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個別記事の管理2017-06-25 (Sun)
大変お久しぶりの『夏休み』です。
ありゃ、もう6月も終わりです………(ーー;)本物の夏休みがまもなくやってくる~~~っ(*_*)
なんだろうこの加速度的な時間の速さは………






※※※※※※※※※※※※






8月25日(月)




その日は妙に順調な1日のスタートだった。週明けに相応しい、爽やかな朝だ。遠くで微かに聴こえるツクツクボウシの鳴き声とともに猛暑も随分と落ち着いて、朝からの殺人的な日差しも今日は随分と穏やかだ。
目覚まし時計のアラームと同時に目がぱっちりと覚めて直樹と同時にベッドから起き上がれたし、朝御飯の目玉焼きもいい感じで半熟になった。

「まあまあじゃない?」

若干焦げ気味だが、一応セーフだろうという感じのトーストも目玉焼きと一緒に完食してくれ(いつもは顔をしかめながら完食)、淹れたてのコーヒーを美味しそうに飲み干したあと、「まあまあ」 という直樹にしては最上級の誉め言葉に、琴子も朝から幸せな気分に浸っていた。
神戸での最後の1週間が始まる月曜日。
はじめてちゃんと奥さんらしく朝の支度をこなせたことが無性に嬉しい。

「いってらっしゃーい。お仕事頑張ってねー」

新婚のように玄関先まで出て、ほっぺにキスをして(少し顔をしかめたが嫌がらなかったのでさらにテンションアップ)出勤していく直樹を見送ったあと、軽く掃除をして、朝の涼しいうちに頑張らなくちゃと国家試験対応の問題集を開く。
まるで、神がかったようにするすると問題も解け、夏休み明けの模試も案外いけるんじゃないかと妙な自信も出てきていた。

午後からは病院に向かい、ここ数日の日課になっている面会時間に合わせて圭子の見舞いに行く
すっかり顔色がよくなり、表情も明るくなっていた。

「紹介していただいた弁護士さんがすごくいい人で親身になってもらって……」

警察の事情聴取も一度だけあったらしい。圭子は正直に何もかも告白したらしいが、「何分震災時のことだから裏が取れるかどうか……」と実に拍子抜けの対応をされたらしい。

圭子とお喋りをしたあとはつぼみルームにお邪魔して、卒論のためのアンケートの回収と中途半端になってしまったボランティアの日誌作成など、色々あって頓挫してしまっていた課題をいくつか片づけた。

「5日もお休みもらえるん? 入江先生とデートかぁ……ええなぁ」

くるみに話したらいくつかのデートスポットを教えてくれた。

「やっぱイチオシは摩耶山掬星台の夜景やろな~~」

うんうん、ロマンチックよねー。雑誌に載っていた写真を見ただけでもその美しさにうっとりしてしまう。

「そうや、今週末には海辺で花火大会もあるんよ。8月の頭にある海上花火大会よりはしょぼいんやけど。今年の夏、最後の花火大会やから、そこそこの賑わいやで」

まあ、花火大会! もしかして、もしかして……万が一のために持ってきた浴衣が役にたっちゃう~~?

琴子の頬がにへらーと緩む。

「船での神戸港のディナークルーズなんかも人気やし」

「うん、それも素敵~~」

一つ一つそのシチュエーションを妄想して、ひとり変顔大会をしている琴子に、くるみは呆れ顔で肩を竦める。
「……気いつけや。あんたが出掛けたら、ロープウェイが宙吊りになったり、船が沈みかかったり、花火大会で花火が地上で爆発したりとか………なんか、ただじゃすまへん気いするわ」とぼそっと呟いた。

「不吉なこといわないでよ~~」

くるみも先日のこの場所の事件で訳もわからず巻き込まれたクチなので、つい揶揄したくなったようだ。

「 ふーんだ。いくらなんでもそうそう事件ばっかり起きませんって。あたしの身が持たないじゃない」

言い返す琴子に、「そーいや、台風も来てるようやで」とくるみは思い出したように嬉しくない情報をくれた。

「そ、そうなの~~? こんなに晴天続きなのに!」

「そろそろ雨も降ってくれへんと、水不足で色々困るやろ?」

確かに猛暑続きで雨もなく、このままでは節水宣言や野菜の価格高騰が予想されるとニュースもしきりに警告していた。

とはいえ、やっと直樹が休みをとれると言うのに台風とは、天の嫌がらせとしか思えない。

「まあまだ進路ははっきりせぇへんし。てるてる坊主でも作って備えとき」

そう励まされたのだが、少しばかりテンションが下がってくる琴子である。いやな予感はひしひしと感じる。
この後、保育園からこの託児ルームに預けられる広大を待とうかと思いながらも、やはり勉強しておかないとね、と思い直してくるみに別れを告げてこのつぼみルームを後にした。

救命に寄り道したい、という気持ちをぐっと押さえ、「明日から入江くんはお休みなのよー毎日一緒なのよー」と自分に言い聞かせ、1階ロビーのエレベーターのボタンを押した。


「あら、あんた入江さんやろ?」

ロビーを通りすぎて玄関に向かおうとした時である。午後の外来ロビーは既に閑散としていた。そんな中で唐突に後ろから声を掛けられて、「え?」と反射的に振り返るとーー。

「あーー!! あーっ! あのときの!! えーと、えーと…………」

初老というにはまだまだ若々しい婦人だった。すぐに誰であるかは思い出せたが、名前がぱっと出てこず、口をパクパクとさせて、記憶の引き出しを片っ端から開けまくる琴子。

「丸山です。そのせつはほんまにありがとな。よかったわー。やっと会えたわ。ちゃんとお礼したかったんよ」

「そうそう、丸山さん! もうすっかり元気なんですねー! よかったぁ」

実は入院中に気になって一度だけ見舞いに訪れたのだが、検査に出ていて会えず仕舞いだったのだ。

「入江さんのお陰やわ。あんたが救急車呼んでくれへんかったら、死んでたかもしれへん云われてぞわっとしたで」

丸山一枝と出会ったのは琴子が神戸に訪れた初日だった。自転車で倒れて怪我をした彼女とともに救急車で直樹のいるこの病院に搬送してもらったのだった。

「今日は退院後の検診に来たんや。もうこれで通院もおしまいや。腕の骨折もようやっとギブスも取れたしなぁ」

「ほんとに良かったですっ」

また一人前の看護婦ではないけれど、関わった人が完治するのは本当に嬉しい。
琴子は丸山一枝の手をとって喜んだ。

ロビーの待ち合いのベンチに座って、少し互いの話をした。
腕が自由に使えるようになるまで大阪に嫁いだ娘さんが世話をしてくれるのだと嬉しそうに話してくれる。

「その娘の旦那さんのお兄さんな、神戸のホテルで支配人をしてるんよ。毎年食事券や宿泊券もろうて、うちもたまにお呼ばれしてるんよ」

「わー素敵ですねぇ。羨ましい」

「ハーバーランド内のホテルで、夜景もそれは綺麗なんや」

「いいですねぇ」

「でな。娘から、おかんを助けてくれたお嬢さんにもういっぺん会えたらぜひその宿泊券、使ってもろうて、と頼まれててな。もし今日会えへんかったら、あんたの旦那さんの入江先生んとこに行こうかと思うてたとこなんや。会えてよかったわー」

「へぇーーいいですね…………え? ええっ? ほんとに!? あたしに? えーーっこれ、29Fって、めっちゃ景色良さそうじゃないですかぁ~~!!」











「ーーで、宿泊券を貰ったのか?」

夜、帰宅した直樹に琴子はその日にあったことを機関銃のように話し続けていた。
直樹も琴子が救急車に乗せて連れてきた患者が無事日常生活に戻れたと聞いて、安堵の想いを感じながらも、思いもかけない高額なお礼に眉を潜める。

「夏休みの時期だから空いてる日があまりないらしくて。たまたま明後日に一部屋キャンセルあったって………その日がオッケーなら改めて連絡してくださいってことなの………」

「………明後日か………」

直樹が少し困った表情を見せたので、琴子は思わず「え? もしかしてやっぱり休みがなくなっちゃった?」と顔を不安げに曇らせる。

「いや……実はおれもペアチケット貰ったんだ」

そして直樹がポケットから取り出したのは、『神戸クルージングディナー』のチケット。

「きゃあーすごーい。ナイトクルージングね。まあ、ディナーはA5ランク神戸牛ステーキですってぇ~~」

直樹から見せられたチケットとチラシを
手にとってまじまじと眺め、思わず歓喜の声をあげる。

「おまえ、港のロマンチックな夜景より神戸牛かよ………」

呆れる直樹に、頭をかきながら「えへ……だってこっち来ても神戸牛なんて見たこともないし……」と弁解しつつ、「 でも、誰がこのチケットを……」と不思議そうに訊ねた。

「水島さん………あの香純さんのお母さん。覚えてるか?」

「ああ、足の骨折で入院してた……」

「今日、通院のついでに医局に寄ってくれて、娘が迷惑かけたお詫びとお礼だといってこれをーー」

「ええーー!」

「香純さんの旦那……出版関係って云ってたろ? その伝らしい」

「まーー!! い、いいのかしら……」

「一応固辞したんだが。おれが貰うのはマズイけど、おまえに渡してくれってことだから、他のメンバーからも貰っとけ、って………」

「嬉しい! 嬉しいけど、思いっきり日にちが被ってるね……」

「ああ。あと、神谷先生から映画の無料観賞券もらった。救命の研修終わった餞別だってさ」

「わー。ハーバーランドの映画館だね。いっぺん買い物とかにも行ってみたかったんだ~~」

「このホテルもハーバーランド内みたいだな……」

「う、うん。そういえば、そういってたけど……」

ああ、こんなに皆さんにあれこれしてもらっちゃっていいのかしらー? でも、嬉しいっ!!
でも、どうしよう。そんなにあれこれ行けないよね~~

でも、クルージングの後にホテルに泊まって……映画は翌日で……なんとかなるのかもーー

琴子は顔を紅潮させて、それは嬉しそうに頂き物のチケットたちをテーブルの上に置いて、頬に手を当ててスケジュールを頭の中で組み立てているようだった。

ーーと、その時。

ピンポーン

「あら、こんな時間に……」

インターホンが鳴り、直樹が対応すると郵便局員だった。

「速達書留です……」

判子を押して、書留封筒を手にして戻ってきた直樹。

「おふくろから」

「ええ? お義母さん?」

封を切って出した中味はーー

「旅行券だ。『有馬温泉』のーー」

「まーーっ お義母さんっ素敵~~」

思わず覗きこむ琴子に、軽くため息をつきながら、「でも、これも明後日だぜ?」とチケットを手渡す。

「ええっ」

驚く琴子に、「さて、どうする? 神戸のホテルか有馬温泉か?」と問いかける。

「ど、どうしよう。嬉しい悩みだわ、こんなことって ………」

「おれは何処でもいいから。おまえの行きたいとこに行けばいいよ」

「え、うん。ああ、困ったわ……」

困った困ったと机に並べられた4セットのチケットを見ながら頭を抱える琴子。
せっかくの皆様の厚意をどれも無下にできないし、どのプランも魅力的だ。

風呂から上がってきてもまだダイニングで悩んでる琴子に呆れ返りながら、「とりあえず明日の予定は何もないんだろ?」と直樹は琴子の頭をくしゃっとかきまぜ鼻を摘まむ。

「ふがっ……ふぁにふんの(何すんの)~~」

「映画以外は日にち指定だから、とりあえず明後日のことは明日考えればいい。今夜はとりあえず………」

そのまま直樹の唇が琴子の唇に降ってきた。軽く啄まれて、すぐに離れる。

「おまえもさっさと風呂はいってこい!
そのあとバイタルチェックしてドクターの許可が出たら解禁だから」

「へ? ドクター?」

琴子が首を傾げながら直樹を指差す。

「そう。おれの」にやりと笑って直樹も自分を指差した。

「解禁………? なんの?」

琴子の相変わらずな天然な回答に、直樹は思わず引き寄せて耳元でこそっと囁いた。

琴子の顔が、ぼんっと赤くなる。

「…………お風呂、いってきます」

「手短によろしく」

「手短に………念入りに………はい……」

頭を沸騰させながら琴子がよろよろと浴室に消えていった。

あいつ、着替え持ってってないな。
ま、別に必要ねーか。

とにかく。
明後日のことよりはまずは今夜なのであるーーー。





* * *





人気のない夜のマンションは少し寂しげで、つい早足になる。かつかつと響く自分の足音を追い抜くようにようやく自室の扉の前にたどり着いて少しほっとする。
今日はオタク仲間の友人と食事をしてきたので、少し帰りが遅くなったのだ。
あたしは、お隣さんの玄関をしばし眺めて逡巡する。
玄関の小窓からは灯りが漏れていない。
留守……?
ーーということはないだろう。
現在21時。
就寝するには早すぎる時間だけど………

とはいえ、お隣さんを訪問する時間帯でもない。

あたしはバッグから封筒を取りだしてペンでメモ書きをした。

実は、これ、友人といく予定だった週末にある花火大会の桟敷席のチケット。
出入りの営業が事務長に渡してたおこぼれをもらったもの。
事務長ファミリーと同じ桟敷で観覧するのは遠慮したいし、友人も用事があってパスだと言うので、慎んでお隣に進呈しようと言うわけだ。
先日、入江先生についずけずけと余計なことをいってしまったとはいえ、別にそのお詫びのつもりじゃないのよ。
若干週末の天気が怪しいのが気になるわよね。こればっかりは琴子さんの悪運を祈るしかない。

今日、救命に渡しに行けば良かったのだけど、給料日前で鬼のように忙しくてそれどころじゃなかったのよ。

あたしは玄関扉のドアポストにそおっと封筒を忍ばせようと鉄製の蓋を少し押す。
すると。

微かに開いた隙間から一瞬琴子さんの声が漏れ聞こえた。

「ああ……っ あ………あん」

あたしは慌てて音をたてないように封筒を受け口に落とした。

「…………………」


えーと//////

ごめん。聴くつもりじゃなかったのよーー。信じてねー。
でもどうしてこう、あたしってば…………。

あたしは軽く扉に向かって手を合わせて頭を下げる。


でも。
よかったねー。色々あったけど、やっと、悶々の日々から解放されたのね……入江先生。

琴子さんも。
ふふ。
明日は動けないわね、きっと。

グッドラック。


ーーーおやすみなさい。







※※※※※※※※※※※※





琴子ちゃんの人徳が、全部返ってきた回でした……f(^^;


去年、emaさんちの夏本に寄稿した夏休み番外編のお話とは違ったデートになる予定です。あっちはパラレル、と認識していただければ嬉しいのですが(^_^;)

さて、みなさんは二人にどこでデートをして欲しいですか?(まだはっきり決めてないのであった……)





*一度やってみたかった拍手お礼ページを追加しました。やり方を教えていただいたりん様、むじかく様、ema様、ありがとうございました。ほんとに、PC音痴なので、かなり苦戦しましたが(((^^;)ちゃんと適用できなかったらどうしよう(T_T)

えーと、内容は1997年の夏休み(38.5)です。本文ではしょったえろです。がっつりえろですが、若干中途半端なんです……

なので、18歳未満の方とえろは苦手な方は、水色の拍手ボタン押さないでくださいねー。

では、短いですが、ご興味のある方は上の拍手ボタンをぽちっとどうぞ~~(//∇//)






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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

本当に、目まぐるしくも壮絶(爆)な日々でした……色々ありすぎて私が混乱してますよ(えへっ)
そう、あと五日は穏やかに……といきたいとこですが、それは琴子なので……どうでしょう笑

ふふ、ハーバーランドの映画館……マロンさんたちがイタキス映画みたとことおなじ仕様なのかなー?いや、流石に20年たってると変わってるだろうなー(シネコンとかないよね)と思いながら書いてましたよ。

かをる子さん、ついついこーゆー役回りをふってしまいます。もう隣人の宿命ですねぇ。

デートプラン……色々ご意見ありがとうございます。LINEでのお話も参考に、これから考えまーす♪
ええ、もちろんえろ必須で(//∇//)

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

麻央さんの訃報はショックでしたね。少しでも私のお話がheorakimさんの癒しになれたなら良かったです。
ほんとうに、入江夫妻には共白髪で末永く幸せに同じ時間を過ごしていただきたいものです。
ほんわかになるかどうか微妙ですが、二人らしい夏休みの締めくくりを早く書きたいなーと思っております(^-^)v

Re.絢様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ほんとに、すべての場所でデートさせてあげたかったのですが、やはり5日間じゃ無理でしょうねぇ。
ふふ、悩んで終わらないようにしなくっちゃね、琴子ちゃん^_^;

Re.マロン様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

お礼ページ、真っ先に気づいていただいて嬉しいです(^-^)v

そうそう、もうさんざんお預けされた後なんで、BD堪能してる余裕なんてないんですよねー。
ほんとに絶倫直樹で申し訳ない(((^^;)

そうですねー
移動の問題と防音の問題。移動は佛円くんの車を借りるとして、防音は離れのある高級旅館で笑(なんといっても紀子ママチョイス)
でもホテルも捨てがたい。
さて、まだ悩んでますよー笑

Re.ひたすら素敵です様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

毎回更新お待ちくださってありがとうございます‼ 素敵なお話といっていただいてとっても嬉しいです(^-^)v

まー旦那さまが大好きできゅんきゅんされてるなんて羨ましい‼ リアル琴子ちゃんじゃありませんかー。いやいやイタキス二次読まなくても更年期なんてぶっ飛びそうですが、このお話がきゅんきゅんの弾みになれば幸いでございます(((^^;)
はーい、頑張って更新いたしますので、しばしお待ち下さいね。

Re.りん様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

こちらこそ、ご無沙汰しております。りん様宅の拍手オマケページ、このオマケのお得感、いいなあと思ってましたので、いつかチャレンジしたかったんです。むじかく様経由でいただいたりん様の手引き書とサイト様がとっても分かりやすく、時間はかかったものの、ようやくできました。ほんとにありがとうございました♪

ふふ、温泉に一票ですかー。色々意見が別れているのでどうしようかなーー(((^^;)
参考にさせていただきますね(^^)d

個別記事の管理2017-06-10 (Sat)


日付変わっちゃいましたが……
今夜はストロベリームーンだったそうで。



ええ、『月』好きな私がネタにしないわけがないのです。
でも思い付いたのが遅かった………f(^^;
しかも短時間でささっと書いたので短いしクオリティも低いですが……

そして、展開もパターン化してる笑

そのうえ、2000年の6月の満月は17日だった……来週じゃん(まさかのマイバースディ)
その頃ストロベリームーンなんて、みんな知ってた?ーーなんてことは置いておいて笑

続きから、どうぞーー。




※※※※※※※※※※※※






「ねぇねぇ、入江くん、知ってる? 今夜はストロベリームーンなんだよー」

琴子が、それはそれは嬉しそうな満面の笑みを携えてやってきた。
いや、微笑み以外にも手には珍妙なものを携えている。

「琴子………なんだ、そりゃ?」

書斎でパソコンに向かっていた直樹は、思わずその物体を見て、椅子からずり落ちそうになった。

琴子の手にあるのは、いわゆる十五夜のお月見団子をのせる『三宝』という木製の神具である。
その上に乗っているのは団子でなくて、大粒の真っ赤なイチゴ。
きちんと奉書紙を敷いているが、載ってるのがイチゴなので、白い紙が少し赤く染みていた。

「……… それは……違うんじゃないか?」

「そーお? でも、この方がお月見っぽくていいじゃない。イチゴ、美味しいし」

「もう、旬は終わりがけだろう? 」

イチゴ狩りもそろそろシーズンオフだ。店に並ぶものも大分少なくなってきた頃だろう。

「アメリカじゃ、今が収穫期だから、この6月の満月をストロベリームーンっていうんだって」

琴子は三宝を机に置くと、書斎の窓を開けて、仄かに赤みを帯びた満月を指差す。ちょうどこの部屋の窓から、立ち並ぶ高級住宅の屋根の上に小さな月が見えたのはラッキーだった。

「ほんとに、赤というかオレンジみたいな色だね……ストロベリームーンってロマンチックな名前だけど、赤い月ってやっぱりちょっと不気味かも……」

確かにストロベリームーンと言うと可愛いが、赤い月というのは凶事を連想し、人を不安にさせる禍々しさがあるのも否めない。

「夏至に近いこの時期の満月は、高度が低くて地平線に近いところを移動する。朝日や夕陽が赤く見えるのと同じ原理だな」

「ふーん……」

さすが相変わらず直樹はなんでも知っている。ネットで検索しなくてもスイッチ押せばなんでも答えてくれるに違いない。かなり気まぐれでスイッチが機能しないことも多々あるのだが。

「夏至にもっとも近い満月をストロベリームーンというのはその為だろう。ちなみにイチゴの収穫期でないヨーロッパではローズムーンだそうだ」

「へぇ。ローズムーンも素敵……」

でも、赤い月は不気味なんだろ? と密かに突っ込む。

「ねぇじゃあ、これは知ってる? ストロベリームーンを好きな人と眺めるとその人とは永遠に結ばれて、幸せになれるんだって」

「とりあえずおれたちはもう結ばれているし、十分幸せじゃないのかな? おくさん」

直樹は琴子のだいぶ膨らんできたお腹を優しく撫でる。

「 し、幸せだよ! もちろんっ! ものすごーく、幸せだよ! で、でも、ほら。『永遠』って確約欲しいじゃない?」

少し慌てて弁解する琴子。

「欲張りな奥さんだな」

人は永遠には生きられない。
どんなに幸せでも死別や離別といった思いがけない別れが訪れないとは限らない。

それでも魂だけは永遠に結ばれていたいーー

おそらく琴子がイメージしていることはそんなとこだろう。

「ちゃんと結婚式で永遠の愛を誓ったのに」

「だめ押しの月頼みよ!」

で、でも入江くんの誓いを信じてないわけじゃ、ないのよ? と言い訳めいた言葉を呟きつつーー。

もう一度月をキッと見つめ、そしてパンパンと月に向かって二拍し、手を合わせて拝む。

「どうか、入江くんと二人で死ぬまで一緒に幸せに暮らせますように。生まれてくる赤ちゃんと一緒に仲よくずっと楽しく暮らせますように。できればこの赤ちゃんの子供や孫の顔みられるくらい長生きして、死ぬ直前まで入江くん大好きって言えて幸せ100%でいられますように!!」

ーーほんとに、欲張りだな。

贅沢で欲深な願いだが、琴子のパワーには月も叶えずにはいられないかもしれない。

直樹は呆れながらも琴子らしいと、真剣に月に祈る妻を見つめる。

「ーーでも、今は……とにかく、無事にこの子に会えますように」

そういって、自分のお腹をいとおしげに触れる。
煌々と、といえるほどの月明かりはないが、赤い月の神秘的な光の中で何処か神々しさをも感じるのは、胎内に至宝を抱えているからだろう。

アメリカではイチゴの収穫期であることから、『果実が熟す』という意味から『恋が熟す』に転じてそんな伝説が生まれたのだろう。

恋はとうに熟され、こうして二人の間の果実も実った。
それ以上の幸福を望むのは欲張りなことかもしれないけれど、ささやかな幸せが永遠に続くことが、人間の最も当たり前で贅沢な願望なのだ。

「……イチゴ、食べれば?」

おそらく紀子が用意したのだろう。
悪阻が一番ひどいときから、紀子は常に琴子のためにフルーツを常備していた。

「うん」

琴子が三宝の上のイチゴをつまんで一口かじる。

「うん、あまーい。美味しいよ。入江くんも食べて?」

口元に赤い果汁を滴らせて、琴子がにっこりと直樹にイチゴを差し出す。

「いいよ、こっちで」

直樹は、にやりと意地悪く微笑んで、琴子の唇の果汁をぺろりと舐めてーーそのまま、イチゴ味の口内をしっかりと味わう。
甘酸っぱい果実酒のような熟した味を心ゆくまで堪能する。


ーーと。

「あ………」

「……………」

「入江くん、わかった?」

「ああ……」

少しキスが深くなったところでお腹の赤ん坊が少し暴れ始めたようだ。

「……なんかの抗議か?」

「パパとママが仲よくしてるのに邪魔なんてしないよねー?」

琴子が優しくお腹の我が子に語りかける。

いや、いくら安定期とはいえあまり無体なことはするなよと我が子から責められたような気がしないでもない。

「でも、キスくらいは許せよな」

そういって、もう一度琴子の口にイチゴを放り込みーー。


ーーおかわりいただきます。


( どうぞ、ご勝手に)

ストロベリームーンもきっとこんなバカップルに赤面しているのかもしれない。









ーーとはいえ。
三宝の上に供えられたイチゴはやっぱり何処かシュールなのである………。





※※※※※※※


スマホがフリーズしてしまい、強制終了したら案の定書きかけの病院ネタが消えました……。ある程度は保存はしてたんですがね……その日に書いた部分がさっくりと…………orz………なので、気分転換にこんなの書いちゃいました………(((^^;)



そういえば肝心のストロベリームーン、見てないしf(^^;

天気はよかったけど、見えてたのかな~~?


でも、ストロベリームーンって、梅雨時だからなかなか日本じゃ見れる確率低いんでしょうね………



追記

ネットで探したら今年の月は赤みが少なかったようですねぇ……


追記2

眠る前に2階の窓から、煌々とした月がそれは綺麗に見えました。ええ、全然赤くはなかったですが(((^^;)












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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

健全なお話を書く練習中でしたので、健全です!月を見ながらベランダで押し倒す話をむかーし書いた気がするので、とりあえず今回はさらっとなのです笑 いや、妊娠中の時期選んじゃったので不健全になれなかった、というのが正しいかも(((^^;)

ふふ、紀子ママも当然ノリノリで三宝を出してきたんでしょうねぇ。

呆れつつも乗っかる直樹さん。妊娠中でなかったら押し倒してるでしょうけどねぇ^_^;
月も赤面するような琴子愛駄々漏れです♪

個別記事の管理2017-06-04 (Sun)


連載中断して申し訳ないです。
今、病院本用の原稿に取りかかってまして……しばらく停滞するかもですf(^^;
コメント返信も滞ってますが、必ずリコメいたしますのでお待ちくださいませ。

とはいえ、病院ネタ1本書き終えて、全年齢対象なのに、うっかりあまり健全ではない話になってしまい………あかん。すっかり不健全なものしか書けない体質になってしまっている………

ということで、目指せ健全!をテーマに書いてみました(^_^;)
Mさま宅の息子さんの運動会の話を聞いて触発されまして。

うちの子供たちはみんな秋に運動会で、いまいちピンと来ませんでしたが、今はこの時期が主流なんですね。今は子供たちの母校の小学校も5月に開催のようです。










※※※※※※※※※※※※※※





今日は琴美の小学校に入って初めての運動会だった。琴子、紀子は早朝からお弁当の準備に余念なく、重樹、重雄のじいじコンビは朝から場所取りの為に校門前に待機である。


直樹は昨日緊急オペとなった担当患者の容態が安定していなくて、どうなるかわからない、ということで昨夜から帰宅できていない。

行けるようなら病院から直行するということだが、お陰で琴美も琴子も意気消沈だ。


「いっそ雨になればいいのに」


と、曇天の空を恨めしげに眺める。

今日の降水確率は50%。大変微妙な天候であった。

直樹が来れるなら晴れに、直樹が来れないなら雨に、と都合のいいことを祈っていたが、朝になっても直樹は来れるのか、天気は持つのかはっきりしない。


とりあえず学校からは、運動会は予定通り開催という連絡メールが届いたので、昨日立てたプラン通り家族一丸となって朝から琴美の運動会に向けて動き出していたのだった。




「みーちゃん出るの3番目と6番目だよね」


プログラムの1年生の種目は、ポンポンを持ってダンスをする『100%勇気』と『徒競走』である。


「午後からの『地区対抗リレー』にも出るよー」


「ああ、そうだったわねー。ママも出るやつね」


「それと『玉入れ』と最後の『騎馬戦』の帽子とり」


「結構いっぱいでるよねー。最後までお天気持つといいなぁ」


途中で中止になる可能性もまだまだ有りそうな怪しげな空模様である。

暑くなくてちょうどいい気温ではあるが。


「琴子ちゃんも出るの?」


紀子に訊ねられ、「はい、そーなんです」と頭をかく。


「このPTA競技の『借り人競争』と、琴美も選抜された『地区対抗リレー』に………」


「『借り人競争』って、何かしら。つまりは借り物競争のこと?」


「多分そうだと。引いた紙に、かなり具体的な名前が書いてあるらしいです。先生の名前とか、来賓の方の名前とか……」


そしてその人をさがして一緒に二人三脚するらしい。

PTA役員からざっくりと説明を受けて、たとえ先生でも異性で二人三脚はイヤだとクレームがあって、必ず同性の人と当たるようになっているらしい。


「なんか、ハズレは校長先生と、事務の先生だって。めっちゃ足が遅いらしいの」


「校長先生はわかるよね」


重樹と同じような体型をしている。


「あやか先生はアタリかなー」


「みーちゃんの担任の先生だよね。若いし、体育の先生だし、足速そう」


「うん。今日も『琴美ちゃんのパパ、見に来てくれるのかなー?』ってスゴく気にしてくれたの」


「……………………」


別の意味で気にしているのでは、という予想はついたが敢えて言うまい。そんなのは幼稚園の行事の時からしょっちゅうである。


「あ、1枚だけ、名前が書いてなくて、『誰でも好きなひとを自由に連れてきてください』って書いてあるらしいんです」


「まあ、好きなひと!」


紀子がにまーと笑って「おにいちゃん間に合うといいわよねー」と、笑った。


「『好きなひと』ってそういう意味じゃないですけどねー」


とはいえ、直樹がいたら迷うことなく選ぶことができるのだが。


「お義父さん、もし入江くんが来なくて、その札引いちゃったらまたお願いしますねー」


「ええ?   いいのかい?  わしで。またビリっけつになっちゃうよ」


頭を下げられた重樹があわててキョロキョロする。


「大丈夫ですよ。子供たちの紅白戦には点数関係ない余興ですから!」


「俺が走ってやろうか?」


裕樹が名乗りをあげた。確かに重樹より速いだろうが。


「ええーっいいよ。好美ちゃんにわるいし。それにみっきぃまっきいの面倒見なきゃ、でしょ?」


裕樹と好美夫婦も応援に駆けつけているが、やんちゃな双子の瑞樹と将樹がいるため、撮影要員として駆り出すのすら躊躇するところなのである。そのうえ琴美の弟の遥樹の面倒も頼んでいる。


「あたしは全然いいんですけどね。でも、もし裕樹くんと二人三脚してる時に直樹先生駆けつけたら大変なことになりそうな…………」


好美の一言に、「う、うん。そうだな……」と裕樹もあっさり前言撤回する。

確かに考えるだに恐ろしいと、軽く身震いしつつーー。


「なんや、琴子。わてが走ってやってもええで」


となりのスペースに陣取っていた金之助が割り込んできた。

金之助の娘のアンジーも琴美の同級生である。行事の度に行動を共にすることが多い。

今回も入江家と池沢家と両家のシートだけでかなりのスペースを占めていた。無論、ハデな応援横断幕も張り巡らして、目立つことこのうえない。


「アカンヤロ。金之助ト走ットル時ニ直樹ガ帰ッテキテシモータラ、ソレコソ殺サレテマウワ。ソレニアンタ後半ノ地区対抗リレー二出ナアカンヤロ?」


クリスにたしなめられる。


「別に地区対抗リレーに影響なんてないわ」


地区対抗リレーは一年生から順番にバトンを繋いでいき、最後は保護者がアンカーを務めるかなりガチなリレーである。毎年白熱して、わが年齢を省みない親たちが後で筋肉痛に泣くという。


「入江はでえへんのか?」


「うん。頼まれたけど、やっぱり仕事がどうなるかわからないからと断ったの」


ガチリレーなので、なかなか参加者を探すのが大変なようだ。

結局琴子も頼まれた。『借り人競争』にも出るのだから断ってもよいのだが、あまりにも役員の人が困っていたのでつい受けてしまった。


「こんどは金ちゃんと敵チームだね。負けないわよー」


公立の小学校区で分けられた地域対抗戦である。金之助の家とは学校区は違うので、斗南でなければ同級生とならなかった。


「おう。高校でほぼ全種目一位のわてに敵うもんはおらへん」


「ほぼね」


ラストのクラス対抗リレーは結局初めて全力を出した直樹に破れたのだった。


そうそう、そのあとに…………


入江くんてば転んだあたしをおんぶして医務室に運んでくれたんだよねー



琴子はつい、高校最後の体育祭を懐かしくあれこれ思い出してしまっていた。


『借り物競争』で『好きなひと』を引いて思わず重樹を引っ張ってしまった。

勇気を出して直樹のところに行ったら一緒に走ってくれただろうか?


………ないだろうなーー。


あの頃は思いっきり迷惑がられてたし。


いや、でも、でも!  その後のリレーであのおんぶ事件があったわけだし!


あーちょっとあのときに遡って、やり直したいかも。


案外、『ちっしょーがないなー』って口ではブツブツ云っても、すんなり走ってくれたかも~~~



「ママ、どうしたの?」


すっかり気分は高校時代にタイムスリップしていたところを琴美に引き戻された。


「あ、うん。なんでもないよー。ママも色々頑張るからっ琴美も頑張ってねー」


がっつり力瘤をつくって児童席に戻っていく娘を見送った。








分厚い雲の下で、開会式も滞りなく終わり、順調に競技が始まった。

琴美のダンスには残念ながら直樹は間に合わなかった。

しかし、家族全員一致団結して、完璧に琴美の姿を追うことができ、何とかビデオに収めることが出来たのだ。

こういうクラス単位の集団演技は位置が頻繁に入れ替わってしまい、なかなか子供の姿を探すのが大変なのだが、事前に琴美の立ち位置を入念にリサーチし、四ヶ所に分かれてビデオをかまえて、しっかりその愛らしい演技をアップで撮ることができた。きっと帰宅後紀子が完璧に編集してくれることだろう。



琴美の徒競走が始まっても、直樹はまだ来なかった。

琴子は何度か携帯を確認したが連絡はないようだ。


入場門から運動場に並んで走っていく一年生集団の中で、琴美が浮かない顔をしているのが見てとれて、琴子も少し残念そうだ。

練習では必ず一番でテープを切っていたので、直樹にはぜひ見てほしいと願っていたようだった。



いよいよ琴美の番になった。


スタートを知らせるピストルの破裂音が空に響く。


「みーちゃんっがんばれー!!」


家族全員の応援がひときわ熱が入り、かなり目立っていた。


しかし、琴美はピストルの音に一瞬躊躇したようで出遅れて、三番目くらいの順位だった。


「みーちゃんっ」


ゴール位置に立つ琴子も必死で声を張り上げる。

琴美も必死で追い上げ、二位にまで追い付いたが、一位の子を追い抜くのはあと一歩だった。


そのとき。


「琴美!  がんばれ!」


琴子のすぐ横から、琴美を応援する大きな低い声がーー。



「入江くんっ」


琴子がおどろいて振り向いた瞬間に、「琴子、抜いたぞ!」と直樹が叫び、そしてその瞬間に琴美がゴールのテープを颯爽と切っていた。


「きゃー、みーちゃんやったあー!」


琴子は直樹にしがみついて喜ぶ。


「あー、ママ、ズルい」


琴美も満面の笑みで、すっかり周囲から注目を浴びていた観客席の両親に突っ込んだ。




「……間に合ってよかった」


「ああ」


「ふふ。入江くんが来た途端に、お天気も良くなってきた」


空一面を覆っていた灰色の雲間からいつの間にか太陽の光が射し込んできた。

梅雨入り前の鮮やかな緑が、きらきらと光に反射して輝いてみえる。





さて。

その後の琴子の参加するPTA競技だが、相変わらずの引きのよさで、案の定『好きなひと』を引き当てた琴子は、今回は迷うことなく直樹のところに直行し、二人で初めて二人三脚をしーー絶妙なコンビネーションで………とは言い難くーーまったく歩幅の合わない琴子が直樹にほぼ抱えあげられる形で、それでも一番にゴールしたのである。


当然、二人三脚の二人は紀子によってばっちり記録されている。


その後の午後の競技の地区対抗リレーでは、保護者の男性参加者に欠員ができたからと地区委員の人に頼み込まれ、直樹がリレーに出ることになった。



直樹にバトンを無事渡すという琴子の念願が16年越しに叶えられた奇跡の瞬間であった。

直樹たちのチームは最初は琴美が頑張って一位をキープしていたが、四年生あたりで抜かれ最下位に落ち込んでものの、琴子の頑張りで四位まで浮上した。

そして、琴子から受け取ったバトンを持って、あっという間に一位だった金之助を抜かし、かつてはギリギリで追い越したクラス対抗リレーとは違い、ぶっちぎりの一位でゴールを切ったのである。

そして「入江くん、すごーーいっ」と駆け寄った琴子に、「そりゃせっかくおまえから間違わずにもらったバトンを無下にするわけにはいかねーだろ」と笑ってその頬にキスをしたのであった。

(ちなみに、まだ運動場のゴール地点、来賓テントの真ん前である)

そして学生時代と変わらぬ黄色い悲鳴が飛び交ったのは昔と変わらぬ光景であったーー。


もっとも。退場門で二人揃って参加賞のラップをもらった後、駆け寄って出迎えた琴美から「パパ、ママかっこいーー」と言われ、いつものシニカルな笑みではなくて、優しく笑って娘を抱き上げる姿は16年前とは比ぶるべくもないのである。

(ちなみに、横で金之助は、クリスから熱烈キッスの嵐を受けていたのだが)




「あやか先生も、まやちゃんママもめっちゃ、羨ましそうに見てたよー」

と、にまにま報告してくれた琴美の言葉に思わず赤面する琴子。

「もう!  絶対いい歳して、って呆れられてる~~」


「他人の目なんて気にしてどーする」


高校時代のおんぶシーンよりインパクト薄いだろ?と言わんばかりの直樹であった。


当然、そのシーンもばっちり紀子の手によって………





その後。養護教諭が体調不良で早退してしまったということで、何故か怪我をした児童の手当てを頼まれてしまった直樹と琴子は、やっぱり高校時代とは違う時の流れを感じたのであった。

さらについうっかり全力を出しすぎて足を痛めたり負傷してしまったパパさんたちの手当てまでする羽目になってしまったのも、もうこの際成り行きとしか言い様のない事態であった。



そしてーー。初めての運動会は降水確率50%などものともせず、結局最後にはすっかり青空に包まれながら爽やかに全競技を終えたのであった。






*     *     *




その夜は打ち上げと称して、金之助一家や裕樹たち家族も呼ばれパーティが開かれた。

無論メインイベントは、早速編集された紀子力作の本日の琴美の勇姿のビデオ上映会なのである。


「ほら、入江くん見てーっ。琴美、めっちゃ頑張ってるでしょ?」


集団演技に、徒競走。

応援合戦も、一年生ながらかなり目だっていた。

地区対抗リレーも琴美はずっと一位をキープしていた。

(無論、琴子から直樹にバトンを渡すシーンはスローでズームアップ。ドラマチックなBGM入り)

ラストの紅白の勝敗が確定する鈴割りと騎馬戦では、颯爽と帽子を取りまくり、最後まで帽子を取られることなく残っていた。


「やっぱ、みーちゃん入江くんに似て運動神経いいわよねー」


「あら、琴子ちゃんだって運動神経いいじゃない。昔、リレー相当速かったわよ。テニスだって頑張ってたし」


そう紀子に誉められて照れながらも、映像はいよいよ閉会式。琴美の赤組優勝で、満面の笑みで万歳する琴美のアップでこのビデオが終わるかと思いきやーー



「え?」


何故か唐突に高校時代の直樹と琴子が写し出されーー(しかも映像、デジタル加工したのか、かなり綺麗になっている)直樹が琴子をおんぶして運動場を去っていくあのシーンが始まったのである。



ーーすべてはここから始まった。



パワーポイントで絶妙に編集された映像に、そんなテロップが妙に感動的に現れ、画像がフェイドアウトしていった。


「おふくろっ!!」


「すっごーい、お義母さん。短い時間でこんな素敵な編集!」



ーー入江家は、今日もにぎやかであったーー。








※※※※※※※※※※※※


Mさま宅のお子さまの運動会のプログラムにあった『借り人競走』がめっちゃ気になったのに、運動会、雨で午後の部が中止になり、この『借り人競走』行われなかったようなのです。なので勝手に妄想してみました。
Mさま、色々参考にさせていただいて、さらに使用すること了承していただいてありがとうございましたm(__)m
運動会、残念でした~~~せっかく赤と白の攻防が僅差で白熱してたところだったのに~~


子供の運動会って、PTA競技の参加を頼まれるのがすごく困ったなーという記憶が強いです。電話しまくって頼む役員さんも大変だなーとか。
うちは旦那が一度引き受けたら毎年のように頼まれてたな。(そしてお決まりの筋肉痛コース)
結局、個人で走る障害物競走はいつのまにかなくなって、みんなが参加できる大玉転がしや玉入れやじゃんけんゲームに変わりました。みんな参加賞のごみ袋目当てにこぞって参加してくれるようになりましたよ(^_^)v
なんか、懐かしいなー。










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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
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* by なおちゃん
運動会いいですね、最近は春に行うことが多くなりましたよね?昔は秋でしたけど、しかし入江家欽ちゃんの家みんな賑やかな運動会楽しそうですね、入江君も間に合ってよかったね。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

つい運動会話で盛り上がったので書いてしまいました(((^^;)
きっと直樹が来たから雨は降らなかったのですよ。琴子の祈りは最強です(^-^)v
運動会の集団演技は入れ替わり激しくて撮るの大変です。そりゃもう抜かりない紀子ママですので、スタッフ配置に抜かりはないかと。でもきっと琴子は撮るの忘れて瞳に焼き付けていることでしょう。

結局謎だった借り人競争……勝手に捏造しちゃいましたが。本家はどんなものだったのか気になってます。

ビデ上映会はお約束〜〜でもきっと、紀子ママさんにとってのベストシーンはやっぱり琴子と直樹のおんぶシーンじゃないかしら?

ふふふ、私の不健全すきだといってくれて嬉しいです! いやー私の話、基本不健全ばかりですのでねぇ…それこそが二次の醍醐味だと思ってますし。でも線引き難しいなーと。色々アドバイスありがとうございました♪



Re.さち子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そうそう、うちもそうでしたよー。下の娘の時は、わざわざリレーの位置とか集団演技の立ち位置とかプリントで配ってくれたりしたなー(低学年の時だけでしたけど)
うちの旦那さんはよく頼まれて走ったけど、あとで撃沈してましたよ。きっと入江くんはうちの入江家末っ子ぴよちゃんの時にも(アラフィフになっても)颯爽と走るんだろうなー。ほんと、羨ましい……(((^^;)

お気遣いありがとうございます!はーい、マイペースでまいります(^-^)v

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そうなんです。うちの子達はずっと秋でしたけど、いろんなところで運動会の記事を目にして書きたくなりました。入江家の運動会はいつだって大騒ぎで賑やかなのです(^-^)v