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月下の一族 ~第一夜~ 不思議なふたり 4

2014.10.20(23:48) 26




彼らがこの屋敷に暮らし始めて3ヶ月ほどたった頃、突然この屋敷の門扉に看板が掛けられた。

『いりえ夜間こども診療所 』

診察時間 4月~9月 19時~5時
10月~3月 18時~6時
診療科目 小児科 小児外科
診察日 月齢3~12日及び月齢18~27日
院長 入江直樹



なんだよっ! こりゃ?
僕は唖然とその看板を見つめていた。
きーてないぞっ
だいたいなんだ? この月齢に添った診察日って!

「そりゃ、新月期はゆっくり寝たいし、満月期は琴子とまったりしながら、月の力をチャージしたいし」

そして彼はいつの間にか勝手に診療所に改装した離れで、いつの間にか一式揃えた医療品を丁寧に棚に並べていた。
隣の待合室では琴子ちゃんが甲斐甲斐しく床の上に掃除機をかけている。

「あー渡辺さん! よかった! ソファを運ぶの手伝って」

一度は置いたらしいソファを別の場所に配置したかったようだ。二人で運んだけど、このソファ、猫脚のアンティーク高級家具。待合室には勿体無くないか?

「さあてだいたい良し」

にっこり笑った琴子ちゃん、鼻の頭に埃がいっぱいついてるけど、可愛いよ。

「だいたいおまえ、医師免許持ってるのかよ?」
僕の問いに、琴子ちゃんが答える。

「試験は制度が変わる度に何度か受けているのよ。戸籍誤魔化して。ただ前回がもう30年近く前のだから免状飾るわけにはいかなくて。勉強も江戸の頃は蘭学のお医者さんから学んで小石川の療養所で働いたりもしてたし、明治の頃は帝大で現代医学も学んだし。ロンドンに行ったときもオックスフォードの研究室に入ってちゃんと今の時代にそった医術を勉強してるのよ!」
どうだ、と言わんばかりに僕に説明する琴子ちゃん。

どうやら彼は漫然と千年という時を過ごして来たわけではなく、こうして時折医療を介して人間の世界と関わりを持ち、ひそやかに生きてきたらしい。

「医術は面白い。初めは俺たちと人間の違いを知りたくて始めた勉強だったが、学んでいくうちに奥の深さにはまりこんでね。とくに近代に入ってここ数十年の医学の進歩は目覚ましい。時折象牙の塔にて新しい知識を得るのが楽しくてね。そして得た知識は有効活用してみたくなるものだ」

そう言って黒い服ばかり来ていた男は、ばさりと白衣を羽織った。
悔しいが白衣も似合う……。

「渡辺さん、見て、見て~」

そして琴子ちゃんは看護婦さんの格好。薄ピンクのナース服は、なんかコスプレっぽい。でも、可愛い。

「格好だけだがな。こいつは資格はとってないから、注射とか射たせられない」

「包帯巻いたり、赤チン塗ったりできるもの。あと、泣いてる子供あやしたりとか。長年入江くんの傍でおてつだいしてきたのよ? 任しといてよ」

楽しそうだ。
いまいち怪しげな診療所で、流行るのかどうか疑問だが、まあ、彼らがここで何かを始めようということは、ここに根を下ろそうとしているのかと、ちょっと嬉しい。
しかし日没後しか開かない夜の診療所って人がくるのかなぁ?



そして、僕の心配は全くの杞憂だった。
子供というのはたいてい夜に具合が悪くなるものらしい。夜間救急に駆け込むのには気が引ける程度の症状の患者さんが実に多いことを知った。
そのうえ医師がこのアイドル張りの容姿の持ち主だ。子供の母親たちが色めきたって、大した病気でもないのに何度も通う親子が後を断たない。
院長の傍でにこやかに子供をあやしている看護婦が院長の妻だと知られるのは、あっという間のことだった。最初は母親たちや、あるいは女の子の患者さんから軽い嫉妬を抱かれたようだったけれど、少しドジだけれどいつもにこやかで明るい看護婦さんはいつの間にかみんなの人気者になっていた。
それにここの院長は顔だけでなく腕もいいと評判だ。一見して大した病状ではなかった子供の隠れた大病を見つけて、直ぐに大きな病院に搬送させ事なきを得た。または、緊急を要する処置が必要だった時、たいした設備もないこの診療所で緊急オペを行い命を救ったこともある。
実際彼は人の生気だけで病気がわかるからな。僕も何度か体調不良を指摘され、病院で検査を受けたら、まだ痛くもない結石が見つかったり、胃のポリープを早期に見つけられたりもした。
彼らの診療所は、この街になくてはなら
ないものとなっていったのだ。

そして僕は相変わらず時折彼らのもとを訪れて、彼らにエナジィをあげていた。最近はすっかり慣れて、ちよっとやそっとじゃ疲労感は感じなくなっていたしね。


--そして。
彼らがこの地に来て、5年の月日が流れ過ぎた--。




※※※※※※※※※※※※※※※

ごめんなさい短いですm(__)m
なんか、インフルの予防接種射ったら妙に体調不良。副作用!?
しかし今日の会社に来てくれたドクター(イケメンに非ず)は嘘のように痛くなかった! 神の手か?
去年の看護師さんは琴子ちゃんのように下手っぴで痛かった………(^^;

明日こそは終われるかな……?自信はないですが……(..)


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【2014/10/21 00:21】 | # | [edit]
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