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個別記事の管理2018-04-21 (Sat)
あとがきすら遅くなってしまいました。いやーちょっとオマケ書いてたもんでね~~へへっ



さて。
直樹さんのbirthdayに合わせて始めたお話で、結婚記念日あたりの二週間くらいの物語の予定だったので、イタキス祭り中に書き終えられたらいいなーと思いつつ、いや、そりゃ、無理さとわかってましたよ。イタキス月間なんてもう遥か過去ですねぇ。(というか、もう五ヶ月後には今年のイタキス月間がやってくる。はやっ笑)
正月も節分もバレンタインも雛祭りも通りすぎ、桜のシーズンも終え、案の定半年近くかかってしまいました。結構昔からあたためてたネタでサクサク行けると思ったんだけどなー………

はじめはかをる子さんの存在抜きで考えてた話だったので、とりあえず彼女がいるとさっさと解決しそうで、暫く撤退してもらってましたf(^_^;かをる子さん、ごめんよ。でも、やっぱりうちの神戸にかをる子さんは必須でしたわー。〆のかをる子!(笑)
コメントいただいた皆さまにもそう思っていただけたようで、オリキャラの割には人気者です(^-^)v素直にうれしい♪(リコメ、滞ってますが、必ず返信いたしますので!しばしお待ちを~~)


琴子の声が出ない原因は、当初はよくある心因性の失声症をイメージしていたけれど、二次ではよくあるし、どうしても二番煎じになってしまいそうで、色々模索したあげくの声帯結節ですが、いかんせんポリープと一緒で職業病的な病なので、若干無理はあるなと思いつつ、強行しちゃいました。そのうえあまり自分もよく知らないので相変わらずのネット頼みです。そして調べると大抵なってる人は歌手の方ですね~~f(^_^;一般人の方の闘病ブログはとうとう見つけられなかったけど、やっぱり強行ですf(^_^;まあ、フィクションだから許してね、といった感じでございます。(身近で結節になったかたがいて、全然違うよーと思った方いましたらすみません。結節で検索してここに来た方はすぐに撤収しましょう!)

今回色々明らかになったかをる子さんの事情ですが、かをる子さんの実家を設定していたかどうか記憶になく、お友達の面々に確認してみるという体たらく……f(^_^;(読者頼みのブログです)
みんなも記憶になかったので、多分設定してなかったのでしょう。なんとなく北陸か北関東のあたりだったような気もしたのですが、お友達たちが埼玉あたり?といったのでそう決定しました。(安直笑)多分埼玉の上尾市あたりかと(昔私がファンだった同人作家さんが埼玉県上尾市だったんですよ。かをる子さんと同じ発想やな~~しかし昔の同人誌は普通に住所と本名を奥付けに記してましたね)。

しっかし神戸では随分あまあまになってしまった入江くんですが、斗南にくるとまたツンデレに戻るんだもんなーf(^_^;



さてさて、次に何を書こうかは模索中ですが……(書きたいものはまだまだある。時間がないだけ……(-_-))
未完のアレとか、ずっと書きたかったアレとか、唐突にネタ思いついたアレとかね……

(なんか、夏休みのあとがきにも同じようなこと書いてますがf(^_^;進歩ないな……)

すぐに書きはじめてアップするか、GWあたりまでこっそり書きためるか……何にしろ相変わらずのカメ子なので、どうなるか未定ですがf(^_^;とりあえずしつこく続けると思いますので、お暇なおりにでも訪問くださるとうれしいです。


ではでは、いずれそのうちに!



そして、オマケの小話は上の赤い拍手ボタンをポチッとな~~
琴子、神戸再襲撃の夜です(^w^)えろを書くつもりが玉砕しました。(でも一応R15くらいかな? )すっかりギャグなオチになってます( °∇^)]

タイトルは『声を抑えて………』です(爆)






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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
* Comment : (9) * Trackback : (-) |

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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ふふ、琴子のことであたふたする直樹さん、ほんと好物ですよねー(私も♪)
心因性の失声症も考えてはいたのですけど、不倫の疑惑だけで声を失うほど琴子ちゃんは柔じゃないだろうなーという気もして……というわけで喉のトラブルを琴子の誕生日の頃から伏線として仕込んで置きました……f(^_^;
でも、琴子の声が聴けないって、直樹さんにとって拷問ですよねー。結局、神戸を選んだ選択ミスを思いしるという……(^w^)

オマケの感想もありがとうございました。
ふふ、タイトルはこれしかないと……笑
普段、声を気にしないでいい環境(自宅は完璧な防音設備だろうし)なので、思う存分絶叫していたことだろうと〜(防音の効いていなかった時の隣室で寝られなかったかをる子さん、体感済み笑)勝手に想像してます。やっぱり結節の原因はそれしか……(爆)

Re.さち子ママ様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

オマケも堪能していただいたようでよかったです(^w^)
はーい、これからもラブラブなイリコト、書いて行きたいと思ってます♪

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

完璧な充電で、おそらく執刀医よりいい働きをきたことでしょう(^^)
私もボイトレの呼吸法とかよくわきってませんが……確かに出産の時にうまく使えるかもですね〜〜(^-^)v

管理人のみ閲覧できます * by -

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
お返事遅くなって申し訳ないです。

多分お忙しいのだろうなーと思っておりました。大丈夫でしょうか? 体調もお悪かったようなので、ご無理されないでくださいね。
かをる子さん、好きといっていただいて嬉しいです。
彼女の今後もどうしようかなと思いつつ、オタクの道を行くのかイリコトに感化され、ちゃんと恋愛するのか、まだ定まってませんが、いつか決めてあげたいなーと思ってます。

直樹さん反省させるにはいっつも琴子ちゃんに不憫な想いをさせてしまってますが、今回は予定通りヒッチハイクさせることが出来て満足な私です笑

はい、いつか直樹さんが神戸を去る日のかをる子さん目線書きたいと思ってます。救命メンバーたちもまじえてねー。(うちのオリキャラたち気に入っていただけて嬉しいです!)気長にお待ちくださいませ(^^)

イタキス大好きです * by ゆきえ
こんばんは!
ここ1週間で初めてイタズラなkissを見て
それから毎日エンリピしてます♪
このブログに出会うことが出来て幸せです♡
琴子ちゃんと直樹くん関係が理想的に表現されてて大好きです!
素敵な作品をありがとうございます!
ところで……作中に出てきました
琴子ちゃんが火傷を負う話と慰安旅行で男風呂に入っちゃうお話って
ブロクの作品ではないですか……?
ブロクを何回か読み直させて頂きましたが見つからず……(><)
もし良ければ教えていただきたいです!
そして、まだ作品化されていなければ
是非!図々しいながらもリクエストさせて頂きたいです\(^o^)/
とても引き寄せられる文章なので
ののの様の文章で是非読ませていただけたら嬉しいです♡
突然で申し訳ありません。。
これからも素敵な作品入江夫婦を待ってます!
ありがとうございました!

Re.ゆきえ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

初めまして。そんなにエンリピしてくださったのですね。うちのブログに出会えて幸せといっていただけて嬉しいです。
火傷エピと慰安旅行エピですか? 回想とかでは書いたかもしれませんが(←記憶力低下により、自分の書いたものも片端から忘れてます( °∇^)])メインでは書いてないかな〜〜? 原作の慰安旅行あたりは二次では書きつくされてる感はあるので、書くはなら別の年代かな〜〜? って、あまり期待しないで待っててくださいませ。

でも、嬉しいお言葉の数々、お話を気にいってもらえたようで、そしてこのようにコメントくださって本当にうれしいです。
はーい、これからも地味に頑張って書いていきますね!

Re.ゆう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました!

過去作にコメントうれしいです。
はい、これからもラブラブな入江夫妻を描いていきますね(^^)d

個別記事の管理2018-04-15 (Sun)


すぐに更新できると思いきや、結局一週間かかりました。
ようやく最終話です!








※※※※※※※※※※※※※※※





11月27日 P.m.2:05


わーホントにもう着いちゃったよ……

琴子は神戸医大付属病院のエレベーターの中で、ぼんやりと階数を示す表示がひとつひとつ上がっていくのを見つめながら、初めてここを訪れた時の緊張と高揚を思い出していた。

ほんの数時間前には斗南付属病院の診察室にいたのに、今は直樹のいる神戸にいる。本当にひとっ飛びで着いてしまった。

な、なんか緊張するな~~


直樹の誕生日にサプライズでここを訪れて、結局会わずに帰ってしまったのは二週間前のことだ。なんだかあっという間のような、物凄く遠い昔のような……この二週間の間にあまりに色々なことが有りすぎて、時間の感覚がおかしくなっている。


……入江くん……明日は難しいオペで、今日はその準備でほぼ医局にいるって云ってたよね………医局に行けば会えるのかなぁ?


昨夜は『明日、いよいよ術後一週間! 先生からOKもらえたら話せるようになるよー。いつ電話したらいいかなぁ?』というファックスを送ったら、珍しくすぐ電話がかかってきた。
紀子から替わってもらい、直樹の声を久しぶりに聴いた。聴くだけで話せない、一方通行の電話であったが直樹が電話をしてくれただけで幸せな気分になる。
ただ淡々と明日の予定を教えてくれただけではあるけれど、わざわざそんな電話をくれるなんて極めて稀なことなので、それだけでも嬉しくて笑みがこぼれ落ちてしまう。

『ーー手術前日はしっかり休養とらないとマズいから、なるべく明日は早めに帰って、おれから電話するよ。もっともおれは単なる助手だから、なんだかんだ緊急事態が起きて駆り出される可能性は限りなく高いけどな。もし夜10時過ぎても電話なかったら、留守電に声をいれといてくれよな』

そんな直樹のリクエストに、(ああ、入江くん、ほんとにあたしの声を早く聴きたいのね~~待ってて、待ってて、待っててね~~!!)とひそかに最速で声を届けたいという野望が生まれたのであった。

そして、その野望を叶えるべく、今琴子は直樹に刻々と近づきつつあるーー。









「じゃあ、入江先生、明日はたのんだよ」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

直樹は部屋から出ていく執刀医の教授に頭を下げる。小児心臓外科医の中でも年間オペ数は院内随一だ。今回は循環器外科との合同チームで、明日の手術の為の入念な打ち合わせを行っていた。
症例数の少ない難治性の心臓病を抱える乳児のオペはいよいよ明日行われる。
まだ経験の浅い研修医の直樹がチームに選ばれ、第1助手として前立ちを行うのだ。簡単なオペなら早々に前立ちを任され、その手際の良さはすでに伝説になりつつある直樹であったが、新生児の先天性心疾患のオペは初めてであった。ずっとあらゆる事態を想定してシミュレーションを重ねてきた。まだ胡桃の大きさくらいの小さな心臓にメスをいれるのだ。医師になり初めて『生きている』患者の皮膚にメスを入れたあの日以上の緊張を強いられるだろう。
手術前に少し患児の容態が不安定になったが、とりあえず持ち直し、明日は漸く手術の運びとなる。



ーーもうこんな時間か……

直樹は時計を見て既に午後となっていたことに気がついた。
同じチームの器械だしのオペ室のナースに昼食に誘われたが断って(優秀だが少々馴れ馴れしく閉口気味)今まで執刀医と明日のオペプランについて議論を交わしていたのだ。

ーー琴子は……どうだったろうか?

仕事に向き合っている時はすっかり忘れていたことを、時計をみた瞬間に思い出した。
琴子の診察はもう終わっているだろう。朝一番で診療予約してあるとファックスに書いてあった。
おそらく沈黙期間が終わり、もう発声の許可が出ている筈だ。

今、家にいるだろうか?
電話をしてみようかーー

直樹がそう思って医局の受話器に手を伸ばしかけた時である。


がしゃがしゃっがしゃーーん

「きゃーっ」

「ご、ごめんなさい! だ、大丈夫ですか?」


(…………!)

何か倒れる凄まじい音がして、その場にいたスタッフ全員が何事かと腰を浮かせて音のした方を振り返る。

「今の声、城所さんじゃない? 騒がしいわね。なにかやらかしたのかしら?」

「あれ? でも彼女、もう実習、眼科に変わった筈じゃーー」

(違うーー城所じゃない。あの声はーー)

直樹は反射的に立ち上がり、医局から飛び出して、音のした方へと駆け出していった。

「こちらこそごめんなさいっ だめでしょ! たぁくん。廊下を走っちゃ。ほらお姉さんと看護婦さんにごめんなさいして!」

そこには半べその幼い少年とその母親らしき女性、そしてひっくり返ったナーシングカート、散らばったカルテや医療道具を拾い集める看護婦とーー琴子がいた。
どうやら走って突進してきた少年を避けた琴子がナーシングカートとぶつかり倒してしまったようだ。

「琴子!」

直樹が駆け寄り、倒れたカートを起こした。

「え? 入江くん……!」

「まあ、入江先生!」

床に這いつくばっていた琴子と看護婦が共に驚きの声をあげた。

「………ったく、おまえは何してんだ……」

「へへへ……しまった。入江くんに聴かせる第一声決めてたのになー」

ぺろっと舌を出しながら、琴子が立ち上がり、母親に叱られて半べその少年に声をかけた。

「君も大丈夫? 元気なのはいいけど、もう病院の中、走っちゃだめだよ」

「うん、ごめんなさい……明日退院できるってきいて嬉しくって」

「たあくん、がんばったもんね」

顔見知りらしい看護婦も少年の頭を優しく撫でた。

少年と母親は、琴子とナースに何度も謝って、母親に連れられて病室に入っていった。

「入江先生の奧さまなんですねぇ。ほんと、城所さんと声、似てますね。はじめ彼女が戻ってきたかと思いましたよ」

ふふふ、と笑ってナーシングカートを点検しながらナースが話しかける。直樹もよく知っている小児外科病棟のナースであった。

「よく聴くと全然違うんですけどね」

「あら、そうですかぁ? ま、お顔は全然似てませんよね」

顔といいつつ、胸をちらりと見て笑ったのは気のせいかしらと、琴子は軽く口元をひきつらせた。

「………ったく。留守電に声を入れときゃいいのに。なんでわざわざ来たんだよ……」

ナースが去ってから、直樹は琴子の頭にぽんと手を置いて、呆れ返って呟いた。

「へへ。だって電話の声ってちょっと違うでしょ? やっぱり生声届けたくって~~」

「それにしたって……」

まったく予想外の琴子の行動に、呆れる以上に胸に熱いものが込み上げてくる。しかし言葉にすると出てくるのはいつもの憎まれ口になりそうで、すんでのところで留めることに成功した。

「……迷惑だった? ……あ、ごめん、そうだよね。仕事中なのに……。明日大変なオペがあるんだよね? そのためにずっと忙しかったんだもんね。あ、いいの、いいの。とりあえず、ちゃんと声が出るようになったこと伝えられたらすぐに帰るつもりだったから! ってことで! じゃ、帰るね! 入江くん、明日のオペ、頑張ってねーー! あたし東京からずっと応援してるから!」

琴子は一気にまくしたて、手を振るとそのままくるりと踵を返して立ち去ろうとする。

「おい、まてよ!」

直樹は琴子の肩を掴んで自分の方に振り向かせた。
顔から零れ落ちそうな大きな瞳が少し赤く潤んで、そしてさらに大きく見開いた。

「入江くん……?」

「ったく。そんなに一気にわーっと話すの、喉に良くないだろうが。ちゃんと発声トレーニング受けたのか? それに、まだ、肝心な言葉、聴いてないんだけど……?」

振り向かせた身体をそのまま抱き寄せ、頬に手をかけその指でやさしく輪郭をなぞる。そして囁くように琴子の耳元にリクエストをした。

「入江くん……入江くん……大好き! 大好きだよ~~!!」

そう言いながら、直樹の腰に手を巻き付けてぎゅっとしがみつく。

「知ってる。……知ってるけど……もういっぺん……」

しがみついていないと腰砕けになりそうな直樹の低音ボイス。耳元に優しく振動する。

「……入江くん……だいすき!」

力いっぱい叫ぶ琴子を、直樹はそのままきつく抱きしめた。
ここは医局前の廊下で、いつの間にかギャラリーが遠巻きにこの二人を見つめていたけれど、そんなことはどうでもよかった。
今はただ 、聴覚だけでなく、視覚、触覚ーー全ての感覚で琴子を感じていたかったのだったーー。


















* * *






11月27日 P.m9:10


「やっと帰って来た……」

あたしは懐かしいマンションの前に漸く降り立って、ひとつため息をついた。
長かった怒濤の数週間。
一時はここを引き払わなきゃならないかしらと真剣に思ったわよ。
さよなら神戸。さよならオタク生活。さよなら同人誌。さよなら可愛いフィギュアたち。
頑なに関西弁に染まらずに生きてきたけど(なんちゃって関西弁、と揶揄されるのがイヤでねー)、10年近く暮らしてるこの街はもうすでに第2の故郷のようなもの。
何故、大学、神戸にしたかって?(と、質問があったから答えるわね)それはね、当時大ファンだったとあるサークルの主催の作家さんがその大学にいたからよ! そしてあたしの行きたかった学部もあったからなのね(ちなみにメディア芸術学部。就活の役には立たない学部だったわね……全く学んだこととは無縁の病院事務員)。そして、同じ大学のデザインコースで、そのサークルで売り子してたB子との運命的な出会いをして、そのまま神戸に住み着いて同人活動してきたというーーそんな神戸での(オタクな)日々を走馬灯のように反芻しながら、趣味に生きたあたしの青春に別れを告げる覚悟をしてたのよね。

でも兄夫婦の協力のお陰でなんとかあたしは神戸に戻れる見通しがついたのよ。
とにもかくにも母は斗南大病院に転院ができ、バイパス手術の日取りも決まった。
まだ何度か東京に戻らなければならないけど、とりあえず手術までは兄と義姉に任せて、今日、漸く神戸に帰ることができたのだ。

久しぶりのマンション。
あたしは自分の家の扉を開ける前にちらりと隣のドアを見つめる。
玄関の小窓から、かすかな灯り。あら、入江先生いるのかしら……


斗南大学の学食で謎な情報を耳にして以来、すごく琴子さんのことが気になってたものの、やはり転院して落ち着くまで東京と埼玉の実家を行ったりきたりしていて、なかなか連絡とることもできなかった。
明日、病院に行って入江先生に問い質さなければーーと思っていたけど、ご在宅なら今から訪問しちゃおうかしら? 埼玉土産の草加煎餅持って……九時過ぎだからまだ大丈夫よねーーーなんて、思いながら、玄関の鍵を探そうとごそごそとしていたらーー

がちゃっと唐突に隣の扉が開き。

「入江くん! 戻ってきたのーー?」

「ええっ?」

「わーかをる子さん!?」

「琴子さん!?」

「「大丈夫なのっ!?」」

あたしたちは同時に叫びーー
そしてがしっと抱き合った。






結局、その後、あたしは隣人の部屋に転がり込み、お互いの数週間の怒濤の日々について語り合った。
って、かなり琴子さんの話はぶっ飛びまくって何度か質問を繰り返さないと要領を得なかったけど。
けれど行きつ戻りつしつつも概ねのことは理解できて、やっと状況が把握できた。

あららー入江先生の不倫騒動にそんな顛末が。ふーん、その実習生、琴子さんと声がそっくりだったのねー。会ったことないから知らなかった。
そのうえ、琴子さんが声帯結節で声を出せなくなってたなんて。不思議な因果ね。今の琴子さんの声はいつもの少し高めの可愛らしい少女のような声で、そんな山姥のような嗄れ声だったなんて想像もできない。
「多分『ボヘミアン』を良い感じで歌えたかも……」
そう振り返る琴子さん。ちょっと想像できて、思わず笑ってしまう。でもきっと病気になった時はしんどかったんだろうなぁ。

「「はぁぁーほんっと、大変だったわね~~~」」

そして、もう一度がっしり抱きあい、お互いを慰めあって労りあった。


「で、入江先生は?」

肝心の部屋の主はお留守のようだ。

「えっとね。今日は定時で上がれたから、一緒に帰って来て、ごはん食べに行ってね……」

お部屋に戻ってから、二人で久しぶりにまったりして……
明日の手術のためにしっかり充電できそう、っていってたのに、一時間くらい前に病院から呼び出しがあって……

少し残念そうに琴子さんが呟く。一瞬、ぽおっと頬を染めたのは何を思い出したのかしら?
あたしは琴子さんのうなじに紅い花が散っているのを目敏く見つけていた。
外食の後、おうちに帰ってデザートですか? ふっ……しっかり食べられたわね。

おい、大事なオペ前は自重しろよ! (……って天才には関係ない突っ込みかしら)

「琴子さんはいつまでこっちに?」

「ほんとは今日は、入江くんに会ったらすぐに東京に戻るつもりではあったのよ。でも、明日は大学、午後からしか授業ないって話したら、泊まってけば?って云ってくれて。明日の朝の新幹線で余裕で間に合うし」

泊まってけば?って云うあたり、だいぶ素直になったわね。
この時期それどころじゃないだろうって嫌味っぽく云いそうなんだけど……

「今夜は明日のために多分呼び出しはないだろうって言ってたのになー。せっかく甘い雰囲気になって……」

と、言いかけてあわあわと口を抑える。
あら、未遂だったのね。
キスマークつけただけで呼び出しかーーどんまいっ入江先生!

「結局もう今夜は帰ってこないのかなぁ? 明日は難しいオペのある日なのに……大丈夫かなぁ」

何度も時計の針を見つめてはため息をつく琴子さん。
せっかくお泊まりすることになったのに、残念ね。夏に来たときもそんなパターンばっかりだったもんね。

「でも。それがお医者さんの仕事なんだものね。たくさんの患者さんが入江くんを必要としているんだもの。妻として支えないと!」と、健気にガッツポーズを取る琴子さん。

うん、まだ研修医だけどね。心の中で突っ込む。でも確かに2年後には多くの患者さんが入江先生を必要とするようになってることだろう。

ーーでも、よかった………。
幸せそうな琴子さん。
どうやらかなり辛い数週間を過ごしたようなのに、(傍にいてあげられなくてごめん! あたしがいたらそんな誤解さっさと解いてあげれたのに!)そんな翳りは微塵も感じられない。
ま、入江先生にキスされたら一発でそれまでの不安なんて簡単に消えちゃうんだよね。

「それにねー見て見て、かをる子さん!
入江くんってばねー」

そういって琴子さんは寝室の扉をそーっと開ける。
ええっと!
夫婦の寝室そんなに簡単に見せていいのかなぁ?

あらまあ。ベッドの枕元には琴子さんの写真が飾られていた。
へえー多分夏休みの時の写真だね~~うん、意外だよ。入江先生が枕元に妻の写真なんて(えーと、まさかオカズ……? あ、ごめん、発想えろくて)……いやー病院中に広めてやりたーーい(でも瞳で殺されそうだからやめとく)!!
よかったわねー、琴子さん。

「なんだかんだいって入江くん、あたしにメロメロなのよね~~」

ふっふっふっと不敵な笑みを浮かべ自慢気に語る琴子さん。
知ってるけどね。めっちゃ知ってますけどね!
(ただこの奥さん、すぐに自信なくすんだもんなー)

でも、あたしはその寝乱れた感じのベッドが気になって……いかにもさっきまでここで……って感じの。(未遂のわりには……結構惜しいとこまでいった感じ?)
あのー琴子さん………独り身にはちょいと刺激的なんですけど……。


結局ーーその後。夜中11時前くらいまで琴子さんと長々とお喋りしていたら、もう今夜は戻らないかと半分諦めてた入江先生が帰宅してきた。

「入江くん、おかえりなさーい。帰って来れたんだね! よかった!」

ウサギのようにぴょんぴょん跳ねて入江先生に飛びつく。

「ああ。明日のオペに備えてさっさと帰ってちゃんと休めと言われた。人を呼びつけといて……」

「大丈夫だったの?」

「とりあえずヤマは越したかな。おれの担当じゃなかったんだが、当直の医者が、急変対応で手が離せなかったせいで、すぐに駆けつけられるおれが呼び出されたんだ。病院に近すぎるのも考えもんだな」

「入江くんが病院の近くに住んでたからその患者さんは無事だったんだよ。患者さんにとってはチョーラッキーだよ。よかったよねー!!」

そういって琴子さんは誰より嬉しそうに彼を見上げてそう云った。

「だな……」

そういって優しく微笑むと入江先生は琴子さんに顔を近づけーー

こほんっ

思わず咳払いしてしまうわよ、お二人さん。

「森村さん!?」

おい! あたしのこと、目に入ってなかったんかーい!

「いつ神戸に? 大丈夫なんですか? ご家族はーー」

「はい、まあなんとか。その辺はゆっくり琴子さんに聞いてくださいな。あたしも色々入江先生からも訊きたいことあるけど、それはまた後日に」

あたしはそういってから「じゃ、琴子さん、またね。では邪魔モノは退散しまーす。あ、入江先生。もう遅いですからね、オペに差し支えない程度に程々に~~」と手を振ってお隣から速やかに辞去したのだった。






さて、その夜。久々の自分の城のベッドで眠ったあたしは、隣室の気配を感じることもなくあっさり爆睡してしまった。

そして翌朝。
少し寝坊してしまって慌ててバタバタと身支度をして玄関を飛び出した。久しぶりのお仕事に遅刻なんて最悪だわ! ただでさえ月末で、あたしがいないことで事務局内は相当混乱していることだろう。

玄関を出たら、丁度隣の扉から出てきた琴子さんと会った。
今から東京に帰るらしい。
おおーお肌が艶っツヤだね。
しっかり充電しましたって感じで……

「入江先生は?」

「今朝はもうとっくに。オペの準備あるからって」

あたしが休みになる前から話題になってた例のオペね。
かなり稀有な症例で日本中の医師会が注目してオペもライヴで全国の病院に中継するとか。
そんなオペに一年目の研修医が第一助手が入るなんて、通常なら考えられないことだ。
いやーそんな大事なオペの前日にえっちしちゃっていいのかなー。
ほら、プロ野球選手なんて試合前日はセックス禁止っていうじゃない? 禁欲は体力温存と集中力を高めるって。
………って、あの入江先生にそんな一般概念は当てはまらないか~~
逆に充電できてエネルギーに満ち溢れてるって感じかしら?
まあ、無理はさせてないみたいね。琴子さんの腰も普通のようだし。(夏休みに腰砕けでバンビちゃんな琴子さんを何度か目撃)
声も……昨日と変わらずね。特に掠れもなく。
そりゃ、さすがに声は抑えさせるわよねー(笑)


「なんとか朝御飯も無事作れて、食べてもらえたし! 入江くん、オペも無事成功するといいなぁ……」

あたしの朝っぱらからの邪な想像など思いもよらないだろう琴子さんは、病院の方を向いて祈るように手を合わせる。

「じゃあ、そろそろ東京に戻るね」

「そっかぁ。あたしもまた来週東京に行くけどね」

「ああ、お母さんの手術? もし東京に来たら是非連絡してね!」

「うん。都合がつけばね」

とはいいつつ、色んなことに忙殺されそうで絶対に、とは云えないけれど。

「琴子さんは次に神戸に来るのはクリスマス?」

そう訊ねた途端に微かに表情が曇る。

「うーん、来たいのはヤマヤマだけど。さすがに国家試験も追い込みだし……入江くんにもクリスマスや正月も仕事だって釘刺されたし」

ただでさえ、こんな病気になっちゃって最近は落ち着いて勉強できなかったし……

ため息をつきながら首を竦める。

「そっか。でも試験まであとちょっとだもんね。頑張って!」

「うん!」

にこっと笑って軽くガッツポーズをとる。しんどい時期だった筈なのにあくまでポジティブ。
彼女のパワフルさをもってすればきっと間違いなく合格することだろう。
神戸で就職できるかどうかは……これはもう運次第だけどね。前情報だと今のところうちの大学の付属の看護学生が4人くらい落ちないと外部からの採用はないようだ。今年は定年退職者が少ないのだ。

「じゃあね!」

そして琴子さんは東京に戻りーーあたしは久しぶりに病院へと足早に向かう。(やばっマジ遅刻だわーー!)
月末月初の繁忙期、なんとか乗り越えねばね。職場に持ってく草加煎餅と東京ばな奈(知ってる?東京ばな奈は埼玉の工場で作られてるのよ)を携えて、いざ出陣!



ーーなんとか遅刻を免れて、久しぶりにバタバタと仕事をしているうちに1日があっという間に過ぎ去ってしまった。
結局今日は一度も入江先生に遭遇することなかったけれど、手術の成功の朗報は事務局にも届いた。
ーーよかったね。琴子さん。入江先生が執刀したわけではなくても、多分あなたの祈りが叶えられたのよ。


あたしは休憩時間に屋上庭園の喫煙スペースで煙草を燻らせる。晴れやかな秋空が神戸の街を見下ろしていた。
なんだかんだこの街が好きなんだよねーあたし。
来年もこの街で平穏な日常を過ごしていられたらそれだけで幸せだなと数日間の非日常を振り返り、そう思う。そして琴子さんもこの病院で働いていたら尚、楽しいだろうなぁ。
さすがに師走も近いこの時期、上着なしで外でタバコはちょっと寒くて、あたしは思わず身震いした。
それでも心はほんのりあったかいのは琴子さんが幸せそうに笑っていたからだろう。

入江先生に会えるかなーとわざわざここに煙草を吸いに来たけれど、流石に今日は無理なようだ。
ま、またじっくり話を話を聴かせてもらいましょう。
今回は蚊帳の外だったけど、これからはがっちり琴子さんをフォローするわよっ!(もう、気分は神戸の母ね……って、せめて姉よね?!)










ーーそして、蛇足ながら後日談を少々。


入江先生が助手に入った件(くだん)の手術の大成功はさらに彼の評価を上昇させた。そしてできる人間はどんどん仕事を押し付けられるという定石通り、相変わらず激務にさらされてる模様。
医療雑誌にも載って、その容姿も知られることとなり注目度もさらにアップ!
これはまたまたあわよくばと下心を持った邪な女子たちが小児外科に殺到するのでは、と思いきや。
院内にはまた新たな彼に関する噂が駆け巡り、ざわつかせ、そのせいなのか思いの外彼の周囲は妙に静かだった。
少し前に院内を席巻していた不倫の噂をあっという間に沈静化させ、どうやらアレはデマだったと院内にあっさり認知させた新たな噂。

入江直樹は公衆の面前で嫁にキスを5分以上するくらい、嫁を溺愛しているって!!

どうやら琴子さんに再会した時に、周囲の目を全く気にすることなくかなり長々とディープなヤツをいたしてたらしい。(病棟にも近い医局の前で……)
ギャラリーも随分多くて、入江ファンのナースや患者が卒倒しそうになったとか。いや殆どが当てられた上に、ドン引きしまくったんだろうけど。

夏休みの時に結構悪目立ちしてしまった琴子さんの武勇伝と嫁溺愛はかなり院内に浸透してるのかと思いきや(夏休みの時も結構、人前でイチャコラしてたよね?)、みんな目の当たりにしたことしか信じられなかったようなのね。
そして例の不倫の噂で『入江先生も男よね、やっぱり。あんな学生で落とせるなら私にもチャンスが……』と希望を持った女子たちを一瞬にして撃沈させたようだ。
計算なのかなんなのか、すごい牽制効果よね。


そんなあたしは最近その実習生の城所茜をよく見かける。
たまたま眼科の医局に資料を届けにいった時に、やっばり彼女の声が琴子さんに似ててびっくりして振り返ってしまったの。「琴子さん!?」と叫んだせいで
彼女から、「もしかして入江先生の奥さまご存知なんですか?」と声を掛けられたってわけ。

まあ。ほんとそっくりねぇ。
電話とかだったら区別つかないかも。
なんとなくそれが切っ掛けで少し仲良くなって遠距離の恋の相談受けたりして。
いや、あたしまともに恋したことないオタク処女なんですけどね。妄想だけは場数踏んでるのでつい知ったかぶりしちゃうけど。どうもそんな役回りばっかよねー。


ちなみにその城所さんの彼氏が、彼女に会いにこの病院を訪れた時に、たまたま入江先生に国家試験合格報告をしに来た琴子さんの声を耳にして、彼女と間違えて琴子さんに抱きついてしまい……「あれ? 胸がないっっ」と叫び、琴子さんにひっぱたかれ。そのうえ入江先生にも尻を蹴りあげられ。城所さんにもめっちゃ叱られたという楽しいエピがあったりするんだけど、それはまだまだーーもう少し先のお話。















※※※※※※※※※※※※※※※※



終わりましたー。
結局、話を締める為にかをる子さんを呼び戻したという感が否めませんがf(^_^;



あとがきはまた後日に( °∇^)]



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声を聴かせて * by 玉露蜜柑
誤解が溶けて良かった‼️
手術も成功でも最後にいつもの琴子の落ち
これからの物語楽しみにしてます。

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* by なおなお
アハハ!でも誤解とけて良かったねv-218

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Re.るなたま様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメが遅くなって申し訳ありませんでした。

るなたま様にもそういってもらえて嬉しいです。やっぱりうちの神戸にかをる子さんは必須でした(^-^)v
そうそう、終わり良ければ……ですね。
常に注目の的のわりには、救命メンバー以外にはなかなか嫁ラブを認識されない入江くんですが、今度ばかりは浸透できたかなー?

色々お気遣いありがとうございました。仕事は相変わらずですが、家の方はまあなんとか(笑)マイペースでこれからも頑張っていきます。応援ありがとうございます♪

個別記事の管理2018-04-08 (Sun)



次、最終回、といいつつ、ちょっと挿入したかったかをる子さんの事情編ですf(^_^;
彼女がいたらきっとこんなにこじれなかった筈(でも話が成り立たないのである……)( °∇^)]

少し時間が遡ってますf(^_^;
もう1話前に挿れたかったな……失敗(-_-)



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




11月20日 P.m 2:15




「へぇーーここが斗南大学医学部付属病院かー」

タクシーを降りたあたしは、地元の市民病院で書いてもらった紹介状とカルテや画像フィルムの入った封筒を持って、大都会の病院の玄関扉をくぐる。

ふーん、エントランスロビーの広さやデザイン性なんか神戸医大付属病院と似てるな。 姉妹提携してる大学病院だから規模もだいたい同じようなものだ。
ってか、最近はずっと実家のある片田舎の市民病院通いだったから、久々の東京、大都会の雰囲気にちょっと高揚気味。(まあーイベントでちょくちょく来てるけどさ)気分転換も必要よね。流石に看病疲れもピークだったし。

エスカレーター下にある診療科一覧と院内案内図を見る。ついこういうのをチェックしちゃうのよねー。画像診断室がまあまあ広いな。MRIやCTの所有台数多いのかしら。医療機器メーカーの営業勢力図を思い返してしまったりして。


「森村さん。森村みどりさん……えーと娘さんですね? ◯◯市民病院から転院ということでよろしいでしょうか。ではあちらの説明室の前でしばらくお待ち下さい」

「あ、はい」

受付を済ませたあたしは外来ロビーの端にある説明室の待合いのベンチに腰をかける。
午後のため、患者は随分と少ない。会計待ちの人たちがちらほらといるくらいだ。これが午前中なら全ての椅子が埋まっていることだろう。

あたしは「はあ~」とため息をついて、この1週間あまりの怒濤の日々をぼんやりと振り返る。

そもそも事の起こりはあたしの勤めている神戸医大付属病院に、母親が倒れたという連絡があったことから始まったのだ。

うちの実家は埼玉の片田舎で、たった一人の兄は東京で就職した後に結婚し、新居も都内に構えた。あたしは大学が神戸でそのままそこで就職してしまったために、実家では両親が二人で暮らしていた。
その母親が心筋梗塞で倒れたのだ。幸い命はとりとめたものの、家事一切出来ない父親の世話と入院することになった母親の看病とがあたしの肩にどっとのしかかったというわけで。

緊急のカテーテル手術による再灌流療法で母の容態は一旦は落ち着いたものの、再狭搾の可能性が高いということでバイパス手術を薦められてーーとなると、暫く母についていなくてはならない。
これはもう真剣に神戸の病院を辞めて実家に戻らねばならないだろうかと相当悩んだわよ。
まあ年が年だからねー。いつかそういう日も来るかもとぼんやり思ってはいたけれど、まさかこんなに早くなんて……。
もう毎日ため息しかでなかったわ。
そしたら、今までたいして役に立たなかった兄さんがーーというか兄嫁が、東京の病院に転院してもらえるなら、父も母が退院するまで一緒に面倒見ると言ってくれてーーもう涙が出そうになるくらい感謝しちゃったわよ。
いっそのことこのまま同居してくれたらありがたいけど、そこまで望むのはまあ無理だろうなぁ。

というわけでバイパス手術を受けられる転院先の東京の病院リストに斗南の名前を見つけた時はソッコーで決めたわ。
なんといっても兄の家から一番近い。
それにうちの神戸医大と提携していてドクターの行き来もあるから、名前を知っている医者もいたりするし、神戸医大付属の知り合いの先生に確認すればある程度の医師の評判などを知ることができた。(ほんと、主治医のアタリハズレで運命決まっちゃうからねー)

そして、バタバタと転院の話が決まり、今日はとりあえず手続きだけの為にきたのだ。兄嫁ともあとで落ち合って色々今後のこと話し合わなきゃーー。仲はいいのよ、あたしたち。しっかりもののお義姉さまなので、任せとけば大丈夫、と思うけれど、長男の嫁だからといって実母の世話を何もかも押し付けるのはやはり気が引ける。お互い言いたいこと言い合って役割分担を決めないと今後の関係に亀裂を生じさせない。その辺りは慎重に対応しなくっちゃね。

そんなこんなで自分の事情でテンパっていて、すっかり入江先生と琴子さんのこと、頭からすっぽ抜けていたけれど、斗南に転院か決まった瞬間からあの隣人夫妻のことを思いだしてしまい、気にはなっている。

なんといっても1週間前、嫁溺愛の入江先生に不倫などという噂が病院中を駆け巡っていたのだ。そりゃびっくりだわよ。何か事情があるとはすぐに察したけどね。だって彼は嫁以外の女なんて『患者A』『看護婦B』『同僚C』という程度の認識しかないくらい興味はないのだから。
翌日の入江先生の誕生日に琴子さんが神戸に来ることを知っていたあたしは、彼女がその噂を耳にする前に、入江先生に真相を確かめねばーーと彼を捕まえて訊問しようとした矢先の出来事だったのだーー実家に戻る羽目になったのは。


ーーどうなったのかな?
大丈夫かな? 琴子さん………

気にはなっていたけれと、やはり他人のことを構っていられる状況じゃなかった。
けれど、さすが斗南病院に来ることになった途端、どうなったのか気になって仕方ない。

せっかくここまで来たのだし、後で大学までいってみようかな。確か隣だよね。
………っても、広い大学キャンパス、約束もしてないのに琴子さんと巡り会える自信はあまりない。
それに大学生って学内に1日いる訳じゃないのよね。四年生ともなると空き時間も多いだろうし。
自宅の電話番号とか住所とか、知ってはいるけれど。突然訪ねるのもねぇ。
行ってみようかどうしようか……少し悩んでる間に、母の名前を呼ばれ、あたしは室内に入っていった。




「じゃあよろしくお願いします」

転院の日取りの確認と入院手術のための資料一式をもらい、あたしは部屋を後にする。来週中には転院できるようだ。なんとか早目に手術の日程を組んでもらえれば私も再来週には神戸に戻れるかも。
とりあえず今日はこれだけで予定は終了。

さて、どうしようと思って、時計を見る。
琴子さんを探しに行く時間は……ビミョーだなー。
用事があって同行できなかった義姉とはこの病院のロビーで待ち合わせることになっていた。まだ少し時間があるとはいえ、あまりうろうろする余裕はなさそうだ。

でも、折角斗南に来たんだし……と少し迷っていると、ふと、見覚えのある顔が玄関ホールから入ってきたのが目の端に止まった。

大きな紙袋を二つも持ってバタバタと忙しなく駆けていく一人のご婦人。

(え? 入江先生のおかあさま?)

あの入江先生にそっくりな美しい顔立ち。上品そうないかにもマダムといった感じのーー。
夏に一度お会いしただけだが、忘れるはずもない。何につけても印象的な方だった………。

紙袋からはなんかキラキラしたモールやら折り紙で作った鎖みたいのがはみ出ていた。

???

小児科でボランティアでもなさってるのかしら?
確かに大会社の社長夫人ですもの、慈善事業とか積極的にされてそう。

あたしは一瞬追いかけようかどうか逡巡したものの、あっという間にエレベーターに乗り込んでいたようで、さすがに諦めた。




義姉との待ち合わせまで少し時間があったので、ちょっと散歩でもしようかと隣の敷地の大学へと探索を試みる。
とはいえ隣と思ったのが甘かった。
うちの大学病院は大学と隣接してるのだけれど、ここは徒歩で15分くらいはかかったのだ。
学内はひとつの街のように広く、構内を車で移動する人も多いようだ。東京のくせして何でこんなに広いのー。
そんなだだっ広いキャンパス内を案内表示だけみてぷらぷら歩いていたら、しっかり迷子になってしまった。疲れきってようやく学食らしき建物にたどり着いて、少し休憩。
さすがに大学のカフェテリアは病院の食堂と違って明るくてお洒落だ。あたしは自販機のドリップコーヒーを購入して、紙コップを持って窓際の席に座った。

なんといっても時間が夕刻に近いころで、お客の数はまばらだ。ランチタイムではないから、持ち込みのお菓子やジュースでお喋りしている学生が数人。大学内にはいくつか学食やカフェがあるけれど、この時間はきっとカフェの方が賑やかなんだろう。神戸でもたまに大学に資料を届けるついでに学内のカフェでお茶して帰ったりしたもんだわ。学生に戻った気分でちょっとリフレッシュできるのよね。


「おばちゃん、ガセつかませたらあかんやんか。わし、昨日あれから生きた心地せーへんかったわ」

少し休憩してから、紙コップを捨てるゴミ箱を探してキョロキョロしていると、厨房のほうから関西弁が聞こえてきて思わず振り返る。

関西弁は調理人らしいファニーフェイスの兄ちゃんだった。ファニーフェイス……うん、まあ猿顔……。
そういえば、大学の学食に高校時代からの同級生で関西弁喋る友人がいるって琴子さん、いってたよーな。お父さんのお店で修行もしてて、なんでもプロポーズしてくれたとかなんとか。……彼かしら?

「ええ? ガセだったん? じゃあ琴子ちゃん、癌じゃなかったの?」

琴子?
え? 癌?

やっぱり彼だ、と思うと同時に、飛んでもないワードに思わずどきりとする。

「声帯なんちゃらちゅう、ただの喉の病気やて。簡単な手術ですぐ治るらしいわ。大将に確認したら、おれの娘を重病にするなとえらい怒られたわ」

「そーなの? どこでそんな間違った話が流れたのかしらねぇ? でもまあよかったわよ~~ ホッとしたわー」

よくわからないけど、癌じゃないらしい。あたしもホッとしたわ。
ってか、なんでそんなことに?

あたしの頭はクエスチョンマークが飛び交っている。

「とにかく今日、無事手術終わったらしいで」

「よかったなー」

ーーよかった。よかったけど、手術って!? 何? 何? どーゆー展開!?
あ、さっきの入江先生のお母さん……もしかしてお見舞い?
ん? でも変なキラキラしたモールとか持ち込んでたよね? なんだろう?
ああ、気になる!

神戸の病院の不倫の噂はどうなったのだろう。琴子さんの耳に入ってないかどうか、それが物凄く心配だったのだけれど、それ以上に何か大変なことになっているような………
どうも琴子さんの周りには常にトラブルの種が芽吹くのだ。これは体質なのかなんなのか……

しっかし大丈夫なのかなー?
あたしがいないとあの二人、変にすれ違ったりするもんな。

とにかく事情を詳しく聞きたいと思い、彼に話しかけようと近づきかけた途端に、携帯の着信音が鳴り響いた。
げ、しまった!
義姉からだ! 待ち合わせの時間を少しばかり過ぎていたことに気付いて青ざめる。
しっかりものの義姉は、時間にはかなりシビアだ。これから母のことを頼むのに、不義理は許されない。
あたしは後ろ髪を引かれつつ、すぐに学食の外に出て携帯電話に出た。


ーーああ、琴子さん。
うちのことが色々片付いたら会いにいくから……それまで待っててちょうだい!何もトラブル起きてませんように!
あたしはそう祈るしかなかった。

無論、その時点でほぼほぼトラブル終了してたなんて、知るよしもなかったのだけどねーー。







※※※※※※※※※※※※※


次こそ最終回です。
多分早いうちにお届けできるのではないかと………(^^)d







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やっとPCで * by ルミ
やっと今日退院して、改めてPCから読もうと来ました。
【携帯だと中々…)次回も楽しみにしています。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
毎回リコメが遅くなり申し訳ないです。

高校生の息子さんの勉強を見てあげれるなんてスゴいです!私にはもう無理だわー。化学なんてとくにf(^_^;
お疲れ様です。

ふふ、やっぱり他の病院の設備チェックってしちゃいますよね?
患者として渡り歩いても色々比べちゃいます笑
かをる子さんの素性は色々設定したようなしてないような。マロンさん頼みでスミマセン( °∇^)]ご質問などしっかり反映させていただきましたよ!
そうそう、かをる子さんはイリコト世界の目撃者ということでさりげなく遭遇してます笑
よくわからない事態になってましたが、まもなくスッキリすることでしょう。


Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメが遅くなって申し訳ないですm(__)m

そう、かをる子さんの親事情考えて、つい自分のこと考えてました。兄より兄嫁の方が頼りになるとめっちゃ助かりますよねー。
そうそう、何処にいっても入江夫妻は噂の的ですね。逃れられない運命〜〜
そして今回蚊帳の外だったかをる子さん、まあ丸くおさまってから知ったことなので、普通にほっとしたことでしょう。



Re.ルミ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
リコメが遅くなって申し訳ありませんでした。

わー退院おめでとうございました。無理されず、ゆっくりお読みくださいね。
少しでも癒しになればいいなーと思います。