゃんは指をしゃぶってこっちを見ていたけど、恥ずかしそうに顔を背けて渡辺さんにしがみついてしまった。

「ごめんよ、人見知りで」

「いーえ。幾つでしたっけ?」

「もう三才になったんだけどね」

「可愛いですねぇー」

女の子は格別だね。そりゃハルもこれくらいの時メチャ可愛いかったし、従妹の美紀ちゃんも可愛いけど………やっぱあたしも妹欲しかったなー。

「おとうさーん」

あ、後ろからぞろぞろ娘さん方がやって来た。渡辺家4姉妹勢ぞろいだわ。
引き連れているのは奥さんの香世子さん。
確か5才くらい年下で、以前勤めていた法律事務所の事務員さんだって話。職場結婚って奴だね。
でも何度見ても、なんとなーくうちのママに似てる気がするんだよね。顔立ちというよりは全体の醸し出す雰囲気が。ママみたいに破天荒な真似はしないだろうけれど、そこそこおっちょこちょいらしい。どうにもほっとけなくってね、と初めてウチに連れて来た時、照れながら紹介してくれたという。(ママ談)
多分その時、パパ、微妙な顔してたんじゃないかなー? いまだにパパが渡辺さんの奥さんに会う度に微かに眉間に皺寄ってるんだよねー。

「ほら、みんな挨拶しなさい。何度か遊びに行ったり来てもらったりしたの覚えてるだろう? 入江琴美ちゃんだよ」

「久しぶりだね。えーと、左から、長女の香穂ちゃん、次女香菜ちゃん、三女香音(かのん)ちゃん……だよね?」

確か小5、小2、年長さんだったかな。見事に女の子ばっかり4人。若草物語みたいだよね。

「さすが入江の娘だなー! よく覚えてたね」

「たまに会ってますからね」

年に1、2回くらいだけどパパの友達にしてはよく時間の都合をつけて互いの家を行き来している。
さすがにパパみたいに1回会ったきりの人やその子供まで覚えられないよ。

それにこのネーミングセンス。全員奥さんから一文字取ってるの、うちのパパと同じ………類友って奴?
パパが実は何人もの子供の名前考えてたの知ってるんだ。前に書斎から本を借りた時に見つけちゃったの。パパの手書きのメモ。

琴音、琴乃、琴李、琴葉、琴奈
和樹、光樹、知樹、弘樹、克樹

10人は用意してたわね。1ダース狙ってたのかしら。
実は部屋だってーー新しく建てた時に2階に30畳ほどのプレイルームが作られたの。どう見ても後々仕切り作って子供部屋として分けられるようにしたんじゃないかなって感じ。
周りの人達はハルがハンディを持って生まれたから、三人目は作らなかったんだろうって目で見てたけど、実際パパは作る気満々だったと思うのよ。
ーーただ、出来なかっただけで。こればっかりはね。いくら天才でも儘ならないってこともあるんだよね。

「あ、渡辺さん、もう来てたんですか?」

「おータケか。あ、綾ちゃんも」

後ろから来たカップルが親しげに話し掛けて来た。多分パパたちと同年輩。なかなかのイケメンと美人さんだ。

どっかで会ったことあるような。でもウチに来たことはないよねえ?

「あ、琴美ちゃん。彼らはパパとママの大学時代の後輩なんだよ。綾ちゃんはテニス部で、武人は高校も斗南でね」

渡辺さんが説明してくれる。あれ? でも渡辺さんは大学は斗南じゃなかったよね?

「武人と綾ちゃんとは司法修習生時代に知り合ったんだ。おれは一浪だったけれど、二人は司法試験現役一発合格で。偶然同じグループになって、二人が斗南出身だって聞いて、色々話すようになってね」

「色々っても話題は常に入江夫妻の話ばっかだったけどね」

「まあその話で意気投合して仲良くなったようなもんだし」

「ははは。きっと斗南出身の同級生が再会するときの合言葉よね。そういえば入江がさあ、とか入江夫妻どうしてる?とか」

どんだけ注目の人なんでしょう、ウチのご両親は。

「あ、初めましてだよね。琴子さんにそっくり。入江さんのお嬢さんだよね?」

「そうです。入江琴美です」

「中川武人です。こっちは奥さんの綾子。俺は弁護士で、彼女は元検事なんだ」

元、というと辞めちゃったのかな? そういえばお腹がすこしぷっくりと。

「今、妊娠7ヶ月なの。結婚13年目でやっと授かった赤ちゃんなのよ」

あたしの視線に気がついたのか綾子さんが説明してくれた。

「辞めちゃうのは勿体ないんじゃないか? せっかく特捜までいったのに」

渡辺さんが残念そうに云う。

「とりあえず15年近く突っ走ってキャリアを積んで来たけれど……今大事なのは何かなって立ち止まった時、やっぱり武人との生活なんだよねー。検事だから異動も多いし、別居してたこともあるし、子供も作らないようにしてたんだよね。いざ欲しいと思ったら実は妊娠しにくい体質ってわかって愕然としたわ」

「でも、よかったわよね。3年の不妊治療でやっと授かって」

後ろからの声に綾子さんが振り返る。

「お姉ちゃん!」

あ、須藤さんご夫妻だ。おひげのおじちゃんと裕子さん。ああ、綾子さん誰かに似てると思ったら裕子さんに似てるんだ。姉妹だったのね。
そうそう、おひげのおじちゃんと裕子さんの結婚式の写真に載ってたんだ、武人さんと綾子さん。
うん、それにパパとママの結婚式のアルバムにも。渡辺さんの結婚式の写真にも。我が家にある結婚式の写真にちょこちょこ映っているから二人の顔に見覚えあったんだ。

「出産したあとは弁護士に転身でしょ?」

にっこり笑う裕子さん。颯爽として艶やかで相変わらず綺麗。
そしてその後ろにはもさっと立っているおひげのおじちゃんこと須藤さん。パパの先輩らしいけれど、イマイチ頼りない感じがカワイイのよ。この二人が夫婦ってとってもアンバランスで面白い。
おじちゃんも大学時代から10年近く追っ掛けて裕子さんを落としたというのだから、ママ並み……ううんそれ以上に執念深い……じゃなくて、一途なのね。
おじちゃんの手には、一人娘の凛子ちゃんがしっかり掴まっていた。今年7才だっけかな? ママに似て意志の強そうな瞳をしている。
裕子さんは凛子ちゃんが生まれた後に起業して、今やIT関連の会社の女社長さん。従業員は旦那さんであるおひげのおじちゃん一人だけど。しかも営業と家事担当って………。

「綾子が出産した後落ち着いたら、二人で共同事務所を経営しようと思ってて。自宅兼の物件探してるんです」

「いよいよタケも独立か。よかったら相談にのるよ」

「渡辺さんは個人事務所設立してもう3年でしたっけ。どうですか? やりたい仕事だけで経営は成り立ちますか?」

「そうだな……」

「経営のアドバイスなら私にもできるわよ」

武人、綾子夫妻。渡辺さんに裕子さん。な、なんか出来る人達が難しい話を始めようとしているよ。

後ろの方で置いてきぼりな渡辺さんの奥さんとひげのおじちゃんが娘たちを遊ばせている。
女ばっかり、五人。かしましいわね。
なんか、パパとママの周りって少子化って何処の話ですか? って感じよね。
綾子さんとこも赤ちゃん出来てよかったよね。

でも、とりあえず受付場所で込み入った話されても邪魔なので。

「す、すみせーん。あのーお話なら会場に入ってからどうぞ」

「あーごめんねー」

ぞろぞろと会場の中に入っていく。

ふと、思い出した。
昔裕子さんが、「妹の旦那が大学時代に琴子さんにちょっかい出してね」なんて話してたのを。
ママにちょっかい出してたの、武人さんってことか! うわーよく生きてたなー。
あ、パパも昔はそんなに分かりやすく嫉妬してなかったって話だったっけ。今ならママにちょっかいかける男なんてみんな一瞬で冷凍状態で再起不能よ。
ママってば歳を重ねて行く度ににずいぶん広範囲の年齢層に好かれる体質になっているようなの。高校生からオッサンまで。

病院で患者だの研修医だの薬剤師だのに横恋慕されるのは日常的らしい(面白がってるママの同期の友達の話だから、事実はわからないけれど)。他にもあたしの幼稚園時代の先生に、小学校の担任の先生、宅配のおにーさんに、掛かり付けの歯医者の先生、いきつけの美容師さん。ママの屈託のない笑顔にやられる人は多いらしい。本人全く気づいてないけど。そして、それらの人々がいつの間にかパパに威嚇され、瞬間氷殺されていたことをママは知らない………。
そんだけヤキモチ妬かれてるのに、いまだにパパが長期出張する度に「絶対浮気しないでねっ」と真剣に不安がってんだから。
もっとも、パパを狙う連中は確かにママ以上に広範囲で年齢制限もないに等しい。3歳児から老人まで。しかも男女問わず……。
さっき渡辺さんにしがみついて離れなかった人見知りな香梨ちゃん。うちのパパには平然と抱かれてきゃっきゃっと喜んでたもんなー。恐るべし。
ママの不安も分からないでもないけれど。
でも無駄な不安よね。呆れるほど愛されてんだから。




「琴美ーカワイイじゃん」

あたしより高い位置から聴こえる太い声。でもその声に似合わない深紅のパーティードレスに身を包んだ妖艶な女性。

「あーモトちゃんだ」

そしてその後ろには。
どうやらママの同期の御一行様、御到着のようでーー。






※※※※※※※※※※※※※


はい、お次は斗南病院関係者の方々で。

しかしあたしは何故これを前(中)後編で行けると目算していたのだろう………?






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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうです、モトちゃんはカナメですね(^^)v
外せません♪武人瞬殺ですかー?多分綾子さんいるんでそんな無謀な真似はしないかと(^^)

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Re.ねーさん様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

なまえ、私考えるの好きなので楽しんで考えてます。でも琴のバリエーションは少ないのでよそ様と被るのはもう仕方ないんですよね(^^;ちなみによそ様のハルキ率が割りと高くてびっくりです。よその未来の話を読む前にハルの名前は決めてたんですが、ハルキくんが結構多い!ので、漢字は変えました(^^;
実は始めはこの話の語り手は愛琴(まこと)ちゃんでした。琴美はあくまでアニメ版の名前なので原作未来は別に変えてもいいかな?と。でも二次の世界では琴美ちゃんが当たり前のようで、やっぱり変える勇気がなかった……(^^;それに、愛琴ってなんか源氏名のようだし……(-.-)
なんだか子供たちをあれこれ出しすぎて、一覧作って整理しないと、年齢が混乱しそうです。おかしなことにならないよう気をつけねば(^^;
さて、次はいよいよ船津ファミリーも出てきます。お待ちくださいませ(^^)

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