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19981121 ~木婚式の夜に 2

2015.11.24(21:17) 188




前の記事に、沢山の拍手コメントありがとうございました。
とっても嬉しかったです。
なんか不気味で気色悪いっ~~と思ったもののそんなに気にしてはいないので、(まあ、世の中には色んな人がいるもんだ、くらいの)大丈夫ですよ(^-^)v
励まして下さった皆様、感謝感謝です。


そして、お話の続きです。

先に謝っておこう。
今回は………直樹サイドです。
前回の琴子ちゃんの状況は………まだ引っ張るドSな私(へへっ)




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「お兄ちゃん! 今年は結婚5周年よ! 何かプランは考えているんでしょうね?」

そんな話題を母紀子が食卓で振ってきたのは、 琴子の盛大な誕生パーティが終わった数日後 、彼女が夜勤で不在の夕食時のことだった。

「んなわけないだろ」

食後のコーヒーを飲みながら、しかめっ面で答える息子に、紀子は大きくため息をつく。

「去年は神戸に行ってて離ればなれだったんですもの。今年こそ、きちんと結婚記念日をお祝いしないと! しかもせっかくのキリの年よ?」

何しろ結婚2年目でホテルを貸しきって結婚記念パーティを仕切ろうとする母である。5年目の今年、何か言い出すだろうとはある程度予測はしていたが。

「別に5年がキリって決めなくてもいいだろ? この世は五進法で回ってる訳じゃない」

実際には5進法は10進法の中に内包されている。(そろばんやローマ数字など)5年もキリとして考えるのもそれ故と分かってはいるが、この際5年だろうが9年だろうがーーたとえ10年であってさえーーはっきりいってどうでもいい。
1年が過ぎればひとつ歳もとる。当然結婚年数も増える。それだけのことだ。


息子が誕生日も記念日も一切関心がないことを熟知している母は、
「なーによ、そのひねくれた言い方! 結婚記念日の少し前のお兄ちゃんの誕生日、いっつも琴子ちゃんが愛のあるプレゼントを捧げているのに、あなたってば、まーったく無頓着! 今年だって琴子ちゃんのバースディに何もあげてないじゃない!」

全くなんて酷い夫かしら、と額に手をやり沈痛な面持ちで再び盛大にため息をつく。

「プレゼントは形あるものばかりじゃないだろ?」

と、数年前に語った言葉を再び返す。

「 どうせ看護計画みてあげたとか、そんな類いのことでしょ?」

二十歳のバースディのときは騙されたけど、お兄ちゃんの考えてることなんてもうまるわかりよ! ーーと、息巻いている紀子である。
どうやら二十歳の誕生日に部屋に籠って試験勉強をみていたことはばれていたらしい。

少なくとも結婚して以来、琴子へのバースディプレゼントは、紀子が二十歳の誕生日に期待していたことそのままである。
もっとも誕生日以外も日夜励んでいることだから、特別なものという訳ではないが、誕生日は特に念入りに、微にいり細にいり、至れり尽くせり、頭の先から足の先まで余すことなく可愛がっているのだ。特別大サービスで、砂吐きそうな甘い言葉だって(琴子が朦朧としている時を狙って)囁いている。これ以上のプレゼントなんてないだろ? ……と、密かに思う直樹であった。
恐らく紀子に云ったら、「それは誰が得しているのかしら? 」 と突っ込まれそうだ。
確かにーー琴子へのプレゼントと称して、何だかんだ一番直樹が琴子を味わって、至福の時を堪能しているのだから。


「本当は五周年記念パーティを例のホテルでやろうと思っていたのだけど」

「おふくろ!」

「……わかってるわよ、あなたたちが今は病院勤めで自由に休みを取れる身分じゃないってことは」

まだ神戸から斗南に戻って半年足らずの直樹と、看護婦になって半年の琴子が、揃って休みをとるのはなかなか難しい。そして特に直樹の方は休みはないも同然とも言われる超多忙な研修医だ。

「ホテルの優待券があったから、とりあえず一泊予約しておいたわ。今ならまだシフト調整出来るでしょ? なるべく休みを合わせて二人でいってらっしゃい」


中々子供に恵まれない息子夫婦には、これが一番のプレゼントと思ったのか、あるいは、下手に大袈裟なパーティを開けば天邪気な息子の機嫌がすこぶる悪くなり、可愛い嫁に被害が被るとやっと悟ったのかもしれない。

確かに共に医療従事者である二人の仕事は多忙な上に、シフトがずれれば一週間スレ違いということもある。旅行などほぼ諦めているが、都内のホテルなら何があっても緊急に病院に戻れるため、直樹は今回は特に異存なく受け入れた。
無論、当日何かあってキャンセルになる可能性は高いと釘は刺しておいたが。

「まあ、記憶に留めておくよ。でも、琴子にはまだ言うなよ。そんなこと知ったらあと一ヶ月半以上、浮き足だってまともに仕事出来なくなる」

長い間楽しみにして指折り数えた挙げ句にキャンセルとなったら、反動で地の底まで沈みそうで怖い、というのが本音であった。
無論仕事でキャンセルになった時には文句も云わず笑って送り出してくれるだろう。絶対顔に出さないよう努力はしているけれど、心の奥底で寂しがっているのは手に取るように分かってしまう。


ーーという、琴子限定でその心情を理解するくらいには成長した直樹のお陰で、琴子は直樹の誕生日を過ぎてから初めて、結婚記念日の計画を紀子から聞かされた。
そしてその日から当然のように、浮き足だった琴子の妄想の日々が始まったのだ。

直樹も自分のシフトは、当日どうなるのか分からないとは思いつつ、とりあえず21日は日勤で翌日は休みを入れておいた。
琴子の予定は、シフトが決まる前の月に、桔梗幹に然り気無く休みの日を誘導するように示唆した。
露骨に云わなくても察しのよい幹は、わかりましたと言わんばかりに、見事に、琴子にも21日日勤の翌日休みというシフトを取らせた。
まあすっかり結婚記念日のことを忘れていた琴子にちゃんと思い出させただけの話だが。


去年は遠距離中の結婚記念日で、寂しい想いをさせたから、たまにはお膳立てに乗るのも悪くはないだろう。

母の思惑に乗ってしまったことに、心のなかで言い訳をして、琴子ほどではないものの、当日何もないことを密かに祈っていた直樹であった。


ーーそして。
前日までは何事もなかったのだ。
急変しそうな担当患者もなく、このままなら計画通りに行けそうだーーと思ったところに、当日の昼前になって、外来で担当していた心臓病の患児が、突然の発作で救急車で運ばれてきたのである。
救命から連絡を受け、すぐに緊急オペとなった。研修医の直樹も第一助手としてオペに加わることとなる。

オペ室の前で不安そうにしていた琴子に、「先にホテルに行ってろ」と、言ったのは、真夜中過ぎても駆けつけるつもりでいたからだ。

そして無事にオペも終わり、一度琴子に、経過を見てからホテルに行くとメールをしたら「よかった! 助かったのね、その子!」と、記念日に間に合うことよりも、まず子供の無事を心から喜んでいるのが文面からすぐに分かり、直樹の心もじんわりと癒される。
その後、術後の安定を確認した時は、もう午後10時半を回っていた。

ーーとりあえず、記念日中には間に合いそうだ。

直樹は安心して、着替え終わったところで、ふとメールの着信があったことに気がついた。

『バーで0時まで待ってます』

はーー?

途端に直樹の眉間に皺が寄る。
そして、即メールを返信した。

『一人で行くな。間に合うから、ちゃんと部屋で待ってろ』

しかし、琴子からの返信はない。
さっさと出掛けてしまっていてメールを見ていない可能性が高い。

あの馬鹿!

直樹は焦って病院を駆け出し、タクシーに飛び乗った。

確かに、琴子は夜景の美しいというそのバーラウンジに行くことをとても楽しみにしていた。

ーーねぇねぇ、二人のイメージにあったカクテルをサービスしてくれるんだって。

ーーおまえ、カクテル一杯でどうせ撃沈だろ。カクテルって、結構アルコール度数強いんだぜ?

ーー大丈夫だもん、入江くんが傍にいてくれれば。


そう、自分が傍にいればどんなに飲んでも構わない。

だが、一人で飲んで……酔っぱらうだけではなく、まるで無防備になった琴子に、ちょっかいをかけてくる輩がいるのではないのか、という心配が真っ先に浮かんだ。


直樹はイライラと落ち着かない気分で、タクシーのシートに身を置きつつ携帯を何度となく確認する。
こんな時に限って、やたらに信号に引っ掛かる。赤く光るブレーキランプが連なる様に苛立ちはさらに募る。

ホテルに着くとほぼ同時に運転手に札を渡し、直ぐ様飛び降りて、玄関の回転扉を潜り抜けた。
そのまま一気にエレベーターホールに向かい、中々来ないエレベーターにまたもやイライラしながら降りてくる数字を眺めていた。


漸く最上階にたどり着き、すぐに目についた扉を躊躇いもせずに、バーンと開けた。

薄暗い店内だが、ざっと見回しただけで、琴子がカウンターに座っているのを確認した。一瞬の琴子探知能力である。
そして危惧した通り、横に見知らぬ男が座っているではないか!
しかもかなり馴れ馴れしくパーソナルスペースを乗り越えて接近し、今にもベタベタと触りそうな距離感である。

直樹の眉間の皺が、そのまま取れなくなるのではないかと思える程、深く寄っていた。傍(はた)から見ればかなり怖い形相をしていたかもしれない。

無論周りの視線など気にするべくもなく、つかつかとカウンターの方へと歩んでいく。

ーーーーー!!

歩みが駆け足になる。
男が琴子の頤(おとがい)に指をかけたのだ。

「触るなーー俺の妻にーー」

言いかけたところで、パタリと足が止まった。

目の前でーー呆気に取られるような光景が広がったのだった。









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すいません、毎度毎度引っ張りまして(^^;
次こそは前回の続きが明らかになりますので(^-^ゞ


リコメも滞ってまして申し訳ありません。とりあえず話の方をさくさくと進めていこうかと。あと、今リコメしたら自分でネタバレしちゃいそうな気もしたりして。なにげにうっかりな喋りたがりなもんでf(^_^)てへっ



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2015年11月24日
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