絶え間ないkiss

イタズラなkiss期間2015



もう絶対

死ぬまで離れないからね



覚悟してるよ






手を繋いで歩いた。
大学の門を通り抜け、桜並木のプロムナードを(いや、桜は咲いてないけど、何だか満開の気分)二人並んで歩くのも本当に久しぶり。
しっかり指を絡めあったまま繋いでこの道を歩くのなんて、もしかして初めてかも?

どきどきする。

ちらりと横目で隣の入江くんの顔を見上げる。

すぐにあたしの視線に気付いて、「何?」と訊いてきた。

「う、ううん。何でもない」

真っ赤になって俯くあたし。
何だかふわふわしてまだ信じられない気分。

だって、だって、今朝、二日酔いの頭を抱えながらこの道を通って大学に向かっていたあたしはーー世界で一番サイテーサイアクな不幸のどん底にいたんだよ?



入江くんはあたしのこと好きじゃないのよ

あたしのこと好きじゃなくなったんでしょ

ううん、最初からあたしのこと好きじゃなかったんでしょ?

なんであたしなんかと結婚したの

あたしばっかり好きで もう もう いやだ




言ってしまった言葉は取り戻せない。
もうおしまい。
多分もう、無理。
夢だったんだ。この2年間の出来事なんて。
そう思って忘れてしまった方がいい。
きっとあたしは長い長い幸せな夢を見ていただけ。
そして、今、夢から覚めてしまったんだーー。
そう、結局あたしはずっと片想いだった。永遠に片想いのまんまだったんだ。
泣いてわめいてクリスや金ちゃんに管を巻いて、それでもどうにもならないってわかってた。
人の気持ちなんてどうこうすることは出来ない。
入江くんがあたしのこと好きじゃなくなったのなら、もうどうしようもないんだって………

だから、もう。
入江くんと並んで歩くなんて、二度とないと思っていたーー。


けれども。
今のあたしは朝のあたしと真逆で、世界で一番幸せな女になってる。
もうあたしのことなんて嫌いになったんだと思い込んでいた旦那様が、みんなの前で大胆な愛の告白してくれて。

あたしが必要なのだと云ってくれてーー

みんなの前で強く抱き締めてくれてーー

もう、それだけであたしの頭の中は沸騰しそうになっちゃったわ。

それからもうずっとふわふわ夢心地で。

二人で家に帰る道すがら、黙々と歩く入江くんをうっとり見つめるだけーー何だか2年前のあの雨の日を思い出す。

あの時もこんな風に、もしかして夢を見てるのかしらーーなんて、ひどく非現実で地面に足が付いてないような不思議な気分で入江くんと手を繋いで歩いてた。

2年前のあの時もーーそして今も、ほんの少し前まで、息をするのも苦しいくらいの絶望的な闇の中にいたあたし。
でもあの時も今も、結局、その闇からあたしを引っ張り出してくれたのは、この入江くんの手なんだよね。




あたしたちが二人一緒に帰ってきて、手を繋いだままの状態でリビングに入っていくと、みんながあたしたちの方を注目した。

あれ、やっぱりデジャブ?
何だか本当にあの雨の日をやり直しているみたい。

「仲直りしたのねっ?」

そういって両手を組んで泣き出さんばかりのお義母さん。
裕樹くんも驚いた顔からぱっと花が咲いたように笑顔になる。
お義父さんも凄くほっとした顔。
チビまで尻尾振りまくって!
ごめんね、みんな心配かけて。

そして、お父さんもーー

すると、入江くんがつかつかとお父さんの方に向かってーー

やだ、ほんと、あのプロポーズの夜みたいじゃない?

「お義父さん、ご心配おかけしてすみませんでした」

入江くんがお父さんに向かって深々と頭を下げる。
ええっ!入江くん……!?

「もう、大丈夫なんだな?」

「はい」

そしてあたしの顔を見て、入江くんはもう一度しっかり手を握りしめてくれた。あったかい、大きな手。

「もう、絶対琴子を泣かせません」

お父さんに向かって毅然と誓う入江くん。
やだ、そんな嬉しいこと云ってくれるとそれだけでもう涙が出ちゃうよ。

「それは無理だな」

お父さんがあたしの顔をチラッと見て笑った。

「こいつは泣き虫だから。嬉しい言葉でもすぐに泣くだろ」

ほら、もうほろっと涙が零れ落ちる。

「琴子。昨日お前が家を飛び出した後、直樹くん、すぐに店に電話をしてくれたんだ。多分店に来るからって。その時は冷静そうな口調だったけど、お前が来たことを伝える為におれが電話した時は、物凄く安堵した感じだったよな」

「……………」

ちょっと複雑そうな、照れくさそうな顔の入江くん。
へへ……嬉しいよ。
やっぱり涙が止まらない。

そのあとは、みんなでちょっとしたパーティ。
あっという間に沢山のお料理を作ってくれたお義母さんって本当に凄い。
何だか久しぶりに食べ物に味があることを感じられて、心から美味しいって思うことが出来た。
みんなの弾けるような笑顔が心地よい。
家族の食卓がこんなに明るく賑やかになったのって、いつ以来だろう?
ごめんね、みんな。あたしたちのせいで、ずっと陰鬱な雰囲気にさせてしまっていたんだよね。

入江くんもずっと優しく微笑んでる。
ただそれだけのことであたしはこんなにも幸せで心が温かい。
へへ。
やだ、嬉しくてやっぱり涙が出ちゃいそう。





食事を終えて、少しリビングでみんなとゆっくり過ごして……でもちょっと時計をちらりと見てしまう。
早く……二人っきりになりたいな……なんて。

「風呂、行ってくれば?」

「………うん」

入江くんに促されて、先にお風呂に向かう。
ちょっと長湯になっちゃうかもよ?
ぴっかぴかに磨きたいもん。
………ってなんかあたし、めっちゃ期待してるみたいなんだけど。……してるか……うん。してる………。してますとも!

………入江くんも……だよね?





お風呂から出た後、あたしたちの部屋に戻ると、入江くんは窓辺に腰かけてた。

窓の外には煌々と耀くまんまるお月さま。
今日は満月?

「満月じゃなくて、立待月だな。月齢14日。満月の一歩手前」

「ふうん。そういえば、ちょっと歪(いびつ)かも」

「正しくは満月イコール十五夜って訳じゃないんだけどね。月の公転速度は一定じゃないから」

「そ、そうなんだ」

よく、わからないけどーー。

よくわからないけれど、今日の完全無欠じゃないちょっとだけ欠けた月もとっても綺麗だよ。
少なくとも豆球の灯りも要らないくらい室内は仄かな白光に映し出されていた。

窓辺にぴったりと顔をよせて月を見つめていると、あたしの背後の入江くんが手を伸ばして、いつのまにかパジャマの釦を外し始めてる。

あたしの視線は月に向かったままだけど、意識はもう鮮やかな所作の入江くんの手の感触に掴まっちゃってた。
あっという間に釦は全て外されて、パジャマの上着は床に落とされる。
パジャマの下は花柄レースのオレンジのキャミソール。

そのまま入江くんの方に身体を向けると、ふわっと抱き締められて。
思わずうっとりと瞳を閉じてその入江くんの胸に引き寄せられた感触を味わう。
入江くんはあたしの頭を優しく撫でてくれる。



とびっきりのkissをしようね

たくさんたくさんしようね


ねえ、あたしたち今までどれくらいkissをしなかったと思う?

夏から秋に季節が変わって。
リップの色も少し変わったの、知ってた?

もし、1日3回kissしてたとして、3ヶ月くらいしてなかったならーーその分を取り戻すなら、あたしたちーー

「270回」

そう、270回はkissしなきゃ。

「えっちは月23回として(←生理を抜いたほぼ毎日計算)だいたい69回か。さすがに一晩に69回は無理だな」

……計算はやっ
ってか、何の計算してるのぉーー

「………kissだけで、いいです。取り戻すのは……」

「遠慮しなくていいのに」

「遠慮……なんて……あん」

あまやかなkissがあちこちに落とされる。

額に。頬に。唇に。鼻の頭に。もう一度唇にーー。


例えようもなく優しいkiss

堪らなく心を震わせるkiss

ただただ一途に追い求めてくるkiss

絶え間なく降り注がれるkissの雨ーー

あたしはもう訳が分からなくなって、受け止めるだけで精一杯でーー


とびっきりのkiss

たくさんのkiss

絶え間ないkissに翻弄されて、あたしは月の光に照らされたベッドの上で、あられもない肢体を泳がせていた。
シーツの海のなかで啼いて喘いで、溺れてしまいそうな身体を何度も入江くんに繋ぎ止められて、そのまま意識は深い海の底に堕ちていく。


「琴子………」

まるで波の音のさざめきのように、優しい入江くんの声が耳元に響く。


「琴子……ごめんな」


どうしたの? ごめん、なんて入江くんらしからぬセリフーー


ああ、あたし夢を見ているのね?

「叩いて……悪かった」

えーと……?
あ、そういえば本とか投げつけたとき、入江くんに叩かれたっけ。
ふと、記憶が2年前の雨の日と混濁する。あの日もひっぱたかれたよね。あたしってば2度もはたかれてるのね……
不思議。あの日と妙にシンクロしてるのは何故かしら。

でもズルいよね。叩かれた時は頭ぐちゃぐちゃであたしが一番混乱してる時ばっかだから、結局今となったら何にも覚えてないの。悲しくて腹立たしくてどうしようもなかった想いは、入江くんの驚きの告白にいっつもあっという間にかき消されちゃうから。
ーーだから、もう、忘れちゃったよ。叩かれた頬の痛みも、あの時の心の痛みも。


ーー琴子、苦しませてごめん

ーー悩ませてごめん

ーー泣かせてごめん


どことなく入江くんの顔こそ辛そうで苦しそうに見える。
ねぇ、そんな顔しないで。

いいの、もう。
謝らなくていいから。
入江くんがみんなの前で、あたしが必要だって、云ってくれただけで十分なの。あたしはもうその瞬間に何もかも許してしまってる。
それだけで数ヵ月の涙も悲しみも一瞬で消えてしまったから。

だからーー謝らなくていいから。



このまま永遠にあたしの傍にいてねーー







十三夜の月は悲しい涙しか知らないけど
十四夜の月は幸せな笑みしか知らない
十五夜の月は多分もっと幸せな二人を映してくれるだろうーー









※※※※※※※※※※※※※※


謝れよ。

と、いつもこのエピを読み返す度に思ってしまうわけですよ。
食堂での愛の告白も、感動もんだけど偉そうだし(ま、啓太にたいしてだからね)

なので謝らせてみた(笑)

ここで謝らないのがこの頃の入江くんの入江くんたるところなんだろうけれど。(まだまだ発展途上中)だから、ぼんやり夢だか現だかの感じで。
それでもね、重雄さんにはきっちり謝ってほしい。(台キスでは重雄さん殴ってたからね。それが当たり前の父としての感情です。嫉妬だろうがなんだろうが三ヶ月近く無視はやっぱりあんまりだーー!)

日キスドラマじゃ「とびきりのキスをしようね」のあまーいシーンがばっさりカットで少々残念だったので、きっちり入れてみました(笑)
原作じゃ入江くんは大学行ったままの格好なのに、琴子ちゃんはキャミ1枚。いつのまに脱がせたんだ! 時期的に風呂上がりでもキャミ1枚ってことはないわな~~なんてことを思いながら原作片手に書いてたお話です。

偶然導き出された数字に、思わずえろスイッチが入りそうになって、まずい! この話はリリカル目指してるのよ~~と必死に舵を切り直した……というウラもあったりして。
同じく妙な期待をしたソコのあなた! 私と一緒に反省しましょうf(^_^)


※10/20 加筆修正しました。(皆様からのコメントを読んで、ひっぱたいたことへの謝罪を忘れてたことに気付いて! いやーあれはアカンでしょーが!……てことで^-^;)




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管理人の、のののです。イタズラなキスにはまって、二次創作を始めました。

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