19960214 ~赤か? 黒か?




スミマセン、入江くんがヘンですf(^^;

いや、ヘンタイです。

このイベントの度に入江くんをおかしな人にさせてる気が………f(^^;

どんな入江くんでも大丈夫よ! という、琴子ちゃん並みに広い心の方、続きからどうぞ♪




※※※※※※※※※※※※※※


いよいよこの季節がやって来た。
家の中がやたらチョコレート臭漂うこの季節が。
玄関の扉を開く度にふんわりと甘い薫りがするのは気のせいではないだろう。
思わず眉間の皺が深くなる。

「もう100年はチョコレートは要らない」と宣言したのは一昨年、チョコレート風呂なぞについ入ってしまったせいだ。
二人してチョコレートにまみれて、訳のわからないテンションでチョコレートコーティングの琴子を食し、それなりに盛り上がったが、チョコレートは一生食わなくて十分と思ったし、その上掃除が大変だったのに結局風呂は壊れて買い替える羽目になった。
(ついでにタイルも張り替えて浴暖機能やミスト機能も付け足し、浴槽も広々タイプに変え、浴室の総リフォームを行ったのは紀子のちょっとした気配り……らしい)

因みに去年は琴子が看護科編入試験の真最中で、バレンタインどころではなかったが、一応家族には購入したチョコを配っていたようだった。
直樹には、「試験合格したら何か手作りするね」と言っていたが多分自分がご褒美デートをしてもらうプランで頭がいっぱいで、すっかり忘れていたようだ。
忘れてくれていた方がありがたかったので敢えてその件は追及しなかったが、何も貰っていないことはしっかり覚えている直樹である。





「入江くーん、赤か黒かどっちがいい?」

直樹は1週間前の出来事をふっと思い出した。

夜、夫婦の寝室に入った時にいきなり琴子からそう問われた直樹だが、さすがに脈絡のなさすぎる質問に怪訝な表情を露骨に見せた。

いや、一瞬、頭を過ったものがあったのだが、琴子が差し出したものは予想したものではなかった。

「なんだ? そりゃ」

段ボール箱の中に大量の赤と黒のパッケージの某菓子メーカーの板チョコが入っていた。

「なんでもじんこの知り合いが大学生協の購買担当で、注文ミスで大量発注しちゃったらしくて。みんなで少しずつ買ってあげたの。ほら、市販の板チョコでもちゃんとチョコスイーツ作れるからさ」

いつもは紀子御用達の製菓用の高級チョコレートを使用していた筈である。

「チョコ、要らないっていったろ? どっちだろうとどーでもいい」

「ええっ? 入江くんは黒だと。ほら、黒はビターだし」

赤いパッケージはミルクチョコレートらしい。
一番定番のノーマルチョコは茶色のパッケージの筈だがそれはないようだ。





赤か黒かーー

ビターだろうがミルクだろうが、甘ったるいのにたいして違いはないのだ。はっきりいってどっちでもいい。

赤か黒かーー気になるのは。

直樹がそう問われて連想したのは、琴子の白い猫足チェストの引き出しに収められているハズのアレだ。

去年の琴子の誕生日にじんこと理美によってプレゼントされていたアレーー。

二十歳の誕生日以来、二人の親友は毎年のように琴子にお色気下着をプレゼントしていた。いわゆるベビードールとかいう奴だ。
持つべきものは友達だな、とそのプレゼントに関しては密かに二人に感謝している直樹である。毎年なかなかいいチョイスで、割と楽しみだったりするのは無論内緒の話だが。(さすがムッツリ)

恥ずかしがって自分から着ることはないが、琴子の誕生日の1ヶ月後の直樹の誕生日には、プレゼントと称してその下着を付けることをさりげなく要求するのである。
誕生日のお願いには逆らえないようで、真っ赤になりながらもその透け透けだったり、布面積が異様に少ないものだったりする、かなり恥ずかしい下着を身に付けてくれる従順な妻なのだ。

いつもは琴子のイメージに合う白やピンクのパステル調のものや、レースや花柄ものだったりするが、今年はチラリと見ただけだが、中々インパクトのある、赤と黒の色ちがいのデザイン二枚組だった。
しかもかなりどきりとする刺激的な意匠である。

早くそれを身につけた琴子を見たいーーそして食べたいーーと密かに渇望していたが、誕生日から4ヶ月以上たった今もお目見えしていない。

仕方ない。
自業自得なのだ。
全面的に自分が悪い。
それはよーく分かっている。

去年の誕生日ーー琴子がプレゼントをもらっているのを横目で見たが、コメントを寄せることも揶揄することもせず、そして自ら無関心を装って琴子にお祝いの言葉を告げることすらなく、スルーしていた。

ーーね、これ着て入江くんに迫ってさ、早く仲直りしなよ。『プレゼントは私よ』って云ってね♪

そう、二人に云われて、困ったように「そうだね」と薄く笑っていた琴子。
前期試験とも重なっていたから、ろくに中を確認せずにそのまましまい込んでいたようだった。

すでに誕生日の前の夏休みから、二人の間におかしな空気が入り込んでいた。
いや、一方的に直樹が苛立ちに任せて琴子を無視して事態を悪化させていたのだが。

後々それが直樹の人間として未成熟さ故の嫉妬心と妻への独占欲がもたらしたのだと解明されたが、その時は琴子も、当の直樹すら何故このような状況に陥ってしまったのか解らないまま、どんよりとした夏から秋の季節をやり過ごしていたのだった。

今思い返しても、その時期の記憶は霞がかかったようにぼんやりとしている。訳の分からない苛立ちやモヤモヤした感情がとぐろを巻いて、けっして忘れない筈の記憶を曖昧模糊とさせているようだ。
数ヵ月もの間、琴子とろくに口を聞かず目を合わせることなく過ごす事が出来たことが、今となっては不思議でならない。

あの、食堂での劇的な仲直りの夜以来、ほぼ毎夜のように琴子を抱いている。
それはそれは大切な宝物を扱うように、出来るだけ優しく抱いているのだ。
なるべく琴子の良いように。
琴子が気持ちよくなるように。
琴子に奉仕するかのように、琴子の為だけにその身体の隅々まで愛した。
それはある種の罪滅ぼしのようなものだった。

一般的に妻に申し訳ないと思うなら、宝石だのバッグだの、もしくはデートや旅行だの、そういうことで贖罪をしようとするものだろう。
クリスマスにディナーとか、冬休みに二人だけで旅行とかーーその方が琴子もずっと月まで跳びそうな勢いで喜ぶ筈なのに、何故かそういうところには一切到達しない思考回路の持ち主なのだ。
そして、当の琴子も、直樹から随分酷い仕打ちを受けたことなど 、皆のいる食堂で愛の告白をしてくれたことですっかり舞い上がり、すべてを水に流してしまっている。

入江くんってば嫉妬するくらいあたしのこと好きだったのねっ
ずっと、ずっと入江くんに嫌われちゃったと思ってたから……
もう、おしまいだって思ってたから……
あたし、入江くんの傍にいていいって云ってくれただけで嬉しいの!

無条件に直樹の罪を全て許諾し、受け入れる琴子はまるで天使か女神だ。

それゆえに直樹は、愛しい琴子を毎晩可愛がり……(←エンドレスループ)


さて、話を戻そう。
つまりは去年貰っていたエロい下着を着けた琴子を賞味したいのだ。
以前ならなんの遠慮もなく、平然と要求出来たし、下着どころかもっと恥ずかしいあんなことやこんなことも………夜の寝室はなんでもアリだったりした。別に夫婦だから構わない。険悪になる前まではかなり冒険的、かつ刺激的な(どんなだよ)営みを試みてきたのだ。

だがどうにも琴子への罪悪感からか、仲直り以来、琴子が嫌がるだろうことを要求することが出来ないまま時が過ぎてしまっていた。

琴子が欲しそうな顔をしない限り、3戦目はNG。(でも2回はお約束)無論翌朝足腰立たないまで、なんてとんでもない。アブノーマルな小道具もアクロバットな体位も厳禁だ。(難易度BまでならOK?)
とにかく紳士に徹して、歯の浮くような愛の言葉だって囁くのだ(ベッドの中なら何とか出てくる)。


無論琴子はどんな直樹でも受け入れるに違いないのだが。
そしてどんな無体な要求もあっさり飲んでくれる。直樹の望みなら全面的に叶えてくれるのが琴子なのだから。
できることなら自発的にアレを身に付けてバレンタインのプレゼントとして自分を差し出して欲しいものだが、生憎琴子はその存在すら忘れてしまっているようだ。

ーー赤か、黒かどっちがいい?

さて、どっちがいいものか。
どちらも普段、琴子があまり選ばないカラーだ。
琴子と言えばオレンジやイエローのビタミンカラーなイメージだろう。下着は清楚なパステルカラーが多い。お約束の動物シリーズも健在だが、最近は花柄だのレースたっぷりのコットンキャミなども紀子の見立てか着用頻度が高い。

滅多にお目にかからない赤と黒の琴子……
どちらがいいだろう?
扇情的な赤……性的興奮を覚醒し、欲望を増長させる色だ。古来から女は赤い紅を唇に差して、男を誘惑してきた。
禁欲的な黒……高級感と静謐さを併せ持ち、それを解き放つ時、禁忌を犯すような破滅的な欲情を感じるだろう。

共に琴子らしいカラーではないが、逆に童顔の琴子にそれを着せることで随分と官能的で蠱惑的になることだろう。

赤か黒かーー

とりあえずバレンタインに着てもらうのはーー

「赤かな……」

鮮烈な赤は琴子の肌の白さをより際立たせるだろう……
欲望の赤。情熱の赤。官能美の赤………

『プレゼントは私よ』のコンセプトにぴったりなあの下着、赤は刺激的な夜をもたらせてくれる筈だーー


「えーー? 赤なの? 入江くん? ミルクチョコだよ、こっち」

琴子は赤と黒のチョコレートを手にして驚いたように二つを見比べている。

そう、とりあえずはまず赤だ。

「ちょっと甘いかも、だけど……?」

甘いおまえが食いたい。

「頑張って美味しい、チョコスイーツ作るね~~何にしようかなー♪ 生チョコ、トリュフ、ガトーショコラにフォンダンショコラ~~」




と、それが1週間前の話。

1週間の間に、琴子は練習を繰り返し、紀子の指導のもとしっとりとしたガトーショコラを完成させていた。2年前のリベンジといったところか。消し炭のような怪しい物体はなかった。少しは進歩したものだ。

「赤のミルクチョコたっぷり要れたからね~~召し上がれ」

バレンタイン当日に、1ホールのガトーショコラをにこやかな琴子の手によって、目の前に差し出された。

「じゃあ16分の1に切ってくれ」

うすーく切ってもらったガトーショコラは普通に食べれた。
随分頑張ったのだろう。
かといって、甘いものは基本好まないので全部食べれるかどうかはまた別問題。
濃厚過ぎるガトーショコラ16分の1に、琴子の珈琲2杯は必要だった。
琴子は自分で作ったケーキの4分の1を、「美味しい~~あたしって天才~~」と幸せそうに直樹と一緒に食べた。

「入江くんにやっとちゃんと食べてもらえて、こうして一緒にバレンタイン、お祝いできるなんて~~ああ、苦節何年かしら?」

ーーバレンタインって、何のお祝いだよ?

心の中で突っ込んでみる。ついでにいうと初めてのバレンタインチョコは一応食ったし。
それより、問題はこの後だ。

果たして琴子は自分の意図を汲み取ってくれるだろうか?

「……メインディッシュの赤はいただけるんだろうな?」

にやりと笑ったら、途端にぼんっ! と真っ赤になった。

どうやら意図は伝わっているらしい。

いや、絶対伝わってないと思って、引き出しの一番上に例のものを置いておいたし。

「おれが食いたいのは赤いチョコレートじゃねーぞ」

ーーと、なぞなぞのような命題も振っておいた。
琴子に察するなどという行為は難しいだろうと思っていたのだが、まさかきちんと夫の真意を読み解いてくれたとは。


「えーと ……『赤』だよね……」

「そう」

「じゃあ、お風呂入ってからね////」

お、まさかの正解?



『プレゼントは私よ』

その下着は実にコンセプトに忠実なデザインだった。
女性の身体をリボンで綺麗に結んだだけのシンプルさ。シンプルなだけに妙に淫靡だ。
胸の部分に施された大きなリボンをほどいたら、するりと一瞬で生まれたままの姿になってしまう。
赤い一枚の布のみで身体をラッピングした様相だ。




琴子の白磁の肌に鮮烈な赤のリボン……想像しただけで身体が滾ってくるのを感じた。



交代で風呂に入り、直樹が久しぶりの期待を胸に二人の寝室に戻ってみるとーー。

ベッドの上に。

牛がいたーー。

「………なんで、牛?」




そこには牛の着ぐるみパジャマを着て、ベッドに転がっている琴子がいた。

「えーと……牛って『赤』に興奮するでしょ?」

闘牛かよ。
にしては、ユルすぎるだろう、その牛は!

牛の興奮をあおる赤い布(ムレータ)ーー確かにあの下着に似ているが。

「牛は赤いものを見ると興奮すると思われてるが、実は牛の目は色を区別できない。実際は色でなく動きで興奮をあおってるんだ」

「え? そうなの?」

真面目に驚いて目を瞠っている琴子。

「そう」

むしろ、赤い布で興奮するのは闘牛士の方である。
赤はそんな魔性の力があるのだーー

いや、そうではなくて!!
なんで赤から牛に行くのか、その発想の斜め加減に思わず脱力を感じてしまう。

じゃあ黒だったらなんだ? 何が出て来たんだーー!
黒毛和牛かーー!(結局牛?)


軽くため息をついて、しかしこの際牛でも何でも琴子ならいいのだと、その牛の着ぐるみを剥いでいく。

「…………………!!」

着ぐるみを剥いだ途端……見えたのは、大きな真っ赤なリボン。肩と胸と足の間に一枚の布が交差して結ばれていた。

「おま……なんで?」

「あ、あ、やっぱり引いちゃった? 実は前に理美たちからこれ貰ったこと思い出して……丁度『赤』いし……でもね、なんか着けてたら、これ、妙に恥ずかしくなってきて、あたし何やってんだろって……あっ」

真っ赤になって言い訳めいたことをいい始める琴子の唇を塞いだ。

「大丈夫。全然引いてないから」

にやりと笑って、その申し訳程度に胸を覆っている赤い布の中に左手を差し込む。

「あん……」

一周回って正解にたどり着いたらしい。流石琴子と言うべきか。

さしあたり、このリボンを解(ほど)くのはどのタイミングがいいだろう?

きれいにラッピングされた琴子を食べる段取りを頭の中で構築しながら、直樹はゆっくりと愛しい妻の上に覆い被さっていった。



「明日は『黒』な」

ーーやはり、どちらも食べたいのだ。






後日談。

『白か? ピンクか?』


さて、『赤』も『黒』も両方いただいてご満悦な直樹だが、実は直樹以外にもそれを気に入った人がいた。
紀子である。
何にせよ、洗濯をすればバレバレなのだ。いや、はじめはこの長い布は何?ってことになったのだが、素直な琴子はあっさり、その用途を教えてしまう。
服を着たままその下着を着けてみせて、「なんかふんどしみたいかも?」なーんて、笑いあっていたら、帰宅した裕樹に見られてしまうというハプニングはあったのだが。
ことのほかその下着を気に入ってしまった紀子が、「琴子ちゃんには白やピンクも似合いそうね~~」と、あれこれ布地を買ってきてさくさくと作り始めた。何にせよ、単純な作りなので、製作はあっという間である。

そして完成された『プレゼントは私よ』の白やピンクのフェミニンバージョン。

今回ほど母の器用さを感謝したことはないかもしれない。

時折食べる刺激的な赤や黒もいいが、やはり常食には琴子らしさが滲み出たこちらの方がしっくりくる。


「いただきます」


バレンタインはとうに過ぎ去っても、琴子からのプレゼントは毎晩事欠かないのであったーー。






※※※※※※※※※※※※



お目汚しのラクガキでスミマセン……orz
自分で描いてイメージと違うわと身悶えするアホな私……(T_T)


あの赤と黒の下着の写真を見つけた時は、琴子ちゃんに着せたーいと、妙にテンション高く張り切ってお話妄想し始めたのに、ただ直樹さんがエロ親父のようになっただけで、イマイチ詰めが甘かった気がします(ーー;)

『赤と黒』という名作を生み出した千夜夢様に『赤か? 黒か?』でお話書いていいですか?とお伺いしたところ、快諾していただき、さらには『白か? ピンクか?』もアリですよ、と仰ってたいただいたので、使っちゃいました~~f(^^;
(ラクガキはピンクバージョンですが……分かりヅラ……)

着ぐるみシリーズもコラボっちゃいましたよ(^w^)むじかく様宅とクローゼッドも書斎の本棚も共有しているやもしれません(^_^;)四次元トンネルで繋がってるかも?

ちなみに2月14日は『ふんどしの日』でもあるらしいですf(^^;なんかフォルムは似てるのかも? と思っちゃいました(^w^)



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管理人の、のののです。イタズラなキスにはまって、二次創作を始めました。

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