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個別記事の管理2016-01-30 (Sat)




『ーー琴子?』

「………もしもし? 」

恐る恐る電話に出た琴子の耳に届いたのは、琴子が知っているのと全く違わぬいつもの直樹の声だった。身体中の骨を伝わって足先まで響くような重低音。でも、それがたまらなく心地がいい。

ーー入江くんっ

1日しか会っていないだけなのに、何だかとっても懐かしい。たとえ、それが自分の夫である直樹とは違う世界の彼だとしても。

『身体、大丈夫なのか? ホテルのエスカレーターから落ちたって聞いたけど』

「う……うん。それは全然大丈夫」

『気を付けろよ。おじさんから聞いた時、血の気が引くかと思った。………まだ酒が残ってたのか?』

心配そうな声。

「お酒のせいじゃ……」

ーーないと思う。
落ちたのは、異世界の自分と会ってしまった時に生じた不可解なエネルギーのせいだ。
あの時すれ違った琴子は、寂しそうだったけれど、酔っていた雰囲気はなかった。

『酔っ払ったお前を置いていったこと気になってた。悪かったな。医学部で教授の論文手伝ってて、実験のトラブルがあったって連絡があってーー』

「よ、酔っ払ったあたしをあの部屋に連れ込んだの?」

ノンちゃんから聞いてはいたが、そもそも直樹は予め部屋を予約していたのだろうかと疑ってしまう。
こっちの直樹はストーカーのように琴子を追っかけてたという。
離婚も成立していないのに、一体どういうつもりなのだろう。
もう、元の世界に戻らねばならないのに、お節介と思いつつ、この直樹に真意を問い糺したくなる。

『 連れ込んだって………人聞きの悪い! だいたい腹へったってゆーから飯食わせてやったら、シャンパン飲みすぎて、吐きそーって真っ青になって呻いてたから、部屋をとってやってんだろうが!』

「わ、わざわざダブルベッドの部屋に?」

『はあ? クリスマスで満室で、急遽キャンセルになったというあの部屋しか空いてなかったんだよ!』

「な、何もしてないわよね? 」

それが一番が気になっていたところだ。ノンちゃんの言うことを信じるなら何もない筈だが。
1時間で部屋から出ていったと云う話だが、1時間あればあっちの直樹なら2回戦くらい十分余裕でいける。
既婚者の直樹とそんな関係になってしまってはあまりに泥沼だ。いくらなんでもこっちの琴子が可哀想すぎる!
その夜の時点ではまだ沙穂子が離婚を決意したことは知らない筈。
きっとひどく困惑して煩悶していたに違いない。

『何にもしてねーよ。ゲロゲロ吐きまくるし、吐瀉物詰まらせないか様子見てただけだ。呼吸も落ち着いて、ぐっすり眠ってから出ていったんだよ』

「………ほ、ホント?」

『眠ってる酔っぱらい襲ってどうする?』

…………向こうの入江くんには何度か襲われたことあるけどね、と内心思いつつ。

『きちんと、ケリつけるまでは何もしねーって誓ったろう』

「そうなの?」

『覚えてねーのかよ』

「あ、う、うん、そうだったね」

とりあえずこっちの直樹もその辺りは琴子の意志を汲んでくれているようでホッとする。

『今日、ちゃんとおまえの親父さんにも挨拶してきたから』

「そ、それ……」

さっき電話で悦子から聞いてはいるが。

『正式に離婚したらおまえと結婚前提に付き合いたいって』

「ちょっと待ってよ、入江くん! それ、きちんと離婚成立してからいおーよ」

それは塩撒かれて当然だと突っ込みたくなる。

『 離婚届は書いて渡してあるものの、彼女は3年間提出しなかった。このまま離婚に応じなかったら調停や裁判になる可能性もあったし、向こうがあれこれ探偵使って調べさせてたのわかっていたから、もしかしたらおまえやおじさんたちを巻き込むこともあるかもしれないと思って。
実直なおじさんが不倫とか許す筈がないから、おまえからは現時点では完璧に拒絶されてるってきちんと説明しとかないと、変に誤解されておまえが勘当されかねないからな。
とにかく一方的におれがおまえを忘れられないから追っかけてて、お前にプロポーズしたのに即効断られたって本当のこと云っといた。
でも、おれは諦めないから。
ちゃんと離婚できて、おまえが了承したら、結婚を前提に付き合わさせて下さいって頭を下げてきた』

ーーおれは諦めないからーーって、いやーん、めっちゃ胸きゅんなんだけどっ

あたしを忘れられなくて追っかけてるなんて、あっちの入江くんにも云われてみたい!

情熱的な告白に少しテンションがあがるが、これは自分が受けるセリフではないことにはたと気がつく。

「入江くん、そのセリフ、もう一度後で……」

『おまえは酔っぱらって覚えてないんだろう? レストランで渡しそびれた指輪をあの部屋でお前に渡したら、箱ごと投げつけられて、額にキズが出来たんだけど』

「……ケガしたの……?」

えっ? と驚いて、恐る恐る訊いてみる。

『たいしたことないよ。かすり傷』

その後、真っ青になって盛大に吐きまくってたから多分覚えてないだろうとは思ったけどな、と苦笑気味な声が響く。

ケガのないことに少し安心したが、指輪を直樹に向けて投げつけたというのには驚いた。もう一人の自分ながら、結構激情型なのかしら、などと思ってしまう。

ーーでも……やっぱり受け取れないよね。

つい数ヵ月前、直樹から初めてバースデイプレゼントを貰ったこととリンクする。
幸せに包まれて直樹からのサファイヤリングを指に嵌めていた自分。
でも、彼女はーー

………結婚してる人から渡されても嬉しいわけないじゃない。

もう一人の琴子の 懊悩 を思うと胸が潰れそうだ。
きっと嬉しかっただろうし、その指輪も嵌めたかったに違いない。
それでも、やっぱり受けとることなんて出来ない筈。

『順番違うだろっておまえにもおじさんにも云われた。確かに焦りすぎてたかも。おまえ、他にいい男がうじゃうじゃいて毎日プロポーズされまくってるとか嘯(うそぶ)くし』

そ、そんなこと云ってたのか、あたし……
いやでも、それ、かなり盛ってるよね?

ノンちゃんに地味な6年間だったと云われていたのを思い出す。

『流石にそれはねーだろうと分かっちゃいたけど、実際、下関の店にいた金之助2号みたいな奴とか、毎日店に通ってくるというどこぞの旅館の若旦那とか、物好きそうな奴がいるにはいるみたいだったし』

………いたのか、そんなキャラたちが……
あらやだ意外ともててたのかしら、あたし?

ふふんっと少し鼻高々になった気がする。

「物好きって失礼ね」

『そうだな。オレが物好きの最たるものかも』

「…………////////」

『おまえが本当にオレのこと忘れたなら諦めるしかないと思ったけど……おまえ、態度でバレバレだし』

「………………」

そりゃ、忘れるわけないだろう。
それは確信できる。
6年前のあの時。
死ぬまで入江くんのことを想って一人で生きていこうと思ったのは、ただ悲しみに酔いしれてた訳ではなかった。まるで予知者のように絶対一生他の人を好きにはなれないとわかっていたからーー。

『……ほっとした。まだおまえがおれのこと忘れてないって分かった時』

ああ、もう、またきゅんきゅんしちゃうじゃない!

でも、ここできゅんきゅんしている場合ではないのだ。
本来なら「自惚れないでよね!」とでも云ってやるべきだろうが、きっともう一人の琴子は散々云ってるに違いない。

ーーバレバレだろうとも。

それでも必死になって、虚勢を張って、直樹から遠ざかろうとしていたのだろう。
生きてきた人生は違えども、同じ自分だから何となくわかってしまう。


「……お父さんに塩撒かれたって……?」

『おまえに二度と近づくなって殴られた』

「な……殴られた? 大丈夫っ?」

『覚悟のうえさ。出来れば沙穂子さんにもきちんと殴ってもらった方がいいとも思ってる。今日にも謝りに行くつもりだから。どんな償いを請求されても受けようと思う。
まだいろんな問題が山積みだけど、全部きちんとしておまえに向き合うから。
気がつくのが遅すぎたけど、おれにはお前が必要なんだ。
ずっと6年間色のない世界にいた。何を見ても何も感じない。何を食べても美味しいと思えない。何を聴いても心に入ってこない。響かない。そんな生活だった。
なのにおまえと九州で再会した瞬間からすべてのものに色が付き始めた。笑ったり怒ったり、感情というものが沸き始めたんだ。そして、やっとわかった。
お前じゃないと駄目なんだ。
おれは、おまえをーー』

「わーっ入江くんっストップ!」

『………琴子?』

「続きは、今から昨日泊まったホテルに来て、あたしに直接云って? 大きなクリスマスツリーのある玄関ロビー、覚えているよね? そこのエスカレーターの下で待ってて! そして多分あたし、また、落っこちるかもだから、きちんと受け止めてねっ」

『は? なんだよ、落っこちるかもって!』

「いいから! 時間がないの! 早く来てね!」

『時間がないって、どういうことだよ』

「そのままよ! それと、ひとつだけ言っていい? 」

『何を?』

「ずっとずっとずーっと昔っからあたしのこと好きだったクセに! 何、間違えてるのよ! ほんっと頭いいクセに馬鹿なんだからーーっ!!」

そういって琴子は電話を無理矢理切った。

「はースッキリした!」

と、云ってから「あ、あたし余計なこと言っちゃったかな?」とすぐに青くなる。

「ま、この24時間の出来事はあまりに介入し過ぎると多少は修正されるみたいだから」

「え? 修正って?」

「よくわからないけど、不思議な天の力が」

空を指差してノンちゃんはにっこりと笑った。


「愛の告白、最後まで聞かなくてよかったの? あっちの直樹さんもあまりそーゆーこと伝えてくれる人じゃないんでしょ?」

「うん、いいの」

あの入江くんの告白をきちんと聞くのはあたしじゃなくて、もう一人の琴子だ。

琴子はそう思って直樹の言葉を遮った。

きちんと琴子に伝えて欲しい。
そして、この世界の琴子も幸せになって欲しい。

ノンちゃんに、『さすが琴子さん、直樹さんに関しては妙に自信あるね』とついさっき云われたが、ちゃんと愛されていると自信が持てたのは、直樹から『好きだよ、琴子』と云われたあの誕生日の夜からかもしれない。
結婚して、妻という肩書きを持っていてさえ、不安になったり自信が持てなかったりしたことは何度もあった。
ましてや、現在他に妻のいる直樹に告白されて、どうしてそれを簡単に受け入れられるというのだろう?

あやふやな立場、曖昧な状況ーー心許ない何もかもが琴子を不安に陥れているに違いない。

たったひとつの言葉だけじゃ足りなすぎる。何度も何度も心からの告白を琴子に浴びせかけて欲しい。
でないときっと彼女は直樹の言葉を受けとめることなんて出来ないからーー




「琴子さん。お母さんももうすぐ、ホテルに着くみたいだよ」

ノンちゃんが少し困ったようにそう告げた。

「え? ホント? 」

やっとお母さんに会えるーー。

琴子は胸の鼓動が少し速くなるのを感じた。

「でも、時間がビミョーだな。あと10分後には元に戻れる『時間』になってしまう。
とにかくそろそろエスカレーターの方に行った方がいい」

「………え? お母さんに会えないかも?」

「うーん、ギリギリかな~~?」

とにかく下へ急ごう。
そう、ノンちゃんに促されて、琴子は鞄を持って立ち上がる。
まだ、眠ったままの沙穂子をちらりと横目で見てから、
「………沙穂子さんも幸せになってね」
そう呟いて部屋から出ていった。

部屋の外に出ると、VIPのSPよろしく、沙穂子の恋人が扉の前で微動だにせず立っていた。

「えーと、ナマセさん?」

「片瀬です」

「ああ、片瀬さん! 沙穂子さんを幸せにしてあげてね」

「………あなたに云われるべくもない。私は幼いころからお嬢様を見て参りましたから。この不幸な結婚を間近で見ていてどんなに辛かったかあなたにはわかるまい。出来れば私は入江直樹を叩きのめしてやりたいと思っていますから」

サングラスをしているから表情はわからない。その上黒いスーツに大きな身体、まるでマフィアの殺し屋さんのようにも見える、仄かな殺気。

「………出来ればお手柔らかに………」

引きつり笑いを浮かべて、思わず直樹の無事を祈る。
いや、多分直樹が負けることはないだろうけど。


「急いで、琴子さん!」と、ノンちゃんに促されてエレベーターに駆け込む。


「とりあえずお嬢さん、直樹さんのこと吹っ切れたみたいでいいんじゃない?」

「うん。あの人、強面だけど、沙穂子さんのこときちんと見てくれて愛してくれるみたいだよね。これからずっと幸せになってくれたらいいなあ」

こっちの琴子にも幸せになって欲しいけれど、それで沙穂子が不幸になるのならきっと心の底から幸せを実感できないのではと思うから。
誰かの不幸の上の幸せなんて、砂上の楼閣のようなもの。

自分の世界でも。
沙穂子があっさり引いてくれたから直樹と結婚できたけれど。
心の奥の片隅では何処か負い目のようなものがずっと澱(おり)となって沈澱していた。そして、それは時折、唐突に浮上する。
何度も直樹の冷たさに挫けそうになったり、愛されているのかさえ自信が持てず不安になった時、これは天罰なのかもしれないと思ったこともあった。

「琴子さんらしいけど」

ノンちゃんが含み笑いをみせた。

「こっちの沙穂子さん、かなりな策士であれこれ罠を張って琴子さんを追い払ったみたいだったけど、きっと、こっちの琴子さんもあっさり彼女のこと許しちゃうんだろうなー」

エレベーターはゆっくりと下降し、一度も扉が開かれることなく1Fロビーに向かっていく。

「沙穂子さんだって、結局6年間苦しんだんだもの」

「ほんと、優しすぎるよ、琴子さん。お人好しとゆーかなんとゆーか………ま、あの二人がどんな夫婦になるのか、ちゃんと幸せになれるのかは、神のみぞ知る……だけど……」

ドアが開いて、エレベーターホールを抜けて、1階エントランスへと向かう。
フロントのある2階までも届く大きなクリスマスツリーも、エスカレーター横にまだ飾られたままだった。
チェックアウトの客もちらほらいて、格調高き高級ホテルのホテルマンたちは荷物やカートを運んできびきびと動いている。

「お客様」

ホテルのコンシェルジュに声を掛けられて、琴子は怪訝そうに振り向いた。

「一昨日、1605室にお泊まりになられていた入江様では……」

「えーと、はい」

「こちら、昨日清掃の際に、お部屋の端に落ちていたのですが、お忘れものでは?」

差し出されたのは、小さなリングケース。

「あ、ありがとうございます………」

そういえば、直樹の顔に投げつけたとか云ってたけど、そのまま放置だったのか、とちょっと驚いてしまう。

「あ……もしかして……」

あのエスカレーターですれ違った時、もう一人の琴子はホテルに向かっていた。朝、一度ホテルを出てまた戻ってきたということだろう。
何のため?

「……やっぱり指輪を探しに……」

プロポーズされ、指輪を投げつけて、でもきっと気になっていて……

琴子はそのリングケースを開けた。

「………これって」

琴子が三ヶ月前の誕生日に貰ったものと全く同じものだった。
海の底のように青く輝くハート・ブリリアンカットのサファイヤリングだ。

懐かしむようにそれを暫く眺めてから、琴子は鞄に入れた。
自分のものではないネイビーのショルダーバッグの中には離婚届と婚約指輪が入っている。

もう一人の琴子が元に戻ってからすぐ気がつきますように。


ーーそう願いながらーー。









※※※※※※※※※※※※※



最後まで突っ走るつもりでしたが長くなりそうなので一旦切ります。

さて、タイムリミットまであと10分。
琴子ちゃんは母に会えるのか?

次回最終話を待て!(笑)……終わる筈です、多分……f(^^;






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No title * by なおちゃん
すごーい‼情熱的な、入江君、もしも、あの時、琴子ちゃんと、入江君が、結婚していなかったら、、もし?沙穂子さんと、結婚していたら、二人は、こんな感じに、なっていたんだろうね、それにしても<気になるのは、琴子ちゃんの、お母さんですよね?琴子ちゃんの、お母さん、、彼女が、幼いころに、亡くなっているとされている、お母さんの存在ですよね❓鍵を握るのは?そんな感じ。v-24

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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

いやーアップしてすぐのコメント、ありがとうございました。なのにリコメ遅くなって申し訳なかったです~~m(__)m

そうです、こっちの直樹は琴子に拒絶されまくってますからもう必死です(^w^)ちょっとザマーミロな気分で書きましたわww
琴子だけでなくマロン様もきゅん死ですか?ふふふっ(^w^)

タイムリミット、初めは1週間に設定しようと思ったけれど、そんなに時間があったら関わり過ぎてしまうと1日に変更。お陰でバタバタな24時間になりました~~f(^^;

Re.みにとど様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

数あるお話の中で、このお話が大好きと云ってもらえて嬉しいです。ラスト読んでいただけたのでしょうか。楽しんでいただけたなら幸いです♪
リコメ遅くなってスミマセンでしたf(^^;

Re.ゆい様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

はじめまして!
ブックマークして何度も読んでいただいているなんて、嬉しいです(^w^)
これでストレスと戦えるならがんばって書き続ける甲斐もあります♪
勇気を出してコメントしていただいてとっても嬉しいです。
それなのに、リコメ遅くなってスミマセンでした~~f(^^;また気が向いたら是非コメントしてみて下さいませ(^_^)

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

リコメ遅くなってスミマセンでしたm(__)m

そうなんです。こっちの二人はストーカーの入江くんに逃げる琴子(^w^)せっかくのパラレルなので原作とは真逆にしてみました。冷たくされても追いかけ続けた琴子の気持ちが少しは分かるだろう!というちょっと直樹さんに思い知らせたくて。
まあ、相当歪んだ6年過ごしてますからねー。元々ひねた人格がきっとロボットのように無人格に。選択を間違えた自業自得なんですが。

設定を24時間にしちゃったので大忙しになっちゃいました~f(^^;

個別記事の管理2016-01-27 (Wed)

またまた、むじかく様からお話いただいちゃいました♪

前回の『愛と哀しみの関門海峡』の直樹バージョンです。

S様、直樹バージョンが読みたい、というリクエストに早速答えていただきましたよ(^_^)

そして、やはり素早いのです。
リクエスト伝えておきますねーとリコメした翌日には、リコメ見て書いちゃいました、と送ってくれましたので! (伝える前に伝わってましたよ♪公開コメントで良かったです)
4日前にいただいてましたが、私の都合でアップが遅れてすみませんでした~~m(__)m







※※※※※※※※※※※※※※※






未だに話を蒸し返される時があり、本当に厄介だ。

確かに今まで琴子を泣かせた事は多数だが、これでも努力して現在に至るのだから、過去の事をネチネチ言うのはいい加減止めてほしいと思う。

特におふくろ

「本当にあの時お兄ちゃんが決断しなかったら・・・」って何だよっ

決断するに決まってるだろっ

琴子と結婚して分かった事だが・・・俺は他の女性と上手く生活できる事はないと確信している。

琴子だからどんなに呆れても手放さないし、この腕の中に閉じ込めていたいとすら思う。

・・・こうして。

俺は琴子に付けた痕を確認しながら、その周りにまた所有の印を増やす。

1つじゃ足りない。もっと、もっと・・・


琴子の誕生日から、琴子を失う恐怖に取りつかれ、どうしても琴子の温もりを求めてしまう俺。

が、琴子は相変わらずとんちんかんな心配ばかりしている。

その最たるものが『俺と結婚出来なかったら』『俺と離婚したら』というもの。

絶対にあり得ないのに、何故そう怯えるんだ!?

いくら周りが騒いだって、俺がお前を手放さないと決めているんだから離婚に至るはずがないのに・・・全く。

『甘い言葉を吐けば女は全て僕の物』な西垣先生の持論には賛同できない。

大体、その『甘い言葉』でも琴子は落とせないんだからザマーミロだが・・・琴子が西垣先生に言い寄られる度、虫唾が走って琴子を俺で満たしたくなってしまう。

「琴子ちゃん、泣く時は僕の胸を貸すよ」

「結構です!! あたしには入江くんが居ますから」

・・・俺と帰る時の琴子と西垣先生のやり取り。

「ねっ 入江くん」と甘えて俺に回答を委ねる琴子に、俺は『当たり前』と思いつつも「くだらない事言ってないで帰るぞ」と言って西垣先生のからかいをかわした。

何故夫の俺が居るのに、他の男の胸を借りて泣く妻が居ると思うんだか・・・あの人も当分結婚出来そうにねーなとため息が出る。

とっとと妻を決めて、俺の琴子に手出ししない様にしてもらいたい。

「なあ、琴子」

このイライラした感情は琴子で沈めたくて、琴子の顔を見ながら・・・「琴子!!」

何故、このタイミングで泣くんだ、お前は!?

さっきまで散々愛し合って疲れて寝たから、俺への不満じゃないよな??

自分で泣く時は俺の胸で泣くって言ってたヤツが、何故隣にいる俺に縋りつかない。

俺はここに居る!!

「琴子!!」

名前を呼んで覚醒を促すと微かに目を開けてきょろきょろと首を動かす。

・・・俺が見えないのか!?

元々夜盲症な琴子は暗闇では俺を見つけられず、こういうしぐさをよくする。

が、俺とさっきまで愛し合ってたから、現在は朝。多少部屋は暗くても十分俺の姿が確認できるはずだった。

「琴子、お前どうして・・・ここにいる俺が分からないのか!?」

琴子の手を取り、俺の頬に当ててみる。

琴子はビクッと手を引いて俺に背を向けた。

急な事に身体が・・・いや、意識がフリーズしてしまった。

琴子が俺を拒否・・・

「さよなら、入江くん」と呟く声を聞き、全力で琴子を羽交い絞めにして呼んだ。

「琴子!!」

無理やり琴子の身体を俺に向かせて問う。

「さよならってなんだよ」

返答次第じゃただじゃおかない。

この身体に言い聞かせてやる。

お前にも俺が必要だって事。俺以外を愛せないって事、気付けよ琴子。

お前を幸せに出来るのは俺だけだろ。俺を幸せにするのはお前だけなんだから、お前を幸せに出来る男も俺だけだろ、琴子。

俺以外を愛するなんて許さない!!

「さよならって何だ!? 今日は二人揃って休みだから朝までしてたけど、なんつー夢見てんだよ、お前はっ」

唇を離しても信じられないって顔をしている琴子に俺は聞いた。

琴子は「なん・・・いっ」と腰痛に気付いて顔をしかめ、更に今更胸を腕で覆い隠す。

「あ、あれ・・・あれれ?? なんで・・・」と俺を見上げて気付いた様だ。

俺も琴子も裸だという事に。

「ああ、夢だったんだ。すっごいリアルだったんだけど・・・」と呟く琴子をすぐに現実に戻そうと思った俺。

そんな夢なんかすぐに消してやる!!

「忘れさせてやるよ」と言って、琴子を再び組み敷いた。


一日ベッドで過ごしても良かったが、琴子が「お腹空いたよ~~~」と嘆くので昼食が届けられる前に琴子を伴ってダイニングに降りた。

昨日から俺に愛され続けた琴子だから、勿論自分の足で歩けるはずがない。

まあ、ある程度時間が経てばそうでもないが・・・それでもあれから小1時間しか経ってないからな。

おふくろが嬉々として作ったブランチを食べ終え、琴子が動けないからおふくろが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた俺に琴子は聞く。

「ねえ、入江くん」と問われて嫌な予感しかしないが、俺も無体を働いた事だし聞くだけは聞いてやろうと思っていた。

だが、質問は本気で予想外のセリフ。

「あたしと結婚したいって思ったの・・・いつ!?」

デートとか、結婚記念日とか、クリスマスとか、琴子の好きなイベントの話だろうと高をくくってたのに、まさかの過去!!

久々に動揺して飲んでいたコーヒーを「ブッ」と噴いた。

大失態。

軽く咽てたらおふくろがビデオを取ってくると大騒ぎしていたので、咽てる暇もなくなった。

これはお仕置きだな。

俺は琴子をガッと俵担ぎして寝室に戻り、鍵をかけた。

ビデオなんか撮らせてたまるかっ


散々琴子の身体に俺の愛を分からせた後、琴子の口から出たのは意外な言葉だった。

「デートしたかったな」

過去形なのは現在動けないと知っているから。俺も動ける体力残させなかったしな。

大体、口ですら動くとロクな事を言わない。

お前は俺の胸で啼いてりゃいいんだよっ・・・という本心は言わないでおく。

その代わり、昨日騒いでいた琴子とおふくろのやり取りの記憶を脳から瞬時に引き出し、聞いた。

「門司港レトロまでか!?」

「えー、なんで分かったの!? 以心伝心??」

嬉しそうに喜ぶ琴子を抱き寄せてお詫びのkiss

この蕩けそうな笑顔の琴子を見られるのは夫の俺だけの特権。

「昨日おふくろとテレビの特集見て行きたいって騒いでたのはお前だろ、琴子」

そう言いながら、昨日おふくろから聞いた話とテレビの情報を頭の中で整理する俺。

おふくろの実家から連絡があって、メグの結婚が決まったと教えられた。

結婚式は来年。一色の祖父さんのせいで佐賀と東京の2回になりそうだと叔父から連絡があって・・・思わず自分に重ねた。

2週間で結婚しなかったらそういう騒ぎも起こり得たんだなと、今更ながらおふくろの読みと行動力に驚かされる。

東京で人気の結婚式場は約1年半待ち。船津が嘆いていたから知っているが、そんな常識を覆し2週間で式を敢行してしまったのでかける言葉は出てこなかった。

何もかもおふくろのせいで、おふくろのお陰。

きっと門司港レトロへもおふくろの算段で行く羽目になりそうな予感がしたので、琴子に行こうと強請られて聞いてやる事にした。

きっと近いうちに佐賀へも行く事になるしな・・・。

祖父ちゃんが待ち望んでいたひ孫の顔を見せに。

と考えている俺とは対照的に、琴子の頭は異次元空間に直結している様で「入江くんって沙穂子さんに一目惚れ」なんておかしなセリフがその口から飛び出した。

「っな訳ねーだろ」

人が幸せに浸りつつ余暇を満喫しようとしてんのに、お前はっ

思わず手に持っていた医学書で軽く頭を叩いてしまった。

「だって・・・」と言いながら涙目で睨む琴子に俺は告げる。

あの時の記憶は実はほぼ消えているという事実を。

「俺、あの頃の記憶はお前との事しか覚えてない」

3歳までの女装生活を心の奥底に封印している様に、あの時の記憶は引き出したくない心の奥に敢えて静めている。

お前を手に出来ない未来なんて想像できないくらい、俺の中は琴子との思い出しか出て来なくなっているんだ。

今なら真っ赤な顔をしてラブレターを渡そうとするお前の姿もすぐに記憶から引き出せるのにな。

ああ、でも・・・

「お前の掃除のおばちゃんルックが似合い過ぎて記憶から消えないんだけど」

料理ですら使わない割烹着に、ゴルフのキャディーの様な帽子、あんなもんぺの様なズボンもどこから準備したのやら。

それを聞いて「嘘ーーーーー。消してーーーー」と青い顔で叫ぶ琴子を、再び抱きしめてkissをする。

俺が見たもの全て記憶する天才だって事、綺麗に忘れやがって・・・。

消せるかよ、どんな変な衣装だって俺の為に着るお前に、俺の目はいつだって釘づけなんだから。

「いい加減、俺の妻は自分だって自覚持てよ」

夢ですら『さよなら』なんて二度と言わせるか。

そう決意している俺の気持ちが伝わったのか、琴子は「はい、旦那様」と言って俺の胸に身を預けた。

「なくのはこの胸なんだろ」

「勿論よ」

清々しいまでに言い切る琴子を俺の胸に乗せて可愛がり、再度啼かせた俺だった。

こんなにしてれば赤子の一人や二人出来るだろう・・・きっと。

いや、絶対に・・・。


* * *

直樹目線だと、琴子の2倍の長さになります(^^; そしてぼかして書いても、一日中している二人にしかならない★ (byむじかく)

* Category : 頂き物
* Comment : (9) * Trackback : (-) |

管理人のみ閲覧できます * by -

ありがとうございます~~ * by サービス
きゃあ~~うれしいです!ありがとうございます!!
予想以上の素敵なお話でした~
寝ぼけていた琴子サイドからは分からなかったけど、こんな
やり取りだったんですね。
そりゃ寝ぼけてとはいえ、琴子に「さよなら」なんて言われちゃ、
入江くんが激怒&焦るのは当然ですよね。
入江くんは琴子以外とは結婚生活を送れないと思っているけど、女性側
からみても、入江くんと結婚生活を送れるのは琴子しか無理だと思います。
いくらスペックが高くても、こんな面倒くさい&○倫な旦那様を菩薩の
ように許し、笑顔でついていけるのは琴子だけですよね(笑)
むじかく様はホントに相手サイドのお話を書くのがお上手ですね。
とっても楽しく読ませていただきました!!
ありがとうございました~~

管理人のみ閲覧できます * by -

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

大変お待たせしてしまいました(^_^;

そうそう琴子の掃除婦ルックはしっかり覚えていても沙穂子さんの衣装なんて覚えてませんよね。
逆に記憶力の乏しい琴子の方がこの頃の直樹の言葉一つ一つが忘れられなくて刻み込まれてますよね。
本当に言葉の呪縛は怖いです。
そうそう、謝らない直樹のせい。身体でなくきちんと言葉で説明しろよーと思いつつ、毎度毎度のベッドで撃沈コース(笑)
一人、また一人と子供が増えてく度にゆっくりと琴子の不安は払拭されていくのかな?

むじかく様にはほんと感謝です。

はーい、私も続き頑張りますf(^^;

直樹が琴子を失うかもという恐怖……確かに台キスでは最終回でばーんと来ましたね。原作ではないからこそ、あちこちの二次の世界で直樹さんは琴子を失う恐怖を味合わされる羽目になるのです(^_^;)そして、反省、きっちり言葉で伝えることを思い知る。へへっザマーミロ(笑)

Re.サービス様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

サービス様が公開コメントでリクエストしていただいたお陰で、かなりソッコーでお話いただいちゃいました。
こちらこそありがとごさいます♪
むじかく様の直樹目線はもうほんと、直樹の焦りや野獣っぷりが際立って秀逸ですね(^w^)
ふふ、まさしく琴子ちゃんって菩薩ですよねー(笑)



Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうですよねーいきなり過去を思い出して夢に見て。すべては直樹さんが言葉になかなかしないから、いつだって不安な心を抱えている琴子ちゃん。
ざるのような、記憶力でも、そういうことはきっちり覚えてます。
不安を払拭するのはベッドに沈めりゃいいっての、それだけじゃ伝わらないの入江くんこそ学習しましょうって思っちゃいますよね~~(でも、それが入江くんなのですよ……^_^;)

Re.ちびぞう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

おお、そういえば日キス1のタイトルにありましたねー『さよなら入江くん』このあたり、辛くてなかなかもう一度見られませんわ~~(T_T)
でもむじかく様の『さよなら入江くん』は夢落ちでよかったです(^w^)
ふふ、本当、にまにましちゃいますよね♪15話のどんより気分が一気に払われて良かったです(^_^)あ、でも最終話の雨のシーンやバスタオルで頭くしゃくしゃでも激萌えでしたでしょう(^w^)?
コラボ、応援してくださってありがとうございます♪ また機会があればいつか(^-^)vええ、以心伝心っぷり半端ないもので、私たちf(^^;

No title * by なおちゃん
動揺するだろうね、怒るだろうな?入江君、結局入江君が、愛しているのは、琴子ちゃんだけなんだから?さようなら?何て、聞き捨て、ならないはず、すでに、入江君の、甘い言葉を、聞きたいわけではないですけど?西垣先生みたいに、常に、てわけじゃないけど、少しは、たまには、入江君の、優しい言葉も、必要なのではないかな。v-218

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ほんと、琴子から「さよなら」なんて、寝言でも動揺しちゃいますよね。
たまには優しい言葉も重要です(^w^)

個別記事の管理2016-01-23 (Sat)



「琴子さん、琴子さん…………」

耳元で囁く声は、何処か耳慣れない少しトーンの高い男性の声。声変わりの前の少年ではないけれど、それでも大人の声でもない。

琴子、琴子…………

琴子が知っている声はもっと耳元から身体中駆け巡って子宮にずんっと響くような低音ボイスだ。

耳元で優しく………優しく?


おい、琴子、いつまで寝汚く毛布にしがみついてんだよ!
さっさと起きろ、遅刻するぞっ


そうね。朝優しいことって滅多になかったかも………
デコピンしたり鼻つまんだり、耳引っ張られて怒鳴られたり。

だいたいねぇ、いつもすっきり起きられないのは誰のせいだと思ってるの?

「琴子さん、琴子さん……!」

だから、誰よ? この声は。
あたしを起こしてくれる男の人は世界でただ一人、入江くんしかいないってゆーのに……

ねえ、あたし変な夢見たの。

すごく不思議な夢よ。

ああ、早く入江くんに話さなきゃ。馬鹿なあたしはすぐにどんな夢なのか忘れてしまうもの。


「琴子さん、起きないと、もう元の世界に帰れなくなっちゃうよー」


ええええええーっ !!!!!



その声の主の顔を唐突に思い出して、琴子はぱちっと目を覚ました。


「ノンちゃん!? ーーえっ夢じゃなかったの? っつ……あたたっ」

ばっと起き上がった時に、微かな頭痛と口の渇きを感じた。

「二日酔い? なんで? ここ何処?」

琴子はベッドの横に呆れたように立っているノンちゃんの姿を認めてから、周りをキョロキョロと見回す。

なんだろう、この既視感。
確か昨日の朝もこの場所このベッドの上で目覚めた筈。
昨日のクリスマスの朝は、オンコールで病院に呼び出された直樹の名残を身体にもシーツにも残したまま、一人でこの部屋で朝を迎えた。
今、目の前にノンちゃんがいなかったら、きっとその後の不思議な出来事は奇妙な夢をみただけだと納得できたのに。
そして、ノンちゃん以外にも、夢ではないのだと思わざる得ない人がーー

「沙穂子さんっ」

大きなダブルベッドの端と端で、眠っていたらしい。
琴子の傍らには、すうすうと規則正しい優雅な寝息のお嬢様が、少し身体を横に向けて眠っていた。

「えーと、なんで?」

沙穂子と二人でひとつベッドに眠っているというこの事態に、どんな成り行きでこうなったのかすぐには思い出せない。
ちなみに二人ともきちんと昨日と同じ服を着ている。危ない世界に踏み入れた訳ではないようで、少し安心する。

「覚えてないの?」

「うーん………」

こめかみを押さえて思い出そうと試みる。

「なんかワインをちょっと飲んだような……」

「そうそう。僕、一生懸命止めたんだよ。だからそんなに飲んでない筈なのに、一口二口くらいで結構なハイテンションになってるんだもん」

「なんか、紙飛行機を飛ばしあっこしたような」

「あ、それ覚えてる?」

ベッドの回りに何故か幾つかの紙飛行機が散らばっていた。
ひとつを取ると、どうも調査会社の報告書の書類を折ったようだった。自分の隠し撮り写真が載っている。

「……そうよ、思い出した。何もこんな写真取らなくてもって沙穂子さんに文句いったような」

自分ではないが、この世界の琴子を思うと同情してしまう。

何故ならば、店でコケてお客の頭に皿をぶちまけてる写真とか、階段から落っこちて腰を擦っている写真とか。何故だか変顔していたり。
どうせならもう少しまともな写真を載せてくれればいいものを。


ーー二人の密会写真が撮れるかとずっと張っていたようね。
ほら、カメラマン自体は腕いいみたいじゃない! 可愛く撮れてるわよーほほほっ

そんなことを沙穂子は云いながら、自分で調査書類をバラバラにして、そのA4の紙を使って折り紙を始めたのだ。既にその時点でロマネコンティは空になって、2本目をルームサービスで頼んでいた。

「あー、これ! 調査書類じゃなくて、離婚届だっ」

他のより薄っぺらい紙飛行機を広げると、それはちょっと飛ばしちゃ不味いだろうという代物だった。
離婚届まで紙飛行機にして飛ばしていたようだ。

「覚えてない? 『これ持っていきなさい』って紙飛行機になったそれ渡されて、二人で童心に返ったかのようにきゃっきゃきゃっきゃと飛ばし合ってたの」

「…………なんとなく」

かなりぶっ壊れていたようである。

「とりあえず、それは持っておいた方がいいんじゃない? 元に戻った時、身に付けておけばきっとあっちの琴子が気がつくよ」

変に折り目のついたその紙を丁寧に広げて、必死に手アイロンを掛ける。
直樹の名前と、沙穂子の名前、ともに署名捺印がされていた。

「うん。あー、そういえば思い出した! 沙穂子さん、プロポーズされたって」

お酒のせいか変なテンションで、ほぼガールズトークのノリでそんな会話をしていた気がする。

ーーえーっ誰にっ?

ーーやだぁ、知りたい?

ーー教えて教えてっ

ーーふふふ、実はここにいるのー

ーーええっ?

ーー片瀬、片瀬! こっちにきて~~

ーーえーっそのボディガードさん?

ーーそうなの。素敵でしょ? 元々うちの執事の息子で、祖父の会社の秘書もしてましたの。今は私専任SPですわ!

ーーきゃあ、よかったねーおめでとう!

ーー私、ずっと意地になって、あなたを追っかけていた気がしますの。
自分は再婚しても、あなたと直樹さんが結ばれるのはイヤでした。
片瀬はずっとそんな私をずっと傍で見てくれていたんです。
すっごく嫌な女だった私を見捨てずに。
昨日、あなたと直樹さんがホテルで食事して部屋に入っていったところを見張っていた時に、突然プロポーズされたんです。

ーーええっ何処で?

ーーこのホテルの廊下ですわ

ーー不思議なシチュ………

ーーロマンチックじゃないと仰りたいのね? 虚しくあなたたちを張ってて証拠写真でも撮ろうとしてた私が痛々しかったのでしょうね。そして、私もようやく気がついたのです。身近なところに幸せはあるのだということに。
片瀬からの強引で荒々しいキスに私は憑き物が落ちたように、今までの自分の愚かさを悟りましたの。

ーーええっこのホテルの廊下でキッス!?

ーーもしかしたらそれがファーストキスかも………

ーー沙穂子さん、顔真っ赤よ~! 可愛い~~!

ーーとりあえず離婚後半年は女は再婚できませんものね。下らない民法の規定だわ。だから、さっさとそれ出してといてくださいね。

ーーえーっ沙穂子さん、自分で出せば……?

ーーダメ。あなたが出して! あたしたち偽りの夫婦関係にピリオドを打つのはあなたなの!
虚しい私の結婚生活に終止符を打つのよ。
やっぱり女は自分のことを一番に愛してくれる人と一緒になるのが一番だわ。ね? 片瀬?

ーーはい、お嬢様。全力でこの片瀬、お嬢様を生涯かけてお幸せにしてみせます

ーー頼もしいわー素敵だわーよかったぁ……よかったねー

ーーそうよ、私は女としての幸せをようやく知ったの。冷たくて感情のない不能な夫なんてあなたに熨斗をつけて差し上げますわ、琴子さん!

ーーええ? ノリをつけて? ノリで巻く入江くん? あ、ダメ、そんなこといったらあたしがまた変なものに巻かれたり拘束されたり妙なことされそ………

ーーや、やっぱり琴子さん、直樹さんとそんな関係!? しかも妙なプレイを?

ーーあー違うっ違います! この身体は処女……らしいです!

ーーじゃあ、やっぱり不能なのねっ

ーーいえ、そーゆーわけではないと……


「……………あ、なんかちょっと色々思い出してきた」

頭を押さえて昨夜の記憶を辿る。

「………そっかぁ、沙穂子さん………プロポーズ受けたんだ」

散々な直樹との結婚生活を聞かされて、思わず同情してしまったが、それでもまだ沙穂子が直樹を想っていたなら、それはそれでやっぱり切ないなーと思っていた。
間違いなくずっと直樹を想っているだろうこっちの世界の琴子にとっても。

ーー女としての幸せを知った今、ただひとつ気になるのはあなたとのことですわ! イブの夜にいったい何があったの? 彼はやっぱりあなたにも手を出さないの?
あなたは一生プラトニックでも平気なの?

ーーへ?

ーーセックスレス夫婦の先輩として忠告しておきますわ! 私も、最初はこのまま直樹さんと夫婦でいられるなら一生清廉な関係でも構わないと思ってましたの。逆にその方が純愛のようで素敵とも。
でも、そんなの最初の数ヶ月。身も心もどちらも愛されない辛さ、言葉には尽くせませんわ!
あなたももし、直樹さんが不能だとしてもちゃんと愛せますの? プラトッニックで構わないなんて乙女なこと考えてませんこと?

ーーえーと………………

お嬢様がセックスレスだの不能だの連呼していて答えに困っていたことを思い出した。

「…… さすがに前の日の出来事までこのメモに更新されてなかったみたいだなー。お嬢さん、随分な急展開だったんだー」

ノンちゃんは妙に感心したように、例の真っ白なメモ帳をパラパラ捲ると、
「お、ラストページに新たに更新されてる。『琴子さん、直樹さんとロイヤルホテルでディナー。シャンパン一杯で具合の悪くなった琴子さんを部屋に連れていく。沙穂子さんはその後をつけて部屋の前で様子を伺っているうちに、SPの片瀬さんがプロポーズ!』………だって」

「へぇぇぇぇ……!……ってそれより、なんであたしは入江くんと呑気にディナーなんてしてるのよ! そんでもって部屋に連れ込まれたの?」

「ストーカーの如く付きまとってくる直樹さんときっちり話をつけようとわざわざ秋田行く途中で東京で降りたらしいね。なんだかんだ言いくるめられてここのホテルのレストランで食事する羽目になったわけだけど、直樹さんの制止をふりきって気合いをいれる為に飲んだシャンパンであっという間に酔っ払ったみたいだね」

「……そ、そして部屋に連れ込まれたのっ?」

直樹が琴子に対して激しい執着を示して付きまとっているというのも、何だか自分の世界とはまるで逆で、ちょっと羨ましい気もするが、当の琴子はかなり複雑だったろうな、と思う。

「……何もなかったってことだよね? 入江くんさっさと部屋出てったってことは」

「だから一応、このメモには琴子さん処女って」

「だからなんなのよーーっそのメモは~~っ」

取り上げようとしたがそのメモもすうっと通り抜けて掴めない。

「詳しいことは本人に聞かないと……ってもう時間あまりないけど、直樹さんに会う?」

「会うって……」

「電話。昨夜、何度もあったの覚えてる?」

「電話? ………?」

琴子は起きてごそごそと携帯を探して見る。

「あー! 入江くんとお父さんから交互に電話、何回も来てる!」

着歴を見ると特に直樹は夜半過ぎまで15分おきくらいにかかってきていた。

うわー本当にストーカーちっくだー。沙穂子さんにしろ、入江くんにしろ、なんかこっちの世界の人たち、あたし以上に変な方向にパワフル?
にしても、その情熱をあっちの入江くんにも分けてほしい。
………というか、こっちの入江くんが気がつくの遅すぎるんだわ。その反動ね、きっと。
あたしのことずっと昔から好きだったクセしてさ。

「さすが、琴子さん直樹さんに関しては妙に自信があるんだねー」

「え? あたし、声に出してた?」

「まあね」

「………入江くんに電話して、会うこと出来るのかな?」

「会いたい?」

「うーん。もう時間ないよね。でも一言言ってやりたい気もするし、あたしはこっちの二人のことに関わっちゃいけない気がするし」

「そうだね。琴子さんはもうすぐちゃんと旦那さんである直樹さんのところに帰るわけだし。帰るつもりならこっちの事情に深く関わっちゃいけない」

「………うん」

それでも少し心に引っ掛かるものがあるのか携帯を手に取って、何度も着信履歴に連なる直樹の名前を見続ける。

と、唐突に電話が鳴った。

「い、い、入江くん?」

ドキッとして相手を確認する前に電話を受けてしまった。

『琴子! 一体何処にいるんだっ』

「お父さんっ」

父だった。
一声だけでも怒り心頭なのが分かり、思わず居住まいを正す。

「ごめ ………お父さん、今、実は友達と一緒で」

『理美ちゃんやじんこちゃんとは連絡取ったぞ』

「うん、二人とは違って………」

沙穂子をちらりと見る。
なんと説明していいのか分からない。
言葉を濁していると、

『うん、もーお父ちゃんたら、野暮なことは聞かないの! 琴子だっていい歳の娘なんだから~~』

ーーーお母さん!?

『おい、琴子、まさか直樹くんと』

『何いってんの、直樹くん、ゆうべ一人でお店に来たって言ってたじゃない』

『ああ、そうか』

受話器の向こうで父と母が言い合いをしている。
何だか不思議な気がして、ぼんやりと聞いていた。

似ているのかな? あたしの声と。

よく鶴三叔父さんに電話すると、悦子の声にそっくりだと言われたものだ。

もう高齢といって言い歳なのに、若々しく柔らかい声だ。

とはいえ、直樹が父に会いに行ったというのもすごく気になる。

『琴子、なんで、母ちゃん迎えに来なかったんだ。朝七時に東京駅着くって云ったろう?』

「え、あ、ごめんね。寝過ごしちゃって。もう、東京着いたんだね、お母さん」

本当にーーお母さん?

母の声など覚えていない筈だった。でも、電話から流れる声は何処か懐かしい。

『そう、今着いたばっかよー。あ、琴子、今、何処にいるの?』

「えーと、ロイヤルホテル……」

『まあ、高級ホテルじゃない! 誰かといるの?』

「友達と……まだ寝てるけど」

沙穂子を一瞥してからそう応えた。

『女の子だよね。わかるよ、琴子が嘘ついてないのは。
直樹くん、ゆうべお父ちゃんとこに挨拶に来たみたいよ』

「挨拶……? な、何の……?」

『プロポーズよ、プロポーズ!』

「へ? 入江くんがお父さんに!?」

『んなわけないでしょーっっぎゃははは』

琴子ってばウケる~~

受話器の向こうで苦しそうに大爆笑している。

あ、なんかこの笑い方、記憶の何処かにあるかも。

『まあ、色々順番が違うと思うから、お父ちゃんに塩撒かれて追い返されたらしいけど。それは仕方ないわよね』

「ええ?」

『詳しく聞きたい?』

「う、うん」

『じゃあ、続きは会ってゆっくりと。あ、でもお昼の新幹線でまた秋田に戻るからね。あんたも一緒だよ? おばあちゃんもあんたに会いたがっているし』

「ごめんね、あたしのせいで行ったり来たりさせて、心配かけさせちゃって」

『元気そうでよかったわ。どうせ1日したら会えるんだから秋田で待っててもよかったんだけど、どうしても今あんたに会わなきゃいけないような気がして、気がついたら夜行バスに飛び乗ってたの。あ、例のアレ買っておいたから、後で渡すね』

「例の……? 何?」

『フフ、琴子、欲しがってたじゃない』

「……何?」

『まあ、直樹くんがあんたに渡したとかいうものよりは、全然劣るけどさ』

「え? 入江くんがあたしに……?」

『もらったんでしょ? 指輪』

「指輪?」

『そーいや、あんた昨日たかだかシャンパンで随分酔っ払ってたらしいじゃない。覚えてないの? プロポーズされたことも指輪もらったことも』

え? まさかの二日連続酔っ払っい?

『あら、琴子。酔っ払ってて何て応えたか覚えてないわけ?』

「なんて………?」

『お母さんだって、父さんが直樹くんから聞いたことの又聞きなんだから。あなたから直接色々聞こうと思ったのに。えーと、今からどうしよう。琴子、朝ごはん食べた?』

「ううん、まだ……」

『じゃあ、何処かで食べる? あ、友だち置いてってもいいんだっけ?』

「うん、大丈夫だけどーーあ、じゃ、じゃあ、このホテルに来てもらっていいかな? あたし、すぐには動けないから……」

『そうなの? わかったわ、 えー、じゃあ、そこでモーニングビュッフェとか食べましょ! 朝食が美味しいって有名らしいじゃない。 今から行くから待ってて!』

「う、うん、あのね……」

『どうしたの? 琴子』

「すぐに来てね! 早く……なるべく早く……!』

ーーもう、時間がないから………

『……わかった! 超特急で行くから! お父ちゃん、タクシー捕まえて! じゃあ後でね!』

多分ご飯を一緒に食べる時間はない。色々ゆっくり話す時間もないかも知れない。
時計を見ると24時間のタイムリミットまであと1時間もなかった。
でも、会えるだけでもいい。
ほんの一瞬でも。

「とりあえず、ロビーでお母さんを待とう!」

こちらの琴子と直樹の行く末も気になる。
何だか急展開で事態が進んでいるようだ。

ーーでも、ちゃんと元に戻れるなら、あたしが余計なことはしちゃいけない。

すっごく気になるけれど。

「琴子さん、また電話……」

ノンちゃんが携帯を指差す。

「え? お母さん?」

「ううん、今度は……」

「入江くん!」

明るく光る着信表示には直樹の名前が浮かび上がっていたーー。








※※※※※※※※※※※※


更新ペースが遅くてスミマセン。
相変わらず寝落ちの日々です。
でもあと一話か二話くらいでケリをつける予定です。ほら、タイムリミットあと一時間もないから(笑)

それと、実は前の話、色々ミスがあって、ちょこっと修正してます。結婚して何年とか別居して何年とか、読み流して気づかない程度のことですが(笑)



大寒波再び(/。\)沖縄にも雪が? 暖冬が遠い過去のようです(笑)
事故や風邪には十分お気をつけ下さいませね。




* Category : 聖夜に奇蹟は舞い降りる。
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No title * by なおちゃん
琴子ちゃんと、入江君との未来も気になるけど❓娘の、琴子ちゃんは、亡くなったお母さんとのこともすごく気になっているだろうと、、思いますよね❓物語の中で、実際には、お母さんは、亡くなっているてことになっていますもんね。琴子ちゃんと、入江君、やっぱ、気になりますよね。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうなんです、24のように(観たことないですが)タイムリミット設定しちゃったんで、かなり牛づめですf(^^;
いや、皆さん沙穂子さんに制裁望んでいるのかなーと思いつつの、みんな幸せになってね、という感じです(だって、イタキスなんだもの^_^;←ごり押し?)実を云うと、片瀬さんは別のパラレル物(やっぱり入江くん、沙穂子さんと結婚する系)で考えてたキャラだったんですが、ここで出してしまいました……f(^^;
24時間しかないからこっちの世界の詳細はぼかすつもりだったのに、何だかんだ書いていたら段々腹立たしい男になってきた直樹さん。何とかすっきりさせねば(^_^;

そうですね……何故だか普通に会話してますね。きっと電話だとイマイチ実感ないのかも(……?)ということにしておこうf(^^;
最後の1シーンまで感動はとっておくということでf(^^;

最終回まであともう少しの予定です。お待ちくださいませ。

なんだかんだ、週明けの寒波は思ったほど雪はなかったのです。めっちゃ寒かったけど。
そして、また春の陽気!……本当に、どうなっちゃうんでしょう、地球……寒暖差に身体が付いていくのが大変ですね。ご自愛下さいませ。

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

本当にびっくりですね。一応、不幸にするか幸せにするかで、幸せになってね、なコースを選びました。でなきゃ、なかなか離婚承知できないだろうなーこの沙穂子さんは……。
まあ、パラレルなので、ストーカー入江くんもありかと。逆転してるのが我ながらちょっとザマーミロな感じでツボってます(笑)

きっと、琴子ちゃんは永遠に気がつきませんよ~~ある意味、何も知らなくて平穏に生きていた6年だったかも……(^_^;


Re.ちびぞう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

真知子巻き、ご存じで! 京香版観てたんですね。私はちらりとだけ観た記憶が。
コトサホの妙な会話にプルプルしていただいてありがとうございます。何となく、川原泉先生の画をイメージして書いてしまいました(笑)
確かに恵方巻、もうすぐ~~元の世界に戻ったら、何に巻かれてしまうのでしょう?(^w^)
本当に、沙穂子さん、耳年増~~もう、女性週刊誌とか、an・anのセッ〇〇レス特集とかつい読んじゃってるんでしょうね……(..)
とりあえず、幸せ掴めば、イリコトの邪魔はしないでしょう。
電話での母との邂逅……あまりにも突然で実感ないかもですが、出来れば少しでも会わせてあげたいと思ってます。間に合うかな~~?
インフル大丈夫だったのですね。良かったです。意外と寒波も思ったほどではなかったですが、今度はまた春の陽気とか。体調崩さぬようご自愛下さいね。
なかなか車ばっかで外に出ないので、真知子巻きする機会がなかったりして(^_^;

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうですよね、こっちの世界の二人の行く末も気になるけど、こちらではお母さんが生きてるってその方が衝撃的。
決して元の世界では会えない悦子さんに、少しでも会わせてあげたいと思ってますが……果たして間に合うかしら……?

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Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

いえいえ。こちらこそ、例の騒動でさぞかし心を痛めている時に、こんなお嬢話で本当に申し訳ないなーと思っていたのですよf(^^;
『orange』読んだことないけど、紀子ママさんのブログみて、へぇそんな話なんだーと知りました。パラレルの発想はもう、昔読みふけっていたSFジュブナイルの影響ですね。考え出すとパラドックスに迷い込みます(笑)
かっとびお嬢、受け入れてくださってありがとうございます(笑)
そうですね、この世界、悦子さんが生きていることで歯車狂ってる部分があるので、きっとかなり間の抜けたことしてしまったのでしょう……(..)イタキスキャラは大泉サイド以外全員見事に誰も直樹の気持ちに気付かないうっかりさん。悦子も例に漏れず。きっと娘の危機に関しては敏感に察知するのに、それ以外はかなり鈍感かと……f(^^;沙穂子さんの本性見抜けない人の良い方なのですね……
そう、やっぱりサイテーなのは直樹さん。でも抱けないのは相手が琴子じゃないから!……ということにも気がつかないほんと間抜けな奴なんですね……
そうそう、琴子ちゃん、6年もたっていい大人になってると、どうにも簡単に流されない気がして。沙穂子さんに対する態度も、そして直樹への対応も、凄く清廉で常識的で一番大人。そんなイメージなんですよ。
確かにあちらの世界の琴子のことを考えるとまた一つ話がかけてしまいそうなくらい、ドタバタしてそうですが、今のところあちらの琴子ちゃんを掘り下げるつもりはないのです。(また話が長くなる……^_^;)それでもなんとかどっちもすっきりさせたいですね。

ふふ、そうですねー。なんやかんや実はどの世界でも、入江君が一番偏執的に、ねちっこく琴子を愛しているのですよね(^w^)どの世界でも!

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個別記事の管理2016-01-17 (Sun)




またまたむじかく様からお話をプレゼントしてもらっちゃいました。

前のお話でちょっとしたジョークで次回『愛と哀しみの関門海峡』を待て!と書いたら、それにツボっていただけまして、アップした二時間後に書いていいですか?とコメントが! そして、その日のうちにもうお話が届きましたのよ。
ああそのさくさくと文章が浮かぶ頭脳とタイピングできる手が私も欲しいです(/。\)





というわけで、
むじかく様の『愛と哀しみの関門海峡』をどうぞ。

あ、うちのお話のタイトルパロディというだけで、特に繋がりはありませんので!
ご了承くださいませ。

因みに私の方はあくまでジョークで、このタイトルでお話は書きませんので、悪しからずf(^^;


あと勝手にラフなラクガキですが挿絵挿入させていただきました~~f(^^;







※※※※※※※※※※※※※※※※





あたしはもう入江くんを忘れた。

出会って4年、片思いの最終ピリオドは入江くんと沙穂子さんの婚約。

お見合いを受けた時から決まっていたシナリオに・・・あたしがどう頑張ったって太刀打ち出来るハズがなかった。

入江くんなんて見合い写真で一目惚れしちゃうくらい好みだったんだから・・・あーダメだ。涙が出てくる。

海の潮風で泣けるって本当なんだね。

しょっぱいや。

ふふ・・・もう塩気も感じるし、涙が流れている感覚も分かる。

入江くん家を出た時は分からなかったから。

もう・・・泣いて、泣いて、泣いて、一生分の涙を全部流したって思ったけど、意外とまだ出ている。

入江くんならきっとこの原理が分かるんだろうな。




ああ、また考えている。

お見合いかぁ・・・。

あたしもしようかな。

27歳なんて結婚適齢期。

理美なんかママになってるし・・・あたしだけ未だ独り身なんて。

お父さんがあたしには九州男児が合ってるって言ってた。

今日せっかく来てる事だし、探しちゃおうかな。

いつまでもメソメソしてたって始まらないもんね。

・・・始まるって何が??

どっかに入江くんみたいな人、居ないかな。

顔が良くて、背が高くて、頭が良くて、スポーツ万能で・・・でも性格だけは良くてあたしだけ愛してくれたら・・・。

それが無理だったから、こうしてこんなところに居るのに、ほんとバカだあたし。

ほら、入江くんだって呆れて―――

「琴子!!」

今、あたしは信じられないものを見ている。

い、い、い、入江くん!?

「琴子!!」

思わずキョロキョロして沙穂子さんの姿を探してしまった。

ああ、良かった。夫婦では行動してな・・・「琴子、お前どうしてここに」

はっ そうだった。あたしは入江くんに会っちゃダメな人間なのよ。

だって、だって、だって、未だに入江くんの事を忘れられなくて・・・こんなに大好きで・・・もうダメ!!

あたしは入江くんの前から走って逃げ、電車に飛び乗った。

「さよなら、入江くん・・・あたしは貴方に相応しい女性じゃない」


「琴子!!」

顔を上げて見ると鬼の形相な入江くん。

そ、そ、そ、そんなに怒らなくたっていいじゃないっ

「さよならってなんだよ」

だって、だって、だって・・・あたしは入江くんを忘れる為に・・・ふぐっ

キ、キ、キ、キス――――ッ

いやん、そんなに舌入れて・・・はぁ・・・んっ

入江くんのkissに撃沈したあたしを入江くんはベッドに押し倒して・・・ってあたしマッパーーーーー!!

「さよならって何だ!? 今日は二人揃って休みだから朝までしてたけど、なんつー夢見てんだよ、お前はっ」

入江くんに怒鳴られてあたしは気付く。

「ああ、夢だったんだ。すっごいリアルだったんだけど・・・」

そう言ったら入江くんが嫌そうに「忘れさせてやる」って。

あたしの首に噛みつく様にkissをして痕を付けた。うう、痛いっ

これも幸せの痛みってヤツ??

それから入江くんの熱に翻弄されて・・・起きた時には立てないくらいで・・・優しくお姫様抱っこしてくれるのは嬉しいけど、明日病院行けるか心配になる。

病院に行くのは仕事の為であって、こんな状態を診察してもらう訳じゃないのよ。

入江くんお医者さまだし・・・ね。

なのにこの加減の無さ!!

あたしが一体何したの??

確かに夢見は悪かったから、入江くんに抱きしめてもらえて、入江くんと・・・お、思い出したら顔が火照る。

夢も綺麗さっぱり忘れた様な・・・でも、何か大事な事を・・・

「ねえ、入江くん」

あたしは入江くんに問いかける。

「あたしと結婚したいって思ったの・・・いつ!?」

あたしにしてみたら大胆だったのかもしれない。

入江くんが珍しくコーヒーを噴いた。

そしてお義母さんが「ビデオ持って来るからちょっと待ちなさーーーいとお義母さんの部屋まで駆けていったみたい。

入江くんはガタッと席を立ちあたしに近づいて俵抱きする。

えー!? さっきはお姫様抱っこだったのに~~~

そして寝室に戻され、「まだ夢みてる様だな。おれがしっかり起こしてやるよ」と・・・ひ~~~

入江くんに捕食され、あたしはその日一日をベッドで過ごしたの。

酷い・・・休日なのに。

「デートしたかったな」

「門司港レトロまでか!?」と入江くんは聞く。

「えー、なんで分かったの!? 以心伝心??」

あたしが喜ぶと「そうしといてやるよ」って言いながら入江くんが優しいkiss

そしてあたしの耳に囁く。

「昨日おふくろとテレビの特集見て行きたいって騒いでたのはお前だろ、琴子」ってね。

そーでした。てへっ

あたしは入江くんに「行こーよぉ」と縋る。

残念ながら掴む服がないから恥ずかしながら腕に。

入江くんは「・・・その内な」と珍しく譲歩してくれた。

ボソッと「佐賀にも行かないといけなくなりそうだし」と言ったけど、何かあった??

ああ、そういえばメグちゃんが結婚するんだっけ。

お見合いで・・・あっ と夢で見た事を思い出す。

「入江くんって沙穂子さんに一目惚れ・・・」

「な訳ねーだろ」とあたしの頭を医学書で叩いた。

軽くだけど、痛いよっ

「だって・・・」って涙目で言ったら、入江くんがまさかの一言。

「俺、あの頃の記憶はお前との事しか覚えてない。お前の掃除のおばちゃんルックが似合い過ぎて記憶から消えないんだけど」

「嘘ーーーーー。消してーーーー」

青ざめて叫んだあたしに入江くんは笑ってkiss

「いい加減、俺の妻は自分だって自覚持てよ」

「はい、旦那様」

あたしは入江くんの胸にもたれてそう返事をした。




* * *

何回したのか(^^; by むじかく






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No title * by なおちゃん
何だ!!最初のは、夢だったのね?入江君は、実は、最初から、琴子ちゃんが、気になって、仕方なかったんじゃないかて、思うけど?いつまで<たっても、自信のない、琴子ちゃん、かわいすぎ、入江君の、コーヒー吹き出すの、見てみたい気がするな?あは。v-10

直樹バージョンが読みたいです * by サービス
いつも楽しく読ませていただいています。
むじかく様のサイトにもいつもお邪魔して読ませていただいて
いるのですが、このお話めちゃくちゃ好みです♪
寝ぼけてとはいえ、琴子にさよならを言われて激怒する入江くん
なんて好物すぎます~~!!
是非是非直樹バージョンも読みたいです!!

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

はい、本当に流石、なのです(笑)

おお、真知子巻き、よくご存知で! いえ、私も鈴木京香のすら知りません。佐渡島が舞台って、絵を描くのにウィキで調べて初めてしりました。

哀愁漂う切ないバージョンだけではあんまりなので幸せバージョンの落書きもいれてみましたの(^_^;)

そうですね、あの、デート計画プランを見ると、琴子は無駄に完璧な門司から佐賀への旅行計画立てて、全部無視されて撃沈しそう(^w^)で、1つくらいは叶えてあげなきゃな、って『ホテルで一泊、あまーい夜』だけ乗ってあげるとか(笑)

ふふ、旅行計画立てる前に抱き潰されて動けないのは、お約束でしょうね♪







Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

私のちょっとしたジョークを拾ってくださって、あのタイトルでお話さくさく作っていただいちゃいました。

本当に流石です(^w^)

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そう、夢だったのですよー♪
そうですね、きっと自覚がないまま、いつだって琴子のことが気になっていたのだと。いつまでたっても自信がなくて、そんな夢まで見てしまう琴子ちゃん、ほんと可愛いですね(^w^)

Re.サービス様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

めっちゃ好みなのですね(^w^)私もです。
直樹バージョンのリクエスト、むじかく様に伝えておきますね(^-^)v

Re.ちゃみ様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

フフっ、本当、イリコト最高ですね(^w^)

Re.ねーさん様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

いえいえどういたしまして。あんな楽しいお話に、かなり雑な落書きで申し訳なかったです。アップから1日猶予をもらったのは落書きの為でした(^_^;)
あんなので喜んでいただいて、恐縮しきりでございます。もうちょっと昭和の映画ポスターちっくに描きたかったのですが……(..)

個別記事の管理2016-01-14 (Thu)




更新、だいぶ間が空いてしまいました。
年明けから仕事で新しいことを覚えなくてはならなくて………慣れないPC入力に悪戦苦闘し(ほら、私、パソ子じゃ一本指でしか文字打てないものでっ泣)すぐに忘却してしまう劣化しまくりの脳ミソを駆使しているせいか、家に帰ると頭うにうにで疲れきって直ぐに眠くなってしまうのでした……(._.)スマホに向かっては寝落ちする毎日(/。\)

いえまあ。
沙穂子さんにも悪戦苦闘しましたけどね(笑)
真っ黒お嬢な筈がただの可哀想なヒトになってしまった気がしますが………(^_^;どんなんでもOKという心の広い方のみ続きからどうぞ♪





※※※※※※※※※※※※※※※




「駅までお送りするわ」

そう云われて思わず一歩引いて躊躇してしまった琴子だが、黒服の男たちが外に出て、有無を言わさぬ気配でドアを開けられ、仕方なく車に乗り込んだ。

ブランドのスーツに身を包んだその女性は、昔の記憶よりも随分髪を伸ばしているようだ。ふんわりと綺麗にウェーブのかかった栗色の髪は琴子と同じくらいの長さがある。
甘い香水の薫りが椅子に座った途端、つんと鼻腔をついた。
いい薫りなのだろうけれど、少し苦手だ、と内心思う。長時間乗っていたら、きっと酔ってしまうだろう。

「 あ、あの、ありがとうございます。東京駅までお願いします」

「ええ。でも、その前に少しお話できるかしら?」

「え?」

琴子がきょとんと沙穂子の顔を見つめたあと、視界の片隅に、ベンツのハンドルが東京駅とは反対方向の左に回されているのが見えた。

「ちょ………困ります! あたし、直ぐに秋田に行きたいんです。今すぐ行かないと………!」

母の顔を見てとんぼ返りするつもりなのに、間違いなく間に合わなくなる。

「 大丈夫よ。自家用ヘリで目的地まで送って差し上げるから」

「へぇ!?」

予想外の回答に素頓狂な声をあげてしまう。

「だから、付き合ってちょうだい。ほんのすぐ近くなの」

ふふっとにこやかな笑みを浮かべた顔は優しいけれど有無を言わさない。何となくぞわっと背中に悪寒が走る。

「沙穂子さん、でも……」

「ほら、もう着いたわ。ここで話しましょ」

本当にすぐだった。

「此処って」

近い筈だ。
ロイヤルホテル。
昨夜琴子が泊まったホテルーーエスカレーターでもう一人の琴子とすれ違ったあのホテルだったのだから。

「部屋を取ってあるの。来て」

最早拒否権は全くないようで、沙穂子のボディーガードとおぼしきサングラスに黒服の屈強な男たちが、琴子の両脇に立って歩みを進めるよう促していた。

何だか拉致されてる気分なんだけど……?

助けを求めるように実はすぐ近くを歩いているノンちゃんの方をちらりと見るが、「手は出せないよ」とばかりに両手をあげる。



「こちらへどうぞ」

「ここって………」

案内された部屋は昨夜直樹と泊まった部屋だった。
見覚えのある室内。
大きなベッド。綺麗にメイクされているが、シーツを激しく乱れさせて泳いだ昨夜の情事が思い出され、少し顔が熱くなった。
けれどその時間が何だか遠い昔のようにも思える。
現実だったのか、夢だったのか。
同じ部屋、同じ場所としか思えないけれど、ここではない違う世界なのだというのもひどく非現実的でーー自分の存在すら曖昧で心許ない。

「そうよ。あなた、昨夜、直樹さんとこの部屋を訪れた………でしょ?」

「ええ~~~!?」

仰け反りそうになってしまった。

「な、なんでそんなこと知って………いえ、ちょっと待って? えーと、こっちの琴子は……じゃなくてあたしはここに泊まったの?」

何故その事実を彼女が知っているのか、とか。
もう一人の琴子はやっぱり此処で直樹と一夜を過ごしていたのかーーとか。

いや、でもノンちゃん、琴子、バージンって言ってなかった……!?

いろんな意味で琴子の頭は一瞬のうちに錯乱してしまった。

「何をおっしゃってるの? 琴子さん。自分のこと、覚えてないの?」

不審げに眉を潜めて問いかける沙穂子に、
「 えーと、ごめんなさい、エスカレーターから落ちたショックで少し記憶喪失に……」と、とりあえずなんとか誤魔化す。

「ああ、そういえば、そうだったわね。お身体は大丈夫かしら? ………って、すぐに退院してるのだから大丈夫ってことよね?」

とても心配してるとは思えない春のような微笑みを返しながら、ふんわりと問う。

「ええ、身体の方は、何とか……」

戸惑いを隠せないまま、促されてソファに腰を掛けた。

「無事で良かったわ。私もあなたが突然エスカレーターから倒れ落ちた時にはどうしようかと思ったもの」

「え? 沙穂子さん、あそこにいたんですか?」

「救急車呼んだの、私よ……というか、ここにいる片瀬よ」

黒服の一人が無表情のまま微かに首をこくりと振った。

「ええーっ !そ、それはどうも………あれ……? でも、何で?」

何故、彼女があのホテルにいたのか?
しかも朝、そこそこ早い時間だった筈である。

「だって、あなたが東京に着いてからずっと後を付けてたんですもの」

「ええーっ! ストーカー!?」

「琴子さんにストーカー呼ばわりされたくありませんわ。この資料によると、琴子さんの方がどう見ても筋金入りのストーカーじゃありませんか」

「どの資料?」

沙穂子がバッグから取り出したB4サイズの茶封筒をじっと見つめた。

〇〇調査会社ーー

ちらりと封筒に印刷された文字が読めた。

「調査会社って……つまり探偵屋さん……?」

「結婚前からも、結婚後もあなたの動向は調査させていただいてますの」

「はい……?」

沙穂子の言動に茫然と言葉を失う。

「それはそうでしょう? 自分の見合い相手の家に年頃の女性がずっと同居しているのですもの。だいたいお義母様だって見合いの席でとんでもないこと仰るし。だから、あなたのこと調べさせて、あなたが一方的にストーカーのように追い回していることは知っていたの。
とはいえ、調査書にはなかったけれど、直樹さんの態度から、何となく直樹さんにとってあなたがどういう存在なのか少しわかりかけてはいたわ。そして不安だった。ま、だから色々と手は打ったのだけれど」

「ええっと……?」

彼女の言葉の意味がよくわからない。

「あなたたちご一家が下関に引っ越された後も、向こうの調査会社にあなたの様子を報告するよう依頼してたわ。直樹さんもね。彼の秘書には逐一その日の行動を報告させてましたの。だって、結婚した後に二人が会っていたらイヤでしょう?」

そんなの当たり前よね? といった風に琴子に目で問いかける。

「そ、そんな。入江くんを信用してなかったんですか?」

「信用………? そうね、私の夫に相応しくない振舞いはしないという信頼はありましたけど……でもよくわからないわ」

「??………」

「……私たちは結局、一度もちゃんとした夫婦にはなれなかった」

ぽつりと呟く彼女の言葉に、ノンちゃんが云ってたことは本当だったの?ーーとぼんやり思う。

「 直樹さんの心にあなたがいるとわかっていて結婚を強行したのですもの。直樹さんだって、結局は私を選んだ。ならばいつかはちゃんと心が通うことがあるかもと願ってました」

悲しそうに瞳を伏せる。

「琴子さん、直樹さんとキスしたことありました? 同居してた時に。さすがに調査会社の資料にはその辺のことはわからなくて」

唐突に訊ねられて何を問われたのか一瞬戸惑った。

「ええ? いや、それは………」

あるにはあるけれど、1度目も2度目も微妙な感じで、それを上手く説明する自信もない。(2度目は記憶すらないし)

「もしかしてお義母さまがおっしゃるような、そういうご関係でした?」

「それはないです!」

そこはきっぱり即答。

「そうでしょうね。だって、直樹さん、そっちの方は………ダメなのでしょう?」

最後の方は小声で、つい三回ほど聞き返してしまった。

「はい……?」

何を言い出すのか、このひとはーーと思いつつーー

そういえばあたしもが入江くんをホモだと疑ったことがあったよね、と雪の日の夜を思い出した。

「結婚前、手すら握ってくれないのは、ただ紳士なのだと思ってました。キスくらい良いのにと思っていたけれど、結婚式が初めてのキス、というのもロマンチックで素敵だわと胸をときめかしておりましたの。なのに、あんまりじゃありませんこと? 結婚式ではキスもあと1センチで寸止めなんて! ゴージャスなレースたっぷりなヴェールで上手く隠して! 披露宴でのキスコールには全く聞こえないふりをしてスルーですのよ。場の雰囲気は台無しでしたわ」


そ、そうなのね。

琴子は何と云っていいのやら、複雑な心境だった。

自分の世界では、結婚式の祭壇の前、琴子からキスをして「ザマーミロ」と笑ったのだけれど、その後は牧師が何度も咳払いをするほどの長い時間、直樹からキスをされた。

あ、でも披露宴は私も最悪だったから、安心して、と心の中で意味不明なエールを送る。


「………ハネムーンのパリでは、昼間は美術館や博物館巡りで楽しかったのに、そのせいで、疲れたとすぐに寝てしまわれるし、向こうで一緒になった新婚夫婦がお医者さまカップルで、とても難しいお話を毎晩語り合って飲み明かしていましたわ、ハネムーンなのに! とうとう何事もなく過ぎてしまいました。 そして1ヶ月、会社を建て直すまでは忙しいからと殆どマンションに帰って来ませんでした。
私はずーっと放置されたままだったのですわ」

「さ、沙穂子さん……」

沙穂子の話に、琴子はつい己のことを思い出していた。

「わかる! わかるわ! ハネムーンの後に放置って辛いわよね。一体あたしは何なの?本当に結婚したの?って絶望的な気分にもなるわよ! そーなの! 入江くんってそーゆー冷たいところが昔からよくあったわー! あたしもどんだけ泣かされたことか……」

思わず立場を忘れて共感する琴子に、沙穂子は眉を潜めた。

「あなたに何がわかるというのです?」

「それがわかっちゃうのよ~~」

と、がしっと手を握って、おいおい泣き出す琴子に毒気を抜かれたように、沙穂子は少し落ちついた。


「詐欺ですわよね。結婚前はあんなに優しかったのに。いえ、結婚後も優しいのです。会えば丁寧に対応してくださいました。ずっとそんな感じで慇懃で他人行儀で。
でも、私は自分の理想の結婚生活を目指してたゆまぬ努力をしましたの。
多忙過ぎて倒れるのではと心配して初めの頃はお弁当を持っていったり、一生懸命健康と栄養を考えた手料理を準備したり……それはそれは頑張りましたの、私。
お弁当の重箱、綺麗に平らげられてると喜んだら、職場で全員に配られたときいて少しがっかりしました。
滅多に家で食事できないから、もう料理は準備しなくていいとも言われてしまいました。
でも、父も祖父も仕事優先で家庭を省みる人ではありませんでしたから、やはり日本の経済を担う企業人と言うのはそういうものなのだと自分を納得させてました。
そして、本当の夫婦になる気配もなくてーー。
マンションの寝室は、遅くに帰ることが多いからと最初から別々でした。
何度か私なりにアピールもしましたのよ。
でも、結局彼が私の部屋を訪れることは一度もありませんでしたの。
まさか……まさか、よく女性誌の見出しにあるような事態が私に訪れるなんて思いもしませんでしたわ。
結婚前、デートをしてても紳士で、色事に関しては淡白な方だとは知っていましたけれど…………まさかあんなに完璧な方が男として不能なんて………!」

ふう、と、目を伏せてこめかみを押さえる。

ーーええと、入江くんが不能? 淡白?

いや、どっちかといえば絶倫だし……めっちゃ毎日濃厚だし……

思わず云いそうになって慌てて口を塞ぐ。

琴子の知っている直樹とは全く符合しないし、女として沙穂子がひどく可哀想だとは思う。
思うけれど、でも。
入江くん、沙穂子さん、抱いたことないんだ。
別の世界の直樹でも、やっぱり他の女を抱いていると知るのは辛い。


「私は密かに色々いい病院を調べて、何とか受診するように遠回しに促したりしましたのよ」

「へ?」

「今ではいい薬も色々あるようだし」

「……………」

「女相手がダメなのか、誰でもダメなのか、何にしろ直樹さんの方に色々問題があるのだと思っていたのに、今さらあなたと浮気なんて」

話がぶっ飛んだが、いきなり自分のことに及んで怯む。
否定したいが、真実はわからない。
とりあえず天の声を信じるなら、何もない筈だ、と、ちらりと実はちゃっかり琴子の隣に座っているノンちゃんを見つめるが、彼は澄ました顔のまま何も云わない。

「………いいのよ、浮気なら。私だって大泉の家に育った以上、夫に妾の一人や二人いるのは当たり前だと思ってますもの。盆暮れに妾宅にきちんとご挨拶に行くくらい妻の務めだと理解してますから。でも、琴子さんだけはイヤでした」

じっと琴子を見据える。

二人の間にいやーな緊張感が走り、居心地がさらに悪くなる琴子である。

「………ごめんなさい、話が前後しましたわね。
とにかく、直樹さんとは形ばかりの夫婦として2年ほど過ごしました。私としては一緒にいるだけでも幸せだったのに、2年の間に共に過ごした時間って、1週間分もあるのかしら? というくらい少ない気もしましたわ。
それくらい彼は家に寄り付かなかった。
秘書の報告から彼は本当に仕事で忙しいだけというのはわかってました。女の気配の欠片もないって。
仕事の鬼のように、猛然と仕事に打ち込んで、それ以外の全てを遮断するような生活をしていました。
安心はしましたけれど、淋しいのは変わりありません。
いつか会社が安定したらきっともう少し落ち着いて生活が出来ると……ずっと……彼がちゃんと家に帰り、新婚生活をやり直せると信じて待ってました。
でも、2年過ぎたころ唐突に離婚を切り出されました。
海外進出の基盤を作るから当分日本に帰れないからと。あなたを戸籍で束縛しているのは申し訳ない、自由に生きて下さいーーって私、本当に意味がわかりませんでしたわ。
だって夫が海外に赴くなら付き従うのが妻の努めじゃありませんか。私なら海外での生活の経験もありますし、英語もフランス語も大丈夫。是非、連れて行ってくださいとお願いしたのに、ずっとホテル生活だし、危険な地域も行くから連れていけないと。何年も帰ることができないないので、放置することになってしまうから………などという言い訳を聴いて私笑ってしまいましたわ。
2年放置されているのに、何を今更って。
結局海外赴任に付いていくのは辞めました。やはり、遠い異国で独りぼっちで帰らぬ夫を待つのは不安ですもの。事実上の完全別居婚ですわ。けれど、離婚は承知しませんでした。
だって、別れたら直樹さんがあなたの元に行って再婚するのがイヤだったのですもの。直樹さんは離婚届に判を押して旅立っていかれたけれど、私は出しませんと伝えました。特に、もし琴子さんに会われるなら絶対に、押さないからと話しました。
その時、直樹さんは心底驚いたような顔で言いましたの。『なんでそこで琴子の名前が出るのかわからない』って……私の方が驚きましたわ。直樹さん、いまだ自分が琴子さんのこと想ってるって気付いてなかったってことに」

「……え?」

「……もっとも気がついていないから私と結婚できたのでしょうけれど」

「どうして、そんな風に思うんですか?」

「たまにしか一緒に過ごしませんでしたけれど、その短い時間の中でも、直樹さんが常に琴子さんの姿を捜しているような気配を感じたのです。何かを見てふっと普段見せないような微笑みを見せた時………どうにもあなたを思い出しているのではという気がしてーー」

例えば長ネギ料理。
滅多に食卓についてもらえませんでしたが、一度長ネギのマリネを作ったんです。焼いたネギをマリネソースに漬け込む、ちょっとした前菜ですわ。
そしたらしみじみとそれを眺めて微笑んでいるものですから、てっきり長ネギがお好きなのかと。それからあらゆる長ネギレシピを研究しましたのに、結局あまり口につけてはもらえませんでした。
別に好きなわけではないと言われました。
もしかして、あなたを思い出す何かがあるのかしらとその時初めて疑いました。

センター試験のニュースを懐かしそうにご覧になっていたり、会社が提供している戦隊もののビデオをぼんやり視聴されていたり。

なんだかあなたが隣にいるような錯覚が時折してしまいました。

ーーだからーーイヤなんです。

琴子の顔をキッと見据えてはっきりと云う。

「あなたとだったらそれは浮気にならない。きっと本気だから。そう思ってました。 だから彼があなたと会うのだけはイヤだったんです」

「………沙穂子さん……」

「本当に馬鹿な人。私が言ってもあの人は自分が誰を思っているのか気がついてなかったんですもの。
実際、別居して3年、海外に行くと言いつつ私のように探偵を使ってあなたを探させるかと思いきや、実際3年間ずっと世界中を走り回り1度も日本に帰らなかったようですわね。
お陰でパンダイは上場し、株も高騰、海外展開も順調でこの業界のトップクラス。祖父の会社も今世紀最大の業績を上げて、直樹さんの手腕に感服して、私の愚痴など聴いてもらえなくなりました。
そして半年前にようやく日本に戻ったのに、あの方は1度も私のところには来ませんでしたわ。すっかりその存在を忘れてしまったかのよう。
そして、日本に戻った途端、会社を辞めて医学部に入りなおしたとか。ええ、無論私には何も………
あ、これ全部調査会社の報告によりますの。私たち、別居してから3年、1度も会ったことありませんから」

何が可笑しいのかくすくすっと笑う。

「そして、3年間、1度も離婚届を出したかどうか確認の連絡もありませんでしたわ。ご自分の結婚が継続されているかどうかすら興味もないのね…………あら、また泣いてらっしゃるのね。どうしてあなたが泣くの?」

「何だか、可哀想。あなたも入江くんも………」

鼻をずるずる啜りながら、琴子はハンカチを目に押し当てていた。

「同情はまっぴらですわ。特にあなたからの」

「探偵を雇って逐一報告させるくらい、まだ入江くんのこと、好きなんですね………」

琴子の言葉に、「……好きでしたわ。とても。……いいえ、わからない。あなたの好きと、私の好きは何か違うもののような気もしますし」
そうぽつりと答えた時ーー

琴子の鞄から、電話の呼び出し音が鳴り響いた。

「ひえっ? 何?」

「携帯電話の音じゃありませんこと? 出られても結構ですわ」

「携帯? あたしの?」

バッグの中を探すと、確かに暗いバッグ内を携帯の灯りが照らしていた。

「やだ、こっちのあたしって、なんで携帯なんて持ってるのよー!あたしは未だに持ってないのに」

あたふたと携帯を出すが今一使い方がわからない。もたもたしている間に切れてしまった。

「お父さんからだ……」

そういえば父には後から店に行くと言って何の連絡もしていなかった。
電話をかけ直そうと少し悩む。使いなれなくて適当にボタンを押したら着歴の一覧が見えた。

「え………?」

着歴には、父の他に、入江直樹という名前がたくさんあった。

(入江くん…………)

ここ1ヶ月で急に連絡が来るようになっていたらしい。
しかし、自分の発信履歴には、彼の名前がないので、殆ど向こうから電話がかかってきていたようだ。

父に電話をかけようとモタモタしていたら、部屋の扉がノックされて突然ボーイがワゴンを持って入ってきた。

「ああ、ルームサービス頼んだの。ここのアフタヌーンティは絶品よ」

ワゴンの上にはよくテレビで見たことがあるような、三段のティースタンド。
サンドイッチやらプチケーキやらスコーンやらが美しく盛られていた。
ポーイが丁寧にティーポットから紅茶を注いでくれる。

「あ、あの、でもあたし………そろそろ……」

「お送りしてあげるといっているでしょう? もう少し私に付き合ってくださらない?」

「えーと、でも………」

「私、どうしても確認しておきたいの。1ヶ月前あなたと直樹さんが再会したのは偶然だと知っております。たまたま北九州の学会に訪れて再会されたのだと。
ただその後、何度もそちらに直樹さんが押し掛けたのは必然ですわよね? でも、あなたは会うことを拒否して追い返してる。何故ですの。もう、あの人のことを忘れてしまったから? 」

「 それはーー」

………あたしってば入江くん追い返してるの?

内心驚きつつも、その行動に納得するものもある。

自分はもう一人の琴子じゃないから、その真意は違うものかもしれないけれど、それは多分ーー

「忘れられるわけないじゃない。そんなの、絶対。忘れられないけど、あたしが会おうとしなかったのは、入江くんが結婚している人だったからに決まってるよ」

いくら別居していたって、沙穂子さんと結婚している以上、好きになってはいけない人だ。
そんなこと、当たり前。

「………離婚届が出されたかどうか気にもしてなかった直樹さんが、初めて区役所に確認に行ったようで、私にも3年振りに連絡をとってきたわ。ーー離婚届をそろそろ出して欲しいって」

紅茶のカップを優雅に口許に運びながら、世間話と変わらないように、自然と話をすすめる。

「…………ひどい」

「何がひどいの? ずっと離婚届を出さずにいたこと? いやな女と思うでしょうね。でも………」

「違うわ! ひどいのは入江くんよ! 沙穂子さんにずっと辛い思いさせて、一体女をなんだと思ってるの!? 」

涙を一杯溜めて激しく憤慨する琴子に、呆気にとられた沙穂子は、危うく紅茶を溢しそうになった。

「何故、あなたが怒るの?」

「怒るわよ! 沙穂子さんだってもっと怒っていいと思う! なんなら慰謝料踏んだくってやっても………」

「もし、あなたと直樹さんがそういう関係になったら、私、あなたに慰謝料請求しようと思ってました。それを待っていたのに、あなたは決して直樹さんを受け入れようとはしない………でも、あなたが東京に来ると聞いて、ずっと張ってましたの。二人でホテルで食事したあと、部屋に入っていって………いよいよかと思いきや、1時間ほどで直樹さんは出ていってしまうし。結局一晩見張らせたけれど、直樹さんは戻らなくて、あなたは部屋に一人………朝早くチェックアウトしたと思ったら再び戻ってきてエスカレーターから落っこちて……一体、何があったのかしら…………」

へーそうだったんだー。

普通にびっくりしてしまう琴子である。
けれども何があったのか知りたいのは自分も同じで。

そ……それは………私が訊きたいです……


そんなことを思っている間に再び携帯の呼び出し音が鳴り響いた。
今度は慌てず、ちゃんと出ることが出来た。

「お、お父さん? ごめんね、心配かけて。今ちょっと、友だちと会ってて………違うって! 入江くんじゃないからーーもう、信用してよ!
え? お母さん? 来るの? こっちに?
夜行バスで……えーっと、明日の朝の7時着だね。分かったよ。うん」

結局、心配で居てもたっていられなかったのか、悦子は夜行バスで東京に向かうらしい。

ある意味、琴子と行き違いにならなくてよかったというべきか。

「うん、しばらくしたらふぐ吉に行くから……だから、本当に入江くんじゃないって~~~もっと娘、信じてよ~~っ」

ーーとにかく、おまえ、まだ調子は完全じゃないだろう。さっさと帰ってくるんだ………へい、らっしゃい!

電話の途中で誰かお客が来たらしい。ふぐ吉の店の電話からかけてきたのだろう、周囲のざわめきが漏れ聞こえていた。

「じゃあ、切るよ、お父さ……」

ーーご無沙汰してます、おじさん

ーー直樹くん!?

「ええーーっ」

受話器の向こうで直樹の声がして、そのままがちゃりと切られてしまった。

「ちょ………ちょっと待って……お父さん!」

ツーツーツーと機械音しか響かない携帯に向かってつい大声を出してしまう。

「どうかされました?」

沙穂子が近くに居たことを思い出して、「えっと。いえ、なんでも………」
慌てて誤魔化す。

「えーと、父が心配しているので戻らなきゃ……」

直樹と重雄が会っているというのがすごく気になる。飛んで帰りたい。
………というか、直樹に会いたい。
こっちの世界の直樹には色々物申したいことが山盛りだ。沙穂子さんの話をきいて、あまりにも感情のない直樹の所業に愕然としてしまった。

こっちの直樹は沙穂子さんを選んだ筈なのに。自分で選んだクセに。
なのに、自分で結婚生活を破綻させてしまって………
あんまりだーー。
きっと、こっちの琴子も随分辛かったろうし。
二人の女を不幸にして、なんて酷いヤツなの!

そう憤慨する一方で、やっぱり顔が見たい、会いたいって思ってしまう。

「じゃ、あたし………」

立ち上がろうとした琴子の腕を、沙穂子ががっしりと掴んだ。

「ダメよ。帰さないから」

ええーっ 沙穂子さんっ目が怖いっ!

琴子は思わず身を一歩引いてしまう。

「いえ、でも………」

「人の話ばっかり聴いて自分のこと話していらっしゃらないわ」

いや、それはあなたが一方的に自分のことばっかお話になられてるだけで!
あたしは自分のことは何も話せませんから~~~

じりじりと逃げようとする琴子に、沙穂子はふふっと笑って宣言した。

「さあ、今夜は飲み明かしましょう」

「はい?」

「片瀬! あれ持ってきて!」

扉の前にたっていた黒いスーツの長身の男が、すっとケースの中から一本のワインとソムリエナイフを出して、流麗な手技で栓を開ける。

「ロマネ・コンティよ。お祖父様のワインセラーからいただいてきたの。あ、勝手にね。結局は私より仕事の利益を選んだお祖父様へのささやかな復讐なの。さ、どうぞ」

綺麗な葡萄色の液体が片瀬と呼ばれた男によってワイングラスに注がれる。

「このグラス一杯で5万くらいするのよ。さあ、飲んでちょうだい」

「いえ。あたしお酒は………」

「あ、おつまみも欲しいわね! 片瀬! 何か頼んでちょうだい」

「かしこまりました。お嬢様」

「さあ、乾杯しましょ。付き合ってくださったらこれあげるから」

沙穂子は楽しそうにバッグから一枚の封筒を出した。

「ご覧になって? あとで差し上げるから」

琴子が中味を確認すると、それは離婚届だった。
直樹の署名も沙穂子の署名もあった。

「沙穂子さん………これ」

「さあ。付き合ってもらえるわね? かんぱーい」

沙穂子はかつんと勝手に琴子のグラスに重ねると、ぐいっと高級ワインを一気に飲み干す。

「沙穂子さん、そんな飲み方……」

「あなたワインの飲み方云々言うほどワインのことわかってらっしゃるの?」

「いえ………」

「じゃあ、あなたも飲んで」



そして、僅か30分後には酔っぱらいの女二人、ホテルの一室でエンドレスに愚痴を言い合っていたのだったーー。











※※※※※※※※※※※※※※※※



『コトサホでサカモリ』

何だかお笑いのお題のようなフレーズが頭から離れなくて笑

琴子とお嬢が酒飲んでくだ巻いてる話はさすがに読んだことはないなーと。

いや、しかし、私、限定でなくフツーにアップしちゃっていいのかな? と、ちょっとどきどき(^_^;) こんな沙穂子さんの一人語り、誰も読みたい人はいないでしょうが、つい書いてしまいました。
イリサホや黒お嬢様は諸先輩方の名作がありますので、類似品になってしまうのは否めませんがf(^^;
しかし、苦戦………。
沙穂子さん絡むと精神的にキツくなるわね~~~(._.)

しかも、なんだよこの直樹さん。ブーイング必至な野郎ですね………(ーー;)

では、次回『愛と哀しみの関門海峡』を待て!(←ウソです。書きません)







* Category : 聖夜に奇蹟は舞い降りる。
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No title * by なおちゃん
うわ~?でも、それだけ、琴子ちゃん、に、会いたかったんだろうね、沙穂子さんを、一度は選んだ、入江君だけど、それだけ、琴子ちゃんと、再会したかったんだよね,でも?沙穂子さん、怖い、入江君どう出るか>?

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうです、こんなの出して大丈夫かとどきどきのお嬢、本当に語る語る!なのです。
実のところこの世界の情況もあまり詳しく知ることもなく(タイムリミット24時間もないし)さらっと元に元に戻すつもりだったのですが、イリサホ考えてたら沙穂子さんに語らせてみたくなりました。こんな自虐ネタ、喋るかい?とも思ったけど、そう、吹っ切ったんならもう平気、気になるところは果たして本当に直樹は不能なのか?それとも琴子とならできるのかっ? あからさまには聞けないけど、実は一番気になっているという……(^_^;

乾杯と完敗、マロン様、座布団1枚!
飲み明かして、残り時間あと僅かになってしまって、どれくらい直樹さんとの成り行きを知ることができるかわかりませんがf(^^;(行き当たりばったり)

ふふ、悦子さんとは……それだけは決めているのでお待ちくださいませ(^w^)

『愛と哀しみの関門海峡』……冗談から出た駒……といいますか(^_^;な、な、なんと! お待ちくださいませ(ふふふ)

はい、私もどんな世界でも直樹さんは琴子以外はダメ!というのが大前提なので、他の女と結婚してもセッ〇スレス夫婦な筈なのですよ。そう思うと、お嬢、哀れだな……(..)



Re.pqnndq様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうですね、直樹さんが選択を間違ってしまった時点で全てが不幸になってく世界のようです。
原作では金之助からのプロポーズの話を聞いて初めて自覚したのですが、そのきっかけがないま自覚せずに、訳のわからない喪失感を抱いたまま無意識に沙穂子を避ける結婚生活してたんでしょうねー(ほんと、馬鹿だわ)沙穂子に指摘され、それでも考えないようにしていたのに再会したらもうどうにも止まらない~~のかなf(^^;?
残り時間は僅かですが、少しでもこちらの琴子に幸せの気配を感じさせてあげたいです(^_^;)

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうです。もう最初から結婚生活は無理でした。結婚式でのキスも無意識に身体が拒否したのだとf(^^;キスすら出来ないのにそれ以上は絶対無理だし、そして打開する気もないという妻から見れば最低な旦那ですね……
ほんと、ただの馬鹿者です。

客観的に考えると琴子ちゃんもついお嬢に同情しちゃってf(^^;

さて…… 直樹さんは何をしに行ったのでしょう?お楽しみに(^w^)

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Re.ねーさん様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

ねーさん様に興奮してもらったなんて、ちょっとやったー♪と小躍りしてしまいました(^^)v
くだ巻きお嬢、絶品なんて、嬉しいです。
ふふふ、プレゼントありがとうございます。今からアップします(^^)/

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

こちらも大部寒くなってきましたね。まだフロントガラスは凍ってませんが、今週は漸く雪が降るという話です。
琴子ちゃんは優しいですから、つい沙穂子さんに感情移入しちゃってますね。いえいえ、私は琴子ちゃんほど出来た人間ではありませんわー

個別記事の管理2016-01-06 (Wed)


今年もソウ様企画の年越しチャットに参加して、むじかく様、水玉様といった素敵サイトマスター様、及びイタキス大好き読者様方と新年を迎えることが出来ました。
4時間近く、夜中の2時過ぎまでお喋りしっぱなし。幸せな1年の始まりでした♪
雪掻き、年越しそば、お餅など日常の話から、慰謝料ネタからにゴルゴまで(笑)
今年は新たなゴルゴコラボが生まれるかも~~~わくわく(^w^)

………などという記事を書いていたのに、アップ出来ずに一週間……f(^^;水玉様、ゴルゴで初笑い、ありがとうございます♪

もう、子供らの学校も始まり、すっかり通常運転ですね……(..)遅くなりましてスミマセン(^_^;)













※※※※※※※※※※※※※※※※※





信じられない言葉を耳にした。


「お母さん……生きてるの?」


何の冗談だろう。
何から何まで。
思わず頭をを抱えて呻き始めた琴子に、重雄の方もさらに慌てる。

「琴子、琴子……! 今度は何を言い出すんだ? 母ちゃんは今、秋田に行ってるだろ? ほら、ばあちゃんが倒れて看病に…… 。 さっきおまえがエスカレーターから落ちたって連絡したら物凄く驚いて、すぐにこっちに来たいって云ってたんだが………やっぱりばあちゃんの具合が悪くて離れられないようなんだ。今日は退院できるかどうかわからなかったから、明日、そっちに向かうって云っておいたからな。朝イチの新幹線で秋田に向かうから。今夜はふぐ吉の2階に泊めてもらう」

「………お母さんに……会えるの…? え?
ちょっと待って、ふぐ吉は今、誰が? 何がどーなってるのぉーー!? もう、全然ついていけないんだけどっ」

半分パニックで、すがるようにずっと隣に立っていたノンちゃんに助けを求める。
ここに彼がいることの不自然さを何も言及されないということは、やはり父には彼が見えていないのか。

「ふぐ吉は今、弟子の一人が継いでいるね。金之助さんもまだいるよ。二人で大将の抜けた店を切り盛りしてるみたいだね」

メモを眺めながら淡々とこたえるノンちゃん。

「でも、なんで下関?」

「どうも、お父さんがこの道に入るきっかけになった恩人の店を引き継いだみたいだね。後継がいないからって」

ふと、何年か前、父がそんな話をしていたのを思い出した。
高校時代、家出をして世話になった人のお店が廃業するのだと、寂しそうに語っていた。
あの出会いがなかったら、多分料理人にはなってなかったから、と。

ーー何とかしてやりたいけど、下関じゃどうにもならねぇもんなぁ……

「こっちのお父さんは自分の店を捨てて、恩人の店を助けてあげたの……?」

「琴子さんのために東京離れた方がいいって、あっさり決断したみたいだよ。……お母さんの後押しで」

「…………お母さん……本当に生きてるの?」

「こっちの世界じゃね」

「琴子、誰と喋ってるんだ?」

重雄には琴子が誰もいない方に向かって一人でぶつぶつ言っているようにしか見えない。
本当にこのまま退院して大丈夫なのか? と、青ざめる。

「こんなことになるなら東京で途中下車なんかするんじゃなかった……まっすぐ秋田に向かっていれば……」

「お父さん……」

琴子は困ったように父の背中を見つめる。

「とりあえず、ふぐ吉に行くぞ。それから母ちゃんに電話して、声聞かせて安心させてやってくれ。廊下で待ってるから、服着替えろ」

「う、うん………」

重雄が出ていった後、琴子はロッカーから、自分のものでない衣服を手にして、軽くため息をついた。

「ノンちゃん、向こう、向いててよ」

着替えようと服を脱ぎかけて、思い出してキッと睨み付ける。

「……半分幽霊なのに」

「でもダメっあたしの身体を見ていいのは入江くんだけなんだから」

琴子に言われるまま一応背を向けたノンちゃんを確認してからおもむろに着替え始める。
自分のものではないセーターにジーンズだけれど、好みの色や組み合わせなのは間違いない。

真っ白な肌。
昨夜縦横無尽につけられた桜色の花はひとつもない、自分の身体を確認してまたひとつため息をつく。

「………いっとくけど、その身体、まだバージンみたいだから大切にしてあげてね」

「ええっ」

思わず着替え途中で振り返ってしまう。

「じゃ……じゃあ、入江くんとは不倫してる訳じゃ」

「まだそこまではいってないみたいだね」

メモをパラパラ捲るノンちゃんに、その中に一体何が書いてあるのかと覗きこむ。

「何よー! 真っ白じゃない」

メモを取り上げて一頁ずつ捲る琴子から、「普通の人の目には映らないの!」と奪い返す。

「……その中にもう一人のあたしの波瀾の人生が書いてあるの?」

「………波瀾というか……かなり地味な6年間だね。男っけなしで、ひたすらお父さんのお店をお母さんと手伝って。
1ヶ月くらい前に友達と出掛けた門司港レトロで、偶然ばったり直樹さんに再会して、さあ、これから波瀾の幕明けか!? という状況みたいだね」

「ひぇぇぇーー! な、なんかすごいドラマチックなんだけど………」

実感がないからある意味他人事であるが、もう一人の自分の切なそうな表情を思い出すと、胸にちくっと痛みが走る。

「無事に元の世界に戻れないと、自分がそのドラマチック引き継がなきゃなんないの、わかってる?」

「う………」

なるべく想像するのを避けていたけれど、考えると無性に怖くなる。

ーー入江くんが沙穂子さんと結婚してるなんて。



「ちょっと待って……明日の朝、秋田に向かうとか言ってたよね? そしたら、あたしもしかして」

「うん。元の世界に帰りそびれちゃうね。チャンスは一回だけ。向こうの琴子さんにも案内人が付いているから、多分ちゃんと導いてくれるとは思うけど」

「……向こうの案内人って?」

「君のお母さん。あっちは本物の幽霊だね。中途半端な僕と違って。なんにせよ生きてる人間は次元パトロールにはなれないんだ」

琴子はなんとも云えぬ表情をする。

「………あたしのお母さんに……会えてるの? もう一人のあたし」

「………ショックだろうね。お母さんが死んでる世界なんて」

母が生きている、と知った以上の衝撃だろう。

「まあ、あっちはあっちで色々衝撃的だろうけどね」

「うん、あたしはあたしで今、混乱しきってて、どうすればいいのか……」

「とりあえず、秋田に行くと戻れなくなっちゃうから、何とかここに居残るしか」

「………でも、行けばお母さんに会えるんだよね?」

「……何? 会いたい? ………そりゃ会いたいか……」

幼い頃逝ってしまった母。
記憶もあまりない。
写真でしか知らない母が、この世界では存在している。
生きていれば、幾つだっけ?
会いたい。
会ってみたい。

「明日の朝じゃなくて、今から行ってとんぼ返りって手もあるんじゃない?」

「え?」

新幹線で4時間。新幹線の終着駅からさらに1時間。

「飛行機なら1時間くらい?」

「うちの実家、飛行場まで3時間くらいかかるかも……」

それに年末のこの時期、キャンセルを待たないと乗れる確率は少ない。
そして、時計を見るともう日も傾きつつある。
時間はあまりない。

「やっぱ新幹線の方が確実かな? とにかく行って、顔だけ見て、夜行バスで帰るってのはどう?」

「う、うん」

この世界の色々なことが気になるけれど。
例えば入江くんは今、どうしているのだろう、とかーー。

沙穂子さんと結婚してる入江くん………

思考が拒否してぶんぶんと首を横に振る。

「それより、お母さん……お母さん、なんで生きてるの? 癌にかからなかったの?」

どうしてこの世界では母が生きているのだろうか?

「うーん、ちょっとした風が吹けば桶屋が儲かる的な運命のいたずらとでもいおうか」

「へ?」

またもやメモを見ながら頭を掻いているノンちゃんをじっと見つめながら、琴子はその答えを待つ。

「そもそもは昔、君たちが住んでいたアパートの隣の部屋のおばちゃんー佐藤さん、覚えてる?ーーが、三日前に貰った饅頭を食べようか捨てようかと迷ったことから生まれた別れ道なんだ」

「はい……?」

突然語りだした意味不明な話に琴子は思いっきり眉を潜めた。




とある秋の朝。
琴子さんはまだ4歳くらいかな。
その日、お母さんは区の保健センターで行っている無料の乳癌検診にいく予定だったんだ。
ところがその日琴子さんが熱を出してしまった。
お父さんはどうしてもお店を休めない。
それで、いつもよく琴子さんを預かってくれていた隣の佐藤のおばちゃんに少し見ていてくれないかと頼んだんだ。

ところが、琴子さんが本来いた世界では
隣の佐藤さん、カビの生えた饅頭、食べちゃったんだよね。それで食あたりおこして呻いていて、琴子ちゃんを預かれなかった。その為お母さんはその日に癌検診行きそびれて早期発見出来なかったんだ。
で、症状現れた時にはもう転移していて手の施しようがなかったってわけ。
でも、こっちの世界じゃ、おばちゃんが饅頭食べるのやめて、捨てちゃったんだよね。だから食あたり起こさず、ちゃんと琴子さんを預かってもらえた。お母さんは癌検診に行けて、早期発見。小さかったから胸も温存出来て、数ヵ月の抗がん剤治療で完治。五年間再発もなく、今現在も元気で夫婦仲良く店を切り盛り。

運命ってそんなささいなことで変わってしまったりするんだよね。神様って意地悪だよねー。
僕だってそうだよ。
両親が離婚するとき、どっちに付いていくかすごく迷ったけれど、その選択によって運命、めちゃ変わっててさーーま、僕のことはどーでもいいか。


「………ねぇ、それって、結局はあたしのせいじゃないの?」

琴子は茫然とノブヒロの話を聞いていた。
そして分かったことーー

「あたしが、熱を出したから…… そもそもあたしが熱を出したりしなかったら……お母さんは……あたしのいた世界でもお母さんは生きてたってことじゃないの?」

「違うよ。琴子さんのせいじゃない」

涙を潤ませてそう問いかける琴子に、ノンちゃんは淡々と告げる。

「その日、琴子さんが熱を出したのは定められたことで、何をどうしても変わらない運命だったんだ。
AかBか選択に迷う時のみに、運命の枝分かれって事態が起きる。
迷わず決定されたことや、自然現象は何をどうあがいても変わらない。
どの次元でも、琴子さんはあの日熱を出したし、震災や噴火といった天災も誰がどんな選択したって起きたんだ。だからそのことで琴子さんが気に病むことはないんだよ」

「……… でも」

「些細な事象で運命は残酷に変わってしまうことがある。
僕も次元パトロールになっていろんなパラレル世界を見て思い知ったよ。
とくに、この世界は、琴子さんのお母さんが生きてるって要因のせいで、琴子さんが元いた世界とは随分色んなことが変わって来てしまってる。
直樹さんが沙穂子さんと結婚する結果になったのも、結局はそこが大きな原因で」

罪作りだよねー隣の佐藤さんーーと、ふっと空を見つめるノンちゃんに、琴子は「どうして、入江くんはあたしを選んでくれなかったの? こっちでは沙穂子さんの方が好きなの?」と苦しそうに訊ねた。
訊きたくない気もするし、でも訊かずにはいられない。

「つまりはね。琴子さんのお母さんが生きてたじゃん? そこから色んな事件が変わってきてるんだ。まず、高校三年の時に家を新築してない。だから、地震で倒壊することもない」

「 ええっ もしかしてあたし、入江くんちで同居してないの?」

「いや。同居してる。ただ時期が違う。高校1年の冬に、住んでたアパートでお母さんが天ぷら揚げてて失火させちゃって。なかなかドジなお母さんだよね。で、ニュースでそれを見た入江父が、住む場所失った相原一家を家に来るように誘ったというわけ」

「ええっそんなに早く同居してたの? こっちの琴子ってば!! なんて羨ましいっ」

「直樹さんのお母さんと琴子さんのお母さんがこれまた意気投合というか、めっちゃ仲良くなってね。
一応親子三人の居候は図々しいだろって、何度か出ていこうとしたみたいなんだけど、その度に不思議な運命というか入江母の裏技力技で引き戻され、結局は元の世界と同じく大学3年まで同居してたんだ」

「へぇ~~そうなんだ」

どんなだったのだろう。母が二人の同居生活。紀子の明るいテンションも尋常ではないし、秋田の叔父から伝え聞いた話では母悦子も相当はちゃめちゃなタイプだ。

ーーとても賑やかで楽しそう。

琴子は想像してみてクスッと笑う。

「 ただ、女性陣に圧倒されて、入江家では男たちが引き気味というか。
特に直樹さんは、紀子さんだけでなく悦子さんも加わっての琴子さんを嫁に攻撃で、元の世界以上に、意固地になって琴子さんを遠ざけてたキライはあるね」

「ええっやっぱり嫌われてたの?」

「まさか! どの世界でも、琴子さんは直樹さんにとって重要で特別で大切な存在だよ。それは、どこの次元でも絶対変わらない」

「………ほんと?」

信じられない、といった瞳でノンちゃんをじっと見つめる。
こんな瞳で見られたら、男はみんなヤられちゃうよな、と彼は内心ため息をついた。

「……じゃあ、なんで入江くんは沙穂子さんと……」

「重樹パパが倒れて、会社がヤバくなって、という状況はほぼ一緒だね。それで直樹さんが金の為に見合いして、沙穂子さんと婚約することも。
ただ、状況はこっちの方がずっとヤバかった。
偶然、琴子さんのお母さんと沙穂子さんが話す機会があったみたいでね。お母さんは天真爛漫に琴子さんの想いや、直樹さんとのほんわかエピソード話しちゃって、それがどうも沙穂子さんに変なスイッチ入れちゃったらしくて。
ほら、元の世界じゃあっさりと引いてくれた潔いお嬢さんだったけれど、あれって自分が傷付きたくないし、良い印象を残したいしで、敢えて聡明な引き際の良さを全面アピールしてたけど、実は相当本心押し隠してたみたいなんだよね。
でもこっちじゃ、押し隠すのやめて、自分に正直になってみたらしくて。
琴子さんを排除するように裏工作するわ、会社を絶対融資がないと破綻するように祖父に頼んで黒い罠を張り巡らすわ……わー怖い怖い。
で、悦子さんは娘を守る為に下関にいくこと提案しちゃうし、直樹さんは琴子さんが居なくなるまで自分の気持ちに気がつかないわで、そのまま離ればなれに……わー、そんなに号泣しなくても」

「だって、だって、あのときの辛い気持ち、思い出しちゃって……」

それでもあたしには、入江くんが迎えに来てくれたけど。
こっちの琴子にはお迎えが来なかったんだね……あーん、なんて可哀想なのっっ

滂沱の涙を床にぼたぼた落としながら嗚咽する琴子。
彼女が落ち着くまでしばらく待った後、
「結局、選択を間違えたのは直樹さんだから。どこかで引き返すポイントはあったはずなのにね。だから、こっちの世界じゃみんな憂鬱な6年を過ごしてるんだ。入江家の人々も、直樹さんも沙穂子さんも。誰も幸せになってない。いまのところは」そう少し切なげに告げる。

「 入江くん、幸せじゃなかったの?」

「結婚生活はすぐに破綻してるからね。新婚早々仕事を理由に家に滅多に帰らなくなってる。結婚2年目に直樹さんの方から離婚を切り出したらしいけど、沙穂子さんは了承せず。今はほぼ別居状態だけど、沙穂子さんは意地を通して離婚を認めないみたい」

「……そんな時にあたしと入江くん、会っちゃったの?」

「そうみたい」

「……… なんか、泥沼な感じ?」

「なのかなぁ? 琴子さんはやっぱり琴子さんだから、何だかんだ明るく過ごしてるけど」

「 …………でも、悲しそうだったよ、琴子」

今朝出会った、悲しげな表情の自分ーー。

「……琴子は……やっぱり、あのホテルで入江くんに会おうとしてたの?」

ホテルを出ようとしていた自分と、ホテルへ入ってきたもう一人の自分。
まるで正反対の心を抱えて、すれ違ったあの瞬間ーー。

「それはーー」

ノンちゃんが何か言い募ろうとした時に、「琴子、まだか?」 と、重雄が外から声をかけてきた。
琴子は慌てて涙を拭う。

「あ、あ、待って、うん。大丈夫、………もういいよ」

部屋に入ってきた重雄は、琴子の瞳が潤んでいるのを見て、少し焦ったようだった。

「琴子、どうした……?」

「な、なんでもないよ。あの、あのね、……… えっと、お母さん、元気だった?」

取り繕って何とか笑顔を見せる琴子。

「元気も何も……四日前に別れたばかりだろ。まあ、ばあちゃんが倒れて気落ちはしてるが………」

琴子の母方の祖母は、娘の病死を聞いて、ショックで倒れて打ち所が悪くて亡くなったと聞いていた。琴子は祖母の顔も知らない。
この世界では母が生きている為に祖母も生きていたということなのか。

隣のおばちゃんの饅頭ひとつの選択でそんなにいろんな人の運命が変わってしまうなんて、あんまりだ。


「さあ、仕度出来たら、行くぞ」



父に促されて病院前の玄関先でタクシーに乗り込む。
けれど、此処で乗ってしまったら母に会う機会は失ってしまう。明日では遅いのだ。

ーーでも。

お母さんに会いたいけど。
もう一人の琴子は…… どうしようとしてたんだろう?
入江くんは?
どうしているの?
あたし、このまま秋田に向かっていいのかな?

少し迷いつつも、それでもやっぱり母に会いたいと思う。
明日、元の世界に戻れるのならば、こちらのドロドロな状況をかき乱すのはまずいだろう。


「あ、お父さん、ごめん、病院に忘れ物した! 先に行ってて!」

琴子はそう言ってドアを開けてもらうと重雄が何か言う前にタクシーから飛び降りた。

「………間に合うかな?」

琴子は反対車線に走り、別のタクシーを拾おうときょろきょろと辺りを見回す。
実はふわふわと宙に浮きながらもぴったりとくっついていたノンちゃんが、「結構、ギリギリかな。3時台の新幹線に乗らないと、夜行でとんぼ返りもキツイかも」と腕時計をちらりと見た。

タクシーは中々通らなかった。

「もう、走る!」

「走るって、東京駅まで? 無茶だよ。余計、間に合わないよ!」

ノンちゃんがあわてて止めようとしたら、走りかけた琴子のすぐ近くの車道で、すうっと一台の黒のベンツが止まった。

「 どちらまで行かれるのかしら? 良かったらお送りしますわ」

スモークのかかった窓が開かれ、そして見覚えのある美しい人が、少しも笑っていない瞳を向けて、にっこりと微笑む。

「…………………!」

「お久し振りね、琴子さん」

「沙穂子………さん」







※※※※※※※※※※※※※※




すみません、出しちゃいましたf(^^;
当初は出さずに存在感ないままさくっと終わらせるつもりだったんですが……むじかく様とついイリサホの話をメールでやりとりしていたら何となく書きたくなってしまいました……f(^^;(実はうちのブログではそんなに登場していないのですよ)
チャットでもちょっとイリサホ、話題になったんですよね~~。
お嬢アレルギーな方々すみませーんーっm(__)m
そんなにドロドロには……多分、ならないかと。




あ、そうそう。
キリ番、申告、承りました~~♪
なんと123456踏んでいただいたのはema様でした。狙っていただいて、ありがとうございます(^_^)
そして、ema様からのリクエストは………ナイショです(笑)当分先になりそうですが、鋭意努力いたします♪


* Category : 聖夜に奇蹟は舞い降りる。
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Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

本当に、楽しかったですよねー(そして、こちらもしつこく)マロンさんも是非どろどろを………(^w^)

悦子さんが生きている設定、っていうのは全く見たことなかったので無謀にも挑戦してみました。がっつり追っていくと長くなるので、さらっとですが(笑)
あっちの世界では悦子さんが案内人ですが……確かに、何かやらかしそうですね(爆)菊之介じいさんとか色々候補はあったのですが……f(^^;でも、『母』が一番強いですしね。やらかしてもきっとこの一族はなるようになるのでしょう♪

とりあえず分かりやすく黒いお嬢にしました。お嬢を出したせいなのか、あまりにも反応が薄くて(コメントも拍手の数もがくんと減って!)これはやっぱりやっちまったのだろうか、とちょっと不安を感じてます(どきどき)。でも、まあいってしまえ(笑)
マロンさんが続きを楽しみにしていてくれるので、頑張ります(^-^)v

ema様のリク……いいんですか~~?それでっ!とのけ反ってしまいましたが……とりあえずお楽しみに(^w^)





Re.ちびぞう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

そうなんです、何故かイリサホ(一部地域で)熱くなってますf(^^;まあ、バッチコイなんて心強い。予想はしてたもののあまりの反応の薄さにさすがお嬢様、と、びびってたところですの(^_^;)
確かに。原作ではさーっといなくなりましたね。私、台キス1を見たのが割と最近なので(2しか見てなかった)、原作の沙穂子さんもじーさんも、まあ、なんて引き際のよい人たちね、くらいの印象しかなかったんですよねー。物語としてはもうちょいごねた方がいいんじゃない?などと創り手目線で思ったりして(^_^)
むじかく様や水玉様の名だたるお嬢に影響されまくりのような気もしますが、果たしてどんなお嬢になりますことやらf(^^;
お待ちくださいませ(^w^)


Re.ねーさん様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

ねーさん様宅の黒お嬢、本当に勘違いっぷりがたまりませんものねー。
何だかうちのお嬢様、黒いんだかなんだか、ただの多弁な女になりました……
受けのいいお嬢様話は私にはハードル高いですわ~~(笑)
こ、こんなお嬢でコラボになりますか?f(^^;

個別記事の管理2016-01-01 (Fri)

2016年。
明けましておめでとうございます。
今年もご訪問ありがとうございます♪

だんだん更新回数が減っていくにも関わらず、訪問していただき、そして温かいコメント、励ましのお言葉の数々、本当にありがとうございます。
それらをバネに今年も頑張りますーーがっ

新年一発目にお話でなくて申し訳ないです~~f(^^;

クリスマスの話をさくさく終えて、夏休みに行けるように(もはや季節感0)鋭意努力致します(^_^;)


実は年末に帰省のついでにこんぴらさんに寄ってきまして。(ついでというには大胆過ぎる旅行ルート。ほぼ西日本縦断の旅でございましたww)






この↑ポスターみてつい、変換。
だって、kotoって書いてあるんだもの(^_^;)






すみません、クオリティ低くて。レタリング下手やーー(´д`|||)
ほんとは元のポスターに琴子のイラストだけ張り付けたかったのですが、スマホの編集機能だけでは無理があった……f(^^;
色々修正したいのですが、時間がありません(^_^;)
『笑顔』は二重線引いて『琴子』にしといてください。で、初琴いただきたい直樹さんってことで。
(文章で説明するなよ……)
そのうちこっそり直してるかも、です。



でも、どうせならいちゃこらしてる二人も。
正月関係ないやん?な、ラクガキですが……(^_^;)




とある漫画の構図を真似っこしただけなのに、デッサン狂ってます(/。\)

なのに、平気でアップできるようになってしまった………(..)

無理矢理正月にこじつけるならば……
きっと、神戸の二人ですね。
東京にいれば、お正月は着物着せられてる気がします(どうせ脱がされるのにね←?)

いや、正月なんかに来てちゃ行かんだろ、って話ですが。

「正月の1日2日くらい勉強お休みしても大して変わらないわよ!」
って、紀子に云われて、追いたてられるように神戸へ(笑)
(ちなみに受験生のうちの娘も皆にそう云われて、1日2日どころが4、5日くらいグダグダしてますがね…)

で、入江くんに怒られるのは御約束。
ついでにそういう日に当直なのも御約束なのです。

「おまえ、来てる場合じゃないだろうが」

「……だってクリスマス来れなかったし」

「卒論の締切だったんだろう?」

「そうよーちゃんと提出できたんだから……そのご褒美くらい」

「提出するのが当たり前だろう! ご褒美請求するくらいなら大学なんぞ行くな!」

「じゃあ、東京に戻るよー! 乗車率200%の新幹線に乗って、せっかく来たのに~~おせちとお餅持って来たのに~~」

6月の再来。行ったり来たりの攻防の末、結局入江くんが折れる(^w^)

「テレビもないから紅白もゆく年くる年も見れないぞ」

「いいの! 年越しで勉強してるから!」

おせちは紀子さんに持たされてますね。
雑煮の作り方はきっちり教わって。
東京に住んでても、双方とも九州の出だからやっぱり丸餅かしら?
一色家が農家だから、絶対年末にはお餅、送られてるだろうなー。

で、まあ年明けた朝方、直樹さんが帰ると結局ベッドを占領して大の字になって寝ている琴子ちゃん。
服を着たままのところを見ると、頑張って起きていたものの、途中で睡魔に勝てず撃沈ですね。
仕方なく直樹さん、ソファに横になってうつらうつらしていると琴子ちゃんが起きてきて、慌てて直樹さんベッドに行くように促してーーと思ったらあっさり捕縛ーーといったところでしょうか(笑)


そら、せっかく来たならいただかなくては、初琴子(笑)

(しかし何故か二人ともカメラ目線……^_^;)


ーーっ、て小話すら書く時間がなくて申し訳ございませんが、そんな感じで各自妄想補完お願いしますf(^^;(丸投げ)



ああ、早く神戸の話も書かなくっちゃ(^_^;)
ええ、その前にクリスマス終わらせますよ。続きは今年のクリスマスに! なんて云ったら奇蹟ではなく槍が降ってくるかも、ですね(^_^;)はい、頑張ります♪


ーーでは。毎度グダグダな管理人ですが、今年も宜しくお願いします、ということで(笑)

今年1年、皆様にとって良き年でありますように(*^^*)


ののの


追記。

もうすぐカウンターが123456♪
もしキリ番踏んだ方、ご申告下されば何かお年玉を……(笑)
いや、10万hitのご申告くださったm様にもまだリクエストに答えられてないのですが(笑)そちらは春までには必ずっf(^^;
←春ネタなので猶予もらってます(笑)




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* by さち子ママ
あけましておめでとうございます!
いつもパワフル琴子ツンデレ直樹楽しませて頂いてます。
今年も色々な話し楽しみにしています。

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Re.マロン様 * by ののの
コメント(チャット中に)ありがとうございます♪

本当に楽しい年越しでしたねー♪

こちらこそ、今年もよろしくお願いします!

Re.さち子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そして、明けましておめでとうございます ! うちの琴子と直樹で楽しんでいただけて嬉しいです(^_^)
今年もよろしくお願いしますね(^-^)v

Re.りょうママ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そして、明けましておめでとうございます!
今年もたくさん更新できるよう、頑張りたいと思います(^_^)

Re.ちびぞう様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

そして、明けましておめでとうございます!
わー私のラクガキ、好きと云って下さって嬉しいです。まあ、ちびぞうさんもお絵描きされてたんですね。私も四半世紀ぶりでした(笑)ぜひ、描いてみてください!
本当に多田先生の絵は難しいです。特に入江くんの意地悪そうな目が……
おーm様の裏の世界に行けたのですねー。おめでとうございます♪それは一気読みで寝不足でございましょう!私も大好きですし、他の素敵サイト様の二次談義するの、結構好きですのでご遠慮なく(むじかく様ともよく話してます♪)
こちらこそ、今年もよろしくお願いします♪

Re.ema様 * by ののの
拍手コメントありがとうございます♪

そして明けましておめでとうございます!
わー、チャットのことご存知なかったのですね。私も残念! お喋りしたかったです。
そして、キリ番ゲット、ありがとうございます♪
ema様がゲットしてくれたなんて、びっくりぽんで嬉しかったです♪
リクエスト……頑張りますねf(^^;

今年もよろしくお願いします(*^^*)