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個別記事の管理2014-10-23 (Thu)



「佳菜子ちゃん、琴子……病院の看護婦さん知らないかな?」

入江は努めて優しい声で訊ねる。膝を曲げて屈んで少女に目線を合わせて。

「お姉ちゃん……部屋の中…」

少女はおどおどと応えた。

「パバは?」

「パバはお姉ちゃんとお話があるからって……一緒に……あたしは外で待ってろって」

「おいっ入江! まずいんじゃないか?」

俺は焦ってドアのノブを回す--が、当然のように鍵がかかっていた。

「琴子ちゃんっ琴子ちゃん!」

俺はドンドン扉を叩いて叫んだ。

「いやあっ離してっ……!」

「琴子ちゃんっ」

琴子ちゃんの叫び声に入江が弾けたように立ち上がり、目をすっと細めるとドアノブを睨み付けた。

かちゃん、と音がした。
ひねると簡単に開いた。

「これくらい新月期でもなんとかなる」

飛び込んだ入江に続いて中に入る--と。

玄関の脇に小さな台所。そしてその奥に六畳程の居間。
そこには男に組み敷かれて暴れている琴子ちゃんの姿が――

「いやぁ入江くんっ助けて!」

僕の前にいた入江の姿がふわりと宙に浮いた。
一瞬にして奴の背後に立ち、その襟首を掴んで琴子ちゃんから引き剥がす。そして勢いそのまま、奴は壁に叩きつけられた。

……うーん、新月期でも侮れないな、彼の能力。

「………ったく何やってんだよ! ワキが甘いにも程がある! あんな奴にのこのこ付いていきゃあがって!」

うん、まあうかつだよな。……でも。

「だって……長谷川さん、佳菜子ちゃんのアレルギーことで相談したいって……」

そう言われて琴子ちゃんが断れる筈がない。

「だいたい相談されておまえが答えられるわけないだろうが」

「失礼ねっあたしだってずっと入江くんの近くで見てるんだから少しはアドバイスとかできるわよ!」

なんか口喧嘩はじめてるし。

「……何をごちゃごちゃと……」

壁に叩きつけられて気を失っていた長谷川が意識を取り戻したようだった。
むくりと起き上がり、入江に突進してきた。
しかし入江はあっさりかわし、逆にそのまま胸ぐらを掴むと壁に押しつけた。

「おまえ……よくも琴子に……」

「まだ何もしてないっ…」

いやーしてなくて良かったね。してたら殺されるって、あんた。とにかく琴子ちゃん押し倒した時点で終わってるけどね。ほら、もうあいつ瞳が赤くなってる。

「な、なんだ、その眼……」

長谷川は結構筋肉質タイプの頑強な体躯の男だ。そんな男がどちらかというと線の細いタイプの入江の腕一本で、身動き出来なくさせられているのが理解しがたいようだった。
じわじわと恐怖が沸き起こっているようだ。驚愕に目を瞠って、自分を射殺しそうな赤い瞳を見つめていた。

入江の指は彼の首を押さえつけていた。多分このまま、締め付けて窒息させることも頚椎をへし折ることも簡単だろう。

「……ぐっ……離せ…化け物…」

「そう。化け物だが、何か?」

くっくっと入江が笑う。禍々しい笑みだ。間近で見たら背筋がさぞゾッとするだろう。
そしてさらに指の力を込めて………

「ダメっ入江くん! 殺しちゃダメ!」

琴子ちゃんが叫んだ。

「おまえに触れた。生かしとく理由もない」

いや、それはあまりに……

「どんな人でも、その人は佳菜子ちゃんのパパなの! 佳菜子ちゃんからパパを奪わないで」

琴子ちゃんの言葉で、入江はすうっと手を下ろした。

玄関の入口で佳菜子ちゃんが、怯えた瞳から涙を溢れさせてぼんやりと立っていた。

みんなの視線が佳菜子ちゃんに注がれた瞬間――長谷川が入江を突き飛ばしてテーブルの上に置いてあった大きな裁断バサミを手に取り、そのまま入江に切っ先を向けて飛び掛かる。

「くたばれ! 化け物!」

「入江くん、危ないっ」

琴子ちゃんが顔を手で覆い叫んだ時には、そのハサミは既に入江の胸に、深々と突き立てられていた。

どさっと。
鈍い音をたてて、入江が崩れ落ちる。

「いやぁぁぁ――!」

琴子ちゃんの悲鳴が部屋中に響き渡った。



※※※※※※※※※※※※※※※※

短い上に終らなくてごめんなさい。しかもまた、こんなところで!!

ラストまで書いてから更新しようかとも思いましたが、キリがいい(?)のでアップしちゃいます(^^;


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* Category : 月下の一族
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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪
キズつけちゃってご免なさいm(__)m
大丈夫ですよ(多分)不死のヒトですから♪
何とか今日中に綺麗に復活させてあげれるかな~?

コメント







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