19970605 ~Love chargeはカンペキに



このお話は『隣の客は………。』の翌朝のイリコトサイドのお話です。
砂吐きそうに甘いかも? 入江くんが、特に(^^;

※※※※※※※※※※※※※※※※


頭の下の腕がそおっと抜かれようとして、意識が覚醒した。
でも、まだ瞼が重い。
そして、身体も重くて、だるい。懐かしい気だるさだ。
自分を起こさないように、少しずつ少しずつ直樹が腕をずらしていくのがわかり、琴子は少し嬉しくなる。普段は素っ気ないクセに、実はこういう細やかな優しさがあったりするのだ。
でもまだ離れ難くて、眼を瞑ったまま、直樹のパジャマをぎゅっと掴む。
だって、こんな風に直樹の腕の中で眠るのは本当に久しぶりで……そして次は恐らく1ヶ月以上先の話なのだから。

「…起こしちまったか?」

「うん。…でもまだ起きたくない」

「いいよ、寝てて。おれは病院行くけど。おまえは適当に起きて鍵かけてポストに入れといてくれればいいから」
そう言ってあっさり腕は抜かれた。

「……いや。あたしも一緒に起きる。で、病院まで送るから」
すがるように直樹のパジャマの裾を掴む琴子の頭にぽんと手を置くと、
「好きにすれば?」と笑った。
さっさと帰れと云われるかと思った琴子は、少し安心する。直樹の中に、昨夜久しぶり過ぎてつい無茶をさせたという負い目があるとは露程も考えない。

「……入江くん、大丈夫? 一晩中腕枕してもらって、腕痺れてない?」

「今さら……慣れてるよ」

そう言ってから琴子の頬を両手で包むと、直樹の唇が重なってくる。触れるような、啄むようなキスから、やがて朝にしては濃厚なものに変わってくる。

うっとりと直樹のキスを受けながら、幸せがこみ上がって来るのを感じた。

ほんの少し遠くからでも顔が見られれば、それだけで十分エネルギーを補填できると思った。
それが、ちゃんと会って、話せて、抱き合って、キスしてーーいっぱい愛してもらって……フル充電どころか、オーバーフローして溢れかえりそうだ。
カンペキ、200%チャージ。

「……いたたた」

ちょっとオーバーフローの弊害を感じるが、まあこんなのは東京にいた頃はしょっちゅうだったわけで。この痛みすら懐かしくて泣けてくる。

「大丈夫か?」
直樹も、一応自分のせいなので気にしているようだ。少しタガが外れた自覚はあった。

「うん、平気……」

にこっと若干ひきつった笑みを浮かべ、話題を反らすように、
「もしかして入江くんパジャマ着せてくれた?」と、気になっていたことを訊いてみる。
脱がされた記憶はあるが身につけた記憶はない。

「おまえ、今朝も布団蹴ったくってただろ? 6月とはいえ素っ裸であの格好はキツイだろうってな」

「う……まあ、ありがとう。入江くんを蹴ってはないよね?」

少し心配になった。
この狭いシングルサイズのベッドは、初めて直樹とひとつベッドに眠った雪の日のバレンタインを思い出す。あの後、何度寝相のことを、からかわれたことか。

「二ヶ月ダブルベッドにひとりでふんぞり返って寝てたから、寝相に自信ない?」

「う……あたしいつもちゃんと入江くんのスペース空けて寝てるもん」
そういう癖がついてしまってるだけなのだが。

「大丈夫。蹴られてないよ。蹴り飛ばしたのは布団だけ」
もう一度抱き締める。

……幸せ過ぎる。でも……甘すぎない?
こんなに直樹は優しかったろうか?
約束を破って来てしまった自分を責めもせずにーー。

もしかして、浮気!?
浮気すると妙に優しくなるっていうじゃない?

幸せの絶頂にいた琴子は、自分の飛躍した妄想のせいで唐突に不安の嵐の中に投げ込まれた。

な、奈美ちゃんのお母さんは違うとしても………そう、あんな年上の人、あり得ないーーもしかして、隣の人? チラッと扉から顔出してたけど、なんかとても美人だったような………

「なんで、隣の女と浮気するんだよ。会ったこともねえよ」

「え? 言葉にしてた?」

ほっぺをむにっと引っ張られる。

「夕べあれだけ可愛がって、なんでそんな疑いを持つのか意味がわからねぇ」

「だって、浮気してる人は、ちゃんと奧さんともしないと疑われるから、マメにエッチするって……」

「浮気の露呈防止の為に、全力で三回もやるかっ」
ひゃん!
また噛みつくようにキスされて、くらりとなる。

それもそうか、とも思う。
でも。
そう、夕べから何か引っかかってた。
何だっけーー?

あ、そうだ。

「何?」

「え? あーっえーと」

「何だよ?」

「えっとね」
ひどく言いづらそうな琴子が顔を真っ赤にして俯いて。

「夕べちょっと思ったの……なんで準備万端用意してあるのかなって……」
そして、ベッドサイドに落ちていた小さな箱を指差す。

「……ああ」

「も、もしかして、他の誰かとアレを使ってたのかと……」
そう、昨夜抱かれながらもちらりと感じた不安は、直樹がきちんと避妊具を着けていたことでーー。
な、なんであるの?
と、思ってしまったことだった。突然来たのにちゃんとこの部屋にソレがあることの意味がわからなかったのだ。
それは一瞬感じた疑問に過ぎなかったけれど、朝になってみて、思い出したとたん不安は再び増幅した。

そして直樹は直樹でーー普段は細かいことには無頓着なクセになんでそんなことに気付くんだ、と思わずにいられない。


「見てみろよ。中味の残量数えて。新品の箱だから」

準備してたんだけど?
大体ほんとにおまえが夏休みまで来ないなんて思ってもみなかったし。
いや、絶対GWに来ると思ってたし。
だから、GW前にしっかり買い置きしておいたのだがーーそんなこと言える筈もない。まるで琴子を侮っていたのだと。信用してなかったのだとーー思われるだろう。いや、実際信じてなかったわけだが。

「病院で試供品貰ったんだよ。手術用手袋扱ってるゴムメーカーが色々持ってくるから。ラテックスアレルギー用のとか……」
適当に誤魔化す。

「ええっ これラテックスアレルギー対応のス〇ンなの?」
箱を持って妙に感心する琴子。

嘘である。近所のドラッグストアで買ったフツーのゴムだ。

「……まあな」
どうでもいいことだ……。

「へぇ~そうだよねーあたしたち医療従事者はラテックスアレルギーの人多いっていうし。入江くんなんて毎日外科用手袋着けてるもんね。アレルギー対策しとくの重要だよね」

適当な嘘に妙に感心し続ける琴子の口をもう一度塞ぎ、
「コーヒー入れてくれ」と、何とか会話を終了させる。



「はい、どうぞ」

トーストと目玉焼きの簡単な朝食を直樹がさっと作る。琴子がコーヒーを淹れている時間とほぼ同時間だ。
そして、目の前には琴子のコーヒー。
ずっと欲していた、この薫り。

「あまりひとりじゃコーヒー淹れない? 豆もペーパーフィルターも余り減ってないね」

「そうだな」

一人でゆっくりコーヒーを淹れる時間など全くなかった。自分で淹れるコーヒーの美味くないことといったら。
豆もフィルターも琴子が来たときの為に買ったようなもの。

ついでにいえばカップやら歯ブラシやらも琴子用に買ってあったのだが、変に誤解を招かないように店の袋に入ったまま未開封だったから、単なる買い置きと思ったようだった。


結局ーーエネルギー不足なのは直樹の方だったのだ。
電話で声を聴けばこまめにチャージできた琴子と違い、直樹の方がもっとずっと直接的に琴子を求めていた。

「夏休みまで会いに行かない」

そう宣言して一年後には必ず看護婦になる決意を見せた琴子に、直樹が異論を唱える訳がない。
その言葉通り夏休みまで頑張ってほしいという思いは強かった。
けれど、その一方で。
ーー本当に夏休みまで我慢できるのか? おまえが俺なしでそんなに耐えられる筈ないだろう?
そう心の片隅で思っていたのだ。
だから五月のGWには耐えきれず絶対来るものだと、あれこれ準備していたのに、肩透かしを食わされたのは直樹の方だった。
一応休みも取る準備もしていたのだ。急な呼び出しで反故になる可能性も高かったから伝えはしなかったし、案の定休みは駄目になったのだが。

GWは卒論ゼミの研修と国家試験の勉強会があると張り切っていた琴子。
直樹の方がずっと期待して、ずっと待っていてーーそして激しい落胆を感じていたのだとーー琴子は微塵も思うまい。

そして、昨日。
思いもかけずやって来た台風娘。
一夜の逢瀬で十分充電出来たと幸せそうに微笑む琴子。
でも、直樹にしてみれば。

ーーまだまだ足りない。

いっぱいキスして、いっぱい琴子の啼き声を聴いて、折れそうなくらい力強く抱き締めて、何度も深く繋がって。
でもまだ足りない。
求めても求めてもキリがないようにすら思えた。
どうやら琴子の直樹不足より、直樹の琴子不足の方がずっと慢性的で深刻な状態だったのだ。
医師として患者と初めて向き合う責任や重圧、30時間ぶっ続けもざらにある激務にも涼しげな顔をして対応してきた。やりがいもあるし、若く体力もあり、キツイとも思わなかった。
けれども本当は気付かなかっただけ。
命と向き合うことには迷いや不安が溢れていることに。
精神的にも肉体的にも疲れていることに。
そしてそれを癒してくれるのは琴子だけーー。

琴子が直樹を一目見るだけで100%充電でき、一晩共に過ごすだけで200%になったと言っていたが、直樹はまだまだフル充電にはなっていない。まだ80%くらいというところか。それくらいーー琴子に飢(かつ)えていた。

とりあえず琴子のコーヒーで、90%までアップ。


「じゃあそろそろ行くぞ」

「うん」

名残り惜しげに部屋中を見回していた琴子に声を掛ける。

「でも、良かった。本とに女の影、ないね。ベッドの下のピアスとか、洗面所の奥に隠してある化粧品とか」

何をこそこそ嗅ぎ回っているかと思いきや。

「……まだ疑ってんの?」

「あーうそうそっ信じてるから!」

焦って直樹のシャツを掴んで、上目遣いに直樹を見上げる。

「大好きだからっ! 大好きだからね、入江くん」

ああ、これだーー。

「……知ってるよ」

これで、100%フルチャージ。






そして、それから数時間後。琴子の登場が波乱を呼んで、直樹の患者が倒れるという事態が巻き起こり、なんだかんだで結局琴子はそれから一週間神戸に滞在することとなり。
なんだかんだで直樹も琴子が帰る頃には、200%の充電が完了したのだった。


そして、波乱の夏休みはまた、別の話ーー。



※※※※※※※※※※※※※※

うわっ入江くんデレ過ぎ?
原作では結構ストイック?な一週間な感じですが、思いきり甘々にしてやったぞ(^^)v

直樹の方が絶対琴子不足だと思うので、我慢するんじゃねーよ、な話になりました。

神戸の話は色々な素敵サイト様が書いていられるので、どうにもかぶってる感が否めませんが。まあ、それも二次の醍醐味ということで許して頂けたらと(^^;

かをる子さんの影が微塵も感じないこちら側の部屋でした。全然隣の物音気にしてません。多分、直樹は気付いていると思いますが………ま、いっか、くらいなもんで……(^^;そーゆー奴です(-.-)

因みにかをる子さん、原作に登場してました(^^)『隣の客は………』を書いている時に、原作の科白を追っていたら、ちゃんと隣の部屋の女が覗いているのに気がついて。お、かをる子さんいるじゃんって思ってしまいました~(^^)v


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§ Re.sai様

コメントありがとうございます♪

そうなんです、直樹は三回やってもまだ足りないのです(^^;琴子ちゃんの方が周りが賑やかでなんやかんややり過ごせている気がします。夏休み………思いきり夏休みの話があるように書いていますが、まだあまりまとまってないのですよ(..)タイトルだけは決まってるのですが。夏ごろあれこれ妄想してましたが、素敵サイト様が神戸の夏休みの話書いてらして、妄想一時中断中(^^; 復活したらいつか書きたいです♪

§ Re.にゃんこ様

コメントありがとうございました♪

スミマセン、甘過ぎで胸焼けしちゃったでしょーか?
かをる子さんは、朝の身支度で忙しく、二人の会話の半分も聴いていないでしょう!……ということにしといてください(^^;
しかしよくよく考えるとどんなに安普請なんだよ……結構立派そうなマンションなのに(^^;

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