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個別記事の管理2019-01-13 (Sun)



なんてこった。すぐに更新するつもりがもう1月半ば過ぎちゃいました。この調子だと気かつけば平成終わってるかも……

さて、主宰のソウさま宅ではイタキス期間、正式に終了しましたが、うちはまだ終われません……1人こっそり続行ですf(^_^;









※※※※※※※※※※※※※※※※※※




11月21日、朝ーー。
って、ハワイ時間だから、日本じゃもうすでにいい夫婦の日なんだよね。

式は午後からだから朝食をとったあと、あたしたちは部屋でまったりしていた。
自分の着るドレスや、アクセ類の準備万端。
忘れちゃいけないのは、これよこれ。
あたしはにんまりして白い小箱を取り出す。
ハルとお年玉出しあって準備した、銀婚式用のペアリング。神戸のかをる子さんのジュエリーデザイナーのお友だちに格安で作ってもらって、先日の推薦受験の日についでに取りに行く予定だったのにーーほら、突然のハプニングで引き取りに行けなくて。
翌日にはハワイ出発だからもう、諦めるっきゃないーーとがっくりしてたのに、次の日の朝、かをる子さんの知り合いの神戸医大のドクターが、たまたま学会準備で東京行くから託すわねーーと。そしてあたしは東京駅まで受け取りに走り、無事に手元に届いたってわけ。
シルバーとはいえ、子供の小遣い程度のお値段じゃ申し訳ないくらいの素敵な出来映え。
もうかをる子さんには感謝しかないなー。
いっぱい写真撮って送ってあげなきゃ。
と、思って、スマホやデジカメの充電をしておこうとその準備をしていたらーー(スマホはいつの間にやら充電切れて電源落ちてたもので)


「ねーちゃん、日本で大変なことになってるぞ」

と、スマホ片手にハルがあたしの部屋にやってきた。

「なによ?」

「おれも遊ぶのに忙しくて全然、SNSとかチェックしてなかったんだけどーー」

すっと、見せられたのは、昨日ネットでトップ記事になっているというニュース。

「ええーー!?」

〈新幹線出産! 赤ちゃんの名前は『のぞみ』くん〉

〈のぞみくんを取り上げた話題の3人の女性、ずっと隣で励まし救急車に同乗した受験に向かう途中だった女子高生に呼びかけ。
〈お嬢さん、ちゃんと受験できた?〉

〈赤ちゃんのママや娘にも名前も告げなかったお嬢さん。受験、もし受けられなかったら本当に申し訳ないと……〉

〈話題の女子高生は何処に?〉

〈制服から推理して◯◯高か××高?〉

「なんか、ねーちゃん、捜されてるけど」

ええーー!?

ネットを見ると、「妊婦が臨月で長距離移動するな」とかいった心無い投稿もあるけれど、おおむね、自らの受験を棒にふって名前も告げず立ち去った謎の女子高生への称賛と興味が溢れていた。

「日本に帰ったら名乗り出る?」

にやにや笑うハル。面白がってるなー。

日本に戻ったら、あの時の赤ちゃんに会いに行きたかったけど……

「どーせ、飽きっぽいネット民たち、日本に帰った頃には忘れてるわよ」

ぜひ、そうなっててくれと願いつつ、とにかく今日の晴れの日をクリアしなくっちゃ、とあたしは気持ちを切り替えて、お父さんとお母さんの部屋へ呼びに行く。




ちなみに。
この二人の部屋に入るときはノックは必須。
でないとちょっと間のわるーい思いをすることがしばしば。

ーーそして、今朝も。

「お母さん、そろそろ時間だよー。入っていい?」

「だめーっ みーちゃん、ちょ……ちょっと待って~~すぐ行くから!」

なんか、ドタンバタンしてるよ……。

お父さん、デコルテライン、気をつけてくれたかしらーー(って、そんなこと娘に気遣いさせんなー!)






* * *



「ヨーコさん、お疲れさま」

コナコーヒーを出してくれたスタッフに、「貴女もお疲れ」と労う。

疲れた……

午前中からすでにぐったり。こんなにドタバタしたお式も久しぶりだわ。

今日の一件目の挙式は、あの堀内夫妻の長女。
メイクが気にくわないだのティアラの位置が気にくわないだの、はじまる前から散々ごねまくった挙げ句、式の直前で新郎新婦が大喧嘩を始め、もうやめるやめないの大騒ぎに。
(式だけ止めても、もう子供いるんだし、入籍してんだから意味ないだろうって心の中で盛大に突っ込んだけどね)

五人姉弟がそれぞれ口喧嘩始めるし、なんか嫁姑の戦いまで起きちゃうし、ハワイくんだりまで来て何やってんだか!

いい加減にしろっ! と心の中で叫びまくってたわよ。

最終的には、影が薄くて気弱そうな麻里さんのご主人、巧さんが一喝して、ようやくみんな収まったと言う……(なんだ、やればできるじゃん)

1時間遅れでやっとこ式が始まり、そして、今一段落ついたところ。なんだかんだ感動的ではあったわよね。まあ、無事終わってよかったわ。
さーて、午後からは入江夫妻の銀婚式だからすぐに準備しないと。


「ヨーコさん、大変です……!」

ーーと思ったら。
どうやら、またまた何か起きたらしい。真っ青な顔をしてスタッフが駆け込んできた。
はあーーなんて日なの!




* * *







「まー綺麗よ! 琴子ちゃん!」

控え室で、ドレスアップしたおかあさんをおばあちゃんがパシャパシャと一眼レフで撮りまくる。
試着した時も思ったけれど、派手と思われたレインボードレス、軽やかなパステルピンクがメインで、うっすらとオレンジやイエローにグラデーションされている。ほんと、可愛らしい。そして、さらに20歳くらい若く見える。こりゃもう絶対並んで写真撮ると姉妹だよねー。

時間を見るとそろそろお式の時間だわ。係りの人が呼びに来てくれるって話。
ヴァージンロードを別々に歩く訳でなく、最初から二人並んでチャペルに向かってもらうので、先にさっさと礼装に着替えたお父さんもずっと一緒にお母さんの仕上がり具合を見ている。
一見、スッゴい無表情な瞳で見つめてるけど、微妙に口角上がってるよ、お父さん。

「あ、あたしちょっとお手洗い行ってくるね~」

式の前に用を済ませようとトイレに向かう。
個室に入っていたら、日本語でペチャクチャとお喋りしている声が近づいてきた。甲高い、若い女の子の声だ。3人くらいいる?

あれーー? この声。

「………ったく、ここまで来て、大喧嘩って、大丈夫なのかしらん? 姉さんとこ」

どうやら堀内家の姉妹たちらしい。次女、三女、四女?

「お義兄さん、担当してくれたここのスタッフの女の子、口説いてたらしいわよ。ここまで来てそんなことするお義兄さんもお義兄さんだけど、女ったらしなのはじめからわかってんじゃん。今さらよね。三人の中から勝ち残って選ばれたのって自慢してたけど、つまり三股されてただけじゃん。しかも計画的に子供作って奪い取ったんだし。麻耶ねぇもあざといよねー」

そ、そうだったのか……
そりゃ大変だ、麻耶さんち。しっかし、当日に喧嘩って……

「お義兄さんって顔だけなのにね」

「ま、お姉ちゃん、チョー面食いだから。ほんとにだめんずに引っかかってばっかよね」

「もうちょっとスペック、色々ある男じゃないとね」

「そう思うと、入江さんちのパパ、理想だわー。全然うちのパパと同じくらいの歳とは思えないし」

「なんか、次元が違うよね~」

「あーあ、ママ、25年前にもっと頑張って略奪しちゃえばよかったのに」

なんだとぉーー?

「やだ、そしたらあたしら生まれてないって~~」

「あたし、やっぱ、もうちょっと頑張ろうかな~。あの奥さんなら奪えそう」

はぁ?

「何いってんの。歯牙にもかけられなかったくせに」

そうよ。お父さんの周りにどれだけ果敢にチャレンジして呆気なく玉砕していった女たちがいたと思ってるのよ! どれも一般的にみてかなりレベル高い女性ばっかりよ? あんたたちの足元にも及ばないような。
それでもお父さんの目にはお母さんしか映らない。お父さんがどんなにいろんなスペック持ってたとしても、そこが何よりも一番尊敬できるところなんだからねー!

「あたしの方が、絶対落とせると思うんだけど。これでもおじさまキラーなのよ」

なんなの!? その根拠のない自信は!

「16の小娘が何いってんのよ」

「あたしは、あのハルって子、いいなぁーと思ってたんだけど」

げ、こいつがハルを追っかけてた四女ね!

「でもね、昨日、浜辺で、パカッて自分の足をはずしてるのよ! ロボットみたいに。引いたわーー。流石に足のない人はムリ!」

は?

「たとえ普通に生活できたとしても、色々不自由なことはあるんだよねー。やっぱ、ちょっとムリだわ。どんなに顔がよくっても、なんだか気持ちワルいもん」

ーー多分、ハルは引かせるためにわざと義足をはずしたのだ。成長してからは流石にそんな目立つことしないもの。
そして、その策略はまんまと成功ーーにしても!
キモチワルイって……キモチワルイって!!

あたしはもうムカムカして、扉を蹴り倒して飛び出したい気分になった。

「今から銀婚式とかいってたよね」

「銀婚式なんかでそんな金かけて、いいよねーお金持ち」

「うちなんて、家族でハワイなんて、相当無理してるよね。麻耶ねえの旦那さんの実家がそこそこお金あるから実現できたけど……うちら家族の分は出してもらってないんでしょ? ケチよねー」

「なんか、さっきもお金のことでぐだくだ揉めてたもんね、お姑さんと。これからたいへーん」

「やっぱ、あんた、義足のことなんか目をつぶってさ、あの少年、落としなよ。金持ちだよ~。あんたは息子、あたしは父親狙うからさー」

「なによー、マジ、麻希まで父親狙うの?」

「麻帆ねぇ、ソッコー振られてたじゃん。なーによ、顔歪めて」

「とりあえずさ、その銀婚式とやら、ぶっ壊しちゃおーか」

けらけら笑いながら洗面所でいつまでも虫酸が走る会話をしてる姉妹にあたしはとうとう耐えられなくなって、バタンと個室のドアを開けて、彼女たちの前に姿を現した。

「ーーー!!!」

あたしを見て、絶句する姉妹たち。

言いたいことは山ほどある。
あるけれど。

あたしは嫌味なくらいにこやかな笑みを浮かべ「ごめんなさい。手を洗ってよろしいかしら?」普段使わないようなお上品な言葉使いで彼女らの間を割って、手を洗いさっさと、トイレを後にした。

トイレでは意味不明な叫び声が聞こえ、何だかドタバタしてたけど、無視してそのままつかつか歩く。
喧嘩吹っ掛けて揉め事起こすのも面倒だしね。

でも、もう少しその場にいたら。
後になって後悔したのだけど、それはもう後の祭りでーーー。






トイレで不愉快な会話を耳にしたことはおくびにも出さず、あたしは平静な顔をなんとか取りつくろって部屋に戻り、スタッフが呼びにくるまでの時間を家族たちと談笑しながら過ごしていた。

「………にしても、遅いわねぇ。もう30分以上遅れてるわよ」

おばあちゃんが何度も時計を見る。

「前の堀内さんとこ、少し始まりが遅れたらしいから…」

お母さんは特に気にしてる様子もない。
あたしは内心結構イラッとしてるけどね。

「でも、そろそろあたしたちは式場の方に行きましょうか」

おばあちゃんが腰をあげたのを合図に、みんなぞろぞろと部屋から出ていく。
あたしもみなに付いていこうと立ち上がった時ーーお母さんに「みーちゃん、何かあったの?」と心配そうに訊ねられた。

あたしってば変なとこお父さん似で、しれっとポーカーフェイスなんだよね、と内心自負していたのにーー

「え? ううん。何もないよ」

あたしは戸惑いながらも否定する。
はー、流石、お母さん。
天然ボケのくせに、ドキッとするくらい家族のことは察しがいい。

あの堀内姉妹たちのお陰で最悪気分なのだけれど、他人の言葉に惑わされ振り回されるのは人生の無駄と思うので、なるべく考えないようにしていた。

「そう? ならいいけど……」

お母さんがちらりとお父さんのほうを見てから優しく微笑む。
なーんか、夫婦であたしの話題、してた?

ーーそのとき、扉をノックする音が。

「ああ、やっと呼びに来たみたい」

と、あたしが扉に近づこうとしたらーー

「直樹さん! 助けて! 娘がーー麻帆がーー!」

と、血相変えて飛び込んできたのは麻里さんだった。

「どうしたの?」

怪訝な顔をしたお母さんが駆け寄って訊ねる。

「麻帆が、お腹痛いって……本当に苦しそうなの。お願い診てやって……」

はあ?
何、昔と同じベタな手を使ってるのよ!
そんなんで騙されると思ってんの?

「何処にいるんだ?」

お父さんがすっとあたしの横を素通りして麻里さんに訊ねる。

「待ってよ! もうすぐ式が始まるよ? そんなウソに構ってないで……」

引き留めようとすると、お母さんが「まず、様子を見てからね?」と優しくあたしを制した。





麻里さんのあとをついていったあたしたちは、堀内家の控え室のソファの上で身体を丸めお腹を押さえて呻いている次女麻帆さんに近づく。

横にはヨーコさんとスタッフの女性が、タオルやら洗面器やらを救急箱やら準備して横に立っていた。

目を瞑り苦悶の表情をして、脂汗まで垂らしてる麻帆さん。なかなか上手い演技だわ。
でも、騙されないわよ。
母親と同じ手を使うなんて、ほんと、ダサすぎる。

「いつから?」

お父さんが心配そうに見ている姉妹たちに訊ねる。

「今朝からお腹痛いとは言ってたの。でも、なんとか薬のんでやり過ごしてたみたいで。そしたら、さっきトイレで吐いて」

「はぁ? 吐いてたのは毒でしょ? 元気に人の悪口いってたクセに!」

あたしもカチキレて思わず言い放つ。
平然とお父さん落とすとか言ってたの、ついさっきじゃない。

「琴美!」

お父さんがあたしを睨む。

「何よ! お父さん、まさか信じてるの? こんな茶番! 25年前の真似して、ただうちのお式を邪魔したいだけじゃない! なに騙されてんの? そんなのに構うことないわよ!」

「みーちゃん、ダメよ!」

すうっとお母さんの手があたしに近づいてきて、一瞬、叩かれると思って目を瞑った。

むぎゅ

お母さんはあたしのほっぺを両手で強く押し潰して変顔にさせたのだ。

な、な、なによー!

喋ることが出来なくて、ふがふがと変な音しか発せられない。

「そんなこと、いっちゃ、ダメよ。わかるでしょ?」

お母さんの表情はーー悲しそうな困ったような……あたしは一瞬にして、やっちまった! と悟った。でも、口からこぼれ落ちたのはーー

「で、でも、この子たち、さっき、トイレでペラペラと酷いこと……は、ハルのこととか……式を邪魔してやるとかっ」

言い訳のような言葉たち。

お父さんはそんなあたしの戯れ言なんか一切聞く耳持たないといわんばかりにーー酷薄そうな凍りつきそうな瞳で、一言だけあたしに向かって言い放った。
静かにーーそして冷たい口調で。

「ーー琴美。おまえは医者になる資格はない。もう医学部は受けるな」

今までーー18年生きて、そんな冷ややかな父親の言葉をうけるのは初めてだった。
まるで、世界中が暗闇に陥ったような衝撃と動揺があたしの中に拡がる。

いつの間にかーーあたしの瞳からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

「な、なによ……! お父さんのばかっ」

あたしは思わず反抗期の子供のような捨てセリフを残して、その場から逃げるように駆け出していた。




* * *



なんなの、このものすごいデジャブは……。

あたしはこの冗談のような状況に思わず目眩を感じてしまった。

「追いかけなくて大丈夫?」

あたしは琴子さんに声を掛ける。

「みーちゃんはあたしと違って大人だから。今は彼女の方が……」

そういってソファの上の麻帆さんを心配そうに見つめる。

仮病じゃないのかしらね? 琴美さんじゃないけど、朝からのドタバタを思うと、この家族はあまりに信用ならない。
とはいえ、真っ青な顔で苦しむのはかなりリアルで。

「す、すみません、直樹さん。娘を診てください」

巧さんが本当に申し訳なさげにペコペコと頭を下げる。

「お腹、捲っていいですか?」

直樹さんが麻帆さんのブラウスをたくしあげると、腹部が露になった。

「直樹さん、どうなの? 麻帆はーー」

「痛みはいつから?」

「前から時々……生理でもないのに下腹に痛みがあって……排卵痛かなって」

「痛いのはこの辺りですか?」

「吐いたのは何回くらい? 」

「便秘や下痢はーー?」

次々と問診をし、本人が答えられないと、姉妹たちが変わって答える。

骨ばった長い指を素肌に押しあて触診をする。

「うぐっっーーー」

ある箇所に触れた途端に激しく苦悶の表情を浮かべていた。
脂汗が頬を伝う。

「なんか、下腹膨れてない? あんた、もしかして妊娠……」

「し、してないわよっ妊娠なんて!……いたた……ちょっと食べ過ぎで…少しぽっこりしただけ……いたたたた……お願い、なんとかしてぇぇ」

触る手をはね除けるようにして身体を丸めた。のたうち回るといった感じだ。
さすがにこれは演技ではないと、素人目にもわかる。

「詳しく検査してみないとわかりませんが……もしかしたら卵巣嚢腫かもしれません」

「卵巣? 」

「右卵巣が腫れてますね。すでにこぶし大近い。おそらく卵巣嚢腫茎捻転の可能性が高いです。婦人科は専門外ですので、すぐに病院に搬送した方がいいでしょう」

「卵巣嚢腫って……卵巣がんってこと!?」

母親である麻里さんが真っ青になって直樹さんににじりよる。

「卵巣嚢腫自体は良性の腫瘍です。基本、無症状であることが多いのですが、大きくなって破裂したり捻れたりすると激しい疼痛が表れます」

「破裂って……」

「詳しく検査してみないとわからないので、とにかくすぐに病院へ行きましょう。もしかしたら緊急オペになるかもしれませんが」

「ええーっっ。手術って!」

堀内家一同真っ青になる。

「とりあえずエコーで確認してからオペとなるとかと思います。今では腹腔鏡でできますし、難しい手術ではないですよ。命に関わることはないでしょう」

「ど、どうしよう……こんな海外で……な、直樹さん~~! 一緒に来てくれるわよね?」

泣きそうな顔で麻里さんが直樹さんにすがり付く。

「ええ、入江くんがいてくれたら安心よ」

琴子さんがにっこりと応えた。
いや、ちょっと待って。あなたたち、今から銀婚式だし。

「いえ。おれは婦人科は専門外だから、役にはたてませんよ」

意外なことに直樹さんが、あっさりと断った。

「そ、そんな~~」

「入江くん、でも……心細いわよ。見知らぬ土地で言葉も通じなくて」

優しいなぁ、琴子さん。
昔あんなにイヤな思いさせられた女の一族なのに。

うんうん、と首を振って懇願するような瞳を入江夫妻に向けている堀内家の女たち。

でも、ここからはあたしの出番。

「堀内さま」

あたしは彼らの前に割って入る。
無論、こんなやり取りの間に、既にスタッフに幾つか指示をしていた。

「救急車はこちらでは料金かかりますので、当社の車を手配しました。すぐに近くの総合病院に参りましょう。そこには日本人の産婦人科医とスタッフが居ます。私の出産も異常分娩で緊急な帝王切開だったんですが、無事取り上げてもらったので、腕はいいですよ。
うちの日本人スタッフも同行させますので、どうかご安心を。まずはお母さまが落ち着いてくださいね。
あと、海外旅行保険は入っておられますか?ああ、それはよかったです。こちらで緊急オペとなると結構な医療費がかかりますが、保険に入っていれば大丈夫ですよ。
あ、車の支度できたようです。車椅子も持ってきましたので、こちらにどうぞ。ーーーあ、入江さま。どうもありがとうございました。あとは私どもの方で対応いたしますので。ハワイにこられた日本人の方々にもう一度来たいと思ってくれるようなフォローをするのが、私たちの努めなのです」

深々と入江夫妻に頭を下げた後、うちのスタッフたちの手により麻帆さんは車椅子に乗せられ、車が待機している玄関ホールまで連れていった。
一応タクシーも呼んで、他の家族も同行できるように手配済みだ。


車に乗り込む堀内一家を見送ったあと、あたしは一緒に見届けていた入江夫妻の方をくるりと振り向いて、にこやかな笑顔を一瞬封印しーーそして、大きな声で叫んだ。

「何を呑気に他人の家族を見送ってんのよ?! 早く、自分の娘を捜しだしなさいよ! ハワイが安全だと思ったら大間違いよ!」

そして二人は駆け出した。
ちなみに琴子さんは、レインボーカラーのドレスを着たまんまだーー。




※※※※※※※※※※※


ちょっとした既視感の嵐で(((^^;)

あー、もう来週センター試験ですよー。
リアルタイムからどんどん時間ずれてしまいました……orz




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* Category : イタkiss期間 2018
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コメント公開について * by 麻紀
再びこんばんは。
コメント、編集できないのでしょうか?
新年をきっかけに、非公開ではなく公開でそのままコメントしよう!!って思ったのですが…。

大したことを書いてないので、公開でもいいかなって思っただけなんですけども(笑)
次回から、公開でコメさせていただきますねー。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメ遅くなり申し訳ありません!

日本は大変なことになっているようです笑
新幹線でのエピを色々はしょってしまったので、どう繋げようか迷って結局スルーするかもしれない、日本での事情です。かをるこさんもリングを渡すために奔走した筈ですが、さらっとですf(^_^;きっと琴美の受験のこと一番気にしてるような〜f(^_^;

堀内家、やっぱり毒姉妹にしてしまいましたわー結局入江家を引っ掻き回す役割です。

はい、ヨーコさん、今回なんか役割をあげられるか書いてみるまでわからなかったんですが、一応仕切り係成功です(^-^)v

Re.麻紀様 * by ののの
コメント2つありがとうございました♪
リコメ遅くなりまして申し訳ないです。

そうなんですよー25年経っても刺激的な日々です笑
我ながら事件起きすぎだろ、と自分に突っ込んでます。
労いのお言葉もありがとうございました。うれしいです♪

そうそう、センター試験無事終わりました。撃沈してましたけどね。合格して以来勉強ほぼしてないのだから当たり前だわ〜〜
今年はリスニングの謎キャラが話題でしたね(^w^)

娘さん、自分の好きな道、まっしぐらですね。いいなー♪

コメントの公開非公開、個人個人の判断で全然かまいませんよー。
公開してもらえると、コメントしようと思ってくださる方もいるかしら(^w^)最近コメント少なくてちょっと寂しかったので(((^^;)
麻紀さんも色々ご心痛でしょうが、お話、気長に待っております!

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