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個別記事の管理2017-05-23 (Tue)





キスの日中にアップ、今年はなんとか間に合いました。

去年と同じくぐーぐる先生にお世話になって、さくさくっと書いたので中身はないのです………(((^^;)



そして、emaさまもむじかくさまも乗っかっていただきありがとうございました~~(^^)d






※※※※※※※※※※※※※※







「入江くーーんっ! ねぇねぇ知ってた?」

毎度お馴染み琴子が一冊の雑誌を持って書斎に飛び込んできた。

デスクのパソコンに向かって論文の作成をしていた直樹は、何事かとくるりと振り返ると、琴子が直樹の眼前にバーンと雑誌の見開きページを開いて差し出した。

そのページには、金髪の男女のモデル二人が、ベッドに寝そべってキスを交わしているセピア色の美しい写真が載っていた。

ーーなんだか去年にも同じようなものを見せられたような………

軽い既視感を感じつつ、その琴子愛読の女性雑誌を受け取って斜め読む。

どうやらその雑誌は毎年この季節にキス特集をしているようだった。

今年は幾つかの写真を載せてキスのバリエーションを説明していた。

「ねぇ! 入江くん! フレンチキスって……フレンチキスって軽いキスじゃなかったのよっ ディープキスのことだったのよー‼ 知ってた? ねえ、入江くん知ってた? あたし、てっきりフレンチキスって、チュッてかるーくする可愛いキスのことだとばっかり思ってたのにーー!」

琴子は興奮した様子で、フレンチキスの項目を指差した。
物凄い世紀の大発見をしたかのような勢いだ。

確かに琴子の指差したところには、
『フレンチ・キス』というタイトルがイラストと共にあり、「日本では軽いキスだと誤解され、一部ではそのように認識もされているが、実は舌と舌を絡めあう深いキスのことである」とあった。

軽く触れあうようなキスは『ライトキス』、『バードキス』などというのが正解らしい。

「入江くん、知ってた?」

琴子がわくわくとした瞳で直樹の答えを待っている。

「………知ってるけど。語源はフランスと仲が悪かったイギリス人が、フランス人の濃厚なキスを見て、下品だと揶揄してフレンチキスと呼んだという説もある」

「ええーーっ 入江くん、そんなことまで知ってるの? 」

琴子が目を丸くして驚愕している。

「多分、おまえが妊娠した時に産科に付き添って、待ち合いにあった雑誌で仕入れた情報なんだろうな。読んだ記憶があるってことは」

とにかく活字中毒気味なところのある直樹は、手持ちぶさたになるとついついどうでもいい雑誌にすら手を伸ばして読んでいるのだ。

ほんとうに一度インプットした情報は、どうでもいいことでも忘れたりしないのだなぁとつくづく感心してしまう。

「そうなんだー。あたし、フレンチキスって挨拶でするようないっちばんライトなキスだと思ってたからちょっとびっくりだったのっ」

30過ぎて初めて知った驚愕の真実だわよ~~~と琴子は未だ興奮冷めやらぬようだ。

いや、でも息せきって大慌てで教えにくる情報でもないだろう、と思わず突っ込みたくなる。


「………でも、キスってこんなにいっぱい種類があるんだねぇ」

無理矢理名前をつけたんじゃないかというこじつけ感は否めない。
名前なんてどうでもいいだろう、というのが直樹の正直な感想だ。

フレンチキスがディープだろうがライトだろうが世間的には困らないしどっちだっていい。

「『スメルキス』 ……鼻と鼻をくっつけあうキス………うーん、唇を合わせてないのにキスっていうのかなぁ?」

しかしさすがにキスの名前ひとつひとつまでは仕入れていなかったようで、いちいちそんなネーミングがあるのかと呆れているような表情の直樹。

『カウンティングキス』キスの回数を数えながらキスすることーー琴子の得意技だが、実のところ最後まで数えられたことなんてない。数える余裕なんて与えたことはないのだから。

「『エアクリーニングキス』相手の口内の空気を吸い込むキス………なんだ、そりゃ?」

「『バタフライキス』……なまえが可愛いね。睫毛を相手の頬とかにぱたぱた触れされる……これも唇つけてないよねー。でも、スキンシップとしてはなんか柔らかくていいかも。ちょっときゅんきゅんする感じ?」

「なんだよ、この『エレクトリックキス』って。冬に二人セーターを着て抱き合ってから、互いにセーターを脱いでキスをして、静電気を発生させ刺激を楽しむキスって………」

「な、な、なんか上級者向きね 」

「………ってか、意味不明」

「このプレッシャーキスって、入江くんがあたしに初めてしてくれたキスよねー」

『プレッシャーキス』。唇を唇に押し付けるだけのいたって普通のキス。キスの定番。

「芸のないファーストキスで悪かったな」

「………ううんっフツーでよかったよー!! いきなり舌とか入れられたら卒倒しちゃう!」

あの謝恩会の夜のことを思い出したのか、真っ赤になって首を振る。
もう10年以上前なのに、未だに記憶は鮮明らしい。

「ゆっくりソフトに唇を合わせることが基本です。ファーストキスでは気持ちが高ぶって強く押し付け過ぎたりすることがあるので、距離感とスピードを大切にしましょう………だって」

「………余計なお世話だな」

10年以上前の自分に敢えて教えてあげたい情報でもない。

「この『スパイダーマンキス』って………あの映画みたいに、男の人が逆さまにぶら下がって、女性が貪るようにキスするって……どういう状況だろ……」

「やってみる?」

「へ?」

「だいたいこーゆーの見せるってことは、『したい』ってことなんだろ? じゃあ、ご期待に答えるためにも早速寝室に参りますか、奥さま?」

「えー? いや別にそーゆーわけでは……
……そりゃ、したいけど//////」

あくまで琴子は『キスが』である。
若干その点は直樹と目的語に相違がある。

そして、毎度お馴染み、このときばかりはしっかりとお姫様抱っこされて寝室に直行なのである。

(ちなみに琴美はばあばと眠っている。キスの日だからと、 手回しがやたらいいのは、こちらも毎度お馴染みなのだ)




* * *














「そっかぁ。スパイダーマンキスってこうやるんだ。入江くんが天井からぶら下がったきたらどうしようかと思った」

直樹の膝枕で寝転がった琴子の頭の方から顔を近づけて、逆向きにキスしてきた直樹に、はにかんだように微笑む。

「まさか」

馬鹿馬鹿しいと思いつつも、琴子が面白がっているので一通り試してみる。
結婚10年も経って、子供までいるのに今さらキスのバリエーションを追求してどうする、と内心苦笑しながら、子育てと仕事に追われている妻へのささやかなご褒美だ。
何にせよ、結婚何年経ったってシチュエーションは重要なのだ。



『スウィングキス』下唇を甘噛みしながら顔をゆっくり左右に揺らすキス。

『インサートキス』口内を舌で満たすようなキス。

『サーチングキス』互いの舌を確かめあったら、お互いの歯茎を舌先でゆっくりなぞる。

『カクテルキス』唇を開いた状態で、唇を吸ったり舌を甘噛みしたりするキス。

ざっくりとキスの名前と手順を頭に入れたものの、すぐに名前なんてどうでもよくなる。これっていつもしてることだろうがーーとなって、結局最後は流れのままとなった。
カクテルキスの最中でもう琴子は瞳を潤ませ朦朧としている。
それだけ直樹の唇と舌の動きは絶妙なのだ。

そしてーーー
唇、額、瞼、耳朶、首筋、鎖骨、胸、腕ーーキスは余すところなく降りてくる。

手なら尊敬
額なら友情
頬なら厚意
唇なら愛情
瞼なら憧れ
掌なら懇願
腕と首なら欲望

それ以外は狂気の沙汰

特集ページの見開きにはフランツ・グリルパルツァーの『接吻』の一篇が載っていたが、それには琴子は気がつかなかったらしい。琴子の好きそうなロマンチックな一篇だと思われたが、目に止まらなかったらしい。


狂気の沙汰、結構ーー
全ての場所に刻印を刻み、食らい付くすキスに何の意味も名前も要らないのだ。


たくさんのキスの後は、それは深く激しく愛し合って、少し疲労気味の琴子の髪をもてあそびながら、楽しそうに直樹が囁いた。

「キスの名前より、日本の四十八種類あるあのネーミングの方がずっと雅びで粋だぜ?」

「へ?」

「『絞り芙蓉』に『立ち花菱』『時雨茶臼』『窓の月』………実はもう既に殆ど制覇してはいるんだけどな。でも『首引き恋慕』とかちょっと危ないのもあるから、コンプリートはまだなんだよな……」

ニヤリとほくそ笑む、その楽しげな表情に琴子が少しぞくりとしたのは、今一糸纏わぬ姿をしているせいだけではないだろう。

もう決してこの手の雑誌を直樹に見せるのはやめようと、キスの日に固く心に誓う琴子であったーー。










※※※※※※※※※※※



去年書いた話が2002年設定だったので、2003年に設定したのですが、結婚10年経ってる夫婦にしてはキスでこれだけ盛り上がれるなんて、無邪気なバカップルやなーとつい突っ込んでしまいたくなりましたわ(((^^;)

ラクガキ、久々に描いたらあまりの退化っぷりにこれも笑ってしまいました………f(^^;emaさんちのキス絵を見て上書きしてくださいませ!







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* Category : とある1日のお話(西暦シリーズ)
* Comment : (11) * Trackback : (-) |

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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ほんと、直樹がそんなこと知ってるわけないって思いますよね。歩くウィキ?のような彼に知らぬジャンルはないんでしょうか(((^^;)

ま、ほんと、名前も型もどーでもいいんですよ。どうせ全て制覇してるんだし笑

どーでもいいような豆知識でしたが、お付き合いくださりありがとうございました♪

Re.絢様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

素敵なお話と言っていただいて嬉しいしいです。はい、もう二人のイチャイチャした話しか書けない身体に………(*_*)青い入江くんが書けなくなってしまいましたから、ちょうどいいかもーーf(^^;



Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そう、キスにこんな名前つけてこんなバリエーションあるなんて、驚きですよね。
ええ、あっちのほうが何種類もあってもきっとほぼ制覇にちがいないのです(^^)v

Re.ちょこましゅまろ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

入江くんが天井から、ってビジュアル想像しちゃって、あたしも笑っちゃいましたよ。
とりあえず琴子の拾ってきたネタに乗じて寝技にもちこめばオッケーなうちの直樹さんなのですf(^^;
イラストも褒めていただいて嬉しいです(//∇//)

Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました(^_^)

リコメが遅くなり申し訳ありませんでした(((^^;)

そーなんです。キスの名前ってこんなにあったんですねぇ。……って、誰がつけたんだろう……?
直樹さんにとっちゃがっつりいただく口実ができただけのような………

ええ、首引き恋慕は危険です。ちょっと四十八手を検索してみてくださいな。イラストつきの解説があったりしますわよー^_^;
キスの日ネタかきたーいとLINEで呟いたらみなさま乗ってくれて、私もラッキーでしたー(^-^)v
mさまと示しあわせてアップしてお互い一番乗りで読もうとしたらちびぞうさんが一番いいねを取られててびっくりでしたわー。端末によってお知らせくる時間が違うんですよねー。謎ですね……^_^;

個別記事の管理2017-05-20 (Sat)


2話続けてアップしています。
(36)が未読の方はそちらからどうぞ。







※※※※※※※※※※※※※





「5日も………!? 嘘みたい………いや、嘘でしょ? ドッキリだよね?」

琴子は直樹が5日間の夏休みをもらったということをなかなか信用しなかった。

「うそでもドッキリでもないけど、5日しっかり休みが取れるとは信じないほうがいいかもな」

「うん、そうだよね。そりゃそうだよ」

直樹も琴子も研修医の日常がすっかり骨身に染みて、期待するだけ無駄だと思ってしまっている。

「でも、ま、近場なら旅行に行ってもいいらしいから。一応行きたいとこあったら考えとけよ」

「ええーっ うそっ ほんと? いいの? えっえーー?」

琴子は驚きつつも嬉しそうに部屋の片隅にあった神戸る〇ぶを引っ張り出す。

「もう、諦めて捨ててしまおうかと思ってたのよーこのガイドブック!」

ぱらぱらとページを繰りつつも、しばらくしてからぱたんと閉じる。

「うん、やっぱ、変な期待はしない方がいいよね。後々のショックが倍になって返ってきそう」

「5日全部予定を埋めるのは避けた方がいいだろうけど、2、3日なら出掛けてもいいぞ。何処か行きたいとこあるのか?」

「ほ、ほんと? えーと、じゃあね、まずは定番の北野異人館でしょ? それからハーバーランドに、六甲山の夜景でしょーー? 他にはね…………」

嬉しそうな顔になってもう一度ガイドブックをうきうきと捲りはじめる。

「有馬温泉とか……お泊まりは無理だよねぇ?」

おずおずとお伺いをたてるように直樹の顔をみた。

「 帰ってこれない距離じゃないからいいとは思うが、今から旅館とか予約は無理だろ? 世間的にも夏休みだし」

各務にもお薦めされたが、一番の繁忙期の盆休みは終わっているとはいえ、夏休み全般混雑しているのは予想できる。いきなり2日後、3日後の予約を取るのは困難に違いない。

「うーん。そうだよねー。ちょっと温泉にゆっくりつかって身体の疲れをとって欲しいなーって思ったんだけど」

琴子はあくまで直樹のことを労ってのようだった。
直樹は部屋つき露天風呂でもあって、琴子と二人でまったり入れる、そんな部屋なんざ今さら絶対取れないよな、と邪念だらけのことを考えていた。

「何をしたいかよーく考えておけよ。くれぐれもプランたてるだけで夏休みが終わるようなことはないようにな」

「うんっ」



さて、その夜はオンコールもなく、琴子を抱き締めて眠ることが出来た。
あくまで抱き締めるだけである。
キスやらなんやかんやのオプション付きで、琴子のパジャマは随分乱れていたがそれはご愛嬌というものだ。直樹の中ではとりあえず倒れて一週間は手出ししまいと心に決めてあった。己自身に課したドクターストップであり、かなり苦戦を強いられるミッションではある。
だがそれも今夜までだ。明日で丁度1週間になる。
熱中症の後遺症である頭痛や筋肉痛はほぼ収まったようだった。
思いの外回復は早く、悶々としたまま琴子を東京に帰すということは無さそうだ。

「入江くん………寝た?」

琴子が直樹の腕の中で、か細い声で囁く。

「……いや………」

「お休みの方に気がいっちゃって、すっかり忘れてたけど、救命に誘われたって話はどうするの?」

「ああ」

琴子が特に何も言ってこないので、なんとなくスルーしてしまっていた。

「入江くんは小児外科の先生になりたかったんだよね? もしかして、迷ってる?」

琴子がくるりと振り向いて直樹の顔を見つめた。豆球だけの仄かな灯りで、間近にいるもののおそらく顔ははっきり見えていないだろう。

「………そうかもな。いや、小児外科医になりたいという気持ちはぶれてはいないんだが、救命現場でもう少し勉強したいという欲も出てきたってところかな」

「うーん、だったら回り道になっても自分の欲求に従うってのもアリじゃないかなー? ERドクターって医療の最前線って感じで、入江くんにぴったりだよ」

「……おまえ、イメージだけで考えてるだろ」

「へへ、バレたか」

舌をペロリと出している様子が薄闇の中でもわかる。

最近衛星放送でオンエアされている海外ドラマがERが舞台で、紀子と一緒にはまっていると話していたことを思い出す。

「でも、入江くんが決める前に話してくれたのって………お医者さんになりたいって聞いた時以来だね。いっつも入江くん、自分で決めちゃってるからさ……こんなふうに迷ってることを話してくれて、ちょっと嬉しいかも」

お医者さんになりたいって初めて話してくれた時も、すっごく嬉しかったんだ~~ほら、あたしにだけ話してくれたでしょ?

おそらく他意なく心から嬉しそうにあの日のことを思い出している琴子に、ふと微かな後ろめたさを感じた。

「……何? いつもおれは事後報告だって……?」

「うーん、たいていそうだよね? それに入江くんが悩むなんて滅多にない気がするしーー」

ーーいやいや、おまえが現れてからおれはいつも自分の進路について悩んでいた気がするけどね。

大学にいくのか、いかないのか、T大受験するのかしないのかーー
医学部に転科するのかしないのか
医師の道を諦めて、あのひとと結婚し、父親の会社を継ぐのか、どうかーー

そして、研修先の病院をどうするのかーー

意外と迷ってばかりの人生だよな、と苦笑する。

「でも、迷うのが当たり前なんだよ。一度きりの人生、そうそうソクダンソッケツなんてできないもん」

あたしだって看護科受験するまで散々悩んだもんなーと一人呟く琴子に、

「琴子らしくない名言だな」

と直樹が揶揄する。
即断即決、漢字でかけれるのか?

「そういうお前も看護科受けようか悩んでるの全然おれに相談しなかったろ」

「えーー!!だって、絶体無理! ダメだ! やめとけ! って大反対されるの目に見えてたんだもん。教育実習の時みたいにさ。だからあっさり『やってみれば?』って云われた時、ホントびっくりしたし、嬉しかった」

思い出したのか、琴子の顔がにやけて、ふふふふっと笑って直樹にしがみついてきた。

「でもねーー前にかをる子さんに云われちゃったんだよねー……普通、夫婦ってもっとお互い相談したり話し合ったりするもんじゃないの? って………そういえばあたしって、なんだかんだ相談せずに決めちゃうこと多いかもなーってちょっと反省したの」

「おまえの場合は思い付きですぐ行動するから、相談以前の問題だろう?」

だから目が離せない。
目が離せないわりに、遠距離生活選んだのは何故よ、とかをる子から突っ込まれたのは実はつい最近の話なのだがーー。


かをる子の言葉に素直に反省している琴子だが、間違いなく、おれのことを暗に非難してるんだよな、と微かに苦笑する。

あれは確か、琴子が入院していた時だ。琴子を助けてくれた礼に食堂でランチをご馳走した。ーー命の恩人への謝礼が安すぎではないかい? と突っ込んではいけない。改めて琴子が退院したらきちんと礼をするということでさしあたりは滅多に頼むことはないステーキ定食でいーわよーと云われたのだ。
そしてデザートとコーヒーのおまけもつけたあとに、かをる子にあれこれ訊かれたのだ。すでに琴子からはリピートして聞かされていたという馴れ初めやら、結婚生活について直樹サイドの話として訊きたかったらしい。
そして話の流れの中で神戸に来るに至ったことを根掘り葉掘り問われ、そして挙げ句、ばっさりと言い放たれたのだ。

「 単身赴任を一人で決めちゃうなんて絶対有り得ない!」と。




あたし、結婚もしてないし彼氏もいないから、一般的にどーのって、いう立場じゃないんだけどさ。

なんかね、琴子さんから入江先生が神戸行き決めたときの顛末きいて、何? それ? って、すっごくムカついちゃったのよ。

うちの父親がさ、転勤族だったのよね。
たいてい何ヵ月か前に打診があって、お母さんに相談して、そして子供たちに報告して、そしてバタバタとお引っ越し、っての繰り返してたわけよ。
れでもさ、やっぱり子供的には1ヶ月前くらいに唐突に来月引っ越します、転校です、とか言われるとめっちゃ腹たつわけ。こっちの都合も考えてよって。
しかも親だけで決めちゃっていっつも事後報告でさ。うちらには拒否権なんてなかったのよね。ま、子供だからしょーがないんだけどさ。

お陰でずっと賃貸暮らしだったし、家を買ったあとは流石にもう引っ越しないだろうと思ったら、今度は父親だけ単身赴任。

あのね、単身赴任ってのも結構一大事なのよ。うちの父親もあたしの中学の時、一回だけ海外赴任があってねーーあのときは大騒ぎだったなー。
流石にその時は結構早めに相談して、うちら子供も家族会議に参加したっけ。それくらい、大変なのよ!
家のローンはあるのに、家計は二つに別れる、行き来が大変………
付いていく付いていかないでかなり揉めたしね。あたしは、海外なら付いて行きたかったけど、あっさり却下よ。
なんにせよ、かなり話し合って、結局お父さんだけ単身赴任になったの。

それをさ、あなたってば相談もせずに一人で決めたっていうじゃない。
しかも赴任数週間前に。
せめて彼女に付いて来るかどうかの意思確認はとらなきゃ、でしょ。勝手に一人で決めるんじゃないわよって、あたし一人で憤慨しちゃったわよ。
それ、夫婦としても家族としてどうなの? って。

ーーだからね、単身赴任を勝手に決めちゃうなんて、これ、家族として絶対有り得ない!

ひとしきり憤慨するかをる子に肩を竦める。

まあ確かに一般的にはそうだろう。

だがうちはあまり一般的ではない。
琴子ははまだ大学生なのだ。あと1年で卒業なのに、転校するのはかなり無理がある。

楡崎教授の誘いにすぐに返答が出来なかったのは、琴子を置いていくことがためらわれたからだ。かといって琴子を連れていくことも困難に思えた。

相談もなにもないと思っていた。

「………あと1年待つって選択はなかったの? 」

なかったーーあの時は。

楡崎教授が抱えている患児の症例はどれも興味深く、できれば一刻も早く教授の近くで多くの患児に関わり、研鑽を積みたいと焦っていた。
早く一人前の医師になりたいとーー



ーーおれはおまえが看護婦になれるまでずっと待たなくてはならないのか?

随分と冷たい言い方をしてしまったと思う。
あの時はあんな言葉しか出てこなかった。
決めた以上は琴子と離れる覚悟が自分にも必要だったから。


「なぜまず彼女に聞かなかったのよ? 付いていきたいかどうか」

それは愚問だ。
琴子に訊ねたって、答えはひとつだろう。
琴子の中に付いていかないなんて選択は思いも浮かばなかったに違いない。

「そうかなぁ? 琴子さんにちゃんと最初に自分の考えを真摯に話したら………彼女はきっと理解してくれたと思うけど。
琴子さんは何よりあなたがやりたいことをいつだって応援してくれてたんでしょ?
彼女の中心はいつだってあなたで、あなたの幸せが彼女の幸せなんだもの。
あなたが神戸でどんなことを学びたいか。何のために神戸に行く必要があるのか。
琴子さんが神戸に来たらどんな生活環境になるか。
きちんと丁寧に説明して、そして入江先生の本音は、何処にあるのかーーちゃんとはじめから話していれば、あたし最終的には、琴子さんは拗ねたりごねたりせずに自分から東京に残る選択をしたと思うのよね」

琴子がハンスト起こしたり拗ねたりするのはある意味想像の範囲内のことだった。
だからこそギリギリまで打ち明けることを躊躇われてーー

琴子を連れていく可能性も何処かで想定していたように思う。
決断する前から琴子が転校出来そうな看護学校や専門学校はないかと、当たりをつけたり資料を取り寄せてみたりーー
だが転科してあんなに苦労していた琴子が、見知らぬ土地、新しい学校できちんと勉強できるのかーー馴染んで行けるのかーー
自分の医者としての新生活よりもーーそんなことばかり考えていた気がする。

最後には相原の父に相談して、琴子を連れて行く決意を固めた途端にーー

「あたし、1年で看護婦になって絶対神戸に行くから! 入江くん、待っててね!」

まさかの琴子からの決意表明。
ほぼ自分の中で琴子を連れて神戸に行く方向に梶を切り始めた矢先だったからあまりに予想外で、そして驚いた。

参った、と思った瞬間だった。


「ーーあ、あれね。琴子さんが、あなたとお父さんの話を聞いちゃったらしくてね」

そして、何故かかをる子からその琴子の突然の決断の種明かしを聞かされた。
ーーああ、なるほど、と漸く腑に落ちたものだ。

「あなたの本音を知ることができたから、前に進めたのよ。知らなかったら、琴子さんはたとえ神戸についてきてもずっとモヤモヤとして納得できてなかった筈よ?」

たしかにそうかも知れない。

「結局はーー琴子さんの不安は、入江先生が自分のことを一ミリだって考えてくれてないんじゃないか、ということに尽きるのよね。それが違うってわかったから、ちゃんと前を向いて進んでいけたのよ。
入江先生だってほんとは琴子さんが考えてる以上に琴子さんのことばっかり考えてるんでしょ? もう少し頭の中の『琴子だらけ』を素直に彼女にさらけ出してあげればいいと思うのにね~~そしたら琴子さん、俄然はりきって目標に向かって突っ走ることできるわよ」

ツンデレって二次元キャラ的には、萌え力半端ないけど、実際目の前にすると、かなり面倒くさいわよね。 そりゃデレてばっかの男もウザいけどさ。

琴子さんも苦労するわよねー。
て、入江先生も苦労してるか。嫁が国宝クラスの超鈍感娘だもんねー。


怪しげな創作活動をしているせいか妙に人間観察力鋭いかをる子に、からからと笑いながら痛いところを突かれて、返すことばを思い付かなかった。
あまりに図星過ぎてーー。

しかし、ここにいる女たちはどうしてこう歯に衣きせず耳に痛いことをズバッと言いはなってくるのかーー。
そして、見事に琴子の味方ばかりだ。


散々かをる子にずけずけとつつかれて、苦虫を噛み潰した表情を終始浮かべることになったものの、命の恩人に反論するつもりはなかった。
口八丁で論点をすり替え言い負かす自信はあったが、彼女の言うことは真実をついていた。

後悔しているつもりはないが、もし、今、時間が半年前に巻き戻ったら神戸に来ただろうか?

目を離していると、何処に突っ走ってしまうか何をしでかすか解らない琴子を置いていく選択ができただろうか……






「…………入江くん、寝ちゃった?」

かをる子に云われたことを反芻して沈黙してしまった直樹に琴子が心配そうに問いかける。

じりじりと直樹の横に顔を近づけてはにかむように笑った。

「救命への転科の話だけどね …………」

どうやら琴子なりに考えていたようだ。

「入江くんは入江くんのやりたいように進めばいいと思うよ。入江くんは天才だから、小児科だってERだって何処でも極められると思うのよね。
迷ってるってことはどっちも魅力なんでしょ。
大丈夫、入江くんはどっちもできるし、きっと他のどんな診療科だってこなせるオールマイティドクターになれるよ。
だって入江くんはスーパーヒーローだもん。欲張ってどんどん色んなことを勉強すればいいんだよ。子供だって年よりだってみんなみんな入江くんを必要とするようになるんだよ」

迷っていたことをあっさりと、軽やかに解いてしまう。

ああ、そうだ。
昔からおまえは不思議とおれの前で道筋を示してくれていた。



ーー彼女の中心はいつだってあなたで、あなたの幸せが彼女の幸せなのよーー


それは自明の理だ。
毎日太陽が東から昇るのと同じくらいにあたりまえのことだ。

いつだって琴子は全身全霊をかけて直樹に尽くしてきた。

だがーー


おれの中心も実は琴子で、琴子の幸せが自分の幸せなのだとーー

こうして離れて暮らして、まるで太陽が毎朝当たり前に昇ることがなくなってしまったような日々に、どれだけ琴子が自分の生活の中に必要不可欠な存在だったかを思い知ることができた。

たった3ヶ月そこらで。





「………それとね、やっぱり、お休み、何処にも行かなくていいよ。全然休みなくて疲れてるのに、お出掛けするだけでくたびれちゃうもんね。
5日間、ずーっとおうちで過ごすのも悪くないかなって。
入江くんは好きな本でも読んでゴロゴロしてて。あたしは勉強しなきゃだし。たまには勉強教えてほしいなー。 それに家事もちゃんとして、入江くんの傍で過ごせればそれだけで幸せなの。離れてた分、とにかく入江くんの傍にぴたーっとくっついてたいの。
それにやっぱり、休みは身体を休めないとね」

ふふふっと耳元で優しく笑う。
吐息が耳朶にかかる。

「………それも悪くないか……」

「え?」

「5日間、ずっと部屋に引き込もっておまえとベッドで過ごすプラン」

「ええっ?」

「逆に相当体力を消耗するかもしれないが、溜まったものは大いに吐き出せるかな。休み明けは気分爽快に違いない」

「えーと………や、やっぱり、1日くらいは……買い物とか……あー夜景くらいは………みたい……かも………」

ごにょごにょ呟く琴子の唇を塞いで、「とりあえず寝るぞ」と抱き締め直す。

「……休みのことは明日1日ゆっくり考えればいいさ」

各務の勧誘の件はまだ考える猶予はたっぷりある。

だが琴子がこの街にいられるのは、あとたった1週間ーー

一緒に過ごせる夏休みが漸く訪れるというのに、その5日間が終わると琴子はもう東京に戻らなければならないのだ。

そう思うと、抱き締める腕に妙に力が籠る。

この腕の中の温かくも甘やかな感触を、ずっと忘れないためにもーーー。









※※※※※※※※※※※※※※



(36)は『vs.かがみん』今回のは『vs.かをる子』でお届けしました笑




『入江くんの神戸行き勝手に決めるなバカやろー会』会員?の身としては、とっても書きたいくだりの筈だったのに、なんとなくとりとめなくグダグタな感じに………うーん(-ω-)推敲すればするほど書き直してアップが遅くなるわ無駄に長くなるわで結局恒例の2話にぶったぎりとなりました………(^_^;)


ようやく終わりが見えてきたのになかなか進めなくて申し訳ないです。

そろそろemaさんちの病院本の締め切りも迫ってきたので、取りかからなくては~~なのです(((^^;)




でもキスの日には何か………アップしたいなー(あくまで希望。何もなかったらごめんなさい)





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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
* Comment : (13) * Trackback : (-) |

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NoTitle * by なおちゃん
入江君神戸に残るのか?それとも琴子ちゃんの入り東京に戻るのか、究極選択ですね、常に入江君の人生には、琴子ちゃんのおしなんですよね、楽しみにしています。

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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

もう、リコメがはちゃめちゃに遅くなって申し訳ないです。いやーこの頃、大阪オフ会だったんですね! なんかもうすっかり昔のような………

直樹の神戸行きには、こんな旦那いたらめっちゃ腹立つわーーと主婦として言わずにはいられないエピなので、ついついしつこく突っつきたくなります。それを書きたくてこの話を始めたもので。

そう、絶対ちゃんと話し合ってれば、最終的には琴子ちゃんは神戸行きを自ら勧めたと思うんですよ。そーゆー嫁に甘えて、あの事後報告男はっ!!
というわけで、各鉄槌支部は色々お仕置きするために日々精進?しております笑
無論、マロンも会員ですよー。

いちゃこら祭り、始めたいのに中々始められなくて、すみません。ほんとにまた夏休みになるかも………


Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました。

リコメがハチャメチャに遅くなって申し訳ないです。どんどん遅くなってます……^_^;

いやいや、私も旦那中心には動いてません。ようやく子供中心ではなくなったので、お互い自由に過ごしてますよ。琴子ちゃんのように入江くん中心に……とはいきませんよねーー。

コメントもらった時よりさらに季節は進んで梅雨になってきました。heorakimさまもお身体ご自愛くださいね。

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメ遅くなって申し訳ないです。
色々いたいとこつかれて入江くんも少しは反省してくれるといいんですけどねー(((^^;)

Re.るなたま様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

めっちゃリコメ遅くなって申し訳なかったです。
なんとか、展開がスローペースになってしまう根源の圭子さん母子の問題も、光が見えてきたようで良かったです。

入江くんにずけずけ云えるタイプのキャラは姫子先生とも被るなーと思いつつ、琴子の事情を知ってるということでこの役ははじめからかをる子さんに振るつもりでした。
お泊まり……実現させてあげたいなーと思ってはいるんですが……(((^^;)
そう、もうすぐ夏休みは終わりのハズ……現実の夏休みが始まる前には終わらせたいんですけどね〜〜( ´△`)なかなか更新できなく申し訳ないです。

はーい、病院本もがんばりまーす!

個別記事の管理2017-05-19 (Fri)



せめて隔週には更新したいと思いつつ、とうとうこんなにも長い間ご無沙汰状態になってしまいました。
GW明けの仕事がちょっと半端なく忙しくて~~~って、言い訳ですね……(._.)



そして、たらたら書いていたら長くなってしまったので2話に分けました。









※※※※※※※※※※※※





「………ここでの研修はあと2週間くらいだが、そのあとはNICU(新生児集中治療室)に行くそうだな」

今朝、直樹は当直明けに各務に呼ばれて、面談室で差し向かいで話をした。
夜は特に患者の急変もなく、当直室で比較的よく眠れた方だった。
コーヒーとパンで簡単な朝食を摂り、何連勤目かわからなくなりそうな通常勤務に入ろうとしていたところだった。

「はい。そういう予定だと聞いてます」

各務とは喫煙室とカンファレンスルーム以外で話すのは久しぶりだった。
最近は来月開催されるという災害医療学会の準備で忙殺され医局を留守にすることも多い。現場に立つ時間が少なくて苛々していると姫子が苦笑いしていた。
あの未曾有の震災を経験した医療者として伝えていかなければという想いだけで、煩雑な学会の事務仕事や講演依頼やワークショップなども受けているが、やはり現場で一人でも多くの命を救うことが本分だと思ってるようだ。

「で、まあ話ってのは他でもない。NICUでの研修が終わったら救命に転科しないかという勧誘なんだが。
一応小児外科の楡崎教授に打診したら『彼が了承するなら仕方ない』と悄気られた」

「………了承なんてしてないしするつもりもないですけど。おれは今のとこ転科を希望する気はないです」

直樹は上の者同士で勝手にそんな話をしているのかとあからさまに顔をしかめて答えた。

「ちょっとした雑談の中でおまえをくれと言っただけだ。そんなにイヤそうな顔するなよ」

「前にも言いましたが………おれがわざわざ神戸まで来たのは楡崎教授の師事を仰ぐためです」

「 知ってるよ。楡崎教授が、去年の夏くらいからずっとラブコールをしてたのになかなか色よい返事が貰えなくて、国家試験に合格してからやっとOKをもらえたというのに、それを後から横取りするのかね? と拗ねられたからな」

「………横取りとか、おれはモノじゃないですが……」

「そんなに熱烈に必要とされてるんだからありがたがれよ」

「楡崎教授のことは大変尊敬しています。ああ、各務先生のこともそれなりに」

「ついでのように云わなくてもいいが、それなりに尊敬してくれるなら、この数週間の研修だけじゃ物足りないだろ? おまえにはもう少しあれこれ仕込みたいんだが」

久しぶりに仕込みがいのあるヤツが来たと思ったのにな、と大して残念がる様子もなくにやりと口角をあげる。

「…………確かに救命の仕事は命に直結してやりがいはあるし、勉強になることも多かったです。この数週間の経験は本当に貴重でした」

「……暮れにはうちの大学で小児救急医療学会があるんだが、手伝いに来ないか? 研究論文書かせてやってもいいぞ」

楽しそうに資料を差し出す。
どうやらこちらが本題らしい。

「それが狙いですか? 良いようにこきつかわれるのが目に見えてますが………」

そういいつつも、資料を手にして中をざっくりと斜め読む。若手中心の救命医が集まるフォーラムもあり、かなり興味を惹かれる内容であることには間違いない。

「バレたか。だが、小児外科とも提携する予定だから勉強にはなる」

「そうですね………」

各務の誘いが魅力的であることは否めない。
命を救うという医師の本領が最も発揮できる場所が救命であるのは間違いなかった。苦悩することも多いだろうが、救えたときの充実感は半端ない。
だが、わざわざ東京を離れてここに来たのは小児外科でもとくに小児泌尿器科が専門で難治性先天性腎疾患の権威ともいわれる楡崎教授の元で症例実績を積みたかったからだ。

医師の道に興味を惹かれた切っ掛けともなった、あの少年の病気を治すためにーー琴子の願いを叶えるために………

「無論初志貫徹することも重要だがな。脇道に目を向けるのも悪くないと思うぞ」

正論だと思う。
脇とはいっても小児科を学ぶ上では重要なポジショニングではある。
急変性の高い小児疾患で、救急医療や集中治療研修は必須であるのは間違いない。


「………おれが救命に行ったらもれなく妻も救命ナースを目指すでしょうね……」

「そりゃ賑やかになるだろうな」

「賑やかなんてもんじゃないですよ。しっちゃかめっちゃかになります……」

考えるのも恐ろしい……。

「もっとも、うちの病院は夫婦は同じ部所に配属されることはないからな」

「…………それはまあ、普通はそうでしょうね」

琴子が夢に描いているのは、医師の傍らで絶妙なコンビネーションでフォローする看護婦の構図であろう。
しかし勤務医である以上そうそう同じ部所、同じシフトになることは難しい。
オペ看にでもなれればたまには同じオペに入ることはあるかもしれないが、琴子の不器用さからではオペ室配属は難しいだろう。
もしくはいつか開業医にでもなった時かーー

理解ってはいたが、無事にこっちにきた時に琴子はがっかりするだろうな、と想像がついて少し暗鬱とした気分になる。
いや、それでも一緒に暮らせることを思えばどんなことも不満などには感じないだろう。

「………一緒の部所で働けない、ということを残念がってるのはおまえの方だろう?」

各務が直樹の心のうちを見透かしたように、面白そうに言い放つ。

「まさか。妻ががっかりして拗ねるのを想像したら、少し面倒だと思っただけです」

「そうかな? 頭では理解してても、実はおまえ自身が一番腑におちてねぇって面してるぞ。ほんとは、おまえの方こそ、自分でも想定外なくらいに嫁と離れて暮らすことがこたえてるんじゃないか?」

「ーーそんなことは………」

眉を潜めて言い返そうとしたが、珍しく言葉に詰まる。

忙しさに紛れて、考えている隙なんてないと思っていた。
だが眠る以外の全ての時間を仕事に集中させていても日常のほんのちょっとしたことで琴子のいない生活の空虚さを思い知らされる。

コンビニで琴子の好きなスイーツを食べもしないのに手にとってしまったり。

留守電の声が少し沈んでいたりしただけで、気になって眠れなかったりーー

「自分は一人でも平気だと思い込んでいても、一人になってみると意外とそうではないことを思い知るもんだ」

「各務先生がそうだからとおれまで同類だと決めつけないでください」

「そうか? かなり似てると思うが。くだらねー矜持で自己防御して素直じゃねぇこととか、破天荒な女が趣味なところとか」

「………破天荒って」

そこまでひどくは……と言いかけて否定出来ないと、口を閉じる。

「鬼頭先生から少し伺いましたが、亡くなられた奥さんはそんなに破天荒だったんですか?」

「あいつが何か余計なお喋りをしたらしいな」

軽く肩を竦める。

「おれの嫁は一見清楚で従順な三歩下がって夫に付き従うタイプに見られがちなんだが、実のところさっきまで後ろにいた筈なのに気がつきゃ百歩くらい先にいってたりするな。たいてい道に迷ってるか、見ず知らずの赤の他人の為に方向転換したりしてるんだが」

たしかに琴子もよく斜め上を突っ走ってるが。

「奇妙な引きのよさもあって、あいつと一緒にいると飛行機で2回、新幹線で1回、映画館で1回、街中で2回、陣痛やら急病にあたるんだ。おかげでおれは救命医を、あいつは助産師を目指すようになったな」

歩けばトラブルにあたる、という女は琴子以外にも存在するのか。

「お互い自由にやりたいように生きてきた。おれもあいつを置いて世界中の病院や扮装地帯を駆け回ってたし。あいつは、いってらっしゃい、頑張って、と笑っていつも送り出してくれてたな。戻るべき場所はちゃんとあるという安心感がいつもあった。だからおれは自由に思うがままに我が道を突っ走って来れたのだと、今更ながら思うよ。あいつはあいつで助産師として道を見いだしてたし。あいつの本心はおれと共に働くことで、本当はどんなところにもついていきたがっていたのだと知ったのはーー足手まといになるからと今は我慢して、必死で勉強してたって聞いたのはあいつが死んだあとだったな」

「…………………」

「明日はどうなるかわからない。それは老若男女、貧富の差も貴賤の差も、人種も国も関係なく、誰にでも平等なんだ。救命医療現場にいれば身に染みている筈のことなのにな」

「明日はどうなるかわかりませんが………どういうわけか、おれの嫁は強運の持ち主なので……」

そう信じてる。
いや、言い聞かせている。

「………彼女ならそうかもな」

琴子の様子を思い出したのか、各務は空を見つめてからくすっと笑った。

そのあとは軽く雑談をし、特に強く勧誘される訳ではなかった。
直樹の関心を惹くような救命学会の幾つかの演題や議題について説明されて終わった。


「ーーま、答えはNICUで研修を終えてからでもいい。あそこはあそこで小児救命の第一線だからな」

「わかりました」


そう肩を叩かれた去り際に、ついでのように云われたのが。

「ああ、いい忘れてた。猫の手が増えて多少人員に余裕が出たからな。事務局からクレームが絶えなかったこともあるし、交代で全員に夏休みを取らせることにしたから。おまえは明後日からな。一応5日間だが、なるべく酒は飲むなよ。旅行に行くなら近隣で、2、3時間で帰ってこれるところな。有馬温泉とかお奨めだぞ」

つまりはオンコールの可能性大ということか。

「ま、あくまで要望だが、研修医の身でこのおれの要望を無下にすることはないと信じてるからな」

にやっと意味深に笑う。
悪魔の笑みだな、と思わず半笑いを返す。

「休みが取れるだけで、奇跡ですよ。5日間何もないなんて期待なんてしちゃいません」

職員になってまだ半年足らずの為に有休すらまともに所持していていない。連休を取れるなんで、それだけですでに奇跡のようだ。

「賢明だ」






※※※※※※※※※※

続けて、(37)もアップします。

















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個別記事の管理2017-05-01 (Mon)







「あら~~琴子ちゃん。おはよう。昨夜はちゃんとゆっくり休めたかしら」

綺麗に剥いたリンゴを広大に差し出しながら、義母紀子が優しく微笑んだ。

「お義母さん……どうしてここに……」

「どうしてって。ほら、昨日琴子ちゃんから広大くんのお話を色々きいて、気になっちゃって。
その上、まあ、あれから琴子ちゃんも大変な目にあったみたいねー。
今日この部屋に来るまでにいろんな噂が耳に入ってきたわよ。
もう、びっくり。
お兄ちゃんが悪者をぶちのめして琴子ちゃんと広大くんを守ったんですってね。もー、誰かその名場面ビデオに撮ってないかしら~~」

「本当にありがとうございました。うちも目が覚めたらそないなことになってて、えらいびっくりしてしもうて」

前日より随分と顔色が良くなった圭子が、琴子に深々と頭を下げる。モニターも取られ、ベッド回りも幾分すっきりとしていた。
部屋もナースステーションの前から少し遠い部屋に移動していたため、琴子は少し迷ってしまったのだが。

「なんや、琴子さんにはお世話になってばっかりで……ご迷惑かけてばかりでほんま申し訳ありません」

「そ、そんな、迷惑なんて! あたしがなんだか余計なトラブル呼び寄せてるようで、こちらこそ申し訳ないです」

「元はといえは……うちのややこしい事情のせいでこないなことになったのに」

お互いひとしきり頭を下げあった後、紀子がバッグから封筒やらファイルやらを取り出して、「さあ、そろそろ本題にはいりましょうか」とふふふ、と笑った。







「余計なお節介かも知れないけれど、まずは弁護士さんを紹介させてちょうだいね? 」

紀子が出したのは神戸にある弁護士事務所の封筒だった。

「え………でも、うち、そないな費用は……」

昨夜事件の後、警察が来て、ざっくりと概要を聞いたようだ。そして広大の遺産管理をしていた弁護士が横領に荷担していたと知り、相当ショックを受けたらしい。
弁護士という人種も信じられないと不安げに話す。

「あら、お金の心配はしなくて大丈夫よ。うちの神戸支社の顧問弁護士に相談して、こういうのが得意な事務所を紹介していただいたのよ。小さなマチ弁で弱者からはたいしてお金は取らず、うちみたいな企業から踏んだくるのよー。人権派で評判なとこだから大丈夫よ!
でね、ちょっとお話してびっくり。もうお兄ちゃんがそこに連絡して話が通ってるじゃない! ほら、同級生の渡辺くんから紹介してもらったらしくて! びっくりよーーお兄ちゃんが人のためにそんなことまでするなんて!」

「入江くんが………?」

「そうよー。琴子ちゃんのお陰ね。あの冷血漢がねぇ」

よよよとハンカチを取り出して目元を拭う紀子に、やはり感動してうるうるしている琴子である。


「弁護士さんはお昼前にここにくるから、何でも話してちょうだいね。不信感を感じたら依頼しなくてもいいから。
警察が誘拐の件について調べに来る前に相談しておいた方がいいと思うのよ。
事実聴取までは仕方ないけど、決して逮捕まではいかせないように尽力してもらうわね。
ざっくり話した感じでは、なんとかなりそうよ。まあ、唯一誘拐を訴えている叔父が捕まった お陰でもあるけれど。
とにかく、万事上手くいくように話はつけてあるから」

「え……ほんまに……?」

「ただ、横領された遺産については取り返せるかわからないわね……恐らくあの男は会社や他の債権者から賠償を求められるだろうし。広大くんに遺されたものは父親の個人資産だとしても、元は企業利益で得たものとして保障の対象にはならないかも」

「もう、遺産のことは諦めてます。広大の将来の為に遺しておかな、と思うて必死に頑張ってきたんやけど、最初からないものと思うたらすっきりして一から頑張れるような気がします」

「そうね。そう思う方がきっと前向きに胸を張って進めるわ」

ふふふ、笑みを浮かべた後、妙に自信満々にきっぱりと宣言する。

「とにかく、マスコミにも警察内部にも根回しは完了してるから。安心しなさいね。絶対にあなたたち母子を離ればなれになんてさせません!」

直樹がいれば「あんたはいったい、何者なんだーーっ!! 」と突っ込みまくったであろうが、琴子は義母の自信たっぷりの安心宣言に、ただひたすら尊敬の眼差しを送っていた。

「あとね、もう一つ提案なんだけど」

そして、紀子はさらに続ける。

「そもそも、あなたが身体を壊したのは無理な働き方をしたせいでしょ? そんな2つも3つも駆けもちして仕事してたら身体が持たないもの。やっぱりきちんと正社員で働いて、母子手当てもちゃんと正当にいただいて、そうすれば経済的にはそんなに問題にはならないと思うのよ」

「 ………でも、うち高卒で、なんの資格もあらへんし……正社員で働いたこといっぺんもないんです」

「あら、諦めるのは早いわよー。あなたの各所の勤務評価は何処も上々よ。ぜひ、パンダイの神戸支社に就職して欲しいの。
神戸支社は乳幼児の知育玩具専用のチームがあるのよ。メンバーは主に子育て中の主婦が多いの。学歴とか経歴も様々な人ばっかりだから卑屈に思うこともないわよ。社内に託児室があるし、学童の子も面倒見てくれるから、広大くんが小学校にいってもばっちりよ。環境はとってもよいと思うわ」

「わあーいたれり尽くせじゃないですかー!! 圭子さん、ぜひチャレンジしましょうよ!」

「……え、で、でも……」

突然の申し出に戸惑いを隠せない圭子に比べて、琴子のテンションは上がる一方だ。

「無論、体調がよくなって、いろんな問題が片付いてからね。一応面接は受けてもらうけど、ま、私の力でごり押しするから大丈夫よー」

「ええっお義母さん、会社にそんな権限あるんですかー?」

「あら、一応これでも役員に名前は連ねているのよ」

すっごーい、知らなかったです! と驚きと感動を隠せない琴子は、「それを知ってたらお義母さんにお願いしたのになー。マコちゃんのパパの再就職」

ふと、思い出して口にしてしまった。

「あら、誰かしら?」

「えーと、ちょっとした知り合いで珍天堂から転職したがってる人がいて……」

「まあ、どんな人でも口をきいてあげる訳じゃないけど、琴子ちゃんのお墨付きなら大丈夫ね」

「はい。いい人ですよ、多分」

お墨付きできるほど真琴の父親について知ってる訳ではないが、これはもうただの直感である。

「ま、その件はまた後日で。とりあえず圭子さんね。入院している間にじっくり考えてね!」










「…………本当に色々ありがとうございました、お義母さん」

圭子の部屋を辞した後、琴子が自分の整形外科の受診を待っていてくれた紀子に頭を下げると「いやあねぇ、他人行儀な。親子なんだから当たり前でしょう?」ところころと笑った。

「……本当にもう帰っちゃうんですか? もう一晩くらい、うちに泊まって……」

病院のタクシー乗り場でそのまま二人でタクシーに乗り込む。いったん直樹の部屋に紀子の荷物を取りにいき、そのまま神戸駅に向かうという紀子を送るためだ。

「あら、あの狭い部屋に泊まるのは無理よ~~。お邪魔虫にはなりたくないしね! お兄ちゃんに恨まれちゃう。それに明日は裕樹の出校日だから、戻らないといけないのよ。でもま、意外と神戸は近いわね。社用ヘリ貸すから、東京から通勤しちゃえばいいのに」

「えーと、流石にそれは…」

「 あら冗談よ」

ほほほほと軽やかに笑って義母紀子は風のように現れて風のように去っていったのであったーーー。








8月24日(日)





あの事件から3日過ぎた。
日々色々な事件が溢れかえっているせいか、病院に殺到していたマスコミもあっという間に来なくなった。
あたし、琴子さん、入江先生、片瀬主任、くるみちゃんーーあの場にいた何名かが翌日病院の一室で警察からざっくりとした事情聴取を受けたのだけれど、その後はどのような状況であるのか、あたしたちに経過報告は一切ない。
広大くんの叔父さんが粉飾と不正取引や横領について再逮捕されたというのも、やはり新聞報道で世間一般の人と同じタイミングで知った。
Kコーポレーションの今後について経済アナリストを名乗る人たちがまことしやかに語っているけれど、いくつかの会社が資本提携を申し出ているようで、倒産は免れそうな気配である。
無論新社長は一族とは関係ない他社から引っ張られてくるだろうという話だ。事業を立て直す為には銀行お墨付きの相当な経営実績のある人が就任することになるだろう。
業務提携に名乗りをあげている会社のひとつにパンダイの名前もあったことに、あたしもだけど、琴子さんも入江先生もそれ以上に驚いていた。
パンダイも玩具メーカーでありながらメディアミックスや出版、通信、と幅広いジャンルに進出しているようだ。Kコーポレーションのような関西では名のある総合商社との提携は、それなりにメリットがあるのだろう。


圭子さんの術後の経過は順調で、思ったよりは早く退院出来そうな気配である。
主治医の許可が降りた一昨日から時折警察が来て病室で事情聴取をしているようだけど、常に弁護士が同席していて、圭子さんが取り乱すことはないようだ。

あっさり誘拐ーーこの言い方には語弊があるわよね。父親の許可なく広大くんを連れて行ってしまった略取については認めていて、退院後の逮捕は覚悟しているようだった。
あたしも毎日顔を出しているけれど、何だか腹をくくったようで随分すっきりした顔をしていたわね。

ただ誘拐を訴えていた義弟が逮捕された訳だし、それも己の犯罪を隠蔽したいが為に訴えていた訳で、被害を訴えるべき父親は亡くなっているので、起訴猶予か嫌疑不十分で、このまま不起訴になるだろう、というのが入江先生の予測だ。
広大くんの今後についても家裁から判断に委ねられるだろうけれど、圭子さんの環境はなぜか入江先生のお母様によって随分しっかりと整えられ、恐らくこのまま養育が認められるのではないかという話。

実際、その後ーー琴子さんが東京に戻った後、すべては入江先生の予想通りに上手く転がっていったので、これはもう琴子さんの全てのトラブルをラッキーに変える人智を越えた力のせいなのかも、と後々思わずにはいられなかった。

そして、これもまた後々の話なのだけれど、パンダイの社員になった圭子さんが、かなりの爆発的ヒットとなる知育玩具を開発することとなる。それは新しく開発されたゲームソフトにも導入され、同じ頃パンダイに転職した御子柴一史氏も共に携わる。
そして、この二人が数年後に再婚するなんて、さすがの入江先生にも予測不可能だったようだけれどね。
つぼみルームの病児保育室で一緒の空間にいた広大くんとマコちゃんがまさか兄妹になるなんて、誰も予想できないわよね。琴子さんが「なんてロマンチックな運命~~」と結婚式に招待され狂喜乱舞するのは、まだまだ遥か未来のお話。

ーーと、まあ今は誰も知ることのない未来の話は置いておいて(何故そんなことをあたしが知ってるか突っ込まないように!)、とりあえず今現在のお隣の様子なのだけどーーー

静かだ。

恐ろしいほど、静かだ。

1日に1回、琴子さんが圭子さんのお見舞いと広大くんの様子を見に行っているのは知っている。昨日と今日の土日は二人で示しあわせて病室に行ったしね。
それ以外は部屋で大人しく勉強しているということだし、今回はその通り大人しくしている模様。
そして三日間、何の騒ぎもない。
入江先生の方もここ最近は毎日8時くらいまでには家に帰れているようだ。
そのわりにはーー多分入江先生はまだ琴子さんとのいちゃこらを解禁していない。
圭子さんのお見舞いに一緒に行ったとき、キスマークは首筋にしっかりついていたけれど、足腰はしゃっきりしているので、恐らく入江先生はまだ己自身にドクターストップをかけて、病み上がりの嫁に手は出していないとみた。
……! ってあたし何、お隣の夜事情を推察してんだか……

うん、しかし……忍耐強いね。医師としての理性は完璧なのねー。感心感心。
そのかわり箍が外れた時は怖いかも……琴子さん、覚悟しておいた方がいいかもよー。と、かなり余計なお世話のエールを密かに送り、何事もない平穏な週末を堪能していたのだ。





* * *





「入江くん、お帰りーー」


その日は当直明けということもあり、直樹はかなり早めに帰宅することができた。
琴子はエプロン姿で満面の笑みで扉を開ける。

「今日ね、これだけ問題集進めたんだよ」

「今日のご飯はね、お義母さんから送ってもらった無水鍋で煮込んだんだーー焦がしたけどねっえへっ」

「今日、久しぶりにちょっと涼しくなったよねー。猛暑連続記録がやっとストップだって!」

帰ってくるなり弾丸のように間断なく話しかけくる琴子の甘ったるい声が耳に心地よい。

「新しいスタッフの人たちはもう慣れた?」

食事の用意をしながら、琴子が訊ねた。
直樹の話によると週末から新しい研修医が何名か救命に配属されたらしい。直樹と同じ期間限定の救命研修ではあるが。
そのかわり神谷が救命から外れた。
イヤイヤ救命に来たと云っていた割りには最後は寂しそうだったという話だ。
1名抜けて3名も入ってきたので、かなりシフトに余裕ができてきたようだ。お陰で直樹も早く帰れるようになった。
事務局からの相当な圧力があり、このままでは過労者続出で救命が成り立たないと人員配置にテコ入れがあったらしい。

「まあね。外科の奴はそこそこ使えるがあとは精神科と眼科だからな。まだまだあぶなかっしいかな。自分から全然動けない奴ばっかで」

まだ医者になって4ヶ月の同輩の直樹にそう評されるのもちょっと可哀想、と密かに同情する琴子である。でも実力は全然違うから仕方ないわよね、とすぐに思い直すわけだが。

「そうそう、神谷先生が皮膚科に戻って、佛円が随分寂しそうだったな。神仏コンビが解消されて」

「そっかー確かに寂しいね。知った顔がいなくなっちゃうのは」

琴子も何度も救命にお世話になり迷惑をかけてしまったと、毎日圭子のお見舞いに病院に通っている割りには救命の医局にはあれから一度も顔を出していなかった。

「おれも、あと半月だしね」

「ふふ……寂しい?」

「いや、別に………」

元々救命は単なる研修と応援だ。ずっといる訳ではないことはわかっている。

わかっているがーー

「そういえば、今日、帰り際に各務先生に呼び出されてね」

「え?」

「このまま救命に残るつもりはないかとマジに勧誘されたーー」

「へ?」

琴子は随分と驚いたようで、どんぐり眼を見開いて、直樹の顔を真っ直ぐに見つめていた。

「 あと、明後日から5日間、代休と合わせて夏休み取れって云われたーー」

「へぇ……… え? えええーっ!?」









※※※※※※※※※※※※※





紀子ママ、あなたナニモノですかーーー!?と入江くんならずとも私が一番突っ込みたいのであった………(((^^;)
かなりの荒業です………f(^^;
未来予報士かをる子さんもねっ

もっとスカッとを期待してた方、申し訳ないm(__)m 二次だから許してね。


そして、終盤になってようやく入江くんも夏休みです……(^_^)v





いよいよGW突入ですね。
今年は珍しく八連休な私です。
とはいえ、なんやかんな予定はいっぱいなので、さくさく更新という訳には行きませんが。

皆様よいGWをお過ごしくださいませ~~♪





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* by なおちゃん
さすが!入江君のママね、大きな会社なら色々なところに会社もあるだろうし?入江君のママは社長夫人ですもんね?入江君が弁護士さんに働きかけてくれたんですね、入江君の、お友達の渡辺君からの照会もあり、で、カワ(・∀・)イイ!!琴子ちゃんが、かかわってることは入江君は、余計いに外さないし、琴子ちゃんがなにを願ってるのか?わかることなどは、いつも助けてくれる、さすが入江君、入江君も丸くなったてことですね、これも琴子ちゃんのおかげ、入江君お休みが出来たなら琴子ちゃんをたまには、デートに連れ出してあげてください。v-24

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

そうそう、すべて撮っておきたい記録魔なのに劇的シーンは撮れませんでした笑

一泊二日でよくもまああれこれ手筈を整えれたものです。流石紀子ママ(((^^;)
もうついでにあっちもこっちも解決させてしまえと。全部捩じ込んですべてを紀子ママにお任せです笑

最初は三人称で書くつもりでしたが(でないと未来の話を語れない)どうにもうまくいかず結局かをる子さん目線で書き直しました。そしたらさくさく。でも若干不都合ありで、未来予測士となりムリムリ押し通してしまいました(((^^;)

そう、ようやく夏本番外編に繋がるわけですが、あの話は本編のパラレルなので、こっちに繋がるようデート編は書き直す予定………ようやく二人っきりの夏休みですよー(^w^)

Re.heorakim様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

連休、あっという間に過ぎ去りそうですね。
heorakim様が笑顔になれて良かったです!
ほんと、紀子ママ、スーパーママですね~~きっと出来ないことはないのです……ええ(^_^;)

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

紀子ママ、使えるものは全部使って根回し完璧です。どんな権力者なんでしょうね……(((^^;)
入江くんも多少動いたことが少しは役にたってるのかなー。

さあ、いよいよ入江くんも夏休みで、二人でいちゃこらさせてあげられるかな?


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Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪


いえいえ、私のほうもリコメがハチャメチャに遅くなりましたので、お気にされないでくださいませ。


紀子ママ様にはいつも不幸のどつぼの渦にいる圭子さんを心配していただいて〜〜少しは先の明るい兆しを垣間見せることが、できてよかったです。もうオマケのようにマコちゃんパパにも幸せになってもらおうと。でもきっと真澄さんのことが忘れられないから再婚はきっともう少し先ね、とかマコちゃんと広大くんの義兄妹ラブとか要らぬところに妄想発展しそうで、止めております(((^^;)


そうそう、今回入江くんはかがみんにスカウトされたこと、琴子ちゃんに報告しましたよ。そこ、ポイントです笑 さすが紀子ママ様!! そのあたりを掘り下げたくて今四苦八苦しております^_^; うまく思ってるように書けなくて〜〜かなりお待たせしてしまうかもですが、頑張りますっっ(^^)d