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大変長い間お待たせしました。
いつの間にか桜も咲き始めてますよ!

もう、バタバタでお花見どころじゃないけどねっ
いまはただ早くGW来ないかな~~とそれを楽しみに生きてます(-_-)


そして、お忘れかもしれませんが、まだまだ結婚記念日なままな二人でございます……( ̄▽ ̄;)







※※※※※※※※※※※※※※※※※




11月21日 A.m.0:00






『入江くん、朝だよー。起きて~~』

点滴も外れ明日の退院許可もおりた琴子と共に、紀子の用意してくれた料理を食べ、ささやかな結婚記念日前夜祭を病室で祝った直樹は、並んでソファに座りテーブルの上の小さな目覚まし時計の針が日付を跨ぐ瞬間を待っていた。


「朝じゃねぇけど、時間だな。四周年おめでとう」

きっちり真夜中0時にセットされた琴子の目覚めしボイスのアラームを合図に、缶コーヒーで乾杯する。
消灯時間はとうに過ぎているが個室なので大目にみてくれるとのことだった。
とはいえ、紀子の用意してくれたシャンパンを開けるわけにもいかないし、結局俺たちはこれだろうと談話室の自販機で缶コーヒーを買ってきたのだ。

(まさか、これわざわざ持ってきてくれてるとは思わなかったよ。よく見つけたね~)

琴子が自分のプレゼントした目覚まし時計を苦笑気味に指差す。直樹がそれを鞄から出した時、驚いてまた声を発しそうになったものだ。
内心こんな間の抜けた自分の声を聞きながら結婚記念日を迎えることになるとは思わなかった琴子は、せめてもうちょっと甘い声で『おはよう、入江くん、大好きだよ、ちゅっ』にしておけばよかった、言葉の選択を失敗したかも、と少々後悔していた。

「ネクタイピンもありがとな。でもどっちかってゆーとこっちの方が嬉しかったかも」

(入江くん、目覚ましなんて要らないかと思ってた)

「確かになくても起きれるけどな。でもおまえのすっとぼけた声を聴くと日常に戻ったようでみょーに和むわ」

(そお?)

その夜の直樹はいつもより饒舌だった。
普段は、黙れというまで止めどなくそして脈絡なく迷走し、あちこちに飛びまくる琴子のお喋りが聴こえないということが、実に間が持たないというか、物足りない妙な感じだったせいかもしれない。

琴子が一生懸命ホワイトボードに文字を綴り、直樹はその手が止まるの優しく見つめ待ってから言葉を返すという静かな会話のやりとりが、とりとめもなく続いていた。

(自分の声って何だか背中がむずむずするような変な感じだよね)

「普段耳に入る自分の声とは違うからな。違和感感じるんだろ?」

(あのこの声をきいたときもなんか気持ち悪かったもん……あたしに似てるなーって……この目覚ましの声に…)

琴子がつんつんと小さな目覚まし時計をつついた。

「……ちゃんとした会話をすると、全然イントネーションとか違うから、すぐ差異に気づくんだけどな。でも一言二言だと確かにドキッとするくらい似てたよな……でも、やっぱりおまえとは違う……」

例え一言でも琴子の声と(不覚にも)聞き間違え、他の女の手を取ってしまったことは直樹の人生の中では、ベスト5に入るくらいの失態と感じていた。ちなみにベスト1は母に言われるまま少女の格好をし、あの事件まで自分を女と信じていた思い出したくもない過去である。母親にも腹が立つが、すでに物心ついている歳でもあるのに、気がつかなかった己の迂闊さにも忌々しさを禁じ得なかった。それに匹敵するくらい、今回のことも自分の迂闊さが腹立たしい。

(たしかに胸の大きさは全然ちがうよね)

直樹が自責の念に駆られていることなど気づきもせずに自分の胸を悲しそうに眺めている琴子。

「あほっ そっちの『違い』はどーでもいい」

(そう? でも入江くん、あのこの胸をガン見してたって)

「それは悪意あるデマだ」

(でも、ほんとはC以上がいいんだよね?)

どうにも胸に食いついてくる。

「おまえ、まだあの時のこと根にもってるのかよ。あれはおまえが親父や裕樹もいるのにあまりに無防備すぎるから、つい嫌味をいっただけ」

(??)

一瞬どういう意味か分からずきょとんとした琴子の髪をくしゃっとかき回し、話を変えるように「とにかく、今回のことは全ておれの失態から始まった。それに関してはきちんと謝るよ。不安にさせて悪かった。電話でキツい言い方して悪かった。連絡とれなくて、ファックス気がつかなくて悪かった。おまえの体調にも気がつかなくて悪かった」と畳み掛けるように謝ってきた。

思わず琴子は直樹の額に手をやる。

(……大丈夫?)

目が訴えている。素直に謝る直樹がどうにも信じられなくて熱でもあるのかと疑っているようだ。

(まだ、疲れとれてないよね。ごめんね、めっちゃ忙しいのに……あたしのせいで)

「ばぁか。おまえは謝らなくていいんだよ」

直樹の謝罪も寝不足のせいと取られてしまうのも己のこれまでの不徳の致すところかと、ため息をつきながら自戒する。

(入江くんもあやまらなくていいよ。浮気してないのなら……)

「だから、してない!」

(うん、信じる。だからもうあやまらないで)

「じゃあ、もう、お互い謝るのはなしってことで」
ふわっと優しく抱き寄せる。
そして、うっかり話さないよう飲み食い時以外は口元を覆っているマスクをスッとはずして軽くキスをした。

「早く、よくなって、また声を聴かせてくれ………」









11月21日 A.m.5:00



『入江くん、朝だよー。起きて~~』

昨夜は病室のソファの上で眠り、琴子の目覚ましボイスで目覚めた直樹は、始発の新幹線に乗るべく準備をしていた。

(気を付けてね。お仕事も、無理しないでがんばって……)

「ああ。起こしちまったな。おまえはもう少し寝てろよ」

むっくり起きてベッドから降りようとした琴子を止めて、頭をポンポンと叩く。

「じゃあな」

着の身着のままで神戸から飛んできた直樹なので、たいして支度もない。

すでに半泣きの琴子をぎゅっと抱き締める。
(せっかく入江くんがいるのに勿体なくて眠れない~~)といっていた琴子だが、その五分後には爆睡していた。あまりに琴子らしくて苦笑を禁じ得ない直樹だったが、狭いベッドから落ちないか、寝言で声を出さないかとはらはらして自分は眠るどころではなかった。昼間しっかり寝てしまったので眠れなかったこともある。

「またしばらくは、忙しくて音信不通になるかもだから、まとめて充電しておかないとな」

おそらくはクリスマスも、正月も……
そういう意味なのだろう、と琴子も悟って(あたしも!)と心の中で叫び直樹の背中にぎゅっと手を回した。

(入江くん、大好き!)

耳には届かなくても、琴子の心の声が直樹の胸にすんなりと届く。

病院の玄関まで見送るという琴子をベッドに押し込んで、直樹は静まりかえった廊下に出た。ナースステーションの灯りが仄かに光るだけの薄暗い廊下をエレベーターホールに向かって歩く。
働く病院は違えど慣れきった雰囲気の空間ではあるが、医師という立場で病棟を巡るのと、患者の家族という立場で訪れるのとは随分ちがうものだと今さらながら思う。
とはいえ、そんな立場で病棟を訪れるのは二度とごめんだとも思う。

ーーいや、産婦人科病棟ならありか。

いつかそんな日が来ることもあるだろう。
琴子が無事に国家試験に合格して共に暮らせる日がくればーー。










その日の午前中には予定通り琴子は無事に退院できた。直樹が無事に神戸に辿り着いたのと同じくらいの時間だった。
紀子と重雄に迎えにきてもらい、自宅に戻ると直樹からの留守電が入っていた。

『琴子? もう退院したか? おれは今、マンションに着いた。シャワー浴びてから病院に戻る。また連絡取りづらくなるけど、心配するなよ。あと、おまえも一週間は絶対に喋るな。ずっーとマスク外すなよ。それと、これから一週間はファックスはきちんとチェックするよ』

電話機の前で正座して、直樹からの留守電を10回くらい再生している琴子に、紀子がくすくすと笑いながら声をかける。

「珍しくマメに到着報告してきたのはいいけど、なんでそんなに偉そうなのかしらねぇ?」

そして、琴子はすぐにいそいそとファックスで送る手紙を書きはじめた。

(入江くん、留守電メッセージありがとう!! ちゃんと退院したよー! お仕事頑張ってね。心配してた心臓病の赤ちゃんは大丈夫だった? 手術成功するといいね。それからーー)

昨夜随分いろんなことをホワイトボードに書いては消してを繰り返し伝えた気もするが、どうにも文字だと微妙なニュアンスが伝えきれない気がする。
早く話せるようになりたい。
早く入江くんとちゃんとお喋りしたい。
早く一週間が経てばいいのにーー










11月27日 A.m.10:45


そして、一週間。
長かった絶対沈黙の期間が過ぎ、ようやく発声の許可を得ることが出来た。

「お義母さん! ただいまー!!」

「きゃー琴子ちゃん、琴子ちゃんの声だわ。おかえりなさい~~!」

一人で病院に向かった琴子を心配そうに待っていた紀子は、琴子の第一声を聴いて、歓喜の涙を流しながら抱き締めた。

「おかしくないですか? あたしの声……」

「ええ、もうすっかり元通りよ。よかったわねー」

主治医の前で初めて発声した時、自分の普段の声がきちんと空気を震わせるのを感じて、飛び上がりそうに嬉しかった。再発しないよう発声指導を受けるための通院はしばらくあるが、もう自由に話せる。お世話になったホワイトボードに別れを告げて、歌でも歌いたい気分だったが、カラオケとか大声で叫んだりとかはしばらく控えてねと釘を刺された。
とにかくあの潰れたヒキガエルのような声ではなくなったことに、思わずスキップして帰りたいくらい嬉しくてたまらなかった琴子である。

「もう今夜は快癒祝いね。ご馳走つくらなくっちゃ! 何食べたいかしら?」

楽しそうに話す紀子に、「えーと、お義母さん……」と、少し言いにくそうに琴子が口ごもる。

「あ、そうね、琴子ちゃん! 早く電話しないとね~~! 直樹、今家にいるかしら?」

すぐに察した紀子がふふふっと笑って電話の子機を差し出す。

「今日は病院って聞いてます。それで、あの……」

琴子は受け取った子機をしばらく眺め、そしてそれを充電器のところに戻した。

「やっぱり電話の音より生の声聴いてもらいたいので、今から神戸に行ってきていいですか?」

「あらーーすてきな計画! もちろんですとも! じゃあ完治のお祝いに私から交通費はプレゼントさせてね」

「いえ、そんな……」

まだ午前中なので、昼頃の新幹線で行って、直樹に完治の報告だけして最終でトンボ返りするつもりだった。誕生日のプランの仕切り直しである。

「遠慮しないでちょーだい。これくらいしかできないんだから」

「すみません、おかあさん……」

「さ、じゃあすぐに羽田に送るわね」

ぱっとエプロンを取り去り、キーボックスから車のキーを掴む紀子に、思わず目を丸くする。

「え? 羽田?」

「当たり前じゃない。私からのプレゼントが新幹線のチケットなんてみみっちいものの筈ないでしょ。飛行機なら一時間よ! 大丈夫、この時間ならきっと空席あるわよ。なくったって、なんとかしてみせるわよ!」



ーーそして、三時間後。
琴子は神戸医大に着いていたーー。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

この時間に神戸行きの便があるのか大いに疑問ですが(LCCのある今なら沢山あるようですが)この際そこはスルーで……f(^_^;



多分、次は最終話だと思いますf(^_^;






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2018/03/26 | [] | Edit

ウフフ

紀子ママも、琴子ちゃんもある意味似た者同士なのかな?でも、琴子ちゃん生の声が一番の入江君への誕生日プレゼントだねv-274

2018/03/26 | なおなお[URL] | Edit

Re.マロン様

コメントありがとうございます♪

なんとか結婚記念日まで辿り着きましたよ。
紀子さんがシャンパン持ち込んだものの、飲むわけにはいきませんしね〜〜何で乾杯させよーかって、そりゃ缶コーヒーでしょう!となりました(^^)d
はい、琴子ちゃん、仕切り直しで神戸にゴーです。
ふふ、失態ベスト5ですか? あとがきに書こうかなーと思いつつ、皆さまの想像にお任せしましたが笑
一位は政略結婚しようとしたこと(安直な方法で周りを不幸に……)2位は嫉妬事件(青かったな、と今なら思える)、3位はハネムーンの麻里に振り回されたこと(今なら上手くあしらい最初から琴子を可愛がる自信あり)4位は披露宴を紀子に仕切らせて、機嫌を悪くしほんとの初夜を無駄にしてしまったことーーといった感じでしょうか笑(因みに未入籍事件のことはまだこの時には反省してません)

2018/04/08 | ののの[URL] | Edit

Re.なおなお様

コメントありがとうございます♪

ほんと、パワーと行動力は二人似た者同士ですね!はい、やっぱり生の声が一番の活力になるかと(^^)d

2018/04/08 | ののの[URL] | Edit

Re.heorakim様

拍手コメントありがとうございます♪

はい、なんとか落ち着きました。ご心配いただきありがとうございました(^^)d
ふふ、素直な直樹さん、なかなかレアですよね。こんな時くらいはねぇ〜〜
はい、紀子さんにかかれば、神戸になんてひとっとびですよ♪

2018/04/08 | ののの[URL] | Edit

        

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