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月下の一族 ~第一夜~ 不思議なふたり 7

2014.10.25(01:05) 29

★今回のお話は少しホラーな表現があります。(一応ハロウィン企画ということを思い出して)苦手な方はさらっと読み流していただけたらと………絶対無理というかたは読まないで下さいねm(__)m


※※※※※※※※※※※※※※※※※




「よくも……よくも入江くんに……」

琴子ちゃんが震える声で長谷川を睨み付けた。
あ。琴子ちゃんの瞳も赤くなってる。
そしてその華奢な体からなんか凄い気が溢れ放たれてるような………

初めてだった。
琴子ちゃんがこんな風に……ヒトではないものに変わるところを見るのは。

そしてふわりと音もなく移動し、呆然と倒れた入江の傍らで立ち尽くす長谷川の首を掴んだ。

「琴子ちゃん!」

首を絞めている訳ではない。首の付け根辺りに触れているだけだ。
でも、琴子ちゃんがあんな恐い顔をして人を睨み付けているのは初めて見た。
長谷川はただ触れられているだけなのにまるで金縛りに合ったかのように固まったままだった。
顔だけがひくひくと驚愕に震えている。

長谷川の身体から血の気が失せていくのがわかった。腕が干からび土気色に変わっていく。

琴子ちゃん、ちょっと待って!
さっき君が入江に云ったこと思い出してよ!

「パパ……」

僕の足元にしがみついていた佳菜子ちゃんの呟きに、琴子ちゃんはっとなった。
彼女が手を下ろすと長谷川はどさりと崩れ落ちた。

「あ、あたし………」

すうっと瞳の色が元の黒褐色に戻った。
おどおどしたような、頼りなげな……いつもの琴子ちゃんの姿だった。

「パパっ」

佳菜子ちゃんが倒れている父親の元に駆け寄った。

「大丈夫……死んでないよ。ちょっと加減がわからなくて…」

琴子ちゃん……人間から生気取ったことないって言ってたっけ。

「あ……入江くん…」

入江はさっきから微動だにしていない。胸にハサミが刺さったまま………シュールだ……

でも、なんでこいつ倒れたままなんだよ?

「――入江くんっ入江くんっ死んじゃいやぁ!」

琴子ちゃんが泣き叫んで、倒れている入江にすがり付く。

え? 死ぬの? 死なないんだよね? こいつ、不死なんだよね?
いや、でも今新月期たし、ヤバいのかなあ?
琴子ちゃんの尋常でない慌てように僕も焦る。救急車呼んだほうがいいのか?

あー琴子ちゃん、ハサミ抜いちゃ駄目だよっ血が吹き出すって………いや、吹き出さない……心臓動いてないんだもんな。他人に聞かせる時だけ心臓動かしたり脈振れさせたりするって言ってたっけ。

琴子ちゃんは抜いたハサミを少し離れた処に放り投げ、傷があるだろう胸の辺りに手をそっと置く。
入江は元々白い顔がさらに白くなっていて、瞳は固く閉じたままだ。やっぱり新月期はダメージが大きいのか。

「……大丈夫? 琴子ちゃん…こいつ」

「うん、傷はもう塞がったから。ちょっとさっき力を使い過ぎたせいだと思う……」

琴子ちゃんが入江の頭を抱いて膝に乗せる。髪や頬――そして唇を優しくなぞる。
その唇にふんわりと口付ける。
それからチュッチュッっと啄むように何度も口付けて――

入江の手がすっと琴子ちゃんの背中に回った。そしてぎゅっと強く自分に引き寄せる。
そして――。

「琴子。どうせならもっと激しいのがいい」

おいっ!

「い……入江くんっ! 気がついたの?」

琴子ちゃんががしっと入江の身体にしがみつく。

「もう……驚かせないでよ~」
涙が滝のように溢れているよ、琴子ちゃん。

「わりぃ」

そのまま再び二人は深く唇を合わせて……

ああ、それ、エナジィ補給バージョンね? 結構濃厚な奴ね?
僕は慌てて佳菜子ちゃんの目を両手で塞いだ。

「目を塞ぐくらいなら外で待っててくれないか? 急速充電するから」

きゅーそくじゅーでん? 何ですか、それ。


そして、僕らは外に追い出された。
琴子ちゃんに「絶対に中を覗かないでね」って念押しされながら。うーん、機織りでもするんですか?


で、30分。僕は佳菜子ちゃんとぽつぽつ話をしていた。佳菜子ちゃんのパパがよく女の人を連れ込んで外に追い出されて、扉の前で待つことが多いのだということ。叩かれたりつねられたり煙草を押し付けられたりすること………
僕は小さな少女の話を涙を流しながら聴いていた。何とかしなければっ!この娘を救えなくて何のための弁護士バッジた!




「わるい、待たせたな」
僕がめらめらと燃え上がる正義感の熱い想いに浸っていると、扉があっさりと開き、すっきり爽快な顔をした入江がぐったりとした琴子ちゃんを抱き上げて出てきた。

「めっちゃ元気そうだな?」
ホントに何ともないんだな。深々とハサミが突き刺さっていた様子が思い出される。あれは夢だったのだろうか?

「これくらいで死ねるんだったら900年くらい前に死んでるな」

「入江くん、昔、首を切り落とされたことあったよね?」

ぎえーっそれで死なないのかよっ!

「おまえ落ちた俺の生首いつまでも抱いて離さないし、キスしてるし」

うーん、サロメ?
いや……でもホラーだよな……かなり。
想像したくない……。

どうも一つでも細胞が残っていれば大概再生できるらしい。バラバラにされても生き返れるのか……ホラーだな、やっぱり。

「あたし…入江くんのいない世界でなんて生きていけない」

「知ってるよ」

そして彼は彼女を抱いたまま闇に満ちた夜に消えていった。



その後僕はぶっ倒れた長谷川を病院に連れていき、警察にも連絡した。
長谷川はただの貧血ということで、点滴だけで帰されたが、その夜の記憶は綺麗さっぱり消えていた。どうやら入江がきっちり記憶を操作したようだ。

そして僕は警察に彼の娘が日常的に虐待やネグレクトを受けていたことを訴えて、捜査してもらうように依頼し、佳菜子ちゃんは児童相談所で一時保護をしてもらうことになった。
後々、彼のそれまでの罪――強制猥褻罪だの結婚詐欺だの余罪がわしゃわしゃ出てきてお縄となる。そして佳菜子ちゃんは結局児童養護施設に預けられることとなった。

そんな雑務をあれこれ処理している間にすっかり新月期も過ぎ、そろそろ診療所も始まるだろうと僕は久しぶりに屋敷を訪れた。


「………え?」

屋敷の門扉には一枚の貼り紙が張り出されていた。

「都合により、当院は閉院いたします。長い間ありがとうございました」


僕は慌てて屋敷の方へと走り出す。
玄関の鍵を開けて、居間の扉を勢いよく開くと――室内は妙に整然と片付いていて、静まりかえっていた。
誰もいない。
気配さえもない。

そして、テーブルの上には一枚の置き手紙が。

「今までありがとう。渡辺さんのエナジィ、だいすきだったよ。さようなら」






※※※※※※※※※※※※※※※※

ちよっと生首は衝撃的だったでしょうか? イメージは耽美(?)とギャグ(??)なんですけど(^^;
どーにもエグい映像が思い浮かんだ方はピアズリーやギュスターヴ.モローの耽美なサロメを検索して上書きしてください………m(__)m




絶対! 次こそは! 第一夜完!………のはず(^^;


※注意書き10/25加筆しました。
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Snow Blossom


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コメント
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【2014/10/25 02:21】 | # | [edit]
コメントありがとうございます♪

えーと、えぐかったでしょうか?真夜中のノリで、この話がハロウィン向け企画だったことを思い出してつい書き足してしまったのですが、一晩たったら若干ドン引きされたり不快感感じる人がいたらどうしよう、削除しようか、などと悩んでいる小心者です。イメージはサロメなのですが半分はギャグのつもりなのだけどっ! とりあえず、注意書などいれてみよう………
【2014/10/25 10:26】 | ののの #- | [edit]
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