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個別記事の管理2017-09-30 (Sat)

短くて申し訳ないですが………(((^^;)

※※※※※※※※※※※※※




入江くんがーー
入江くんが東京ーー!?
これはいったいーー

どーゆーこと?
どーゆーこと?
どーゆーこと?

琴子はあまりの衝撃に言葉も出ない。
へなへなと思わず床に座り込んでしまう。


「だって……だって、今日は仕事だって……シフト表みせてもらってたし……だから、あたし、あたし……」

呆然自失の体の琴子に、佛円は気の毒そうに声をかける。

「あいつ、琴子さんにはなんにも言うてないんやーー森村さんに聞いたんやけど、今日、誕生日なんやろ? 」

「ええーっ! まさか、それで入江くん、東京に!? サプライズ? 仕事、わざわざ休みとって、あたしのためにサプライズ!?」

うそーうそーうそー!
そんな奇跡のような出来事が………

「…………なのかな? なんかついでに浜松で学会がどうとか云ってたけど」

あたしのために……
あたしのために………

息が止まりそうなくらい胸が熱くなり、じわっと嬉しさが込み上げる。


はーいって、扉を開けたら入江くんが真っ赤な薔薇の花束持って
琴子、誕生日おめでとうーーって
おめでとうっておめでとうって………

そう………なるはずだったのに……!
それが………


こんな風にすれ違ったら意味ないじゃない~~~! とすぐに絶望的な気分になる。

どうして、どうして、こんなことになっちゃったの………
きっと新幹線、何処かですれ違ったのね。
なんてことなのーー!

いや、待って、琴子、こんなとこで嘆いていたら時間が無駄に過ぎるだけよ!
せっかく入江くんが東京まで来てくれたのに!

琴子はすっくと立ち上がり、ぱんぱんとスカートの埃を払う。
そして、キッと顔をあげて、

「佛円さんっありがとうございました!
あたしすぐに東京戻ります!」

来たばかりだが、直樹のいない神戸に用はない。
琴子は佛円に頭を下げ、くるりと踵を返すと駆け出した。

「たしか、入江先生、ついでに浜松に行くゆうてなかったっけ……?」

思わず呆気にとられつつ、佛円はあっという間に目の前から消え去った琴子の後ろ姿を見送っていた。





病院を飛び出して玄関先に停車していたタクシーに飛び乗ろうとした琴子に、「琴子さーーーんっ」と大きな叫び声が降りかかる。

「え?」

はぁーー走った~~~~!!


そう前屈みになって肩で息をしているのはーー

「かをる子さんっ」

驚く琴子に、かをる子はぜーはー息を切らしつつ、自分の携帯電話を差し出した。
夏休み明けに、ボーナスで携帯買ったんだーーっと電話で云っていたことを思い出す。
この数年前頃から携帯電話は爆発的に普及し始めていた。ただ病院では使えないからあまり意味がないのだそうだ。

「こ、これで自宅に電話して。今、入江先生、東京の自宅にいるから」

「え? ええーー?」

よく分からないまま、携帯を受けとり自宅の番号を押す。

『…………琴子か?』

「い……入江くんっ?」

電話はワンコールで繋がった。
目の前で待っていたのだろうか。

『………琴子……おまえ、なんでそこにいるんだよ………』

「い、入江くんこそ、なんで東京に……帰るつもりだったなら云ってくれればよかったのに~~」

つい愚痴めいた物言いになってしまう。

『………今回のことも突然決まったんだ。何が起きて予定がまた変わるかわからねぇし』

そうかもしれないけど……
でも帰るかもしれないと知ってたら神戸に来たりしなかったよーー

言いかけて、繰り言になりそうで言葉を飲み込む。
自分だってこっそり内緒で来ようとおもったわけだし。

『……ま、おれも、おまえの行動を予測して然るべきだったのにな……』

互いに少しの沈黙のあと、

「い、入江くん、待ってて! すぐに東京戻るから~~ちょっとだけでも会いたいのーーお願いだからそこにいて!」

始発の新幹線に乗り、9時過ぎには到着していた。今から新神戸駅に向かって新幹線に飛び乗れば昼過ぎには東京に着けるかもしれない。


『………ここで待っててもいいけどね。おれも東京には15時にまでくらいしか居られない……』

今から東京に戻ると着くのは13時頃。

ああ………なんということでしょう!!

東京に居れば、少なくとも6時間は一緒にいられたのに!
それがばかな突撃訪問をしたためにほんの2時間くらいしか一緒に居られないなんて~~


『おまえさ。浜松で途中下車できる?』

「へ?」

『おまえが浜松まできて、そこで落ち合えば、懇親会の始まる17時ギリギリまで一緒に居られるけど』

「えーと、浜松って何処だっけ? 浜松町? モノレールの。あ、飛行機の方がいいのかな。羽田空港でモノレールに乗って……」

『ばか。浜松町じゃなくて、静岡県浜松市。新幹線の駅だから。東京と神戸の真ん中くらい』

「あ、そうなんだ。ついでに学会ってきいたから東京の浜松かと……」

『だから、そっちが‘ついで’じゃなくて……』

「へ?」

『いや、なんでもない。で、来るのか来ないのか。浜松まで』

「いくーーっ!! 絶対いくー! 浜松にいくよーー」

『おれも、今から浜松に向かうから。多分おれの方が早いかな。向こうで待ってるよ。昼メシくらいは一緒に食えるかな』

「うん、うん! 待ってて! あたし、新幹線の中でダッシュしてるよ」

『ばぁか。ちゃんと座ってろ。こだまじゃなくひかりに乗れよ。各駅だと時間かかるから。停車駅は確認しろよ。浜松止まらないこともあるからな。でも降りる駅間違うなよ。名古屋の次だからなーー』

てきぱきと指示を出す直樹の言葉に混乱しつつも分かったと云って電話を切ったあと、琴子はかをる子にお礼をいって返す。

「 ご、ごめんね。かをる子さん! 携帯の電話代って高いんだよね? 返すよ。いくらくらい?」

財布を出そうとした琴子を制して、「大丈夫よ。これくらい。誕生日の大サービスね」と、笑って答える。

入稿前の徹夜開けだったが、直樹の電話に起こされた。
琴子がそっちにいってないかという電話だった。
なんでも、東京に朝イチで来たのに家はもぬけの殻だったそうな。
まさかーーと不穏な予感が頭を過り、まず看護科の友人に電話をしたらしい。
そして、不穏な予感は的中した。
琴子は神戸に向かったのだと、ものすごーく気まずそうに教えてくれたのだという。どうやらたきつけた張本人だったようだ。
すぐに今度はかをる子に電話をして琴子がマンションに来ていないか訊ねた。
部屋に確認して居ないとなると、もう病院しかない。
事情を察したかをる子は、お節介とは思いつつ急いで琴子を捜しに病院にやってきたのだった。

「なんか、毎度毎度すみません」

恐縮しきりの琴子に、「ま、色々ネタに使わせてもらってるから気にしないでねー」(ボーイズラブに変換してるけどねっ)と内心頭を下げつつ、からっと笑って琴子をタクシーに押し込む。

「じゃ。ハッピーバースディ琴子さん。素敵な誕生日を過ごしてね! あ、プレゼント、あなたのダーリンに渡してあるから、受け取ってね!」

「ありがとう、かをる子さんっ」

「妙なトラブル巻き込まれないようにね! でも、起きたら教えてね~~ネタにするから!」



そして、神戸滞在わずか1時間足らずで。
琴子は再び新神戸駅に向かい、上りの新幹線に飛び乗ったのである。






※※※※※※※※※


誕生日のお話なのに、まだ出会えてなくてすみません(((^^;)


さて、誕生日記念の(?)三夜連続更新は今夜で終わりです。
明日、出会えるとこまで連続アップにするつもりでしたが、まだこの続きは書きかけで、そして明日は1日お出掛けで書く時間は全くとれそうもないので、ちょっと断念します。
三夜連続って、結局3話分が普段の1話くらいなんですけどね…………
じゃあ1話でもよかったんじゃ………いやいや、結構手直しする時間が取れて、良かったですよf(^^;

それでは、続きはいつアップになるかわかりませんが、お暇な時にでも覗いてみてくださいませ。





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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
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* by 縺ェ縺翫■繧?s
やっと会えそうだね。琴子ちゃんお誕生日おめでとう入江君と仲良くね。v-29

Re.縺ェ縺翫■繧?s様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

はい、なんとか会えそうですよー。しばしお待ちくださいませf(^_^;

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

会いにいったらいなかった、って相当ショックですよねー。琴子ちゃんすまぬ。でも試練は続くのだよ……f(^_^;
現代なら携帯で一発で連絡とれるのに、なかなかこの時代、色々不便です。でもいざというときのかをるこさん! もう神戸のオタスケウーマンですね……。ま、想像力刺激されるふたりですから、きっと色々変換してることでしょうf(^_^;

さあ、次は浜松ですよー(^-^)v


Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そろそろちびぞう様も病院本読み終えた頃かしら。私も昨日読み終わり…そして気がついた衝撃の事実にちょっとあたふたしておりました(((^^;)(でもまあ予定外の更新ができたわけで……)

ふふ、さてさっさと浜松での二人を書かねばなのですが、まだ全然なのです〜〜ああ、早く会わせてあげたい……f(^_^;
まあ、一波乱二波乱はお約束ってことで(^_^)
ええ、私もあわてふためく直樹さんは大好物ですよー。
はーい、ゆっくり進めます♪またご訪問くださいね。

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

短くて大丈夫といってもらえて嬉しいです♪
浜松での時間、少しでも長く取れるといいのですが……何分作者がイジワルなもんで……f(^_^; でも! 誕生日なんで、幸せに締めたいと思ってますよーー!

個別記事の管理2017-09-29 (Fri)


昨夜はemaさんの準備していただいたチャットルームでいつも仲良くしていただいているイタキス愛に溢れる皆様と一緒に、バースディカウントダウンが出来て楽しかったです。
いや、翌日仕事なんで、カウントダウン終わると早々に抜けましたけど(((^^;)残念……

たくさんの方が閲覧してくださっていたようでしたが、次回はぜひ、入室して、一緒にお喋りしましょう♪
(『次回』もあるかもよ?)


そして、お話です。
せっかくの誕生日なのに、すれ違わせて申し訳ない、琴子ちゃん(^_^;)





※※※※※※※※※







直樹が東京に帰ったのは、実に半年ぶりのことだった。
始発の東京行きはそこそこの混み具合で、夢の国へ行くらしい家族連れやカップルもちらほらいた。
いくら700系のぞみが運行開始となり、東京大阪間が二時間半ほどで着くとはいっても、やすやすと戻れる距離ではない。

今日は日曜だが研修医に曜日など無論関係なく、本当なら各科輪番で回ってくる時間外救急の当番日だった。
琴子に今月のシフト表を見せているから、当然仕事だと疑っていないだろう。

実をいうと先月にNICUでの研修のシフト表を貰った時には、一緒に研修する同期の田中から、シフトのチェンジを打診されていた。
なんでも臨月の妻の出産に立ち会いたいから救急の当番日に当たったら出来れば替わって欲しいということだった。
直樹に特に異存はない。
いつでも変わってやるよと約束していた。
結婚している研修医は直樹の他にも意外と多い。デートをする時間が全く取れないので、別れるか結婚するかの究極の二沢になってしまうらしい。

そしてものの見事に当番の日に産気付いて、直樹は田中の替わりに時間外救急の当番についた。
その代替日として直樹が変わって貰ったのは今日ーー9月28日だった。

この日に替わってもらったからといって、別にわざわざ東京に戻るつもりはーー

「戻るつもりで、琴子さんの誕生日にわざわざ替わって貰ったんでしょ? 他にも振り替えられる日があるのに」

何処で聞き及んだのか、直樹の休みを知ったかをる子がにまにまと声をかけてきた。職員の個人情報を全て掌握しているのではと疑いたくもなるが、この隣人はただの事務職員の筈だ。

「何があるかわからないから、帰りませんよ」

NICUは救命ほどオンコールで呼び出されることは多くないが、それでも担当を任されるとそれなりの責任を負う。保育器の中で必死で生きようとしている小さな命を守らねば、と気負ってつい時間外も見守ってしまう。

「別に研修医の一人や二人いなくったってどーとでもなるわよ。うちの小児科は層が厚いの。ほんとは会いに行きたいくせに。 素直じゃないわねー」

相変わらず歯に衣きせぬ物言いでずけずけと核心を突いてくる隣人である。

それでも迷っていたのだがーー

行くことをはっきりと決めたのはほんの数日前。
斗南大学医学部の恩師に頼まれて再生医療学会の懇親会に出席することになったのだ。しかもせっかく休みになった9月28日、日曜に。
畑は違うがそうそうたる顔ぶれに興味はある。とはいえ、学会自体は平日に行われて参加できないため、 神戸からわざわざ懇親会のみに参加するなど、本来なら断ったかもしれないがーー。
懇親会の方が意義のある出会いと会話ができる、という恩師の言葉に促され行くことに決めたのだ。
そう、あくまで恩師が強く勧めるからだ。
懇親会の場所は浜松のホテルである。
ちょうど東京と神戸の中間あたりだ。
そう、決して場所が浜松だったから、なんて理由ではないーー。

「懇親会は夕方5時からなので、ついでに東京まで足を延ばすことにしました」

琴子さんに会いにいくなら誕プレ渡して欲しいなーというかをる子に一応報告した。

「ええ! ついで? ついで? 浜松から東京が『ついで』? えーと、まあまあ離れてるよね? ちょっと足を延ばしました、って距離じゃないよね?」

思わず突っ込んでしまったかをる子に、直樹はあくまで「ついでですよ、あくまで。ええ、ついでに渡してきますよ」とかをる子から誕プレを預かったのである。



ほんとっ素直じゃないなー

肩を竦めて苦笑いをしたかをる子は、たまたまばったり出会った佛円に、「入江先生は嫁に会いに行く『ついで』に浜松の医学会のパーティに出るらしいわよ」と告げたのは、単に彼の本心を代弁しただけで間違えて伝えたわけではないのである。







東京から浜松はひかりで1時間40分くらいだ。
朝イチで東京に行き、15時くらいまでは共に過ごせるだろうか。
懇親会の会場は浜松駅の近くというので、ギリギリまでは大丈夫だ。
昨夜はそんなことを考えながら簡単な荷物を準備して就寝した。

無論、この計画のことは琴子には内緒だ。
事前に伝えて大仰なパーティでも開催されては面倒だ(ホテルを貸しきるとか!)ーーいや、ただでさえ琴子の誕生日は母紀子が一年で一番気合いをいれているイベントである。できることなら巻き込まれるのはごめんなのだがーーとはいえ、誕生日くらいは琴子の願いを叶えてやりたい(琴子の願いは自分に会うことだと断定)と殊勝な気持ちになったのも、夏休みに琴子が神戸に来たときに、余りにトラブルに巻き込まれ、血の気の引く思いを何度もしたせいかもしれない。

さらにもうひとつ後押しをした出来事もあった。
前日の土曜に紀子から電話があったのだ。
佐賀の大叔父が亡くなったということで、重樹とともに九州に旅立つというのだ。
裕樹も日曜は英検の試験で朝から出掛けるらしい。

『お誕生日なのに、琴子ちゃんひとりぼっちなのよ。そりゃ、相原さんはいるけれど、普通にお店もあるものねぇ』

だから、直樹、ちゃんと琴子ちゃんに電話してあげてね。お兄ちゃんの声を聴くことが何よりのプレゼントなんだから。

そういう紀子にも、声どころか本体を届けるつもりであることは話さなかった。
変に興奮して琴子に話すのは間違いないだろう。

だが『琴子がひとりぼっち』というワードは、確かに直樹を『ついで』に東京に帰ろう、という決意を強固にさせたのは間違いない。
まるで何年か前のクリスマスの夜のようにーー

ーーちなみに、昨夜。一応、零時を回った瞬間に「誕生日おめでとう」を云うために電話をしたのである。
何故か誰も出なかったのだが。
(琴子が始発で神戸に行くつもりで早寝したのだと知るよしもない)







そして、9月28日の朝ーー直樹は予定通り朝一番の始発の新幹線に乗車した。
さぞや琴子は目を丸くして驚き、そして感動してむせび泣くのではーーなどと予想しながら、日々の疲れにすぐにシートに凭れて瞳を閉じた。




久しぶりの自宅に帰りついたのは、朝10
時前頃だったーー
駅に降りた瞬間耳に飛び込んできた標準語が妙に心地よかった。そして、懐かしい街並、馴染んだ東京の空気。
そして半年ぶりの我が家ーー。
扉を開ける前から驚愕する琴子のどんぐり眼を想像して、つい口角があがる。


だがーー。
残念なことに。彼を狂喜乱舞して出迎えてくれる筈の妻の姿はその家にはなかったのである。





※※※※※※※※




コメントで質問がありましたので、お答します(((^^;)
『佛円』は『ぶつえん』って読みます。
『佛圓』さんって近くに表札があるのですよー。さすがに全部旧字だと読みにくいかなーと円だけ変えたんですが、やっぱり読みにくかったですね~~(^_^;)





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* by 縺ェ縺翫■繧?s
ありゃ!すれ違いになっちゃった?でもあえるんだよね、入江君と琴子ちゃん。v-16

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

夏休みのなんだかんだで、時間が許すなら会いに行きたいと思えるくらい成長したくせに、口実がないと行動に移せない今一つ素直でないこの時期の直樹さんです(((^^;)
ほんと、読みのあまい直樹さん……
はは、間違いなくすれ違っていたでしょうねー‼

さーて、早く二人を会わせて……ええと、でもhappy birthdayの道のりは遠いのです……f(^_^;

Re.:縺ェ縺翫■繧?s様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

せっかくの誕生日、すれ違わせて申し訳ありませんm(__)mきっと会えるハズ………笑

個別記事の管理2017-09-28 (Thu)


琴子ちゃんハピバ\(^o^)/

はい、タイトル通り、神戸時代のお話でございます♪夏休みの続編です。

しかも続くという………………f(^^;

えーと、やっぱり1話を短めにして連日アップにしますねf(^^;
誕生日企画ということで、いつもと違う趣で。
とはいっても3日くらいしかストックないので途中でやっぱり亀更新になると思いますが……
(そんなに引っ張るほどたいした話でもないんですけどねっっ)

それでもよいという方は続きからどうぞ♪


※※※※※※※※※※







『まもなく、新神戸に到着いたします……』

車内アナウンスにバタバタと動き出す乗客たち。
日曜の朝一番の新幹線は、流石にビジネスマンよりは旅行や帰省の学生が多いようだ。
琴子も慌ててテーブルを片付け、読んでいた参考書を鞄に仕舞った。

ついたーー! ついたよー!! ひっさしぶりの神戸………っても、前に来てから一ヶ月も経ってないけどねっ
ああ、入江くん、元気かなー。
早く会いたいなー。

いやいや、会うんじゃなくて。
そう、こっそり顔見るだけのためにきたんだから。
会わない。
会わないで帰るって決めてるの。
(今回こそね!)
そう、これはあたしの自分へのご褒美よ。自分へのバースデイプレゼントなのよ。
前期試験、頑張ったし。
国試の模擬試験も結構いい感じだったし。( ……結果まだだけど)
この一ヶ月、死にもの狂いで勉強したんだもの。
誕生日の日くらい息抜きしたってバチはあたらないわよねっ


一人言い訳がましくぶつぶつと呟きながら、琴子はまるっと4週間ぶりの新神戸駅に降り立つ。

灼熱の猛暑だった神戸の大気も、今は秋めいて優しくあたしの頬を撫でてくれるわ~~~ただいま、神戸!

あの嵐の日の涙々の別れのキッスからはや一ヶ月。このホームだったのよねー(本当は上り線のホーム)。………なんだかもう遠い昔のような気もするけれど。
いいえ、あの情熱的なKiss……感触だってまざまざと思い出されるわ。


またキスしたい……あー、でもダメよ。今日はこっそり顔を見るだけ。
入江くんのお仕事の邪魔はしないんだから!

新幹線のホームで一人ガッツポーズを取り、空を仰いで心に誓う。



今年の琴子の誕生日は、ちょうど定期試験も終ったばかりの日曜だった。
義母紀子からは「神戸行ってくれば?」と散々すすめられてはいたものの、その日に直樹は仕事であることを予め聞いていた琴子は、行くつもりは全然なかったのである。

なので当然入江家での恒例の誕生会が行われる筈だったのだがーー
佐賀の紀子の親族に不幸があり、紀子と重樹は昨日から九州に旅立ってしまったのだ。
申し訳なさげな紀子に、「大丈夫です。看護科の仲間たちがお祝いしてくれるのでー」とにこやかに告げたのだが、実際はみんな日曜はバイトが入っていて、前日に試験終了の打ち上げを兼ねた飲み会を開いてもらっただけだ。

その席でつい「明日、一人ぼっちな誕生日なの~~」と愚痴ったら、

「行けばいいじゃん、神戸に」

「何、遠慮してんの? 鉄砲玉のくせして」

とみんなに背中を押されたのだ。

それでも躊躇していたのは、現在の直樹は、NICU(新生児集中治療室)での研修に入り、救命以上にハードな日常を過ごしていると知っているからだ。
ここ十日あまりどんなタイミングに電話をしても本人が出ることは一度もなかった。
そういえば直樹からは一回だけ電話があった。珍しい事態に狂喜乱舞して、用事も聞かずに琴子の方からぺらぺら喋りまくって、結局何の用なのか訊かないままだった。
翌日慌てて電話をしなおしたが、それからもう留守電にしか繋がらない。
恐らくまともに家に帰れてないのだろう。
勤務中に押し掛けて会うなんてーー自分のために貴重な休憩時間を割いてもらうなんて申し訳ない。
それに、神戸なんて来てる時間があったら勉強しろといわれてしまうに違いない。

そんなことをグダグダいってたら、

「じゃあ、会わずにこっそり覗いてくれば?」

と、琴子が6月にやって失敗したミッションを再び課せられたのだ。

「とにかく、入江さんが美人ドクターや看護婦や患者に熱心に話しかけられていても決して動じない心を持って挑むのよ」

「そ、それは大丈夫よ。入江くん、信じてるもの」

直樹不足がピークになり、つい直樹の顔をこっそり見ようと3ヶ月ほど前に初めて神戸に来たとき、患者の母と親密な様子に動転し、ついうっかり顔を見るだけのつもりがしっかり会ってしまい、さらには1週間も居座ってしまったのだ。

「今度こそ、こっそり入江くん見つめて充電だけして、何にも言わずにしれーっと帰るの。あ、部屋のお掃除くらいしていこうかしら。入江くんが帰って、あれ?ってちょっと軽く訝しげに思うように、すこーしだけ痕跡を残してクールに立ち去るの」

「………あんたがそんなにうまく思い通りに立ち舞えるとは思えないけど」

「でもま、頑張って」

幹たちのゆるーい声援を背に受けて、琴子は日曜の朝、一番の新幹線で神戸に到着したわけである。




だがーー。



「しまった……NICUなんて、関係者以外立ち入り禁止だよね……」

琴子は懐かしい神戸医大のエレベーターホールで、フロア案内の表示を見つめて悩んでいた。
日曜のため、開放されているのは入院病棟のみである。
いつもはにぎやかな一階フロアも閑散としていて、売店近辺のみが少し混雑していた。

うーん、小児科フロアに行けばもしかして姿を見られるかな……
それか売店か食堂で張っているか……

ここまで来て、全くノープランで勢いだけで来てしまったことに気付く琴子である。


「あれ? 琴子さんやないか?」

売店から出てきたドクターに声をかけられた。青いスクラブは救命センターのユニフォームだ。

見覚えのある顔………この夏、何度も会って話をした………

「えーと……」

「………佛円です」

「あー、そうそう仏壇みたいな変な名前の……っあ、ごめんなさい」

「いや、ええけど……」

結構何度も会っていたのに名前を忘れられていたのは少々ショックな佛円である。
しかしすぐに立ち直りーー
そして怪訝そうな表情で、まじまじと琴子の顔を見つめる。

「でもーー琴子さん、なんで神戸にいるんや? だって、入江先生、今日東京に帰ってるんやろ?」

ーーと。
琴子にとっては余りにショーゲキな一言を投下したのだったーー。














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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

チャットお疲れ様でしたー。随分遅くまでお話されてたようで。私も休日前なら付きあえるのになー(((^^;)

看護科メンバー、きっと夏休みの顛末きいて、また何か起きるんじゃないかとをわくわくしてるのかも。そうですね、賭けてる可能性大ですねぇ〜〜

誕生日早々、すれ違いって……われながら琴子ちゃんごめんよ、と思いつつ。
そしてラブラブな結末を近日中に届けられず申し訳ないです………(((^^;)
はーい、続き、頑張ります!

Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ちびぞうさんもお疲れ様でした。みなさま、かなり夜更けまで楽しんでらしたようで、よかったです。emaさんには感謝ですね♪
そうなんですねー。いえいえ、お気になさらずに。
ふふ、布団にはいると私のお話ですか? いやー眠気アイテムとなればそれはそれで役にたってるということで笑

ふふ、結局このミッション、最初の神戸訪問と変わらぬ予定なんですけど、予定通りにならないのが琴子ちゃんなんですねー。
誕生日早々、すまぬと思いつつ。あとのhappyが倍増しますように〜〜♪

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

そうなんですよー誕生日なのにすれ違わせて申し訳ない気持ちでいっぱいですが、そのぶん幸せが倍増することを、祈りつつ……happyなbirthdayを迎えられるよう、頑張りまーす(((^^;)



Re.ちゃみ様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

そして、三周年のお祝いのお言葉もありがとうございます!ちゃみさんにはいつも応援コメントもらえて、ほんと、とっても嬉しいのです(^_^)
三年前に比べて随分ブームも沈静化している気もしますが、ちゃみさんのようにイタキス愛が衰えない読者さまがいてくれるお陰でここまできましたよ(^-^)v

佛円(ぶつえん)さん読みづらくて申し訳なかったです。いやー御子柴より珍名さんでしたね〜〜

どれも好きといってもらえて本当に幸せです。これからも頑張りますね♪

個別記事の管理2017-09-27 (Wed)






今年も琴子ちゃんのbirthdayを皮切りにイタキス期間がはじまりました。イタキストの皆様にはちょっとわくわくするシーズンですね(//∇//)
そして、birthday eveの今日はこの当ブログのbirthdayでもあります。

読者の皆様に支えられ、なんとか三周年を迎えることが出来ました(^-^)v

ほんとにまさかこんなに続けられるとは思っていませんでした。
ひとえにコメントや拍手で応援してくださっている皆様のお陰です。

更新ペースは相変わらずの亀モードですが、とりあえず広告を1度も出さずに三年目を迎えることができたし、『夏休み』もギリギリセーフで最終回をアップできましたしね。なんとか公約達成かしら………
他の連載も来年には終えていたいなーーー………(遠い瞳)

今後は亀どころかカタツムリモードになるかもですが、イタキス愛はいまだ衰えておりません。
日キスドラマから三年経ち、映画もぱっとせず(((^^;)それでもイリコトを忘れずに飽きずに訪問してくださる読者さま。SNSでいつもイタキスの他、いろんなオタクな話から日常の愚痴に付き合ってくださるイタキスラブな二次作家仲間のお友だちのお陰で、まだまだモチベーション保っていけそうな気がしております。
ほんと、今の世の中便利ですよね。東京北海道中部近畿と離れたとこに住んでいても、同好の仲間たちとオタクな話で毎日盛り上がれる~~いやー文明って素晴らしい……\(^^)/
今年も光栄なことにemaさまのイタキス同人誌に参加させていただいて、来年のお話なんかもしたりして、イタキスについての話はつきませんね~~(^_^)
emaさま、病院本、ありがとうございました(^-^)v完成おめでとうございます!(届いた本のお写真を先ほど見せていただいて、今からわくわくです!)




さて、今年のイタキス期間はまったくのノープランですが……多分アニバーサリーには何かしらアップしたいと思ってます。
さしあたり、琴子ちゃんのbirthdayには『1997年の夏休み』の続きのお話の予定でございます。
1話で終わらない……(((^^;)
いや、長くはなりません……が、やっぱり中々書く時間が取れないもので、短くぶったぎって毎日連載にするかもです(まだ未定)。
とりあえず明日の0時に1話目アップしますので、よかったら覗いてみてくださいませ♪







恒例のラクガキは……
あまりちゃんと描いている余裕がなかったもので、以前習作で描いた真似描きです。なので、私の絵ではないのはバレバレですが、それをちょっと加工しております。クオリティの低さは太鼓判ですf(^_^;






それでは、4年目もよろしくお願いいたします(^_^)



ののの


おまけの呟き……

琴子ちゃんのbirthdayに合わせて、emaさまがちょっとしたお祭り企画をしてくださるようですよ♪
是非皆さま、emaさまのブログをチェックしてくださいませ(^-^)v

一緒にカウントダウンできたらいいなー(ボソッ)





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* Category : あいさつ
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* by 縺ェ縺翫■繧?s
おめでとうございます、これからも楽しいお話をじゃんじゃん書いてください楽しみに待っています。e-349

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Re. マロン様 * by ののの
コメント&お祝いのお言葉ありがとうございました♪

そう、まだたった3年目の相変わらずのぺーぺーですよ。イタキスマスターへの道は遠いです(f(^_^;

ほんとにマロンさんは初期の頃からずっと欠かさずコメント下さって。マロンさんこそ、イタキスコメンテイターの神です!
ありがたや〜〜〜
これからもよろしくお願いしますね(^-^)v

Re.skylovego様 * by ののの
拍手コメント&お祝いのお言葉ありがとうございました♪

はじめまして、ですよね?
こうして一言でもコメントくださるととっても嬉しいです。励みになります。
応援していただいて感謝です。
はーい、無理せずに頑張ります♪



Re.縺ェ縺翫■繧?s様 * by ののの
コメント&お祝いのお言葉ありがとうございました♪
えーと、HNは文字化けかしら〜??笑 とっても個性的(((^^;)もしかして、Nちゃん様かしら、と思いつつ、いつも読んでくださってありがとうございます♪


Re.heorakim様 * by ののの
コメント&お祝いのお言葉、ありがとうございました♪

heorakim様からコメントいただくようになって2年になるのですねー。いつも暖かいお言葉をいただいて、感謝しております。
PCを使っているだけ、私より上におりますよ……手軽なスマホを手放せず、自分で修得しようという努力も怠っているもので……
これからも地味に更新していこうと思ってます。
heorakim様もご自愛くださいませ。

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

こちらこそ、遅いリコメで申し訳ありません(((^^;)
そうですよねー入江くんへの不満はイタキストの総意と思って、日々お話を書いて解消していた私です。
同じように共感してくださるかたが集まってくださって、拍手や感想くださって、ブログ始めて良かったなーと思う瞬間です。
おおー、そうなんですねー。
そんな風に好きなお話をあげてくださるととっても嬉しいです(アンケートを設置するなどの技量がない……)(^-^)v

はーい、これからもポツポツと書いていきますので、時折思い出したように覗いていただけるとありがたいです(^_^)これからも宜しくお願いしますね!

個別記事の管理2017-09-16 (Sat)

遅くなりましたが、蛇足なあとがきです^_^;

やっと終わりました……^_^;
足掛け2年。
3回の夏休みを経て、なんとか完結することができました。あーすっきり(^-^)v

ほんとにね、始めた頃はこんなに長くなるとは思いませんでした。イメージとしては10話くらいでしたもの。まさか44話(途中のオマケえろは省く……)にもなるとは……。
私にとっては最長話数ですが、他の長編二次作家さまたちに比べると、たった44話に何年かかってんだ、って話ですよね。私が一番そう思ってますって。私の妄想ストックの中では一番短めだろうと思ったのに……ひと夏で終わると思ったのに……恐ろしくて他の長編話を書き出せないわ……(-_-)




元々の妄想は、

せっかく琴子が神戸に来たのに、すれ違ってばかりでなかなか一緒に過ごせない

放置されてた琴子が熱中症で倒れる

直樹に迷惑かけたことを凹んで、「東京に帰る!」って言い出して、直樹が「帰るな!」って引き留める

ーーというだけの話だったんですよね。
うん、それだけのつもりだったから、10話くらいで終わると思ったんだよ……
そのお話の中で、色々原作の中の突っ込みたいところを補完したいな、ということは考えてましてね。まあ、それが長くなった一因といいますか……(((^^;)

どうせなら直樹さんの身勝手で唐突な神戸単身赴任、ばっさり断罪してやりたいという気も常々あったもので。
いつもコメントくださるmさまともよく話してましたが、嫉妬事件のあと、「絶対離れない」って感動の告白してんのに、舌の根も乾かぬうちに何あっさりと単身赴任決めてんだよ。ほらほら、耐えきれなくて1年と2ヶ月ほど(実に中途半端)で帰ってきちゃってるし。いやー、よっぽど琴子のいない生活我慢できなかったんでしょ? ったく、そんなに簡単に帰ってちゃうくらいなら、あんなに琴子ちゃん泣かして行く意味あったわけっ!?ーーなどと神戸単身赴任鉄槌委員会としては常に怒りをぶちかましておりましたもので。

だから、その突っ込み処に色々理由をつけたかったんですよね。入江くんの言い分を聞いてあげようじゃないか的な(笑)

あと、患者の家族と院外で会うとか、嫁に患者情報漏洩とか……直樹さんらしくないし、あかんやろ、ってことについても突っ込みたかった……(((^^;)

そんなことをあれこれ盛り込んでたらどんどん長くなり……さらにはオリキャラも出しすぎましたね~~
かをる子さんはうちのブログには初期の頃からいる神戸限定オリキャラですが、他の救命メンバーは一応キャラ設定とか考えてましたよ。……姫子さんはかをる子さんとビミョーにキャラ被ってるので、キャラの違いを出すのが大変(入江くんに説教できる凛とした女性キャラが好きで……毎度似たようなキャラ増産してるかも)。
話にリアリティー持たせようと作ったオリキャラたち、自分で設定忘れて読み返すのがめんどくさかったりしたんですが、気にいってくださる方もいらしてくれて、嬉しい限りです。

あ、かがみんこと救命の鬼軍曹、各務先生。モデルがいますとコメントで返した記憶があるのですが、モデルは……幕末に浅黄色の羽織を着ていた鬼の副長だったりします(((^^;)すみません、別に土方推しというわけではないんですけどねf(^_^;新撰組マニアでしたの(*´ω`*)ビジュアル的には樹なつみさんの黒髪サド目キャラで妄想してます笑
(『一の食卓』の五郎さんこと斎藤一のイメージで……あれ?トシさんじゃなくてサイトーさんかよっ)
もっとドSキャラのつもりだったんですが、なんだかただのいい上司でしたね……ドSなエピは殆どなかったわ……^_^;


昔の話の絡みで出してしまった香純さん(不人気No.1)とか最初かなりキャラが定まってなかった圭子さんとか(名前のせいか、どんどん大変な設定を背負うことに……ええ、15、16、17と私の人生暗かった~~というあの歌が頭の中をぐるぐると笑)、あまりにあれこれ出しすぎて、我ながら収拾できるのかかなり焦っておりましたよ。今でもちゃんと回収しきれているのか不安です……

そうなんですよ、予定外に長くなったり余計なエピ付け加えたせいで、あれこれ齟齬が生じてないか心配だったりします。あれ?この前に書いたっけ?とかおんなじことしつこく書いた気もします…もう読み返すのも億劫で、矛盾や重複など多々あるかもしれません。わー最初から続けてイッキ読みするときっと穴だらけだろうなーーorz

というわけでイッキ読みされる方、きっとあれこれ突っ込みたくなるかもしれませんが広い心でお読みくださると嬉しいですf(^_^;


もう書きたいクライマックス書いたあと、燃え尽きた感はあったのですが、せめてデートくらいさせてあげたいと思ったのが運のつき、そこから長かった……お話としてはクライマックスのあとにグダグダと続いてしまって、それって小説としてどーなの?って思いながらもやはり琴子をきちんと東京に帰さないと終われなかったもので。いちゃいちゃな二人も書きたかったしね~~
とりあえず無事?に帰せてよかったです(((^^;)

あ、ちょっとオマケで、ラストに夕日の写真を載っけたので、思わず1話目に夏の青空の写真を挿入してみました(((^^;)
だから、なんだよ、って感じですがf(^_^;
もし良かったら1話目、覗いてみてくださいませ。(フリー素材お借りしただけですが…)


神戸の時期は原作では隙間だらけなので、思いとしてはこの1年の全ての隙間を埋め尽くしたい感もあるのですが……でもさすがに無理なので、時折この時期のお話も単発で書いていけたらな、と思ってます。
夏休みを終えたので、次の春くらいには琴子が国家試験受かったあたりのかをる子さん目線とか書きたいなー。
とりあえず、入江くんが神戸を去る日のかをるこさん目線のお話は、この神戸シリーズの最後としてひそかにあっためているんですけどね(((^^;)さよならお隣さんさん、みたいな………笑

コメントを毎回いただいて、ずっと励みに頑張ってきました。ここ最近、全くリコメを返せてなくて申し訳なかったです。あとがき終わったらちょっとずつ返信してまいりますので、お待ちくださいませ。

さあて、次はキミゴゴも終わらせないとねー(アイシテknightもね……)
でも他にも書きたいものは色々あるのだよ……(書くのが遅いので持ちネタを消化できないだけですが)
と、そんな感じのんびりペースでまだまだブログは続いていくと思いますので、よろしければお付き合いくださいね(((^^;)


さあ、もうすぐ琴子birthday♪イタキス期間の始まりだよー(^-^)v
それまで何も更新できないかもですが、birthdayには何かしらアップしたいと思ってます(^^)d


emaさまの病院本も鋭意編集中のようで、時折送られてくる経過画像イラストにわくわくしております(^^)d
待ち遠しいですね~~( ´∀`)


さあ、今年もみなさまとイタキス期間、楽しみましょう!














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Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

そうですよねー唐突な神戸の単身赴任と唐突な戻りは原作の中でも謎でした。入江くんが琴子と離れられないと認識するために必要だったのかもですけどね………^_^;
でもそのもやもやをちょっとは晴らせたようでよかったです。
パズルが埋まりましたかーー(^-^)vなんだか回収しきれてないようで心配だったので、そう思っていただけたならよかったです(((^^;)はい、無理のないようこれからもじみーに続けて参ります(^^)d

Re.momorin様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

労いのお言葉も嬉しいです。ふふ、私も読み手の時はそんなに細かいこと気にしないんですけどねー。こだわり始めたら気なってしまうんですよ。
ええ!神戸ご出身なんですねー。色々と粗が……(((^^;)ハーバーランドとか全くいったことないもので。こんなネットでちょっと調べたことを捏造したお話に地元感味あえてもらえたならよかった〜〜^_^;
はい、これからものんびり書いてまいりますので、よろしくお願いしますね!

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

マロンさんには最初から最後まできっちりとコメントいただき、時には相談にものっていただいて、ほんとうにありがとうございました。
はは、たしかに1話が長目ですかね。私も時折、もっと短くして、週に三回くらい更新した方がいいかなーと思ったりもするんですが、切り時を見失ったり、後に戻って書き直しがしたかったりするもので、結局この長さになっております(((^^;)

ふふ、ありがとうございます。余韻のあるラストをいつも目指しているので、そういってもらえて嬉しいです。
入江くんが劇的に変わるのはもう2年くらい先ですが、神戸の離れ離れの時期は琴子がいないといきていけない、ということを認識するための必要悪だったのかなーとも思えますね。マロンさんと話していて色々ヒントになることも多く、助けられました。

はーい、番外編、というかこの先の神戸のお話も時折書いていきますので、お待ちくださいませ(^^)d

Re.絢様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

絢さんからの時折いただくコメントに励まされてまいりました。最後までお付き合いありがとうございました(^_^)
ふふ、かをるこさんファンがまた1人〜〜(^^)dそのうち再登場もあるかと思いますので気長にお待ちくださいませ。

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Re.るなたま様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

労いの言葉もありがとうございました(^-^)
るなたまさんも幾度も感想や温かいコメントを寄せていただいて、励みになりました。
1話目の青空見てきてくださったんですねー。ありがとうございます♪ 私も時間があったら読み返したいと思いつつ、読み返したらきっと手直ししたくなるに違いないのです……f(^_^;
神戸のこの時期は妄想広がりますよね〜〜
はい、なるべく近いうちに次のお話も届けたいなーとは思っていますが、やっぱり琴子の誕生日になってしまうかしら……
病院本、申し込んで下さったんですね。入稿無事済んで、発行を待つのみのようですよ。私もめっちゃ楽しみなのです。私のは大したことないですが、一緒の誌面に載るのもおそれ多い素晴らしいメンバーで……待ちきれないですねぇ(//∇//)

色々お気遣いありがとうございました。台風のあとはまたいきなり暑く、寒暖差にヤられてしまいそうですね。るなたまさんもご自愛くださいませ。
最後までお付き合いありがとうございました‼

個別記事の管理2017-09-10 (Sun)



※※※※※※※※※※







病院から自宅まで初乗り料金だが、雨足が激しくなってきたこともあり、タクシーを使って帰ってきた。
エレベーターに飛び乗り、少し焦り気味に鍵を開ける。

「琴子!」

しんと静まりかえった気配に、すでに誰もいないことは察することができた。
寝室を確認したが、綺麗にベッドメイクされている。
花火を見に行く前に準備していたキャリーバックもない。

ーーもう駅に向かったのかーー。

しばし悄然と立ち尽くしてしまう。

あれからちゃんと眠ったのだろうか?
部屋は綺麗に掃除され、昨夜汚れた浴衣や下着なども洗濯したらしい。
浴室も綺麗に掃除され、室内干し用の竿に洗った浴衣が干されていた。
こんなにしっかりと家事をこなしていたのなら眠る暇などなかったのではと心配になる。

ふと、キッチンの方から妙な違和感を感じて振り返った。

「………なんだよ、こりゃ」

違和感の主は冷蔵庫だった。
シンプルですっきりしていた筈の冷蔵庫にあったのはーー琴子のドアップのキス顔写真だった。パソコン用のA4のコピー紙にほぼ実物大にプリントされたそれは、ファンシーなマグネットでデカデカと貼り付けられていた。
このカッパとカエルのマグネットはハーバーランドの雑貨屋で琴子が買っていたものだ。

「…………ったく、何考えてんだか……」

思わず誰もいないのに呆れたように口に出して呟く。
パソコンでのプリントアウトのやり方を教えたから、自分でデジカメで撮って印刷したのだろう。
写真用の紙ではないし、画質は荒いが、うっとりと瞳を閉じて唇を突き出している琴子の顔に、だんだんツボって来て笑いが込み上げてくる。

ふとダイニングテーブルを見ると、ルーズリーフに書かれた置き手紙があった。

『入江くんへ。今から忘れ物を届けるために病院に寄ってから、駅に向かいます。病院で会えることを期待してるけど、会えなかった時のために、一応お手紙書いておくね。色々迷惑かけて本当にごめんなさい。でも、デートも出来て楽しい夏休みだったよ!
入江くんと二人暮らしができて、きちょうな経験でした。また電話するね。
お仕事、無理しないよう頑張ってねー。ちゃんと寝て、身体に気を付けてね。
じゃあねー! 琴子 PS.1日1回はこの写真にkissしてね♪』



琴子…………

直樹は何度もそのメモ書きを読み直した。

しかし病院に寄るとは。
すれ違ってしまったのだろうか?
タクシーを使ったのが仇になってしまったかもしれない。

その時、家の電話が鳴った。
病院からである。

「はい、入江……」

『あー入江先生。入れ違いやー。入江先生が病院出たすぐ後に、琴子さん、ここ来はったんや。ほら、ナースシューズ借りたままやったからと、あの火傷の子から預かってた水風船を渡しに来たんやって。あの子のお見舞いのあと、そのまま新神戸の駅に向かうってーー。入江先生きっとすぐに戻るから待っとり、って引き留めたんやけど新幹線の時間に間に合わなくなるからって………』

直樹は佛円の言葉を最後まで聞くことなく、受話器を投げ捨て、再び飛び出した。















「琴子………!」

新神戸の駅の構内で、直樹は必死で琴子の姿を探した。
夏休み最後の日曜日である。既に雨は激しく降り始めていたが、台風直撃前に急いで移動したいという思いもあるのかもしれない。昼前の中途半端な時間な割りに2階のコンコースはかなり混雑している。売店や待合室を駆けずり回り琴子の姿を捜すが見つからなかった。
まだ発車時刻まで15分ほどあるが、もうホームで待っているのだろうか?
直樹は入場券を買って改札をくぐる。

3階にある上り線のホームへと上がり、琴子の姿を探し回る。指定券の号車を思い出し、その辺りの乗り場を目指すと、ほどなくベンチに腰掛けぼんやりしていた琴子の姿を見つけた。

ぼんやり、というよりは、ほぼ眠っている感じもする。時折かくりと首が倒れては起き上がる。

「琴子…!」

直樹が近寄って、ぽんと肩を叩くと、ぴくり、と振れ、そして「ひっ」と頓狂な声を出して飛び上がるようにベンチから腰を上げた。

そして肩を叩いた主が直樹と気付くと、しばし唖然とその姿を見つめる。

「へ? へ? ええーーっ!? な、なんで? 入江くん? う、うそっ! 本物?
ど、どーしてっっ」

幻ではないかと確かめるように直樹の身体をおそるおそる触れようとする。

「本物だぁ ………最後に一目会いたかったから、あたしの願望が見せた幻かと思った……」

そういってペタペタと直樹の身体を触りまくって、やっと嬉しそうに笑う琴子を思わずぐいっと引き寄せて抱き締めた。

「……入江くん……?」

「最後とかいうなよ。いつでも会えるだろうが」

「へ……? さすがにいつでも会える距離じゃ……」

この年、300系のぞみが運行開始されたが新神戸は停まらないし、まだ本数も多くはなかった。しかし東京が格段に近くなったのは確かだ。

「だいたい、あの冷蔵庫の写真はなんだ。変なもん貼りつけやがって」

「 へへへ。なんか予定外に唐突なお別れになっちゃったから、インパクトのある置き土産しておこうって。寂しくなった入江くんがいつでもあたしにキッスできるように……」

「インクジェットの味がするkissはお断りだな」

「えーやっぱ、ダメ~~?」

頭をかきながら、「ちぇー」と頬を膨らませる。

「本物でなきゃ、意味がない」

直樹の両手が琴子の膨らんだ頬を挟み込む。

「だから、とりあえず本物を目一杯補充しておくから」

「……?」

不思議そうに直樹を見つめる琴子の唇が優しく塞がれた。

「………ん……」

こんな人の多いホームで……と一瞬びっくりした琴子だが、すぐに瞳を閉じてそのキスを受け入れる。

長いキスだった。
雑踏のざわめきも肌に突き刺さる視線も段々と感じなくなるくらいに、くらくらしてくるような熱いキス。
しかしホームに新幹線が入ってくるアナウンスが響き渡り、やっと唇を離す。

「……指定券とったのもう一本後のだろ?」

「……うん……」

熱いキスの余韻にぼうっとしている琴子の手を引きよせる。新幹線の乗車位置に並び始めた乗客たちに軽く押された琴子を、直樹はもう一度ベンチに腰掛けさせ、自分も隣に座った。

「おまえ、こんなところでうたた寝してたら置き引きにあっても文句言えねーぞ」

「へへ……結局、昨夜全然寝てなくて……」

「……さっさと帰らないからだろ。しばらく救急外来で手伝ってたって?」

「……うん。 やっぱり気になっちゃうじゃない」

琴子の性格を考えたら予想して然るべきだった。

「濡れたまんまでそんなことしてたら風邪引くだろうが」

「それは入江くんも一緒じゃない」

「おれは手術着変えるときに全部着替えたし」

「……そっか。かをる子さんにも心配かけちゃったみたいだし、申し訳なかったな……」

「森村さん?」

「うん。あたしが帰ってくるまで、気になって眠れなくてずっと玄関の音に耳をそばだててたみたいで。あたしが玄関の鍵をカチャカチャ開けてたら隣から飛び出してきて、『良かった~~!』って、抱きつかれちゃった……」

ニュース速報で花火大会会場の事故を聞いて、もしや巻き込まれていないかすごく心配していたらしい。

『コ〇ンくんが事件に遭遇するのと琴子さんが事件に巻き込まれるのとどっちが多いかってくらい、いい勝負なんだもの。そりゃ心配もするわよ』

結局、翌朝、朝イチの新幹線に乗って名古屋のイベントに出掛ける予定のかをる子と、寝てしまったらやはり起きれそうにない琴子は、ともに徹夜で喋り明かし、朝旅立つかをる子を見送ったあと、寝ないようにずっと部屋の掃除やら洗濯やアイロンがけなど家事をこなしていたのだと言う。

「かをる子さんには最後まで迷惑かけちゃった。申し訳なかったなー。とりあえずお友達と新幹線に乗るらしいから、寝過ごすことはないっていってたけど。あたしも終点だから、新幹線の中で爆睡しても大丈夫かなーって」

「………お袋にホームまで迎えにいくよう頼んでおくよ」

「ええ? 大丈夫だよ。流石に東京駅なら起こされるだろうから、折り返してまた神戸に戻ってくるようなことは……」

「……ないだろうけどな。清掃あるから。東京駅から無事に家にたどり着くか心配だ」

「えー意外と心配症なんだね、入江くんって!」

ころころ笑う琴子に、誰のせいだ、と頭を抱えたくなる。

そのあとホームに到着した東京行きのこだまを一本見送り、お互いにあれからあったことを話した。
運ばれた負傷者が全員無事であったことに琴子は心から嬉しそうに「本当によかったよ……」と手を合わせて呟く。

「あの子の火傷も多分、痕にはならないと思う。水飲み場からホース引っ張ってきて冷やした甲斐があったな」

直樹がトリアージしている間にとっさに琴子が流水で冷やしたのだ。

「昔、入江くんがやってくれたの思い出してた」

「味噌なかったしな」

「もう、流石にあたしだって勉強してるから、味噌だのアロエだのは雑菌入るからダメって知ってるよー」

ふふふっと笑い、昔を懐かしむように遠くを見つめる。

「………ここに来るまえに病院に行って……入江くんとすれ違っちゃったって聞いて……入江くんがあたしを心配して家に戻っていったってことが、すっごく嬉しかったんだけど、なんかこのまま二人の未来を暗示しているようで切なくなっちゃってたの」

少し潤んだ瞳で直樹を真っ直ぐに見つめる。

「大袈裟だな」

「もう一生すれ違ってしまうような気がしてきて」

「そんな訳あるかよ」

へへへっと舌を出して笑ってから、

「昨日のあのドタバタのまんまお別れで、しばらく会えないと思ってたから、今、こうしてわざわざお見送りにきてくれたなんて、もう、めっちゃ嬉しいよーーっ」

そして直樹の胸にがしっ飛び付いてくる琴子に、思わず胸の奥底からいとおしさが沸き上がってくる。

ベンチに腰掛けたまま、もう一度抱き締めてキスをした。
何度も、何度も。昨日の夜を埋め合わせるように。

ーー飛んだバカップルと思われているだろうがかまうものか。あと、たった数分で琴子の乗る新幹線が来てしまうのだ。

「……入江くん……みんな見てるよ」

「いいよ、別に」

琴子は、恥ずかしさや嬉しさでくらくらしながらも、直樹が時折こんなふうにスイッチが入ると周囲の視線など全く気にしなくなることを少し思い出していた。
ほんの数ヵ月前、直樹の卒業式でも同じようなことがあった気がする。
なんだかあの春の日が遥か遠い昔のようにも思われる。そして別れの切なさの度合いはあの日よりどんどん増していく。

直樹にしても、3月の時よりも、6月の時よりも、今日の方が琴子が傍に居なくなるという喪失感や虚無感が増していることを実感していた。それくらいこの一ヶ月は琴子の存在が彼の生活の全てを占拠していたのだ。


『11時××分東京行きひかり×××号まもなく到着します…………』

到着のアナウンスが流れて、二人はやっと互いの身体を無理矢理に引き剥がし、ベンチから立った。

「じゃ、じゃあね……入江くん」

「ああ」

「また電話するね?」

「ああ」

「国試の勉強、頑張るね」

「その前に前期試験あるだろ?」

「う、うん。もちろん、頑張るよ。明日からのインターンシップもね」

無理矢理笑顔を作り、力こぶをみせる。

「特養ホームだっけ? 今度は年寄り相手に変なトラブル起こすなよ」

「……別に起こしたくて起こしてる訳じゃ……」

トヨばーちゃんみたいに強烈なキャラクターの人がいなければいいけど、とぼそぼそっと呟いた声は力なく消えて行く。

困ったように眉尻を下げた琴子の髪をくしゃりとかき混ぜながら、
「……わかってる。明日からは近くには居られないんだから、死にそーな目にだけは遭わないでくれ」と、告げる。表情は淡々としているが、実はかなり切実な願いだ。

「……がんばる」

その時、新幹線がホームに到着した。
暫くして扉が開かれると、ホームドアも開かれる。
綺麗に並んでいた乗客の波が動き始めた。
その列の一番最後についていた琴子は、慌てて列からずれてホーム柵の横に立った直樹に問いかけた。

「あ、あのね………次はーー」

次はいつ来ていいーー?

そう訊ねようとして口ごもる。応えようのない問いだとわかっていたから。
例え直樹が休みを取れたとしても、いつ呼び出されるかわからないのだから。

「………ううん、何でもない」

「琴子」

「何……?」

「多分、これからもっと忙しくなると思う」

「う、うん。そうだね。わかってるよ」

「予定していた研修スケジュールを色々組み立て直そうと思ってる。2年で受ける研修を出来るだけ前倒ししたいんだ。楡崎教授のチームでやってる研究も、なるべく早く結果が出せるようにしたいし」

「え? ああ、もしかして救命へ行くため?」

「いや。各務先生の誘いは断ろうと思う。医者になろうと思った最初の原点に立ち戻って考えると、やっぱり小児外科でしっかり研修を積みたい」

「うん。応援するよ、あたし」

「………ああ」

琴子が来てからずっと考えていたことだった。

「何にせよ、自宅に戻れる時間も少なくなって、電話にもなかなか出られないかもしれないけど……」

「い、いいよ。勝手に留守電いれとくから」

「ああ」

乗客の乗降が殆ど終わり、琴子は最後に新幹線のステップに足を掛け、振り向く。
直樹はホーム柵の向こうに立っていた。

出来れば新幹線の扉が閉まるその瞬間まで、手と手を触れ合わせていたかった。それに最後のキスも………
日本で二番目にこの駅に設置されたというホーム柵が、ベルリンの壁のように二人の間に立ちはだかる。

「待ってるよ。おまえのとりとめのない留守電へのお喋り」

「うん…! うん……! 」

「琴子……」

『まもなくドアが閉まります……』

直樹が何かを云おうとした時に、無情にもドアが閉まる。
琴子は涙でぐちゃぐちゃになった顔をガラス窓にぺったりと貼り付けていた。
そして、動き出した新幹線から、姿が見えなくなるまで手を振っていた。

「入江くん、入江くん、頑張ってね~~!!」

声は聞こえないがそう云っているのがしっかり分かる。

激しく雨が降り注ぎ、あっという間に視界から新幹線は消えていった。
直樹は見えなくなってからも暫くホームに立ち尽くしていた。



その後、台風は大きな被害もなく、関西を通過し、琴子の後を追うように関東へと進路を向けていった。次第に勢力の弱まっていったこの夏最後の台風は、東京でも甚大な被害が出ることはなかったーー。













9月10日(水)


「はい、浴衣の染み抜き。だいたい綺麗にとれたと思うわよ」

5連休のあとのほぼ休みなしの連日勤務、しかも自宅に帰ったのは4日振りだった。
本来なら休みの筈のその日も、昨夜からの急患で結局自宅マンションについたのは日暮れ近かった。
そして直樹が帰るのを待ちわびていたように、かをる子が玄関から顔をだして、クリーニングの袋を渡す。

「ありがとう。変なこと頼んで申し訳ない」

「いえいえ。泥まみれで血もついてたものねぇ」

洗濯したものの乾かなくて東京に持って帰れなかった浴衣は、よく見ると汚れがしっかり落ちていなくて、結局かをる子に帯と一緒にクリーニングに出してもらっておいたのだ。

「琴子さんは元気?」

「のようですよ。特養ホームでのインターンシップは何事もなく無事終わったようですし」

「そうなんだ。やっぱり彼女のトラブルはあなたと一緒にいる時に引き起こされるみたいね」

くすりと笑うかをる子に苦笑いを返すと、クリーニングの袋を受けとり礼を云う。

「琴子さんが電話で、冷蔵庫の写真どうしたか気にしてたんだけど」

例のキス顔写真を撮った時、かをる子も一緒だったらしい。にまにまと楽しげに聞いてきた。

「処分しましたよ。冷蔵庫にモノを貼るのは趣味じゃない」

仏頂面で答える直樹に、かをる子は思わずにやりと不敵な笑みを返す。

「そーだよね。滅多に帰らない自宅よりも肌身離さずの写真があるものね」

「…………なんのことです?」

怪訝そうに眉を潜めてかをる子を見る。

「病院で使ってるネームプレート。あの裏に琴子さんの写真入れてるでしょ?」

「………いつ見たんですか?」

怪訝な表情が不穏な表情に変わる。

「あーやっぱりそうなんだー。見たわけじゃないのよ。でも前にちらりと裏表がひっくり返った時に、写真が裏返して入ってるなーと思ったのよ。それでカマかけただけ」

琴子がこっそり直樹の鞄に忍ばせた結婚式の写真が部屋に飾られてなくてーーと嘆いた時、ふともしかして、と思ったのだった。

「……目敏いひとだ……」

直樹が忌々しそうにため息をつく。
ネックストライプのネームホルダーの、自分の顔写真と名前の裏に、確かに写真を入れていた。しかしひっくり返っても裏しか見えない。

「ただの厄除けです。あいつに余計なことを云わないでくださいよ」

「………厄除けって……」

ったく、素直じゃない隣人だな、と、かをる子も呆れ返るが、「ご利益はかなりありそうね」とにこやかに微笑みを返す。

「あいつのお守りは紙一重ですけどね。吉となるのか凶となるのか。でも吉凶は裏返しですから」

ドタバタした大学受験を思い出す。大変だったけど刺激的な出来事だった。あれが不幸な出来事だったのかといえば今となればそうではなかったのだと思える。



部屋に戻ると、いつも通り留守電を聴く。

『入江くん、元気~~? 夏休みもあと少しで終わって、来週からいよいよ大学始まるの。モトちゃんたちのお陰でレポートもだいたい片付けたし、あとは前期試験を頑張るからねーー!』

琴子の声を聴きながら着替えをする。
相変わらず脈絡のない話をだらだら喋り、そしてタイムアップで話は途中で途切れる。

「たまにはオチを聴かせてくれ」

一人くつくつ笑いながら寝室に入り、ベッドの脇のコルクボードに貼り付けた琴子のキス顔写真に話しかける。

浴衣をクリーニングの袋から出して、琴子が使っていた衣装ケースの箱に納めた。幾つかの衣類は置いていったままだ。

まだまだ残暑厳しく、何日か窓を開けることのなかった部屋は熱気が籠っている。直樹は部屋の窓を開けて空気を入れ替えた。
夕方の涼しい風がふわりと頬を撫でる。
それでも朝晩はめっきり涼しくなり、秋の足音が着実に近づいているのを感じていた。


ベッドの傍らにはキス顔写真の他にも、ハーバーランドで撮ったツーショット写真も飾られてある。
琴子の残した夏の忘れものたちと一緒にひとつのスペースができあがっていた。

浴衣の他にも下駄や巾着袋。
化粧品や片っぽだけのイヤリング。
書きづらそうなファンシーなシャーペン。

送り返す必要もないだろう。
どうせまたそのうち、この部屋に来るのだから。



直樹は久しぶりにベランダに出て、東京にも続く夕焼け空を見ながら、紫煙を燻らせる。
手にはコードレスの電話の子機を持っていた。

ーー話のオチを聞いておかないとな……

真っ赤な絵の具をオレンジ色と混ぜ合わせたような鮮やかなグラデーションが神戸の空を秋色に染め上げる。

ーー目の前に広がる空は切ないくらい美しかった。











ーーー1997年の夏休み〈了〉




※※※※※※※※※※※※※※




……………やっと、終わりました。
夏にギリギリセーフかしら。
あとがきはまた後日……(((^^;)


夕焼け空はフリー素材お借りしました。
自分で描くなり写真を撮るなりしたかったのですが……時間なく断念……(T_T)

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* by なおちゃん
あ=あ|おわちゃった

楽しかったです♪ * by ハニ
のののさん、こんばんは!
初めてコメントさせて頂きます!

1997年の夏休み
めっちゃ楽しく読ませて頂きました!
実を言うと、のののさんの二次小説は
私の中でナンバーワン!ってくらいツボなんです!
更新が待ち遠しいくらい(笑)
この1997年の夏休みシリーズも
入江くんや琴子ちゃんだけじゃなく
名脇役のメンバーみんな生き生きとして
今にも飛び出して来そうです!
誰かこのストーリーをマンガにして!
ってくらい小説とマンガで2度楽しみたいくらいです。
のののさんのお話しでこれからも
いろんな時代の入江くんと琴子ちゃんに
会いたいです!
ありがとうございました!

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Re.virgo様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

はじめまして! いつも読んでくださっていたのですね。思いきってコメントくださってとても嬉しいです。アメブロと違って拍手してくださった方の名前とかもわからないもので……拍手のついでに一言でも何かいただけるととても励みになります(^_^)
そうですね、琴子ちゃんの成長に入江くんの深い愛情(わかりづらいですけどねっ)……そんな風にいっていただいて嬉しいです。
一大巨編などという大層なものではないですが、最終回にうるうるしてもらえたなんて、とっても嬉しいです。
はい、これからも頑張ってイタキスワールド描いて行きたいとおもいます!

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ふふふ、そう、すれ違いドラマって好きなんですよね〜〜
私も、台キスでは神戸で離ればなれになるシーン、割といちゃいちゃしてるのが好きで。裕樹くんの顔を無理やり横に反らして琴子にキスするのとかねー(((^^;)
この別れのシーンがなかなかうまく書けなくて、マロンさんも巻き込んでお騒がせしてしまいましたが、あまりホーム柵でドタバタコメディにはなりませんでした笑 とりあえず切ない感じにもってこれたから
ま、いいかf(^_^;

琴子グッズに囲まれる入江くんもどうかと思いましたが、いいんですよね、ツンデレなんで笑

はい、やれやれです。やっと肩の荷が一個降りましたf(^_^;
現実に即して書くつもりが結局ラストは何もかも捏造ですが(天気に花火大会の日程に……当時の医療事情も段々いい加減に……)なんとか終えることができて、ほっとしております。最後までお付き合いくださってありがとうございました(^-^)v


Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

こちらこそ、最後までお付き合いありがとうございました。

入江くんがさっさと切り上げて東京に戻った時、予定の研修できずに帰ってきたのか? それは琴子ちゃん泣かせてわざわざ行った意味ないじゃん、と思って、予定の研修はクリアさせたかったんです。これくらい早くから動かないと、医者の勉強って甘くないだろうって。
スッキリ納得してもらえたならよかったです(^-^)v

かをるこさんは多分ちょいちょい出てきますf(^_^;
救命メンバーはどうかなーー^_^;
かがみんと姫子さん……ちょっと考えたりもしましたが……たぶんかがみんは、まどかさん一筋だろうなぁ〜〜

本当に紀子ママさんにもほぼ毎回コメントいただいて、色々励みになりました。お陰で無事完走できました(^-^)vありがとうございました♪

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

こっそり琴子ちゃんの写真もってるって、なんてツンデレ野郎なんだーと思いつつ。
私も昔は携帯の待受は娘だったけど……旦那の写真持ってたことないなー。旦那の待ち受けには女優さんの写真があったけど笑

最後までお付き合いありがとうございました(^-^)v


Re.butapanko様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

最後までお付き合いありがとうございました(^-^)v喜んでいただいてよかったです。
はい、これからも頑張ります!

個別記事の管理2017-09-03 (Sun)


すみません。終わりませんでした(いや、そんな予感はしてましたが)
でも、今度こそ、あと1話です………f(^^;





※※※※※※※※※※※







さて、話は少し時間を遡る。


「あーここだよ。この席! やっと座れる~~」

浴衣の着付けに少々手間取った琴子のせいで、予定より少し遅れて会場に到着した二人であったが、さらには混雑した露店で食べ物を調達していたために、桟敷席に座った時は、最初のスターマインが夜空を彩っていた。

「あれ? あたしたちだけ? 事務長ファミリーとか来てるかと思った」

桟敷席は病院だけで10席くらい確保していると聞いていたが、見知った顔は近くになかった。
既に暗いので顔もよく見えないが。

「あーお腹空いちゃったよ。ほら、入江くん、フランクフルト食べる?」

「あー、おまえケチャップ、浴衣に……!」

「きゃーーっ」

空を見上げる暇もなく、相変わらずのどたばたを繰り広げる琴子に、呆れつつも、空を見上げるよりも琴子を見ている方が飽きない。

それでもお腹を満たし落ち着いて海上から打ち上がる花火をじっくりと堪能しはじめた頃、直樹が花火の上がっていない空の様子を見てポツリと呟いた。

「………早めに帰った方がいいかもな。ちょっと雲行きが怪しい」

「ええ~~?」

直樹の言葉に琴子も花火の上がる方とは反対の空を見つめた。
雲間から稲光が垣間見えた。花火の音で気づかなかったが、雷鳴も響いているようだった。

「ほんとだ……台風の影響かな……?」

「だろうな」

風も強い。提灯が揺れ、花火大会の看板や幟旗がはたはたと靡く。
どんよりとした雲が物凄い速さで流れていく。
植栽の木々も大きく揺れていた。

「花火……大丈夫かな?」

「あまり風が強くなると中止するかもな」

「ええー。じゃあそれまでしっかり目に焼き付けなきゃ!」

そういってまたきらきらと瞳を輝かせて空を見上げる。
皮肉なことに風の流れが速い分、煙も早く流れ、間断なく弾ける花火は最後までくっきりと美しく見えた。

「綺麗………」

大きく花開いて一瞬のうちに消えていく花火は、夏の終わりを象徴するようで、ひどく刹那的に感じる。
綺麗だけど、寂しい。
琴子を空を見つめながら直樹のシャツの裾をぎゅっと掴んだ。



「あ………降ってきちゃった」

ぽつり、と最初の一滴を受けた時は、まだ花火は上がり続けていた。
しかし直樹は立ち上がり「そろそろ行くか」と琴子を促す。

「うん……」

琴子も仕方ない、といった風に少し寂しげに立ち上がり、桟敷席を後にする。
レインコートを取り出したり傘を取り出す観客もいたが、琴子たちのように立ち上がる者もちらほらいた。


突然の突風が吹き抜けたのは、琴子たちが露店の並ぶ通りを抜けたあとだった。
立っているのもやっとの強い風によろけた琴子を、直樹は庇うように抱きすくめる。
その直後だった。

「きゃあああーーーっ」

つんざく悲鳴と何かが倒れる音に、思わず振り返るとーー。

「おいっ誰かっ! 救急車!」

「しっかりしろ!」

「助けてぇぇーー子どもがっ」

怒号と悲鳴がいまだ混雑する通りの奥の方から聞こえる。

「い、いりえくん……!」

青ざめた表情の琴子が直樹の腕をぎゅっと掴んだ。

「行くぞ、琴子」

「う、うん……!」

二人は人混みの中を掻き分けて悲鳴のした方へと駆け出して行ったのだった。








* * *





「……暇だな……」

姫子はあくびをしながら読んでいた雑誌をソファに放った。

ここ数日は熱中症患者も落ち着き、救急外来の患者数も格段に減っていた。
その日はとくに緊急オペも急変もなかった為に、当直の姫子以外のスタッフは、仕事が終わらず帰れない佛円と、常に自宅に帰る気配のない各務だけである。

佛円はカルテ整理など雑務が山積みのようだが、姫子はソファに寝転がって雑誌を読んでいた。一応医学雑誌をのようだが。

「暇やないですよ。替わりにカルテ整理やってください」

「やなこった」

「ここが暇ってことは平和でいいことやないですか」

「嵐の前の束の間の平和だったりしてね」

「そんな恐ろしいこといわんといてください」

台風前なのに洒落にならへん、と姫子を軽く睨む。

「屋上で花火見てきはったらどーです?」

「面倒くさい。花火で萌える歳でもないしね」

「歳とか関係ないと思いますけど」

「今ごろは入江先生たちも花火みてんのかなー」

「そうやないですか? 琴子さんと二人でしっぽり……浴衣とか着はって……ええなぁ~~」

「あいつ、どうせ夜空より嫁の顔ばっか見てんだろ。嫌がらせに呼びつけてやろーか」

「マジで殺されますよ」

「5日も休ませてやったんだから上等だろ? 」

「姫子先生も明後日から休みなんでしょ? どっかに行かはるんですか?」

「実家に行くくらいかな。気が重いけど。どーせ見合いしろとか、なんとか……」

「あ……」

一瞬、窓辺から閃光が見えた。花火ではなくーー

「こりゃ、ひと雨くるかな……」

呼びつけるだのなんだの云っていたわりには心配そうに窓の外を見ている姫子に、佛円は思わず肩を震わせて笑いを噛み殺していた。

それから暫くしてからだった。
消防局からの受け入れ要請があったのはーー。

『中央消防です。花火大会会場で突風により露店の支柱が外れ崩壊。支柱直撃による頭部外傷1名、胸部打撲1名、飛散した揚げ油による皮膚熱傷2名、その他軽傷者5名です。重傷者の受け入れ可能でしょうか?』

「2名までなら可能です」

姫子が応える横から、「全員受け入れる!」各務が受話器を奪い取った。

「各務……無理だって。人手もベッドも足りない!」

「スタットコールをかけて救急外来にスタッフを集めろ。初療室にベッドをもう一台詰め込む。それから外来の処置室も使え」

「………たく……。佛円、入江先生呼んで。それから鈴木先生と本田もーーあーー熱傷患者もいるようだから、皮膚科へのコンサルも忘れずに!」

救命のナースたちにも非番のドクターたちを呼び出すように指示を出す。

「あれ?………でも入江先生ってもしかして……現場に……」

佛円が言いかけた時、救急車からの無線が入った。

『胸部打撲の患者をまず搬送します。40代男性、血圧80、脈拍100 意識混濁 体温36.3℃ーー』

患者のバイタルを聞き、医師たちの顔つきは緊迫したものに変わる。

『現場に偶然居合わせた医師のトリアージによって、この患者が腹腔内出血の恐れがあるため、緊急性が高いということで同乗し処置をしてもらっています。代わります』

「え……?」

姫子と佛円が顔を見合わせ、(もしや)と言葉に出さず互いに瞳と瞳で会話する。

ーーそして。
聞き覚えのある声が届けられた。

『入江です。脈拍126にはねあがりました。血圧50ーーいや、測定不可能。頸静脈怒張見られます。心音も微弱。恐らく心タンポナーデと思われます』

予想通りの声はさっきまでの話題の主であった。

「到着まであと何分かかる!?」

各務の問いかけに救急隊員が『道路状況が悪く、まだ10分ほどかかります』と返答する。

「間に合わねーな。入江、おまえ、心嚢穿刺の経験はあるか?」

『…………今、やってます』

落ち着いた声で帰ってきた答えに、一同思わず耳を疑った。

「おまえ、やってますって……何を平然と! もし心筋刺したらアウトやっ」

佛円の焦りまくる声とは対照的に、『大丈夫です。無事に溜まった血液は引いてきた』と平然と報告した。

心臓を圧迫している心嚢内の血液を抜かないとあっという間に死に至る。
だが、場所が場所なだけに心エコーを確認しながらでないと危険が伴う処置ではあった。緊急性の高いことが多いのでエコーなしでも行う場合があるが熟練の技術が必要だ。

「排液できたならいい。迅速な判断は大正解だ。5分待ってたら心停止だ」

『血圧戻りました。意識も覚醒したようです』

救急隊員の安堵の声が響く。

「何をぼやぼやしてる! 急いでストレッチャー持って玄関へ行け!」

各務に怒鳴られスタッフたちはバタバタと駆け出していった。



雨は小雨だった。
だが、強風の伴った温かな空気は不穏な気配を滲ませる。
道路に溜まった水溜まりから瞬間的に豪雨があったことも見てとれた。
やがて救急車が到着し、開かれた扉から見知った同僚が降りてきた。

「入江先生!」

「入江、患者の容態は?」

血まみれのシャツのまま、しかしいつも通りの冷静さで直樹は簡潔に状況を告げた。
病院のストレッチャーに移され、各務が容態を確認する。

「 だいぶ落ち着いているな。よし、緊急オペだ。オペ室に運ぶ。入江、おまえも助手につけ」

「はい」

心嚢穿刺というかなり緊張を伴う治療を行ったわりには、いつもと変わらぬ冷静さに、佛円は呆れ返るくらいに感心する。
ーーこいつ、絶対、嫁が倒れた時の方が動揺してたんちゃう?



患者についていこうととした直樹に、「琴子さん、一緒やなかったんか?」と佛円に問いかけられ、ああ、と門の方を指差す。
ちょうど二台目の救急車が辿り着いたところであった。

「あっちに乗ってるよ。この患者の子供なんだ。両足に揚げ油がかかって熱傷を負っている。範囲は狭いが、深いかもな。母親はいないようなので、琴子が傍に付いてるんだ」

すると玄関に横付けされた救急車から、琴子がストレッチャーと一緒にピョンと飛び降りてきた。

ーーなんや、軽い既視感を感じるわ……

初めて見た彼女もこんな風に救急車から降りてきたっけ。ほんの1ヶ月前のことだ。
もっとも今は泥まみれの浴衣に、崩れて乱れたアップの髪も雨で濡れそぼっている。

姫子が子供の方に駆け寄る。
救急隊員から説明を受けている間も、金魚の甚平を着た十歳くらいの少女は、苦痛に歪んだ顔で琴子の手を離さない。
救急車の中でずっと握っていたのだろう。

「琴子!」

「あ、入江くん! お父さんの方は大丈夫?」

「今からオペに入る。おまえはこのままタクシーで家に帰れ。そして風呂入って、少しでも早く寝ろ。出ないと明日東京戻れないぞ」

「え……でも……」

琴子は自分の手を離さない少女を見つめる。
だが、病院のストレッチャーに乗せられその手は無情に離された。

「おれは多分このまま帰れないから。おまえはちゃんと明日起きて一人で帰れよ」

「こ……ここでお別れなの?」

琴子の瞳が呆然と見開いて、すぐにうるうると涙目になる。

「別に永遠の別れじゃないだろ?」

くしゃっと琴子の雨に濡れそぼった髪に手をやって乱れた髪を軽く手櫛ですいた後、「じゃあな。風邪引かないようにしろよ」と、すぐに踵を返して院内に入っていく。

「琴子さん、気を付けてね」

姫子や佛円も琴子を気にしつつも患者の方が優先である。他にも救急車が次から次へと到着し、玄関前は慌ただしさに包まれた。
あまりにあっさりとした別れに、琴子はしばし茫然としてその場に残っていた。










8月31日(日)








「ああ……やっと一段落したな……」

嵐のような時間が過ぎ去って、一通りの処置が終わった時には、すで日付が変わっていた。


「全員、助かってよかったな」

「ああ」

直樹が処置した心タンポナーデの男性も、無事にオペが終わり、今は安定してICUで眠っている。
琴子が救急車に付き添ったその男性の子供も、隣のベッドで眠っていた。
足の火傷は深達性Ⅱ度の熱傷で、痕が残るかどうかは微妙なところである。揚げ油が点々とかかっただけで範囲が狭いのも幸いしたし、何より現場ですぐに琴子が流水で冷やした為に軽度ですみ、おそらく明日には退院できるだろう。
「あのお姉ちゃんは?」と奥さんのことをずっと訊ねていたぞ、と皮膚科に戻っていた神谷が、応援要請で久々に救命で処置をした後に教えてくれた。
救急車の中で、琴子はずっと痛がるその子を励まし続けていたようだ。



「はー。しかし、よく自分で心嚢穿刺なんてやったもんだ」

「ほんま、スゲー度胸だわ」

神谷はそのまましばらく勝手知ったる救命の医局で寛いでいた。神仏コンビの久々の復活である。

「医者はおれしかいない。やらなきゃ死ぬ。やる以外の選択肢なんてないだろ?」

「うわー。揺れる救急車ん中で5分で位置決めて胸に針を刺すなんて、おれ絶対無理や~~。そないな度胸ないわ~」

頭をかきむしった後、佛円がソンケーの眼差しで隣の同期を見つめる。
やっと挿管などは慣れたが、指導医の指示がなければ不安なことはまだまだ多い未熟な一年目だ。

「いや、おれ2年目だけどビビるな……」

神谷が肩を竦める。

「おまえ、やったことあったのか?」

「いや。でも処置を見たことは一度あったからな」

救命で研修をしていてよかった、と心から思ったものだ。小児科に居ただけなら中々経験できなかったかもしれない。

「………ったく可愛くない研修医だな。ふ つう、初めての処置はビビるだろ。こっちに指示を仰ぐだろ? 鬼頭先生、位置は何処に? 深さは? って、震える声で質問してこいっての」

姫子のぼやきを軽くスルーする。


「入江。今日はよくやったな」

マスコミや警察等の対応を終えた各務が医局に戻って来て、直樹の肩をぽんと叩いた。

「いえ……」

「だが、おまえは研修医である以上、先に無線で指示を仰ぐべきだったな。でないと万が一の時は全部一人で負うことになる。こちらの指示で処置をしたならば、指導医のおれの責任ですむ」

「自信はありましたから……各務先生に責任を負わせるつもりはありません」

毅然と答える生意気な研修医に、「これが嫁なら何の動揺もなく平然と穿刺できたかな?」と各務もにやりと不敵に微笑む。

「……………」

顔色ひとつ変えなかった直樹が一瞬眉を潜めた。生意気だが嘘をつけないこの男は瞬間的に想像したのだろう。

「………平然かどうかはわかりませんが、躊躇わずに穿刺したと思います」

だがきっぱりと答えた。たとえ相手が誰であろうと、行うことはただひとつだ。命を救うために選択の余地などないのだから。

「………正直ものだ」

くっくと笑い、各務もそれ以上は追及しなかった。

「せやけど、琴子さん、最後の最後までトラブルメーカーですよね~~。入江先生、ほんと大変ですよねぇ。お祓いでもした方がええんやないですか? 救急車に乗ってやってきて、最後の日まで救急車に乗るって……滅多にあることやないですよね」

悪気はないことは分かっているが、救命ナースのその言葉に、直樹の眉間に皺が寄る。
度重なる偶然の産物であり、決して琴子のせいではない。
自分が琴子を揶揄するのは構わないが他人に云われる筋合いではない。

「……トラブルメーカーというより奇跡の女だな。彼女がもし神戸に来ていなかったら、初日に出会った硬膜外血腫のお婆さんも、今日の心タンポナーデの患者も助からなかったかも知れない」

各務の一言に、「そ、そうですね……」と、すごすごとナースは医局を後にした。

「なかなか凄い女を嫁にしたな」

「はい」

「手離すなよ」

「離しませんよ、絶対。おれが離してもがむしゃらに張りついてくるだろうし」

「その慢心が仇をなすってこと覚えておけよ。想定外の出来事が世の中にはいくらでもあるんだ。おまえ自身も彼女と同じくらいのがむしゃらさを持ってがっちり掴んでいないと、ふいに手からすり抜けてしまうことがある」

「……………はい」

何度かその手を離しかけたが、なんとか取り戻せた。しかし、各務はもう二度と大切なものを取り戻すことは出来ないのだ。
神戸に琴子が来てから幾度か味わった恐怖。思い出したくもなかった。



だが、思い出す間もなく、再び別口の急患の搬送要請があり、夏の終わりの救命センターは再び慌ただしく時間が流れ始めた。

ーーそして、気がついたらとうに夜が明け、夏休み最後の日曜の朝が訪れていた。




「げ、もうこんな時間や。朝飯食う暇もなかった……」

佛円があくびをしながら医局の窓のブラインドを開けた。
台風前で空はどんよりと曇っているが、雨は上がっている。
風は強いのか、木々が揺らめいているのが見えた。
台風は予報通り関西に影響が出始めるのは午後になってからのようだった。

「なんや、久々に忙しかったわ……」

「そーだな」

琴子はちゃんと起きれただろうか?
もう9時半である。
新幹線の時間から逆算したら、起きて仕度を済ませておかねばならない時間だ。
寝過ごして午後になったら新幹線は運休の可能性が高い。
家に電話をかけようか一瞬逡巡した時だったーー
医局のドアがノックされた。
ナースがビニール袋を手に持って入ってきた。

「入江先生。これ、奥さんの下駄じゃないですか? 救急外来のナースが届けてくれたんですけど」

渡されたビニール袋の中は黒っぽい下駄であった。
水色のちりめんの鼻緒は確かに見た記憶がある。しかし、何故?

「あいつ、裸足で帰ったのか?」

「奥さん、昨夜、しばらく救急外来の待ち合いロビーで軽傷の患者さんーーお年寄りやお子さんの相手をしてくださってたようで……ずっと下駄を履いてて足の指の間から血が出てたみたいなんです。それに気がついたナースが、予備のナースシューズを貸したらしくて」

確かに鼻緒の結び目に血がついていた。
花火を見ている時も少し歩き辛そうだったことを思い出した。

「すぐに帰れといったのに……」

「軽傷の患者さん全員診察終わったあとにタクシー呼んで帰りはったみたいですよ。ICUに運ばれた患者さんの様子を気にしてたようですけど、助かったときいてすごくホッとしてたらしいです」

「…… そうですか……」

そのまま下駄を置いて、ナースシューズを履いたまま帰ってしまったらしい。
直樹はしばらくその下駄を持って立ちつくす。

「入江先生、琴子さんのところに行かんでええんか?」

佛円の問いに、「いや……まださっきの患者の予後が気になる状態だし……」と直樹は首を振った。

「ちゃんと起きてるかどうかだけは心配だから、一応電話しておく」

そういって受話器を取り、外線ボタンを押す。

「…………………」

「どうしたん? 出ないんか?」

しばらく受話器を耳に当てていても話す様子のない直樹に、佛円が声をかける。

「ああ。出ない。………おかしいな。まだ家を出るのには早いが」

新幹線は11時だから、まだかなり早い。

しつこいコールにも起きないくらい爆睡しているのだろうか。夜半過ぎに帰ったのならその可能性が高いだろう。
それとも、また何かあったのか………
途端にいい知れぬ不安が押し寄せる。

「………………抜けていいぞ」

各務がやって来て直樹に告げた。

「いや、でも……まだ患者の容態が」

「他の連中もいる。すぐ急変することはないだろう」

「意地張らんと。心配で心配でたまらないんやろ? ちゃんと見送ってやり」

「そうそう。あんなドタバタした中でお別れなのは色々心残りだろうし」

皆に後押しされ、直樹は下駄の入ったビニール袋を持って、「悪い。あとは頼む!」と医局から飛び出して行ったのだった。







※※※※※※※※※


と、いうわけで。

次こそは!
間違いなく、終ります(((^^;)



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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
* Comment : (11) * Trackback : (-) |

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そうだよね? * by なおなお
琴子ちゃんの事だもんあんな状態の、患者さん達をみて?素直に帰る琴子ちゃんじゃないですよね?入江君も琴子ちゃんのお人好しは、わかってるだけに☺琴子ちゃん患者さんを放り出して帰らなそうだな。

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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメが遅くなり申し訳なかったです。

花火の詳細シーンはスルーするつもりだったのに、しっかり描いて結局1話のびてしまいました^_^;そして、ナースなマロン様にお伺いたてようかと思いつつも、そのままアップしちゃったなんちゃって医療ドラマ風味です。最初は気胸でかいてましたが、前も使ったので今度は心タンナーデ。医療ドラマの定番ネタです笑
直樹さんだから完璧に処置してますが、失敗したら大問題ですよね。そうそう、1年後にもまた……^_^;
はい、ドタバタお別れなのです。
でもこのままじゃあんまり………最後に、やっぱり救命の愉快な仲間たちに背中を押させようと思ってました(^-^)v

Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメが遅くなって申し訳ありません。
そうですね、ほんとうに色々なことのあった神戸でした。
寂しいといってもらえて嬉しいです。が! 夏休みは終わるけど、まだ10ヶ月近く直樹さん神戸に居座ってますからねぇ。もしかしたら、まだまだ神戸のお話、書くかもですよー( °∇^)]
そうそう、紀子ママのいないってのがミソですよね。直樹がちょっと素直になれてます。デレ度が高いのがむふふですよねー。

お気遣いありがとうございます。ちびぞうさんも、お気をつけて^_^

Re.ルミ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

楽しみにしていただいて嬉しいです。
琴子ちゃん、何処にいるんでしょう(笑)って、もうバレバレですが笑 リコメが遅くて申し訳なかったです(((^^;)



Re.ルミ様 * by ののの
続けて拍手コメントもありがとうございました♪

琴子ちゃん、ナースシューズ借りてそのまま帰っちゃったようですよー^_^;わかりづらくてすみませんっ

Re.なおなお様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメ遅くなって申し訳ありませんでしたm(__)m

そうですよね。帰れと言われて素直に帰れるわけのない琴子ちゃんですが、極力入江くんの邪魔にはなりたくないと思っている健気な琴子ちゃんでした(^-^)