タイトル画像

19941209 ~愛しいと思うままに君を抱きしめたい。(前)

2014.11.15(20:27) 49



90年代J-pop風長いタイトルですが(^^;
このお話は、一年ほど前に書いて、初めて完成させたものです。(途中で放り出したものがちらほら)

スマホのメモ欄からコピーして修正して………なんてことをやっていたら、昨夜、一瞬その無修正の文字化けだらけの妙な文章をアップしてしまったようです(°Д°)オーマイガー!!
果たしてその幻の無修正版を読んでしまった(読めないけれど)方、むじかくさま以外にもいるのでしょうか? お見苦しいものを見せてしまってスミマセン! 記憶から削除してくださいませね(^^;あー恥ずかしい(T.T)


さて、お話は少し長いです。『妊娠騒動』翌日の朝。あれこれ詰め込み過ぎてます。
そして、前編だし(^^;



※※※※※※※※※※※※※※※


「う……ん……」

寝返りを打った琴子の柔らかな髪が、直樹の鼻先をかすめ、浅い眠りの中から彼を呼び覚ました。
腕の中の彼女は、幸せそうに薄く笑みを浮かべていまだ深い夢の世界の住人だ。
直樹は、向こうを向いてしまった妻の顔をこちらに向かせて、露らわになった肩が冷えないように毛布を掛けてやりながら、もう一度深く抱えなおす。
枕元の目覚まし時計は、まだ5時半。起きるには少し早い。
安らかな妻の寝顔を眺めながら、直樹は昨日の一連のドタバタを思いだし、苦笑した。



「子供、欲しくなってきた。つくっちゃおうか」

それは久し振りの甘いひとときを過ごす為の誘い文句に過ぎなかった。医者のいう通り生理がすぐに来るなら、妊娠することはまずないだろう。

「二人の赤ちゃん、くるといいね」

行為の後の汗ばんだ身体を寄せて、少しはにかんで耳元にキスをしながら、囁きかける琴子を可愛いと思いつつも。

ーー出来ねぇよ。多分。恐らく。かなりの確率で……。

自分の排卵期くらい把握しろよ、と内心突っ込んだりする。
ーーまあ、無理か、こいつには。

多分、本人より、自分の方が生理周期を把握してるし、生理の遅れにもすぐ気が付く。いちいち本人には言わないが。
……というか、これも決して本人には言えないが、結婚前から、琴子の生理は大体わかっていたのだ。そんなに生理痛がひどいわけでもなさそうで、あからさまにわかる、というわけでもないのだか、なんとなく様子が違う1日2日が、月に一度やって来て、なんとなく、ああそうなのか、と理解して、なんとなく、ああこいつも女なんだとーー感じてしまった同居し始めたばかりの青い日々を思い出す。

まさか、その女を妻にし、こんな風に抱き、その生理周期に翻弄される日々が来ようとは……

四日前の夜。神戸の学会に同行する前日のあの夜。
寂しがるであろう琴子を存分に可愛がるつもりだったのに。
……ケーキの食ぺ過ぎで胃痛とは……。

あまりに琴子らしくて、ため息をつくしかなかった直樹だった。
そして三日ぶりに戻った大学で、感じた不穏な空気。家に戻って直面したあの騒動。

診察結果が分かるまで、あれこれと思い巡らした、長いようで短い時間一一。100%の避妊をしていた訳ではないので、いつか起こりうる出来事だとはわかっていても、真っ先に、彼の心を占有したのは『戸惑い』という感情だったように思われた。
ぐるぐると思考が飛ぴ、落ち着かない不思議な感覚。
ーーけれど。
隣に座る妊婦の、自分のお腹を愛しげにさする穏やかな表情。
検診に来たらしい赤ちゃんから発せられる甘いミルクの匂い。抱く母親の聖母のような笑み。
(まあ、若干、母親らしからぬ邪まな視線も感じなくはなかったが)
そんな空間に身を置くうちに、いつしか心は落ち着きを取り戻し、漠然とした未来がはっきりと形を成し、父親となる覚悟と期待が生まれるのを感じていた。
たった数時間の不思議な感覚だった。

……親父になるのも悪くないかもな……。

昨日そう思ったのも確か。
結婚しているのだから、問題はない。専業主婦の紀子もいて、学生をしながら、育児をすることも出来なくはないだろう。逆に就職してからの出産、育児より周囲にかける迷惑や負担は少ないかもしれない。
経済的にも、とりあえず問題はない。
ーー親に甘える覚悟さえあればの話だが。

でも。
実際開き直って、何から何までおんぶに抱っこと甘えられる程、直樹の自立心は低くなかった。

結婚してひとつの世帯を持つということは、親の戸籍から離れ、自分は世帯主になるということだ。二人だけの独立した籍の始まり。たとえ未成年であっても、結婚していれば成人と同じ責任を持つ場合もある。
だか、現状戸籍の上で独立しただけで、経済的には何の独立もしていない。夫婦揃って扶養されている身だ。

ふと、直樹は結婚が決まって式を行うまでの激動の2週間、密かに父重樹を呼び出して、色々と話し合った夜を思い起こしていた。


「……いろいろとすみません、会社にも迷惑かけて……」

紀子の突然すぎる結婚式の話があってから、2日くらいたった日だろうか。深夜の父の書斎に、二人は差し向かいで酒を酌み交わしていた。以前この部屋で将来の話をして、喧嘩になったことを思い出す。

「まあ、元はと言えば、わしが不甲斐ないばかりに起きたことだ。お前が責任を感じる必要はないさ。それより、わしこそ、悪かったな。ママの暴走を止められ
なくて……」

お互いに謝りあって、苦笑する。

「大丈夫か……その…こんなにバタバタと結婚することになっちまって…」
いくら結婚を決めたのは自分の意思とはいえ、「結婚は卒業してから」と、はっきり明言していた直樹である。こんな急激な展開が不本意であろうことは、父親としては簡単に予測出来た。

「ここで、ゴネたら、困るでしょう。パンダイの名前使ってホテルごり押しして取ったのに」

「まあな」

「……それに、俺が機嫌悪くすると、琴子が不安がるだろうし。ホン卜に結婚する気があるのかって。……散々悲しませたから、ちゃんと俺が真剣だって分からせてやるには、もう、お袋の策略にのっちまう方がいいのかなって気がしたんだ」

あんなに他人に無関心だった息子が、そんな風に人の心を思いやることが出来るようになるとは。琴子には感謝してもしきれない、と重樹はじんわりと思う。

「……それで、話ってのは、他でもない。これからの生活のことなんだけど」

あらたまって切り出され、一瞬重樹は慌てた。

「えっまさか、お前、別居したいとか?」

誰もそのことについては一切触れなかった。触れなくても、そのまま同居することは、疑う余地のない大前提のような流れであったーーが。
しかしよくよく考えてみれば若い夫婦が同居というのも可哀想な話である。しかもやたら若夫婦に干渉しそうな姑がいるのだ。琴子はともかく、直樹は母親から離れたがっているのでは、と想像できた。

「……別居……? ああ、そんなこと考えてないよ。琴子がこの家から離れたくないだろう。お袋のこと、ほんとの母親みたいに思ってくれてるのに」

「そうだな…」

また、琴子ちゃん優先なんだな、と内心面白く思う重樹。

「それに、経済的に無理だろう」

真剣な表情で父親の顔を見直す。本題はここからか、と父は構えた。

「……俺たちは結婚しても、学生の身だ。何の経済力もない。本来なら、結婚する以上一人前と見なされて、学費も、生活費も自分たちで賄うのが筋だと思う。でも、現実、私立大学の学費、あと琴子が1年ちょっと、俺が医学部だからまだか3年かかる。1人暮らしした分目減りしたから、貯金だけでは無理だと思うんだ。
ただ俺はこのまま成績が首席なら、特待生の申請をして授業料免除にしてもらえると思う。だから、琴子の分だけはなんとか貸与して欲しいんだ。
それと、今後の生活費は、本来ならバイトしてでも、食費と光熱費くらいは払うぺきなんだろうけど、医学部で、正直いろいろ遅れている身としては、バイトする時間はないと思うんだ。
だから、パンダイで、俺が代理をしていた時の給料の天引きと、これから開発する予定の新製品のロイヤリティの一部を、俺が就職できるまで生活費として使わせ欲しいんだ」

そういって直樹は、深々と父に頭を下げた。

そして、父はため息をつく。

……まったく…。

「……お前の気持ちは分からないでもない」

出来れば経済的にも独立してから、結婚したかったのだという男のブライドも、理解出来る。だが。

「だが琴子ちゃんの学費は、卒業するまでアイちゃんが、お前の学費はわしが持つと、二人で話あって取り決めた。結婚してもしなくても子供であることに違いはないんだ。学費のことはわしたちの義務だ。気にする必要はない。それに、奨学金や授業料免除の申請はするな。おまえが受けることによって本当に必要としている学生が受けられなくなるかもしれない。お前は、恵まれた環境に甘えるのはイヤなのかもしれないが、これもひとつの運命だ。諦めろ。
それから、生活費。それは、お前が医者になってからの出世払いでいい。稼ぐようになってからがっぼり貰うさ。そのころには、この家も建て替え時になるからな。アイちゃんと一緒の三世帯…いや、その頃には四世帯かな?…まあ、建て替え時の住宅のローンは、お前1人に負ってもらうから、覚悟しとけよ」

「親父……」

「……確かにお前は経済的には恵まれてる。だが、それゆえに負わなくてもいい代償のような辛い思いも味わった。お前が、この家に生まれたばかりに好きな女性と結婚もできない、なんてことにならなくて本当によかったよ。
…とにかく、今はあれこれ考えるより自分たちの幸せだけを考えろ。
親に受けたモノは、有り難く受けとっとけ。いずれは自分の子供に渡せばいい。それが、連綿と続いてきた無償の愛ってもんだ…」

重樹とゆっくりと穏やかに話せたのは、久しぶりだった。話せてよかったと思う。

「おまえ、こういう話、琴子ちゃんとしたのか?」

ふと、心配そうに重樹は息子を見た。

「いや……あいつは、あまり深く考えないし…俺が考えれば、それでいいかなって」

「う~ん……夫婦は、そういうもんじゃないと思うがな。二人の生活設計について、だ。互いの考え方をきちんと伝えあい、話し合うのは重要だぞ」

「……わかってるよ」

わかってる、と応じたくせに結局琴子とはきちんと話していない。琴子が、自分の将来のことについてまだはっきりと定まっていないのはわかっている。そして、ぼんやりとなりたいものがあることも。自分には無理と逡巡していることも。
相談してこない以上こちらから口を出すべきではないと思っている。けれど今後の家族計画について話し合えば将来の職業選択について話が及び、ついあれこれ余計なことを云ってしまうだろう。
琴子には自分でちゃんと道を見いだして欲しいと思う。彼女が今悩んでいる未来は、恐らく自分も望んでいることだから。早く、自分から気付いて欲しい…。

何にせよ家族計画もその琴子の将来によっておおいに変わってくるのだ。
だが母紀子はいとも簡単に云ってのける。

「赤ちゃんは早ければ早いほどいいのよ! あたしがじゃんじゃん面倒みるから大丈夫よ! 学生だからって気にすることないんだから! 早く孫を抱かせてちょうだいね」

琴子も琴子で、
「はいっお義母さんっ」
とにこやかに応じている。
直樹がため息をつきながら「まだ養われてる身でどうやって子供を養うんだよ」
と一言呟いたものならば、会社の経営状態は今は安定しいるから大丈夫だの、自分だってまだ子供を生める年齢なんだし、十分子育てはできるから安心して任せてちょうだいだの、機関銃のように捲し立てられる始末だ。
じゃああんたが産めよ、と……思わず突っ込みそうになったが、20歳も離れた弟妹が本当に出来たら怖いぞ、と思い口に出すのはやめた。
何にしろ母の勢いに琴子も引きずられている。
今回の騒動も然り。
騒ぐ前にせめて市販の検査薬で調べてくれと思わずにはいられないが、琴子が紀子の言うことに何の疑いも持たないのは仕方ないのかもしれない。
自分の恋が実ったのもこの姑の類い稀な行動力と思い込みのお陰なのだから、と。
そしてギロリと母は一睨みして云うのだ。

「お兄ちゃん、まさか、避妊なんてしてないでしょうね? 避妊なんてしてるとね、欲しい時に出来にくくなっちゃうのよ!?」

それは、なんの根拠があっての情報だ? と、思いつつ、
「五月蝿いっ! 夫婦のことにあれこれ突っ込むな!」
と、睨み返すしかない。
今回の妊娠騒動も、もしかしたら、と一瞬頭を掠めた疑念……

ーーお袋、まさか、寝室のサイドテーブルの引き出しにあったゴム……針で穴開けてないだろうな………

まさかとは思いつつも、やはり鍵の付いた引き出しに入れておこうと決意する直樹だった。

しっかり避妊具を使うのは、排卵期前後の時期だけだ。あとは外に出しているが、安全日は気を抜いてしまう時もある。基礎体温を測っているわけでもないし、絶対的な避妊ではないことはわかっている。
……問題なのは、基礎体温も測ってないのに、なんで夫の直樹の方がそのタイミングをわかっていて、肝心な琴子の方があまりわかっていないという事実なのだが。
琴子が、一度恥ずかしそうに訊ねたことがあった。

「ね…ねえ・・・入江くん・・・なんで、アレ、着ける時と着けない時があるの?」

やっぱり分かってないのか、今時の女子の保健体育はどうなってる? と、直樹はこめかみを押さえたが、保健体育の問題ではなく琴子の記憶力の問題だろう。

「危険日とか安全日とか、知ってるだろう?」

「うん。知ってるけど……なんで入江くんが分かるの? あたしも知らないのに! 凄いねっ流石入江くんっ! 天才ってそんなこともわかっちゃうんだ」

何の疑いもなく素直に称賛した琴子だが、直ぐに不安そうに再び訊ねた。

「でも、それって赤ちゃんはまだいらないってことだよね?」

ただ純粋に、直樹の赤ちゃんが欲しいと思っている琴子。出産や育児の不安は、信奉する姑の激励によって掻き消され、母親になるということがどういうことか分からないまま、夢見るように漠然とし
た思いを描いているに過ぎないのだろうと推測出来た。
そんな琴子にはっきりと「今はいらない!」と、宣言するのも憚れるものが
あったのは確かだ。
そして、出来たなら出来たで仕方ない、という瞹昧な思いがあったのも、また確か。
だから、彼女への答えも随分瞹昧なものだった。
まだ学生だから、なるべくなら子供は、経済的に目立してからの方がいいと思っていること。
ただ避妊は、確実な方法をしているわけではないから、出来たなら出来たでちゃんと受け入れるということ。

「う……うん、そうだよね、あたしたちまだ学生だもんね」

とりあえず同意したものの、どことなく淋しげだった琴子の顔を思い出す。
ピロートークの中で交わした会話を覚えていたのかどうかはわからない。

だが、基本避妊をしてきたのに直樹が妊娠のことをどう思うのかーーそれがもっとも琴子の気になるところだったようだ。

だから、ベランダで琴子に話したことは、彼女を天に昇るような幸せな気持ちにさせたことだろう。

ーー子供、作っちゃおうか?

幸せそうな琴子を抱いて、自分もまたこの上ない幸せを感じていて。
……でも、やっばり自分の身体のこともう少し知るべきだよなぁ、おまえ………
あどけない少女のような妻の寝顔を見つめながら、軽くため息をつく。
あんなに夜の彼女は、間違いく大人の女で、どきりとするような表情や姿態を見せるクセに、そっちの方の知識はいまだに中学生並ときた。


そういえば。
直樹の思考は、また、一年近く前に跳んだ。
結婚式直前…たしか、三日くらい前だったと思う。
仕事が忙しくほとんど直樹は家に帰れなかった時期だが、たまたま着替えを取りに帰った時に、琴子が紀子に泣きついているのを聞いてしまったのだ。

「おばさんっどうしようっ! ハネムーンの最中に生理が来ちゃうかも!」

……そうだな、その可能性あるな…と、何故か分かってしまった直樹。
……それは……マズイな…とも思いつつ……手は1つしかないが……
口に挟むべきかどうか逡巡している間に、紀子が彼の思ったことを代弁してくれた。

「大丈夫よ、琴子ちゃん。明日近くの産婦人科に行って、生理を遅らせる薬をもらって来ましょう」

「えっそんな薬あるんですか?」

「あるわよ。ただ、貰ったら旅行が終わるまで忘れずに毎日飲まないと駄目よ?
飲み忘れたら生理来ちゃうから」

「はい!」

近くの産婦人科って土屋産婦人科だな。あそこは世代交代して、確か娘が診ている筈だ。それに、ピルの処方くらいじゃ内診はないはずだ。
なんでそんなことを知ってるんだと自分で突っ込みを入れたくなるようなことを思いながら、ちょっと安心したものだ。
………ピル、きちんと飲ませなきゃなと、これだけは、肝に命じつつ。
そして、なんやかやと結婚式が過ぎ、ハワイでのハネムーンとなり紆余曲折の果てに漸く最終日に結ばれて。
朝、目覚めた琴子が恥ずかしそうに眩いたセリフに、思わず天を仰ぎそうになった。

「ハネムーンベビー、あたしたちの処に来てくれるかしら?」

ーー来るか!

生理をコントロールする中用量ピルを服用しているのに、妊娠する筈がない。だから初めての夜は、薄い膜に邪魔されることなく、自然なままで琴子を堪能することが出来たのだ。

ーーおまえ、もうちょっと勉強しろ………

……いくらなんでも知らな過ぎだろう。
相変わらす、すやすやという擬音でも聞こえきそうな寝息で、腕の中の琴子は目覚める気配がない。
時計を見るともう6時だ。もうすぐ目
覚ましもなるな、と思う。
今日は、直樹は1限から授業があるが、琴子は2限目からの筈だ。それが解っていたせいか、昨夜は少し無理をさせ過ぎたかもしれない。
ーーもう少し寝かせおいてやるか。
妻を起こさないようそっと、彼女の頭の下から腕を引き抜いて、枕元の目覚ましのスイッチを止める。
それらの動作だけでは、彼女を起こすことにはならなかったようだ。軽く寝返りをうって、波打つ髪が、彼女の愛らしい唇に張りついた。
直樹は、その髪を払ってやり、そのまま軽く彼女の唇にキスを落としてからベッドを抜け出そうと、顔を近づけた瞬間......

「……うっ…痛っ」

眠っていた筈の琴子が、突然顔をしかめて、うつ伏せに跪った。

「おいっどうした?」

慌てて直樹は、彼女の顔を此方に向かせようとした。顔色を見ないと何が起きたのか分からない。
しかし琴子は直樹の手をはねのけ、毛布をばっと被るとそのまま中に潜ってしまい、そして何やらゴソゴソとしている。

「おいっ何してんだっ」

直樹が毛布をめくりあげようとし
た途端、毛布の中から、

「い・・・入江くん・・・どうしよう」
という半泣きの声が。

「だから、何が」

「……来ちゃったよ」

「だから、何……」

もう一度言いかけて、はたと思いつく。

「ああ、おまえ、もしかして」

「……うん、生理来ちゃった…」

漸く琴子は、毛布から顔を出すと、いかにも憂鬱そうな顔つきでそう眩いた。

「……ちゃんと服着て眠ればよかった……ううっ……シーツ汚れちゃったよ~」

毛布の中からくぐもった声が聞こえる。

「どうせ俺たちの体液でグショグショだろ? 洗えばいいだけじゃん」

さらっと言ってのけた直樹に、

「た……体液って……そんなやらしい言い方しないでよっ!」

がばっと毛布から真っ赤になった顔を出し、猛然と抗議をする琴子に、
「体液は別に工口用語じゃないだろう」
と、平然と返す直樹。

「……でもなんか入江くんが言うとやらしい……」

言いかけた琴子をギロッと睨む。

「おまえ、さっさと着替えてこいっ」

いつの間にか先に服を身に付けた直樹
は、シーツを引き抜きそのまま毛布にくるまった琴子をベッドから蹴落としたのだった一一。

「入江くんの意地悪~」

毛布を頭から被ったまま、チェス卜前にいき、ゴソゴソと服やら下着やらを準備しているらしい琴子に背を向けて、自分はさっさと大学に行く仕度をしていた直樹は、ふと思いついたように言った。

「結局、医者の言った通りになったな。まあ残念ながら親父になるのはしばらくお預けのようだ」

直樹の言葉に、琴子はっとしたように振り向いた。

「あ……そうか…」

あからさまに残念そうな顔で琴子が眩く。

「せっかく入江くん夕ぺあんなに頑張ってくれたのに…ゴメンね...…」

……いや、別に子供の為に頑張った訳じゃないし。だいたい出来るとも思ってなかったし。
琴子が謝ることでもないし……

眉間に皺を寄せ軽くため息をついて直樹は妻を見る。
申し訳なさそうに、うるうると直樹を伺っている琴子の方にそっと近づくと、毛布ごとぎゅっと抱きしめる。

「……今度ちゃんと話そうか……」

「え?」

「子供のこと。二人の未来のこと」

「………うん………」

カーテンの隙間からうっすらと白んできた冬の空が微かに見えた。
そろそろ母も起きて朝の支度を始める頃だ。

「俺、先に行くから。おまえ、2限目からだろ? 洗濯とかやってて遅刻すんなよ? 行き辛いからってさぼんじゃねぇぞ」

くしゃっと頭の上に手を置いて髪の毛を掻き回したあと、軽く啄むようなキスをする。

「サボらないよっ」

ほんとは、やっばり、大学に行ってから皆から何を聞かれるかと思うと憂鬱だけれど……。
ばたん、と直樹が出ていった後の扉を見つめ、琴子は軽くため息をついた。

でも、大丈夫……。
直樹の触れた唇に指を押しあて、ゆっくりとその感触を思い出す。

このキス1つで、今日1日きっと頑張れる。

「さてと…………」

琴子は、ゆっくりと立ち上がった一一。






ーー特に何も盛り上がりのないまま後編へ続く! のです……

※※※※※※※※※※※※※※※

何が長いって、直樹さんの回想がやったら長いんですね……5時半から6時の30分間の回想(^^;あっちの話こっちの話と行きつ戻りつして、なんか分かりにくくなってすみません。

直樹さんに色々と真剣に考えていただきたかったのですが、ぐだぐだと考えてすぎて、話もぐだぐだです。ぐだぐだぐだぐだ…………(..)

後編はもうちょい甘くなる予定です。(タイトル通り)しかし、最近はベッドの中で始まってる話ばかりだな……(^^;


関連記事
スポンサーサイト


Snow Blossom


<<19941209 ~愛しいと思うままに君を抱きしめたい(後) | ホームへ | 20001113~ ………余韻。>>
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2014/11/16 21:54】 | # | [edit]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1121nonono.blog.fc2.com/tb.php/49-bba1749f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)