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個別記事の管理2017-01-29 (Sun)

本日二話まとめて更新しています。
未読の方は(26)からどうぞ。

※※※※※※※※※※※※




8月19日(火)




「ん…………」

目が覚めると、まず白い天井が瞳に映った。そして、ぐるりとベッド周りを取り囲んでいる薄いピンクのカーテン。
視線を脇に移すとベッドの傍らに突っ伏して眠っている直樹の頭が見えた。

「入江くん……」

白衣を着たまま眠ってしまったらしい。

この体勢、苦しくないかなぁ。
ベッドに入ればよかったのに……って無理か……。

眠る直樹の少し乱れた髪をふわりと撫でる。

そういえば、夜中に直樹が来て、少し話をしたことを思い出す。琴子の着替えや入院に必要なものを取りに帰ったあとだった。

「確かにまともな下着が少なかったな。フリフリだの透け透けだのやたら面積少ないやつだの………」

「きゃー/////ほんとに入江くんがあたしの下着を漁ったの?」

「漁るとは失礼な。適当におとなしめのやつを探して詰め込んだだけだ。いや、入院中ずっと同じぱんつでいいなら持って帰るぞ」

「あ、うそうそ。ありがとう! 」

そういいながら直樹が置いた琴子のボストンを引っ張りあげて中を見ると、割りと可愛い系が入っていた。

そ、そうか。入江くんこーゆーのが好みなんだ……

などと心の中で考えていたら「おれじゃなくておふくろの好みだろ?」と突っ込まれた。

うううっお義母さん、何でそんなものばかり入れたんですかー?
清拭の時に看護婦さんに見られたらちょっと恥ずかしすぎるかも。

おふくろに委せるからだろ? とりあえず、退院してから堪能させてもらうから。

え? た、たんのー?

胆嚢じゃねぇぞ。

ーーそんなくだらない会話が、すごく久しぶりでいとおしさを感じる。
病院のベッドの上というのが残念だが、いつまでも直樹ととりとめもなくお喋りしていたいーーと思っていたのにーー先に直樹が寝落ちをして、その寝顔を見つめているうちに琴子も眠ってしまったらしい。すでにすっかり夜が明けていた。


「ああ……寝ちまったか……」

琴子の動きで目が覚めたのか、直樹もむっくりと起き上がる。

「どうだ? 調子は」

琴子の額に手を当て、それから点滴とベッドサイドモニターをチェックする。

「うん、もう大丈夫だよ。少し節々がいたいけど……」

「まあ、暫くは仕方ないかな。頭痛は?」

「治まったみたい」

「そうか」

「寝すぎて背中痛くなっちゃった。ベッド少し起こしていい?」

枕元のリモコンでベッドの角度を変えて頭を起こしてやる。

「熱はもうすっかり下がったようだな」

琴子の前髪をかきあげて、こつりと額に額をあわせると、琴子が瞬間的に沸騰して頬を染める。

「ーーあ、ごめんなさいっ!!」

朝の巡回に来たナースが、キスをしていたと勘違いして慌てて一度開けたカーテンを閉めた。

「あーーっ! だ、大丈夫です。どうぞっっ」

琴子の言葉にもう一度ナースがおずおずと決まり悪そうに入ってきた。

「じゃ、体温と血圧を計りますね……」

直樹と琴子の注視を受けて、酷くやりにくそうにナースは血圧をはかり、カルテに書き込んでいた。
琴子が自分で脇に入れた体温計は平熱を指していた。

「後でオシッコの管を外しますね。11時くらいに内科病棟のナースがお迎えにきます。それまでに色々検査を済ませますので」

「はい」

「入江先生、後から入院の手続きの書類持ってきますので、お願いしますね」

「わかりました」

いそいそと出ていったナースの後ろ姿を見つめ、琴子は「あー絶対キスしてると思われた~~」とまた顔を赤くして頬に手をやる。

「別にいいだろ? 夫婦なんだし」

「えー? そうだけど、やっぱりキスは人前では………」

言いかけた唇が掠め取られるように塞がれた。

「ん………」

昨日のキスよりは少し長めのキス。侵入してきた舌を受け入れようとしたそのときーー

「あ、入江さん、すみません、清拭のタオルをーーきゃっ///////ご、ごめんなさいっ!」

またまたタイミング悪くカーテンを開けてしまったナースに、今度こそばっちり見られてしまったようだ。


「……入江くん、もぉ~~」

「じゃ、じゃあお任せしますね、清拭」そういってホットタオルだけ置いていったナースの替わりに、直樹が恥ずかしがる琴子の意思を無視して身体を拭いてやる。


自分の体調が戻ってきて、真っ先に気になるのはやはり広大のことのようだった。

「……広大くん、知らないおうちでも大丈夫だったかなー。ちゃんと眠れたのかな。かをる子さんにも申し訳ないことしちゃった……変なことに巻き込んじゃって………」

「みんなおまえのお節介病に感染されてんじゃねぇか?」

「そ、そうかなー? みんな、いい人ばっかりなんだよ」

琴子の周囲にはそんな人間ばかり集まる気がする。彼女の周りには根っからの悪人は殆ど存在しない。
それとも琴子が変えていくのかもしれない。その一生懸命さに人はどんどん影響され、本来持っている善の部分が引き出されていく。

ーーほんとに、おまえはすげぇ女だよ。

「じゃあ、そろそろ戻るな。病棟に移る頃にまた一度くる」

「うん。お仕事がんばってね」






午前中は検査をしているうちに時間が瞬く間に過ぎた。
昼前に内科病棟のナースが迎えに来てくれて、そのまま病室に移動した。結局直樹は顔を出してはくれなかったが、時折聴こえる救急車のサイレンから、忙しいのだろうなぁと容易に想像はついた。

病室は空いていればなるべく個室で、という直樹からの要望だったという。
大部屋でも全然構わないのになーと差額ベッド代金を気にするあたり、元々庶民な琴子である。


「入江先生って、かっこいいですよね。やっぱり昔からモテてはったんですよね。奥さん、遠距離で心配やないんですか?」

救命センターまでお迎えにきてくれた内科病棟のナースは、琴子が直樹の妻であると予め知っていたようだった。そして東京に離れて住んでいることも。どれだけ院内知名度高いんだか、と思わず呆れてしまう。

「あ、私、永倉といいます。よろしゅうお願いしますねー。入江先生の奥さん担当させてもらえるなんて、ラッキーやわ、私!」

ナース二年目という永倉は、移動のさいに付き添ってくれるはいいが、直樹のことを根掘り葉掘り訊いてくる。

「うん、心配は心配なんだけどねー。でも信じてるから……」

「わーなんか素敵。離れてても心が通じあってるみたいで」

「いや、そんな……」

信じてるといいつつ、直樹を疑っていちいち落ち込むことも多々あるのだがのだが、そんなことを会ったばかりのナースに愚痴るのもどうかと思うので、ネガティブなことには触れず、努めてにこやかに話す。




病棟に移ってすぐ、昼の休憩時間にかをる子が早速訪ねてきてくれた。
広大はとりあえず保育園に連れてったという。

「なんか、お母さんが働いている居酒屋さんだかのママが、帰りは迎えに行ってくれるって。民生委員の人が朝来て、役所の福祉課と相談するとかいってた。さっき、医局にいったらお母さんの意識が戻ったっていうから、これから色々相談できるんじゃないのかな?」

「そっか。圭子さん、目が覚めたんだ。よかった」

「ほんとによかったわよ。あなたもね。さすがに焦ったわよ、今回は」

「う……本当にごめんなさい」

「ごめんじゃなくてありがとう、でしょ?」

「……はい。ありがとうございました」

ふふふっと微笑みあう。

「入江くんにももう謝るな、って云われちゃったし」

「まあ、体調完璧になったらお仕置きコースよね」

「へ?」

きょとんとした琴子ににまにまと笑って、「じゃあ休憩おわりだからー。また来るわ」と去っていった。

ーー圭子さん………まだまだ問題山積みだけど、元気になればきっとなんとかなるよね………

根拠なくそんなことを思う琴子であった。





午後から点滴も外れ、少し自由に動けるようになった。回診にきた内科の主治医の伊東は、トヨばあちゃんを少し若くしたようなずけずけとモノを云うおばちゃん先生だった。

「あんた、看護婦のタマゴのクセして熱中症で運ばれたんやって? ったく、ただでさえ救命はパンク寸前やのに、熱中症にならんよう指導せなならん立場の人間が倒れてどないするんや?」

「……… すみません」

返す言葉もなく項垂れる。

「しかしまあ、意識喪失のわりにはピンシャンしてはるわ。基本は頑丈なんやろ?
そこはナース向きやね。検査の結果はどこも問題なし。
間接痛? 時間薬やけど、あんまりひどいようやったら鎮痛剤だしとくわ。
けどまぁ、あの噂の入江先生の嫁がこんなんとはねぇ。天才も女を見る目がないもんやわ。ふん、わしがもう少し若けりゃ略奪してやるのにねぇ。残念やわ」

「……………」

どうやら趣味も物言いもトヨばあちゃんに似ているようだ。
伊東医師の後ろで永倉がくすくすっと笑っているのが少し気になったが、とりあえずこういうキャラにはすでに耐性が出来ているので、負けない自信はある。

「ま、この調子なら明日か明後日には退院できそうやな。しばらくは安静にしてること。入江先生といちゃいちゃするのも禁止や」

「ええーーっっ」

「なんや、いちゃいちゃするつもりやったんかい。あまいな。個室やからって油断したらあかんで」

「びょ、病院なんかでしませんっ/////」

ちゅーくらいしか………

「まあ、入江先生があんたに手ぇ出すとは思えへんけど」

たいてい入江くんの方からしてくるんですからねっ!!

ーーとは言わないが。

「ほんまに夫婦なんかい?」

「夫婦ですっ」

ああーー東だろうが西だろうが、何処にいってもこの攻防………



さらに。
病院という狭い世界の中では、患者とナースという立場は違えど、直樹が絡むと周りの女は敵だらけになるのだという構図は何処でも同じなのだと、改めて思い知ることとなる。

寝てばかりいては身体が動かなくなると、点滴が外れ自由の身になったあと、琴子はリハビリがてら院内探索に出掛けた。節々の痛みは残っているものの、なんとか動ける。
だが、回廊式の病棟は斗南病院と全く造りが違い、うろうろ歩き回っていたら案の定迷ってしまった。

リネン室に入っていくナースを見つけて、部屋への戻り方を訊ねようと、琴子もリネン室の前に近づいた時ーー





「ねぇ、ねぇ永倉さん、あの入江先生の奥さんの担当になったんやろ? どんな感じの人やった?」

思わず部屋に入ろうとした足がぱたりと止まる。

「なんか明るいだけが取り柄って感じの娘やわ。そんな美人でもないし」

「なんでそんなのがあの入江先生と結婚できたんやろ」

「高校の同級生とか、親同士が親友の幼馴染みとか、高校時代から同棲してたとか噂は色々あるやろ?」

「うちも結婚前に知りおうてればね」

ーーやっぱりみんな入江くん狙いなの~~?
こんな小児科からは遠い内科病棟なのにーー

「………なんや、噂によれば看護婦志望って話らしいやん」

「そうやねん。さっき、訊いた話によると文学部から転科して、今看護科の四回生らしいんよ。来年国家試験受かったらここの病院に入るの、入江先生と働くの~~ってたのしそぉに言うてたわ」

にこにこと笑って「へぇそうなんですかぁ。じゃあ来年一緒に働けるかもやねぇ」と明るく応えていた時とは明らかに声のトーンが違う。

「だいたいさぁー看護婦志望が熱中症で運ばれてくる、ってどーなんよ」

「そうそ。伊東センセにも怒られはっててて、思わずザマーミロッて思うてもうたわ~~」

「うちらがどんだけ日々、患者さんに脱水や、熱中症にならへんよう指導してると思うてんのよ。それが自分がなってるんやから看護婦志望が聞いて呆れるわ。そんなのが入江先生の奥さんなんて信じられへん」

「ほんまやね。容姿や性格は人の好みやからまあしょうもあらへんけど、看護婦志望のクセして自己管理力なさすぎよね。そんなんと一緒に働くの絶対いややわ」

「所詮入江先生の傍にいたいってだけの邪な志望動機なんでしょ。だからそんな自覚のない行動とれるんやないの?」

「わー、ますますいややわー。看護婦なめとんの? 絶対一緒に働きたくないわー」

「だって、こっちにきてまだたいして日ちにも経ってないのに、3回も救命運ばれたんやろ? ありえへん。絶対わざとやー。どんだけ目立ちたがりなん?」

「救命チームがオーバーフロー状態なのによくそんな非常識なことできるわー。ほんと、入江先生にもいい迷惑やよねー。夫の足引っ張る妻って、ほんまサイテーや」

「仕事も出来なさそうやない?」

「採血室の成田さんに訊いたんやけど、あの嫁、採血の時青さめてギャーギャー騒いでたって話やわ。そんで、その後『採血上手ですねっコツ教えてください!』って手をがっしり握られたって」

「うわーほんま? 看護婦としての技術も全然あかんやないの?」

「それ聞いてなんか入江先生可哀想になっちゃったわー」

「そんなのがこの病院に来ても旦那さんの将来の邪魔になるだけや。奥さんがそんなんだってバレちゃって、入江先生も立場あらへんわ」

「例えわざとやなくても壊滅的なドジっ娘っちゃんってことやろ? もしかしてチョー天然? あかんわー。そんなんナースにしちゃ、絶対あかんわー。世のため患者のため、入江先生の出世のためにも国家試験受かりませんよーに」

「はあ………ますます、一緒に働きたくないー」

「そんなん国家試験受からへんやろ。受かったとしても、ここの病院、付属の看護学校の卒業生でほぼ定員埋まるし。きっとこの病院に来ることあらへんって」

「そうやといいけどね」

「とりあえず、さっさと東京帰ってくれへんかなー」

そんな話をリネン室の片隅で延々としていた二人のナースが部屋から出ようとした直前に、琴子は慌ててその場を離れた。


ーーあれ? なんでよく見えないんだろ………

視界がぼやけて、思わず壁にはりついてそろそろと歩き出す。

ぽたりと、一滴が頬を伝って廊下の床を濡らした。


ーーどうしよう……自分の部屋にも帰れない。
あたしってあたしって………ほんとに馬鹿でドジで………
入江くんにも救命の皆さんにも迷惑かけてばっかりで………何のために此処にきたんだろ……?


あたしーーどうしよう………どうしたらいいんだろ……?

琴子は一歩も動けなくなって、その場にしゃがみこんでしまったーー。












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* by なおちゃん
看護師の癖に、入江くんへの、嫉妬丸出しですか、看護師足るもの、後ろにも、目があるように、じゃないと、いい看護師とは、言えませんよ?琴子ちゃん、大丈夫かな、入江くん、琴子ちゃんを、早く見つけて上げて。

続編出して下さい * by まあか
君のいる、午后の教室
1997年夏休み
の続編出して下さい

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個別記事の管理2017-01-29 (Sun)

更新ペースがどんどん遅くなって申し訳ないです。
風邪を引きかけては治りと、とりあえずまあまあ元気なんですが(((^^;)

ほぼ週末しか書けないのに週末用事があるともうダメですね~~( ´△`)

でも今回は二話まとめてアップなのでご勘弁を。










※※※※※※※※※※※






ICUに戻った直樹は、梨本圭子のベッドに向かった。
ICUナースが点滴の滴下速度をチェックしているところだった。

「バイタルは安定してます。先程少し覚醒しましたが、朦朧としていて眠ってしまったようです。まだちょっと話せる状況じゃないです」

「わかりました。各務先生は?」

「会議があるとかで呼ばれてました。術後の管理は入江先生に任せると」

「はい」

「あ、入江先生。それと、やはり梨本さん、身内の方と連絡が取れないようなんですけど」

救急搬送されてくる患者のネックは身元保証人がいない場合だ。基本オペも入院も保証人がいないと受け入れられないものだが、救急搬送の場合は例外も多い。

「確か兄がいると聞いています。明日になったらソーシャルワーカーに対応してもらいましょう。お子さんの処遇も相談しなくてはならないし」

今朝、朝帰りの琴子が語っていた梨本母子の複雑な家庭事情を思い出す。確か広大にとって叔父にあたる義弟もいる筈だがーー。
その身内に連絡することは本人にとっては本意ではないだろう。琴子の話によると金を無心にくるような兄に遺産絡みで揉めている義弟だという。だが、病院側としては唯一の身内なら連絡を取らないわけにはいかない。

「わかりました。さっきお子さんと事務の森村さんと一緒に来てましたけど、何かご関係でも……?」

森村かをる子は事務室という地味な僻地にいるものの、職員全員がお世話になっているせいである意味この病院で、最も顔と名前を知られている職員のようだ。

「……二人とも妻を介しての知り合いですよ」

関係、と問われてもかをる子も今日広大と知り合ったばかりだろう。説明するのも面倒で適当に誤魔化す。

「奥さまはもう大丈夫なんですか? CPA(心肺停止)になったって……」

ICU付きの聡明なナースだが、瞳には微かに好奇の色が浮かんでいる。

「ICUにまで噂が? 大丈夫ですよ。鬼頭先生や佛円先生のお陰でちゃんと蘇生して意識も戻りました」

ICUナースのさらにもっと詳しく話を聴きたいという無言の要求を感じたものの、気がつかないふりをして、業務の会話を交わしたあとその場を任せて医局へ向かう。






「あ、入江先生、奥さん、意識戻りはったって?」

医局の扉を開けると、肩をぐりぐり回しながら、佛円がパソコンから目を離して直樹に話し掛けてきた。

「ききましたよー。奥さん熱射病で運ばれたんだって?」

その場にいなかった神谷も、救急外来の当番が終わったようでコーヒーを飲んでいた。

「今日は外来も熱中症多かったよ。ほんと、くそ暑かったもんなー」

ようやく一息ついたらしい神谷の横をすり抜け、直樹は佛円の横につかつかと歩みより、そして頭を下げた。

「今日は、琴子を助けてくれてありがとう………迷惑かけて申し訳なかった」

「へ? 患者として来たんやから処置するのは当然で、頭下げられる謂れはないやろ」

佛円が直樹の反応に思わず驚いてのけ反る。

「そりゃ……まあ、身内が運ばれるとびびるよなー」

「………ってか、琴子さん、この短期間に三回目やったしね~~入江先生の心臓、悪くなりそうやな」

「…………重ね重ね、すまない……」

「まあ、どれも不可抗力の事情があってのことなんやし。そういうトラブルって続くときは続くもんなんやろ」

「そうそう、二度あることは三度あるっての実証した感じ? ま、巻き込まれ体質ってあるんだよねー」

事情をある程度知っている彼らは、琴子を責めたりはしなかった。驚いてはいるだろうが。

「……いや、あいつの場合は根っからのトラブルメーカーなだけで。人のお節介ばかりやいて全く自分を省みずしょっちゅう壁に激突して」

「絵にかいたような猪突猛進!! でもまっすぐないい娘や。見てて飽きないタイプやね」

「……でも振り回さるの分かってて結婚したんだろ? 意外とMなんだね、入江先生」

そんなことはプロポーズした夜に自覚している。
だが他人に云われるのは気にくわない。とはいえ、今はそんなことはどうでもいい。

「とにかく、迷惑ばっかりかけてすみません。本当に今回ばかりは……」

「さすがの入江先生も一瞬真っ青やったもんなー」

「普通身内がCPAになりゃ当然っちゃ当然だけどね」

患者が身内だからといって一瞬でも冷静さを欠いたのはプロとして失格だという忸怩たる思いに駆られる。

「入江先生って感情を表に出さないアンドロイドみたいな人やと思うてたけど、嫁ちゃん来てからえらい印象変わったわ」

「……どんなイメージですか……俺だって感情はありますよ」

「うん。嫁ちゃんに振り回されてる入江先生、いいわー人間っぽくて」


なんだかんだ一回目も二回目も結構焦ってたよね?

そーいやーそーやった

神仏コンビかニマニマ笑う。
琴子が無事だったから、こんな軽口も投げかけられたりするのだ。
それはそれで良しとしよう。

「そういえば各務先生が入江先生に怒鳴ったの、初めて見たかも」

「わー見たかった。そのレアな光景。きっともうないだろうなー」

神谷が悔しがる。

「あの場合、熱中症の処置は俺や姫子先生でもできるけど、胃穿孔の緊急オペは一番入江先生がつくのが適任やったし。当然の判断っちゃ判断やけど……でも、どっちも緊迫した状況やったし狼狽えるのは人としてあたりまえや」

「おまえがオペ入れば良かったんじゃねぇの?」

「えーおれ? 各務先生の前立ちにつくのはちょっと……」

佛円は救命医志望ではあるが、医者になって4ヶ月、まだまだ経験値の少ない発展途上のも研修医なのだ。やっと皮膚にメスを入れることに慣れてきたくらいだ。外科結びの練習に日々いそしんでも直樹の手際には敵わない。直樹のように自信満々にオペ室に入れる方が珍しい。

「でも、おれの心マは完璧やったろ? やっぱりここで恩を売っとかないと」

ふっふっふっとほくそ笑む佛円に、

「だから、感謝してるーーでもまあ、確かに医者としては当然だよな。よくよく考えればやはり礼なんていう必要なかったな」

軽口で返してくる同僚たちに合わせて、直樹も皮肉っぽくいつものように切り返す。

「わーやっぱりもっと感謝してやー!」

できればメシ奢ってくれるとか、女の子紹介してくれるとかっ

医者が見返り請求してどーする?

えー? 入江先生の感謝したいゆー気持ちをきっちり受け止めてるだけやん


常に張りつめている処置室や初療室とは隔絶したのどかな日常が医局にはあった。
直樹も久しぶりにコーヒーを飲もうと、オフィスコーヒーのカップを手にする。
琴子のコーヒーとはくらぶるべくもないが、缶コーヒーよりはマシだ。

そのときーーコンコン、と医局のドアがノックされた。

「えーと、入江先生、いますか?」

「森村さん」

かをる子が、広大を伴って訪ねてきたのだった。

「今、つぼみルームにこの子を引き取りに行ったんです」

「どうも色々とすみません。片瀬主任には、後でおれも挨拶にいきます。明日からのボランティア行けなくなったので」

確かボランティアは今週いっぱいを予定していたはずだ。

「それで、入江先生。今夜だけ、あたしこの子を預かりましょうか? やっぱり医局で預かるのは無理があるでしょう?」

「え? しかし……それはいくらなんでも」

独身女性が知り合って間もない赤の他人の子供を預かるのは無理だろうと、直樹も諾とはいえない。

「うん、まあ、一晩だけだけどね。片瀬さんには今からソーシャルワーカーに連絡して対処しまーすとかいって、預かって来ちゃったけど、実は連れ帰るつもりだったの。この子とちょっと話してみて、わりとアニメとか特撮の趣味が合いそうだし。ねー、広大くん?」

「おー。おれ、このねーちゃんちにいく。戦隊シリーズのビデオ揃ってるゆーし」

………戦隊ものも押さえてたのか、彼女は。

直樹が呆気に取られているところに佛円が、どんっと駆け寄ってかをる子の手をとる。

「も、森村さん! あなたもアニメとか特撮好きなんですかっ?」

「へ? え、えーと、まあ………」

かをる子は明らかに『しまった』 という顔をしていた。職場では決して知られたくなかったオタクな趣味のことを口にしてしまったのだ。

「ぼ、僕もなんです! 奇遇ですねぇ。戦隊シリーズや仮面戦士ものは全部ビデオ持ってるんですよー。アニメも結構チェックしてますよ」

「そ、そうなの? えーと……」

「佛円です! 一番好きなのはやっぱり永遠のゴッドペガサスですっ」

「あ、おれもやー」

同意する広大の方をちらっと見たがすぐにかをる子の方に視線を向ける。

「そう、佛円先生。でも、多分好きなポイントとか方向性はかなり違うのではないかと………あたしかなりマニアックなんで」

困ったように笑みを浮かべるかをる子に、「大丈夫です! ぼくもマニアです!」と無理矢理標準語で話し掛ける。

ーーいや、あたしオタクですから……腐ってますから……

かをる子の内心の声が聞こえた気がした。

「いやーぼくは特撮よくわかんないけど、鉄オタなんですよ」

何故か、神谷までひしっとかをる子に近づき、意味不明なアピールをして参戦する。

「あ、そーなんですか」

だから、なんなのよ。
理系男子は結構オタク系多いの、知ってるわよ。

苦笑気味の表情から、かをる子の内心はやはり想像がつく。

「でも、森村さんなんで入江先生と……」

「あたし、隣に住んでるんですよ。あ、これは他の人には内密に! 入江先生ファンの女子にバレたらヤバイので」

「ええーそうなんですか!?」

あれこれ食いついてきそうな二人を振り切るように、「じゃ、ちょっと琴子さんとこ寄ってから帰りますね。広大くん、いこ」とそそくさと扉の方に向かう。

「森村さん、本当にありがとうございます。でも大丈夫ですか?」

「子供は嫌いじゃないから。無理そうならここに連れてくるわ。だからそんなに恐縮しないでねー。あたしも大概あなたの奥さんに感化されてるかも」

そういって軽く手を振ってして医局を後にした。








直樹が琴子の元を訪れたのは、かをる子が琴子を見舞った一時間位あとだった。

「起きてたのか?」

「うん。かをる子さんが来てくれたの。やっとお礼を云うことができたよ」

「そうか」

「そのうえ、広大くんまで預かってくれるって……ほんとに良かった」

「一晩だけだぞ。そんなに甘えられない。………ってか、本当なら赤の他人に任せるのは何かあった時に問題があって不味いんだが………」

「うん。わかってる……でも、広大くんも、お母さんがあんなことになって不安だろうけど……かをる子さんなら安心よね。なんか、命を助けてもらった上に、そんなことまでしてもらっちゃって……申し訳ないなぁ」

「おまえと知り合った以上、巻き込まれるのは自然の摂理なんだと笑ってたよ」

「へ?」

「ほんとに感謝しても感謝しきれない。退院したら修羅場用のユ〇ケルと肩揉みよろしくと言ってたぞ」

「はは……原稿のページ打ちとネーム貼りもよろしくとか云われたけど、何やるんだろ……?」

「さあ?」

ふふふっと笑い合う。

「広大くん、ちゃんと眠れてるかな……」

「子供は順応力高いだろ?」

「そうだね。広大くんは特に……。でも、さっき、ここに来たときはーー」

広大は琴子の顔を見たとたんに顔を歪ませてポロポロと泣き出した。

「琴子、琴子、ごめんな」

幼い心のうちはどれだけ今の状況をわかっているのか。だが、元凶は自分のせいなのだとうっすらと感じているらしい。

「広大くんのせいじゃないよー。だから謝らなくていいんだよ」

琴子が優しく頭を撫でるとやっと少し泣き止んだのだ。
とはいえ、自分までこんなことになってしまって何もしてやれないことに心が痛む。

「………おまえはせめて入院中だけでも余計なこと考えるなよ」

遠い瞳をしていた琴子に不穏なものを感じたのか、きっちり釘を差す。

「……だ、大丈夫だよ……ここじゃ、何もできないし」

「当たり前だ」

「………入江くんも……本当にごめんなさい。心配ばっかりかけて」

ほんとに、ほんとにごめんなさい。
あたしってなんでこーなっちゃうんだろ。

何度も何度も謝る琴子に、「おまえが海の底より深く反省しているのはよくわかったから、もう謝らなくていい」とひとつため息をついてからそう云った。

「それよりも、梨本圭子さんのこと、少し聞きたいんだが話せるか? 手続き上、知っておきたいんだ」

「う、うん……」

「まだ体調がつらいなら無理しなくていいから」

「だ、大丈夫だよ。あたしも色々頭の中はっきりしてきて、朝からのこと、思い出せてきたの」


圭子が慌てて病院に来たこと、広大がいなくなったことーーそして、その原因ののこと……。

直樹に誘拐のことを話したら、思った以上に複雑な状況に、さすがに眉をひそめつつも神妙な面持ちで聴いてくれていた。

圭子さん、身体がよくなっても逮捕されたりとかしないよね?

不安そうに訊ねる琴子に、「詳しくはわからないけど、実母でも親権者の許可ない連れ去りは誘拐だからな」と無駄に安心させてはくれなかった。

「でも、仮に逮捕されても現実には不起訴になる場合が多い筈だ。ただその後親権が取れるかどうかは別問題だが」

そんな話をぽつぽつと話ながら、「一番考えなくてはならないのは広大くんの幸せだ。それにはまずお母さんに早く良くなってもらうこと。そして、おまえもまず他人のことより自分のことだ。何度も云ってるけどな。早く良くなれよ……」

「うん………」

くしゃっと髪を撫でられる。

「汗でベタベタだよ、きっと。シャワー浴びてないもん」

「シャワーは明日以降だな。清拭で我慢しろ。おまえの着替えや入院に必要なものを取りに一度マンションに帰るが、何か他に必要なものはあるか?」

「えーっ 入江くんに下着とか持ってきてもらうの? 恥ずかしいーーっっ」

何をいまさら、と苦笑しつつ、

「くまは持ってこねーからな」

「そんなの、こっちに持ってきてないよー。お母さんのチョイスでちょっと恥ずかしいのばっかり……あーーっあたし救急で運ばれた時に他のお医者さんに、あの下着見られたのかしら~~~どーしよーっっ」

「緊急事態にそんなことはどうでもいいっ! ………それに、姫子先生になら別にいいだろ?」

「う……うん……」

ーー佛円……見たのか?

直樹の顔が若干ぴくりと歪んだように見えたのは決して気のせいではないだろう。






そしてその後マンションに戻ったのは夜10時近かった。
隣の部屋の電気は消えていた。
広大は大人しく眠ったのだろうか。

直樹は部屋に入った途端、真冬のような冷気に驚く。
そういえばエアコンつけっぱなしといってたな、と苦笑する。
窓を開けて少し温めの空気を入れてから、パソコンの電源をいれた。

「さてと」

入院準備をする前に、いくつかしなくてはならないことがある。

引き出しの中からポストーカードホルダーを出して、一枚一枚チェックすると、直樹は受話器を手に取った。










※※※※※※※※※※※



どーにも、救命の愉快な仲間たちと喋り出すと会話文だけに終始してしまいます………f(^^;
なかなか進展しないなー。



進展させるためにも続けてもう1話更新しております。





















Return

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個別記事の管理2017-01-15 (Sun)

年明けてからなかなか更新できなくてすみません。


そして、短いです………f(^^;

もう少し書こうと思ったけど諦めた……orz







※※※※※※※※※※※※※※※







「う……ん」

ずっと固く瞳を閉じていた琴子の睫毛が微かに揺れた。
眉間のシワが深く刻まれ、そして、うっすらと瞳が開いた。

「琴子………!」

「いり……えくん?」

不思議そうに直樹の顔を見る。ぼんやりとして視点が定まらないようだが、直樹の顔だけははっきり見えているようだ。

「 もう、お仕事……終わったの……?」

少し掠れ気味の声。

「ごめんね……うたた寝してたみたい……すぐ、……ご飯……つくるからーーあれ?」

ようやく琴子も自分の身体に異変が起きていることに気づいたようだ。

「ここ……どこ? あたし……」

起き上がれないこととか。
見慣れない場所であることとか。
そして何よりーー嗅ぎ慣れた薬品の匂いが鼻腔を掠めた。
狭いベッドに………腕に点滴……?
ーー状況が理解できない。

「あたし……なんで………」

不安気に問い掛ける琴子の額に軽くふれ、そのまま髪をくしゃりとかきあげた。

「熱はだいぶ下がったな。体調はどうだ? 頭痛とかは……?」

「え? あ、あーー、あたし! そういえば熱中症になりかかって………」

「バカ野郎! 熱中症どころか、重度の熱射病だ! 高熱と脱水で死にかけたんだぞ」

「え…? ……やだなぁ入江くん、そんな大袈裟な……そういえば、ちょっと頭が重いけど……」

「おまえ……本当にヤバかったんだぞ。心臓一瞬止まりかかったし」

「え? ええっ ウソ………」

「ウソじゃねーよ。こっちの心臓まで止まるかと思った」

呆れたような口調だが、顔付きは神妙だった。

ーーえーと、ほんとに……? あたし?

「そういえば……ずっと夢見てたような……」

琴子がふっと思い出すように呟いた。

「ハワイにいたの……」

「は?」

「せっかくハワイにいるのに何故か入江くんはいなくて捜し回ってるの。だんだん暑くて暑くて、さすが常夏ねーって。もうしんどくって。そしたら目の前に河があって」

「ハワイなのに、海じゃなくて河かよ……」

「うん、何故だか河なのよ。あっついから飛び込もうとしたら、河の向こうにお母さんがいて……思わず『おかあさーんっ』って、河に入っていこうとしたのね。そしたらめっちゃ怒られたの。『ダメよ、危ないんだからー。この河は流れも速いし深いのよ~~本当にあんたってば向こう見ずなんだからっ』って」


ーーえっ! でもおかーさんのとこ行きたいっ

ダメダメ。ここは子どもの来るとこじゃないんだから。

おかーさん、あたしもう子どもじゃないよ。結婚だってしたんだよ。

子どもは子どもよ。あたしにとっては永遠に子どもなのよ。
大丈夫よ、また70年くらい先に会えるから!!

70年って……遠いよー

あら、あっという間よ。だから、またねー。直樹さんと仲良くね。あんまり心配させちゃダメよ。

だって………入江くん、いないの……

いるわよ。ほら。

「……そしたら。入江くんの声が聞こえて……振り返ってもう一度河の方を見たら、もうお母さんの姿は見えなくて、目の前はハワイの青い海だったの。入江くんの声のする方に歩いていったら、やっと目が覚めて……」

一種の臨死体験みたいなものかと思う。
病院に勤めだしてから、意外とそんな体験を聴くことは多い。

「おかあさんに、追い返されて良かったよ……でも、なんでハワイだったのかなー……あの夜が最高に幸せだったからかなー」

確かに暗示的だと思う。
もう一度思い出の地に行きたいと言う琴子の潜在的な願望なのかもしれないが、あのハネムーンの夜、琴子を捜して走り回っていたのは自分の方だった。
そして、そもそも琴子を捜し回る羽目になった原因は、医者の妻になるのにいちいち患者に嫉妬してどうする? と叱責したせいでーーー。

ざまあねぇよな。
琴子のことをとやかくいう資格もない。
直樹は自嘲気味に、意識不明の琴子が搬送されてきた瞬間の得もいえぬ感情を反芻する。

琴子に触れようとした同僚に対する、一瞬のあの息の詰まるような感覚はなんだったのだろう。
琴子を救うのは自分でなければならないという独占欲なのか。
患者を選択せねばならないという状況下で自分が琴子を救えないという焦燥と、琴子を失うかもしれないという恐怖だったのかーー。

ーー医師としては失格だよな……

琴子の心臓が止まった一瞬の間だけだったが、確かに冷静さを欠いていた。

「………あの夜が最高とかいうなよ。まるであの日が天辺で、それからは幸せじゃないみたいじゃないか」

「………え、あ。ううん、そんなことないよ。入江くんがそばに居てくれくれるだけで幸せだもん……ただ、今は………入江くんと離れて暮らす一年は、幸せは半減してるかなー。うん、でも付いていかないって、あたしが決めたことだもんね。試練だと思って頑張るよ……」

へへへっと力なく笑う琴子の頬を軽くなぞる。

ーーあたしが決めたこと……

………違うだろ。おれが勝手に決めたことをおまえが悩んだ挙げ句に了承してくれた……おれの逡巡をあっさり蹴散らして最終的に背中を押してくれたのはおまえだった。

神戸に行くことを告げた時、泣いて怒って口もきかなかったのに、応援すると決めた後は、決して直樹を責めたりせずに、新生活の準備を手伝ってくれていた。

「入江くん………?」

「……頭、重いって? どんな感じだ? 身体が動かしにくいところはないか?」

心の中で膨れはじめた混沌とした感情を振りきって、直樹の顔が医者の顔に変わる。
意識障害を伴う重度の熱中症は、合併症や後遺症の危険も大きい。まだまだ予断は許さない。

「うん……大丈夫だよ。手も足もちゃんと動くし」

そういって、琴子は直樹に手をひらひらと振ったり足を動かせてみせる。

「言葉も鮮明だし………多分脳に後遺症はないな。ま、心臓止まったのほんの僅かだったから余程か大丈夫だろうとは思ったが………」

心停止の原因は一時的な消費性凝固障害だと思われる。熱中症によりおきる意識障害において最も危険な合併症だ。
すぐに適切な処置をしたので多臓器不全などを引き起こすこともなかったようだ。
血液検査の結果は直樹を大きく安堵させた。

直樹の深い安堵のため息に、本当に死にかけたのかと琴子は改めて驚いた。

「……ご、ごめんね。心配させちゃって……でも、あたし、どうして………」

まだ記憶が曖昧で状況をしっかりと思い出せないようだ。

「どうしてこんなことになったのか、おれが知りたいね。隣の森村さんがたまたま旅行から帰って来なかったら本当に大変なことになってたんだぞ。それとあの少年……広大くんが部屋の前で叫んでいたから……」

「あーー広大くん……!!」

琴子はやっと倒れる直前のことを思い出してきたようだった。

「圭子さんっ ! 入江くん、広大くんのママは? 圭子さんも血を吐いて倒れたって……」

真っ青になって飛び起きようとしたが、やはりすぐには起き上がれなくて顔が苦痛に歪む。

「落ち着けよ。梨本さんなら大丈夫だ。救急搬送されて、緊急オペをした。胃潰瘍による胃穿孔だったんだ」

「ほ、ほんと? 入江くんがオペしたの?」

「執刀は各務先生だけどな。助手で入った。オペ自体は簡単なものだけど、腹膜炎起こしてたから、術後の経過をしばらくしっかり管理しなきゃならないが」

「……そっか。でも、きっと大丈夫なんだよね。良かった……」

「予断は許さないがな……にしても、おまえは他人のことより自分のことをしっかり考えろ。ほんとに、森村さんや広大くんがいなかったらどうなってたことか……」

軽く睨むが、いつものような凄味はないのは多分安堵の方が大きかったのか。

「いったいなんで、熱射病なんかになって部屋で倒れてたんだよ」

「………広大くんがいなくなって圭子さんが駆け込んできて……そのあと、炎天下をずっと捜し回ってたの。見つかってほっとして、家に帰った後で、具合が悪くなって………倒れちゃった……のかな……?」

「…………おまえは……あれだけ家にいろって」

あまりに琴子らしい理由で、納得と言えば納得だ。
いつだって他人のために奔走している。
自分のことは少しも顧みずに……。
ほんとにこいつはーーー。
自分のいないところで何をしでかすのかーー

「う、うん。ごめんね。ダメだね、あたし。ナースの卵なのに自己管理が全然できてなくて」

「 反省はあとでゆっくりしろ。今はとにかく回復に努めろよ」

「うん………」

叱られると覚悟した琴子だが、意外と優しい直樹に、余計に申し訳ない気分になって少し涙目になる。
その目元を軽く親指で拭ってくれて、
「……本当に…………無事で良かった…… 」と大きく息を吐いて呟いたのを見て、琴子は本当に危険な状態だったのだと思い知る。

「……入江くん、ほんとうにごめんね……」

直樹を心配させてしまった申し訳なさから、再び謝りかけた唇が、唐突に塞がれた。

「…………!」

いつもより唇がカサカサだ……しかし、温かい。間違いなく生きているというこの感触になんともいえない熱い感覚が心の深奥に沸き起こる。

「反省はあとでって、いったろうが。今はとにかく休め」

「……はい……」

キスの余韻に少し顔を赤らめている琴子を見て、きつく説教するのはもう少し体調が整ってからでもいいーーと、自分に言い聞かせる。

「多分そのうち病棟に移ると思うから、その時また来る。そろそろICUに戻らなきゃな。梨本さんの方も、経過がよければまもなく意識が戻るころだろう」

「うん。わかった………」

「入院の準備をしないとな。せいぜい2、3泊ですむとは思うけど。どうする? おふくろ、呼ぶか?」

その言葉に琴子はぶるんぶるん首を振った。そして、頭痛にふらっとしたのか直樹に抱えられる。

「ダメ、お義母さんには連絡しないで。すぐに退院できるんでしょ? わさわざ心配かけることないよ」

「……わかった」

琴子ならそういうだろうとは思った。

きっと琴子はーーもし東京でこんな状況に陥ったのなら、絶対に自分には知らせるなと懇願するだろう。
そして、自分は何も知らないまま、のうのうと………

「入江くん……? やっぱり、伝えなきゃダメ? 」

直樹の顔が余程か苦しげに見えたのか琴子が不安そうに訊ねる。

「いや。いいよ。親父さんには伝えた方がいいとは思うが、おふくろに来られるのは面倒だしな」

大事には至らなかった以上、わざわざ東京から来てもらうのは直樹も本意ではない。
事情を知った紀子に煩く責め立てられるのは間違いないだろう。いや、それはいいのだが、できる限り残り少ない二人の生活を大切にしたかった。

「……あとで、こんなことやらかしちゃって……って笑い話で話すよ」

「……ああ」

やっとお互い表情が柔らかくなった。


「入るよー」

その時、カーテンの向こうから声が掛かる。

「ダメじゃん、入江先生。意識戻ったらすぐ呼んでくれないと。主治医はあたしなんだからー。あ、でも明日の朝は病棟に移るから担当変わるからね。それまでよろしく、琴子さん」

「姫子先生……」

「鬼瓦から脱却してくれたのねー」

からからと笑いながら、モニターのバイタルを確認しながら診察をする。

「もう平熱だから大丈夫だね。若いから回復早いね。でも明日少し色々と検査するから。心臓止まっちゃったから、脳のCTと心エコーもオーダーしておくね。
心停止の原因は高熱と脱水による血栓だと思われますけど、血液検査の結果を見てもDICには至っていないし、数値的にも問題ないので、重篤な合併症の恐れはかなり低いと思われます。どうする? 入江先生、念のため腎臓肝臓と肺も画像検査しときましょうか?」

「お願いします」

「はい、じゃあ、まとめて予約……と」

カルテに記入し、傍らのナースに渡しながら、
「しばらくは頭痛、めまい、倦怠感、筋肉痛なんかの後遺症は残るかもしれないけどね。心停止レベルの熱中症はかなり危険なんだけど、応急措置が良かったのと救命医が腕利きだったのとあなたが元々健康だったのと色々好条件重なったお陰で合併症に苦しまずにすみそうだ」
と、笑みを浮かべつつも、いつもとは違った真面目な医者の表情で説明する。

「じゃあ、ひどい頭痛とか吐き気とかあったらすぐにナースコールしてね」

「はい」

「ありがとうございました」

直樹も深々と頭を下げる。
姫子の迅速な処置のお陰なのは紛れもない事実である。

「じゃあ、あとは若い二人でごゆっくり」

にやっと笑って姫子は出ていった。

「面白い先生だよね」

「ああ。オペは下手だが総合診断能力と内科医としての腕は随一かもな」

「………色々刺激を受けて、勉強になるよね。神戸に来てよかったよね……」

「……………………」

琴子の言葉に直樹は返答を返せなかった。

そう、確かに勉強にはなる。
なるけれどーー。

「………悪い、琴子。ちょっとICUの方を見てくる」

「うん」

「おまえはもう少し寝てろよ」

「うん。圭子さんのこと、お願いね。あ、広大くんは………」

「今は院内の託児ルームで見てもらってるよ。とりあえず今晩は医局で預かる。明日にはMSW(医療ソーシャルワーカー)に任せるから、もしかして施設に一時的に預かってもらうことになるかもしれない」

「え………」

琴子が悲しそうな顔をしている。
元気な時なら真っ先に「あたしが、預かる!」と鼻息荒く息巻いていそうだが、さすがに今は言える立場ではない。

「……仕方ないよね」

「ああ。おまえはまず自分のことだ」

「うん」

「じゃあ、行くから」

「ん……」

寂しげに微笑んだ琴子の額にキスをした後で直樹はカーテンの向こうへ出ていった。










※※※※※※※※※※※※※※※※



熱中症の合併症については色々突っ込みどころはあるとは思うのですが、ご都合主義で参ります……f(^^;




そして、熱中症のことをあれこれ調べつつ、外は大寒波で、うち地方には珍しく5センチ程積もりました。

センター試験の方は大丈夫だったのかなー?


雪の被害がありませんように。



インフルも流行ってます。職場のみんなが次から次へとインフルでダウンしてるのに、何故か私は無事です。微妙に風邪っぽくて体調不良なのに熱は出なくて休めない……(^_^;)でも仕事は倍増……(._.)



皆様もお気をつけくださいませ。



























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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ほんとに、困った時の悦子さん頼みで、うちではえっちゃん大活躍です笑 なんたって最強の守護霊(^w^)
直樹はもうほんと、頭が上がりませんね~~

ハワイの時も、直樹の冷たい叱責に、あたしってなんてやな女なのと反省しちゃってる健気な琴子ちゃんですが、あのとき直樹はただの医学生で、現実の大変さはわかってないんでしょう(……ってか、学生が診るなよ……)。琴子の危機に瀕してようやく人間のどうにもならない感情に気がつく奴なのです。
まあ、色々反省したり悩んだりしてください(^w^)

ありがとうございます。ヒロインは決して死なないし、後遺症も残らないんですよ。ご都合主義でごり押しさせてもらいますっf(^^;校閲あったらいっぱいダメだしされそうだ……

さーて、広大くん……なんとかしないとですね(((^^;)

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ほんとに、あのハネムーン、まず詐病を見抜けないよーな学生が診るなといいたい。麻里に振り回されて、天才、もうちょっとうまくあしらえよ、といいたいですよね。琴子ちゃんはちゃんと反省してるのに、直樹さん謝ってないしね~~(あー、私も紀子ママ様同様にエンドレス~~)
神戸行きのことも納得いかないのでその為にかきはじめた話なのに何故かなかなか肝心なところまで到達してません……でも、きっともうすぐ………のハズ(((^^;)

直樹さんには後悔と反省と……琴子と会う前には持ち得なかった感情を抱いてもらいたいと思ってます(^w^)

Re.るなたま様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

心臓止まったわりには呑気な琴子ちゃんですが(((^^;)それがまあ琴子なんですよねー。
姫子先生、人気ありますねー。私もこういうキャラが大好きです(^w^)そして書きやすい……f(^^;

いえいえ、ここに書いてもいいですよー。ふふ、恋ダンス……ふるほのが踊ってくれたらいいですよねー♪♪

Re.絢様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

楽しみにしていただいているのに、あまり進展してなくて申し訳ないです。でもとりあえず琴子が無事だとわかってもらえてよかったでしょうか?
お気遣いもありがとうございました。絢さんもご自愛くださいね。

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

こちらこそ、今年もよろしくお願いしますね。
ほんとに、受験日はこれから雪の不安のない時にやって欲しいですね。やたらセンター試験の雪率高いという……

心臓止まったわりには能天気ですよねー笑……でもそれが琴子。そして入江くんが振り回されるのはお約束…まあ、さんざん泣かせてきた分、少しは反省しやがれと思っちゃってるので……(((^^;)琴子がいなきやダメなのは自分の方だと思い知って欲しいんですけどねー(^w^)

個別記事の管理2017-01-08 (Sun)

連載のお話でなくてごめんなさいm(__)m

しかも元旦に新年のご挨拶アップしてからだいぶ時間が経っちゃって~~


そうそう、emaさん宅でアップされたイリコト恋ダンスのイラスト♪ご覧になりましたか?

実際に入江くんが恋ダンスを踊るシチュが思い付かないので、emaさんの絵で仏頂面できれっきれのダンスしてる入江くんを妄想しますと呟いたら、早々に描いていただきました。

そのイラストを見たら、入江くんが踊る話、ちょっと思いついたので、短いですがアップします。

イリコトが現代にいる感じの時系列無視のパロディでございます(((^^;)


emaさんのイラストもいただいてしまいましたー(^w^)ありがとうございます♪








※※※※※※※※※※※※※※※







「ねぇねぇ入江くん、どーしてもダメぇ?」

琴子が手を合わせて、大きな瞳をうるうるさせて頼んでも、直樹は「誰がやるか、そんなこと」と鼻でせせら笑うように一蹴した。

そしてそれを遠巻きに見ていた外野たちも、琴子に期待していたわけではない。
だいたい嫁にベタ惚れのくせして、少なくとも院内では決して甘い顔は見せないのだ。

「ほんのちょっとでいいのよ。全部踊れとはいわないからっ 外科のスタッフみんな踊るんだよ? 病院のプロモーションビデオだよっ? とにかく入江くんの出演は教授からの絶対命令なのよーーっ」

「院長にも呼びつけられて頼まれたがちゃんと断った」

「い、入江くん……」

さすがに周囲がざわついた。

い、院長自ら!?

そこは『御意』、とひれ伏すところだろう?

無論、院長直々の依頼がある前に外科部長、教授らから、散々呼びつけられては依頼されたのだが全て冷ややかに断っている。
医療行為以外は致しません、ってことかね?等と嫌味をいう上司もいたが、「論文は書きますよ。研究は必要不可欠なので。あと学生の指導もね。大学病院は臨床及び研究教育機関ですから。ですが、それ以外のことは致しません!」と、けんもほろろにばっさりなのである。
そしてどんな権威者であろうが直樹に文句を言うことも言い負かすこともできないのだ。

「……院長からは、もし受けないと、琴子を関連病院へ飛ばすかもしれないよ、と脅迫めいたことを云われたが……」

「え、ええーーっ」

青ざめる琴子に、ドン引きする外野たち。

意外とえげつないこと言い出すのね、あの院長。

………ってか、それって逆効果よね……?

「琴子を異動させるなら、一緒に病院辞めて開業しますが、と云ったら、『ジョーダンだよっジョーダン!! だから辞めないでくれ~~っ』とひざまずいて懇願された」

直樹の評判は内外にもすこぶる良い。論文は軒並み有名医療誌に掲載され、何度も賞をとっている。ノーベル医学賞の前哨戦ともいわれるガードナー賞受賞も、来年辺り間違いないだろうとも云われているのだ。
おそらく30代最年少でノーベル賞医学賞に最も近いドクターと目されているのだ。
そのうえ研究者はオペ下手の定評を覆すくらい外科医としての実績も評価も高い。
手術件数も常にNo.1だし、成功率も最も高い。失敗しないゴッドハンドドクターとして、医療雑誌のランキングも常に上位をとっているのだ。そして、そのお陰で患者は殺到、ここ数年の経営状況は右肩上がりになっている。
斗南の顔といっていいくらいの直樹を簡単に手放せる筈がない。

その直樹のウィークポイントが、妻の琴子であることは最早周知の事実であるがーー『院長、使い方を間違えたな』とみんな呆れつつ思ったことだろう。
最近、系列の大学病院から異動してきた院長だが、今回のことできっとまた早いうちに異動となるかもしれない。入江直樹の不興を買って、権威や権力が大好きなピラミッドの頂点にいる医師たちがどれだけ静かに消えていったことか……。


ちなみに、今回の騒動の発端の病院HPのPRビデオは、各科持ち回りで作っている。
前回は耳鼻咽喉科の面々がPPAPなどといって派手な金ぴかな格好で踊っていた。直樹には何が面白いのさっぱり理解不能だったが、何故か大いに受けていて、アクセス数が増大したという。

そして、今回の外科チームは、病院の看板ともいえる直樹が所属する科でもあり、是非入江先生を出演させたまえ、と院長直々のご指命なのである。

そのうえ外科の忘年会で盛り上がった今流行の恋ダンスをやろうと言い出したのは琴子とその仲間たちである。

忘年会の余興のために琴子が練習していたのも見ているし、流行りの元となったドラマも、琴子と母、紀子がきゃーきゃー盛り上がって観ているのは知っていた。
勿論、直樹は何の関心もない。
いや、踊ってる琴子は可愛いな、と密かに思っていたが、そんな表情は微塵も見せない。

よもや、自分が踊るなどと………


「あたし、入江くんと一緒に並んで踊りたいのに」

琴子が上目遣いで懇願する。
ザ、必殺上目遣いだが、これが有効なのは基本寝室のみだ。

「おまえ、教授におれを落としたら、来年の誕生日、結婚記念日、クリスマスと二人揃って休みを取れるようにしてくれと密約かわしたんだってな」

「ええ? どうしてそれを」

「おれの情報網を甘く見るなよ」


さ、さすが入江直樹。

情報元は何処だ? 妻に盗聴器でもつけてんのか?

いや、しかし、琴子ってば、どーせなら一週間くらい二人揃って休んで海外行かせてくれとか、それくらい大胆に要求すればいいのに。なんてささやかな見返りなのー。ちょっと哀れだわ。

夫婦を見つめる外野たちがまたしてもざわつく。

「休み欲しさにおれを売るのか?」

「ち、違うわよー。あたしが入江くんと恋ダンス踊りたいの~~ 。それに、休みは入江くんと一緒だよー。せっかくのアニバーサリー一緒に過ごしたいじゃない。去年は全滅だったもん」

琴子が慌てて弁明する。

直樹の剣呑な表情は変わらない。

あーあ、やっぱり妻でもダメか~~

外野たちも諦めモードではある。

……ま、最初から期待はしてなかったけどね。

「どうしたら、踊ってくれるの?」

「どうしたって踊らない」

決して折れない夫に、琴子はもう一度小声で顔を真っ赤にして「…………してもダメ……?」と呟いた。

直樹の仏頂面が、一瞬緩む。

「なに……?」

「あのね」さらに小声で、直樹の耳元で、琴子はこそこそと囁く。

「…………とか…………シテアゲル……から……」

「本当か……?」

「…………う、うん。がんばる……」

「ふーん」

にやりと直樹の顔が意地悪く微笑む。

「どうせなら…………とか………も、追加してくれるなら考えてもいいよ」

「え。ええー。う、うん。恥ずかしいけど………………やってみるよ」

「じゃあ、PRビデオに出てもいいかな」

「ほ、ほんとっ!?」

「ああ。でもワンカットだけだぞ」

「うん、いいよーっ 入江くんが踊ってくれるだけでっすっごく嬉しいっ」

琴子は満面の笑みで直樹に飛び付く。直樹も満更でもない表情で妻を受け止めている。




ええええーーーっっ!!!


交渉成立………したらしい。

外野は蜂の巣をつついたような大騒ぎである。

何を……いったい何を交換条件にしたのぉーーっ琴子ってば!!!

院長の命令すら拒絶したのに……嫁の言葉の何処にそんな絶大な力があったのかーー


そのあと、琴子は看護師仲間の面々に捕まって根掘り葉掘り聞かれたが、顔を真っ赤にしたまま「そ、そんなこと云えるわけなきでしょっ」と言葉を濁しそそくさと消えていった。

結局一体何を条件に直樹がビデオ出演をーー恋ダンスを踊ることを受け入れたのか、周囲には永遠の謎なのであったーー。







ーーそして。

外科チーム渾身のPR動画は、アクセス数100万越えというかつてない数字を叩きだし、各地に拡散されていったというのはまた別の話なのであるがーー。






「いいわねぇ、このきれっきれっの腕の動き。とってもセクシー」

「モトちゃん、そんな邪な瞳で見ないでよ」

「いいじゃない、動画なんて減るもんじゃなし」

「でも、入江先生、やるとなったら何事も完璧よね」

「なんだかんだ一番完コピしてるし。この仏頂面とキレキレダンスのギャップが萌えよねー」

「ワンカットだけ、といいつつ、結局全部踊ってるし。悔しいくらいに琴子と息ぴったりだし」

「あたしが教えてあげるはずだったのに、何故か入江くんの方が鬼コーチになってたの」

「プロデュースも結局入江先生がやったんでしょ? めっちゃ完成度高いものになったもんねー。素人のビデオとは思えないくらい」

アクセス数が跳ねあがったのは、直樹の端整な容貌のせいだけでなく、外科チーム全員息の揃った恋ダンスの完成度と、動画の編集の構成力と、かなりプロはだしな出来上がりだったせいだ。
お陰で抜群の宣伝効果となった。

院長たちはほくほくである。


ただ。
謎は残っている。

いったい、何と引き換えなら、入江直樹は恋ダンスを踊るのかーー。



病院内は妄想だけが渦巻いていたが、誰も答えを知るものはないのだーー。

永遠にーーー。


「絶対に内緒だよっふふふっ///////」







※※※※※※※※※※





どうしたら入江くんが恋ダンスを踊ってくれるのかーーずっと考えてみたのだけれど、やはり謎なままなんです(^_^;)

いったいどんなエサがあれば食い付くのか笑

各自妄想してみてください(^w^)











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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ほほほっ、チャレンジャーでございましょう。
むじかくさんと話してて、やっぱり直樹さんに踊らせるのは無理、想像つかないっ!てことで落ち着いて、emaさんの描く入江くんなら妄想できるかも……と呟いたらすぐに、emaさんが描いてくださったので、やっぱりこれは踊らさなくては、と奮闘しました。
いやーそこ突っ込んじゃいますかぁ~(爆)院長も何がなんでも入江くんの、恋ダンス見たかったのかも……??それとも医師会の重鎮の面々で彼が踊るかどうか賭けてたのかも……
一番のなぞは今の入江くんの役職ですけどね……そんだけ活躍してりゃ教授くらいになってるだろう、と思いつつそこはスルー笑

あ、いかがわしいのは多分正解ですよ、きっと……(裸エプ〇ンくらいしか思い付かなかった……)

夜の恋ダンスも全力だっ(←?)

Re.りん様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ぜひぜひあれこれ妄想してみてください♪むじかくさん経由でりんさから教わったという拍手オマケのやり方で、その後を書こうかと思いつつ、結局謎のままでネタを思い付かないのです………(((^^;)
いつか試してみます、拍手オマケ……(^w^)

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そして、たくさんの妄想もありがとうございます(^w^)
もうありとあらゆる格好させた琴子ちゃん……まあうちも着ぐるみからリボンBDとかコスプレは色々させてましたわ、そういえば~~

そうそう、コスプレ琴子ちゃんは大好物でございましょう(^w^)

Re.ちょこましゅまろ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

不正投稿になってしまった〇〇ってなんだろーっで思っちゃいました(^w^)
いや、私の想像力でも裸〇プロンくらいしか思い付かず……もっと面白いネタがあったらオマケを書くかもですが、思い付かない気がします(^w^)
そう、PPAPより遥かにマシですよねっ(^_^)v
はい、やるからには全力で完璧なものを作り上げるに違いないのです‼

Re.kazigon様 * by ののの
明けましておめでとうございます(^_^)
コメントありがとうございます♪

Kazigon様も見たいですか~~?琴子ちゃんの交渉結果……やっぱ、夜系ですよねー。なんか、面白いオチはないかと考えつつ結局定番の(?)コスプレかなーなどど考えたりしますが……果たしてそれを書くことできるのでしょうか(鍵つきは必至かな?)……(((^^;)




個別記事の管理2017-01-01 (Sun)





新年早々当ブログを訪問してくださった読者の皆様(^_^)

本当にありがとうございます。旧年中は大変お世話になりました。

2017年が皆様にとって素敵な1年でありますように(^^)d


さしあたっての私の目標は……『夏休み』を終わらせることかなー(((^^;)今年こそっっ(^_^;)やっと書きたかったところまで到達しそうで、なんとか終わりが見えてきたぞ~~(でも、まさか、こんなにかかるとは……)

そして、何故かリクエストの多いキミゴゴも……

あまーい年越しのお話を書こうかと思いつつも、そんなの書くより『夏休み』の続きだ~~いや、何かお年玉プレゼントな話を‼などと一人迷走し、結局落書きのみで申し訳ありません。やっぱり年末は忙しないのです………f(^^;


こんな管理人ではございますが、今年もよろしくお願いします(((^^;)



ののの



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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪
(チャットの最中に一番乗り笑)
明けましておめでとうございます。今年も一緒に楽しく年越しできて良かったです。
マロン様に、とっても…新しいこと始めるにはきっと良い年になることでしょう(ボソッ)(^w^)

Re.ちびぞう様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

改めまして明けましておめでとうございます♪
ちびぞうさんとも今年はチャットで楽しく年越しできて良かったです。
ふふふ、新しい出会いの年ですね♪
今年もよろしくお願いします(^_^)

Re.あき様 * by ののの
明けましておめでとうございます(^_^)
毎日覗きに来てくださってありがとうございます。年明けてなかなか更新できずに申し訳ないですf(^^;
はい、無理ない範囲で頑張りますので、今年もよろしくお願いしますね。

コメントありがとうございました♪