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君のいる、午后の教室 4

2015.05.05(01:22) 131





「い……入江くん……?」

突然、何者かに生徒会室に引っ張り込まれて、部屋の片隅の壁際に押し付けられた。
嵐のような一瞬の出来事に、琴子の頭は状況を把握しきれずに茫然として、ただただ流されるままだ。
目の前にはずっと連絡を待ち焦がれていた愛しい顔がある。
ずっと会いたかったひと。

その綺麗な貌が鼻先まで迫っていた。

思わずうっとりと目を閉じそうになって………
ーーはたと気付く。

「ス、ストップ! 待って………」

唇が触れそうになった直前で、我に返った琴子は、がしっと直樹の唇を手で押さえてはねのける。

「なんだよ? 久しぶりに会ったのにつれねーな」

鷲掴みにされた唇を覆いながら、不満げに琴子の顎を長い指で捉える。

「そーよ! すっごい久しぶりね! まっさかこんなトコで会うなんて思いもよらなかったわよ」

精一杯強がって琴子は眼前の直樹を睨み付ける。

ほんの2ヶ月前に最後に会ったときと、少しも変わらないその端麗な容姿。
目の前に存在するその顔は、切れ長の瞳、長い睫毛、高い鼻筋、薄い唇ーーどれをとっても整って美しい。完全な形に完全な配置。初めて見たとき、世の中に芸能人以外でこんな綺麗な容貌が存在するんだと感動したことを思い出した。

そしてその人が自分とーーーあんなことやこんなことやそんなこと………////

「………何ゆでダコになってんの? 色々思い出しちゃった?」

にやっと笑う。そうそう、こんないたずらっ子の笑みをよく見せてくれたっけーーなんて。
でも。
目の前の彼は紛れもなく高校生の制服を着ている。

「……コスプレ……してる訳じゃないよね?」

「何? コスプレして高校に潜入? おれ、いったい何モンだよ?」

「そうよ! いったい何者なの?」

「斗南高校、2年A組、入江直樹」

「………誕生日はいつ?」

睨みつけながら、思わず訊いてしまう。

「11月12日」

「………じゃあ、まだ16……」

「そう。sixteen」

くらくらする。

「……どうして嘘ついたのよ!」

「嘘? ついた覚えなんてないけど。おまえが勝手におれのこと大学生と思い込んでただけで」

再び壁に手をついたままの状態で琴子に顔を近付ける。

「話、合わせてたでしょ! 違うならなんで否定しなかったのよ! 隠してたってことでしょ?」

琴子は顔を反らして必死に食い下がる。目を合わせるとその瞳に吸い込まれそうで怖い。

「だって……高校生って知ったらおまえどうしてた?」

どうしてた? どうしただろう?
5才も年下の男の子だと知っていたら……ちゃんとブレーキかけていられただろうか?

「それは………」

東京から遠く離れた清里でのこと。もしかしたら勢いに流されてしまっていたかもしれないけれど。
でも、自分が実習に行く先の高校生だと知っていたら、確実にーー。絶対にーー。

「それは、勿論……」

「勿論? 好きにならなかった?」

「それは……もう先に好きになっちゃってたし……でも、斗南の高校生って知ってたらとりあえず気持ちを押さえ込むことぐらいは……」

してたと思う。
ーーそう答える前に。

「……なんだ、やっぱり良かったじゃん。バラさなくて」

ふっと笑った顔は意地悪なものではなくて、ちょっとほっとしたような優しい笑顔……ああ、素敵……ーーそう思った瞬間、既に唇は塞がれていた。


「んんっ………」

啄むようなキスがだんだん食らいつくすような激しいものに変わる頃、ついうっかりと久しぶりのキスに酔いしれていた琴子は、侵入してきた舌の感触にはっと我にかえる。

「いてっ」

軽く舌を噛んでやったら、慌てて離れる直樹の顔を睨みつける。

「おまえ……!」

「いったいどーゆーつもりよ!」

とりあえず怒らなければ。
ドキドキしてるけれど。
心臓は爆発しそうなくらい激しく波打ってるけれど!
こいつはーー年下で、生徒なんだから!
琴子は壁に押し付けられて行く手を塞いでいる直樹の腕をくぐり抜けて、窓際の方へと逃げた。

「どーゆーつもりって……」

軽く口元を拭いながらにやりと笑いながら、自分の腕からすり抜けた琴子の腕を簡単に掴み、そして今度は机の上に押し倒しのし掛かる。

生徒会室は他の教室の半分ほどしかない狭い部屋だ。
会議用のためか、机はコの字型に配置されていた。

「こーゆーつもりに決まってるだろう?」

二つ分の机の上に押し倒された状態で、しっかり肩を押さえ込まれて身動きがとれない。
グレーのサマースーツに真っ白なブラウス。スカートは勿論膝までのタイトだ。スーツは量販店の三点セット物だが、2着を着回ししてるので、皺になったら困るなーと頭の片隅でそんなことを思う。
机の上は……背中も痛い。
ってゆーかこの状況は……何なの?

「こーゆーつもりって……有り得ない……でしょ? 早く退いてよ」

とにかく、この状況はマズイ! それくらいは琴子にだって分かる。
先生の威厳を持って睨み付けなければーーと、精一杯眼光鋭くしてみる。

「何、百面相してんの?」

ぷぷぷっと妙に楽しげに吹き出す直樹。

「早く退いてって云ってるでしょっ」

「……前はそんな命令口調で話しかけてきたことなんてなかったのに。年下って思うとそうなっちゃうんだ」

少し哀しげな表情を見せる直樹に、琴子も一瞬ぐっと言葉を失う。

「それは………」

そう言いかけて、はっと気づく。

「……もしかして年下って下に見られるのがイヤで隠してたの?」

「はん?」

哀しげな顔から一転不愉快そうな顔に変わる。

「年なんて関係ないじゃん? あんたはおれより馬鹿だし、とろいし」

「はあーー? 何よっそれ!」

「関係なく、おれのこと好きだったんだろ?」

あんなに毎日好きだ好きだと纏わりついてたクセにーー
唐突に真面目な顔して間近に迫る。

「それとも年下だとわかったらーー生徒だとわかったら好きなのやめるのか?」

「そ……それは…」

何と答えていいのかわからない。
年下だろうが生徒だろうが好きなものは好きだし止められないし。
かと云って……ここで……これはマズイでしょう!

「なんだ、やっぱ、好きなの止められないんだ。なら問題ない。安心しろ、ちゃんと鍵はかけた」

どうやら言葉にしてしまっていたらしく、直樹は嬉しそうに微笑むと琴子の首筋に唇を這わせた。
しかし琴子は触れた寸前に顔を背けて、直樹の身体を押し退けようとみじろぐ。

「か、鍵って! そーゆー問題じゃないでしょっ! ここ何処だと思ってるのよ!」

「生徒会室。大丈夫。この時間は誰も来ないよ。あ、おれ生徒会長だから。昼休み、たまにここで昼寝してんの。他の役員が来たことなんてないから安心していいぞ」

首筋からゆっくりと鎖骨の窪みに舌を這わせ、そして胸元に降りていく直樹の唇に、ぞくっとしながらも懸命に抗う。

「だからそーゆー問題じゃなくて! あなたとあたしは生徒と先生なの! ダメでしょう! 少なくとも学校じゃ、絶対!」

「あ、もしかして学校の外ならOK?」

にやっと笑う直樹の言葉に一瞬、えーといいのかなぁ?と迷ったが、いやいやいいわけないだろう、と自分で突っ込む。

「実習期間中は絶対ダメよ」

「ぷ。実習終わればいいってことか?」

「…………………」

まっすぐ見つめられて一瞬悩む琴子である。これが、2年後なら何の問題もないのだろうけれど。
年下っていうより、16才ってのがものすごく問題のような。確か……青少年保護なんちゃら条例……ってあったよね。

そういえばそんなドラマがあった。
愛し合ってしまった女教師と男子生徒。
二人は図書室で愛し合うけれど、男子生徒の親にバレて駆け落ちしてーーでも捕まってしまって、女教師は逮捕。
彼女は警察で屈辱的な尋問を受けて………

「なんだ。図書室でやりたかったんだ。じゃあそれは次回で」

直樹の指がブラウスの釦を器用にはずしていく。

「ち、ちがーうっ」

必死で直樹の胸を押し退けようとする琴子の腕を掴み、ぐっと机の上に押さえつける。

「暴れると釦が外せないんだけど……」

「外さなくていいからー!」

「都の条例なら気にしなくていい。おれの親は訴えたりしないから」

「だからそうじゃなくてぇ~~」

どうして頭がいいクセにこんなに言葉が通じないのだろう?
琴子は泣きたくなる。
通じてるのに敢えて知らんふりを決め込んでいるとは思いもよらない。

外された釦の狭間から少し垣間見える琴子の残念な胸の谷間に顔を埋められ、きつく吸われて「やぁ……ん」と思わず艶めいた声を出してしまう。
もう片方の手がタイトスカートの中に差し込まれ太股を撫で上げた。

「タイトスカート、きっついなー。フレアスカートにしなよ。先週事前説明会に着てたようなヤツ。スッ転ぶとパンツ丸見えだけど、脱がせやすそうだ」

「せ、先週って……?」

「くまぱんつ穿いてた日。で、今日は何パン? 安易に転んでおれ以外のヤツに見せるなよ」

「ええーっ見てたのぉ!」

真っ赤になった琴子が馬鹿力で起き上がろうとして、がんっと直樹の顎に頭を激突させてしまった。

「いてっ!」

「あ、ごめ……」

謝ろうとした寸前に再び机に縫い付けられ、激しく唇を貪りつかれる。
手はブラウスの上から琴子のこじんまりとした胸の上をさまよっていた。
ぎゅっと強く揉みしだかれて「あん」とのけぞる琴子の首に食らいつく。
突っ張って抵抗しようとしている力が、少しずつ弱まって弛緩していくのが分かる。直樹はくすっと笑ってからタイトスカートを無理矢理たくしあげようと裾をまくった。




「あれ? 閉まってる? どうして?」

入口の扉がカタカタと揺れ、磨りガラスの向こうの人影が呟いた。

「おかしいわね。鍵はなかったと思うんだけど」

人影がぶつぶつ言いながら去っていく。

「え?」

琴子の顔が一瞬にして青ざめた。

「ちっ。松本か………」

直樹は舌打ちして、琴子の上から退く。
琴子の手を掴むとぐいっと引っ張りあげると「すぐに服を直せ。職員室のキーボックスを確認したら多分あいつ、また戻ってくる」そういって自分が外したブラウスの釦をさっさと器用に嵌めてやる。早業である。

「な、なに……?」

「……あいつ、副会長なんだ。ったく、今日に限ってなんで……」

忌々しげに舌打ちする直樹を横目に、言われるがまま乱れた衣服を整えると、琴子は直樹に腕を捕まれて、鍵を開けた扉から追い出すように外に出された。
その間際に耳元で「続きは放課後に」と囁かれて、また体温が顔を中心に上昇する。


あれよあれよという間の出来事に、琴子は何が何だかわからないまま、隣の職員トイレに駆け込む。

トイレから覗くと、職員室から出てきた女子生徒が再び生徒会室の扉の前に立ち止まった処だった。

生徒会室の扉がガラッと開く。

「え……? やだ、入江くん居たの?」

「ああ。ちょっと先週の会議の資料置いてきたの思い出してね」

「そうなの? 今、内側から鍵をかけてた?」

「いや? 何で?」

「私も生徒会室に用事があって、職員室に鍵を取りに行ったら無いじゃない。だから誰か先客がいるのかと思ったら扉が開かないから……私が鍵を見間違えたのかと、もう一度職員室に確認しにいったのよ」

「鍵なんてかけてないよ。古くて建て付け悪くて開けヅラくなってただけじゃない?」

「……そうかしら?」

しれっと平然と嘘をついて、彼女を部屋に招き入れていた。

「……ウソつき」

彼は大嘘つきだ。
簡単に嘘をつく。
ーー全部嘘だったのだろうか。あの清里での出来事すべて。
囁いた睦言も、なにもかも。

綺麗な女の子だな……と、トイレの鏡の前で乱れた髪を結い直しながら琴子はぼんやり思う。
確か同じA組の女子だ。彼の隣の席に座っていた娘。授業でも指されたら的確な答えを堂々と答えていた。なんて自信に満ち溢れてるのだろう。自信の欠片もないまま教壇に立とうとしていた自分が恥ずかしくなるくらいだ。才色兼備ってあんな娘のことを云うのだろう……

クラスメイトにあんなにお似合いのガールフレンドがいるのに。
どうして、あたしなんか……。

さっき彼が触れた唇や首筋が未だ痺れたように熱い。

朝、驚愕の再会を果たした時からどう対応すべきか考えあぐねていた。
話をして確認したいという想い。
あるいは2週間、何事もなかったように素知らぬ振りをして、やり過ごしてしまった方がいいのか………そんなことも考えた。

まさかこんな風に彼の方から来るなんて思いもしなかった。

どうしよう。
どうしたらいいのだろう。

琴子は午後の授業の予鈴が鳴るまで、赤くなったり青くなったりしながら、思考能力のあまり高くない頭をフル回転させて悩み続けていた。








※※※※※※※※※※※※※※




野獣寸止め(笑)


そして寸止めの挙げ句、次は別の話をアップするかもです……(^^;このお話の更新を待っているとおっしゃっていただいた奇特な読者の皆様(&入江くん)。ごめんねーと、やはり先に謝っておこうf(^_^)




GW……残すところあと1日……私も旦那も6日から仕事なので。子供らはもう1日ありますが。
予想通りあっという間でした。
何って……してないなー(-.-)
掃除して、ぷちDIYして、病院行って、買い物行って、ランチして。あ、近場で潮干狩り行きました(^^)
家から25キロ以上の移動はしてないかも。
遠出の予定も色々あって取り止めに。旦那、めっちゃ綿密に計画練ってたのにな……


とにかく! 外食三昧だったので体重が恐ろしいですっ……(>_<)



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コメント
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【2015/05/05 07:01】 | # | [edit]
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【2015/05/05 08:05】 | # | [edit]
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【2015/05/05 08:46】 | # | [edit]
入江君!
なにしてんの!
いくら、琴子ちゃんとあんなことやこんなことしてたても!
学校よ!いくら貴方が生徒会会長でも執行部でも、学校でイタはダメよ!
見つかっても平気じゃないよ!
琴子ちゃんが困るのよ!

琴子ちゃんやっと逢えた貴女の想い人は....
ある意味素行不良.... .... なんですが?
あ~、もし紀子ママが、知ったら!
【2015/05/06 18:23】 | りょうママ #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

はは、まさかの更新です(^^)遠出しなかったので、いつものように夜はちまちま書いてます。GW中は、夜更かしできるのでついつい夜遅くまでやってましたが……平常運転に戻った今の方が中々書く時間がとれなかったりしてます(T.T)

はい、琴子ちゃんすっかり遊ばれてますねー。
でもって、ここの琴子ちゃんは割と常識的なんですね。いちおーお姉さん(?)原作の方がハチャメチャですよね。(不法侵入とかしてるしねぇ^-^;)入江くんが野獣の分、ここで琴子ちゃんが大人にならないと……ですが、やっぱり琴子なんで(笑)いつまで踏み止まることが出来ることやらf(^_^)
そうですねー琴子一直線の入江くんが書きたくって♪
ふふふ、松本さんの女の勘は……侮れないですね(^w^)
【2015/05/06 23:13】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

はい、おあずけです(^w^)とりあえずお昼休みは挨拶程度ですねー。本番は放課後!?
この世界では琴子の方が良識ありますが……さていつまで流されずに行けることやら。なんたって琴子なんでf(^_^)
まあ松本さんのお邪魔虫はお約束な感じで。他にも邪魔しそうな先生方も揃ってるんで、登場させないと……(一話だけで忘れさられてたりして)
はい、次は同窓会のつもりなんですが……まだ10行ほどしか書いてなーい(>_<)………お待ちくださいね^-^;
マロンさんもGWお疲れさまでした~~(^.^)大混雑……それも思い出ってことで!
【2015/05/06 23:29】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

そうです(ニヤリ)あのドラマです♪二年くらい前に再放送してて、うわータッキー若いっ綺麗っとちょっと萌えてました(笑)
図書館で一夜……過ごせるかな~?
ドキドキしてもらって嬉しいです(^^)

GWも、ようやく終わりましたねー。うちは娘が文化部で全然部活なかったので、みんな家にゴロゴロです。暇だからすぐにランチ行ったり買い物したり……何処にもいかなくても余計なお金使っちゃいますよね~f(^_^)

【2015/05/06 23:43】 | ののの #- | [edit]
コメントありがとうございます♪

はい、もうこの入江くんはかなりがっついてますね。琴子一直線なんで。多分彼はずーっとこの時を待っていたのでしょう。
そうなんです。見つかったときマズイのは琴子ちゃんの方。それゆえ今のところ琴子ちゃんもブレーキかかってますが……さて、素行不良の入江くんに立ち向かえるかなー?
もし、紀子ママが知ったら……絶賛応援しそう……(^w^)
【2015/05/06 23:53】 | ののの #- | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/05/08 23:01】 | # | [edit]
コメントありがとうございます♪

そうなんです。生徒会長なんです。二年生の前期で生徒会長になれるのか?と自分で突っ込んだものの、入江くんなら選挙でダントツ3年抜いてトップ当選でしょう。でも、きっと本人まるでやる気なし(笑)そして今回琴子が教生としてやってきて、きっと鍵を自由にできる特権を有り難く思っていることでしょう(^w^)
松本姉はちょこちょこ邪魔してくれるでしょうね^-^;
ふふふ、私えすえむ診断で真性どMなのに、つい琴子ちゃんを苛める話ばかり書いてます……
ええ、「イケナイ話」も「アブナイ話」も大好きなんで、一直線にそっちに向かうと思います♪ しばしお待ちくださいね(^^)
【2015/05/10 01:05】 | ののの #- | [edit]
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