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真夏のガーディアン(前)

2016.07.17(21:45) 244





“納涼祭り2016”







お祭り一発目。
何故か前後編になってしまいましたf(^^;(前後編で終わる筈だっ)
そしてついうっかり限定な話にしそうになってしまった……ちょっと修正してR15くらいかなー(((^^;




※※※※※※※※※※※※※




2004年8月某日。



「みー ちゃん、ほら、もうすぐ着くわよー」

到着の案内を告げるアナウンスに、琴子は慌てて広げていたお菓子の袋をバッグにしまい、直樹は網棚から荷物を下ろした。
特に観光地でもないそのひなびた駅は降りる人も疎らだ。
ホームに降り立つと、むっとする暑さと、けたたましい蝉の声が琴子たち家族を出迎えてくれた。


「ママ、すごいね~~お山ばっかだよ」

「ママのいった通りでしょ?」

「うん! 窓から見てもお山と田んぼばっかりだった」

木造の駅舎を出ると、目の前に開けているのは閑散としたロータリー。タクシーは1台も止まっていない。
バス停には二時間に一本の、実に空欄の多いバスの時刻表。
コンビニなども見当たらず、日に焼けた自動販売機が一台あるだけ。

「わー全部売り切れだよ。お茶欲しかったのに」

「前にその角に小さな売店があったけど、なくなったんだな」

「ここじゃあまり儲からないよねぇ。駅なのに、人が殆どいないよ」

ちらほら見えるのはお年寄りばかりだ。若者の姿はどこにもいない。

「ほら、バスが来るぞ。これが今日の最終バスだ」

「ええっまだ4時だよっ」

「田舎だから仕方ない」

バスに乗り込むと、それこそ年寄りが数人乗っているだけの閑散としたものだった。

「基本は車だよな。軽トラは必ず一台はあるかな、どこの家でも」

確かにその道をバスとスレ違うのは、軽トラか原付か、といった体だ。
随分バスがゆっくりになったと思ったら、バスの前をトラクターが走っていた。

「相変わらずとことん田舎だよねぇ」

「秋田とたいして変わらないだろ」

「まあねー。冬に雪が降らないだけましかなぁ」

田んぼの畦道を、トラクターの後をついてのろのろと走るバスの車窓の風景はエンドレスに長閑な田園風景だ。
青々とした稲が背丈を揃えて風に靡いている。綺麗に区画された水田のどこまでも続く緑の鮮やかさに、暫し見惚れてしまう。
10年前と少しも変わらない景色だった。

「ほら、着いた」

停留所は相変わらずぽつりと田んぼのど真ん中に佇んでいた。
降りた途端にむっと鼻腔に飛び込んでくる蒸れるような草の青臭さも、何処か懐かしい。

「琴美、ひいじいちゃんちまで少し歩くけど大丈夫か? 喉が渇いたか?」

「だいじょうぶー。がまんできるよー」

「少しっていっても30分だよー。みーちゃん、そんなに歩ける?」

「へいき。みーちゃんチビとそれくらいお散歩してるもん」

確かにすっかりご老体のちびと琴美の毎日の散歩は欠かしたことはない。
そして、琴美は幼いながら中々の健脚で、幼稚園の春の親子遠足でも上野動物園を三周廻っても全く疲れをみせなかった。

「よーし。ひいじいちゃんち着いたら、きっとスイカがあるぞ」

「やったぁ、アケビもあるかなぁ?」

琴美は電車の中で、両親から聞いた話を思い出し、母が苦労して山に採りに行ったというアケビがどんなものか興味津々だった。
何でも揃う東京の我が家の食卓にも上ったことのないフルーツの名まえだった。

「ふふふ、待ってなさい。どうせアケビはママが採りに行くことになるに決まってるんだから。今回は万全の態勢で挑むわよ~~」

琴子は力こぶを見せて不敵に微笑む。

「みーちゃんもとりにいくー」

「琴美にはお山は危ないからお留守番。パパとママで採りに行くよ」

「ええ~~?」

不満そうな娘の頭をくしゃっと撫でて、「ほら、琴美、帽子を被りなさい。まだ日差しは強くて熱いから熱射病になるぞ」
直樹がそういうと、琴子は慌てて鞄から帽子を取り出す。
ヒマワリのコサージュのついた子供用の麦ワラ帽子だ。

「さあ、行こう。じいちゃんたち、待ちくたびれてるぞ」




ここを初めて訪れたのはもう10年も前のことだった。
琴子と直樹が結婚して初めて迎えた新婚時代の夏の出来事だ。
あの不思議な夏の思い出は、10年経っても風化することなくしっかりと脳内で再現できる。各駅停車の長い列車の旅の中で、幼い娘に事細かに語って聴かせるくらいには。
この10年の間、ここに来たのは1度だけだ。直樹の曾祖父に当たる人の三十三回忌に、母紀子と琴子と直樹の3人で訪れたのは琴美が生まれる前の年だったろうか。
あの時は二人とも仕事があってほぼとんぼ返りで、ゆっくりと過ごせなかった。
因みに祖父母は、琴美が生まれた時、結婚式には来なかった癖に、揃って九州から曾孫の顔を見に飛行機で飛んできた。
もう米寿に近いのにかなり元気だ。

今回ようやくお互いの仕事の調整がついて、久しぶりの九州行となったわけであるが、医師と看護師という職業柄やはり長期の休暇は難しく、4日間のみの滞在予定である。
行きは琴美のたっての希望で新幹線を使ってきたが、帰りは飛行機の予定だ。
学生時代のようにのんびりとした旅をするのは無理があった。
漸く取れた夏の休暇を、少しでもゆったりできるように何処か近場の温泉地でも、と提案した直樹だったが、九州の紀子の実家に琴美を連れていきたいと言い出したのは琴子だった。

「だって、ひ孫が生まれたら連れていくって約束したでしょう!」

そして琴子は、行くと決まった時点からしっかり覚悟をしてきた。

「ちゃーんとマイエプロン持参なのよー。野菜のもぎかたも、お義母さんと家庭菜園やってるお陰で完ぺきだし。五右衛門風呂の薪割りだってしちゃうんだから。看護師の仕事で足腰鍛えられたから、ながーい廊下の拭き掃除も鶏の餌運びもへっちゃらよ! 来るなら来いってもんよっ」

暮れる夕陽に向かって熱く闘志をたぎらせる琴子である。

「ママ、燃えてるね~~」

「そうだな。昔のリベンジしたいんじゃないのか?」

少しずつ山際に落ち始めた太陽は、3人の影を畦道に大きく映していた。
琴美は田んぼの上を無数に飛び回る蜻蛉に目を輝かせ、聴こえる蛙の鳴き声に耳を澄ましながら、まだ見ぬ曽祖父の家を目指す。






「まあ、よう来んしゃったねぇ。琴美ちゃんも疲れたとね? さあ、みんなこっちでスイカば食べるとよかね」

「いえいえ、もうそろそろ夕飯の支度ですよね。あたし手伝いますから! あれ、みんなは? おじいちゃんとおばあちゃんだけ?」

またまた親族一同揃って出迎えてくれるかと思ったら祖父母の姿しか見えない。
一色の祖父は相変わらず琴子には愛想が悪いが、琴美にはメロメロのベタベタである。

「みーちゃん、じいじとかくれんぼして遊ぶけんね」

「みーちゃん、ママ手伝うの~~火をふうふう起こしてお風呂たくんだよね!」

「いや、流石に年じゃけん、風呂はガス給湯器付けて広い浴槽に変えたとね。便利になりようと、足をゆっくり伸ばせて気持ちよかけん」

「台所ば少し新しくしたけんね。システムなんとかいうのやね。皿ば勝手に洗うとかいうのがついとうけんども、信用ならんばってん使ってないと」

「食洗機付きのシステムキッチン?」

「ええ~~」

正直直樹も驚いた。
この頑固な老人は、誰に何を云われようと、決してその生活スタイルを変えないと思っていた。

「厠も、琴美ちゃんが怖がって入れんといかんばってん、汲み取り式から、水洗の座ってするのに変えて、ついでにウォシュレットとか付けたけんね。まあ気持ちよかとね」

文明開化である。
この古色蒼然とした、戦前にタイムスリップしたような古びた家屋にいつの間にか文明開化が訪れたらしい。

「えーごえもんさんのお風呂入りたかったなー」

琴美の少し消沈した声に、
「がっかりせんでよかけんよ。納戸の横に置いてあるばってん水汲みさえしちょればいつでも沸かせるとね」
と、曾祖父はニッコリと曾孫に微笑む。

「露天風呂たい」

「やったー」

確かに家の中を探索すると、室内や間取りは変わっていないものの、玄関から勝手口まで貼ってあったつやつやと光っていた板の間の台所部分は、今時のフローリングを貼られて居間との段差を無くし、機能的なオールステンレスなシステムキッチンが入ってるではないか。

「前の流し台は古くて背も合ってなかったけん、腰がつらかったとね」


長い濡れ縁の端にあった、裸電球ひとつに隙間から大きな蜘蛛が入ってくるようなぼっとんトイレも、洒落た和風モダンな内装の洋式トイレに変わっていた。これなら琴美も怖がらないだろう。今回の九州行きは、自分も怖いだけに、トイレだけが憂鬱な琴子だった。


「さ、琴子さん、こっちに座って少し休みんしゃい。今麦茶とスイカ持ってくるけん」

祖母が台所に向かおうとすると、琴子もすっくと立ち上がる。

「あ、あたしやります」

すると、「あんたは座っとっと」と、意外なことにあの祖父が制した。

「へ?」

「長旅で疲れとろう。座っとればよかたい」

「ええ?」

「大切なお客さんたい」

お客さん?

直樹も琴子も耳を疑った。

「身内なんだからお客なんかじゃないだろ? じーちゃん」

「紀子は入江家に嫁いだ身、入江家の惣領息子夫婦のおまーらは入江家からの大事な客人とね」


…………いったい10年の間に何が起こったのだろう?

あまりの祖父の変貌ぶりに、思わず顔を見合わせる直樹と琴子であった。

そして、実際、本当に大切な客人として丁重に扱われ、どんな試練でも乗り越えて見せると身構えていた琴子をあっけなく肩透かしさせることとなったのだ。





「……いったいどうしちゃったのかしら……おじいちゃん」

湯上がりの琴子は、琴美にパジャマを着せながら、心配そうに直樹に話しかけた。
新しくガス給湯器のついた浴室は、総檜張りで浴槽も檜で設えてあり、屋敷の雰囲気に合っていて、そして檜の薫りも清々しくて、ついつい琴美と長湯をしてしまった。

「息子や孫たちがみんなこの村から出ていってしまって、色々心境の変化があったんじゃないか? 」

この屋敷に同居していた恵三おじは、アメリカに海外赴任とかで、夫婦で旅だってもう3年だという。彼らの子供たちも全員成人して、タケは福岡の企業に就職し、トシは広島の大学に、メグは大阪に嫁いだ。
近所に住んでいた明子おばも、夫の転勤に伴って、家族で京都に引っ越した。
唯一地元に残っているのは博子おばのみで、時折老いた両親の様子を見に来るらしいが、成長した孫たちは滅多に付いてこなくなったという。

「……それで、誰もいないんだね。広い家なのに……あんなにたくさん従兄弟たちがいたのに」

「元々ここに住んでたのは長男の恵三おじさんちだけで、従兄弟たちは夏休みで遊びに来てただけだよ。今年も盆には帰ってくるんじゃないかな」

今回は盆前にしか休みをとれなかったので、残念ながら従兄弟たちとは会えないだろう。

「恵三おじさんは、農家を継いではなかったの?」

「……今時、専業農家は少ないんじゃないか? 平日は会社員、土日で親の農業を手伝って、定年後にようやく本腰いれて田畑の面倒見て……って家が多いんだろうな」

「……ふうん。でもおじーさんとおばーさん、二人だけじゃ大変じゃないかしら」

「日本中の田舎はみんなこんなもんだろうな。年寄りだけで畑や田んぼの世話して……」

「……寂しいだろうね。10年前はあんなに賑やかだったのに。あたしも今度こそはいとこたちの名前をきちんと言えるようにと昔撮った写真で復習してきたのに」

「もう、みんな大人の顔で全然わかんねえだろうが」

「そうだねぇ。去年送ってもらったメグちゃんの結婚式の写真、全然誰が誰だかわかんなかったもんね」

へっへっと笑いながら、疲れて眠そうな琴美を布団の中に寝かしつける。
二つの布団に、琴美を真ん中に川の字だ。
文明開化は残念ながら各部屋に訪れてないようで、相変わらずエアコンなどはなく扇風機のみだが、通気性のよい(隙間だらけの)木造家屋のせいか、東京の熱帯夜のような蒸し暑さはなかった。
蚊取り線香の煙が豚の口から流れていて、琴美はしばらく物珍しげに眺めていたが、やはり眠気には勝てず、呆気なくうとうとしはじめていた。

「………なんか拍子抜けしちゃったな。あたし、今度こそおじーちゃんとの勝負に勝つつもりだったのに」

琴美に団扇ではたはたと風を送ってやりながら、琴子はなんだかつまらなそうに呟いた。

「そんなにしごいて欲しかった?」

「い、いや別にそういう訳じゃないけど……」

結局ずっとお客様扱いで、何もさせてもらえなかった。
結婚して10年の嫁としての進歩を少しは見せつけたいと、やる気満々でやって来た琴子は思わず戸惑ってしまっている。

「……まあ、それだけじーちゃんたちも年食ったってことだよな」

10年。
琴子たちにとってあっという間の時間だった。
でもその時間の流れはこの田舎の家にはあまりに大きな変化をもたらしたのだろう。
子供はいずれ成長して、巣立っていく。家というのはそういものなのだと感じずにはいられない。

「……まあ、博子おばさんちのケンはまだ10歳だからな。夏休みはちょくちょく遊びにくるっていうし」

「ああ、あの赤ちゃんだった? ふふ、あたしおんぶしてあげたもんねぇ」

直樹と二人で懐かしい昔話に興じたあと、すっかり寝入った琴美の寝顔を見ていたら、ふと視線を感じて顔を上げると直樹がじっと自分の方を見つめていた。

「な、何……?」

「いや……おまえも母親の顔になったな、と思って」

「あら。あたしだって一応ママ4歳よ。そりゃ、お義母さんに比べたらまだまだ……」

言いかけた琴子の言葉は、そのまま直樹の唇に吸いとられた。
琴美を間に挟んでの少し無理な体勢のキスで、軽く触れるだけかと思いきや、意外と深く長く琴子の唇から離れない。

チュッと音をたてて唇が離れた時、互いの唾液が糸のように引き合って光るのが見えて、琴美の真上で何をしてるんだかと、琴子は少し恥ずかしくなる。

「……あまりに母親の顔してたからちょっと女の顔に戻したくなった」

「……もう…入江くんってば」

琴子は真っ赤になって上目遣いで抗議する。

「………もう、琴美寝たよな。こっち、来る……?」

直樹が琴美と自分の間に隙間を少し空けて、ぽんぽん、と布団を叩いてその空間に来るように琴子を促した。

「え……あ…でも……」

琴子は一瞬、娘の寝顔を見て躊躇うが、直樹からの誘いを断ることなんか出来る筈もない。

確かに琴美は一度寝入ると目を覚ますことは殆どないが、とはいえここは自分たちの家ではないしーー

そう思いつつも、つい少し色気を帯びた直樹の瞳に誘われるように、琴美の小さな身体を乗り越えて、直樹の傍らにすっぽりと入り込む。

すぐさまに強く引き寄せられ抱きすくめられた。

「大丈夫……キスだけ」

耳元で甘く囁かれて、琴子はそれだけで背中に電流が走る。
そして顎を捉えられ、深くそして激しいキスーー。

静まり返った室内に、ぴちゃぴちゃと互いの舌が咥内をまさぐりあう水音が響く。

「ん……あ……」

時折くぐもった鼻から抜けるような声が響いて、琴子は自分の声にどきりとする。
障子一枚挟んだ向こう側は、トイレへと繋がる濡れ縁で、祖父母が夜中に通る可能性も十分ある。

「……入江くん…ダメ……これ以上……」

キスだけ、といいつつ直樹の手はしっかり琴子のパジャマの隙間を縫って、その胸をやわやわと揉みはじめている。
実のところ、ここ最近はシフトの関係から殆どすれ違い生活で、一緒に眠ることすら久しぶりだった。
だから少しは甘い時間を期待はしていたのだけれど、やっぱり隙間だらけの古い家の中というのは少々の抵抗がある。

「まだじーちゃんばーちゃん寝たばっかで当分起きないよ。襲撃してくるいとこたちもいない訳だし」

「…………でも」

ささやかな抗議をしようとした唇がまたも塞がれる。

「………が見てるかも……」

微かに離れた唇から紡がれた意外な言葉に、一瞬直樹は目を剥いて、それからくすっと笑う。

「その辺に座ってじっと見てたらこえーな、菊之助じーさん」

「や、やだぁ」

「まあ、遠慮して出てってくれるだろ?」

その存在を信じているのかいないのか、直樹はまるで気にしないように行為を再開する。

菊之助じいちゃんは、200年前に存在した一色家のご先祖様だ。10年前、琴子の前にだけその姿を現して、何度かピンチを救ってくれた。直樹の祖父とそっくりの容貌をしている。
不可解な出来事を共に体験した直樹も、全く琴子の戯れ言と思ってる訳ではないだろうが、理系頭脳がその存在をどう解釈しているのか琴子にはよくわからない。

「あ………」

直樹の手が琴子のパジャマのズボンの中に伸びてきた。
ゆるりと下着の狭間に入り込んできた指が、繁みの奥の泉を目指して翻弄を始める。

ダメ……止まらなくなる……

互いの身体が熱くなって来ているのが分かりすぎるくらい分かって、引き返せなくなる予感を感じた時ーーー

「パパ、ダメーー!」

突然、ガバッと琴美が跳ね起きて、そう叫んだ。

思わず二人はばっと離れる。

「み、み、み、みーちゃんっ どーしたの?」

上擦った声をあげつつも、琴子は慌てて乱れたパジャマを直す。

琴美は目をこすりながら、寝惚けた顔で両親の方に目を向けた。

「あのね、あのね、ひいじーちゃんがみーちゃんをゆさゆさ起こしたの。パパがママを苛めてるから、助けてあげなさいって」

「ええっ?」

「パパ、ママを苛めてたの?」

琴美が不安そうに直樹の顔を窺う。

「パパがママを苛めるわけないだろ? 可愛がってただけだよ」

「入江くんっ!」

「でもばあばがよくパパは昔ママを苛めてたって」

全くあの人は何を孫にふきこんでいるのやら。
直樹は東京にいる母を忌々しく思う。

「昔はね。多分ママが気になってたから、意地悪してただけだよ」

直樹は娘を膝の上に抱き寄せて、やさしくそう答える。

「今はしない?」

「しないよ。パパはママが大好きだから」

思わぬストレートな告白に、横で聴いていた琴子は真っ赤になって枕を抱き締めた。

「よかったぁ……」

「ひいじいちゃんが琴美を起こしたのか?」

全く、なんでそんな夢を、と思いつつ、娘に訊ねる。

「うん。ほっぺにアザがある方のひいじいちゃん」

え……?

思わず顔を見合わせる琴子と直樹。

「ほっぺにアザがある方って……」

「あのね、ほっぺにアザのあるおじいちゃんとアザがないおじいちゃん、二人いるじゃない?」

「ええ?……琴美にはほっぺに痣のあるおじいちゃんが見えるの?」

「みーちゃんたちがこのおうちに来て、出迎えてくれた時からずっとおじいちゃん、二人いるよ。このおうちもおじいちゃん二人におばあちゃん一人なんだーって思ってたの。ほら、東京のおうちもそうじゃない?」

「……… 入江くん………」

琴子は少し青ざめているだろう。部屋を照らしているのが、少し黄色味を帯びた仄明るい和紙で作られたスタンドライトの光のみなので、実際はわからないが。

「そっか。琴美には見えるのか……」

「あたしにはぜんぜん見えないのに……」

ぽつりと呟いた琴子は何処か寂しそうである。

「……もう、寝なさい。変な夢を見ないように、パパとママが見守ってあげるから」

琴美は安心したように、父親の腕の中ですうっと目を閉じた。
そして、二人も始めのように琴美を間に置いて、両側から娘が寝付くまで見守っていた。




「…………いるんだ、やっぱり……」

「………みたいだな……」

何となく熱くなってしまった身体を互いにもてあましつつ、二人は琴美を間に挟んで呟きあった。

ーーなんであたし見えなくなっちゃったのかなーおじいちゃん。

ーーなんで、邪魔するんだ、くそじじぃ。


九州一日目の夜はゆっくりと更けていった。




※※※※※※※※※


なんか私、まだまだ甘い入江くんに飢えているようです……
そして入江くんもかなり飢えてたようで……(((^^;)





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コメント
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【2016/07/17 23:24】 | # | [edit]
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【2016/07/17 23:54】 | # | [edit]
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【2016/07/18 07:15】 | # | [edit]
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【2016/07/18 13:34】 | # | [edit]
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【2016/07/22 21:08】 | # | [edit]
コメントありがとうございます♪
またまたリコメ遅くなりましてスミマセン!
ほんとイタキスサイト様、夏になってみんな更新頻度が増えて、嬉しい限り♪納涼祭りバンザーイ(^w^)

そうです。実はネタもとはアニメの最終話です。九州行きの電車の中で過去の九州旅を娘に話して聞かせる琴子。その後彼らがどんな夏休みを過ごしたのか妄想したのが切っ掛けなので。

でも10年経ったら色々変わってるだろーなーと。
もう、リアルに田舎育ちだし、今も田舎に住んでるし、旦那の実家も田舎だし、で、田舎情報は実に身近な私……f(^^;田舎のふるーい家でもキッチンはオール電化だったりねf(^^;
子供たちは絶対都会に行くと思うし。
そんな変化だらけの一色家でも変わらずいるのは菊之助じーさん。この人出さなきゃ何が納涼祭りですかってもんですよ。せっかくの幽霊ですものね~~

(ええ、わざとですよっ)

『しゅごキャラ』。知らなかったです。そんなアニメがあったんですね。
もう菊之助さん&えっちゃんを思うとこのタイトルしか思いつきませんでした(^_^)
【2016/07/28 22:00】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪
リコメ物凄く遅くなって本当にスミマセン!

そう。10年経つとね~~年寄りには段差の多い昔の家は本当に暮らしにくいのです。五右衛門風呂なんて絶対入れないし、トイレも洋式でないとしんどいのですよ!…………などと、リアルに考えてしまいました笑。いや、戦前はそれでみんな普通に暮らしてたんでしょうけど。

小さい子どもほど見えるって聞きません? 琴子も母になるまでは子どものようだったので見えたのに、母親になってからは見えなくなってしまったようです。

ふふふ、入江くん……哀れなのは今夜だけではないかもです(^w^)
【2016/07/28 23:12】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪
リコメ、チョー遅くなってスミマセンでした!

紀子ママさんの怒りポイントですもんねーアケビ採り事件は! 本当に遭難したらどーなってたと思いますよね。地元の人間こそ危険を分かってるはずなのに。

まあ、そんなじーさんも変わりましたよ。年くって周りの環境も変われば、少しは丸くなることもあるでしょう。それに一番の原因は………(^w^)最終回のお楽しみなのです。
田舎の若者離れは田舎育ちなんで、リアルな問題ですf(^^;農家は特に厳しいですよね。

はい、もっともっと邪魔しちゃいますよ……(^w^)
【2016/07/28 23:32】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございました♪
リコメが遅くなって本当にごめんなさい‼

私も新参者なので、はじめての納涼祭りにワクワクしてます♪

そうなんですよ。10年の月日は大きいですね。生活も随分変わりました。
幽霊、大人になるとどんどん見えなくなるのかも……琴子ちゃん、やっと大人になったのねf(^^;
ふふ、りんさま、惜しい♪ハルくんは九州ベビーではなくて、〇〇ベビーでした♪

【2016/07/28 23:41】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

ドキドキしてくださいましたか(^w^)よかったです。日本家屋って隙間だらけだし、声とか丸聞こえだとおもうんですよねー
そうそう、琴子ちゃんは菊之助さん見えなくなったこと、ちょっとがっくしです。なのに入江くんときたら笑

ええ、二人の邪魔するやつは幽霊でもご先祖でも許さない‼………のですよ♪
【2016/07/28 23:49】 | ののの #- | [edit]
拍手コメントありがとうございます♪

リコメ遅くなってスミマセンでしたm(__)m

本当に暑くなって、納涼祭りらしくなってきました。涼しさをお届けできたらよいのですが笑
入江くん、まさかの寸止め。まあこんな古いおうちでやろーなんて土台無理な話なのですよ笑
【2016/07/28 23:56】 | ののの #- | [edit]
拍手コメントありがとうございます♪

そーなんです。チビ、かなりの老犬ですよね。普通、大型犬の寿命は短くて、7年くらいって調べてて……すでにチビ13歳f(^^;これは無理ある? と思いつつ、亡くなったことに出来なくて~~フィクションだからま、いっか(テキトー)と笑
ボットントイレ、いやですよねー。ハタチ過ぎまで住んでた家がボットンでしたよ。旦那の実家はボットンの上に洋式便座でしたわ。でも廊下が外に露出してて庭が丸見えで怖かった~~
なんか、ボットンって、下から手が伸びてきそうで………(by 恐怖新聞)
そうそう、菊之助おじーちゃん、相変わらず居ますよー。この家から離れられないんですね、多分。

おお、ゴーハンの二次読まれたんですか?いいでしょーナル×麻衣(^w^)いや、二次から読み出しちゃう方もいるんですね。ゴーハン漫画なら、アマゾンさんや、BOOK・OFFとかで、手に入れられそう。小説は中古ではないかな。
ふふ、『病院のカイダン2』考えてますよー。真砂子再び? あとこっくりさんネタとか。
お待ちくださいませ笑
【2016/07/29 21:10】 | ののの #- | [edit]
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