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Happy Halloween & Happy Birthday!(emaさま、3日遅れで申し訳ないのです~~^_^;勝手に捧げますっ)



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~19901031



「もう、そろそろハロウィンの季節ね~今年は何の仮装をしようかしら?」

夕食後、リビングで寛ぐ入江家の面々に、紀子が食後の林檎を差し出しながら楽しげに話し掛ける。

「ハロウィンって……子どもが『トリックオアトリートメント』ってお菓子をねだって周る奴ですよね? パーティーって……何やるんですか?」

「なんだよ、トリートメントって……」

幼い裕樹に呆れ顔で突っ込まれたが気にすることなく、紀子の答えを待つ琴子。
それは入江家で暮らし始めてすでに半年近く経った秋のことだった。

「そうね、仮装の他にはゲームしたりとか……ほら、うちは玩具メーカーでしょ? こうした季節行事は販促活動に外せないのよね」

「毎年、ハロウィンは会社でちょっとしたパーティーをやるんだ。
社員やそのご家族を招いてね。よかったら琴子ちゃん、来るかい?」

紀子と重樹に誘われて、琴子は嬉しそうに手を組んでこくこくと頷く。

「行く! 行きます! 何をするのかいまいちわかんないけどっ」

この頃はまだハロウィンは世間一般に浸透していなかった。
ホラー映画のタイトルとかホラー漫画雑誌のタイトルとかで、なんとなくホラーな感じとカボチャのランタンだけは薄ぼんやりとイメージにあった。
お菓子をもらうためにご近所周りしてい
いなんて、なんでそんな素敵な行事が日本にはないのかと、子供の頃羨ましく思ったこともある。
板前の父をもち、英会話教室も教会も出入りしたことのない琴子にとって、それまでの人生、全く縁のないイベントだったことには間違いない。

「仮装ってどんな?」

「そうねぇ。本場はみんな、魔女とかガイコツとかゾンビとか……ホラーチックなコスプレが多いわね。でも、なんでも好きな格好すればよいのよ」

「へぇーーー」

なんか、楽しそう‼ と琴子の瞳が輝く。

「入江くんも行くの?」

ソファで本を読んでいた直樹の方を振り返り問いかけると、
「まさか」と、そっけない一言。

「おにいちゃん、昔は一緒に行ってちゃんと仮装もしてくれたのに、今は全然来てくれないのよ」

何年前の話だよ、と軽く舌打ちする直樹。

「ええっ~~行こうよ。あたし、入江くんの仮装みたーい」

「絶対いかねー」

「ちゃんとうちの子会社の作ったコスプレ衣装、色々と揃ってるのよー」

そういってカタログリストを見せてくれた。

「きゃーこのドラキュラとか、入江くんに合いそう~~」

「だから、そんなん着ねえよっ」

「琴子ちゃんにはこっちの魔女っ子がいいわよね」

「ええっでも、これ、魔女の割には露出多くないですか?」

胸元は蝙蝠の形になって豊満なモデルの胸の谷間がくっきりと露に見え、さらにはへそだし超ミニスカート、網タイツは蜘蛛の巣柄だ。
どうみてもお色気系のコスチュームだと思える。

そして直樹はそれをみて思いっきり鼻で笑い、裕樹は呆れていた。

「私、どっちかっていうとこっちの普通の魔女の方が……」

「こっちのキャットウーマンもいいわよー。ヒョウ柄のミニワンピに、猫耳が可愛いじゃない」

それもお色気系だ。

「どうしてオフクロは琴子にそんなん着せようとするんだよ。似合わねぇってこいつには」

「わからないわよー。琴子ちゃんに悩殺されちゃうかもよー、おにいちゃん。ほら、琴子ちゃんの足、とってもすらっとして綺麗なんだもの。出さなきゃ勿体ないわ。それに若いうちよ~~こーゆーの着れるのも」

女の子っていいわよーねぇとはしゃぐ紀子に、琴子も少々困惑ぎみに苦笑している。
流石に露出の多いコスチュームは躊躇しているようだ。

「好きなの着れば? おれは関係ないしね。ただうちの会社のイベントであんまり恥ずかしい真似はしてほしくないけどな」

直樹の冷ややかな物言いに、琴子は悲しげに顔を曇らせる。
先日の体育大会で怪我をした時におんぶして保健室まで運んでもらった。
直樹の素っ気ない優しさを感じたし随分と距離が縮まったような気がしたのは、本当に気のせいだったのか、と思えるくらいその後も変わらず琴子に対して冷淡だ。

「……まったく、お兄ちゃんってば……」

紀子に愚痴ぐちと云われる前にさっさと兄弟二人で自室に逃げ帰ってしまった後で、琴子は紀子と二人でコスプレ衣装を選び、結局無難な黒とオレンジの魔女ドレスを選んだ。スカートの長さも膝下丈で、袖も七分丈。露出は少ないがオレンジのアクセントが効いて可愛らしい。

そして予告通り当日、直樹は来ることなく(兄に倣って行かないと言い放っていた裕樹は結局鬼太郎の格好で参戦)ーー琴子にとっての生まれて初めてのハロウィンパーティは、社員の子どもたちと童心にかえって遊び回りあっという間に終わったのである。



「……どう? 楽しかったかしら? 琴子ちゃんには子供達の相手ばっかりさせちゃって申し訳なかったわ」

「大丈夫です! すっごく楽しかったし!」

帰りの車で紀子に申し訳なさそうに謝られたが、琴子は力を込めて答えた。
直樹は来なかったが、生まれて初めての本格的なハロウィンパーティーは本当に楽しかった。
裕樹は母に甘えるように凭れかかって爆睡していた。

「ハロウィンって『カボチャ』ってイメージだったんですけど、『リンゴ』なんですね。知らなかった~~」

「もともと海外からの出向社員の要望で始まったイベントなの。だからなるべく本場の体裁でやってるのよ」

万聖節の前夜であるハロウィンは収穫祭ともいわれ、悪霊払いとともに実りの秋を祝う豊穣の祭りでもある。
特に収穫期であるリンゴは、必須アイテムで、お菓子やゲームの主役となっているのだ。

ビニールプールの中に浮かべたリンゴを口で加えて収穫するゲームーー『ダックアップル』は、思う存分仮装の衣装をびちゃびちゃに濡らしながら、子どもたちははしゃぎまくっていた。

アップルパイや、欧米風リンゴ飴の『キャラメルアップル』など、リンゴのお菓子がメインでもある。

「本当はカボチャは食べるものでなく、飾るものなのよね」

ふふっと笑ってから紀子が赤く艶やかな林檎をひとつ袋から取り出して、琴子に渡した。

「知ってる? ハロウィンにやると未来がわかるという占いの言い伝えも色々あってね。
特に有名なのが、ハロウィンの真夜中に、鏡の前で髪をとかしながら林檎を食べると未来の旦那様の姿が鏡に映るって云われてるの」

「ええーっ? それって合わせ鏡みたいなもの?」

「うーん、合わせ鏡はホラーな都市伝説よね。死後の自分が見えるとかいうやつでしょ? こっちはもうちょっとロマンチックよ。よかったら試してみてちょうだい」








ーーというわけで。真夜中の洗面所に林檎を持ったまま佇む琴子がいた。

いや、そんなの迷信だってわかっているけど。
わかってるけど、占いときくとなんとなく試してみたくなる乙女心なのだ。

帰ったあと、着替えてお風呂に行くときに直樹とすれ違ったが、「何も恥ずかしい真似はしてないだろうな?」と随分冷淡に云われて、少し楽しかった気分がずずんっとクールダウンしてしまった。

ーーそれなのに、変な期待をして、こうして鏡の前に立っているあたしって………

艶やかな赤い林檎を見つめて、自嘲する。

そして、洗面所の鏡の前で右手でヘアブラシを持ち、左手で林檎を持ちーー恐る恐る一口かじるとーー。

ーーーええっ
入江くんっっ!?


鏡の中にはしっかりパジャマを着た直樹の姿がーーー。


「………おまえ、こんな夜中に何やってんだよ……」

「ーーー※*!*#%**※♪!!!?」

唐突に声を掛けられ、思わず手から林檎が転がり落ちた。

「い、い、入江くんっっ な、なんでっ」

慌てふためいてテンパる琴子を尻目に「歯を磨きに来ただけだけど?」と呆れたような顔つきで答えて、歯ブラシと歯磨き粉を取った。

「ったく、こんな夜中に洗面所で林檎食うって………おまえ、大丈夫かよ?」

「ええっと……ちょっとしたハロウィンの余興の続きよっ! 入江くんには関係ないからっ じゃあね! おやすみっっ」

上手い言い訳も思いつかず、琴子は落とした林檎を拾うと、真っ赤になってバタバタと洗面所を飛び出し、自室に戻っていった。




ーーはぁびっくりした。
一瞬入江くんが未来の旦那様として鏡の中に映ったのかと………


「そんなわけないかぁ……」

今日はいつになく冷たかった。
何か機嫌を損ねるようなことをしただろうか。
琴子は軽くため息をつくと、机の上に食べかけの林檎を置いたのだったーー。










* * *



~19941031


「ふふっ楽しかったね~~ハロウィンパーティ」

その夜はパンダイ恒例のハロウィンパーティが、ホテルを貸しきってとりおこなわれた。

実に数年ぶりのパーティーである。ここ数年は業績の低迷でそのようなイベントを催している余力はなかった。
特に去年の今ごろはそれどころではなかった。
一年前のこの時期のことを考えると、今こうして直樹と一緒に過ごせることが奇跡に思えてならない。

いつもならハロウィンパーティーで仮装など絶対参加しない直樹だったが、昨年会社のために身を呈して尽力し、現在の経営の安定を築いた元社長代理にもぜひ夫婦揃って参加を、と請われ仕方なく参加したのである。

そして、帰りのタクシーの中。
ドラキュラ直樹は猫耳魔女の琴子のとりとめのないおしゃべりに延々と付き合っていた。

「せっかくコトリンのコスチューム用意してくれたのに、なんで着ちゃダメだったの?」

「露出が多い。夜中に冷えるだろ?」

「そ、そう……? テニス部のウェアと大して変わらないと思うけど」

初めて参加した高校生の頃と違って、今は取締役の家族の一員として夫婦で参加したため、どちらかというときちんと応対しないとと少し気負っていた琴子であるが、最後にはやはり子どもたちとはっちゃけてゲームに参加していた。

そして、今は少しほろ酔いで直樹に頭を凭れさせていた。
直樹もそのままで肩を貸し、琴子の指に自らの指を絡ませている。

………ふふっ恋人繋ぎ~~~

夫婦なのだけど、今夜は直樹が優しいのがとても嬉しい。

「コトリンよりもさ。オフクロが用意した、あの衣装……ちょっと帰ってから着てみない?」

「え? 入江くんが却下したやつ?」

かつて紀子が琴子の為に準備したお色気系の魔女コスチュームだ。
今夜も、実は紀子はコトリン衣装の他にもそのお色気魔女を推していたのだが、直樹にあっさり反対され、安定の猫耳魔女を着ている琴子だ。

あたりまえだ。
あんな格好、他の男たちにみせてたまるか。

直樹の心の内など気づくこともなく、琴子は少し不思議そうに直樹を見た。

「部屋で着る分には構わないから。せっかくオフクロが用意したんだし」

「う、うん。流石に人前は恥ずかしいなーーと思ってたの。入江くんだけにならいいよ……」

ちょっと恥ずかしそうに呟く琴子に、しめしめと思う。




かつてーーまだ高校生だった頃。
初めて琴子がハロウィンパーティーに参加した夜。
てっきりあのお色気衣装を着て、出掛けたのだと思い、なんとなく理由もなく苛ついていた。
いや理由はあったのだ。
ただその感情に名前をつけることが出来なかっただけで。

帰宅したあと、母紀子から、「琴子ちゃんって、ほんとモテモテだったのよー」
と言われ、さらにイラっとした。
後からよく聞けばモテモテだったのは今夜と同じく子どもにだったようなのだが。
いや、今夜は実は琴子に妙に眼を向けるオタクちっくな男たちは確かにいた。
だが横に直樹がいるだけでかなりの牽制になって、近づくことも出来ないでいたのだが。
当たり前だ。
俺の女においそれと近づくんじゃねぇ、と心の奥で毒づいていたことなど誰も知るまい。


そういえば。
あの夜、琴子は随分と頓狂なことをしていた。
洗面所の前で髪をとかしながら、林檎を食べるというーー。
全く理解不能、意味不明の奇行に、初めてのハロウィンパーティーで精神的ダメージを受けるような事件でもあったのかと心配になるくらいだった。
だが、すぐに自分で調べて、ハロウィンの迷信ともいえる占いのことを知り、納得したのだった。
(何故自室のドレッサーの姿見で試さなかったんだよ? という突っ込みどころはあるものの………)

アホくさ……

あのときはそう思った。
そう思ったが、少なくとも鏡は確かに真実を映し出していたということだ。


ーーまあったく。

おまえのパワーは計り知れないよな。

いつの間にか寝息をたてている琴子の髪に軽くキスをする。


とにかく。
今夜は思う存分魔女琴子を可愛がろう。
吸血鬼直樹はタクシーが家に着くのを待ちわびながら、ハロウィンの月夜に誓うのだったーー。







※※※※※※※※※※※※


つまりは下心満載な直樹さんのお話でしたf(^_^;










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Comment

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2017/10/31 | [] | Edit

露出どの高いふくいりえくんが着せるわけないですよね、きるなら入江君が限定(*´・ω・`)bよ昔から独占欲丸出しです。愛する琴子ちゃんのことになると。

2017/11/01 | なおちゃん[URL] | Edit

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2017/11/01 | [] | Edit

Re.マロン様

コメントありがとうございました♪

そうそう、20数年前はハロウィン、こんなに浸透していなかったですよねー。
商魂たくましい日本人として入江家は先取りしてたに違いありませんよね(笑)
呆れかえってはいるものの、この頃には結構琴子に落ちてるに違いない(人の気持ちなんて変わる発言とか)直樹さんなので、ちょっと琴子が着てるところを想像してザワザワしてるであろうかと……(青いっすね)
ええ、その反動で結婚後のハロウィンは、そりゃたっぷり堪能してることでしょう。この二人の寝室のクローゼット、八畳くらいあるかも^_^;選り取りみどりのコスチュームたち……
とりあえず、ハロウィンの夜はドラキュラなのか狼男なのか……食われるのは必至です!

2017/11/03 | ののの[URL] | Edit

Re.ねーさん様

拍手コメントありがとうございました♪

ふふっえろ待ってますよ(//∇//)
イラスト、週末頑張ってみますが……最近めっきり描いてないからな〜〜(LINEでお見せした参考写真だけで終わるかも……)

なんだかんだきっちり日付変わる前にアップ、流石です(^-^)v

2017/11/03 | ののの[URL] | Edit

Re.なおちゃん様

コメントありがとうございました♪

そうですよね。お色気衣装は沢山あるものの(?)無論自室限定です。外でなんか着させません笑 高校生の頃から独占欲の片鱗は見えていたのです(^-^)v

2017/11/04 | ののの[URL] | Edit

Re.ちびぞう様

コメントありがとうございました♪

何度も読んでいただけて嬉しいです(^_^)
もう、ハロウィンといったらコスプレなんですけど、お色気コスプレで検索したら出るわ出るわ、琴子ちゃんに着せてみせたい衣装の数々……ええ、胸はどうするんだ?どうやって谷間を作るんだ?という突っ込みはきっと紀子さんの補正の腕前できっとなんとか……f(^_^;
妄想膨らませつつ直樹さんはもんもんと4年過ごしたことでしょう笑
なので晴れて琴子ちゃんのコスプレを独占できるこの夜はきっとあれやこれや楽しんだに違いない〜〜笑

ふふ、ちびぞうさん、色々ハロウィン経験されてますね。楽しそう。私、まったくハロウィンのイベント参加したことないんです。また体験談お願いしますね〜〜♪

2017/11/04 | ののの[URL] | Edit

        

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