タイトル画像

20010513 ~10年目の同窓会 3

2015.05.24(01:05) 135





さて。場所は移り、ここは大日本ホテル、天翔の間。
斗南大学付属高校、第25回生同窓会の会場である。司会者の紹介により、恩師の近況報告及び花束贈呈や、各クラスの代表者の挨拶などが行われた後、乾杯の音頭がとられ、宴は始まった。


「で、結局、入江くん遅刻なの?」

「うん。さっきメールあったの。タクシーで向かったら、何だか滅茶苦茶道路が混んでるって」

琴子はいそいそと料理を皿に盛りながらも理美とじんこに話す口は止まらない。

「出掛けに、みーちゃんがぐずっちゃって、時間もギリギリだったみたいで………」

「いやーん、ぐずった琴美ちゃんあやす入江くんってどんな~?」

「ってか、琴美ちゃんパパっ子~?」

二人にニタニタとからかわれ、琴子も「まあね」と少し困ったように答える。
自分が朝出掛ける時には、大して泣きもしないのに、直樹が出掛ける時には必ずといっていいくらいこの世の終わりのような大泣きをする。
なので、いつもはこっそりと出掛けるのに、今日は二人揃って外泊するからと(ささやかな罪悪感から)少し相手をしていたら、出掛ける空気を察してなかなか離さなかったという。
とにかく父親に対する独占欲は半端ない。琴子ちゃん譲りね~~と、紀子は喜ぶが、将来もっとも怖い恋敵になりそうな気配を醸し出している0歳児だ。


「でも、そのワンピ可愛いわね」

理美がオレンジジュースを飲みながら琴子のコーデを誉めた。

「ありがとー」

気に入ってた服を誉められて、笑顔になった琴子ににやにやと含み笑いをしながらじんこが突っ込む。

「琴子だけ、衣装替えだもんなー」

「うっ」

総会会場であった高校から、このホテルへの移動は、チャーターバスが用意されていたが、琴子とじんこは自分で車を運転してきた理美に同乗させてもらい、このホテルへとやって来た。
ホテルに泊まることは二人に言っていなかったものの、チェックインして部屋で搾乳と着替えをすることを隠すことも出来ない為、結局直樹が部屋を予約してここに一泊することを伝えた。
二人は驚いて、そしてにまにまと笑い結局部屋まで付いてきたのだ。

スイートではないが、高層階の角部屋で、キングサイズのベッドが鎮座したその部屋を見るなり、琴子は真っ赤になり、理美とじんこは肩を震わせ笑いを堪えていた。

「ツインでもダブルでもなく、キングサイズってあたり……」

「 いやー頑張ってね、琴子」

「いいわよねーいつまでもラブラブで」

「ってか、この部屋写真撮ってみんなに見せよーか? 誰もあんたたちが離婚するなんて思わないわよ。この部屋とったの入江くんだよーって注釈つけて」

「や、やめてー」

せっかく直った機嫌がまた悪化したらどうしてくれよう。



総会の途中あたりからずっと張って痛かった胸は、否応なく義母に預けた娘のことを思い出す。一度家に電話をして、琴美の様子を訊いてから、搾乳して少し胸を落ち着かせる。その後同窓会用に準備していたワンピースに着替えて、靴も少しヒールの高めのパンプスに履き替える。久し振りに履いたら少し世界が高く見えた。……でも何となくキツいのは1日立ちっぱで浮腫んだせいだろうか。

仕度を終えてから、3Fの天翔の間に向かい、三人で受付係を担当した。会場の入口で、いちいち「あら、まだ入江なの?」とか、「本当に結婚したんだー」と声をかけられたが、高階優梨子のお陰で多少の耐性は出来ていた。尤も殆どが彼女のような嫌味ではなく、単純な驚きから出た言葉だと分かっていたから、顔を引きつらせつつも軽く受け流すのは簡単だったが。




同窓会は段取り通りに進行され、今はとにかく腹拵えしようと三人で料理を取り合っている所だ。さすがに大日本ホテル、どれも美味しそうでついつい皿の上はてんこ盛りだった。
もっとも一口食べる毎に、誰か(無論、女)が「入江くんまだ来ないの?」と、やってくる。

「 いちいち説明するの面倒だから、司会に言ってもらえば? 入江直樹、ただいまこの辺りです、とか」

じんこの提案に苦笑するしかない。
皆さん、今日の同窓会の目的は入江くんに会うことだけ?ーーと思わずにはいられない。


「でも、懐かしいわよね。ここ。本当なら何年か前、あんたたちの結婚二周年祝いする筈だったのよね」

「そうそう。飛天の間。ここの上の階だっけ? 確か千人収容出来るホールだよね。一体どんなパーティやるつもりだったんだか」

「そうだね……」記憶を辿るように思い出そうとする琴子。
いったい、なんでパーティ中止になったんだっけ?
ああ、そうだ。

「あの時も理美、お腹に赤ちゃんいたんだよね。切迫流産で入江くんに助けてもらって……」

「そうよ。入江くんに何度も『俺はまだ医者じゃねぇ!』って云われたっけ。でも、入江くんのお陰で助かった気がするの」

予定外の妊娠で、良もあたしも親になる覚悟なんて全然なくって………

懐かしそうにお腹を撫でる理美の横顔は、しっかりと母親の顔だった。

「今は? 大丈夫? 調子悪くなったらすぐに云ってよ」

「ああ、うん。全然大丈夫よ。今回は悪阻も全くないし。食べ過ぎちゃって困っちゃう」

「悪阻がないっていいことよー。羨ましいわ」

「はは、琴子、悪阻には苦労したもんねー」

入院までして凄く辛かったけれど、笑って思い出せる幸せをほんのり噛みしめる。
一年前のこの季節、琴美はまだお腹の中でささやかな胎動を感じさせていただけのに、今は表情豊かに笑って泣いてハイハイして、いたずらし放題、天使と小悪魔の繰り返しの日々だ。

「ふふ。もしまた切迫流産になりそうになっても、ちゃんと国家資格持ったドクターもナースも揃ってるんだから大丈夫でしょ」

「入江くんは産婦人科医じゃないわよ?」

「入江くんだけじゃなくて、同窓生にも何人か医者になった人たちいるって話だから、なんとかなるでしょ」

じんこの言葉に、「うーん、同級生に産婦人科で診てもらうのってよくよく考えたらめっちゃイヤかも……」と、理美が呻く。

「「確かに」」

じんこと琴子が激しく同意する。

「まあとりあえずは、この子はとってもいい子だから大丈夫よ」

お腹に手を当てた理美が妙に自信有り気に云うので、琴子も不思議と大丈夫なのだろうと思えた。
けれどなるべく座っていた方がいいと、壁際に並んでいる椅子を勧める。
結局三人で椅子に座って喋っていると、ビールを持った同窓生たちが次から次へとやって来た。

「理美は妊婦だし、琴子は授乳中だから」と、アルコールお断りの二人に替わって、じんこが一手に引き受けている。
もっとも彼女はザルなので、けろっとしたものだ。


「授乳って……ひえー本当に琴子、赤ちゃん生んだんだ?」

「やだ、琴子の胸ってそんなに大きかったっけー?ってさっきみんなで話してたんだ。なるほど、そーゆーことか」

「ん、もぉー、本当に入江くんの子供なのー? あ、写真ある? 見せて見せてー」

「いやーん可愛い! 琴子そっくりだけど、鼻筋は入江くんに似てるかな?」

いつの間にか琴子たちの回りにはF組の面々が集まっていた。
去年から携帯電話に写真機能が付いて、琴美の写真を待ち受けにしたいからと新しいものに買い換えてしまった。携帯の中の写真にみんな興味津々で食いついてくる。

みんなが回して見ていた携帯電話を誰かがさっと横取りした。

「本当に入江くんの子供なの?」

………同じことばをF組のクラスメートが云っていたが、何故単語は一緒なのにこうも彼女が話すとニュアンスが違うのだろう。
琴子は取り上げて携帯電話の写真をじろじろ見ている高階優梨子に手を差し出して、「高階さん、返して」と軽く睨む。

「入江くん以外の誰の子供だってぇの?」

「 そうだよ。琴子は入江くん以外キスもしたことなければエッチも入江くんが初めてで入江くん以外知らないんだから」

理美とじんこの援護に、嬉しいが思わず赤面する。
事実だが、こんなところでそんな話を公にするのはやめてーと密かに思ってしまう。
ってか、二人だって今のパートナー以外知らないでしょうが!

「こわーい。冗談よ。でも、全然入江くんに似てないじゃない」

携帯電話を返しながら優梨子はすました顔で笑う。

「何みてんのよ」

その後ろから顔を出したのは木暮ありすこと佐藤美智子だ。

「自称入江くんの赤ちゃんの写真よ」

優梨子の答えに美智子のこめかみがひくひくと震える。

「ほんとに……ほんとに……アナタ入江くんと結婚したの?」

未だに衝撃の事実から立ち直っていないらしい佐藤美智子の背後からは沢山の疑問符が立ち上っているのが見えるようだ。

なんでアンタなんかと。
なんでアンタなんかと。
なんでアンタなんかと。

「そうよ。いくらあんたがテレビに出てる有名人だろうが、入江くんには琴子がいるんですからね。ちょっかいかけても無駄よ」

息巻くじんこに、鼻で笑うように「さあ? どうかしら?」と自信ありげに答える。

「……あたしはねー、入江くんのためだけに努力し続けてここまで変わったのよ。全然昔のあたしと違うんだから。あなたなんて高校ン時と全然変わってないじゃない? 結婚相手があなたなら余計に諦める必要なんてなさそうよね。
………ふふ、早く入江くん来ないかしら。今のあたしなら自信を持って彼にアプローチ出来るわ。結婚してたって関係ないわよ」

そう琴子の鼻先に指を突きつける美智子に、
「他人の夫を略奪するのは立派な不法行為だよ」と声をかけたのは渡辺だった。

「だいたいマスコミに出てる人が人の旦那にちょっかいかけるの、不味いでしょ」

「うっ」

渡辺の正論にぐうの音も出ない。

「あ、あたしがちょっかいかけなくても入江くんの方からちょっかいかけてくるのは仕方ないわよ?」

そう吐き捨てるように云って美智子はそそくさと行ってしまった。

「あの娘ってば、芸能界入って、自信だけは天に届きそうなくらい高くなっちゃって。妄想壁も相変わらずだし」

そう肩を竦めたのは高階優梨子だった。
何故か彼女はその場に残っていて、今度は仲のよい筈の友人にまで毒付いている。

「高階さん、佐藤さんの友だちじゃないの?」

不思議そうに琴子が訊ねた。

「腐れ縁よ。幼馴染みだけど、友だちじゃないわ」

「うーん、よくわからないけど」

どうにもこの二人の関係性がよくわからない。
キライなら幼馴染みだからって、縁はいつの間にか切れるものだろう。


けほっけほっ

優梨子が胸を押さえて少し咳き込む。

「あら、風邪?」

琴子が気になったようで優梨子の顔色を見た。

「ちょっとむせっただけよ。なあに? ナース気取り?」

気取ってなくて本職ですが。
いちいち返答する気力さえなくなる。

「あなた以外にもナースは何人かいるのよ。知ってる? 高校から普通に斗南大の看護科に進学した娘たち。あなたが看護科に転科した時にはみんな卒業しちゃってたけど」

「知ってるわよ……」

ため息混じりに琴子は答える。
琴子の3年先輩となった同級生たちは、病院実習の時に何人かは出会っていた。
看護科は、本来C組レベルの偏差値がないと進学できない。元F組の琴子が転科出来たということはC組レベルの成績を取れたと云うことなのに、あからさまに「F組のあんたがなんで?」といった顔をされた。直樹と結婚したことのやっかみから、ちょっとしたイジメのようなこともあった。他の先輩たちより、高校時代の琴子を知っている分、どうも風当たりはきつかった気がする。
色々な領域を回る実習期間中は嫌な思いもしたが、一時期のことといつもの前向きさで乗り切った。正式な看護婦となり、配属された外科には元同級生は一人もいなくて、少しほっとしたことを思い出す。

「病院でのあなたの評判散々だっていうじゃない。ドジでそそっかしくて注射も下手くそ。そんな人に看護されるのは絶対いやだわー」

「……じゃあ、くれぐれもうちの外科にかからないよう気を付けてね」

「そこが困りどころなのよねー。入江くんも外科にいるんでしょ? なんで夫婦揃って同じ部所にいるの? 普通の企業なら有り得ないわ」

ーー病院の人事課に訊いて下さい……。





「大丈夫? 琴子ちゃん。何かされたら相談してね。安くしとくよ」

ウェイターのところに行ってカクテルを注文している高階優梨子の背中を、呆れたように見つめる渡辺に、琴子は首を竦めて、
「……はは、大丈夫ですよ、渡辺さん。もう、大概のことは慣れっこです。入江くんの妻を8年もやってるんだから」と、舌を出す。

「ま、どんなにちょっかい掛けたってあいつが琴子ちゃん以外に目を向けることはないのになー。そうそう、琴子ちゃん、さっき入江からメールがあって」

「え?」

「琴子が酒飲まないように気を付けてくれって」

「やだ、飲まないよー」

手に持っているグラスはウーロン茶だ。

「いや、ジュースと間違えてカクテル飲むのがお約束だから、グラスの中味だけはきちっと目を光らせといてくれと」

その渡辺の言葉に、(どんだけ過保護ー)と肩を震わせる理美とじんこである。

「ん、もう。流石にカクテルグラスに入ってるの間違って飲んだりしないのに」

「妊娠してから1年半以上アルコール摂取してないだろ? ただでさえ弱いのに。少し飲んだだけでも回っちゃうからって」

(せっかく、部屋とって準備万端なのに潰れちゃったらね)
(そりゃ、入江くんにとって最も大きな懸念事項だわ)

理美とじんこは後ろでこそこそと囁き合う。

「僕としては、せっかく今日は授乳しなくていいのに、少しくらい飲んでもいいだろって気はするんだけどね」

「お酒好きな人には飲めない期間って辛いだろうけど、あたしそんなにお酒の味が分かる訳じゃないんで……」

へへっと頭をかく琴子に、渡辺はにっこりと微笑みかける。

「いや、本当琴子ちゃん、昔と変わらないなー。こうやって10年ぶりに同級生たちと会すると、余計にそう思うよ」

ほんっと、癒されるよなーと言葉にしようとした瞬間に。

ぞくり、と妙な寒気が背すじを走った。

「………まさか」






「ああっ 入江だー」

「入江くん、来たー‼」

会場の入口あたりでざわめきが聴こえた。

ーー入江くんっ!

思わず琴子が立ち上がった時には彼の周囲にはアイドルスター来場よろしくファンが取り囲んでいる状態だった。

「ほら、琴子も行かなくていいの?」

じんこにつんつんと突かれる。

「う、うん」

いつもなら、あの群れに果敢に飛び込んで両手を広げてがっちりとガードするところなのだが、なんといってもここは同窓会会場。
直樹だって同級生や恩師とゆっくり話もあるだろう。あんまりべったり張り付いて牽制しまくるのも、何だか全然余裕のない嫉妬深い悪妻そのものではないか。

などなどと余計なことを考えてしまって、直樹に近付くことを少し躊躇していた。

直樹が来ただけで会場の視線が一瞬にして彼の方に向かった気がする。
取り囲まれても頭ひとつ飛び出した彼の姿はすぐに分かる。その存在感の圧倒的な強さ。

気が付くかなー。
気が付かないだろーなー。

200人ほどいる会場で、部屋の壁際に陣取っている琴子のことなどすぐに捜し出すのは難しいだろう。
いや、そもそも捜すだろうか?

彼の周りには女たちだけじゃなく、男子や恩師たちまでも話し掛けようと間合いを計ってるかのように見える。

ーーま、まあ落ち着いたら話しに行けばいいよね。

琴子はもう一度座り直して、ふう、とウーロン茶を一口飲む。

「あれ、入江くん、真っ直ぐこっちに来るよ?」

「え?」

直樹はキョロキョロと特に琴子を捜す様子もなかったのに、一直線に琴子たちの方に向かっていた。……ゾロゾロと女たちを引き連れて。

「入江くんー、ほら、まず駆けつけ一杯」

「あら、こっちの飲んでよ」

ビールやタンブラーを差し出す女たちを無視して、直樹はカツカツカツと素早い速度で琴子の前に立ち、琴子が手に持っていたグラスを指し、「それ、何?」と訊いた。

「え? ウーロン茶だけど」

「貰うぞ」

と、そのまま琴子のグラスを奪い取り、イッキ飲みした。

ビール瓶やグラスを持ったままの女たちが一瞬、硬直する。

「の、喉乾いてたんだね」

「ああ。渋滞でタクシー殆ど停まっちまって、結局、途中で降りて歩いてきた」

「えー? そうなの?」

「どうもこの近くでトレーラーの横転事故があって、完全に道路が通行止めになったみたいだ。ありゃ復旧に時間がかかるな」

「え、ケガ人は? 大丈夫かな」

「巻き込まれた負傷者は居なさそうだな。トレーラーの運転手も軽傷だって話だし」

「そう、よかったー」

「この辺りは斗南から離れてるから、万一救急で運ばれてもうちに来ることもおれが呼び出されることもないぞ」

「え……そーゆー心配してたわけじゃなくて、純粋にケガ人いなくてよかったなーと……」

あたふたと言い訳する琴子に「分かってるよ」とくしゃっと髪を撫でる。

「入江……」

「ああ、渡辺。悪かったな、琴子のお目付け役頼んで」

「……いや。いいけどさ、別に」

でも、おまえ、人にお目付け役頼んどいたクセに、ちょっと微笑みかけたくらいで氷殺ビーム出してなかったか?
ーーと、内心思ったりしたがとりあえず言わないでおく。

っつーか、一瞬で琴子ちゃんの居場所を見つけるって、どんな探知機内蔵してんだよ……


「腹へった。何かある?」

直樹のその言葉を待っていたかのように、「入江くんっどうぞー」と女たちがそれぞれ皿を差し出した。
皿の上にはオードブルが綺麗に盛り付けられている。

「入江くん良かったら食べてみて。このきゅうりと海老とイクラのカクテルジュレ、美味しいわよ」

直樹の目の前にお皿にのった前菜を差し出したのは佐藤美智子だった。

「あ、あたしのこと覚えてるかしら? 3年で最後だけA組になったんだけど……」

けれど、直樹は一度も美智子の顔は見ずに、その皿の上のカクテルグラスを禍々しいものでも見るように一瞥すると、すぐに琴子の方を見て、「おまえのその皿でいいや」と、琴子の膝の上に置かれた皿を指差して、琴子が使っていたフォークをそのまま使い、琴子の食べ掛けていた料理をつつき始めた。

「え。それ、盛り付けぐちゃぐちゃ……」

慌てる琴子に、「いいよ、別に」と全く意に介していないように綺麗に平らげる。

「あ、もっとお料理取ってこようか? あと、何飲む? ビール?」

「酒はいいや。どうせ後で少しは返杯で飲まなきゃなんないだろうし。おまえと一緒のウーロンでいい」

「はあい。じゃあ、取ってくるねー」

いそいそと立ち上がって料理の用意されたテーブルに向かう琴子を見計らうように、また女たちが直樹の前にあれこれ差し出そうとするが、直樹はまるで無視して隣の渡辺と話し出していた。



「………なによ、全然、入江くん、あんたのこと見てないじゃない」

高階優梨子が佐藤美智子の肩に肘を掛けて嘲笑うように話し掛ける。

「うるさいわね。あんたも全然グラス受け取ってもらってないでしょっ」

ーーというか、グラスやビールや皿を持って所在無げにうろうろしている女たちの虚しい姿があちこちに………






「入江くん」

渡辺と話し込んでいた直樹のもとにやって来たのは日比野だった。

「良かったら、後で少し挨拶してくれないか? みんな君を待ってたみたいだし」

「は? 何の名目で? 意味わかんないけど」

その玲瓏な瞳でぎろっと睨まれて、日比野は一瞬後退さる。
さっきまで琴子と話していた柔らかな顔と全く違うことに、かなり驚いていた。

「えーと……名目と云われると困るけど……でも、君は卒業式でも学年代表で答辞を読んでたし」

「そんなの、この席で関係ないだろ? っていうか、あんた誰だ?」

「ほら、B組の日比野だよ。幹事の……」

渡辺に耳打ちされ、「ああ」と、直樹の表情がまた少し変わる。

「琴子が世話になったようだな」

にやっと笑っているようだが、瞳は何となく剣呑だ。

「いえ……僕のほうこそ彼女にあれこれ頼んでしまって……色々お世話になってありがとう」

ペコリと頭を下げた日比野に、「あいつに頼んで余計に仕事が増えたんじゃないのか?」とまたまた剣呑な言い草をする。

「そ、そんなことないよ! 本当にさくさくとはいかなくても、なんでも嫌がらずに引き受けてくれて……」

思わず前のめりになって訴える日比野の肩に手を掛けて、直樹はふっと笑う。

「出来ればお人好しにつけこんであれこれ頼むのはもう無しにしてくれ……って、どうせ幹事の仕事はこれで終了だよな……」

「つ、つけこんだつもりは……まあ、今度幹事だけの打ち上げがあるので、その時は充分慰労します!」

「打ち上げ?」

「はい、来月の中旬くらいの土曜日に…」

「悪い。多分その頃、メチャクチャ忙しい筈だ。琴子は欠席かもな」

「えーそうなんだっ」

「まあそういうことだから。あ、あと、おれ挨拶なんかしねーぞ、ってことでよろしく」

日比野の肩をぎゅっと掴むとにやりと笑う。

「 芸能人だかなんだかがいるんだろ?
そいつに頼めば?」

「あー木暮ありす……急遽総会のあとに講演頼んじゃって……それにここだけの話……」

小さな声で、「あまり講演上手じゃなかったもんなー」と呟く。

「そんなの、知るかよ。とにかくおれは挨拶なんかしねーから」

「わかったよ……」

「じゃあな」

早く行けとばかりに肩をばんばん叩かれて、日比野はすごすごと退散する。

ーー何だろう? 入江に叩かれた肩が妙に重い……それに妙な寒気が………

首を捻りながらその場を離れていった日比野の背中を見て、(だから近付くなって云ったのに)と、思わず心の中で合掌する渡辺であったーー。














※※※※※※※※※※※※※




とりあえず、まず『見せつけレベル1』です(^^)軽くジャブを。
もうちょい、見せつける為にだらだらと同窓会は続きます………^-^;
(こんなもんじゃ終わりませんぜ、お客さん)




関連記事
スポンサーサイト


Snow Blossom


<<20010513 ~10年目の同窓会 4 | ホームへ | 20010513 ~10年目の同窓会 2>>
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 01:41】 | # | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 05:43】 | # | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 08:34】 | # | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 09:44】 | # | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 15:04】 | # | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/24 17:13】 | # | [edit]
コメントありがとうございます♪

そうですねー相変わらずの三バカトリオ。おちょくってるのか援護してるんだか。同窓会には欠かせません(^w^)場が明るくなりますので♪
そうそう、琴子は原作でも、常に「なんで、あんなのが」って扱いされてます。めげないけど色々あったハズ。
直樹さんは琴子しか見えてないのに周りにはあまりにも冷たい態度とってるしねー。(のわりには見境なくキスしてるのでその辺りは原作に倣って行こうかと……^-^;)
徐々に見せつけレベルをステップアップしてきたいと思ってます(^^)大胆な宣言して、肩透かしにならないよう頑張ります♪

……ふっ日比野くん……可哀想な役回りでした……f(^_^)
【2015/05/25 20:35】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

そうです、この三バカトリオの存在は同窓会ネタには欠かせませんf(^_^)
おちょくりつつも、一応援護射撃は忘れない……少し的が外れても大丈夫(^^)v
渡辺くんやいつものメンバーが揃うだけで、つい楽しくて筆が進みます♪
そう、もう直樹さんは琴子しか見えてませんよー。なんといっても琴子ガードの為だけの同窓会参加ですからねーこの男!
そうそう、とりあえず当初の目的は完遂!日比野くん、ご愁傷さまです。
ふふ、そうですねーこれからですよ。なんだかんだいっても人目を憚らない、羞恥心が多少欠落したヒトですから(^w^)多分あれこれやらかしてくれるでしょう♪
もう少しお待ちくださいませね(^^)

【2015/05/25 20:51】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

そうなんです。当初の予定では、美智子さんの方がイヤな女なハズだったんだけど、何だかどんどん優梨子さん、ダーティさグレードアップしてきました。幼馴染みのちょっと複雑な関係性……までオリキャラ使って書く必要ないじゃん、一人で突っ込みつつ、果たしてうまく纏められるかどうか……(出しちゃった以上ガンバります^-^;)
そうですねー優梨子さんは……何かやらかしてくれちゃいそうな。でもすべてのエピはイリコト二人の絆の強さとラブラブさを『見せつける』ためのものなので♪それに向かって同窓会は続きます……(^^;

ほんと、直樹さん登場で、私もにやけながら楽しく書いてます♪ もっと早くご登場させておけば良かったかしら。皆様の反応も全然違う~(爆)
はーい、お待ちくださいねー(^^)v

【2015/05/25 21:13】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

はーい、やっとお待ちかねの入江くん登場です♪ もう、「見せつける」ためだけの同窓会ですから、ガンガン見せつけちゃう予定です(^w^)
あっちこっちで話が盛り上がり、進行の遅そうな同窓会ですが、しばらくお付き合い下さいね♪
【2015/05/25 21:54】 | ののの #- | [edit]
初めまして(^^)コメントありがとうございます♪

いえいえ、読み逃げ全然大丈夫ですよー♪
はははー自分で自分の首を絞めるようなコメントしちゃったんで、お客さん、なんとかがんばってどんどんいちゃこら見せつけちゃいますぜー(へへっ)
そうですよねー私も大好物です♪そして、同窓会ってそーゆー場面の宝庫のような(^^)
どんなもんで終わるのか……(ほら、私やっぱり首絞めてるな)そうですね。まさに、あまーいバカップルで締めて、アフターでエロエロ(?)かも……いや、えろ書けるんかい、あたし……(^^;
とりあえずもう少しだらだら続く同窓会、お楽しみ下さいませ(^^)





【2015/05/25 22:12】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

はい、タダ読みOKですよー♪ ほんとうに、皆様お待ちかねだったのですね♪ もう、返ってくる反応のこの差は~~と思わずふふふとにやけてしまいます。でも、書いてる方もやっぱり直樹さん登場でノリノリになりますね(^w^)
そうですねーウザ姉さん(笑)ちょっとキョーレツなお二人ですが、この二人とその他大勢の直樹狙いの方々の存在が、きっとイリコト二人のラブラブをよりいっそう際立たせることでしょう♪
……際立たせるよう、鋭意努力致します(^^;
はい、まだまだ……のつもりですよー(^^)v
どんどん見せつけちゃいます♪
しばしお待ちくださいませね(^^)

【2015/05/25 22:33】 | ののの #- | [edit]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する