20000617 ~~ストロベリームーン
2017.06.10 00:48|とある1日のお話(西暦シリーズ)|
日付変わっちゃいましたが……
今夜はストロベリームーンだったそうで。
ええ、『月』好きな私がネタにしないわけがないのです。
でも思い付いたのが遅かった………f(^^;
しかも短時間でささっと書いたので短いしクオリティも低いですが……
そして、展開もパターン化してる笑
そのうえ、2000年の6月の満月は17日だった……来週じゃん(まさかのマイバースディ)。
その頃ストロベリームーンなんて、みんな知ってた?ーーなんてことは置いておいて笑
続きから、どうぞーー。
※※※※※※※※※※※※
「ねぇねぇ、入江くん、知ってる? 今夜はストロベリームーンなんだよー」
琴子が、それはそれは嬉しそうな満面の笑みを携えてやってきた。
いや、微笑み以外にも手には珍妙なものを携えている。
「琴子………なんだ、そりゃ?」
書斎でパソコンに向かっていた直樹は、思わずその物体を見て、椅子からずり落ちそうになった。
琴子の手にあるのは、いわゆる十五夜のお月見団子をのせる『三宝』という木製の神具である。
その上に乗っているのは団子でなくて、大粒の真っ赤なイチゴ。
きちんと奉書紙を敷いているが、載ってるのがイチゴなので、白い紙が少し赤く染みていた。
「……… それは……違うんじゃないか?」
「そーお? でも、この方がお月見っぽくていいじゃない。イチゴ、美味しいし」
「もう、旬は終わりがけだろう? 」
イチゴ狩りもそろそろシーズンオフだ。店に並ぶものも大分少なくなってきた頃だろう。
「アメリカじゃ、今が収穫期だから、この6月の満月をストロベリームーンっていうんだって」
琴子は三宝を机に置くと、書斎の窓を開けて、仄かに赤みを帯びた満月を指差す。ちょうどこの部屋の窓から、立ち並ぶ高級住宅の屋根の上に小さな月が見えたのはラッキーだった。
「ほんとに、赤というかオレンジみたいな色だね……ストロベリームーンってロマンチックな名前だけど、赤い月ってやっぱりちょっと不気味かも……」
確かにストロベリームーンと言うと可愛いが、赤い月というのは凶事を連想し、人を不安にさせる禍々しさがあるのも否めない。
「夏至に近いこの時期の満月は、高度が低くて地平線に近いところを移動する。朝日や夕陽が赤く見えるのと同じ原理だな」
「ふーん……」
さすが相変わらず直樹はなんでも知っている。ネットで検索しなくてもスイッチ押せばなんでも答えてくれるに違いない。かなり気まぐれでスイッチが機能しないことも多々あるのだが。
「夏至にもっとも近い満月をストロベリームーンというのはその為だろう。ちなみにイチゴの収穫期でないヨーロッパではローズムーンだそうだ」
「へぇ。ローズムーンも素敵……」
でも、赤い月は不気味なんだろ? と密かに突っ込む。
「ねぇじゃあ、これは知ってる? ストロベリームーンを好きな人と眺めるとその人とは永遠に結ばれて、幸せになれるんだって」
「とりあえずおれたちはもう結ばれているし、十分幸せじゃないのかな? おくさん」
直樹は琴子のだいぶ膨らんできたお腹を優しく撫でる。
「 し、幸せだよ! もちろんっ! ものすごーく、幸せだよ! で、でも、ほら。『永遠』って確約欲しいじゃない?」
少し慌てて弁解する琴子。
「欲張りな奥さんだな」
人は永遠には生きられない。
どんなに幸せでも死別や離別といった思いがけない別れが訪れないとは限らない。
それでも魂だけは永遠に結ばれていたいーー
おそらく琴子がイメージしていることはそんなとこだろう。
「ちゃんと結婚式で永遠の愛を誓ったのに」
「だめ押しの月頼みよ!」
で、でも入江くんの誓いを信じてないわけじゃ、ないのよ? と言い訳めいた言葉を呟きつつーー。
もう一度月をキッと見つめ、そしてパンパンと月に向かって二拍し、手を合わせて拝む。
「どうか、入江くんと二人で死ぬまで一緒に幸せに暮らせますように。生まれてくる赤ちゃんと一緒に仲よくずっと楽しく暮らせますように。できればこの赤ちゃんの子供や孫の顔みられるくらい長生きして、死ぬ直前まで入江くん大好きって言えて幸せ100%でいられますように!!」
ーーほんとに、欲張りだな。
贅沢で欲深な願いだが、琴子のパワーには月も叶えずにはいられないかもしれない。
直樹は呆れながらも琴子らしいと、真剣に月に祈る妻を見つめる。
「ーーでも、今は……とにかく、無事にこの子に会えますように」
そういって、自分のお腹をいとおしげに触れる。
煌々と、といえるほどの月明かりはないが、赤い月の神秘的な光の中で何処か神々しさをも感じるのは、胎内に至宝を抱えているからだろう。
アメリカではイチゴの収穫期であることから、『果実が熟す』という意味から『恋が熟す』に転じてそんな伝説が生まれたのだろう。
恋はとうに熟され、こうして二人の間の果実も実った。
それ以上の幸福を望むのは欲張りなことかもしれないけれど、ささやかな幸せが永遠に続くことが、人間の最も当たり前で贅沢な願望なのだ。
「……イチゴ、食べれば?」
おそらく紀子が用意したのだろう。
悪阻が一番ひどいときから、紀子は常に琴子のためにフルーツを常備していた。
「うん」
琴子が三宝の上のイチゴをつまんで一口かじる。
「うん、あまーい。美味しいよ。入江くんも食べて?」
口元に赤い果汁を滴らせて、琴子がにっこりと直樹にイチゴを差し出す。
「いいよ、こっちで」
直樹は、にやりと意地悪く微笑んで、琴子の唇の果汁をぺろりと舐めてーーそのまま、イチゴ味の口内をしっかりと味わう。
甘酸っぱい果実酒のような熟した味を心ゆくまで堪能する。
ーーと。
「あ………」
「……………」
「入江くん、わかった?」
「ああ……」
少しキスが深くなったところでお腹の赤ん坊が少し暴れ始めたようだ。
「……なんかの抗議か?」
「パパとママが仲よくしてるのに邪魔なんてしないよねー?」
琴子が優しくお腹の我が子に語りかける。
いや、いくら安定期とはいえあまり無体なことはするなよと我が子から責められたような気がしないでもない。
「でも、キスくらいは許せよな」
そういって、もう一度琴子の口にイチゴを放り込みーー。
ーーおかわりいただきます。
( どうぞ、ご勝手に)
ストロベリームーンもきっとこんなバカップルに赤面しているのかもしれない。
ーーとはいえ。
三宝の上に供えられたイチゴはやっぱり何処かシュールなのである………。
※※※※※※※
スマホがフリーズしてしまい、強制終了したら案の定書きかけの病院ネタが消えました……。ある程度は保存はしてたんですがね……その日に書いた部分がさっくりと…………orz………なので、気分転換にこんなの書いちゃいました………(((^^;)
そういえば肝心のストロベリームーン、見てないしf(^^;
天気はよかったけど、見えてたのかな~~?
でも、ストロベリームーンって、梅雨時だからなかなか日本じゃ見れる確率低いんでしょうね………
追記
ネットで探したら今年の月は赤みが少なかったようですねぇ……
追記2
眠る前に2階の窓から、煌々とした月がそれは綺麗に見えました。ええ、全然赤くはなかったですが(((^^;)
「ねぇねぇ、入江くん、知ってる? 今夜はストロベリームーンなんだよー」
琴子が、それはそれは嬉しそうな満面の笑みを携えてやってきた。
いや、微笑み以外にも手には珍妙なものを携えている。
「琴子………なんだ、そりゃ?」
書斎でパソコンに向かっていた直樹は、思わずその物体を見て、椅子からずり落ちそうになった。
琴子の手にあるのは、いわゆる十五夜のお月見団子をのせる『三宝』という木製の神具である。
その上に乗っているのは団子でなくて、大粒の真っ赤なイチゴ。
きちんと奉書紙を敷いているが、載ってるのがイチゴなので、白い紙が少し赤く染みていた。
「……… それは……違うんじゃないか?」
「そーお? でも、この方がお月見っぽくていいじゃない。イチゴ、美味しいし」
「もう、旬は終わりがけだろう? 」
イチゴ狩りもそろそろシーズンオフだ。店に並ぶものも大分少なくなってきた頃だろう。
「アメリカじゃ、今が収穫期だから、この6月の満月をストロベリームーンっていうんだって」
琴子は三宝を机に置くと、書斎の窓を開けて、仄かに赤みを帯びた満月を指差す。ちょうどこの部屋の窓から、立ち並ぶ高級住宅の屋根の上に小さな月が見えたのはラッキーだった。
「ほんとに、赤というかオレンジみたいな色だね……ストロベリームーンってロマンチックな名前だけど、赤い月ってやっぱりちょっと不気味かも……」
確かにストロベリームーンと言うと可愛いが、赤い月というのは凶事を連想し、人を不安にさせる禍々しさがあるのも否めない。
「夏至に近いこの時期の満月は、高度が低くて地平線に近いところを移動する。朝日や夕陽が赤く見えるのと同じ原理だな」
「ふーん……」
さすが相変わらず直樹はなんでも知っている。ネットで検索しなくてもスイッチ押せばなんでも答えてくれるに違いない。かなり気まぐれでスイッチが機能しないことも多々あるのだが。
「夏至にもっとも近い満月をストロベリームーンというのはその為だろう。ちなみにイチゴの収穫期でないヨーロッパではローズムーンだそうだ」
「へぇ。ローズムーンも素敵……」
でも、赤い月は不気味なんだろ? と密かに突っ込む。
「ねぇじゃあ、これは知ってる? ストロベリームーンを好きな人と眺めるとその人とは永遠に結ばれて、幸せになれるんだって」
「とりあえずおれたちはもう結ばれているし、十分幸せじゃないのかな? おくさん」
直樹は琴子のだいぶ膨らんできたお腹を優しく撫でる。
「 し、幸せだよ! もちろんっ! ものすごーく、幸せだよ! で、でも、ほら。『永遠』って確約欲しいじゃない?」
少し慌てて弁解する琴子。
「欲張りな奥さんだな」
人は永遠には生きられない。
どんなに幸せでも死別や離別といった思いがけない別れが訪れないとは限らない。
それでも魂だけは永遠に結ばれていたいーー
おそらく琴子がイメージしていることはそんなとこだろう。
「ちゃんと結婚式で永遠の愛を誓ったのに」
「だめ押しの月頼みよ!」
で、でも入江くんの誓いを信じてないわけじゃ、ないのよ? と言い訳めいた言葉を呟きつつーー。
もう一度月をキッと見つめ、そしてパンパンと月に向かって二拍し、手を合わせて拝む。
「どうか、入江くんと二人で死ぬまで一緒に幸せに暮らせますように。生まれてくる赤ちゃんと一緒に仲よくずっと楽しく暮らせますように。できればこの赤ちゃんの子供や孫の顔みられるくらい長生きして、死ぬ直前まで入江くん大好きって言えて幸せ100%でいられますように!!」
ーーほんとに、欲張りだな。
贅沢で欲深な願いだが、琴子のパワーには月も叶えずにはいられないかもしれない。
直樹は呆れながらも琴子らしいと、真剣に月に祈る妻を見つめる。
「ーーでも、今は……とにかく、無事にこの子に会えますように」
そういって、自分のお腹をいとおしげに触れる。
煌々と、といえるほどの月明かりはないが、赤い月の神秘的な光の中で何処か神々しさをも感じるのは、胎内に至宝を抱えているからだろう。
アメリカではイチゴの収穫期であることから、『果実が熟す』という意味から『恋が熟す』に転じてそんな伝説が生まれたのだろう。
恋はとうに熟され、こうして二人の間の果実も実った。
それ以上の幸福を望むのは欲張りなことかもしれないけれど、ささやかな幸せが永遠に続くことが、人間の最も当たり前で贅沢な願望なのだ。
「……イチゴ、食べれば?」
おそらく紀子が用意したのだろう。
悪阻が一番ひどいときから、紀子は常に琴子のためにフルーツを常備していた。
「うん」
琴子が三宝の上のイチゴをつまんで一口かじる。
「うん、あまーい。美味しいよ。入江くんも食べて?」
口元に赤い果汁を滴らせて、琴子がにっこりと直樹にイチゴを差し出す。
「いいよ、こっちで」
直樹は、にやりと意地悪く微笑んで、琴子の唇の果汁をぺろりと舐めてーーそのまま、イチゴ味の口内をしっかりと味わう。
甘酸っぱい果実酒のような熟した味を心ゆくまで堪能する。
ーーと。
「あ………」
「……………」
「入江くん、わかった?」
「ああ……」
少しキスが深くなったところでお腹の赤ん坊が少し暴れ始めたようだ。
「……なんかの抗議か?」
「パパとママが仲よくしてるのに邪魔なんてしないよねー?」
琴子が優しくお腹の我が子に語りかける。
いや、いくら安定期とはいえあまり無体なことはするなよと我が子から責められたような気がしないでもない。
「でも、キスくらいは許せよな」
そういって、もう一度琴子の口にイチゴを放り込みーー。
ーーおかわりいただきます。
( どうぞ、ご勝手に)
ストロベリームーンもきっとこんなバカップルに赤面しているのかもしれない。
ーーとはいえ。
三宝の上に供えられたイチゴはやっぱり何処かシュールなのである………。
※※※※※※※
スマホがフリーズしてしまい、強制終了したら案の定書きかけの病院ネタが消えました……。ある程度は保存はしてたんですがね……その日に書いた部分がさっくりと…………orz………なので、気分転換にこんなの書いちゃいました………(((^^;)
そういえば肝心のストロベリームーン、見てないしf(^^;
天気はよかったけど、見えてたのかな~~?
でも、ストロベリームーンって、梅雨時だからなかなか日本じゃ見れる確率低いんでしょうね………
追記
ネットで探したら今年の月は赤みが少なかったようですねぇ……
追記2
眠る前に2階の窓から、煌々とした月がそれは綺麗に見えました。ええ、全然赤くはなかったですが(((^^;)
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