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らぶららら(10)


豪雨に猛暑に逆走台風……大丈夫か、地球、って毎年いってますね(-_-)

うちは無事通り抜けましたが、皆さまのところもご無事でありますように。

そして、お話は……終われませんでしたorz


※※※※※※※※※※※※※※※




そして、今ーーあたしたちは、クリニックからほど近いカフェに4人向かい合わせで座っていた。
ほんの数メートルの距離だったけど、2月の午前の外気は冷たくて、白い息を吐きながらあたしたちは、入江くんが「あそこでいいか?」と指差した小さなカフェを見て無言で頷くと、そのまま急ぎ足で飛び込んだのだ。
入江くんはブレンド、沙穂子さんはミルクティ、ハトコ孃はココア。あたしはカフェオレ。それぞれ温かい飲み物を頼んだけれど、あたしはまず出されたお冷やでからからだった唇を潤す。
………色々有りすぎて、あたしは朝っぱらからどっと疲れていた。

「だいたいの経緯は、理解できた」

相変わらずの無表情で入江くんが素っ気なく口火を切った。
……怒ってる。
かなり怒ってるよね?

「つまり、琴子がおれと離婚したいなどと馬鹿なことを言い出したのは、沙穂子さんがおれの子供を妊娠したと勘違いーーいや、そのハトコさんに騙されたせいーーというわけか」

あたしはこくこくと頷く。するとハトコ孃は言い訳がましく、
「騙すなんて人聞きの悪い。一応、脅かしたあと『なーんちゃって』ってオチをつけてあげたのよ。なのに、あなたってば耳に入らなかったみたいでふらふらとどっかに行っちゃうんだもん」などと悪びれる様子もなく宣う。

はあ?

「何が『なーんちゃって』よ! こっちはショックでそのあとのこと、なーんにも覚えてないわよっ。そ、そ、それくらい、あたし、もう、もう、どうしたらいいかわかんなくってっ! あ、あたし……もう入江くんの奥さん続けられないって……」

あの時のことを思い出したら、鼻の奥がつーんとして、涙目になり、鼻水もだらだら流れてきた。
それっくらい衝撃的だったんだからぁ~~!

「落ち着け、琴子」

入江くんがテーブルにセットされていたペーパーを取り出して、鼻に当ててくれる。思わずちーんって鼻かんじゃったよ……なんか子供みたい。

「ごめんなさい! 琴子さん! なんてお詫びしたらいいのか……まさか、あの時凛々子ちゃんがそんなこと云ってたなんて……」

沙穂子さんが頭を深々と下げ、「ほら、凛々子ちゃんもちゃんと謝って」と促す。

「悪いなんて思ってないわよ、……沙穂子の受けた仕打ちと比べたら……」

ふてくされたような仏頂面で、そっぽを向いて呟く。あくまで反省の色はない。ってか、あたしたちよりだいぶ年上だよね? ほんっと、子供か!

「大泉の人間のわりに頭の悪い女だな。あんたは」

わー入江くんってば大泉家の人なのに容赦ない………ほら、沙穂子さんも目を丸くしてるよ~~

「婚約破棄のことは沙穂子さんには誠心誠意謝罪した。そして納得してもらった筈です。無論、賠償請求もあり得ると覚悟もしていた。それだけのことをしたのだと。
何の制裁もなく許していただけたことは感謝しても感謝しきれない」

そういって沙穂子さんに頭を下げる。

「ただ、一旦区切りがついた以上、たとえ遺恨があったとしてもあとは沙穂子さんが自分で向き合うしかない。他人がどうこうできる問題じゃない。あなたが沙穂子さんの姉のような立場だとしてもーー」

うん、正論だけど……やっぱ、きついなー。沙穂子さんもちょっと唖然としてるかも。
そして今度はハトコ孃を見据える。

「あなたは、沙穂子さんのために琴子を苦しめたかったのかもしれないが、それでいったいどういう着地点を望んでいたんだ? 琴子が離婚するといって出ていってもおれは沙穂子さんのところに戻ることはない。忘れかけてた沙穂子さんの瘡蓋(かさぶた)をひっぺがしてを塩すりこんだだけだろう」

「元はといえば瘡蓋になるような傷をつけたの、あんたでしょうが!」

そういって、入江くんに指を突きつける。確かにそうなんだけど、話が堂々巡りになってしまうよ……

「沙穂子、あんた、『直樹さん、とっても紳士なの。優しくて王子様みたいなの~~』って電話でのろけてなかったっけ? こいつ顔は美形だけど、全然想像と違うんだけど!」

すみません、これが本性なんです~~
しかし入江くんを『こいつ』呼ばわりとは……

「今のが本当の直樹さんですよね……琴子さんといる時の直樹さんが真の直樹さんだって気はしてたんです。
だからね、凛々子ちゃん。私、婚約破棄を云われた時、ショックというより、ああ、やっぱり、って思ったの。だから簡単に引くことができたのよ。あの琴子さんに対してちらりと垣間見えた意地悪な直樹さん、私には耐えられないし、かといってずっと本音出されない夫婦もきっとお互い耐えられなくなると思ったの」

そ、そうだったのね………
入江くんへの想いをあんなにうっとりと語っていたわりに潔いなーとは思ったけど……

「だから、怒りとかあまり沸き起こらなくて、泣いて追いすがろうとも思わなかった。これ以上惨めになりたくなかったし、ささやかなプライドもあったせいかしら。でも流石に二週間でお二人が結婚した、ときいた時は暫く落ち込んじゃって……きっぱり吹っ切れたつもりだったのに、『たった二週間』というのはショックだったかしら……」

本当に、それは申し訳ない気持ちになる。あたしは浮かれまくってて、沙穂子さんや金ちゃんの気持ちを全然考えてなかった。

「その件については謝ります。母の暴走を食い止めらなかったおれの責任です」

入江くんが真摯に謝る。あたしも一緒に深々と頭を下げた。

「あ、ごめんなさい。そんな、今さら責めるつもりはなかったの。暫く凹んだけど、お陰ですっぱり気持ちを切り替えて前向きになれたし。あ、私、春から心機一転留学するつもりなの。ただ一番どん底な時に凛々子ちゃん帰国して、引きこもってめそめそしてるとこ見られちゃったから……」

そしてちらりと隣のハトコ孃を見つめた。

「この娘は人のこと悪くいう子じゃないから、あたしが色々訊いてもちゃんと話してくれなかったの。だから、 おおよその話はメイドたちからきいたのよ。もお、あたし許せなくって!」

ドン、とテーブルを叩く!
彼女が沙穂子さんのこと、本当に可愛がってきたんだろうなぁ、というのはよくわかる。

「凛々子ちゃん、勝手に私の気持ちを汲み取らないでよ。それこそ凛々子ちゃんが帰国してくれて、ずーっと不妊で悩んでた凛々子ちゃんの妊娠の報告にすっかり沈んでた気持ちは上向きになっていたのに。もう、破談のことなんて忘れてかけてたわ」

「でも、ここでこの子が妊娠してるかも、って知った時、また落ち込んでたじゃない。まだ吹っ切れてなかった証拠よ!」

「だ、だから、それはさっき云ったでしょ?な、なんか直樹さんが妊娠するようなことするなんて想像全くできなかったものだから、ちょっとびっくりというかショックで……当たり前のことなのに、そっか、琴子さんにはしてるのね……って考えたら……ああ、私ったらなんてはしたないことを考えて! ……と自分に嫌悪を感じて悶々としてましたの」

あたしと入江くんはなんと云っていいんだか、困惑の表情をうっすらと浮かべる。

「何いってんの。あんた結婚をなんだと思ってるのよ。王子様だってやることやるわよ」

呆れたように沙穂子さんを一瞥してから「こんな子だから、ほっとけないのよねぇ」と呟いた。

「でも、ま、確かに悪かったわ。あなたにウソついてごめんなさい」

そしてハトコ孃ーー凛々子さんはようやく殊勝に頭を下げた。

「あ、ひっぱたいたこともね。ついこの略奪女!と思ったら手がでちゃって」

「沙穂子さんにおれを殴る権利はあったが、あなたに琴子を叩く権利はない」

ぎろっと入江くんが眼光鋭く睨み付ける。
凛々子さんは思わずひっと怯えた顔を一瞬みせたけど、さすがすぐに表情を戻していた。
沙穂子さんの方がまだ怯えている。
ここまできっつい入江くん、知らなかったんだろうな~~

「………だから謝ってるじゃない。人をひっぱたくことなんて出来ない沙穂子の替わりにしたけど、ちょっと筋違いだったみたいね。ごめんなさい」

今度は深く頭を下げた凛々子さんを、沙穂子さんが少し安堵したように見つめる。

「………凛々子ちゃんは、昔から姉御肌で強くて凛々しくて、私の騎士みたいなものだったの。……他の人には狂暴な毒舌女王として恐れられてたけど、私には優しかったから……」

狂暴な毒舌女王って………

「この娘はね、あたしの妹みたいなもんなのよ。うちは分家で父親は事業に興味なくて、一族から浮いてた家だけど、沙穂子は本家の一人娘。家の敷地は隣同士だから生まれたときから可愛がってたの。
あたしがいなきゃ何にもできないお嬢様で。あたしがずっと守ってやらなきゃって思ってた。
なのに、あたしがちょっと海外いってる間に、勝手に見合いするわ、婚約するわ……あげくの果てに婚約破棄されて落ち込んで……ほら見なさいって思ったけど、色々話をきいてたらもう、腹が立って腹が立って」

たしかに沙穂子さん側の人から話だけ聞いたら、沙穂子さんの受けた仕打ちはあんまりだと思うよね。

「………沙穂子はね、あたしにしょっちゅう国際電話で遅れてきた初恋の話をしてくれたのよ。
ほんとは見合いで結婚なんてあたしは反対だったけど。政略結婚なんてろくなもんじゃないもの。
この娘がそれだけ惚れてるなら仕方ないって。
でもね、そんなにすぐ婚約して大丈夫?あたしが年明けたら帰国するからそれまで待ちなさいって……ストップかけたんだけどね。
そしたら年明ける前に向こうから婚約破棄言い渡されて。
なんなの、それ? って遠い異国の地であたしがどれだけ憤慨したことか」

「ごめんね。心配させちゃって。そして、私からちゃんと凛々子ちゃんに説明しておけばよかった。もう終わったことだと」

「ま、予めあんたに説明されても頭に血が上って、おんなじことしちゃったかもだけど~~」

「ずっと私の騎士だった凛々子ちゃんが結婚して、私も一人で頑張らなきゃって思ってたの」

「あんた、失恋して逞しくなったわよ。まさか、沙穂子にひっぱたかれる日がくるとは思わなかった」

がっしり手を取り合う二人。

「それに、あたしが結婚したってあんたはあたしの妹分よ、一人で頑張らなくてもーーあ、今、よくこの女結婚できたなーって思ったでしょ!」

二人の世界にいるかと思いきや、唐突にあたしの方を向いて指差されてドキッとする。
あ、バレた?

「一応分家とはいえ、これでもあたしアパレル部門の会社の後継者だからねー。部下から出来そうな男みつくろって婿養子よ。ええ、勿論向こうには拒否権なんてないわよー」

うわー肉食系!?

「あら、そんなことないのよ。凛々子ちゃん、一族みんなの反対を押しきっての大恋愛なのよ。年下だったけど、旦那さん優秀だし、今回のパリの店の立ち上げも大成功だってきいたわ」

「ああ。北英グループの新規ファストファッションブランド『LiLi』のチーフプロデューサー……でしたか」

入江くんが何か思い出したように呟いた。

「あら、よくご存知で」

「そりゃ、資本協力頼むからには色々調べますので。あなたが社長にはならなかったんですか?」

「社長の器じゃないわ。こんな性格だから。子供も生みたかったし」

「凛々子ちゃん、結婚したあとに子宮内膜症になって、不妊の原因にもなってたの。治療に専念するために会社は旦那さんに任せて仕事から身を引いたのよ。赤ちゃん、どうしても欲しいからって」

……そ、そうだったんだ。

「で、でも! 妊娠できたんですね! よかった! おめでとうございます!」

あたしは思わず両手を叩いて祝福する。
あの母子手帳とエコー写真を思い出した。

「……ありがとう。あたしの妊娠がなければ、ここで会うこともなく、あなたが苦しむこともなかったのに。そんな風に素直に他人の幸せを喜べるのね……」

凛々子さんは少し呆れたように目を丸くしたあとくすっと笑った。

「……だからといって、凛々子ちゃんが琴子さんにしたこと、決して許されないと思うけど……全部あたしのためなの。あたしが臆病者で自分じゃ何もできない子だったからーーごめんなさい。本当にごめんなさい!」

「さ、沙穂子さん、もういいですよ。そりゃショックだったけど……違うとわかったから……もう大丈夫です」

「………琴子さん……」

「凛々子さんも謝ってくれたし、この話はこれでおしまい!」

「琴子、いいのか?」

「うん。だって、みんな勘違いしてだけってわかったもの。沙穂子さんは妊娠してないし、あたしも病気じゃない。それですっきり解決! で、もういいよね?」

あたしはそういって入江くんの方を見る。
入江くんは何となく不満そうだったけど、あの辛かった時期にこれ以上記憶を戻すことをわざわざしなくてもいい、とあたしは思った。

「離婚を考えるくらい悩んで苦しかったのに? 」

「うん、離婚しなくてよかった!」

そして、入江くんも離婚届け出してなくてよかったよーー今更ほっとする。

「本当に……ごめんなさい。そして、琴子さん、凛々子ちゃんのウソなのに、私のことを一番に思いやって身を引こうとしてくれて……ありがとうございます。そんな琴子さんだから直樹さんが選んだのね……」

沙穂子さんがそう呟いた

「……琴子に免じて、この件はもうチャラにしましょう。凛々子さん。あなたが琴子を精神的に追い詰めた上にひっぱたいたというのは許せませんが……もう関わらないということで目をつぶります」

「ありがとう」

ーーそして、あたしたちは漸くほっと息をついた。みんなの顔を見回すと、その表情は入ってきた時よりもずっと和らいでいたようだった。










※※※※※※※※※※※※※※


4者会談に思わず時間がかかってしまいました。
次こそ終われるハズ……(^^)d
なるべく早くアップしますねー





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2018/07/30 | [] | Edit

琴子ちゃんは、直ぐに簡単に許してしまうけど?まあ、琴子ちゃんらしいけど、入江君は、納得出来たのかな?

2018/07/30 | なおちゃん[URL] | Edit

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2018/07/30 | [] | Edit

Re.マロン様

コメントありがとうございました♪
リコメ、相変わらず遅くてすみません!

そうです。凛々子さんまーたっく悪びれてませんね。自分と自分の周囲を守ることに関しては徹底してる女王様ですからf(^_^;
この婚約破棄に関しては私、引き際のいいお嬢に拍手喝采でした。一話で結婚まで持ってきたい裏事情があったのかと詮索してしまうくらい(^w^)多少ゴタゴタ揉めた方が面白いと(台湾版のように)話の作り手として考えちゃいますものね。そんなお嬢をちょっと思って挿入したお嬢のエピでした。
確かに!……『王子様、ヤるのが仕事』に、逆に私も吹いちゃいましたよ笑
はい、一件落着……ご要望のお仕置きですが……emaさんちに謹呈するエロを書いてたらちょっと余力がなくなって書けないかも……f(^_^;ってか、毎回ワンパターンなえろにちょっとスランプ気味ですわー。




2018/08/14 | ののの[URL] | Edit

Re.なおちゃん様

コメントありがとうございました♪
リコメ遅くなりすみません!

ほんとに、女神のような琴子ちゃん、自分がすっきりしたらすぐに許しちゃいますね。入江くんは納得してませんから……その悶々はお仕置きタイムに還元です(^w^)

2018/08/14 | ののの[URL] | Edit

Re.紀子ママ様

コメントありがとうございました♪
リコメ遅くなりましてすみませんm(__)m

はい、沙穂子さん嫌いの紀子ママさんに受け入れてもらえるかちょっと心配でしたが(笑)至極真っ当と思ってもらえてよかったです。沙穂子さんからしてみれば、いくら婚約破棄受け入れられたとしても、二週間で結婚って……あんまりだわーて思いますよね。私はこれを受け入れた重樹さんが、企業のトップとしては???って思ってます。
まあ色々問題ありの凛々子さんですが、今回のことでお嬢のわだかまりも少しは溶けたのかも……入江くんの本性もしっかり見れたしね!!(^w^)きっと、結婚しなくてよかったーと後からじわじわ来ますね笑

2018/08/15 | ののの[URL] | Edit

        

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