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2016.04.29 / Top↑



前回、久しぶりの『キミゴゴ』にたくさんのコメントありがとうございます。待っていて下さった方がたくさんいらして嬉しかったです~~(^_^)更新停滞していてスミマセンでしたf(^^;
とはいえ、さくさく続けられるか自信はないですが、頑張りますね(^w^)



そして、長くなりましたので、2話に分けますね(^_^;)







※※※※※※※※※※※




ーー絶対に流されない!
…………と、固く決意して図書室(ここ)にやって来たのだった。


そう、あたしは先生よ。
先生なのよ。

いっくら甘い言葉を囁かれたって、学校で生徒とどうのこうのはやっぱり有り得ない!
そんなアンモラルな!
ぜぇーーったいNGだってば!


何がなんでもちゃんと説得して彼に納得してもらわないと。
きちんとした道徳心や一般常識というものを教えるのも教師の務め、あたしに与えられた使命なのだわ!

ーーそう、握りこぶしをつくって天に向かって誓ったのだ。

ーーいい? 入江くん? 学校ではこんなことしてはダメなのよ。
一時の情欲に飲まれては駄目よ。
それを律する精神力と理性を身に付けましょう。
それが大人というものなのよ。
まだ16歳のあなたには難しいかも知れないけれど、感情と本能の赴くままに行動するのはケダモノと同じよ?
学校では一生徒と一教生という立場を越えてはいけないの。
わかるわよね? ね? 入江くんは天才なんだもの!


「何をぐだぐだと。琴子のくせして小難しいこと云おうたって説得力ねぇんだよ」


ぐだぐだと(一応小声で)云ってる琴子の横で琴子の指導案を猛然と書いているのは直樹だった。
差し出された教師用の赤字入り教科書と大学の教職指導用テキストを参考に、淀みない筆運びでさくさくと指導案を埋めているのだ。


ここは図書室の読書用閲覧室。
斗南高校の図書室は地方の図書館並みの蔵書を誇り、閲覧室も自習用、読書用、グループミーティング用と三室ある。

自習用は明るい窓際で、席は半分ほど埋まっていたが、読書用は開架図書の棚の奥まったところにあり、殆ど生徒はいなかった。

隣同士はガラスのパーテーションで仕切られているが、1つの机に無理矢理椅子を2つ入れて、ほぼ直樹が机に向かっていて、琴子は後ろから覗きこんでいる様相だ。



……そりゃ、先生と生徒になる前にあたしたちはこういう関係になってしまって、思いも寄らない事態なわけだけど、2週間だけなんとか隠しとおせば、問題はないと思うのよ。そ、そりゃ、未成年と、っていうのはやっぱり問題なのかもしれないけれど、先生と生徒というよりは百万倍ましなわけで………
とにかくね?
バレたらおしまいなの。
あなたもあたしも……


「だから、バレなきゃいいだろ? はい、できた。明日のA組の現国用の指導案」

「ええっはやっ うわー凄い! 入江くんって指導案書いたことあるの?」

完璧な指導案に思わず感嘆の声を上げる琴子である。

「……… んな、わけねぇだろ。教師用のテキストなんて初めてみたぞ」

「A組は進むの早すぎるのよね~~他のクラスはまだ賢治くんの詩をやってるのに、A組だけ次の単元に入っちゃうんだもん」

「悪いがA組は冬休み前には教科書全部終わるぞ」

「ひえ~~」

驚きつつも、とりあえずはこのA組の指導案だ。来週にはこの単元で研究授業をせねばならない……A組相手に………

「『舞姫』ってキライ」

次の単元は鴎外の『舞姫』だった。

「 アンハッピー過ぎる………っていうか、漱石の『こころ』にしろ、なんで教科書に載ってる小説って暗い救いようのない展開な話ばっかなの~~? もっと胸ときめくきゅんきゅんなハッピーな話載せれば、みんな読書好きになるのにねぇ」

現役文学部生によって文豪の名作はばっさりと切り捨てられた。
名作だからといって、恋敵の親友自殺に追いやったり、身籠った彼女捨てて精神破壊させたりとか、鬱々とした内容に全く共感できない琴子である。


「豊太郎、優柔不断過ぎる。愛してるなら地位も名誉もかなぐり捨てて、エリスを守らないと。エリスがあまりに可哀想! 最低! 最悪!」

「……一応、話は知ってるんだ」

文語調で読みづらいが、ちゃんと読んだのか、と感心する。

「うん、〇ィキや〇フー知恵袋であらすじ検索した。今って便利よね~~」

………おい。

「あらすじ読んだら腹立って原作読む気なくなっちゃって」

秀才でエリートの主人公がドイツに留学して、そこで知り合った踊り子の美少女と恋に落ち、同棲して孕ませるが、日本での出世の為に結局捨てて日本に帰ろうとして、それを彼の親友から聞かされた彼女は精神を病んでしまうという話だ。ちなみにそんな彼女を置いて帰国した彼は、勝手に彼女に話をした友人を恨んでる。恨んでるからには彼女を愛していたんだろう。その割りには彼女も子供も置いて日本に帰るのだ。
どうにも琴子はすっきりしない。後味悪すぎる。

「エリスは可哀想だけどあまり共感できないかも。………あたしだったら、赤ちゃんがお腹にいて、心なんて病んでいられないよ。だって、まずちゃんと赤ちゃん産んで育てなきゃ! それが何よりも一番大切じゃないのかな? 赤ちゃんがいれば前向きに育てることだけ考えて生きていけそう」

琴子ならそうだろうな、と直樹も思う。
そして、琴子は、それが恋人の為ならばあっさりと身を引いて、一人で子供を育てる道を凛として選ぶだろう。
長い時間をともに過ごした訳ではないが、まず相手の状況を一番に考えるところが、彼女に惹かれた理由かもしれない。
とにかく自己犠牲を全くいとわないから、放っておけない気がする。


「……これは鴎外の自伝的小説なんだ。実際はエリスのモデルとなった恋人は鴎外を追っ掛けて日本にやってきた」

「まあ、情熱的!」

「でも親類縁者に説得されて恋人はドイツに追い返された」

「酷い……いったい、鴎外は何やってるんのよ! つまり、現実も悲恋で終わったってこと?」

「ま、その当時の国際結婚はなかなか難しいだろうな」

「あ~~やっぱり腹立つわ~~あたし、こんな話に冷静に授業できるかしら?」

ぷんぷん憤っている琴子に、直樹は肩をすくめた。

「教科書は抜粋だけだろ。ちゃんと原作読めよ。あっちにある筈だぜ」

生徒にたしなめられている教師というのもどうかと思うが。

だがまあそれが琴子なのだと、直樹は気にもせず、琴子の手をとって、開架図書の書棚の奥に連れていく。





そして。

「だ、ダメってば…………」

書棚に押し付けられて身動きの取れない状況に陥っている琴子であったーー。


たがらーー流されないって!
絶対に流されないって、固く決意したのに~~~


『舞姫』を探しに森鴎外の全集本の棚に行くのかと思いきや、ずっとずっと奥の方である。
図書分類法で0~1の辺り。総記や哲学、宗教といった分厚く難解な言葉のタイトルの本が棚を席巻していた。
人の気配の欠片もない静謐な空間だ。
古びた背表紙で埋め尽くされた書棚に突然ドンと押し付けられた。

…………棚ドン?

考えてみれば文学は一番入口寄りで人が常に行き来している書棚だ。最初からスルーするつもりだったに違いない。


「ん……ん、だめ……」

押し付けられたまま深く口付けられる。
小声で喘ぐように呟いて、なんとか直樹を押し退けようともがくが、どうにも動けない。

この辺りには誰もいないが、自習机には何人か生徒がいた。
司書教諭も確かカウンターに居た筈だ。
それなのに、それなのに、まさかこのようなコトに及ぶとは!

じょ、じょーだんでしょ?
からかってるだけだよね?
流石に此処じゃーー

焦ってる琴子を尻目に直樹はキスを首筋に落としながら平然と胸やら尻やら触ってくる。
スカートの裾から手が侵入してきて、思わず声を出しそうになり、飲み込む。
涙目で睨み付けるが、どこか楽しげに薄く微笑む様はいたずらっ子のようだ。

「……指導案の礼はきっちりもらうからな」

耳元に小声で囁くついでに耳朶を軽く甘噛みされて、「ひゃ……あん」と妙な声が漏れてしまう。

「声、出すなよ」

だったら、声の出そうなこと、するな~~! と大声で叫びたいのをぐっと堪えて唇を噛み締める。

その唇を舌でなぞるように触れてきて、思わず開いた唇の隙間からあっさりと侵入を許してしまう。
声を出させない為か、長い長いキスをした。

絡まり合った舌が痺れるくらいに追い求める。深く繋がった唇の隙間から漏れる湿った水音が、琴子の頭にダイレクトに響いて、この静かな図書室内にも響きわたっているのではと、舌を逃れさそうとしても、すぐに直樹の舌に掴まる。掴まって、捉えられて、溶け合って、離れられない。

熱いキスにくらくらして何が何だかわからなくて、段々どうでもよくなってくる。

ーーそして、あっさり流されてしまうーー。

いつの間にか琴子の方から直樹の首に腕を巻き付かせて、積極的にキスを受け入れていた。
もっと深く触れあいたくて、身体を密着させる。


ーーかつかつかつ。

足音が近付いてきて、思わず互いの身体がぴくりと跳ねたのが分かった。

唇は少し離れたが、何故か直樹は琴子を離さない。書棚に押し付けたままだ。

足音は二人のいる書棚の真裏で止まった。
幾つかの本を物色しているようだった。
右へ左へウロウロし、一冊手にとってはぱらぱら捲って、そして棚に返している。

そして、琴子の背中の真後ろの本を一冊取った。

琴子は心臓がばくばく音をたてて、その音が聴こえないかと不安になる。

ーーもう! どうして離れてくれないの?

多分、このしっかりと抱き合っているような状態を見られても適当に言い訳をでっち上げることなど簡単だと思っているのだろう。
琴子が爆発しそうな心音を響かせているのとはうらはらに、直樹は全くしれっとしているのが少し小憎らしい。

そのうち、その本を持ったまま足音は去っていった。

「はぁぁ~~~」

大きく嘆息した琴子に、「ため息がデカイ」と唇をムギュッと摘ままれる。

そして「やっぱり此処じゃ、やりにくいな」とちらりと横の方を見た。

そうよ、そうなのよ。
すぐ向こうには人がいるところで、こんなことをやろうってのがそもそもの間違いなのよ。
………何、スリルとサスペンスを求めてるのよ~~~

と、瞳で訴えていたら、「あっちに行こう」と、再び琴子の手を引っ張っていく。

「ここは?」

書棚と書棚の間の1枚の扉の前に立った。書棚は事典や学術書などの禁帯出本だ。赤いシールが同じ位置に貼られていた。

「閉架図書室」

そして、何故か鍵をひとつ取り出して、ドアノブの下の鍵穴に差し込む。

「な、なんで鍵……」

「カウンターの処に置いてあったからちょっと拝借してきた」

「……勝手に?」

目を丸くする琴子を無視して、さっさと扉を開け、中に押し込む。
いや、つまり最初から此処に引っ張り込むつもりだったということだ。

ぱたんと音がして、内側から鍵を閉めた。


ここの閉架図書室はいわゆる資料室みたいなものらしい。
貸し出し禁止の古い本や、修理の必要な本などが雑然と棚に積まれていた。
室内は書棚が林立する森のようだった。

その中央に大きな作業机があり、修復途中の本が幾つか積まれていた。
もう読まれることのないだろう古いボロボロの雑誌も片隅に置かれてある。
古い本の独特な湿った紙とインクの匂いが充満していた。
そして締め切っていた部屋なので少し暑苦しい。

勝手に換気のスイッチとエアコンのスイッチをいれる。
こんな部屋まで空調完備なのが流石私立だな、と状況を忘れて感心する琴子である。

しかしそんな琴子の腕を引っ張ってーー再び書棚に押し付けられた。

「…………入江くぅん………」

眉根を下げて懇願するような瞳をうるうるさせている琴子を無視して再び口付ける。


ーーいただきます。

直樹の心の声が聴こえた気がしたーー。






※※※※※※※

すぐに後半アップします。
限定です………f(^^;



2016.04.29 / Top↑


更新頑張ります! ーーと宣言しておいて、結局だいぶ空いてしまいました。リコメもまたまた滞っておりますが、たくさんの暖かい言葉、本当にありがとうございました。今、被災している方も、かつて被災された方も、色々な方がここを訪れてくれて、そして少しでも楽しみにしてくれているということが、とても嬉しいし、書く励みになります。

と、いうわけで、お話書くくらいしか出来ないですが、久々の『キミゴゴ』です。
何故か復活リクエストが一番多いのです。

一年ぶりくらいですかね。思わず読み返しました(^_^;)前回、部室えろ(限定)で止まってたんですねぇ……本懐遂げさせて満足してしまったようでした……えへf(^^;

では、続きからどうぞ。






※※※※※※※※※※※※




5 実習3日目



「………というわけで、次回はこの時の賢治の心情を読み解いていきたいと思います」

なんとか締めたところで丁度よくチャイムが鳴って、琴子はほっとしてチョークを置いた。

終了の礼を終えた後、C組の教室はガヤガヤと騒音に包まれる。
教室の後方で授業を見ていた指導教諭の清水が琴子の傍に来て、「だいぶ様になってきたようね」 と、初めて誉め言葉をくれた。

「でも」

けれど、やはりそれだけでは終わらない。

「板書は書き順を絶対間違えないこと! 国語の授業の鉄則ですよ? 今は5ヶ所間違えてました。でも、字は読みやすくて綺麗ですよ。あと、朗読はもっと滑舌よく。何度かつっかえてましたね? それにーー」

ぎろりと琴子を睨んで。

「生徒たちに感想を書かせている間、あなた一人で変な世界に行ってたでしょう? 」

げ、バレてた!

「机間巡回もせずに、教壇に肘をついてぼうっとして窓の外を見て、顔を真っ赤にしたり、身悶えしたり、ため息ついたり……授業中に一人で妙な妄想しないでください」

「はい………」

しゅんとしながら琴子はとぼとぼと職員室に戻っていく。
途中で通過するA組の教室をちらっと見ると、一瞬にしてその姿を見定めてしまう。完璧な追尾機能………

休み時間中の彼は席も立たずに、隣の席の松本裕子と談笑していた。そこに渡辺も加わっている。
琴子の視線に気付いたようで、直樹はちらっと視線を合わせたが、特に微笑むでもアイコンタクトを取るでもなく、すぐに友人たちとの会話に戻っていった。

いいなーあたしも同級生になりたい……

望んでも叶うべくもないことをちょっとだけ思う。

ーー昨日のことが夢のようだ。

ダメっ! 思い出すとまた顔が赤くなっちゃう!

琴子は持っていたファイルではたはたと熱くなった顔を扇ぐ。


昨日、テニス部の部室で久しぶりに目一杯抱き合って、激しく求められて愛し合ったことーー

思い出しただけで身体の奥がきゅうっんと疼く。

「ひやーん」

あんなことやこんなこと………

お陰で今日は朝のHRから目を合わせるのが恥ずかしくて、つい視界に入らないよう不自然に顔を直樹から背けていた気がする。
つい、癒し顔の渡辺の方ばかり見ていたような……


「あら、何、顔を沸騰させてるのよ」

職員室の入口で桔梗幹と鉢合わせ、怪訝な顔をされた。

「な、な、な、なんでもないわっ」

かなり怪しいが、急いでいるらしい幹は眉を潜めただけでさっさと行ってくれた。

ダメダメ! 一旦昨日のことは頭から追い出すのよ、琴子!
今は実習中なのよ! そして、彼はあたしの生徒なのよ!

ばしっと頬を両手で叩き、次の授業の準備の為に職員室に入っていったのだった。




ーー夜、電話するから。

その言葉通りに、琴子の携帯に電話があったのは、昨日の夜の10時過ぎのことだった。

030の番号は家電のようで、ちゃんと登録して、さらについでに携帯壊しても失くしても大丈夫なように、しっかり手帳に番号をメモしておいた。

子機を使って部屋からかけていると云うことだった。

「……あたしの番号、ちゃんと覚えていたの?」

『1度覚えたことは忘れないから』

「ふーん、じゃあ何で今まで電話くれなかったの?」

つい口調が剣呑になる。

春休みから2ヶ月ちょっと、何故彼からは連絡してくれなかったのか。
教生となって再会してから、熱烈に求められても何処か戸惑いを感じてしまうのはそのせいだ。

『おまえが電話するって言ってたじゃん。だから、ずっと待ってたんだけど』

「それは携帯なくしちゃって……」

あたしからの電話がなくても番号覚えてたなら、そっちからかけてくれたらよかったのに。

『おれ、基本的に電話ってツール嫌いなんだよ。相手の都合とかお構いなしに唐突にその時間に割り込んで会話を要求するのって、かなり傍若無人じゃないか?』

うーん、それはそうかもしれないけれど、一応百年以上、誰もがフツーに使ってきた文明の利器だよ……今さらそんないちゃもんつけられてもなぁーーそれに、緊急の用事の時にはないと困ると思うよ……

『無論、仕事や緊急事態には必要だってのは分かる。だが掛かってきた電話がどうでもいい内容で、長々とくっちゃべられた日にはおれの時間を返せと怒鳴りたくなる』

「ご、ごめんね。キライな電話させちゃって。もう、切るね」

『あほ。かけたのはこっちだろ。ちゃんと用事があってかけたんだ』

「は、はい。で、用事とは」

『この番号、ちゃんと登録しておけ。以上』

えーと、それだけ?

『あと、明日の昼は屋上で待ってるから一緒に飯を食うぞ』

えっえっえー!

『じゃあな』

そして、一方的に切られてしまったのだが。

でも嬉しい。
電話を初めてくれたことと屋上デートの約束………
随分(生徒なのに)高飛車に命じられた気がするが、それはまあ置いておこう。

いや、でもまずいかなー。
一緒にお弁当食べないと幹ちゃんたちに不審がられるかなー。

少し悩むが、まあいいや、と気にするのをやめた。適当に誤魔化せばいいだろう。

というわけで、今日の弁当は少しゴージャスに重箱入りだ。いつもは父のお手製のお弁当だが断って、朝早く起きて頑張った。いつも父親が作ったものとは見映えにあからさまな違いを感じるが、きっと味は大差ないに違いない、と変な自信を持っている。


そして、待望のランチタイムである。

仲間たちには『今日は教室で生徒たちと食べるから』と嘘をつき、琴子は急いで屋上に向かった。


「遅い」

屋上の扉を開けると、給水タンクの日陰になる位置の段差に、長い脚をぶらぶらさせて直樹が腰かけていた。

「ごめんね。授業少し長引いて……」

「言い訳はいい。さっさと飯食うぞ」

「う、うん」

よっぽどお腹空いてたのね、と素直に思う琴子であるが、まさか直樹がここでデザート(=琴子)をいただこうと思っているなどと考えもしないのである。

「なんだ。おれの分も作ってきたの?」

「うん。あ、入江くん、自分の分あったのね。わー美味しそう!」

「お袋に断る理由がないからな。あの人、料理はかなり得意なんだ……て、なんだよ、おまえのこの弁当!」

「えーと、特製和食会席弁当です……」

「すげぇ茶色い世界。……卵焼きまでブラウンだ。そのうえ食べる前から卵焼きに殻が入ってるのバッチリ見えるんだけど」

そう言いつつも躊躇いなく箸を伸ばす。

がじっがりっごりっ

不味い、苦い、なんだこりゃ?
ーーと、ブツブツ云いながらも琴子の作ったほうばかり食べている。

「やーん、入江くんのお母さんのお弁当美味しすぎる~~」

琴子はせっせと直樹の弁当をつつく。彩りも鮮やかで、一品一品凝っている。当然冷凍食品など、1つもない。

「なんか、いいねぇ。青い空の下、ピクニックみたい」

梅雨前の爽やかな青空。飛行機雲だけがくっきりと空を分ける。夏至も近いせいか太陽の位置は随分と高く、屋上のコンクリートに反射して流石に少し汗ばむ暑さだが、時折そよぐ風が心地よい。
屋上からは東京のビル群がくっきりと眺められ、中々の眺望であった。

「4階建ての屋上でも結構景色きれいなんだねぇ」

「今日は天気いいからな。でも屋根とビルしかみえないだろ」

「屋上ってちゃんと開放されてるんだね。自殺防止で普通立ち入り禁止って聞いてたのに」

「ああ、鍵は掛かってて基本立ち入り禁止だぜ、ここ。生徒会長の権限で勝手に持ち出しただけ」

「ええーーっ いいのぉ?」

「バレやしないよ」

いけないことと分かっても、やっぱりお天気のいい日の外でのランチは気持ちがいい。
他愛ないお喋りとちょっとしたデート気分。

ああ、これで教生と生徒という立場でなかったら……
この幸せを心から満喫出来るのに。
とはいいつつ、この禁断ちっくな背徳感はちょっとドラマティックな気分にさせてくれるのだが。


「ごちそうさま」

なんだかんだ(文句言いつつ)琴子の弁当を完食してくれて、にんまりしている琴子に、「じゃあデザートな」と二の腕をくいっと掴んで引き寄せる。

「え? あ、デザートね、リンゴ剥いてきたよ」

バッグから別のタッパを出そうとした琴子の手を制して自分の膝の上に引っ張りあげた。

「違う、こっち」

と、直樹がポケットから出したのは小さな包みーー

「ん? 薬? ………じゃない!」

それが何だか察知した瞬間に、琴子は思わず「ひぇぇーー」とのけぞる。

「ちょっと、ここで!? ダメっ! 有り得ない!」

「 なんで? 腹ごなしの軽い運動をするだけじゃん」

軽い? 軽い?
ーーそれは、絶対ウソだ~~~ !

「それに、ちょっとしたお仕置き」

「え? なに?」

「今朝、HRの時、ずっと渡辺の顔ばっか見てただろ? 何? 実はあいつの方が好みなのかよ」

瞳の色が不穏である。

「そ、そ、そんなわけないでしょっ だって、入江くんの顔見ると思い出しちゃって……」

「思い出すって?」

「え……き、昨日の……///////」

「ああ。昨日、部室でエッチしたこと?」

いやーん、露骨にいわないでぇぇぇ

楽しそうににやっと笑う直樹から真っ赤な顔を背けるが、簡単に顎を捉えられ正面から見つめられる。

綺麗すぎる容貌(かお)。アップに耐えられる容姿ってほんと羨ましい。

「もう、昨日お互いタガが外れちゃったんだから、この際、禁忌(タブー)や羞恥は取っ払って本能のままでいいんじゃない?」

そしてさらに近付いてくる直樹の玲瓏な顔。

いや、ダメです。絶対にダメですってばー

お昼ご飯のあとは、まったりとお喋り、もしくは膝枕でお昼寝くらいにしてくださーいっ

そう叫びたくても、その唇はあっさりと直樹によって塞がれる。

「んぐっ………」

そして、彼の手はさっさと琴子のジャケットを脱がし始めていた。

薄いピンクの開襟ブラウスの上三つの釦を超高速な早業で外している。

ちょっと待て。
ヤバイ、マズイ!
こんなお天道様が天高く見下ろしているところで、そんな~~~

琴子の焦りなどお構いなしに直樹の手はブラウスの中に侵入し、ブラの中にも遠慮も躊躇いもなく堂々と侵略していた。

「あ……ダメ……」

胸の先端をつつかれて思わず出た甘い声に、直樹がにやりとほくそえむ。

「全然ダメじゃないじゃん……」

今度は大きな手にすっぽり包まれて強く揉みしだかれた。

「昼休みって時間があんまりないから、短縮バージョンで行くけど許せよ」

いや、だから、そんな時間ないときに無理してしなくても~~

頭の中は抵抗しているのに、身体は全く云うことをきかない。

またあっさり流されてしまうのかしら。ああ、先生失格ね、あたし………


半分琴子が諦めの境地に至った時ーー

屋上の扉がガチャっと開いた。

ひぇぇぇぇ~~~~~~

琴子の心臓は半分ひっくり返りそうになった。

アラレもない格好で直樹の膝の上で抱きすくめられているのだーー。
だが幸いなことにここは給水塔の陰で、扉からは死角になっている。

「あれ? 珍しい。屋上の鍵が開いてるなんて」

「おまえ、前来たとき、閉め忘れたんじゃねえの?」

「おかしいなー。ちゃんと締めたと思ったけど」

「開けっぱで事件でも起きた日にゃ、折角こっそり合鍵作ったのに、付け替えられちまう。気を付けろよ」

「へーい。もう事件は起きてるけどね」

「煙草吸うくらいで事件かよ」

「A組の生徒が煙草をこっそり吸ってるのは大事件だろ? この学校にとっちゃ」

「だなー」

男子生徒二人が屋上の柵に寄りかかって、煙草を吸いだしたようである。
ふわりと紫煙が流れてくる。
どうやらA組。
しかも常連さん。

A組、というのを聴いて、驚いて覗きこもうとした琴子だか、直樹に引っ張られてよく確認出来なかった。

「あれは3年だな」

耳元でぼそっと囁かれる。

それすらにもびくっと反応する琴子。
その感度の良さに、思わず口元が緩みそうになるが、流石にこの状況で続けると間違いなく琴子は声を出してしまうので、諦めざるを得ない。

ーーまた、寸止めかよ。

折角、昨日やっと本懐を遂げたのに、また何の呪いか、琴子を抱こうとすると邪魔がはいるというのがどうもお約束のようである。

ーーとっとと出ていけ!

と心のなかで罵倒するも、3年の喫煙少年たちは、のんびりと煙草を燻らせながら、今年の教生のランク付けなどしている。

「やっぱ、一番美人は桔梗先生だよなー」

「あれで男なんて、詐欺だぜ」

「でも、品川先生も中々……スタイルは一番いいよな。胸もでかいし」

「小倉先生も可愛いし。おれ、もろタイプ」

あたしは?
あたしは?

琴子の耳がダンボになっている。

「相原先生は………」

二人の声が重なる。

「「ないな!」」

「はあ~~……?」

思わず声をあげそうになって直樹に口を塞がれた。

「可愛いけど、ファニーフェイスだよな。めっちゃ童顔だし。おれ、ロリじゃねぇし」

「胸がちっちゃいのがおれ、もう却下」

「ちっちゃいというより、ないもんな。標高0」

けらけら笑いだしてる彼らに思わず弁当箱をぶつけてやりたくなったが、一応我慢した。
直樹も肩を震わせて笑いを噛み殺していた。


「うん、もう! 入江くんまで笑わないでよっ」

一服終えた二人が去った後、釦をはめ直して身繕いを整えた琴子は、むっとした顔で直樹の鼻を摘まむ。

「いや、あいつら全然分かってないなーと思ってね」

「へ?」

「胸は大きさじゃないってこと」

言いながら、ブラウスの上から琴子の胸をがしっと掴み、揉みしだく。

「ひゃああん」

途端に腰砕けのようになる琴子。

「も、もう……入江くんのばかぁ~~」

「授業、サボって、続きしちゃう?」

「ダメ~~絶対、それはダメ~」

半泣きで訴える琴子に、「冗談だよ」とくすっと笑う直樹。
もうあと五分ほどで予鈴が鳴る。
ストレスが溜まっているらしい3年男子は長々とこの屋上で、下らない女の品定めを喋り倒していた。

「……ったく、邪魔してくれたな。あいつら、いつかチクってやろう」

「………もう、A組のクセになんでそんなエッチなの?」

「A組とか別に関係ないだろ?」

「そっか。男の子はみんなケダモノなのね。さっきの子達だって、顔やスタイルのことばっかしで」

「おれがケダモノになるのはおまえ限定だけどね」

「ふーんだ、調子いいことばっか云ったって信じませんから。どうせ、今までだって部室やこの屋上で女の子とイチャイチャしてたんでしょ?」

云ってから、琴子は少し切なくなった。

あまりにも連れ込んだり引っ張り込むことに慣れてる直樹に、当然今までもそういう行為を行っていたのだろうと想像できる。
こんなに端麗な容姿をしているのだ、選り取りみどりでとっかえひっかえ遊んでいたって不思議ではない気がした。

やっぱりあたしも遊ばれてる?

「何? おれ、そんな女たらしに思われてた? 心外だな……」

悲しそうに眉の下がった琴子の頬を包みながら、直樹は少し真面目な顔をしてじっとその瞳を追った。

「いっとくけど……おれ、琴子が初めてだから」

「ええーーっ」

あからさまに驚いて大声を出した琴子の口を慌てて塞ぐ。

「女と付き合ったことすらないからな。どっちかっていうと今まで恋愛沙汰に興味なんてなかったし」

「え? うそっ」

「興味が涌いたのはお前だけ。おまえ以外に抱きたいなんて思ったことなかった」

「そ、そんなに魅惑的? あたしのカラダ……」

思わず自分の小さな胸をブラウスの襟元から覗きこんでしまう。

「は?」

「流石に標高0ってことはないんだけどな~~。一応今時の小学生の方が発達してることはちゃんと分かってるのよ?」

「 分かってるならいいけどね。少なくともその発展途上のカラダに溺れてる訳じゃないからな」

「じゃ、じゃあ何に……?」

「カラダという器だけでなく、中身も丸ごと全部。相原琴子という存在そのものに溺れてる……のかな?」

「………………///////$#&@%&&!!!!!」

あっまーーいっ!

………と叫びたくなるような極上な告白に、琴子の胸はきゅんきゅんに高鳴る。

「だから、放課後、時間を空けとけよ」

「え………今日も明日の指導案の準備とかしないと」

「じゃあ一緒に手伝ってやるよ、図書室で」

「え? ほんと?」

生徒に指導案の手伝いをさせるのはどうかと思いつつも、春休みのバイト期間中、卒論のテーマのアドバイスまでしてもらっていたのでつい頼ってしまう。

「ああ。図書室でヤりたかったんだろ?」

「へ? やる……?」

にやりと笑う直樹。
きょとんとする琴子。

「ドラマみたいに」

「ええーーっ ヤるってそーゆー意味?」

確かに図書室でなんだかんだしてた教師と生徒の純愛ドラマの話はしたが、別に真似っこしたいわけじゃないのだ、絶対に!

「じゃあ後でな。急がないと本鈴がなるぞ」

「きゃー、待って。置いてかないで~~」


ばたばたと直樹を追いかけて、彼が扉を施錠している隙に、足早に階段を掛け降りていく琴子。
結局置いていかれたのは直樹の方である。


ーー週末には携帯契約するかな……


必要性を感じなかったから持たなかった。
だが、なるほど、執着するものが出来た時に、他人の時間を占有したくなるアイテムがこんなにも欲しくなるのかと、実感している。

春休みに琴子と出会い、今まで出会ったことのない異次元のような強烈で刺激的なキャラに興味を持ったのは事実で、成り行きで関係を持ってしまったけれど、それがどういう感情なのかよくわからないままだった。

よくわからないまま春休みが終わり離れ離れになって、とりあえずもて余した感情はそのまま放置しておいた。
連絡は向こうから来るだろう。
敢えてこちらからはするまい。
これが愛なのか恋なのか単なる男の本能というヤツなのかーー時間が経てばはっきりするかもしれない。
そう思って放っていたら来ると思っていた電話は来ない。
いや、そんな筈ねーだろ、とイライラしていたのは事実。
何だかんだずっと琴子のことが頭から離れない。四六時中他人のことを考えてるのは初めてだった。
結局翻弄されているのは自分の方なのだと認めたくなくて半分意地で、覚えていた番号をかけることはなかった。
それでも偶然を装って大学を覗きに行ったり、父親の店を訪ねたり。

ーーなんだ、この青臭いガキみたいな行動は!

つまりはガキなのだ。こと恋愛に関しては、まるで小学生のような感情の未発達さ。
自分で自分の行動に、背中がむず痒くなるような気恥ずかしさを感じて、余計にこれ以上動くことを躊躇った。
どうせ、6月になったら会うのだから。

そして、再会してーー確信した。

欲しいものなんて、何もなかった筈なのに。
欲しなくても全てのものは簡単に手に入ったから、喉から手が出るほど欲しいとか、そんな餓(かつ)えたような要求も執着を抱いたこともなかったのだ。

なのに、再会した途端に確信した。

この女はおれのものだと。
頭のてっぺんから爪先まで自分のものだと。
彼女が所有している今も未来も、その時間の全てが自分のものだと。
激しい独占と執着が、はっきり形となっていた。

この女の全部が欲しい。
誰にもやらない。
こいつは、おれのだから。

年上とか教生とか関係ない。
そんなのは一時の関係性に過ぎない。

そして、とりあえずは携帯なのだ。
どうやらこれはこの関係性を維持していくためには重要なアイテムらしいと、認めないわけにはいかなくなった。

何にしろ、未成年だから親の承諾なしに勝手に携帯ひとつ契約できないのがもどかしい。


早く大人になりたい、と切実に思う。
そんな風に何かを願うのも初めてだ。
流されるまま、何の感情の起伏もないまま16年以上過ごしてきた。

そんな彼の世界を彼女が変えた。


「………待ってろよ、琴子」

それは図書室で待ってろ、という意味なのか、大人になるまで待ってろ、という意味なのか。

自分でもちゃんと意識をしないまま、小さく呟く。


ーーまもなく午後の授業が始まる。







※※※※※※※※※※※※


なんだかストーカーちっくだな、この高校生直樹さん……偏執的だわ……と、書いてから思ったんですが、大丈夫ですか? 引いてません? なんか、青すぎて一直線ーf(^^;

ちょっと久々過ぎてコンセプト忘れそうでしたが、元々は『各教室制覇でえろ!』でした(^w^)
各教室で寸止め、という説もありますがf(^^;
とりあえず屋上は寸止め。
さて、図書室は………?

次が限定になるのかそうでないのかは神のみぞ知る……(^_^;)











2016.04.23 / Top↑



前の記事を上げたとき、熊本震度7の第一報に驚いて、お見舞の言葉を呟きましたが、それからさらに状況は厳しいものとなっております。

私の夫の実家も熊本ですが、最初の前震は震度4、次の本震は震度5弱。夫の身内も友人も無事なようで一安心しておりました。
昨年亡くなった義姉の家が福岡で、わざわざ義姉のご主人が熊本の空き家となった実家の様子を見に行ってくれて、写真を送ってくれました。築70年近いボロ家は崩れることもなく、中の食器棚とかも倒れることもなく無事でした。

このブログの読者さまも被災された方がいらっしゃるようで、心からお見舞い申し上げます。

悲惨な状況の中、大丈夫とコメントくださいましたa様、ありがとうございました。いつもコメントくださるnママ様、御無事で何よりです。

他にも余震の恐怖に怯え、眠れない夜を過ごされている方もいらっしゃるかと思います。

1日も早く日常が戻られることを心より祈っております。

今、何ができるのか。
まだボランティアの受け入れも出来ず、荷物を送ることも叶わない。
せいぜい募金するくらいしかありませんが、よく覗いている救急医の方のブログに『今私たちができることは日常の生活を保つこと』とありました。
せめて被災地でない地域で、ちゃんと生産し、消費し、経済を回して、被災地を支援する力を保つことだと。
やみくもに何も出来ないことにストレスを感じず、平静に日常を過ごすことだと。

a様からのコメントにもこんな状況でも私のブログを楽しみにしてくれるとおっしゃっていただいて嬉しかったりします。
私も、こんな話でも皆様の癒しになればとできるだけ創作していきたいと思っております。

ただ。

ここからはちょっとお知らせです。


ただいま、連載中の『1997年の夏休み』の一部を限定記事にさせていただくというご報告です。
既に過去記事の一部を限定にさせていただきました。

読まれた方はご承知おきかと思いますが、阪神淡路大震災の一年半後の設定で、原作では全く触れられていない震災についてのエピも幾つか挿入されております。
今回の地震の前から、読者の方には、阪神、新潟、東北など幾つかの震災を体験した方もいらっしゃるだろうことで、普通に公開することに迷いはありました。
そして今、リアルタイムで起きている状況を鑑みて、見たくもないのに地震についての物語を目にしてストレスを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

今後も神戸の救命チームの回想シーンで震災のことが語られる展開になる予定です。

そのため、 過去記事、および今後の記事で、地震や震災に触れているお話は全て限定 にさせていただきます。

パスワードはとりあえず変更しません。
楽しみにしてくれている方もいらっしゃるので。
限定になっていたら、地震のシーンがあるな、と察していただいて、ストレスを感じるかもしれない方はご自分で判断して開かないようにしてください。あくまで自己判断でお願いします。

『夏休み』に関してR18で限定な記事は、全て(・5) 方式にしていきたいと思います。ラストはまたラブラブなえろを書くつもり(←あくまで予定ですが^_^;)なので。


勝手な変更で申し訳ありませんが、私に出来るささやかな配慮です。ご理解いただけたらと思います。


私自身、少しヘビィな展開のあのお話の続きがすぐに書くことが出来るかわかりません。もしかしたらしばらく全然別なお話を書くかもしれませんが、出来うる限り更新をしていきたいと思っていますので、時々覗いていただいて、少しでも日常のストレスから開放されていただけたら嬉しいです。


最後に落書き一枚。
ラフな鉛筆画ですが………

実は、昨年胃ガンで亡くなった義姉と、今回わざわざ亡き妻の実家の様子を見に行ってくれた義兄の写真を元に描いた絵です。

もう末期だったけれど孫を抱くことが出来て、その生まれて間もない孫を挟んで一緒にお昼寝している写真。お葬式にも飾ってあって、未だに見ると泣けてしまう一枚ですが、ほんとに夫婦仲の良さが滲み出て、ほっこりする良い写真なのです。
勝手にイリコト変換しちゃってごめんなさい、と心のなかで天国の義姉に謝りつつ………







1日も早く平穏な日々が取り戻せますように。







2016.04.17 / Top↑



既に一週間過ぎてしまいましたがーー
突発的に思い付いた入学式ネタですf(^^;
時系列は現在です。







※※※※※※※※※※※※※※※




春うらら。
澄みわたる青空に満開の桜。
今日は斗南大学付属高校入学式。
あたし、入江琴美15歳、今日から花のJK! ーーなのだけれど。


「お母さんっ! 一体何、いつまでも啜り泣きしてんのよ!」

式の後、あたしたち生徒はHR、親たちはそのまま講堂で説明会のあと、各教室にて合流。そして、担任紹介の学級懇談を終えて解散。本日のスケジュールはこれにて終了ーーてなわけで、みんな教室の後ろにいた親たちと揃って教室を出ていってしまった中ーー我が母は、いつまでも懐かしげにこの1Aの教室を見渡して、またうるうるとしているのだ。

中等部の卒業式にはハンカチ3枚駄目にするくらい号泣してたお母さん。
とはいえ、今日は入学式。
この晴れの日に相応しく、実に晴れやかな天気。
気温も随分と暖かくなり、広々とした講堂の中でも肌寒さを感じないくらいの、絶好の入学式日和だった。
高校生として大人の階段を一歩を踏み出した、新しい門出の日なのだ。
普通は泣くものじゃないでしょう?

「だって、だって、このA組の教室、懐かしいんだもの~~」

懐かしいのはA組の廊下でしょう? お母さん。
少なくとも1年の時は、廊下でお父さんが出てくるのを出待ちしてただけで、教室の中に入ったことは1度もない筈。

「廊下側のガラス窓から通りかかる度にチラ見してたのよ。入江くんはだいたい一番廊下から離れた反対側の陽当たりのいい窓際に座っていることが多かったのだけど……」

うっとりと、そのお父さんの定位置だったらしい前から3番目あたりの窓際の机をすりすりと撫でる。

「……在校時代にこの椅子に座りたかった……」

そんな、28年も前の話を今更何いってんだか。
好きな人の椅子にこっそり座るなんてお母さんらしい乙女な思考だけど、その憧れの人とちゃーんと結婚して、子供3人作ってんのよ?
あたしは肩を竦めて、思わず呆れ返ってしまう。

「………どうせ、式の最中、ぐずぐず泣いてたのだって、自分の入学式思いだしたせいでしょ?」

「えへ……わかっちゃった?」

舌をぺろっと出すお母さん。
わからいでか。
校長の祝辞のところで盛大に鼻をすすりだし、卒業式並のテンションで嗚咽をもらし始めた保護者に、あたしの廻りはかなり不思議そうな顔をしてざわついていた。
あたしはすぐにお母さんだっ! て気がついたけどね。

「どうせ、28年前のお父さんの新入生挨拶の言葉を脳内リフレインして、一人思い出に浸っていたんでしょ? ああ、あの時、あの瞬間一目惚れしなければ、今、琴美がここにいることはないのね、とか」

「あら……よくわかるわね」

お母さんは驚いたようにあたしの顔を覗きこむ。

「……でもね、それだけじゃないのよ」

ふふっと何かを思い出すように無邪気に笑う。

「だって、あの時、校長先生が朝ドラのモデルになった女性の話を引き合いにだしたでしょう? もう、涙涙の最終回思い出しちゃって………」

そっちかい!

確かに校長先生は、祝辞の中で初めて日本に女子大を作った女性として、男尊女卑の明治を強く生き抜いた女傑の話を語っていた。ま、割りとあのドラマを見ているだろう保護者への掴みはオッケーって感じ? 旬なネタは旬なうちに……そんなことを思うあたしって随分ひねくれものかしらね。
とはいえ、入学式の校長訓話から、ドラマのシーンを思い出して泣く母ってどうよ?

「でも、今年の新入生代表は女の子だったわね。入江くんみたいにカッコイイ男の子が現れて、みーちゃんが一目惚れしたら、まるで時は繰り返していくようでドラマティックだわーとか思ったのに!」

輪廻は巡るーーって?
だから、人生そう都合よくドラマティックはありませんって。

今年の新入生代表は中等部からずっと首席の大須賀女史。女史って名前がぴったりの度のキツい眼鏡をはめて、きっちり三つ編みの絵にかいたような優等生だ。
なんか、船津さんの女版みたいで、眼鏡をとると意外と美人。
そして、何故かあたしに妙に絡んでくるとこも………

「入江さん、本当は試験、実力出してないんじゃないの? IQ200の伝説の男の娘が、A組ギリギリキープの位置にいるなんて、信じられないわ! ちゃんと正々堂々と戦いなさい!」

そんなこと云われてもねぇ。
どんな天才の遺伝子だってうちの母親と掛け合わせたら、せいぜい秀才ちょい下レベルがいっぱいいっぱいなのよ。

きゃんきゃんうるさいのはほっておいて、それでも何とかあたしは高校もA組をキープできた。入学式の前のクラス分け見て、どんだけほっとしたか。
あたしじゃなくて、お母さんが。

ほんとは、あたしは成績順のクラスなんてどうでもいいと思ってるのだけれど、A組じゃないと、お母さんが自分を責めるの、目に見えてるもの。

ごめんね、ママが馬鹿だから……

そんな風に落ち込むお母さんが見たくないから、それなりに頑張ってきた。どんなに頑張ってもA組のトップには入れないのが残念な感じだけどね。
それに、お母さん、落ち込む必要なんて全然ないのにね。
あたしがAだろうがFだろうが、多分家族の誰も気にしないと思うのだけど。


「琴美ーー! 外で写真とらへん?」

アンジーが、クリスママと一緒にやってきた。
幼馴染みのアンジーは残念ながらC組。
本当は斗南への進学をやめて、グランマのいるロンドンへの留学をずっと迷っていたから、同じ高校へ行けるだけでも嬉しいけど。

今日はお母さんもクリスも着物を着ている。
お母さんはともかく、金髪美人のクリスがしっとり落ち着いた葡萄鼠色の江戸小紋の和装をしていると、流石に目立つ。
クリスも英国人ながら、長年和食割烹の女将をやってるから、自分で着付けもちゃちゃっとできるのだ。
お母さんは撫子色から薄紅色のぼかしのはいった訪問着。桜の小花柄が春めいて優しい色合いで、お母さんらしい。
お母さんも、昔は着物姿でお祖父ちゃんの店の手伝いしてたし、着付けの師範免状持ってるおばあちゃんから教えを受けて、最近は教授会のパーティとか和装で参加してるからそれなりに着ることが出来るみたい。
とはいいつつ、今日の入学式に和装で参加してた保護者はお母さんとクリス含めて四人くらい。やっぱ、少ないよね。

でも、とりあえず今日は晴れて良かったよ。
玄関から一歩外に出ると、周囲の桜の木の下で、みんなスマホやデジカメを構えて撮影会をしていた。
これが明日だったら、とんでもない大荒れの天気らしいから、ほんと、入学式が今日で良かった。
ーーもっとも、明日は双子の従兄弟たち、瑞樹と将樹、通称みっきぃまっきぃの斗南中等部への入学式なんだけどね。
好美ちゃん、雨だったら着物は諦めるって云ってたなー。

「ほら、二人並んで!」

お母さんとクリスが、玄関近くの大きな桜の木の下をキープして、あたしたちを並ばせる。

何枚か写真を撮って、交代で母娘ツーショット撮ってもらって。
スマホだと際限なく撮りまくってしまうよね。
もっとも和装の母たちが目立つのか金髪のアンジー親子が目立つのか、ずーっとじろじろ見られてる気はするのだけど。

「……結構パパはんたちたくさんおったね」

「うちなんか、中学の卒業式まではおばあちゃんも必ず参加してたもんね」

「そーいやー琴美のばーちゃん、今日来てないんや。珍しい」

「今日はどうしても抜けられないお祖父ちゃんの会社の用事があるらしいよ。お陰でお祖父ちゃん、ずっと口きいてもらえないの」

明日の中学の入学式は雨だろうと嵐だろうと絶対いくだろうけどね。

お母さんは相変わらず一人感慨深気に周囲を見回してる。

「この辺りで、卒業式の日のツーショット撮ってもらったんだよねー」

ああ、あのお父さんが仏頂面の?
あの写真の二人がまさか結婚するとは当時は誰も思わなかっただろうなー。

「琴美のパパも来たがってたん?」

アンジーパパの金ちゃんは、予約があるからどうしても休めないけれど、本当は紋付き袴着て来ようとしてたらしい。

「まさか。その辺はうちのお父さん、昭和ちっくよ」

あっさり、「その日は講義かあるから行けねーぞ」って、お母さんに云ってたもの。

流石に両親揃っての参列はそれほど多くはないものの、親世代の入学当時はほぼ父親なんか0だったらしいから、それを思うと、子供の成長を共に感じたいというパパたちが多くなったということだろう。
そんな時代の風潮を全く無視して、うちのお父さんは、中学からは入学式も卒業式も参列しない。とりあえず、小学校までは両親プラスおばあちゃんだったけどね。

「誰が昭和ちっくだって?」

あたしたちの後ろから、よく耳馴染んだ低い声が響いた。

ーーええっなんで?

「おとうさん!」「入江くん!」



玄関あたりでたむろっていた新入生たちとその親の注目を一瞬で集めたお父さんは、40を過ぎて尚、その眉目秀麗な容姿で世の女性たちのハートを掴みまくってる。(あたしの友人も、そしてその母も、ファンの数は数知れず)無論、本人は全く意図しないところだけど。

「どうしたの?」

「来れるかどうかわからないから言わなかったが、どのみち今日は講義は1限目しかなかったんだ」

斗南医大の最年少教授のお父さんは、学生への講義指導の時間がどの教授の中でも最も割り振りが多いらしい 。当然、講義は一番人気で教室が毎回入りきれないため整理券が配られるとか配られないとか。その上年間オペ数もここ10年変わらず外科随一だし。
いったい何処でどうやって時間を作っているのやら。
ーーって今は無理矢理ひねり出した時間なのかな? 教授になったせいで雑務が山のように増えて、空き時間に論文を書く隙もないって云ってたし。

今はお母さんも、小児科外来の非常勤勤務で、お父さんとは病院で会える時間は少ない。
来年からはぴよちゃん(次女、琴梨、もうすぐ2歳)を病院の託児ルームに預けて常勤に戻るらしいけど。

「琴美、おめでとう」

お父さんにくしゃっと頭を撫でられる。

「うん。来てくれてありがとう」

「きゃー入江くん、三人で写真撮ろう~~! クリス、お願い~~」

お母さん、テンション高くなってるよー。

「ハイナ。ホナ、アッチノ校門前デ撮リマッセ」





「ハイ、チーズ」

お父さんとお母さんに挟まれて、記念の1枚。
なんか、身長差が階段のように段々になってる。
お父さん180センチ、あたしが165
、お母さんが150ちょい上くらい?

あたしもこれ以上は伸びないだろうから、これがMAXかな?

そして、こんな風に並んで写真を撮るのはあと何回くらいなのかな。

「ねぇねぇ、入江くん。みーちゃんの担任の先生、あたしたちが3年の時に新卒で来た亀井戸先生なんだよー。びっくりだよ。亀ちゃんすっかりおじさんになってて」

「………おれたちだってオジサンオバサンだろうが」

「そりゃそうだけどさー」

うん、まあ、お父さんたちより一回り以上は老けてみえたけどね、亀井戸先生。

「確か英語だったよね。よく入口の扉に黒板消し挟んでイタズラしたなー。毎回引っ掛かってくれて受けたわー」

お母さん……小学生……?

「さすがF組だな」

「お母さん、提出書類、何ヵ所も間違いや書き忘れやハンコの押し忘れがあって、思いっきりイヤミ云われて差し戻されたのよ」

さすが相原だな~~~

なんとなく言い方にかちんときたけどね。

「どうしてこう進学する度に大量の書類書かないといけないのかしらね~~もう、面倒で面倒で!」

確かに書いてる時もかなりぶつぶついってたよね。看護計画よりめんどくさいって。

もっとも本人はイヤミに気がつきもせずに、もうちょっと書類、簡略化させてください!って無茶な要求してたけど。


「あ、そうそう聞いてよ、新入生代表は女の子だったのよ! 入江くんみたいにイケメンかしらと期待してたのに」

「……おまえ、式の最中にイケメンウォッチャーしてたのかよ」

「 やだ、まさか~~みーちゃんが恋しそうな男の子がいないかしらと」

あー、お母さん、お父さんの前でその話題は ………ほら、眉間に皺が……

「そういえば、花村一斗くんは、別な高校行っちゃったんだよね。せっかく生まれた時から一緒だったのに」

だから、その話題は~~~

「足切りにでもあったのか?」

あ、お父さん少し小馬鹿にした感じよ。

「違うよ。お父さんの転勤で北海道の高校行ったの」

ずっと、一人東京に残って斗南行くってごねてたけど。

結構息子べったりないっくんママが許すはずないよね。
おばあちゃんが生きてたら東京に残ったのに、とか、親父一人で単身赴任すればいいのにとか、いつまでもグチグチ云ってるから、「あんた一人息子なんだから、付いてってお母さんをちゃんと守りなさい!」って発破かけてやったわよ。
いっくんちのお母さんはうちの母に負けず劣らず夫ラブだから、単身赴任なんてさせる筈ないわ。

アンジーには、「あーあ。あいつ、あんたに引き留めて欲しかったんだと思うよ~~」とため息つかれたけど。
いやいや、ひとさまの家庭の事情に口出しなんてしませんから。

「でも、いつか幼馴染み同士で再会して……お互い意識しあうようになって……」

お母さん、そのよくある少女漫画シチュで妄想するのは止めてほしいですけど………。




「明日はこの桜も散っちゃうのかな……」

お母さんが少し寂しそうにひらひらと舞い散る桜を見上げる。

「明日は雨らしいからな」

「でも、今日は晴れてよかった。みっきぃまっきぃには申し訳ないけど」

「ふふ、日頃の行い?」

「さあ?」

他愛もないことを喋りながら、校門から続くプロムナードを歩いていく。ここも見事な桜並木だ。

一足先を歩いていた、アンジーとクリスが、ぱたっと止まり、そしてアンジーがにやにやと後ろを振り返った。

「……?」

「センパイ!」

あ。出た!

街路樹の脇からぬっと現れたのはーー

手にオレンジのガーベラの花束を持った、一ツ下の後輩、島田奏太だった。

思わず回れ右をして学校に戻りたくなった。
ちょうど1年前に、あたしにラブレター寄越した彼は、悪い子じゃないけど、そういう対象には全然思えない。弟がまた一人増えた感じなの。

「きゃー、花束持って素敵」嬉しそうなお母さん。

「なんだ、あいつは」思いっきりしかめっ面のお父さん。

「いい度胸やな……琴美パパおるのに」アンジーが呆れている。



「入江先輩、入学おめでとうございます!」

華やかだけどガーベラのみのシンプルな花束を目の前に差し出される。
ちなみに彼からは、卒業式の日も花束もらったんだよね。黄色いフリージア。
どうにもあたしのイメージはビタミンカラーらしい。
そして、あたしは卒業式の日に、彼に第2ボタンをねだられた。あげなかったわよ。だって、誰かにお下がりで制服あげるかも知れないもの。さすがにぴよちゃんに着せるのは無理だろうけどさ。

「ありがと。じゃあね。あんたも来年足切りに合わないように頑張りな」

花には罪がないから受けとる。受け取ってさくっと素通りしようとしたけど。

「あーん、みーちゃんってばツレナイ……」

お母さん、袖引っ張らないでください。

「センパイ! 22日はこと座流星群が極大なんです。一緒に観に行きましょう!」

「行かない!」

「えー、こと座流星群? 」

お母さん、だから変なところに反応してテンション上げないでってば。

「今年のこと座流星群は満月と重なるから見えにくいぞ」

お父さん、なんでそんなこと知ってるのかな。
ああ、ハルの天文ブームがまだ続いてるせいか。

「弟に云っとくわ。遥樹とどうぞ」

「もう、みーちゃんたらー。島田くん、また、うちの屋上に来ればいいわ」

「お母さん!」「琴子!」

お父さんとあたし、同時に声を荒げる。

「島田、自分の趣味を押し付けるだけじゃ女はなびかへんで」

アンジー、変なアドバイス止めてくれる?

「だって、センパイ、何が好きなんですか? 映画とかドラマとかもあまり興味無さそうだし」

「恋愛映画やドラマに興味ないだけで、ミステリーやアクションものは好きだけど」

「えー、そうなんですか! じゃあゴールデンウィークはコ〇ンを観に行きましょう!」

ミステリーにアクションで〇ナンかい?
まあ、好きだけど。

「ゴールデンウィークなんて先の予定はまだ分からないな。今から家族で入学祝のランチだから、またにしてくれないか」

おおっとお父さん、ちょっとばかしブリザード発射しました! 目が怖いですよー。

「あ、はい、すみません! センパイ、じゃあまた! 今度メールします!」

でもこいつ、意外と動じない。
にこっと笑って晴れやかに去っていった。

「もう、入江くんってば~~そろそろみーちゃんの恋愛に免疫つけてよ。もう高校生なのよ。これからもっと色々あるかもなのよー」

「まだ高校生だ!」

「いいわよ。あたしまだ興味ないから」

「だ、そうだ」

「うん、もう。みーちゃんも入江くんもー」

ぷうっと剥れるお母さん。
可愛い。
ほら、お父さんの眉間の皺はもうすっかりなくなって、楽しそうにお母さんを窺ってる。
着物の衿足に桜の花びらがひとひら。
なんかちょっと色っぽい。

「28年前の今日、この高校であたしが入江くんに一目惚れして全てが始まったわけよ」

はいはい。耳にタコだけどね。

「運命が動き出したのは、ラブレターを渡した26年前だけど、始まりは高校入学式のあの日なの」

うっとりと校舎を振り替えるお母さん。

「みーちゃんにも素敵な出会いがありますように」

祈るように校舎を見て呟くお母さん。

いや、お母さん。高校は別に運命の相手を見つけるために通うわけではありませんから!

うん。
でもまあ。
男女拘わらず。運命の出会いはあるかもしれない。
高校ってそういう一生の付き合いが出来る出会いがある場所だって、中等部の担任が云ってた。

あたしにも、そんな出会いがあるといいな、って思ってるよ。



「……………………」

「……※$%#&#!!!」

お父さんがお母さんの耳元に何か囁いて、お母さんが焦ったように耳まで真っ赤になる。

………何云ったのよ、お父さん! 昼間っから!(←エロいこと云ったとしか疑わない娘)



ああ、もう。
本当に、この両親から生まれてよかったわよ、あたし。
いつだって春爛漫。
のほほんと、しあわせ。

今日は新しいスタートの日だけど、この先も続くゆるやかで穏やかな日常の1日に過ぎない。
この日常が、いつまでも、のほほんと平和に続きますように。
いつまでもこのうららかな春の日のようにーー









※※※※※※※※※※※


直樹が琴子に何を囁いたのか、妄想は各自おまかせします(^w^)

娘の入学式の最中に思い付いてf(^^;、2、3日で書けるかなーと思ってたのに結局一週間かかってしまいました(^_^;)
あ、一応フィクションですので笑

ちょうどうちの娘と琴美ちゃん、同じ年なんで色々被ってしまってつい妄想してしまいます。
いや、新入生代表は女子で、しかも後ろ向き。壇上の校長先生に向かって宣誓してたので、顔はわかりませんでした。これじゃあ男子でも一目惚れは出来ないな、なんて余計なこと考えてた私……f(^^;
ええ、見目よい男子はいないかしらとウォッチングしてたなんて、そんな……f(^^;(娘いわく、いないよ、イケメ ンなんて……だそうですが)


次は……連載に戻りますね(^_^;(多分)






熊本で大きな地震が起きたようです。
旦那の実家方面は、速報で震度4でしたが、とりあえず故郷の級友や福岡の姉の家に連絡とって安否確認してました。みな無事なようでした。
実家は空き家ですが、ぼろ家なので震度7もあったら倒壊してたかもです……怖い。
せめてこのブログを訪れている皆様が不安な夜を過ごされていませんように。

無事をお祈りしています。





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