20020928 ~スペシャルな“thirties”


琴子ちゃん Happy Birthday ♪

もう44歳なのかぁ~~
いやいや、永遠の27歳……ですね(^^)d




では、水族館デート。続きからどうぞ♪

※※※※※※※※※※※※※※※







「わーキレー。見て見て、スゴい魚の群れ……わー海の中散歩してるみたいだねぇ。あ、あっちにマンボウが……あーナポレオンフィッシュっ……!! いやん、エイと目があっちゃった」

「ばあか。あれは目じゃない。鼻だ」

「ええっとっても円らな可愛い瞳だとっ!」

頭上に拡がる蒼い海の風景。
揺らめく水の耀き。極彩色の魚たちの群れが音もなく通りすぎる。
回遊トンネルを潜りながら、琴子たち親子三人は海中散歩を楽しんでいた。

「マーマー。あっちー。クラゲさん」

「ええっ? クラゲ? 無気味じゃない?」

「おまえたち。声が大きいぞ」

「はーい。へへ。怒られちゃった」

母と娘は舌を出しててへっと笑いあう。

久しぶりのお出掛けのせいか、幼い娘よりも母の方がテンションが幾分高いようだ。

「今日は土曜日だから随分混んでる。あまり騒ぐなよ」

「はあい」

ここは都内のど真ん中にある水族館だ。
公園内にあり、都民の憩いの場所でもある。

琴子の願いが叶ったのか、その日は恐ろしいくらいに何もなく、直樹は予定通り午前中には帰ってきた。
しかも夜間急患も急変も全くなく、当直室ではしっかり仮眠を取ることができたというのだから、琴子の願いが必死すぎて神様も奇跡を起こさざるを得なかったのではという気さえする。
お陰で帰宅して着替えると「すぐに出掛けるぞ」と、一休みすることもなくこの水族館に向かうことができた。


「マーマー、ちーでるぅ」

「わ、大変! 」

琴美は既にトイレトレーニングは終わっている。いや、トレーニングということのほどもなく、言葉が出だしたと同時にきちんとお知らせしてくれるようになったので、ほぼ自然にあっけなく、といった感じで、周りのママ友たちに随分羨ましがられた。
とはいえ、やはり外出は心配なのでオムツは着けている。殆ど失敗はないのだが。

「いやーおまえは保育園上がってもオムツ外れなくって、しょっちゅー濡れたパンツ持って帰ってきたのに、みーちゃんは早いなー」
そう、父重雄に感心されたが、直樹は一歳半前に外れたというので、間違いなく父親似でよかったなーと思う瞬間である。





「あのぉ……お一人ですか? 一緒に回りません? まもなくイルカのショーが始まりますよ?」

琴子と琴美がトイレに行った途端に、次から次へと女たちから声をかけられる。
その度に顔をしかめて一言。
「連れがいますので」

周りは家族連れにカップルだらけだ。その中でちらほらいる女同士のグループが、直樹一人になった途端に、狙ったように近付いてくる。
しかし、どうして男一人でこのような処に来てるなどと思えるのか。

「……入江くんっ」

娘の手を引いて戻ってきた琴子の姿を見ると、あからさまに顔をしかめた女が声を潜めて隣の友人とひそひそとこれ見よがしに耳打ちする。
(なに、マジあの女、奥さん?)
( 子供いるし、夫婦じゃないの?)
(えー、子供全然似てないし。『くん』づけだし。子持ちの女にひっかかってるだけじゃないの? ほら、妻がいるじゃなくて連れがいるっていってたし)

「…………」

いつものことだが、ほんの数分離れただけでのこの状況に、琴子は軽くため息をつく。

「ぱっぱーーっ」

すると琴美が館内中を響き渡るような大きな声で叫び、直樹のところに走っていった。

「琴美!」

がしっと足にしがみついてきた琴美を軽々と抱き上げて、
「ダメだろ? そんなに大きな声だしたら」
こつんと娘の額に額をつけて軽く睨む。

「おこっちゃだめよー」

「みーちゃん、ごめんなさいでしょ?」

「ごめんちゃー」

ぺろっと舌を出した様子が天使のように可愛い。

声をかけてきた女たちは鼻白んだように背を向けて足早に過ぎ去っていく。
宝石のような魚たちが行き交う青く揺らめく大きな水槽を前で、若く端麗な容姿の父親と愛らしい幼子の様子はさながら一枚の絵のようだ。周囲の人たちも思わず目を惹き付けられ、ほっこり微笑みながら通りすぎていく。


「………あたし、やっぱり全然入江くんに相応しい女になってないのかなー」

琴美を間に挟んで手をつなぎ歩きながら、琴子がしゅんと目を伏せる。

「相応しいか相応しくないかなんて、下らない価値基準だよな。ひどく主観的で曖昧」

「…………でも、ここをすれ違うたくさんの人たちがみんなそう思うなら、きっとあたしは……」

「ばーか。ここですれ違っただけのまるっきりおれたちの人生に無関係な赤の他人にどう思われようが、そんなのどーでもいいだろうが。いちいち気にすんな」

「……そう? そうだね………」

「おれもおれたちに近しい人たちもみんなおまえが一番おれに相応しい女だと認めてるんだし。なんの問題もねぇだろ」

「入江くん、認めてくれてる?」

「あたりまえ。ってか、おまえ以外におれに相応しい女なんてこの世に存在しないし」

「ほんと……?」

「嘘ついてどーするんだよ。だいたいおれはおまえに相応しい男か?」

「 え? え? えーーっ。それはもう、あたしには勿体ないくらいの旦那様でっ」

「そりゃどうも」

くすっと笑う直樹を見上げる。
直樹だって30歳には見えないが、年齢とともに確実に増していく大人の色香のせいか、素敵度数は年々右肩上がりのような気がする。
結婚して今年で9年目だが、少しも好きな気持ちが減ることはなく、琴子の想いも右肩上がりだ。
未だに夢かと思うことがある。
ある朝目覚めてたら直樹も琴美も夢だったーーなんてことになってたらどうしようと時折不安になる。

「わークラゲ~~~」

「あ………すご……綺麗だね」

この水族館の目玉のひとつであるクラゲの展示は、仄昏い室内の中に、工夫を凝らしたいくつもの水槽が深い青を抱いている。そしてその中を浮遊する白く透明な幽玄的な不思議ないきものたち。

「なんか、無心でぼーっと見てるだけで癒される」

時間や空間の概念がないようなファンタジーな世界がそこにある。ゆらゆらと漂うクラゲたちの様子を見ていると時を忘れそうだ。

「これはミズクラゲ……あっちはタコクラゲだな」

「ふふ。なんか、海の底にいるみたい。ロマンティック……」

「あっちのカツオノエポシなんか、刺されたらアウトだけどな」

「うん、もー。さすがにあれはちょっと無気味だけど、こっちのミズクラゲは可愛いよね~~」

「飼うとかやめてくれよ」

「云わないわよ~~でも入江くんがいないときの癒しにいいかも」

「そんなにストレスな日々かよ」

母娘揃ってぴたーっとアクリルの水槽に顔を張り付かせて、ゆらゆらと漂うクラゲの動きを一心に見つめている。

「………だって、最近擦れ違い多いし」

琴子の育休が終わって1年。 すでに夜勤もこなす通常勤務に慣れてはきている。琴美の面倒を見てくれる紀子あってこそ今のライフスタイルが保てるのだと思うとありがたいが、琴子よりさらに激務の直樹とは、1週間の間一体何度顔を合わせ、食事を一緒にできるだろうかというくらい共有する時間が少なくなってしまった。

こんな風に親子3人で過ごす時間は、直樹が何かプレゼントをくれるよりはずっとずっと貴重なのだ。

「仕事は復帰後内科病棟に移動になっちゃうし……」

ある程度の期間でナースは移動するのが斗南の規則なので仕方ない。というよりも今まで夫婦揃って同じ科での勤務が許されていたというのが不思議なのだが。

「いろんな科を回った方が勉強になるだろ」

「うん。それはそうだし、仕事も1年も経てばそれなりにこなせるようになったけど」

内科と外科の連携が深いので全く院内で顔を合わせないわけではないが、同じ第2外科にいることと思えばやはり格段に職場で会う機会は減っている。
それに気になる噂も耳にした。
数年後には斗南病院に小児科専門センターが新設され、小児外科や小児内科など専門的に細分化した組織編成になるらしいというものだった。そして直樹も創設スタッフに任命されているらしい、という噂もあった。
さらには斗南だけでなく各大学病院にもオファーをかけて小児科と外科から選りすぐりのスタッフが集められるらしいとも。

(きっと奥さんは選ばれないわよー)
(そうそう、入江先生、そういうことには私情挟まないし)

「直樹の手伝いをしたい!」という邪心だらけの最初の願いは直樹が勤務医である以上なかなか儘ならぬものだと理解もしている。
それよりも琴子自身にナースとしての仕事に遣り甲斐を感じているし、子育て真っ只中で他のスタッフに迷惑をかけることも多々ある身で、人事や異動に不満を述べるつもりはないのだ。ないのだけれどーー

そんな風に云われてしまうこととか。
元々あったAとFの格差よりもさらに大きな格差が二人の間に歴然と存在していることとか。
きっとこれからどんどんまた忙しくなってくんだろーなーとか。
今ですらこんなにスレ違いな日々なのにそれがさらに加速化してくんだろうなーとか。
会わない時間が多くなるときっとどんどん忘れられてしまうのかなーとか。

普段は忙しさにかまけて忘れていることも多いけれど、突然ふっと不安になることもある。
琴美を寝かしつけたあと、一人で直樹のいない夜を過ごす時、悶々と考えてしまうーー。

でも、ぼんやりとこのクラゲを見ているとなんだかそんなこと考えるのも馬鹿馬鹿しいくらいな気持ちになってきたりして…………

「…………………ん?」

突然ーー。
あまりにも唐突に、ふわっと直樹の唇が、琴子の唇に触れた。一瞬のキス。

思わず焦って身体を離す。

「え~~~ なんで?」

思わずキョロキョロと辺りを見回す。

「あれ? みんないない……」

混雑していた筈の館内にはいつの間にか人が疎らになっていた。

「さっき、イルカショーのアナウンスが流れてたからな」

「あ、じゃあ、あたしたちも………」

と、琴子の意識がイルカショーに向いた一瞬に、再び直樹が琴子の頤をとらえて唇を塞ぐ。
今度は少し長く。

「も、もう……っ 人が居るよ」

かなり少なくなったがゼロではない。ちらほらといる人が気づいたのか気付いていないのかわからないが、いくつかの視線を感じなくもない。
顔を真っ赤にした琴子に、にやっと意地悪い笑みを浮かべた直樹が、
「こーゆーロマンチックな場所がお好みなんだろ?」と耳元で囁くものだから、さらに真っ赤に沸騰する。

「誕生日サービス。たまにはね」



嬉しい。
嬉しいけれど。
でも、ドラマとかの水族館キスって絶対周りに誰もいないよね………

思わずさっきからキョロキョロと挙動不審に周囲を見渡し、火照る顔をはたはたと手団扇で扇ぎながら、水槽の陰に身を潜める。

「クラゲで癒されなきゃならないほどストレス溜まってるのかよ」

「へ?」

「クラゲに向かってブツブツいうより、目の前にいるヤツにきちんと言いたいことは云ってくれ」

「え……でも、入江くん忙しいのに」

「忙しいのはおまえも変わんねぇだろうが。おまえの方が仕事と子育てと遥かに大変だと思うし。愚痴のひとつやふたつくらい聞いてやるから」

「ほ、ほんと? あー、でも入江くんに云っても甘えるなって怒られそうで」

「昔のおまえと全然違うだろ? そんだけ頑張ってるおまえに甘えてるなんていわねぇよ。たまには甘えろっ! と、いいたくなる」

「………甘えていいの?」

上目遣いに琴子が見上げる。

「…………………………たまにはな」

「嬉しいっ」

がしっと直樹の腕にしがみつく。

「ぱーぱー♪ みーちゃんもー」

直樹の方を見上げておねだりする琴美をふわっと抱えると、ほっぺにキスをした。

「じゃあ、イルカみるか?」

「みーるー!」



その後イルカショーやらアシカショーやらを楽しんだ琴子たちは、公園内で昼食をとり、そして、その隣の公園で琴美と全力で遊んでから家路に着いた時には、もう幼い娘はぐっすりだった。



「……じゃあ、今のうちに行ってらっしゃい。今夜はお泊まりしてきていいですからね。みーちゃんのことは任せてね」

「はい、すみません、お義母さん。よろしくお願いします」

紀子に見送られて、今度は夫婦だけで既に夕闇に包まれ始めた表にでる。
これからが琴子にとってはメインイベントだ。

「やっと3年前のリベンジが出来るわね。頑張って!」

「はいっ」




「で、今回はオウム頭にしなくていいのかよ」

自分で両サイドを軽く編み込んで、フィッシュボーンにしてシンプルな水色水玉のリボンをつけているだけだ。しかし、琴子の綺麗な項が露になって、普段仕事中にはきっちりひっつめている後れ毛も、ふんわりと肩に落ちて色っぽい。

「もう、美容院行ってる時間ないし。それに、美容師さんのお任せなんてもう絶対信じないし」

「いいんじゃない? 十分可愛いよ」

「ほ、ほんと?」

もーやだーっ入江くんってばー!!
と、思わず背中を叩いてしまう。

誕生日のリップサービスにしては今日はもうかなり貰ってしまっている。もう1年分くらいもらったかも。
だから、まあ、いいや。耳にこびりつけておこう。

琴子は頬を染めたまま、にっこりと直樹の腕に自分の腕を絡ませた。

着替えた二人はともにフォーマルだ。
直樹は普段着ているスーツだが、琴子はちょっとしたパーティに着ていくようなノースリーブのワンピース。
薄い水色のワンピースドレスは先程の水族館の海の色にも似ている。白いジャケットを羽織り、その首もとにはワンピースによく合った深い藍色のラピスラズリのペンダント。そして左手の薬指にはサファイヤのリング。
ともに直樹からのバースディプレゼントだった。

「こうして二人でホテルに向かってるんだもの、今年は絶対ディナーに間に合うよね?」

ありがたいことに今まで直樹の携帯に病院からの呼び出しは全くなかった。
なかなか滅多にないことだ。それだけでも奇跡の領域だ。
それとも、今直樹を呼び出せば、琴子が一週間は使い物にならなくなるとみんな判断しているのかもしれない。

とにかく今年の誕生日の大きな目標は、三年前口にすることの出来なかったロイヤルホテルのスペシャルディナーを直樹とともに堪能することだった。
どんなに根回ししようが、プランを練ろうが、当日直樹に急患や急変があったら結局はアウトだし、三年前のように琴子にトラブルが訪れる可能性も大である。
なので、今回はノープランで、とにかくあまり気張ることなく「行けたら行こう」くらいの気分で予約することにしたのだ。
そのせいか、ここまで恐ろしいくらいに順調だった。
とにかく其々で待ち合わせして、悶々と不安に苛まされながら相手を待つ時間を過ごすのは2度と御免だと、ロイヤルホテルには一緒に向かった。

時間に余裕はあったが、途中救急車のサイレンが近づくとドキドキし、急ブレーキの音に心臓が跳ねそうになる。

しかしーー意外なことに実にスムーズにホテルに着いた。

そして、何事もなくレストランに案内されテーブルに着く。

「え? なんか、嘘みたいなんだけど」

食前酒が注がれ、スープが来て、前菜、魚、肉と料理が次々と運ばれて来ても、直樹の携帯は鳴ることもない。

「何もないに越したことないだろ。ほら、おまえがDMみて食いたいと騒いでた神戸牛シャトーブリアンのロッシーニ風。さっさと食えよ」

「う、うん。わーシャトーなんとか、めっちゃ美味しい~~~」

何となく落ち着かず食事をしていた琴子だが、漸く安心したようにシャトーブリアンに舌鼓をうっているとーー

少し離れた入口の方の席で、ガタンと何かが倒れる音がした。
思わず振り返るとーー

一人の老紳士が、テーブルの横で膝まずき踞っていた。

琴子と直樹が二人同時に立ち上がる。

二人が駆け寄るよりも先にウェイターが近づき助け起こすと、
「いやーすみません。飲みすぎてしまったようで……ちょっと椅子に足を引っ掻けてスッ転んでしまって……」ケロッとしたように頭をかきながら起き上がっていた。
「もう、あなたったら恥ずかしいわ」
妻らしき老婦人が立ち上がり、お騒がせしましたと周囲に頭を下げていた。

「あー、よかった。何事もなくて」

「そうだな」

二人はくすっと笑いあって再び席についた。

その後、デザートとコーヒーが出てきた。デザートのクレープシュゼットにはハッピーバースディのデコレーションがお皿に美しく描かれていて、照明を落としピアノの生演奏が流れる中でグランマルニエが注がれ火が灯される。フランベともにウェイターが「お誕生日おめでとうございます」と告げ、周りからも拍手が沸き起こる。そんな演出に感動しつつも妙に照れてあちこちに頭を下げてしまうしまう琴子である。
無事に食事が終わり、「やった! ミッションコンプリート!」と喜ぶ琴子に、
「まだだろ?」と差し出されたのはどうやら誕生日プレゼントらしい。

「え? え? 何? なんだろう」

わくわくして包みを開ける琴子に「手錠」と直樹がにやにやしながら一言。

「あーブレスレットだ。素敵!」

やはりサファイヤがひとつアクセントになっているゴールドのブレスレットだった。

「嬉しいけど……無理しなくていいのよ? 本当は、こういうの考えるの、面倒くさいんじゃない?」

自分のためにプレゼントを選ぶ時間が直樹の中に少しでも存在しているのかと思うとすごく嬉しい。でも、元々こういうことが苦手な直樹の負担になっているのではないかと不安になったりもする。

「ばあか。昔のガキだった頃のおれならともかく、今は誕生日が意味することはよーくわかってるよ。だからいちいちそんなこと気にすんな」

少なくとも30年前のこの日におまえが生まれていなかったら………一体自分はどんな人生を歩んでいたのだろうと、考えるのも恐ろしい。

「………へへ。嬉しい」

「……それと、まだ、コンプリートじゃないからな」

直樹はにやりと笑って、部屋のキーを見せた。

「…………//////////」






部屋に入るとベッドの上には大きな薔薇の花束が置いてあった。

「持ち歩くにはこっぱずかしいし」

「きゃー嬉しい!! 入江くんが用意してくれたの? 30本?」

「店員が間違ってなきゃな」

「ふふ。さすがに横断幕はないね」

「琴美がいるお陰でお袋も身動きとれないだろう」

周囲を見渡してはいたが、流石に今年はシャッターチャンスを狙うハンターがいる気配はなかった。
水族館は危険とは思ったが、今日は昼間は会社関係で会食に同席しなければならないと云ってたから大丈夫なハズだ。(だから大胆にあんなところでキス出来たのだ←一応考えてる)


「今日はありがと。本当に素敵な1日だった」

「ストレス解消になりましたか? 奥さん」

「入江くんの顔見てるだけでストレスなんて吹っ飛ぶよ」

「クラゲよりも?」

「クラゲよりも!」

「愚痴もいっぱい聞いたしな」

愚痴ならおれに言え、の言葉通り、食事しながらついいろんな不安や寂しさを吐露してしまった。
直樹は怒ることも呆れることもなく黙って聴いていてくれた。

仕事と子育ての両立の難しさ。
日々進化していく医療技術に追い付けない戸惑い。
直樹とどんどん離れていくような言い様のない不安ーー。

それが直樹の一言であっさりと解消されてしまった。

「それって全部おれを頼ればいい話だろうが。ここにいるのに何を遠慮してんだか。昔は平然と看護記録おれに書かせたくせに」

「あ~~だからもうそんな愚かなことは2度としたくないのよー。忙しい入江くんにさらに追い討ちをかけるような……」

「子育てはおれもちゃんと協力してるつもりだし、的外れだったらキチンといってくれ。仕事に関しては相談には乗るし。どれだけ助けられるかはわからないけど、フォローはするさ。夫婦なんだから一蓮托生。おまえと結婚した時からたいていのトラブルは覚悟している。耐性はできてるから気にすんな」

「入江く~~ん」




そんな直樹の言葉を思いだしちょっとうっとりしている時に。

「で、シャワーどうする? 一緒に入る?」

「へ? えーっええっ////」

「そんなに仰け反らなくても」

「えーと、そうだけど……いや、どうしようかな……」

真っ赤になって照れてる琴子に、「ま、好きにして。おれ先に入ってくるわ。後からくるかどうかはご自由に」といって、着替えを持ってバスルームに入ろうとした瞬間にーー

まさかの。

携帯の着信音が鳴ったーー。



「どこ? 病院?」

「ううん。家からみたい」

すぐにUターンした直樹が電話に出る。

「どうしたんだよ……え? 琴美が? で、何度? 様子は? 吐いたりとかないんだな? ……顔色は? わかった。ああ。多分、大事じゃないだろう。病院は明日の朝で大丈夫だ。わるいな、おふくろ………」

「入江くんっ! みーちゃん……どうしたの? 熱が出たの?」

直樹の会話の端々で事態を察した琴子の顔が青くなる。

「ああ。熱っても37度7分だからたいしたことないけどね。少し熱っぽいと思って計ったらしいから、特にぐったりしてる訳じゃなく、結構元気らしいし」

「そ、そっかぁ。今日疲れちゃったかな……?」

「で、どうする? おふくろは大丈夫そうなら泊まってけ、って云ってたけど」

「え? 帰るよ、もちろん。今は大丈夫でも夜中に熱が高くなるかもだし」

全く迷いなく即答する琴子にくすっと笑い「そーだな」と直樹も同意する。


結局そのまま二人はチェックアウトして自宅に戻ったのだった。





「結局コンプリートできなかったな」

冷却シートをおでこに貼って、すやすやと眠ってる琴美を間に挟み、琴子と直樹も自宅の寝室ベッドに身を横たえた。

「えー? ちゃんとしたよ。とりあえず今年はディナーだけが目標だったし。ホテルでの甘~いバースディナイトは3年前にしっかりと堪能したので大丈夫! 入江くんが『好きだよ』っていってくれたのも、時折脳内リフレインするくらい耳に残ってるし」

おれは大丈夫じゃねーよ。

無論、直樹の内心など知るよしもない。
直樹にしてみればメインディッシュを食べ損ねた気分だが、今日は琴子の誕生日だし、琴美が熱をだしたのでは諦めるしかない。

家に置いてあったステートで診察した様子では予想通りとくに問題はなかった。だが、それがはっきりわかっていても琴子は家に帰ると云っただろう。

「別に3年前の声をリフレインしなくても、せめて誕生日くらいは云ってやるよ」

「え?」

琴美の上を乗り越えて、琴子の頭の後ろに手をやって引き寄せると、唇を塞いだ。
今日一番の長めのキスを娘の頭上で交わした後、直樹が優しく「好きだよ、琴子」と耳元で囁く。
相変わらず耳まで真っ赤になった琴子が、「あたしも大好き」と答える。
「……でも、年に一度誕生日だけ、なーんて遠慮せずに、毎日言ってくれてもいいのよ?」
と、ふふふっとにんまり笑うのは実に琴子らしい。

「じょーだん。こーゆーのはたまに云うから価値があるんだろうが」

「え? じゃあ、あたしのはもう価値がない? 言い過ぎ?」

「おまえは数で稼げ」

「??? いいんだ。……云っても」

「おまえの『好き』は耳にタコができるくらいがちょうどいいんだよ」

「へへっじゃあ、いっぱい云うね~~30代になっても入江くんへの愛は衰えたりしないからねー 」

「……知ってるよ」


入江くん大好き。

30になっても40になっても、60でも80でも変わらない。きっと、それは永遠に。


「入江くん。今日1日、素敵な誕生日をありがとう。大好きだよ」

ふんわりと、はにかむように微笑むの琴子の唇に誘われるようにもう一度kiss。



きっとこれからもいろんなことがあるのだろうけれど。
入江くんが傍にいてくれるならきっと大丈夫。

ずっとずっと大好きだよ………










※※※※※※※※※※※※※※※※



とりあえず裏テーマは『何もおきない平穏無事な誕生日』でした笑
偶数月の年は何事もない筈なんですよ(((^^;)子供の熱は日常の範囲だしね~
なので、日常会話がだらだらと続く間延びした話になってしまった気がします。



あと、なんだかむしょーにクラゲが描きたくなって水族館デートさせちゃいました。
(の、わりには下手くそなクラゲ……)
し〇がわ水族館調べながらアクアパーク〇川が気になって仕方なかった私です。(この時代にはまだない)サンシャ〇ン水族館も好きだけど、リニューアルしてるみたいで、昔の様子、流石に20年前の記憶だけでは書けないわーと。
実は水族館マニアな私……(((^^;)


なんだか年食うごとにデレ甘になっていくうちの直樹さん……まあ、成長したわね、と笑ってやってくださいませf(^^;





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§ ハッピーバー

良かったね?今回の、お誕生日は、入江君、琴美ちゃん、親子三人で、無事に過ごせたみたいですね、前の、お誕生日の、時は、最初こそ悲惨で、最後の時は、琴美ちゃんを、授かったりでしたが、今回は、親子で、楽しく過ごしたり、最後、夫婦で、誕生日ディナーを楽しめたり、最後に、ホテルで、二人で過ごそうと、思ったら、琴美ちゃんが、熱を出したりしてしまいましたね、それ以外は、入江君い、お誕生日、プレゼントの、アクセサリーや、バラの花束をプレゼントをもらったりで、琴子ちゃんも楽しいお誕生日を過ごせたみたいですね、琴子ちゃん、お誕生日、おめでとうございます。

§ Re.マロン様

コメントありがとうございます♪

はい、今回の誕生日の私の中のミッションが水族館キスとリベンジディナーなので、完遂できて良かったです。

ほんと、あんなイケメン一人でこんなとこ来ないだろって普通なら思いますよね~~。あたって碎けろなのか、あるいは隣の琴子を見て勝てると踏んだのか。そーゆー女どもには容赦のない直樹さんなのですf(^^;

そうそう、直樹こそ、琴子不足ピークだったんでしょう。人目を気にしないのは相変わらずですが。
ディナーも無事終了。何事もないと逆に落ち着かないかもな二人ですww

ま、メインディッシュを食べ損ねた直樹さん、そのリベンジは当然倍返しでしょうねー笑

デレアマ直樹さん、堪能していただいたようで良かったです♪

§ Re.heorakim様

コメントありがとうございました♪

はい、直樹さん、すっかり成長しましたよ。琴美ちゃん、ナイスです。2歳児とは思えない機転ぶりですね(^w^)
喜んでいただけたようで良かったです♪

§ Re.紀子ママ様

コメントありがとうございました♪

そうですねー何事も起こらない奇跡の1日。間違いなく一途に直樹さんを想い苦難を乗り越えた琴子ちゃんへの神様からの誕プレなのかもしれません。
それとも直樹さんの方が神様の首根っこ捕まえて何も起こすなと脅しているかも(^w^)

琴子の愛情によって人間らしく成長して、子供を得てさらに一回り成長した直樹さん。琴子に甘えてばかりいたお子ちゃま直樹はもう卒業ですね(^w^)ほんと、大人になったよ。
大人になった直樹の言葉が染みていただいたようで良かったです。琴子ちゃんもうるうるですね。

ほんとです。いっくらイケメンでも、琴子以外の人はきっと耐えられないですよねー。こんな厄介なオトコ………f(^^;

琴子ちゃんのバースデイに少しでも感動していただけたなら、良かったです(^_^)

§ Re.りん様

コメントありがとうございました♪

そして、二周年のお祝いのお言葉もありがとうございます(^_^)
私も二次の世界を知って日が浅いですから!そんなに変わりませんよ、きっと(^w^)
りん様にこれからもずっと読んでもらえるように頑張りたいと思います!

ふふ、デレ甘最高といってもらえて良かったです。原作のつんつんな直樹さんとはかけ離れてる気がするので。
でもちょっとずつ成長して、素直に言葉を吐ける人にようやくなれたんですよね。琴子と同じくりんさんにきゅんきゅんしてもらえて良かったです(^_^)

本当に原作の27歳バースデイの夜のエピは神のように素敵ですよね♪
最終回がなくてもあのシーンだけで幸せになれます。
私のつたないお話であのシーンを思い浮かべてもらえて嬉しいです。

まとめての感想、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね♪

§ Re.なおちゃん様

コメントありがとうございました♪

3年前のバースデイは、初めがトラブルだらけで、でも最後は最高にハッピーな夜でしたが、今回は何事もないわりには、夜はちょっと(直樹さん的には)残念な感じで。でも、琴子ちゃんが最高に幸せだからよいのですよねー(^w^)
それもこれも直樹さんが成長したから。そして、直樹さんを成長させたのは琴子ちゃん。本当に最高なカップルです♪

§ Re.でん様

拍手コメントありがとうございます♪

はい、無事ディナー堪能できました(^_^)v
直樹さんとしてはコンプリートできませんでしたが、きっと翌日の夜は熱く情熱的だったことでしょうf(^^;

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