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個別記事の管理2015-09-03 (Thu)



いつものことですが、なんちゃって医療ドラマな展開です^-^;くれぐれも(特に業界の方)スルーよろしくお願いしますf(^_^)









※※※※※※※※※※※








8月4日(月)





「おつかれー」

直樹が医局のドアを開けると、薄ぼんやりした寝起き顔の同僚が、コーヒーを淹れながら直樹に声をかけた。

「入江も飲む?」

「ああ、もらう」

直樹と同期の佛円(ぶつえん)崇は、手際よく備え付けのカップにサーバーのコーヒーを注ぐ。

「はいね」

「サンキュ」

立ったまま一口飲む。

「 相変わらず、不味そうにコーヒー飲むんや」

「そうか? 別に不味いわけじゃないが」

とはいえ、美味しいわけでもないんやろ?

一応ドリップされているオフィスコーヒーは、缶コーヒーよりは遥かにマシであるが。
ただ飲みなれた味と違う違和感にほんの一瞬だけみせる残念な表情を、この妙に聡い同僚は見逃さない。

「昨夜の多重事故の患者は意識回復したって?」

「ああ。多分もう大丈夫だろう」

「そら、よかったわ。今までずっとlCUに?」

「まあな」

深夜に搬送された重体1名、重傷2名の急患のお陰で、仮眠していたスタッフも叩き起こされ総出で処置に当たっていた。
夜中1時過ぎ、漸く久しぶりにマンションに帰ろうとしていた直樹も結局帰りそびれてそのままだ。
重体患者を担当した為に、昼を過ぎた今、やっと予後が安定してきてひと心地着くことができる。

「おまえも結局帰ってないのか?」

佛円は軽傷者担当だった。
処置が終われば帰れた筈だ。直樹は不思議そうに訊ねた。

「カルテの整理やら雑務処理が終わってなくて、 各務先生に怒鳴られたんや……もう、ほんと鬼や、あの人は……」

げんなりした顔でため息をつく佛円に、
「で、終わったのか?」と訊ねると、
「4時間前。もう、眠とーて全然起きとれへん。つい、パソコンの前で船漕いでしもうて、進まないってえの。
終わったーと思うたら、朝から熱中症オンパレードやし」

確かにここ数日、酷暑だ猛暑だと叫ばれるほどの気温の上昇で、熱中症患者の搬送が増えている。

「やっと、落ち着いて、ここでちょっと仮眠してたん。もう、帰る時間すら惜しい……」

ソファの上にはクッションとタオルケットが置いてあった。
僅かな空き時間があれば、帰るより眠りたいという気持ちは分かる。通勤時間すら勿体ないのだ。

医局には直樹と佛円以外にも、二つの屍が……いや、仮眠中の同僚がいた。

机に突っ伏して寝ている二人。
一人がむっくりと顔を上げた。

「……あれ、入江先生、今日は休みとか言ってなかったっけ?」

「休みは明日です」

「そうだっけ? あれ? 今日何曜?」

「月曜ですが」

「あーなんか、曜日感覚なくなってくるなー、ここにいると……」

身体を起こし、手を伸ばして大きな欠伸をしながら神谷貴司が時計を見た。
研修2年目の神谷は、一浪一留で直樹より三つ歳上だった。

「せめて、仮眠室で寝たいなー………」

「仮眠室、先輩たちで埋もうてるさかい」

「入江は全然寝てないんやろ?」

「まあな。いつものことだろ」

「昨夜の事故、酷かったもんなー」

「さすが、各務先生、判断が早うて。心停止した時はもう駄目やと思うたけど。初療室で開胸して直接心マやもんなー」

重体者一人は運び込まれてすぐに心停止したのだが、助かったのは奇跡的だった。
救命センターの副長、鬼軍曹各務の采配で的確に指示が与えられ、全員見事に命はとりとめた。
何にしろ、昨夜は戦場のような目まぐるしさだった。
その余韻も冷めやらぬまま、朝から熱中症の為に寝室で倒れていたという老夫婦が搬送、そして陽が高くなるに連れ、極度の脱水症状で何人か搬送されてきていた。
休む間もない状況でみんな僅かな空き時間にベッドで眠ることすら叶わない。

「明日、奥さんこっち来るんやろ? なあんもないといいな」

「ああ」

琴子のために患者に元気になってもらいたい、という訳ではないが。
ただ、休みは気合いを入れて休まないと、毎日毎日重篤患者が運ばれて、研修医にも拘わらず一人が何人も担当している状況に流されて一生休みが取れない気さえしてくる。

直樹のいる神戸医大の救命センターは三次救急指定機関だ。基本、重篤患者だけ受け入れる機関だが、軽症者であっても近隣の病院から断られた救急要請を全てカバーし、そして受け入れている為に、常に救命センターは慢性的人手不足で疲弊状態にあった。

「……いいなあ、休み ………おれ、医局長から代休取れって言われてるけど、一体いつ取っていいんだか……」

神谷の呟きも深刻だ。
正直に勤務表に勤務時間を書いたら間違いなく労働基準法違反になる。
36時間勤務とか、10日連続出勤とか当たり前だ。

それでもこの病院はまだマシだ。
働いた分、きっちり賃金は支払われる。
私大の付属病院勤務の研修医の殆どが、月収数万円のパート主婦以下の手当てしか支払われず、社会保険にも入らせてもらえないという劣悪な環境のもと、当直アルバイトを掛け持ちしてやり過ごしているのだ。現実に研修医の過労死事件がおきて、研修制度が見直されるのはまだ数年未来の話だ。
森村かをる子が話していたように、この病院はナースだけでなく、研修医に対しても待遇は他の大学病院と比べ物にならないくらい良い。その代わり他の病院でのアルバイトは禁じている。
きちんと社会保険にも加入し、他の職員と同等の福利厚生を受けられる。
そして、そんな病院は私立大学病院の僅か数%というとんでもない現実があった。


「あれ……私、なんでこんなとこに寝てんだ…?」

机に突っ伏して寝ていた救命センターの紅一点、鬼頭姫子がぱっと顔をあげて辺りを見回す。
直樹が救命に来るまでは各務の次にイケメンと称された中性的な容貌は、ぼんやりと寝惚け眼で、頬に一筋痕がついていた。

「ああ、事故で人手が足りないって呼び出されたんだっけ……」

欠伸をしながら昨夜の出来事を反芻しているようだった。

「姫子先生、涎が口元に……」

神谷の指摘に、「うるさいぞっ ああ……もう、女終わってんなー」と口元を拭いてから再び机に突っ伏す。

「あ、一応、女って意識してたんだー」

33歳独身の彼女は、1年半前から救命に配属されたという、元々は内科医だった。
身長175センチ、ショートカットの黒髪……端麗な顔立ちは宝塚の男役を彷彿させる。じっさい今年のバレンタインは、院内一番のチョコ獲得数と評判だった。

「いっとくけど……私は、出来る女じゃないから」
と、直樹は初対面の時に彼女に宣言された。

「ほら、この容姿だろ。上司にしたい女優No.1のあの人とかこの人とかに雰囲気似てるからって、凄くバリバリ仕事出来るつよーい女に思われるけど………残念ながら、めっちゃ不器用だから!どんくさいから! くれぐれもギャップ萌えとかしないように」

はあ。

先輩相手にどう答えたらいいものか。

そうしたら彼女の後ろから、直樹の指導医の各務草平がぱしこーんと丸めた雑誌で彼女の頭を叩いた。

「新人相手に何、自分の無能さを力説してるんだ」

「いたーい。だって変な期待されて、もっと叱って下さい! とか言われても……」

「……言いません。そんな趣味はないので………」


とまあ、そんな感じで初顔合わせをしてから既に半月。
とりあえず、彼女が女性にしては珍しく、直樹に妙な秋波を送って来ないことに安心したものだ。
かといって、桔梗幹のように中身と外見が合致しないというわけではないらしい。

「一応彼氏がいた時代もあるんだ」
訊いてもいないのにそう力強く宣言されたが。

「たいてい1ヶ月持たないんだ。どうも面倒臭がりなのがいけないらしい。相手のことを考えるのもデートもセックスも面倒なんだ」

面倒臭いという問題だろうか?
…………なんで付き合うことになったのか、謎過ぎる。


それにしても。
中々個性的な面子であった。

ーー神と仏と鬼が揃い踏みかよ。

医療現場に縁起がいいのか悪いのか、その名前に微かに笑みを漏らしたものだ。

佛円崇は直樹と同じ研修1年目で、元々救命希望で研修初期から救命センターに身を置いている。
神谷貴司は島根の実家が皮膚科のクリニックを経営していて、小児アレルギーが専門と言っていた。直樹より半月早く皮膚科から救命センターに研修に来ていた。
この二人、眼鏡をかけているところや、背丈や体型、髪型などが良く似ていて、名前までともに『たかし』。
他のスタッフからもしょっちゅう見間違われている二人である。
お陰で神仏ツインズとか云われていた。
眼鏡を外すと3割増しにイケメンなんだから、と鬼頭姫子に云われていたのは神谷の方。確かに眼鏡を外すと少し船津に似ている、と若干鬱陶しい同級生を思い出した。

最強な名前なのに、最弱トリオなんだな、私たちーーとこれも鬼頭姫子の弁。

「鬼姫って完全名前負けだよねー」

大して気にもしてなさそうにからからと笑っていたが。

確かに研修医の神仏ツインズはともかく、姫子も上司の各務から度々怒鳴られていた。
姫子はそれなりにキャリアも積んでいて、初期診断の見立ては見事なものだと直樹も学ぶことが多い。しかし、外科は無理っと内科医を選択しただけあって、手先の不器用さはハンパない。縫合の遅さに昨日も散々各務に怒鳴られていた。

「どーせ、私は釦もまともに付けられない女だよ。料理も下手だし、整理整頓苦手だし……」

外科医としては致命的なほどの不器用さに、確かに直樹も呆れたが。
研修医のようにちまちまこそこそと練習していた外科結びは、研修医以下だった。
やることもざっくりで大雑把。女性らしい繊細さはあまりないが、人当たりがよくてめげないところは何となく琴子を彷彿させる。
云うことは自虐的な割りに妙にサバサバした性格はいかにも女医らしい。

「鬼頭先生、昨日は確か早く帰りませんでしたか?」

「同窓会があったから久々に定時で帰ったのにね……明け方にオンコール。事故のせいで他の先生たちが急変に対応出来ないっていうから結局駆けつけた」

夜中だろうが休みだろうが、何の遠慮もなくかかってくる病院からの呼び出し電話。小児外科の頻度と比べるべくもない。24時間緊張状態を強いられて、気が休まらないのは確かだった。

「常に首に紐をつけられているような気がするだろ。こんな状況で、救命を志す医者が増えると思う?」

「目の前の患者を助けることが出来るという充足感は遣り甲斐を感じますね」

「目の前の患者を救えなかった時のストレスも半端ないけどね」

「………まあ、確かに。でも……」

「でも、これを乗り越えないと救命なんてやってられない」

「はい」

「君は小児外科に戻るんだろ?」

「ええ」

「救命に残ろうなんて、欠片も思わないだろ?」

「救命の仕事に興味はありますし、学ぶところも多い。でも、おれが神戸まで来たのはあくまで小児外科を究めるためなので」

「 そうか」

上手くかわしたと思われている訳ではないようだ。

「勿体ないな。君は私と違ってセンスがあるのに」

彼女自身、救命の仕事が嫌なわけではないようだ。自分で内科からの転科を希望した、ということや、その時期を鑑みても、恐らく1年半前にこの地域を襲った未曾有の天災に起因するのだろう。特に訊いたことはないが。

「まあなんにせよ、カガミンがもうちょっと体制を整えてくれたらなーって思うわけなのよ。まだまだ発展途上なんだなーこのチームも」

飲み終えたコーヒーを片付ける為に席をたった彼女は、変な体勢で寝ていたせいかよろよろと給湯室に歩いていく。

「鬼の各務をかがみん呼ばわりできるの姫子先生くらいや……」

佛円が肩を竦める。
そんな彼も救命を最初から希望しているのには思うことが色々あるのだろう。
元々ここの学生だった彼も、『あの日』を経験している筈だった。




直樹が小児外科一本で研修を希望しているように、この病院の研修制度は専門医を育てるストレート方式を基本としていた。各科を2~3ヵ月のローテーションでまわるやり方も選べるが、殆どの研修医が将来の専門を見据えて単一の研修科を選んでいた。
学生時代の臨床実習で、直樹はほぼ他の領域についても知識だけは完璧に身に付いていると自負していた。
だから小児外科の専門チームがあり、その研究テーマに深く感銘を受けていた楡崎教授から誘いを受け、師事する為に神戸に来た。
数ヵ月の小児外科での研修でやっとその環境になれたところだった。

事前に救命センターへの研修は必修であると云われていた。ただ、いつどのタイミングで命じられるかはわからないとも。

救命での研修は直樹にとっても望むところではあった。
緊急性の高い小児の救急事例は多い。ほんの少しの初期診断のミスで重篤な事態を招くこともある。
少なくとも臨床で日々実践し、手技を高めていく機会は小児外科にいる時よりも遥かに多い。
そして、その命の儚さを知る機会も。
医者になって、4ヶ月、小児外科病棟では1度もまだ死に対面したことはなかったが、救命に来たとたん、己の無力さを思い知らされる状況に何度も立ち会った。
この半月で、小児外科にいただけでは得られない知識と技術を得ることが出来たことは、大いに価値ある経験だろう。

ーーただ。
このタイミングとは。
琴子が来る夏休みに、救命への研修を命じられるとはーー。
誰にもぼやくつもりはないが。
心の中でため息をひとつ付いたことは、誰も知らない。



「いいなー入江先生は。明日は奥さんとまったりかー」

「あまーい。そんな楽しいこと、此処に所属している以上有り得ないよ。覚悟だけはしとくように」

皆の前で平然と歯を磨き始めた鬼頭姫子は、意地悪そうにそう言い放つ。

「………覚悟はしてますよ。十分に」

「お、わかってるね。研修医の分際で一人楽しいプライベートが待ってるなんて、許さないかんね」

「あー姫子先生も鬼やー」

「何処がっ?」

「……いやーでも入江先生の奥さんってどんな人なんやろ?」

「確かに気になるね。このぶっきらーが日毎じわじわと顔つきが穏やかになってくの。あからさまに鼻の下伸ばさないあたり小憎らしいけどさ。そんなに心待ちにしてる嫁ってどんな娘?」

歯ブラシをくわえながらもごもごと訊ねる。

「姫子先生、歯みがき粉、口から垂れてますやんっ」

ぎゃあぎゃあ騒いでいる彼らを横目で見ながら、そんなに分かりやすく表情に出ているのものかと鏡をちらりと見る。

「ふっふっふっ、元内科医の慧眼だよ」

「いや、結構おれらにも分かるよ。張りつめてるのが少し緩やかになってく感じ。煙草の本数もあからさまに減ってるし」

「だから、余計に気になるやけどね、この完全無欠の天才をそんな風にさせるのがどんな嫁か」

「普通の女ですよ。高校からの同級生で」

普通……か? まあ、普通に目があって口があって鼻があるし。
自分で云っておいて普通の境界線は実に曖昧だと密かに笑いを噛み殺す。

「いっぺんくらい連れておいでよ」

「ここに? 邪魔になるだけですよ?」

来るなと云っても覗きにくる予感は十分するが。
いや、確実に弁当の宅配は来そうだ。
間違いなく。

「ああ、そうそう。胸は鬼頭先生といい勝負です」

スラッと身長の高い鬼頭姫子だが、電信柱のような見事な凹凸のなさである。

「 へえーそりゃ残念。世の中のAカップ愛好者の一人が既に妻帯なんて」

「 別にAカップ愛好者ではありません」

「はいはい、愛する妻がたまたまAだったって話だね。いやー君の前をうろつくお色気ナースたちに聴かせてあげたいね」

「姫子センセ、自分の取り巻き入江先生に取られて悔しいんやろ」

佛円の突っ込みに、
「そうだな。こんな声かけても冷却ビームしか発しない奴より私の方が絶対優しく受け答えするのに」
くっくっと面白そうに笑う。


「そういや、入江、おまえ、事務の森村さんと知り合いなのか?」

黙って話を聞いていた神谷が突然振ってきた。

「先週、一緒に飯食ってたって?」

「あー、おれもそれ聞いたわ。ナースたちが騒いどったな。おまえ、嫁がおるくせに、あんな美人とも……」

……美人だっけ?

直樹は一瞬考える。
わりとはっきりとした顔立ちは、松本裕子や大泉沙穂子のような万人が見て美人とはいかないかも知れないが、確かに美人の部類かもしれない。

「救命のタイムカードに不備が有りすぎると、クレームつけられただけですよ」

森村かをる子からは隣に住んでいることは絶対云うなと云われている。
適当に誤魔化すしかない。

バレたら、あたしんちに、友人と名乗る女子が毎晩争うように押し掛けてくるわよっ

彼女の危惧は強ち大袈裟なわけではないかもしれない。
結婚してると公言しているのに、そして、プライベートな時間が全く取れないこの状況にも関わらず、隙をついては女子スタッフに「食事に行きませんか」「飲みに行きませんか」と誘われる。
救命に来て以来、歓迎会をやるやる云われて未だに行われていないというのに、一体何処にそんな時間が取れるのか。
他人と飲み食いする時間があったら、先ず寝る!

そんなことを言えばますます勘違いを招きそうだから云わないが。

「なんで、おまえにそんなクレームつけるんや?」

「たまたま相席しただけですよ」

「ふーん。知り合いなら紹介してほしかった……」

残念そうに佛円が呟く。

「よせよせ、研修医なんてすぐ振られるよ。デートする時間もないんだから」

去年、6年付き合った彼女に振られた神谷がしみじみと語る。

「……まあな」

「研修医じゃなくたって、救命にいる限り人間的な生活は望めないよ」

鬼頭姫子の言葉に、神仏ツインズは揃って項垂れたーーその時。


消防局からの緊急コールが鳴り響いた。



「はい、神戸医大病院救命センター」

姫子が真っ先に電話をとった。

『救急司令センターより、二次の患者の受け入れを要請します』

「二次? うちは三次指定病院ですよ?」

生命の危険に関わる重症患者を受け入れるのが三次救急だ。
二次は命の危険のない、中症患者である。

『歩行者と自転車の衝突事故です。歩行者の方が膝の擦過傷のみで軽症ですが、自転車の方は倒れた際に腕をついて、右腕を骨折したようです。近隣の二次指定の病院に今、断られまして……頭も少し打ってるから、神戸医大に搬送して欲しいと歩行者の方が……』

「歩行者が頭を打ったの?」

『いえ、自転車の方です。六十代女性で、意識もはっきりしていますし、自力歩行も可能で、バイタルもサチュレーションも安定してます』

だったら歩いて最寄りの整形外科へ行けよ、と姫子は内心思ったがーー

「受け入れます」

姫子から受話器をふんだくって、そう答えたのはいつの間にか部屋に入ってきた救命の鬼軍曹、各務だった。

「各務先生!」

「ぶつくさ云わずに受け入れろ! 頭を打っている以上中症とは言い切れない。患者を診ずに判断が出来るか?」

「………そんなことばっかり言ってるから、コンビニ受信も受け入れて、こっちがてんてこ舞いになるんじゃないか……」

姫子の呟きに、「文句あるならはっきり言え!」と各務は鋭い眼光で睨み付ける。
新参のナースなら震えあがってそれだけで半泣きだが、姫子はしれっと「別に」とかわして、「じゃあ中症者は君たちに任せるわ」と研修医たちに微笑みかける。

「じゃあ佛円、入江。お前たちが行け。間もなく着く」









「いやー各務センセにあんな軽口叩けるの、姫子センセだけやー」

「後輩だって?」

「確か、姫子先生が3つ下やったかな。二人とも東京の大学出身や。でも、各務センセはドイツの病院に何年か居てはったって話」

「ふーん」

「入江が来るまで各務センセがモテ率No.1やったん。背も高いし、目付き鋭くてちょっと猛禽類みたいだけど美形やろ? 腕はピカ一やし。そんで女に大してめっちゃ冷淡。似てるわー」

「誰と?」

(……おまえとや……)


救急入口までこんな悠長な会話をしていられるのも搬送されるのが逼迫した状況の患者ではないと分かっているからだ。

「神谷先生、ストレッチャーいります?」

救命ナースが一応声を掛ける。

「………おれ、佛円やけど」

「あーすみません、関西弁が仏様でしたねー」

……なんやねん、その見分け方………。

佛円ががっくりしている横で、
「とりあえず、一つは持っていこう」と直樹が答える。

歩行者の方は要らないだろう。事故当事者だが電話をした本人で、半分付き添いのような形で同乗したらしい。

救急外来入口で待っていると、間もなく救急車が到着した。
横付けされた救急車の扉が開く。
ストレッチャーを近付ける。

そしてーーー。



「入江くーーんっ! 」

「……………!!!!!!!………………」


救急車から飛び出してきたのは。

今はまだ東京にいる筈のーー。



「ーーーー琴子っ!?」









※※※※※※※※※※※※





ーーてなわけで、台風娘、意表を突いて1日早く到着(笑)

『ERの愉快な仲間たちーーそして彼女はやって来たの巻』でした(爆)




あっという間に夏休みも終わり9月ですね……(いえ、我が家には若干1名、まだ絶賛夏休み中でごろごろしてる奴がおりますが)。
行事めじろ押しの2学期ですが、イタキス月間もやって来ますしね(^w^)もっとさくさく行きたいなーと思うだけでままならぬ今日この頃……(-.-)
ガンバリマス^-^;







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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

はい、何だかオリキャラわしゃわしゃいます。でも、原作ではあまり描かれてない部分を書こうとするとまあ仕方ないのかな?と……ちょっと開き直って……^-^;

まあ、そうなんですねーちょっと安心(ウソです。きっとマロンさんならよくご存知でもスルーしてくれるかと)
実は海外もののERは見たことないんですー。専ら救〇救〇24時がお師匠さまです^-^;
そうですね。直樹はそうそう感情は表しませんが、やっぱりほぼ24時間共に過ごしているチームの面々には気づかれちゃってます。
愉快な仲間と銘打ってる以上一応みんないい人たちの予定。楽しく琴子と絡ませられたらいいのですが^-^;
はい、琴子ようやく神戸に来ましたよ。神戸でのドタバタが始まります(^w^)

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうなんです。鬼のように忙しくて、果たして無事に琴子の望む二人だけの生活が送れるのかどうかって感じです。
ははは、そうですねー姫子さん、外見的イメージはそんな系統で(^w^)あと真矢さんとか(^^)
でも中身はちょっと不完全な天然系なイメージです。

琴子ちゃんまさかの救急車に乗っての登場です(^^)
神戸でのドタバタな日々の始まりです♪

Re.たまち様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

まあ、たまちさん、色々大変そうですね。無理されないようにしてくださいね。コメントのことは気になさらないよう。読んでいただけるだけで幸せです(^^)

あら、同姓同名ですかー。鬼頭姫子さん、最初は小夜子さんだったのだけれど、途中でやっぱ鬼姫の方がインパクトあるなーと書き直したんですよ。中身とのギャップ感を出したかった名前です。でも、そんなことあるんですねぇ(°Д°)

はい、直樹さんの琴子不足はかなり来てますね。この直樹さんかなりど直球で琴子を切望してます。本当はGWあたりには、耐えきれなくなった琴子が来るものと勝手に思ってた奴ですから。彼の予想より1ヶ月遅かったわけですが^-^;琴子の意外性はいつも直樹を裏切ります(笑)そして今回も。

ふふ、さすがたまちさん、直樹の予想を上回っておられる! そうなんです、琴子の行動は台風を巻き起こし、そして何故だか上手いことおさめちゃうんですよね。(運を引き寄せるというか……)
はい、あんぐりと口の開いた直樹さん……多分、一緒にいた佛円くんはしっかり見てますね……(^w^)



Re.heorakim様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

以前はせめて週2くらいで更新してたのですが、最近はめっきり週1ペースです。書きたいものが沢山あるので早く書きたいと思いつつままならないのです(-.-)早いと思っていただけたならよかったです♪
オリキャラ沢山で名前も色々。確かに覚えづらいですよねー。適当に読み流して下さいませね。
なんとか二人を再会させることができました。1度くらいはいちゃこらも書きたいかな~と、思ってます。
気長にお待ち下さいませ(^^)

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ああ、そういえば確かに! 怒れる鬼教官とどS指導医、似ているかもですね(^w^)でも、実はカガミン、別にモデルがいるのですよ(アニメや漫画やドラマではない方です)あとがきまで辿り着いたら明かしますね(笑)
カガミンという名前から別方向から反応があるかな?と思いつつそっちはなかったです(^^)(黒〇の相方のあだ名もかがみんだったな、と)
でも例の教官も間もなく映画で会えそうで楽しみですわ(^w^)

珍しくキャラ設定や、簡単なプロットを立ててみましたが、果たしてこの個性豊かな面々を上手くイリコトに絡ませて行けるか、甚だ不安ではありますf(^_^)なんとか頑張ってみますね~~(^^)
はい、波乱の夏休みの幕開けですよー(^^)v


Re.ちょこましゅまろ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

いやーびっくりしていただけて嬉しいです!
ええ、入江くんが、一番びっくりでしょうけど(^w^)

はい、オリキャラ盛りだくさんな救命チームです。姫子さん、最初はグラマラスなタイプにしようかと思ってたけど、ありきたりかな?と真逆にしました。お陰で入江くんに色目を使わない安定なチーム(笑)です。多分、豹変はないかと^-^;
何となく救命志す人はみんないい医者のイメージなんですよ。
はい、琴子ちゃんもやってきて、ドタバタな神戸生活、始まります♪


Re.なおちゃん様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

そうですね、ちょっと不器用で天然なところが琴子ちゃんと似ている姫子さんです。
琴子ちゃん……救急車で運ばれてきましたが、割と元気そうです(笑)

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