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君のいる、午后の教室 9

2016.04.23(00:56) 222



更新頑張ります! ーーと宣言しておいて、結局だいぶ空いてしまいました。リコメもまたまた滞っておりますが、たくさんの暖かい言葉、本当にありがとうございました。今、被災している方も、かつて被災された方も、色々な方がここを訪れてくれて、そして少しでも楽しみにしてくれているということが、とても嬉しいし、書く励みになります。

と、いうわけで、お話書くくらいしか出来ないですが、久々の『キミゴゴ』です。
何故か復活リクエストが一番多いのです。

一年ぶりくらいですかね。思わず読み返しました(^_^;)前回、部室えろ(限定)で止まってたんですねぇ……本懐遂げさせて満足してしまったようでした……えへf(^^;

では、続きからどうぞ。






※※※※※※※※※※※※




5 実習3日目



「………というわけで、次回はこの時の賢治の心情を読み解いていきたいと思います」

なんとか締めたところで丁度よくチャイムが鳴って、琴子はほっとしてチョークを置いた。

終了の礼を終えた後、C組の教室はガヤガヤと騒音に包まれる。
教室の後方で授業を見ていた指導教諭の清水が琴子の傍に来て、「だいぶ様になってきたようね」 と、初めて誉め言葉をくれた。

「でも」

けれど、やはりそれだけでは終わらない。

「板書は書き順を絶対間違えないこと! 国語の授業の鉄則ですよ? 今は5ヶ所間違えてました。でも、字は読みやすくて綺麗ですよ。あと、朗読はもっと滑舌よく。何度かつっかえてましたね? それにーー」

ぎろりと琴子を睨んで。

「生徒たちに感想を書かせている間、あなた一人で変な世界に行ってたでしょう? 」

げ、バレてた!

「机間巡回もせずに、教壇に肘をついてぼうっとして窓の外を見て、顔を真っ赤にしたり、身悶えしたり、ため息ついたり……授業中に一人で妙な妄想しないでください」

「はい………」

しゅんとしながら琴子はとぼとぼと職員室に戻っていく。
途中で通過するA組の教室をちらっと見ると、一瞬にしてその姿を見定めてしまう。完璧な追尾機能………

休み時間中の彼は席も立たずに、隣の席の松本裕子と談笑していた。そこに渡辺も加わっている。
琴子の視線に気付いたようで、直樹はちらっと視線を合わせたが、特に微笑むでもアイコンタクトを取るでもなく、すぐに友人たちとの会話に戻っていった。

いいなーあたしも同級生になりたい……

望んでも叶うべくもないことをちょっとだけ思う。

ーー昨日のことが夢のようだ。

ダメっ! 思い出すとまた顔が赤くなっちゃう!

琴子は持っていたファイルではたはたと熱くなった顔を扇ぐ。


昨日、テニス部の部室で久しぶりに目一杯抱き合って、激しく求められて愛し合ったことーー

思い出しただけで身体の奥がきゅうっんと疼く。

「ひやーん」

あんなことやこんなこと………

お陰で今日は朝のHRから目を合わせるのが恥ずかしくて、つい視界に入らないよう不自然に顔を直樹から背けていた気がする。
つい、癒し顔の渡辺の方ばかり見ていたような……


「あら、何、顔を沸騰させてるのよ」

職員室の入口で桔梗幹と鉢合わせ、怪訝な顔をされた。

「な、な、な、なんでもないわっ」

かなり怪しいが、急いでいるらしい幹は眉を潜めただけでさっさと行ってくれた。

ダメダメ! 一旦昨日のことは頭から追い出すのよ、琴子!
今は実習中なのよ! そして、彼はあたしの生徒なのよ!

ばしっと頬を両手で叩き、次の授業の準備の為に職員室に入っていったのだった。




ーー夜、電話するから。

その言葉通りに、琴子の携帯に電話があったのは、昨日の夜の10時過ぎのことだった。

030の番号は家電のようで、ちゃんと登録して、さらについでに携帯壊しても失くしても大丈夫なように、しっかり手帳に番号をメモしておいた。

子機を使って部屋からかけていると云うことだった。

「……あたしの番号、ちゃんと覚えていたの?」

『1度覚えたことは忘れないから』

「ふーん、じゃあ何で今まで電話くれなかったの?」

つい口調が剣呑になる。

春休みから2ヶ月ちょっと、何故彼からは連絡してくれなかったのか。
教生となって再会してから、熱烈に求められても何処か戸惑いを感じてしまうのはそのせいだ。

『おまえが電話するって言ってたじゃん。だから、ずっと待ってたんだけど』

「それは携帯なくしちゃって……」

あたしからの電話がなくても番号覚えてたなら、そっちからかけてくれたらよかったのに。

『おれ、基本的に電話ってツール嫌いなんだよ。相手の都合とかお構いなしに唐突にその時間に割り込んで会話を要求するのって、かなり傍若無人じゃないか?』

うーん、それはそうかもしれないけれど、一応百年以上、誰もがフツーに使ってきた文明の利器だよ……今さらそんないちゃもんつけられてもなぁーーそれに、緊急の用事の時にはないと困ると思うよ……

『無論、仕事や緊急事態には必要だってのは分かる。だが掛かってきた電話がどうでもいい内容で、長々とくっちゃべられた日にはおれの時間を返せと怒鳴りたくなる』

「ご、ごめんね。キライな電話させちゃって。もう、切るね」

『あほ。かけたのはこっちだろ。ちゃんと用事があってかけたんだ』

「は、はい。で、用事とは」

『この番号、ちゃんと登録しておけ。以上』

えーと、それだけ?

『あと、明日の昼は屋上で待ってるから一緒に飯を食うぞ』

えっえっえー!

『じゃあな』

そして、一方的に切られてしまったのだが。

でも嬉しい。
電話を初めてくれたことと屋上デートの約束………
随分(生徒なのに)高飛車に命じられた気がするが、それはまあ置いておこう。

いや、でもまずいかなー。
一緒にお弁当食べないと幹ちゃんたちに不審がられるかなー。

少し悩むが、まあいいや、と気にするのをやめた。適当に誤魔化せばいいだろう。

というわけで、今日の弁当は少しゴージャスに重箱入りだ。いつもは父のお手製のお弁当だが断って、朝早く起きて頑張った。いつも父親が作ったものとは見映えにあからさまな違いを感じるが、きっと味は大差ないに違いない、と変な自信を持っている。


そして、待望のランチタイムである。

仲間たちには『今日は教室で生徒たちと食べるから』と嘘をつき、琴子は急いで屋上に向かった。


「遅い」

屋上の扉を開けると、給水タンクの日陰になる位置の段差に、長い脚をぶらぶらさせて直樹が腰かけていた。

「ごめんね。授業少し長引いて……」

「言い訳はいい。さっさと飯食うぞ」

「う、うん」

よっぽどお腹空いてたのね、と素直に思う琴子であるが、まさか直樹がここでデザート(=琴子)をいただこうと思っているなどと考えもしないのである。

「なんだ。おれの分も作ってきたの?」

「うん。あ、入江くん、自分の分あったのね。わー美味しそう!」

「お袋に断る理由がないからな。あの人、料理はかなり得意なんだ……て、なんだよ、おまえのこの弁当!」

「えーと、特製和食会席弁当です……」

「すげぇ茶色い世界。……卵焼きまでブラウンだ。そのうえ食べる前から卵焼きに殻が入ってるのバッチリ見えるんだけど」

そう言いつつも躊躇いなく箸を伸ばす。

がじっがりっごりっ

不味い、苦い、なんだこりゃ?
ーーと、ブツブツ云いながらも琴子の作ったほうばかり食べている。

「やーん、入江くんのお母さんのお弁当美味しすぎる~~」

琴子はせっせと直樹の弁当をつつく。彩りも鮮やかで、一品一品凝っている。当然冷凍食品など、1つもない。

「なんか、いいねぇ。青い空の下、ピクニックみたい」

梅雨前の爽やかな青空。飛行機雲だけがくっきりと空を分ける。夏至も近いせいか太陽の位置は随分と高く、屋上のコンクリートに反射して流石に少し汗ばむ暑さだが、時折そよぐ風が心地よい。
屋上からは東京のビル群がくっきりと眺められ、中々の眺望であった。

「4階建ての屋上でも結構景色きれいなんだねぇ」

「今日は天気いいからな。でも屋根とビルしかみえないだろ」

「屋上ってちゃんと開放されてるんだね。自殺防止で普通立ち入り禁止って聞いてたのに」

「ああ、鍵は掛かってて基本立ち入り禁止だぜ、ここ。生徒会長の権限で勝手に持ち出しただけ」

「ええーーっ いいのぉ?」

「バレやしないよ」

いけないことと分かっても、やっぱりお天気のいい日の外でのランチは気持ちがいい。
他愛ないお喋りとちょっとしたデート気分。

ああ、これで教生と生徒という立場でなかったら……
この幸せを心から満喫出来るのに。
とはいいつつ、この禁断ちっくな背徳感はちょっとドラマティックな気分にさせてくれるのだが。


「ごちそうさま」

なんだかんだ(文句言いつつ)琴子の弁当を完食してくれて、にんまりしている琴子に、「じゃあデザートな」と二の腕をくいっと掴んで引き寄せる。

「え? あ、デザートね、リンゴ剥いてきたよ」

バッグから別のタッパを出そうとした琴子の手を制して自分の膝の上に引っ張りあげた。

「違う、こっち」

と、直樹がポケットから出したのは小さな包みーー

「ん? 薬? ………じゃない!」

それが何だか察知した瞬間に、琴子は思わず「ひぇぇーー」とのけぞる。

「ちょっと、ここで!? ダメっ! 有り得ない!」

「 なんで? 腹ごなしの軽い運動をするだけじゃん」

軽い? 軽い?
ーーそれは、絶対ウソだ~~~ !

「それに、ちょっとしたお仕置き」

「え? なに?」

「今朝、HRの時、ずっと渡辺の顔ばっか見てただろ? 何? 実はあいつの方が好みなのかよ」

瞳の色が不穏である。

「そ、そ、そんなわけないでしょっ だって、入江くんの顔見ると思い出しちゃって……」

「思い出すって?」

「え……き、昨日の……///////」

「ああ。昨日、部室でエッチしたこと?」

いやーん、露骨にいわないでぇぇぇ

楽しそうににやっと笑う直樹から真っ赤な顔を背けるが、簡単に顎を捉えられ正面から見つめられる。

綺麗すぎる容貌(かお)。アップに耐えられる容姿ってほんと羨ましい。

「もう、昨日お互いタガが外れちゃったんだから、この際、禁忌(タブー)や羞恥は取っ払って本能のままでいいんじゃない?」

そしてさらに近付いてくる直樹の玲瓏な顔。

いや、ダメです。絶対にダメですってばー

お昼ご飯のあとは、まったりとお喋り、もしくは膝枕でお昼寝くらいにしてくださーいっ

そう叫びたくても、その唇はあっさりと直樹によって塞がれる。

「んぐっ………」

そして、彼の手はさっさと琴子のジャケットを脱がし始めていた。

薄いピンクの開襟ブラウスの上三つの釦を超高速な早業で外している。

ちょっと待て。
ヤバイ、マズイ!
こんなお天道様が天高く見下ろしているところで、そんな~~~

琴子の焦りなどお構いなしに直樹の手はブラウスの中に侵入し、ブラの中にも遠慮も躊躇いもなく堂々と侵略していた。

「あ……ダメ……」

胸の先端をつつかれて思わず出た甘い声に、直樹がにやりとほくそえむ。

「全然ダメじゃないじゃん……」

今度は大きな手にすっぽり包まれて強く揉みしだかれた。

「昼休みって時間があんまりないから、短縮バージョンで行くけど許せよ」

いや、だから、そんな時間ないときに無理してしなくても~~

頭の中は抵抗しているのに、身体は全く云うことをきかない。

またあっさり流されてしまうのかしら。ああ、先生失格ね、あたし………


半分琴子が諦めの境地に至った時ーー

屋上の扉がガチャっと開いた。

ひぇぇぇぇ~~~~~~

琴子の心臓は半分ひっくり返りそうになった。

アラレもない格好で直樹の膝の上で抱きすくめられているのだーー。
だが幸いなことにここは給水塔の陰で、扉からは死角になっている。

「あれ? 珍しい。屋上の鍵が開いてるなんて」

「おまえ、前来たとき、閉め忘れたんじゃねえの?」

「おかしいなー。ちゃんと締めたと思ったけど」

「開けっぱで事件でも起きた日にゃ、折角こっそり合鍵作ったのに、付け替えられちまう。気を付けろよ」

「へーい。もう事件は起きてるけどね」

「煙草吸うくらいで事件かよ」

「A組の生徒が煙草をこっそり吸ってるのは大事件だろ? この学校にとっちゃ」

「だなー」

男子生徒二人が屋上の柵に寄りかかって、煙草を吸いだしたようである。
ふわりと紫煙が流れてくる。
どうやらA組。
しかも常連さん。

A組、というのを聴いて、驚いて覗きこもうとした琴子だか、直樹に引っ張られてよく確認出来なかった。

「あれは3年だな」

耳元でぼそっと囁かれる。

それすらにもびくっと反応する琴子。
その感度の良さに、思わず口元が緩みそうになるが、流石にこの状況で続けると間違いなく琴子は声を出してしまうので、諦めざるを得ない。

ーーまた、寸止めかよ。

折角、昨日やっと本懐を遂げたのに、また何の呪いか、琴子を抱こうとすると邪魔がはいるというのがどうもお約束のようである。

ーーとっとと出ていけ!

と心のなかで罵倒するも、3年の喫煙少年たちは、のんびりと煙草を燻らせながら、今年の教生のランク付けなどしている。

「やっぱ、一番美人は桔梗先生だよなー」

「あれで男なんて、詐欺だぜ」

「でも、品川先生も中々……スタイルは一番いいよな。胸もでかいし」

「小倉先生も可愛いし。おれ、もろタイプ」

あたしは?
あたしは?

琴子の耳がダンボになっている。

「相原先生は………」

二人の声が重なる。

「「ないな!」」

「はあ~~……?」

思わず声をあげそうになって直樹に口を塞がれた。

「可愛いけど、ファニーフェイスだよな。めっちゃ童顔だし。おれ、ロリじゃねぇし」

「胸がちっちゃいのがおれ、もう却下」

「ちっちゃいというより、ないもんな。標高0」

けらけら笑いだしてる彼らに思わず弁当箱をぶつけてやりたくなったが、一応我慢した。
直樹も肩を震わせて笑いを噛み殺していた。


「うん、もう! 入江くんまで笑わないでよっ」

一服終えた二人が去った後、釦をはめ直して身繕いを整えた琴子は、むっとした顔で直樹の鼻を摘まむ。

「いや、あいつら全然分かってないなーと思ってね」

「へ?」

「胸は大きさじゃないってこと」

言いながら、ブラウスの上から琴子の胸をがしっと掴み、揉みしだく。

「ひゃああん」

途端に腰砕けのようになる琴子。

「も、もう……入江くんのばかぁ~~」

「授業、サボって、続きしちゃう?」

「ダメ~~絶対、それはダメ~」

半泣きで訴える琴子に、「冗談だよ」とくすっと笑う直樹。
もうあと五分ほどで予鈴が鳴る。
ストレスが溜まっているらしい3年男子は長々とこの屋上で、下らない女の品定めを喋り倒していた。

「……ったく、邪魔してくれたな。あいつら、いつかチクってやろう」

「………もう、A組のクセになんでそんなエッチなの?」

「A組とか別に関係ないだろ?」

「そっか。男の子はみんなケダモノなのね。さっきの子達だって、顔やスタイルのことばっかしで」

「おれがケダモノになるのはおまえ限定だけどね」

「ふーんだ、調子いいことばっか云ったって信じませんから。どうせ、今までだって部室やこの屋上で女の子とイチャイチャしてたんでしょ?」

云ってから、琴子は少し切なくなった。

あまりにも連れ込んだり引っ張り込むことに慣れてる直樹に、当然今までもそういう行為を行っていたのだろうと想像できる。
こんなに端麗な容姿をしているのだ、選り取りみどりでとっかえひっかえ遊んでいたって不思議ではない気がした。

やっぱりあたしも遊ばれてる?

「何? おれ、そんな女たらしに思われてた? 心外だな……」

悲しそうに眉の下がった琴子の頬を包みながら、直樹は少し真面目な顔をしてじっとその瞳を追った。

「いっとくけど……おれ、琴子が初めてだから」

「ええーーっ」

あからさまに驚いて大声を出した琴子の口を慌てて塞ぐ。

「女と付き合ったことすらないからな。どっちかっていうと今まで恋愛沙汰に興味なんてなかったし」

「え? うそっ」

「興味が涌いたのはお前だけ。おまえ以外に抱きたいなんて思ったことなかった」

「そ、そんなに魅惑的? あたしのカラダ……」

思わず自分の小さな胸をブラウスの襟元から覗きこんでしまう。

「は?」

「流石に標高0ってことはないんだけどな~~。一応今時の小学生の方が発達してることはちゃんと分かってるのよ?」

「 分かってるならいいけどね。少なくともその発展途上のカラダに溺れてる訳じゃないからな」

「じゃ、じゃあ何に……?」

「カラダという器だけでなく、中身も丸ごと全部。相原琴子という存在そのものに溺れてる……のかな?」

「………………///////$#&@%&&!!!!!」

あっまーーいっ!

………と叫びたくなるような極上な告白に、琴子の胸はきゅんきゅんに高鳴る。

「だから、放課後、時間を空けとけよ」

「え………今日も明日の指導案の準備とかしないと」

「じゃあ一緒に手伝ってやるよ、図書室で」

「え? ほんと?」

生徒に指導案の手伝いをさせるのはどうかと思いつつも、春休みのバイト期間中、卒論のテーマのアドバイスまでしてもらっていたのでつい頼ってしまう。

「ああ。図書室でヤりたかったんだろ?」

「へ? やる……?」

にやりと笑う直樹。
きょとんとする琴子。

「ドラマみたいに」

「ええーーっ ヤるってそーゆー意味?」

確かに図書室でなんだかんだしてた教師と生徒の純愛ドラマの話はしたが、別に真似っこしたいわけじゃないのだ、絶対に!

「じゃあ後でな。急がないと本鈴がなるぞ」

「きゃー、待って。置いてかないで~~」


ばたばたと直樹を追いかけて、彼が扉を施錠している隙に、足早に階段を掛け降りていく琴子。
結局置いていかれたのは直樹の方である。


ーー週末には携帯契約するかな……


必要性を感じなかったから持たなかった。
だが、なるほど、執着するものが出来た時に、他人の時間を占有したくなるアイテムがこんなにも欲しくなるのかと、実感している。

春休みに琴子と出会い、今まで出会ったことのない異次元のような強烈で刺激的なキャラに興味を持ったのは事実で、成り行きで関係を持ってしまったけれど、それがどういう感情なのかよくわからないままだった。

よくわからないまま春休みが終わり離れ離れになって、とりあえずもて余した感情はそのまま放置しておいた。
連絡は向こうから来るだろう。
敢えてこちらからはするまい。
これが愛なのか恋なのか単なる男の本能というヤツなのかーー時間が経てばはっきりするかもしれない。
そう思って放っていたら来ると思っていた電話は来ない。
いや、そんな筈ねーだろ、とイライラしていたのは事実。
何だかんだずっと琴子のことが頭から離れない。四六時中他人のことを考えてるのは初めてだった。
結局翻弄されているのは自分の方なのだと認めたくなくて半分意地で、覚えていた番号をかけることはなかった。
それでも偶然を装って大学を覗きに行ったり、父親の店を訪ねたり。

ーーなんだ、この青臭いガキみたいな行動は!

つまりはガキなのだ。こと恋愛に関しては、まるで小学生のような感情の未発達さ。
自分で自分の行動に、背中がむず痒くなるような気恥ずかしさを感じて、余計にこれ以上動くことを躊躇った。
どうせ、6月になったら会うのだから。

そして、再会してーー確信した。

欲しいものなんて、何もなかった筈なのに。
欲しなくても全てのものは簡単に手に入ったから、喉から手が出るほど欲しいとか、そんな餓(かつ)えたような要求も執着を抱いたこともなかったのだ。

なのに、再会した途端に確信した。

この女はおれのものだと。
頭のてっぺんから爪先まで自分のものだと。
彼女が所有している今も未来も、その時間の全てが自分のものだと。
激しい独占と執着が、はっきり形となっていた。

この女の全部が欲しい。
誰にもやらない。
こいつは、おれのだから。

年上とか教生とか関係ない。
そんなのは一時の関係性に過ぎない。

そして、とりあえずは携帯なのだ。
どうやらこれはこの関係性を維持していくためには重要なアイテムらしいと、認めないわけにはいかなくなった。

何にしろ、未成年だから親の承諾なしに勝手に携帯ひとつ契約できないのがもどかしい。


早く大人になりたい、と切実に思う。
そんな風に何かを願うのも初めてだ。
流されるまま、何の感情の起伏もないまま16年以上過ごしてきた。

そんな彼の世界を彼女が変えた。


「………待ってろよ、琴子」

それは図書室で待ってろ、という意味なのか、大人になるまで待ってろ、という意味なのか。

自分でもちゃんと意識をしないまま、小さく呟く。


ーーまもなく午後の授業が始まる。







※※※※※※※※※※※※


なんだかストーカーちっくだな、この高校生直樹さん……偏執的だわ……と、書いてから思ったんですが、大丈夫ですか? 引いてません? なんか、青すぎて一直線ーf(^^;

ちょっと久々過ぎてコンセプト忘れそうでしたが、元々は『各教室制覇でえろ!』でした(^w^)
各教室で寸止め、という説もありますがf(^^;
とりあえず屋上は寸止め。
さて、図書室は………?

次が限定になるのかそうでないのかは神のみぞ知る……(^_^;)












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Snow Blossom


2016年04月23日
  1. 君のいる、午后の教室 9(04/23)