らぶららら (6)
2018.07.01 22:40|らぶららら|
本日2話アップしてます。
未読の方は(5)からどうぞ
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「もーー!! 驚かせないでよ!」
お義母さんの運転で救急病院に駆けつけたあたしたちは、意外に元気なお父さんの姿にほっと胸を撫で下ろした。
とはいっても、金ちゃんと一緒に車椅子で現れたので、そんなに大事故だったのかと最初は倒れそうなくらい青ざめたのだけどーー
「あ、これはギックリ腰な。事故にあったのは俺じゃなくて、店の前で子どもが自転車にぶつかりそうになってな。慌てて子どもを抱えあげた途端にギックリ腰になっちまって。事故と勘違いした金之助が救急車なんか呼ぶから大袈裟になっちまった」
「そやかて、大将、顔歪めて道端にへたりこんではったからてっきり自転車とぶつかったんかと……すまん、琴子。心配かけさせてしもうて」
金ちゃんが申し訳なさそうに謝る。
「金之助、おまえ先に店に戻れよ。小田原一人じゃてんてこ舞で店が開けられん。おれはまだ会計で待たされそうだしな」
「え? 店、開けるの!?」
てっきりもうお休みにするかと思っていた。
「今夜は予約のお客さんあるからな。仕込みもだいたい済んでるし無駄にはできん。小田原がいれば何とかなるさ。動けんが、口は出せるからな。金之助も頼んだぞ」
「へ、へい! 」
金ちゃんがぺこりと頭を下げ、走り去っていく。
あたしと入江くんをちらりと見たけど何も言わなかった。
そういえば……あたし、金ちゃんのプロポーズ、断っちゃったんだよね。そのあと一体どんな距離感で接して来たんだろ……ちょっと複雑………。
「お子さんの方は大丈夫だったんですか?」
入江くんが確認する。
そうそう、助けようとして怪我させちゃ話にならない。
「おお。ぴんぴんしてた。救急車にも乗らなかったよ。自転車の人も無傷で、俺だけが立てなくなっちまって。面目ねぇ」
よかった。結局、お父さんがギックリ腰になっただけだったんだ。
「整形で診てもらいました?」
「ああ。色々レントゲンとか撮ってもらったけど、ただのギックリ腰だから時間薬だと。コルセットと湿布薬もらっただけだ。動けるようになったらなるべく日常生活をした方が治りが早いとさ」
「じゃあ、圧迫骨折やヘルニアの疑いはないんですね」
「だいたい数日で痛みは引くだろうって。痛みが続くようならもう一度来いと言われたけど、まあ大丈夫だろ。もう大分落ち着いてきたし」
とはいいつつ、立ち上がるのはしんどそうで、病院の車椅子で駐車場まで行き、入江くんに抱き抱えられて車に乗った。
「………もう、ほんと、心臓止まるかと思ったんだからね」
思わず文句を言ってしまう。
「すまねぇ……いてて」
お父さんも痛みに顔をしかめつつも、お義母さんにも入江くんにも申し訳なさそうに謝る。
実際、病院に向かうとき、あたしはかなり震えていたと思う。
怖くて怖くて堪らなかった。
もしお父さんに何かあったら……想像するのも恐ろしかった。
そんなあたしの肩を抱き、入江くんは何も言わずただ手をぎゅっと握りしめてくれていた。
お父さんが居なくなったら、あたしはこの世に独りぼっちになってしまうという例えようもない恐怖が、入江くんの暖かい手によって少し薄らぐのを感じていた。それでも、この手をずっと頼っていいのかーーそんな想いが過りつつもその温もりを離したくないと心底願っていた。
「しばらくは、動くのが大変だから店の休憩室で寝起きするよ」
「え? じゃあ、あたしも泊まるよ。トイレとか大変でしょ? お店も手伝うし」
「いや、しかし。おまえは主婦だろう……」
「あら、相原さん。家のことは気になさらなくていいんですよ。琴子ちゃんもその方が安心するならそうすればいいわよ。ね? お兄ちゃん」
「……………」
入江くんは何も言わない。
あたしの本心を見抜いてるのかもしれない。
お父さんの救急搬送騒ぎで有耶無耶になってしまった話を蒸し返したくない、ということを。
「すみません、奥さん。直樹くん。動けるようになったらすぐに戻りますんで」
お父さんも無理にあたしを帰すことはしなかった。記憶を失ってることや、あたしの様子を見てその方がいいと思ったのかもしれない。
ただ、実際久しぶりにお店を手伝うと、お父さんが動けない分、金ちゃんも小田原さんも大忙しで、あたし来なかったらちょっと捌ききれなかったんじゃない?という状況で、それこそ何も考える暇もなくて丁度良かった。
「……琴子。ほんとに入江家に帰らなくていいのか? おれはもう大丈夫だぞ」
店が閉店する頃には、腰を擦りつつもそこそこ動けるようになったお父さんが、あたしに訊ねた。
「う、うん。でも一晩は泊まるよ」
店の休憩室だから布団二枚敷いたらいっぱいいっぱいの狭い部屋だ。地震で家がつぶれた時、一晩だけここに泊まったのを思い出す。あの時は仮住まいのアパート探すまでここでしばらく寝泊まりするのを覚悟してたっけな。まさか、翌日から入江くんちにお世話になるなんて思いもしなかった。
あの夜ーー家が倒壊したショックでなかなか寝つけられなかったけれど、今は、全然違う種類の不安に苛まされている。
とりあえずここに泊まることで、入江くんの追及から逃れたけれど、明日からどうしよう……
とにかく、明日病院にいってブライダルチェックの結果を確認してからだよね……
* * *
そして、翌日。
あたしは地下鉄に乗って朝早くから銀座に向かっていた。お父さんはなんとか動けるようになったみたいで、目が覚めた時はもう既にいなかった。既に築地に買い出しに行ったらしい。
迷子になることを考えて早めに店をでたけど、なんとか無事に目的地に到着。
『フリージアレディスクリニック』。
病院というよりは、ブライダルサロンのようなーー白が基調のお洒落な建物だった。
そしてーー既視感……っていうの? なんとなく来たような覚えがある。
「あー、はいはい。先週結果を聞きに来られた入江琴子さんですね。丁度よかったわ。口頭で結果はお伝えしてありましたけど、検査結果の封筒をロビーに落とされていたので。はい、どうぞ」
受付のお姉さんに訊ねるとあっさりそう言われて、ピンクの封筒を渡された。
「あれ………?」
中を見て、あたしは呆然としてしまった。
結果はーーすべて問題なし、だった。
「す、すみません。あたし、本当になんともないんですか? 将来赤ちゃん産めないとか、子宮に病気があるとか」
思わず受付の人ににじり寄ると、受付の奥から、やけに綺麗な女医らしき人がぬっと顔を出して、「あら、あなた……」とあたしの顔を見てにっこり笑った。
そこの院長だという女医先生は、年齢不詳な美魔女な感じの人で、「こっちで話しましょ」とまだ診察の始まっていない診察室に通してくれた。
「ブライダルチェック推奨してても、まだ受けてくれる人はあまりいないから、あなたのことよく覚えてるわ。土屋先生から紹介された方よね。
検査結果は書面の通り何も問題はないですから、安心して夫婦生活、営んでくださいね。月経困難症も出産で改善されることもありますから。あなた、身体が細くて骨盤が小さくて難産になる可能性もありますけど、妊娠自体は旦那さまの方に問題なければ全然大丈夫ですからね」
拍子抜けしてしまった。
てっきり、あたし、妊娠できない身体なのかと………
でも。
そうしたら、謎はさらに深まる。
あたしは一体、なんで離婚なんて考えたの?
なんで入江くんから離れようと思ったの?
ーー全然わからないよ~~! あたし、何を考えてたのっっ!?
検査結果の封筒をバッグに入れる。
謎は結局解けないままだったけれど、少なくとも、あたしの身体に異常はないということーーそして、将来赤ちゃんを産める可能性はあるということは少しばかり安堵を感じた。
ーーいいぜ。欲しいなら、作っても……
入江くんの昨日の台詞がふっと頭に過り、思わず顔が火照る。そして、ちょっと頬が緩みにやけてしまう。
な、なんかお義母さん帰って来て有耶無耶になっちゃったけど、もし帰ってこなかったら……
って、なに考えてるのよ、あたしってば!
結局、あたしがなんで離婚しようとしたかわかんないまんまじゃないの。
せっかく、入江くんがあたしにプロポーズしてくれた夜のこと思い出せたのに、たった三カ月であたしに何が起きたのかーーそれを思い出さなきゃ……あたしたちは多分前に進んではいけないような気がする。
ーーなんてことを考えながら歩いていたらーー。
「きゃっ」
病院の玄関をでたところで、前から来た女性とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっっ」
あたしは慌てて謝る。
場所が場所だけに妊婦さんかも知れない。お腹はまだ全然大きくないけれどーー。
あたしが謝ってもその人は微動だにせず、あたしのことを睨み付けていた。
え、な、なに?
ーー知ってる人?
20代後半、高級ブランド服に身を包み、左手薬指には高価なリング。いかにもセレブリティな若奥様といった感じの女性だった。少なくともあたしの記憶の中には存在しない人だった。
「し、失礼しますっ」
あたしのことをじっと刺すようなーーそして、怒りを含んだような瞳で見つめるだけで何も言わないその女性に、戸惑いと不気味さを感じて、さっさとその場を離れようとした。
「待ちなさいよ!」
唐突にぐっと腕を掴まれる。
「えーー?」
「こんなところで、にやにや笑ってーー何? あの男の赤ん坊でも身ごもったの?
そんなの、絶対に許さないからっ!」
そしてーー
ぱっちーーーん!!
……はい?
あたしはーーその見知らぬ女性にいきなりひっぱたかれたのだった………。
※※※※※※※※※※※※※
とりあえず、ドラマ寄りのシーンを入れてみました。もう、終わっちゃったけどねっf(^_^;
こちらもあと2,3話で終わるといいなぁー
「もーー!! 驚かせないでよ!」
お義母さんの運転で救急病院に駆けつけたあたしたちは、意外に元気なお父さんの姿にほっと胸を撫で下ろした。
とはいっても、金ちゃんと一緒に車椅子で現れたので、そんなに大事故だったのかと最初は倒れそうなくらい青ざめたのだけどーー
「あ、これはギックリ腰な。事故にあったのは俺じゃなくて、店の前で子どもが自転車にぶつかりそうになってな。慌てて子どもを抱えあげた途端にギックリ腰になっちまって。事故と勘違いした金之助が救急車なんか呼ぶから大袈裟になっちまった」
「そやかて、大将、顔歪めて道端にへたりこんではったからてっきり自転車とぶつかったんかと……すまん、琴子。心配かけさせてしもうて」
金ちゃんが申し訳なさそうに謝る。
「金之助、おまえ先に店に戻れよ。小田原一人じゃてんてこ舞で店が開けられん。おれはまだ会計で待たされそうだしな」
「え? 店、開けるの!?」
てっきりもうお休みにするかと思っていた。
「今夜は予約のお客さんあるからな。仕込みもだいたい済んでるし無駄にはできん。小田原がいれば何とかなるさ。動けんが、口は出せるからな。金之助も頼んだぞ」
「へ、へい! 」
金ちゃんがぺこりと頭を下げ、走り去っていく。
あたしと入江くんをちらりと見たけど何も言わなかった。
そういえば……あたし、金ちゃんのプロポーズ、断っちゃったんだよね。そのあと一体どんな距離感で接して来たんだろ……ちょっと複雑………。
「お子さんの方は大丈夫だったんですか?」
入江くんが確認する。
そうそう、助けようとして怪我させちゃ話にならない。
「おお。ぴんぴんしてた。救急車にも乗らなかったよ。自転車の人も無傷で、俺だけが立てなくなっちまって。面目ねぇ」
よかった。結局、お父さんがギックリ腰になっただけだったんだ。
「整形で診てもらいました?」
「ああ。色々レントゲンとか撮ってもらったけど、ただのギックリ腰だから時間薬だと。コルセットと湿布薬もらっただけだ。動けるようになったらなるべく日常生活をした方が治りが早いとさ」
「じゃあ、圧迫骨折やヘルニアの疑いはないんですね」
「だいたい数日で痛みは引くだろうって。痛みが続くようならもう一度来いと言われたけど、まあ大丈夫だろ。もう大分落ち着いてきたし」
とはいいつつ、立ち上がるのはしんどそうで、病院の車椅子で駐車場まで行き、入江くんに抱き抱えられて車に乗った。
「………もう、ほんと、心臓止まるかと思ったんだからね」
思わず文句を言ってしまう。
「すまねぇ……いてて」
お父さんも痛みに顔をしかめつつも、お義母さんにも入江くんにも申し訳なさそうに謝る。
実際、病院に向かうとき、あたしはかなり震えていたと思う。
怖くて怖くて堪らなかった。
もしお父さんに何かあったら……想像するのも恐ろしかった。
そんなあたしの肩を抱き、入江くんは何も言わずただ手をぎゅっと握りしめてくれていた。
お父さんが居なくなったら、あたしはこの世に独りぼっちになってしまうという例えようもない恐怖が、入江くんの暖かい手によって少し薄らぐのを感じていた。それでも、この手をずっと頼っていいのかーーそんな想いが過りつつもその温もりを離したくないと心底願っていた。
「しばらくは、動くのが大変だから店の休憩室で寝起きするよ」
「え? じゃあ、あたしも泊まるよ。トイレとか大変でしょ? お店も手伝うし」
「いや、しかし。おまえは主婦だろう……」
「あら、相原さん。家のことは気になさらなくていいんですよ。琴子ちゃんもその方が安心するならそうすればいいわよ。ね? お兄ちゃん」
「……………」
入江くんは何も言わない。
あたしの本心を見抜いてるのかもしれない。
お父さんの救急搬送騒ぎで有耶無耶になってしまった話を蒸し返したくない、ということを。
「すみません、奥さん。直樹くん。動けるようになったらすぐに戻りますんで」
お父さんも無理にあたしを帰すことはしなかった。記憶を失ってることや、あたしの様子を見てその方がいいと思ったのかもしれない。
ただ、実際久しぶりにお店を手伝うと、お父さんが動けない分、金ちゃんも小田原さんも大忙しで、あたし来なかったらちょっと捌ききれなかったんじゃない?という状況で、それこそ何も考える暇もなくて丁度良かった。
「……琴子。ほんとに入江家に帰らなくていいのか? おれはもう大丈夫だぞ」
店が閉店する頃には、腰を擦りつつもそこそこ動けるようになったお父さんが、あたしに訊ねた。
「う、うん。でも一晩は泊まるよ」
店の休憩室だから布団二枚敷いたらいっぱいいっぱいの狭い部屋だ。地震で家がつぶれた時、一晩だけここに泊まったのを思い出す。あの時は仮住まいのアパート探すまでここでしばらく寝泊まりするのを覚悟してたっけな。まさか、翌日から入江くんちにお世話になるなんて思いもしなかった。
あの夜ーー家が倒壊したショックでなかなか寝つけられなかったけれど、今は、全然違う種類の不安に苛まされている。
とりあえずここに泊まることで、入江くんの追及から逃れたけれど、明日からどうしよう……
とにかく、明日病院にいってブライダルチェックの結果を確認してからだよね……
* * *
そして、翌日。
あたしは地下鉄に乗って朝早くから銀座に向かっていた。お父さんはなんとか動けるようになったみたいで、目が覚めた時はもう既にいなかった。既に築地に買い出しに行ったらしい。
迷子になることを考えて早めに店をでたけど、なんとか無事に目的地に到着。
『フリージアレディスクリニック』。
病院というよりは、ブライダルサロンのようなーー白が基調のお洒落な建物だった。
そしてーー既視感……っていうの? なんとなく来たような覚えがある。
「あー、はいはい。先週結果を聞きに来られた入江琴子さんですね。丁度よかったわ。口頭で結果はお伝えしてありましたけど、検査結果の封筒をロビーに落とされていたので。はい、どうぞ」
受付のお姉さんに訊ねるとあっさりそう言われて、ピンクの封筒を渡された。
「あれ………?」
中を見て、あたしは呆然としてしまった。
結果はーーすべて問題なし、だった。
「す、すみません。あたし、本当になんともないんですか? 将来赤ちゃん産めないとか、子宮に病気があるとか」
思わず受付の人ににじり寄ると、受付の奥から、やけに綺麗な女医らしき人がぬっと顔を出して、「あら、あなた……」とあたしの顔を見てにっこり笑った。
そこの院長だという女医先生は、年齢不詳な美魔女な感じの人で、「こっちで話しましょ」とまだ診察の始まっていない診察室に通してくれた。
「ブライダルチェック推奨してても、まだ受けてくれる人はあまりいないから、あなたのことよく覚えてるわ。土屋先生から紹介された方よね。
検査結果は書面の通り何も問題はないですから、安心して夫婦生活、営んでくださいね。月経困難症も出産で改善されることもありますから。あなた、身体が細くて骨盤が小さくて難産になる可能性もありますけど、妊娠自体は旦那さまの方に問題なければ全然大丈夫ですからね」
拍子抜けしてしまった。
てっきり、あたし、妊娠できない身体なのかと………
でも。
そうしたら、謎はさらに深まる。
あたしは一体、なんで離婚なんて考えたの?
なんで入江くんから離れようと思ったの?
ーー全然わからないよ~~! あたし、何を考えてたのっっ!?
検査結果の封筒をバッグに入れる。
謎は結局解けないままだったけれど、少なくとも、あたしの身体に異常はないということーーそして、将来赤ちゃんを産める可能性はあるということは少しばかり安堵を感じた。
ーーいいぜ。欲しいなら、作っても……
入江くんの昨日の台詞がふっと頭に過り、思わず顔が火照る。そして、ちょっと頬が緩みにやけてしまう。
な、なんかお義母さん帰って来て有耶無耶になっちゃったけど、もし帰ってこなかったら……
って、なに考えてるのよ、あたしってば!
結局、あたしがなんで離婚しようとしたかわかんないまんまじゃないの。
せっかく、入江くんがあたしにプロポーズしてくれた夜のこと思い出せたのに、たった三カ月であたしに何が起きたのかーーそれを思い出さなきゃ……あたしたちは多分前に進んではいけないような気がする。
ーーなんてことを考えながら歩いていたらーー。
「きゃっ」
病院の玄関をでたところで、前から来た女性とぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっっ」
あたしは慌てて謝る。
場所が場所だけに妊婦さんかも知れない。お腹はまだ全然大きくないけれどーー。
あたしが謝ってもその人は微動だにせず、あたしのことを睨み付けていた。
え、な、なに?
ーー知ってる人?
20代後半、高級ブランド服に身を包み、左手薬指には高価なリング。いかにもセレブリティな若奥様といった感じの女性だった。少なくともあたしの記憶の中には存在しない人だった。
「し、失礼しますっ」
あたしのことをじっと刺すようなーーそして、怒りを含んだような瞳で見つめるだけで何も言わないその女性に、戸惑いと不気味さを感じて、さっさとその場を離れようとした。
「待ちなさいよ!」
唐突にぐっと腕を掴まれる。
「えーー?」
「こんなところで、にやにや笑ってーー何? あの男の赤ん坊でも身ごもったの?
そんなの、絶対に許さないからっ!」
そしてーー
ぱっちーーーん!!
……はい?
あたしはーーその見知らぬ女性にいきなりひっぱたかれたのだった………。
※※※※※※※※※※※※※
とりあえず、ドラマ寄りのシーンを入れてみました。もう、終わっちゃったけどねっf(^_^;
こちらもあと2,3話で終わるといいなぁー
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