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らぶららら (1)



さーて、GWもあっという間ですね……(-_-)
特に予定はなかったものの、やろうと思ったことは半分もこなせなかった気が……orz
でも今年は夏休みまでにひとつお楽しみがあるので、それを糧に頑張るぞー。


そして、お話の方は唐突に思い付いたヤツで新連載です(^w^)

実は今期、絶賛?放映中の某ドラマのパロディ……というか、イリコト変換です。

いえ、元々漫画原作ですが。その漫画をたまたまイタキス仲間のRさんから借りてまして(^w^)ドラマ始まる前からちょっと妄想して書きはじめてはいたのですが。
既にドラマは4話目終わってます……f(^_^;
………ま、タイトルでバレバレですね(笑)
(元のタイトルがなかなか覚えられなかったという……)

とりあえず元ネタ知らなくてもただのIFものと思って読んでいただければ大丈夫ですー♪
よろしければ続きからどうぞ。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※








「あ、金ちゃん、どーしたの? え? 明日? え、『ふぐ吉』に? ーーあれ? 明日って『ふぐ吉』定休日じゃあなかったっけ? えーー? ごちそうしてくれるの? いくいくっ じゃあ明日テニス部さぼるね。うん、じゃあね!」


がちゃりと受話器を置いて、あたしは楽しげに喋っていた表情からは想像できないだろう憂鬱そうなため息を一つついた。

明日ーーか。

いい加減そろそろプロポーズの返事をしなきゃいけないよね……

金ちゃんがわざわざ定休日の日に、新作の試食をしてほしいとあたしを誘ったのは、きっとその答えが欲しいのだろうと、鈍いあたしでも流石にわかる。

金ちゃんとデートして思いの外楽しくて。その一瞬はもやもやした思いをほんの少し忘れることができた。
そりゃいきなりプロポーズされた時はただびっくりしただけだったけど。

ーーあんなに琴子のこと想ってくれる人、いないよー
ハッキリいってあたし琴子には入江くんより金ちゃんの方が似合ってるって思うよーー

理美の言うとおりかもしれない。

あたしのことをずっと好きでいてくれた金ちゃん。
あたしのことを思い続けてくれていた金ちゃん。
きっと金ちゃんと結婚して二人で『ふぐ吉』を継ぐのがみんなが幸せになる一番の方法なんだよね……


入江くんは沙穂子さんと着々と結婚する準備をすすめている。
あたしも前に進まなきゃ。
入江くんのことはきっぱり諦めてーー


そう思いながらも、あたしは明日金ちゃんになんて答えるべきか、色々考えて、考えて、考えあぐねてーーなかなか寝付けない夜を過ごしていた。
例えば仲良く二人で『ふぐ吉』を切り盛りしている光景は思い浮かべることは出来ても、夫婦として過ごすシーンが全く想像できない。
例えば金ちゃんと手を繋いで歩いたりとか、キスしたりとか……そ、それ以上のこととか? うーん、全然ぴんとこない……
考えてるうちにいつの間にか入江くんと一緒に過ごしてきた3年間の切ないような、いとおしいようなーー決して一生忘れないだろう様々な出来事ばかり思い返してしまう。
試験勉強を見てもらったこと。体育祭でおんぶしてもらったこと。
初めてのイジワルなキスや。
井の頭公園のデートとか。
大雪のバレンタインに泊めてもらったこと……
それについこの間の火傷した時手当てしてくれたこととか。
いろんなあったかい思い出たちがくるくると頭の中を駆け巡る。
ほんとに、あたしって未練たらたらだなぁ……

入江くんとなら、甘い新婚生活をいっぱい妄想できるのに。
毎朝入江くんのためにコーヒー淹れて、おはよう、琴子ってモーニングキスしてくれて。………なんてね。
でもそれは妄想だけだ。あたしの手には一生届かない、空しい妄想。
一緒に暮らした三年の間、冷たくされたり意地悪されたりした方が遥かに多い筈なのに、優しくしてくれたり、笑いかけてくれたりした温かな情景ばかりが思い出されて胸が苦しくなる。

「ああ、もう……ダメだな~~忘れなきゃ……」

いつの間にか頬を伝っていた涙をごしごしとパジャマの袖で拭う。
枕をいっぱい涙で濡らして。
こんなーー苦しくて切ない夜があったことも、ほろ苦い青春の記憶としていつか思い出に変わる日がくるのかな……。















「おいっ琴子! 琴子!」

え? 入江くん?

「琴子ちゃんっ大丈夫?」

おばさん?

二人の声が頭の上に降り注がれて、あたしはゆっくりと目を開いた。

なんだか眩しい。
そして、頭が重い。
鈍い痛みが後頭部に走り、あたしは思わず顔をしかめた。

「頭が痛いのか? 琴子! 大丈夫か?」

ど、どうしたの? 入江くん?
そんな心配そうな瞳であたしを見て……

「ん……ちょっと痛いけど……大丈夫……」

そしてゆっくり身体を起こす。

「無理して起きるなよ。おまえ、棚の上のキャリーバッグ降ろそうとして、それが頭に落ちて昏倒したんだ」

え?

キャリーバッグ?
昏倒?
何? それ。全然思い出せない。
だって昨日は泣きながらいつの間にか寝っちゃってて………
今、何時だろう。金ちゃんとの約束の時間は……大丈夫かな?

「ったく、ドジだよなー。何やってんだよ」

ん? 裕樹くん? 裕樹くんまであたしの部屋に?

あたしは憎まれ口をたたく裕樹くんを睨み付けようとして、ふと、周囲を見る。

え? ここ、何処?
あたしの部屋じゃないよね?

あたしの部屋もファンシーでメルヘンでリリカルな部屋だったけど、この部屋はさらにグレードアップしてる。なんだろ、英国王室風? 花柄が溢れかえって……華やかでゴージャスでお姫さまのお部屋みたい。

それにあたしの寝てるこのベッド……なんでダブルベッド? ううん、キングサイズってやつ? かなりおっきい。

不思議そうにキョロキョロ部屋を見回しているあたしを、入江くんが怪訝な顔をして見つめる。

「ちょっと頭みせてみろ。……コブができるな。軽い脳震盪起こしただけだと思うが……一応病院に行った方がいいな」

入江くんに頭を触られる。
いやーーん、近ーーい。
やっぱりかっこいいよーー。

「え? 病院? 病院はいいよー。大丈夫だよ……それより、ここ、どこ?」

あたしの言葉に入江くんが微かに眉をひそめた。

「琴子ちゃん? 何いってるの? ここはあなたたちの寝室でしょ?」

へ?

あなたーーたち?

よっぽど間の抜けた顔をしてたのだろうか?
入江くんに睨まれた。

「頭打って余計馬鹿になったか?」

うわーきたー。相変わらずのドS発言!

「……琴子。指とか動かせるか? 」

と訊かれて、両手を入江くんの前に差し出してグーパーして見せる。真面目な顔をして変なこと訊くのね。

「吐き気とか目眩は?」

「……だ、大丈夫だよ」

頭はなんとなくズキズキするけど。

「あと、ちゃんと自分の名前と生年月日言えるか?」

「失礼ねっ! それっくらい、言えるわよっ。相原琴子、21歳! 1972年9月28日生まれよ」

あたしが叫んだ途端に、みんなの表情が少し驚いたような困惑したようなものに変わった。
えーと、なんで?

「こ、琴子ちゃん……?」

おばさんが恐る恐るあたしの頬に触れる。

「……おばさん?」

「琴子、あれだけ大騒ぎして入籍入籍言ってたくせに、結局名前間違えてるのかよ」

裕樹くんだけが、驚く、というよりは呆れたように肩をすくめていた。

……なんのこと?

入籍って?

「琴子。今日は何年何月何日だ? 倒れる前に何してたか思い出せるか?」

入江くんがあたしの顔をじっと見つめてそう訊ねた。
なんでそんなこと訊くの?
とはいいつつ、ぱっと日にちが出てこない。

「えーと。1993年の11月……何日だっけ?……うーん……昨日金ちゃんから電話あって今日お店定休日で試食においでって……ってことは水曜日? あ、そうだ! 今日は3日だよ。文化の日!」

テニス部の練習はあるけど、さぼっちゃおうーーって、ここんとこサボってばっかだけど。

「何言ってるの? 琴子ちゃん……今はもう2月よ。今日は1994年の2月8日。どうしちゃったの? 琴子ちゃん……」

はい?ーー2月…?

ウソ。嘘でしょ?!
一晩寝たら3ヶ月も経ってるなんて~~!
そんなバカな!

「それに…琴子ちゃん……あなたの名前はもう入江琴子でしょう? そりゃ、お兄ちゃんがぐずぐずしてたせいで入籍したのはほんの1ヶ月前だけど……」

「へ?」

あたしは何を云われたのかさっぱり理解できずにフリーズしてしまう。

あまりにあたしがきょとんとした表情をしていたせいなのか、周りにいたみんなの顔が強ばるのがわかった。

えーと?
入江琴子? 入江? な、なんで?

「まさか……本当に覚えてないの?」

おばさんがひどくおろおろして、入江くんに助けを求めるようにあたしの顔と交互に見つめる。

「琴子。おまえはおれと結婚したんだ。去年の11月21日に」

入江くんが、あたしの目を真っ直ぐ見つめて淡々と告げる。

へぇーー
そうなんだーーへーえ?

………って?

うっそっっーーーっ!!!!!!

「やだぁ……入江くん、何の冗談を……」

ううん、冗談にしても性質(たち)が悪い。
ずっと入江くんのこと忘れよう諦めようって頑張ってきたのに、そんなこと言うなんて……

「冗談なんかじゃないわよ! 琴子ちゃん! ほら、これ見てちょうだい!」

おばさんがベッドの横のサイドボードの上にあったフォトスタンドを手にとってあたしの前に差し出した。
そこには、ウェディングドレスのあたしと、タキシードの入江くんのツーショット…………

きゃーーーっ!!なに、これっ!

「どーやって加工したの? こんな……こんな素敵な写真!!」

あたしは興奮してまじまじと見つめてしまう。ああ夢のような写真。こんなの作ってもらっちゃったら一生の宝物だわー!

「加工じゃないのよ。ちゃんとお式を挙げて、ハワイにハネムーンにもいって……
ほらこっちも見て!」

うわー壁一面に写真が!
それも全部あたしと入江くん!
ほんとに……ハワイ……?
ええーーっ!! ハネムーン!? ハネムーンって、新婚旅行ってこと?

「待っててね。披露宴のビデオもあるし、写真だってもっとたくさん……」

そういっておばさんが部屋から出ようとするのを入江くんが「おふくろ!」と止めた。

「先に病院に連れてった方がいいだろう。頭打ったし……脳に何らかのダメージを負って一時的に記憶が欠損した可能性もある」

えーと記憶が……欠損?

「それって、記憶喪失ってこと?」

おばさんが真っ青になって震えながらあたしの手を取る。

キオクソーシツ……?

あの漫画やドラマにでてくる?
いやいやいや。そんな、バカな……と笑い飛ばそうとしたけれど、みんなの顔があまりにも真剣で、あたしの言葉は空に消えた。

「そんな……アタマ打って3ヶ月だけの記憶喪失なんてあるの……?」

「脳に損傷を負ったことで機能性乖離を引き起こし、逆向性健忘または前向性健忘になる可能性はある。数時間、もしくは数日間……あるいは数ヵ月、数年の過去記憶を失ったり、もしくは今後未来の記憶の維持が短い間しかできなくなったり」

入江くんは何やら考えながら話している。さすが少しの間でも医学部に通っていただけのことはある。すらすらと難しい病名を……
えーと、あたし、ほんとにキオクソーシツ?

あたしはみんなの不安そうな表情からようやくこれがどっきりでも何でもなく、本当に現実なのかも、と思い始めていた。
とはいいつつ半信半疑な気持ちも否めない。


ーーだってーーあたし、ほんとに入江くんと結婚したのーー?
そんなの、絶対信じられない。信じられる筈がない。
そんな素敵な大どんでん返しがあったのなら、いっくら頭打ったからって簡単に忘れてしまうわけないじゃない!
それに、そもそもーー入江くんには、あのひとがーー。



呆然としているあたしに、「ほら、琴子。動けるか? この時間ならまだ診察時間に間に合うな。さっさと病院行くぞ」と手を差しのべる。
自然に差し出された手を、少しドキドキしながら取った。
最後にこの手に触れたのはいつだっけ?
あたしはあの足に火傷をした夜を思い出していた。あの日のことはちゃんと思い出せるのに……入江くんと結婚したという超絶エピソードを忘れるなんて……有り得ないでしょ?





「わ……寒……」

外に出た途端、思いもかけない寒さにあたしは首を竦めた。おばさんが、「コート着てきなさい」ってクローゼットから出してくれたのはアッシュブラウンのムートンコート。こんなの持ってたっけ?と思ったら、去年、おばさんからのクリスマスプレゼントに買ってもらったらしいの。ごめんなさい、全然覚えてない……。そして、こんなあったかいコートが必要な季節なんだ、と白い息を吐きながら、しっかりと体感してしまった。
肌を突き刺すような空気の冷たさ。
赤く色づきかけていた筈の庭の樹木も、いつの間にかすっかり葉が落ちて、寂しく枝だけが冷たい風に煽られてゆらゆら揺れている。
おばさんの自慢のプランターもハボタンやシクラメンや冬の花しか咲いていなかった。
そして今にも雪が降りだしそうなどんよりとした灰色の空。
秋だった筈の季節が確かに移り変わっていったのだと思い知らされる。

ーーあたし、ほんとに、3ヶ月もの間の記憶がなくなっちゃったの?

こうやって様々な証拠を突きつけられても、なんとなく絵空事のように思える。
あの結婚式やハネムーンの写真のように、何だか全てがつくりものめいて感じてしまう。


病院へはおばさんの運転で向かった。
後部座席で入江くんの隣に座る。
入江くんは労るようにずっとあたしの手を引いて歩いてくれて、そして今もその手を離さない。
ドキドキする。
胸キュンでドキドキしているのか、この異常な状況にドキドキしているのか、なんだかよくわからないけれど。

入江くんはただあたしの手を握りしめているだけで、一言も喋らない。とっても難しい顔をしている。

そして、おばさんだけがハンドルを操作しながらもあれこれ話し掛けてくれた。
その内容はどれも驚くことばかりで。
「えー、うそっ信じられない!」、とあたしは何度も叫んでしまい、いちいち入江くんの顔を覗きこみ、確認してしまう。

あたし……ほんとに入江くんと結婚したんだね……

入江くんからプロポーズされ、それからたった二週間で式を挙げたって……!
あのひととの婚約は解消し、でも北英社からの融資はそのままで……そして入江くんが作ったゲームが大ヒットして、あっという間に会社の業績は回復したらしい。
しかも、あたしをモデルにしたゲーム?ナニソレ!? やーん、早く見てみたい!
そのうえ、入江くんは無事に大学の医学部に復学したって……ああ、よかった!

はぁーーでも、ほんと、信じられないよ!
何? その短い間の奇跡的な逆転劇は。
そんな、そんな小説みたいな幸せな状況になっていたなんて!
そしてーーそして、なんであたしはそんな素敵な大切な思い出を忘れちゃったわけ? ほんと、あたしっておバカ過ぎるよっ!







病院に着くと、入江くんがさっさと予診票に記入してくれた。

そこはうちから一番近い脳神経外科だった。あまり縁のない診療科だから、来るのは初めてなのだけれど。
そして保険証も確かに『入江琴子』だ……思わずまじまじと見つめてしまった。

「今から頭のCT取りますね。えーと結婚されてるんですね。奥さまですか 妊娠の可能性は……」

看護婦さんが予診票を眺めながら入江くんに訊ねていた。なんで入江くんの方ばっかみてんのよー……って……待って?
奥さま……奥さま……っていってたわよね?なんて素敵な響き。
いや、それより!

「いえ、妊娠なんて!」ーーと、あたしが慌てて否定しようとした矢先に、入江くんが飛んでもないことを冷静に告げる。

「基本的に避妊はしてますが、ゼロとは言い切れないので念のため検査をお願いします」

へ?

「わかりました。じゃあ、最初に尿検査お願いしますね」

紙コップを渡されたけど、あたしはそのままフリーズしてしまった。

「おい、琴子」

「あ、はい」

あたしは呆然としたままよろよろとトイレに向かう。

へーそっかー。
結婚してるんだもんね。
そーなんだー。
してるんだ……。
……『避妊はしてる』けど、あたしたち、赤ちゃんできるようなことしてるんだ。へぇええぇっ………………!!!!!
……ってことは、あたし、もうヴァージンじゃない?

入江くんと……?
入江くんと……あんなことやこんなこと……してるの? うそーーー!!
わわわわーーーっ
するの? 入江くんがあたしに? 想像できないっ!!
なんか頭が沸騰しそう!
うぎゃあーーっ

すると背後でおばさんが入江くんに詰問している声が聞こえた。

「避妊って、どういうことよ。結婚してるんだから安心して赤ちゃん作っていいのよ? 育児なんて私が手伝うし」

「学生なのに、安易に作れるわけないだろ?」

「だから私が手伝うって……」

「そんな簡単に親に甘えられるかよ。琴子だってもうすぐ四年生になって就活とかあるだろうし」

「あら、そんなの。別に働かなくてもいいじゃない」

「おふくろが決める事じゃないだろ。琴子が決めることだ……」

「それより……あなたたち、最近、うまくいってたの……?」

おばさんの言葉にドキッとして思わず振り向いてしまったせいか、おばさんは慌てて口元に手を当てていた。

「早く行けよ」

入江くんに促され、あたしは慌ててトイレに走った。

ーーあたしたち……うまくいってたの?






「脳に損傷はないですね。脳震盪による一時的な逆向性健忘と思われます。生活に支障の出る前向性健忘と違って、周囲のサポートで日常生活は送れると思うので、特に治療はしません。自然に記憶が戻ることが多いですし。まれに戻らないこともありますが………。
もし、記憶がないことで不安やストレスが増すようでしたら向精神薬を処方しますよ」

「……大丈夫です」

自然に治るのなら何もしなくてもいいと思って断った。

結局、妊娠はしてなくて、普通に頭部CTを検査して、今お医者さんの説明を入江くんと二人で受けているところだ。(おばさんは入江くんについてくるなと追い出された)

妊娠してないと聞いた時、ほっとしたと同時に、何か得体のしれないモヤモヤした感覚が胸の辺りでざわついていた。

そりゃ……結婚した実感もなく、えっちの記憶もないのにいきなり妊娠なんて……あんまりだよね。突然大好きな人の赤ちゃんがお腹に宿ったとしたら……それはそれで嬉しい気もするけれど……複雑だわ。

はぁーーでも……あたしなんでそんな大切な記憶を忘れてしまったんだろ……?
自分がほんっとに信じられないよー!!
思い出したい。
早く思い出したいよ!







そしてーー夜。
頭の痛みはすっかり収まって、普通にご飯食べて。そしてそのあと結婚式のビデオの鑑賞会となった。……もう、超感動!! あたしってば教会で自分からキスしてるよー。なんて大胆な女なの?
ハネムーンも……うそ。おばさんたち付いて来たんだ。お陰で写真もビデオも沢山あって。わぁーーいいなぁ、ハワイ。 きゃーなんて素敵。夜の浜辺でキスなんて……!
いいなあ、あたし。うっとりと眺めつつ羨望の吐息をもらす。
今のあたしには高校卒業の日のキスしか記憶がない。
あたしたち、すでに何回キスしたのかしら?
こうして記録に残っていても、なんだかドラマでも観ているようで、どこかまだ他人事のような感覚は抜けない。
この3ヶ月間のあたしが羨ましく、忘れてしまったことが酷く勿体ないし、入江くんにとても申し訳ない気がする。
入江くんは何も言わないけれど……
そして、相変わらずの無表情で、何を考えているのかよくわからない。

「今日は早く風呂入ってさっさと寝ろよ」

ぶっきらぼうだけどそういって気遣ってくれるのは、凄く嬉しい。うん、入江くんってそうなんだよね。冷たいようだけど、ほんとはとっても優しいの。

普通にお風呂に入って(何気に身体を念入りに洗う)ちょっとドキドキしながらあたしたち(!)の寝室に向かう。いや、お風呂の前に寝室のチェストからパジャマと下着出したんだけど……ちょ、ナニコレ!? な透け透けネグリジェとか、ちょっと色っぽい下着とかあって、かなりびっくりしちゃったわよ。ほんとにこんなの着てたの? あたし……
えーと、あたしご愛用の動物パンツ、どこ行った?
そ、それに上の引き出し、入江くんの下着が入ってるの~~きゃあ、なんか、恥ずかしい。
とりあえず無難な下着とパジャマをチョイスして、再び部屋に戻ってきた訳だけど。
改めて眺めても素敵なお部屋だなぁ。
ハネムーン行ってる間に改装したっていうのだから、おばさんってすっごい。しかもおばさんの趣味全開だし。
掃き出し窓はものすごく大きく高くなってるし、窓を縁取る小花柄のカーテンはローラアシュレイかしら?
ほんとうにプリンセスにでもなった気分。
それに壁一面の写真……もう一度まじまじと見ちゃうよね。
幸せそうな二人。(仏頂面の入江くんが多いような気もするけれど)

あたしはヨーロピアンでお洒落なドレッサーの前で髪をときながら、入江くんを待った。
夫婦の寝室ってことは、入江くんもここで寝るんだよね? こ、このベッドで……?
うわー心臓ばくばくしてきた。

「ん? ここにもある……」

あたしは鏡に映った自分の首筋にうっすらと赤茶けた痣があるのを見つけてた。
実はお風呂の中でもいっぱいこんな痕があったんだよねー。ぶつけたにしろ、二の腕の裏とか、太腿の内側とか……絶対ぶつけないよね? というとこまで痣があって不思議だった。
虫刺されかなー? こんな真冬に?

あたしが首をかしげてると、ガチャっとドアが開いた。

「なんだ。まだ寝てなかったのか?」

「え、あ、うん」

入江くんはパジャマ姿で肩にタオルをかけていた。以前から着ているごく普通のストライプのパジャマだ。

「早く寝ろっていっただろ? 脳震盪起こして少しの間、意識喪失してたわけだし」

「大丈夫だよ。もう、頭も痛くないよ」

「お義父さんには店から帰ったらおれから説明しておくから」

「え、あ………うん」

夜遅く帰ってくるお父さんとはまだ会ってない。
3ヶ月間の記憶がないっていったらびっくりするだろうなー。心配かけちゃうかな……

「それと、おれはしばらく書斎で寝るから」

「え? そ、そうなの? だってここは入江くんのベッドでもあるんだよね?」

「そうだけど……おまえ、おれと結婚してる認識、まだちゃんとないだろ? 突然夫婦になったって言われても戸惑うだけだろうし」

「え、あ、うん。まあ……ね……」

確かに戸惑いはあるけれど、でも嬉しい気持ちの方が大きいよ。
入江くんの奥さんになれたなんて……
なんだかふわふわと空の上を彷徨ってるみたいに現実感がないだけなの。

「じゃあ、おやすみ」

「あ、待って!」

部屋から出ていこうとする入江くんを思わず引き留める。

「……何?」

「えーと、えーと、あのね……」

しまった、特に何も思い付かない。ただもう少し傍にいて欲しいだけで。

「お父さんによろしく……」

「ぷ。何だよ、それ。一応おれから説明しとくけど、明日、ちゃんとおまえからも話せよ。元気な顔見せないと心配するだろ」

「う、うん。あ、大学……明日って」

2月って……もしかしてもうそろそろ後期試験の頃じゃ……

「今年度からうちも他大学に合わせて2月から春休みだ。後期試験も先週終わってる」

ああ、そういえばそんなこと掲示してあったっけ。
他の大学並みに春休みが二ヶ月もあるーーっと理美たちと抱き合って喜んだものね。(というか、バレンタインシーズンに後期試験なんて、あり得ないよね、うちの大学)

「じゃあもう春休みなんだ……」

「テニス部の練習はあるけど、しばらくは休めよ。それと、安心しろ。おまえ、なんとか単位とれて進級できるから」

「へー、そうなの!?」

やるじゃん、あたし。夏からこっち、色んなことが有りすぎて大学も休みがちだったのに……
でも目が覚めたら試験終わって春休みなんて、ちょっと得した気分かも。

「え? 入江くんは?」

ずっと休学してた入江くんは……?

「レポートと特別補講でなんとか進学できるよ。まあ、おかげで春休みは殆どないけどな」

「そーなんだ。でも……良かったね。お医者さんになれるんだ……夢を諦めなくていいんだね」

真夜中のリビングで一人ぽつりと座っていた寂しそうな入江くんの背中を思い出して、あたしは心から安堵した。

「ああ」

入江くんの表情が初めて優しくほころんで、かすかな笑みを浮かべる。

「じゃ……」

「あ、あのねっ」

また入江くんのパジャマの裾を掴んでしまう。

「今度は、何?」

「あ、あのね。こんな季節なのに、この部屋、ダニとかノミがいるみたいなの。暖房効きすぎなのかな? ほら、見て。入江くんは大丈夫?」

そういってあたしはパジャマの袖をまくって、うっすらと残る赤茶けた痣を見せた。

「………………」

入江くんが眉をぴくりと動かして軽く睨む。

え?

「おまえーー」

呆れたようにため息をついた。

「最後につけたの、もう5日前なのに、まだ残ってたのかよ……」

え? 何が? 何をつけたーー? ええっ?

「え……も、もしかして、これって噂の……」

キスマークとかゆーやつ? 漫画でしか、見たことなかった、あれ?

一瞬にして理解ってしまったあたしは、ぽんっと顔が沸騰するように火照るのを感じた。
ーーと思ったら唐突にーー。

「え? ええっっ?」

腕を掴まれ、そしてそのままベッドに押し倒されていた。
ぎしっとスプリングが弾む。

「おまえさ、人が我慢してんのに、誘ってんの?」

「さ、さ、さ、誘ってるなんて、そんな……」

ひゃーーあ。
顔が近い、近いよーー!!

入江くんの綺麗な顔がどんどん接近してくる。
ま、睫毛ながっ
息がかかるくらいに近づいて……唇が……迫って……

きゃーいよいよ二回目(?)のキス!?

思わず目を瞑って身構えていたらーーあれ? 何も起きない?………と思ったら、鼻を摘ままれた………。

「ひ、ひどっ! からかったのね!」

なんか昔もこんなことなかったっけ?

「………しないよ。キスだけじゃ、止まらなくなる」

でも、返ってきた言葉はあの日とは確かに違ってて……やだ、なんか、キュンってときめいちゃった。顔がかあっと熱くなる。
うわー……今までの入江くんの態度から、ラブラブな新婚カップル感は全くなかったけれど、ようやくあたしたち、やっぱりーーと少し思えてきた。

「い、いいよ。だって……夫婦なんでしょ? あたしたち……」

心臓の鼓動はフルマラソンの後のように飛び跳ねている。
怖いけど。
気持ち的にはヴァージンだけど、身体はもうしっかり経験済みなんだよね?
もう健全なお付き合いから……なんて段階は過ぎてるんだよね?
だからーーきっと大丈夫。
それに、もしかしたら色々思い出せるかもしれないし!!

そう思って、覚悟を決めて待っていたのに、入江くんはそのまま触れてくることはなかった。
何だか少し苦しげな表情であたしを見つめている。

「入江くん……?」

「………やっぱ、言わないのはフェアじゃないから、言っとく」

何をーー?

「おまえ、おれと別れるつもりだったんだぜ?」

「……え?」

何……?

「倒れる少し前、おれに離婚届けを突きつけたんた。別れて欲しいって」

ーーはい?

入江くんの云ってる言葉の意味を全く理解できないでいるあたしを横目に、入江くんはデスクの引き出しの中から一枚の紙を取り出してあたしの前に差し出した。
ーーそれは、あたしの名前だけが記入された離婚届だった。









※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


はい、もう元ネタはおわかりですね?
どうしてもヒロインの相手役がちょっと大人になった入江くんにしか見えない……というあのドラマですよf(^_^;


イリコト変換といいつつ採用しているのは「三ヶ月間の記憶喪失(原作は1ヶ月ですが)」「いつの間にか深い関係 でも別れる直前」ってところだけです( °∇^)]






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2018/05/06 | [] | Edit

NoTitle

ありゃ!記憶喪失はわかるけど?幸せにいくのくのかと思えば、琴子ちゃんが入江君にいきなり、離婚!v-12

2018/05/06 | なおなお[URL] | Edit

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2018/05/08 | [] | Edit

Re.マロン様

コメントありがとうございました♪

そうなんですよね。ネタとしては何本か記憶喪失の話があるのですが、何故か突発的に思い付いた話をアップしちゃいました。
ラブリ◯ンのように、短期間での状況の激変という面白さを鑑みるとやっぱりこの時期ですよね〜〜。
ついでに元ネタのいつの間にか付き合ってすでに破局してるという設定もお借りするとなると、三ヶ月でもう離婚騒動勃発という展開を妄想しちゃいました。
ちょっとハラハラドキドキさせてみたいと思ってます。

はーい、ありがとうございます♪ 続き、頑張って書きますね〜〜(^w^)

2018/05/15 | ののの[URL] | Edit

Re.heorakim様

拍手コメントありがとうございます♪

連休過ぎたらすっかり暑くなりました。連休中もっと頑張るつもりが、結局いつものペースです。
そうですねー入江くんきっと動揺してるでしょうねー。はーい、頑張って続き書きますね(^-^)v

2018/05/16 | ののの[URL] | Edit

Re.ルミ様

拍手コメントありがとうございます♪

ふふ、さあどうなることでしょう。でも、わたし、基本ハッピーエンドしか書かないので安心してもらっていいですよー(^w^)続きは、しばしお待ちを!

2018/05/16 | ののの[URL] | Edit

Re.なおなお様

コメントありがとうございます♪

はい、二次にはよくありがちな記憶喪失ですが、琴子ちゃん、幸せな記憶以外にもなにかとんでもないことまで忘れてしまってます。
ちょっと一波乱ありますが、更新までしばしお待ちを!

2018/05/16 | ののの[URL] | Edit

Re.紀子ママ様

コメントありがとうございます♪

あれ、原作2巻しかないのでさくさくっ読めます笑 だからドラマはあれこれ膨らませてオリジナル要素が強いだろうなーとおもったら、私の二次とおなじで設定とキャラが同じだけでほぼオリジナルな感じで。でもまっちーは、やっぱり入江くんを彷彿させて、いいですねぇ。(入江くんの方が冷たい…)アンちゃん、意外といいじゃん、って感じですね(^w^)
ふふ、今回は琴子ちゃんから離婚の申し出ってとこがポイントで……いやー流石紀子ママさんのお嬢アンテナが察知しましたね……(^w^)
ふふ、私も入江くんを困らせるの大好きなので〜〜頑張りまーす(頑張らせます笑)

2018/05/16 | ののの[URL] | Edit

        

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