君のいる、午后の教室 5



お待たせしました。
おひさしぶりの『キミゴゴ』です(^w^)
あちゃーもう、6月も終わりじゃありませんかっ(°Д°)早いなーっ夏休みもすぐそこですね……^-^;

細かい設定忘れていたので、読み返したら色々ミスを見つけて密かに書き直したりして。きっと他の話もそんなんばっかかも……^-^;




※※※※※※※※※※※※※※※







六限目終了のチャイムが鳴った。

琴子ははっとして顔をあげる。
六限目の空き時間を使って、今日の観察記録をまとめる作業を、職員室の机を借りて行っていた。
隣で指導教諭の清水はノートパソコンで自分の仕事を片付けている。教師は授業の空き時間があっても資料作りや雑用で忙しい。それなのに横でブツブツ頭を抱えて呻いているだけで、余り進んでいる様子のない琴子に、叱責しつつもあれこれアドバイスを与えてくれている。
そんな指導教諭に少し申し訳なく思う。
何といっても本日実習1日目にして、殆どの授業をまともに観察していなかった(直樹の顔がちらついたり、あれこれ思い悩んだり、恋する乙女はそれどころではなかったのだ)ので、観察記録用紙は余白の方が多い。隣から雷が落ちても返す言葉もない。
因みに明日からの授業の指導案も放課後に作成するように云われている。四コマ分の指導案ーー今日中に作るなんて絶対無理だーーっと内心叫びながらも、やるしかない。
終わるまで帰れない……んだろうなぁ、多分ーー。琴子はふうっとため息をついた。

「相原さん。帰りのHR行きますよ」

清水に促されて「は、はいっ」と慌てて立ち上がった。

はーまたA組に行かなきゃなんないんだよね……

自分の担任クラスだから、最低朝と帰りの一度ずつは訪れなければならないのは当たり前なのだが。


直樹の顔をまともに見れるだろうか?

ほんの数時間前の生徒会室での出来事が脳裏を掠め、それだけで顔がかあっと熱くなる。

ーー続きは放課後に……

冗談だよね。
からかってるだけよね。
だいたいここは学校だしっ
そうなの、学校なのよ。お勉強するところなのよ。
恋のレッスンABCなんて……! (←古いっ)ああーそういえばあたし、もうCまで修得済みなのよねっ……ちょっと自慢……って……?

「相原さんっ あなた何処行くの?」

そして、思考に集中するとお約束のように道を間違える。
軌道修正して、やっとA組に辿り着いた。
引き戸を開ける清水に続くと、ざわめいていた教室内が少しだけ静まった。
もうあとは帰るだけという気楽さからか、さすがのA組をも少し高校生らしい無邪気な気配を醸していた。
教室に入るとつい真っ先に直樹のいる席の方に目が向いてしまう。

直樹の横にはまたもやあの美人ーー松本裕子が楽しげに話し掛けていた。

……いつも一緒にいるみたい……
やっぱり……彼女?

少しきゅうっと胸が締め付けられるような感覚を感じた。
全然知らない高校生の彼。
ずっと彼からの連絡を待ち続けていたこの数ヵ月間、彼の隣にはあの松本裕子がいたのだ。

「…………連絡は以上です。あ、渡辺くん」

連絡事項を伝えるだけの簡素なHRの終わりに、清水が声をかけた。

「はい?」

「臨時の体育委員会が今日、4時から視聴覚室であるそうです。来週のクラスマッチのことね。突然の召集で申し訳ないけれど、渡辺くん、体育委員だったわね。よろしくお願いします」

「……げ、おれ塾が………」

渡辺が困ったような顔をして呻いた。

「出られなかったら、誰か代理をたててね」

クラスから一人ずつ選出される各委員を決めるときも毎年のことだが中々決まらなかった。大体A組は行事ごとには無関心だし、余計な仕事が増えるのは勉強に差し障るので、役決めの度に丁々発止の押し付けあいか始まる。
最終的にはクジで選出、何故か運動が苦手なのに体育委員を引き当ててしまった渡辺である。

「………誰も代理なんて引き受けてくれないだろ……?」

殆どの者が塾に行っている。
行っていないのは、多分あいつだけ。
渡辺はちらりと親友の顔を窺ったが、彼は冷たく舌を出していた。
生徒会長をイヤイヤ引き受けた彼がこれ以上別の役割を引き受ける筈がない。
渡辺は塾に行くことは諦めかけていた。

「………あ、相原先生、あなたも体育委員会に参加してくださいね」

「え? 」

「私はクラスマッチの担当係で、梅岡先生が体育委員顧問なの。だから必然的にあなたと鴨狩先生には関わってもらいます。実習中の唯一の学校行事ですしね」

清水が当たり前でしょ?と云わんばかりに琴子の方を向く。

「ーー渡辺。やっぱ、おれ、代わりに出ていいぜ」

「えー? マジ? どうしたんだよ、いったい?」

突然の直樹の申し出にクラス内がざわめいた。

「……どうしたの? 入江くん」

松本裕子も不思議そうに直樹を窺う。

「いえ。今年のクラスマッチは委員会が既存の方針を変更しようとして、紛糾していると。来週の実施なのに未だにルールが確定していないと聴いていたことを思い出したので、ここは生徒会長としてさくっと決めてさっさとケリつけた方がいいかと」

「頼もしいわね。よろしくね」

清水の言葉に、軽く頷いてから、ちらっと琴子の方を見た。
琴子の頬が軽く赤く染まるのを見てにやっと笑う。







そして午後4時、視聴覚室。
直樹の宣言通り、委員会は開始後30分で直樹の助言やフォローによってあっさりと話し合いがついて決着したのである。

「クラスマッチ、来週の金曜日かぁ……おれたちの実習最終日だよなー。なんか、感動的な締めくくりになりそうだ」

まだ始まったばかりだというのに、最終日の感動を予想してふっふっふっと、鴨狩啓太は楽しげに呟く。

「……そうだね」

琴子も直樹の件がなければ、一緒に生徒たちと声を枯らして応援する熱い青春のクラスマッチを妄想していたかもしれない。

突然今日から参加したクラスマッチについての話し合いも、なんのことやらだが。
サッカー、バスケ、バレーボールなどの球技をクラス対抗でやるという、何処の学校でも大抵はあるであろう行事で、何か変わった学校独自のルールがあると言うわけでも無さそうだ。
ただ、毎回毎回成績と反比例した順位結果が出て(つまりどの学年もF組が1位でA組が最下位)分かりきってつまらないという意見もあり、AからCに限って運動部員はその競技に参加出来ないというルールを撤廃しよう(サッカー部員はサッカーを選択できないというのが一般的なルールだが)などと言い出した者がいて、少し揉めていたらしい、ということはだいたい分かった。

そして、直樹の「AからC組にいる運動部員なんて、大して役にはたたないだろ? ハンディにはなんないぜ」の一言であっさり通例通りのままということでカタはついた。実際A組は運動部に属している者の割合が少ないし、2年でレギュラーはテニス部の直樹と松本くらいだった。だが二人ともインターハイ出場レベル。
「おまえが出る競技は予測不能だ」と3年生たちにつつかれて、
「じゃあ、おれと松本は前半しか出ないということで」
共にバスケに出るらしいという二人はあっさりその特例ルールを受け入れて終了。
どのみちクラスの人間はたいしてクラスマッチに興味もないから何も文句は云わないだろう。


「よーし、これから昼休みは生徒たちと汗と涙のクラスマッチ特訓だなっ」

あっさり会議が終わり、がたがたと席を立ち始めた生徒たちを横目に、啓太は瞳に炎を燃え上がらせて随分と楽しそうだ。

琴子もこれがA組でなかったらもっと盛り上がるかも、と少しため息をつく。

「あー、相原。みんなで帰り、飯食ってこうぜ、って話だけど、お前も行くだろ?」

啓太の問いに「うーん、行きたいけど、無理かも」と少し残念そうに断る琴子。

「なんで?」

「だって、あたし、明日から授業だよー? 指導案書くまで帰るなって云われてるの。クラス毎に授業の進捗状況が違うから全部で4コマ分の指導案」

「厳しいなー清水先生。おれも授業あるけど体育だしな。指導案もそんなに時間かからないから空き時間で全部で終わらせたぜ」

「いいなー」

「でも、おまえが終わるまで清水先生も帰れないってことだろ? 頑張らねーとな」

「う、うん。そうだね」

指導教諭の印がなければ完了にならない。自分が早く仕上げねは迷惑かけるともなれば、一刻も早く取りかからなくては、と焦ってくる。


「相原先生」

啓太と話していたところに、声がかけられる。
後ろからの声だったが、誰の声かはすぐに分かった。

「いっいっいっ入江くん、何?」

不自然なまでに動揺している琴子に、一瞬啓太は怪訝な顔をした。
そして、声をかけてきた生徒の顔を見る。

「ああ……君が入江直樹くん?」

「え? 啓太知ってるの?」

「うちのクラスの女子も騒いでたからな。2Aに超絶イケメンがいるって」

鴨狩センセーかっこいい!
彼女いるのー?

女子生徒に囲まれてちょっと鼻の下を伸ばしかかった啓太だったが、「でも、やっぱり入江くんの方がかっこいいよね」「やだ、入江くんと比べちゃダメだよー」「もう、人種が違うもん」という洗礼を朝から何度も受けてきたのだった。


「……で、入江くん……何?」

引きつった笑みを返す琴子に「明日の授業の視聴覚資料を探すんでしょう? 清水先生に一緒に手伝うように頼まれたので」と妙に優しげな爽やかな笑みを返す直樹。

「え? え? ……清水先生は……?」

話が見えずに、清水の姿を捜す。

「清水先生も梅岡先生も部活指導があるからととっくに出ていきましたが? 相原先生は明日の準備をしておくようにと」

「あー、おれも今日から部活指導参加させてもらうんだった! おれ、ラグビー部行こうと思って。おまえどの部活みるんだ?」

啓太がくしゃっと琴子の頭に手のせて顔を覗く。

「うーん、清水先生は好きなとこに行けばいいっていうから……まだ決めてないけど」

直樹が居るならテニス部行こうかなーと思ってたけれど、幹も真里奈もテニス部に行くと云ってたのでやはり実習生がゾロゾロとあからさまにテニス部行くのはどうかと思い、悩んでいたのだ。

「……とりあえず、指導案出来るまでは部活指導しなくていいって云われたから……」

「ふーん、まあ、頑張れよ。やっぱ部活担当するといろんな生徒と知り合えるし、これぞ教師の醍醐味だよなー」

バンバンと琴子の肩を叩き、夕陽に向かってラグビーボールを持って駆け抜ける姿を妄想していた啓太に、
「鴨狩先生。行かなくていいんですか?」と、直樹が冷ややかに問い掛けた。

「お、そーだな。じゃあな、相原」

そういって啓太は慌てて視聴覚室を飛び出していった。
気がついたら、視聴覚室には直樹と琴子の二人きりしかいなかった。

「あ、入江くん……さっき云ってた視聴覚資料って何のこと?」

振り返った時、直樹はどういうわけか全ての窓のカーテンを引き始めていた。
視聴覚室のカーテンは遮光カーテンだ。あっという間に室内は真っ暗になる。

「……入江くん…?」

「あ、さっきのは口から出任せ。でも現国だって補助教材にDVDとか使ってもいいんじゃね?」

「あー、そうね……!」

それ、ちょっといいアイデアかも!
一瞬顔をぱっと輝かせた琴子の身体が、あっという間に視聴覚室の床に押し倒された。

「えーー!?」

カーテンを引かれていたが、隙間からほんのりと光か漏れて、完全な暗闇ではない。とはいえ、鳥目の琴子には真っ暗と同じであった。あまりに唐突に、机と机の狭間に隠れるように押し倒されて、思わず琴子は手探りで机の足を掴んだ。

「この部屋、いいだろ? 床にカーペット敷いてあって、冷たくない。防音も完璧。絶対図書館よりオススメだぜ」

外から埃を持ち込まないよう土足禁止の部屋だ。お陰で押し倒すのには最適なチョイスだな、とにんまり思う直樹である。

「なんといってもAVルームだしな、ここ」

「エーブイ…?」

顔は見えないが、随分間近に愉しげな声が降ってくる。
アダルトなあれこれを思い起こして真っ赤になる琴子だったが、正式にはAudio-Visual Roomである。

「ちょ……ちょっと待って……」

迫ってくる顔から逃れようと、身を捩る琴子の腕が強く押さえつけられる。

「待てない……もう散々待ったし」

いやいや、ちょっと待て。待ったのはーーずっと待ってたのはあたしの方だってば‼

そう噛みつこうとした唇は、言葉を発する前に塞がれた。
そのまま琴子の唇から意味をなす単語が紡がれることはなくーー。

甘い吐息と絡み合う舌と唇から零れ落ちる水音がーーしんと静まり返った部屋の中に響きあっていたーー。




ブラウスの釦が一つずつ外されて。
露になる胸のささやかな谷間に優しく唇がなぞられてーー

ーーダメ。絶対に、ダメ………

そう思う片隅で、流されて行くことに躊躇いのない自分もいる。

だって……薄闇の中で琴子には全く直樹の姿は見えないのに、何故だかとても琴子を欲している狂おしい程の熱を感じてしまっているから。

ーーこのまま流されても……。

そう思って目を閉じるーーと。


入口の方で、ガチャガチャと音がした。


「……ほら、先生、鍵がかかってるわよ」

「大丈夫。僕は今日、鍵の当番でマスターを持ってきてるんだ」

「……もう、ガッキーたら。用意周到なんだから」

ガチャっと解錠する音がして、琴子は思わず声をあげそうになり、直樹に手を押し付けられ口を塞がれる。

「……あら? 真っ暗よ」

「本当だ。スライド上映でもしてそのままなのかな? 」

「そうね」

二人の人間が入ってきた気配に、琴子の心臓はばくばくと早鐘を打ち、極力音を立てないように必死に直樹にしがみつく。
こんな状況、ばれたらおしまいだーー

灯りを点けられたら全ては終わるーーそう思っていたが、何故だか蛍光灯のスイッチは入らなかった。


灯りを点けないまま、人の気配は部屋の奥へと移動していく。


「……本当にここでするの?」

「ここは一番いい部屋なんだぜ。なんといってもカーペットが敷いてあるし、防音も効いてる」

何だか何処かで聞いたフレーズである。
多分、直樹はいやーな顔をしている。
そんな気がする。

そして、あろうことか。
新たな闖入者たちは机と机の狭間にもう一組のカップルがいることなど気がつかないまま。

ーーおっぱじめたのである。



「いやん……先生、ダメ」

「さくらくん……ああ、いいよ」

「あん、あん……」



とにかく直樹達は、気付かれないよう必死で息を押し殺して、身動ぎ一つしないようにしていた。ただ体勢としては琴子は直樹に組み敷かれた状態のままである。
直樹は目が慣れてきているので、入ってきた客が誰なのかはわかっていた。
位置的には死角になっていて、行為そのものは見えないが、とにかく甘い声がずっと響き渡り、薄闇の中ですら琴子が真っ赤になって耳を押さえ目をぎゅっと、瞑っているのがわかる。

とはいえ。
他人のあれこれを覗き見する趣味もないので、二人にとってはある意味苦痛の数十分であった。


「……あらやだ、先生、もう終わり?」

「あ、早すぎた? ま、場所が場所だし」

「でも、まあよかったわよ。自慢するだけあってこっちは中々の逸品ね、西垣センセ」

「はははは………それはどうも……」

「いつもこんなことしてるの? 確かに学校ってスリルがあっていつもと違うテンションだけど」

「 いやいや、いつもなんて」

「もしかして、今日きた実習生も口説こうとか思ってる?」

「さあ ……どうかな?」

「ま、イケナイ先生……」

身支度が終わったらしく、会話をしながら声が入口の方に遠のいていくのがわかった。





「………だ、誰だったの!?」

突然やって来て桃色劇場を繰り広げられ、風のように去っていった二人が消えた扉を茫然と見送りながら、琴子は呟いた。

「多分、2Bの西垣先生と、女は事務員の中田さんじゃないか?」

「ええっ西垣先生って隣のクラスの……? 中田さんって……朝あたしたちに出勤簿の書き方教えてくれた……?」

学校事務の中田さくらは確か高卒で、二十歳そこそこの娘だった気がする。
自分より年下ではないかっ!
朝、自己紹介を受けた時はとても清純そうな真面目なお嬢さんに見えたのに!

何だか呆気に取られるというか愕然としていた琴子のその胸の上に直樹の手が置かれ、やわやわと揉み始めていた。

「い、入江くん……?」

「じゃあ、出遅れたけどおれたちも……」

「ええっ? まだやる気なの!?」

「当たり前。見せつけられただけで終われるかよ」

「で、でも……」

「でも、じゃねーの」

同じ空間でコトが始まって、恥ずかしそうに耳を塞いで震えている琴子が可愛くて、そのままこっちもコトに及んでしまいたかったが、間違いなく琴子が声を抑えきれないと流石に我慢していたのだ。

もうこれ以上待てる筈がないーー。

と、思って再び琴子の首筋に唇を這わした途端に、スピーカーから、チャイムの音がーーさらに哀愁漂う帰宅時間を知らせる『遠き山に日は落ちて』の音楽が………


「きゃー今何時っ?!」

「……6時……かな?」

「だめーっ絶対ダメ! 指導案書かなきゃ! 清水先生、部活から戻ってきちゃうー」

そしてものすごい勢いで琴子は直樹を押し退けた。

「いてっ」

その反動で直樹は机に頭を打ち付けた。

「あ、あ、ご、ごめんっ入江くん!」

「お、おまえっーー!」

怒鳴りかけた直樹の頭を、琴子がふわっと抱え込むように抱いた。

「ごめんね? 痛かった?」

打ち付けたであろうところを撫でながら、優しく頭にキスをする。

「そっちじゃなくて、こっち」

鳥目でいつまでも暗がりに慣れない琴子の手を導いて、自分の唇に触れされる。
琴子はその唇にキスをした。

「……行けよ。今日はこれで許してやるよ」

そういう直樹に、「やっぱ、こーゆーの、学校じゃダメだよ」と少し困ったように呟く琴子。

「ばれないよ。西垣だって、噂はあるけれどバレたことないし。……噂がマジとは思ってなかったけどね」

まあ、淫行教師と同列に思われるのはごめんだが。

「西垣先生はバレたらクビでしょ?」

「……多分ね」

「あたしは……大学を退学させられるかも」

「……大丈夫、絶対バレない」

自信たっぷりに云う直樹に、「ほんと、何から何まで自信あるのね」くすっと笑う。

「…… あたしは、こんなことより、まず入江くんから色々話を聞きたい」

「色々って?」

「色々よ! 私の知らない入江くんのこと、色々!」

「……2週間の間にゆっくり話してやるよ」

カーテンを開けながら話す直樹。突然明るくなって、眩しくて目を細めた琴子だが、何だかとても楽し気な彼の顔をようやく見ることができた。

ーーもう。絶対、面白がってる。

自分だけが振り回されてどぎまぎしているみたい。……先生なのに。

そんなことを考えながら乱れた服を直していた琴子は、突然ふっと思い出したように、「あーーそういえばさっき、現国の視聴覚教材がどうのこうの云ってたよね! それって何処!?」と叫んだ。

「ああ、あっち。資料室の方にDVDとかあると思うけど」

「えーじゃあ、一緒に探して! 宮沢賢治くん!」

ーー賢治くんの、何を?

「岩手の資料とか、朗読CDとか……」

ああ、そういえば現国の単元、今、近代詩やってたんだっけ。

「…………わかったよ」

直樹は肩を竦めて立ち上がると、「 こっちだよ」と資料室を案内して、結局一緒に資料教材を探す羽目になったのだったーー。












※※※※※※※※※※※※



…………どうも寸止めが楽しくなってきています(直樹イジメ?)……おかしい。このシリーズ、全教室制覇で教室エロを展開させようと思ってたのに、全教室で直樹が琴子ちゃんに寸止め食らうシリーズになりかかってます……^-^;
毎度お邪魔虫がわいてくるお約束の黄金パターンが生まれるのだろうか……?
野獣、すまぬm(__)m

とりあえず、正しい視聴覚室の使い方をして、漸く実習1日目が終了です(^w^)






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19940624 ~魅惑のどりあん☆きゃんでぃ





まずは、narack様っスミマセン!
リンクのお礼と4周年のお祝いに書かせてくださいとお願いした、『ドリキャン』。遅くなった割りにこんなレベルの代物で、申し訳ないです。やまなしおちなしいみなしと申し上げた通り、だから何なの?といったような小ネタでございます。
とても、あの名作『CANDY MAGIC』のパロディなんて堂々と言えません。がーーっ

とりあえず、どうぞ……^-^;










※※※※※※※※※※






「ただいま……」

直樹が玄関の鍵を開けて家の中に入っても、大理石の上がり框の奥の広々とした空間からは何の返答もなく、何となくため息を一つついてから、スリッパを手に取る。
夕方6時過ぎ。
そういえば今朝、紀子は裕樹を歯科検診に連れていくとか、云っていたっけ。
にしても琴子は帰っている筈だ。
四回生ともなれば空き時間は多い。金曜の午後は講義はない筈だし、友人たちと出掛けるという話も今日は聞いていない。
律儀な琴子は朝かならずその日の予定を直樹にも紀子にも伝えていた。
無論、突然の予定変更がないわけではないだろうし、学生といえど主婦なのだから寄り道などせずに真っ直ぐ帰れ、などと無体なことを言うつもりも毛頭ないが。
ただ。最近実験が立て込んで滅多に帰れないこんな時間に珍しく家に辿り着いたというのに、いつもの熱烈歓迎な暑苦しいお出迎えがないことが実は少々気に入らない……が故にふっと出たため息だったということに、彼自身気がついていなかったりする。

夏至を過ぎたばかりのこの時期、まだ外は充分に明るい。
それでも部屋の中はそろそろ灯りが欲しい時刻である。
リビングの扉の磨りガラスから漏れる灯りが見えないことから、やはり誰もいないのかと、扉を開けた瞬間ーー妙な異臭が鼻腔を掠めた。

ガス漏れ……?
腐臭……?
ーー琴子がキッチンで何か作ってる!?

臭い自体は微かなものだ。敏感な者にしかわからない程度の。
直樹はまずキッチンを見た。何かとんでもない光景が繰り広げられているのではないかと一瞬身構えて。
しかし、そこには誰もいないーーと。

「あ、入江くーん、おかえり」

琴子の声がリビングのソファから聴こえた。

「居たのか! 琴子……」

直樹はまず扉横の部屋のライトのスイッチを入れた。
夕暮れ時でぼんやり仄暗かった部屋がぱっと明るくなる。

「ごめんねー出られなくて。クサいかなーと思って」

少し口をもごもごさせながら、琴子がリビングテーブルの上に置かれている色とりどりなお菓子の袋らしきものを検分していた。

「……琴子……何を口にいれてる?」

なんで、そんな変な顔をしているんだ……?
ってか、眉間に皺を寄せて、いったい何をーー。


「これ」

ちょこんと赤い舌をだす。
舌の上にはクリーム色の楕円の飴がひとつ。

「……臭い……」

異臭の原因はそれだと分かった。

何を……何を食ってるんだーー!? 琴子っ

「これ。ドリアンキャンディ。ほら、お義父さんのタイ土産」

差し出された黄色の菓子袋にはトゲトゲしたドリアンのイラストがばんっと描かれてあった。タイ語で文字が書かれていたが、無論わからない。






重樹がタイの支社工場への出張から帰ってきたのは昨夜だった。挨拶だけはしたが、土産物は見ていない。
琴子や紀子が免税店の香水やら化粧品やらを広げて何やら楽しげに騒いでいたが。

こんな怪しいものまで買ってきたのかーー。

タイカレーのレトルトやら、インスタントラーメンの類いはまだいいだろう。
象の形のチョコも定番だ。
だがこれは一体ーー。
ごっそり袋に入ったいかがわしいお菓子の数々ーー。
スーパーや露店で買ったとおぼしき物たち。どう考えてもただのネタ用だろうが。

日本の物真似のような駄菓子に、いもむしのフライのようなゲテモノから、そしてドリアン一式!
ドリアンのドライフルーツ、ドリアン羊羮、ドリアンクリームのクッキー、そしてドリアンキャンディ………

「……そんな顔をしかめて食って……美味いのか?」

思わず直樹も顔をしかめて訊ねる。

「美味い……というには何かが違うというか……でも臭いのは確かよね……口の中に濃厚な玉葱臭が……」

「つまりは不味いんだろうが」

呆れたように直樹が呟く。

「……裕樹くんもお義母さんも吐き出してた」

とくに、このドリアン羊羮、最悪。流石にあたしもこれは無理。

そう、琴子は笑ってドリアン羊羮なるものを見せる。基本、琴子は食べ物を粗末にしない。出されたものは必ず食べるし、口にしたものを吐き出すこともしない。

「これに比べれば、キャンディの方はまだマシなのよ。 まあ、これも裕樹くんひとなめして吐き出してたけど。歯医者の前にこんなの口にしちゃってーと慌てて歯を磨いてたわ」

そして、「入江くんも食べる?」と直樹にドリアンキャンディの袋を差し出した。

「いるかっ!」

弟が吐き出すものを自分が食べれる筈がない。

だいたいドリアン自体、好んで食べたいとは思わないフルーツだ。
一度タイで食べたが、あまりの甘さと濃厚なねっとり感に胃が凭れて堪らなかった。第一臭さはこんな加工品からは想像もできないくらいの悪臭だ。なんといっても機内やホテル持ち込み禁止のフルーツなのだから。
その腐った玉葱に比喩えられる悪臭から「悪魔の果実」とか、濃厚で甘美な甘さから「果物の王様」ともいわれる東南アジア産の果実は、日本人には好き嫌いの分かれる珍品だ。
直樹は一口食べてもういらないと思ったクチだった。

「えー? 話のタネに食べてみてよ。すっごい不味いわけじゃないと思うのよ。とってもクリーミィで。で、とっても甘いんだけど、これって何の甘さだろう?ってなんか考えちゃって……」

何やら考えこんでいる琴子に、ひとつため息をつき、
「わざわざ一個食べる気はないから、こっちで味見するよ」そう言って、琴子の顎をくいっと持ち上げると自分の方に向かせて、唇を重ねた。

舌を侵入させた途端に濃厚な甘さが絡み付いてきた。
だが、やはり美味な甘さではない。どうしても玉葱臭も伴って不思議な味を醸し出している。

琴子が舌を使ってキャンディを直樹の口の中に押し付けてきた。
仕方なく琴子の唾液とともにその飴をダイレクトに味わってみる。

……やはり微妙である。

この甘さ、何の甘さだろう?

加工品のせいか、ドリアン独特の胃の凭れるような強烈な甘さは抑えられている。しかしその甘味は独特で、形状は不〇家のミル〇ーと似ているのに全く異なる甘さだ。(どう考えてもミ〇キーの方が美味い)
何処か毒々しい。

チクロ、サッカリンーー発ガン性があるからと日本では使用禁止になった合成甘味料を思い出した。海外で食した時、禍々しいくらいの極悪な甘さに顔をしかめたものだ。
そんな強烈な甘さとはまた何処か違う。重い甘さ。
でも何処か人工的。自然の南国のフルーツの甘さとは別の、工業的な甘さーー
香料の強い口紅を舐めてるみたいな?
ああ、何だか海外ブランドのルージュを付けていた琴子にキスした時のーー思わず顔をしかめてこんなのお前に似合わないって云ったら随分凹んでいたっけ。
そんなことを思い出しながら、もう一度キャンディを琴子の舌の上に押し返す。


琴子が戻されたキャンディを再び直樹に戻そうと、必死で舌を絡めてくる。
追いかける。
逃げる。
キャンディが上顎に張り付いてジタバタもがく。
口腔内で舌を使った必死の攻防が繰り広げられていたーー。

結局は臭いだな、と結論付く。
嗅覚は味覚を支配し左右する。鼻が利かない時はカボチャとジャガイモの区別もつかなくなるのだ。
この悪臭の大元。 エステル、アルコール、アルデヒドに属する26種類の揮発成分、及び8種類の硫黄化合物。強烈な臭いの元は臭い成分の一つ硫黄化合物1-プロパンチオールだ。
加工品となっても消えないこの臭い、なるほど悪魔のような執拗さだ。


口の中をねちゃねちゃと行き交う唾液もその甘さと臭気に侵されている。
多分、いつまでも口に残るぞ、と思う。
ドリアンを食べた時もそうだった…。時間が経っても中々消えないのだ。クリームチーズを食べた後に生玉葱を食べたようないつまでも消えない、いつまでも纏わりつくあのねっとりとした風味。

琴子の口元からつうっと唾液が一筋流れた。
今キャンディは何往復かして、琴子の舌の上に戻った。さっきよりかなり小さくなった感触だ。
琴子が再び直樹の口に押し返そうとするが、今度は直樹は琴子の口腔内をぐるっと舌で舐めあげながらキャンディから逃げる。

舌が痺れて疲れたのか、「ふう……ん」と鼻から抜けるような苦しげな声がして、思わず唇を離す。
顔を真っ赤にして、とろんとした潤んだ瞳の琴子と目が合った。
いつの間にかソファの上で直樹の膝の上に乗って、しがみつくような格好でキャンディの行きつ戻りつを繰り返していた二人。どう見ても濃厚なキスを繰り返す、エッチまであと10分な感じのカップルの有り様である。

いやーもう、10分なんて待てないな。

「琴子。舌、出して」

直樹の云うがままに舌をすっと出す琴子。
その上にはかなり小さくなったドリアンキャンディのひとかけ。
直樹に貪られて真っ赤になった唇から差し出された舌に妙な興奮を覚えながら、その舌にパクリとかぶり付き、キャンディを奪い取ると、テーブルの上のティッシュボックスからティッシュを一枚取って、ぺっとそのキャンディを吐き捨てる。

「あ、捨てちゃった……」

琴子が何故だか残念そうにごみ箱に投下されたそれを見つめていた。


「……部屋、行く?」

直樹の問いかけにこくりと頷く琴子。頬が上気して、濡れそぼった唇がひどくあだめいて蠱惑に満ちていた。

ーーすぐに食いたい……

「……ここでもいいけど」

意地悪く耳元で囁くと、それには全力で首を横に振る琴子。

「お義母さんたち、帰ってきちゃう……」

「じゃあ、行こう」

直樹に手を引かれて立ち上がる琴子。
ぱちっと電気を消してからリビングを後にする。
ひとけのなくなったリビングはすっかり薄闇に包まれて、仄かにドリアンの香りだけを残していた。

「……おまえ、部屋にキャンディボックスあったよな?」

「うん。やっぱ口直し欲しいよね? 何だかいつまでも変な味が口の中に残っちゃって……色々あるよ。イチゴキャンディに、パインにソーダに薄荷キャンディ……何がいい?」

「薄荷かな?」

甘いものの選択に珍しく直樹が即答だった。

「一番スッキリしそう」

「そうだね」

「でも、おれはおまえの舐めたの貰うだけでいいから」

耳元でそう告げられてまた真っ赤になって立ち止まってしまう琴子を抱えあげて(俵担ぎで)とっとと二階に上がっていく直樹。

「ひゃあああーー」

叫んでジタバタする琴子を尻目に、「早くしねーとおふくろたちが帰ってきちまうだろ?」と、にやっと笑う。

「…………おまえだってその気になってるくせに」





ドリアン。
その強烈な薫りは玉葱の腐敗臭だの都市ガスの臭いだのにたとえられるがーーその語源には『麝香の薫りのような』と言う意味もあるそうな。麝香には興奮作用、強心作用、男性ホルモン様作用など薬理効果があると云われているが……さて、ドリアンキャンディにそのような作用があるかは………不明である。









※※※※※※※※※※※


ああ、全国の『キャンマジ』ファンの皆様ごめんなさいm(__)m

去年、うちの上司がタイのお土産として買ってきたドリアンキャンディを食した時から思いついていたお話でした。
くそ不味いキャンディの味を口の中で行きつ戻りつさせながらあれこれ直樹さんが考察するという……だからなんやねん……な、お話でした^-^;
一応二人のオチはアマアマに……なっておりますでしょうか?

ついでに捕捉しておくとこの日の二人の晩御飯は、紀子と琴子で作ってある設定。裕樹くんたちが帰ってから事後^-^;なに食わぬ顔をして一緒にお食事でしょう。『キャンマジ』で二人の食事が心配されていたようだったので、念のためf(^_^)




どう考えてもnarack様の『キャンマジ』のパロディチックなお話なので、リンクのお願いをするときに図々しくもついでに書いてもいいですか?とお願いしちゃいました。
快く了解してくださったnarack様、ありがとうございました。


ちなみに、ドリアンキャンディ、何人かは吐き出してましたが私は食べきりました(^w^)
ドリアン羊羮は食べたことないけれど、かなり極悪らしいです。
ドリアン自体も食べたことなくて、描写は食べたことのあるママ友がとても詳しく語ってくれたので、それを参考に。
スティックタイプの焼菓子の空洞部分にドリアンクリームが仕込んであるお菓子も……かなりドリアン臭満載でした。これもみんな吐き出してたけど、私は食べたぞ……(-.-)一度口にしたものをなかなか捨てられないのですよ……。

食べたことないけれどドリアンチップスは美味しいらしいです。

ドリアン菓子よりドライバナナをチョコレートでコーティングしたお菓子の方が強烈だったかも。いつまでも不味さが口の中でもさもさしてるの~~

いや、ちゃんと普通に食べれるお土産もあるんですが、どー考えてもネタで買ってきたよね?的なものも多くて。イモムシせんべい……流石に手は出せなかったな……

海外土産の不味いものNo.1は私のなかではオランダのグミでした(ハーブや漢方のような殆ど薬な味でした……)
あれ? なんだか不味いもの談義になってしましました^-^;


と、まあ大した話じゃございませんが、narack様に進呈いたします^-^;







そういえば。
イタキス映画化。
スタッフ変わるというので焦ったけれど……キャストまで変えるという暴挙をするだろうかという気もします。
九州でロケって確実にあの話があるわけで。映画でキャストを全てを刷新してなお、九州の夏休み編をチョイスするかなーと思うわけですよ。
あれだけふるほののイリコトで商業効果が出たのだから、商魂逞しい方々が今さら変える筈ないよね、と。
もし変わるんなら本当に大きいとこが乗り出したか……(その可能性、あるかなあ? ドラマ終わってこんなにすぐに)
スタッフはねー1から2も変わったわけだし。凄く心配だったけれど2のスタッフもとても原作を大切にしてくれるチームだったし。きっと2のチームは『南くんの恋人』で忙しいんだね?などと思ったりして。
とりあえず、いい風に転んでくれればな、と願ってやみません。
果たして近所のシネコンでやってくれるような映画なんだろうか……^-^;


リンクのご報告です♪



さて、この度またまた素敵な大好きなサイト様とリンクさせていただくこととなりました。





ぴくもん様の運営される『Swinging Heart』です♪





はい、もちろん皆様御存知ですよね(^^)
麗しいイラストと素敵な隙間ストーリィの数々!
もう、その洗練された文章の美しさと云ったら! 繊細で芳醇な言葉たちは上っ面なものではなく、イリコトの心の機微を本当に上手く表してくれていて、すとんと心の中に入り込み、琴線を響かせてくれるのです。
ああ、上手に言い表せない自分の表現力の無さがもどかしい……(T.T)
そして何より、おそらく原作ファンの誰もが妄想していたあんな話も、誰もそんな隙間想像もしてなかったこんな話も、とにかくそのスキマを埋め尽くしたお話の数々は、どれもこれも本当に心をじんわりあったかくさせてくれるのです。

もう、誰もが想像したであろう、慰安旅行、露天風呂のその後も(もう、しっかり最後までいっちゃってくれてますよ)皆様御存知のベビードールの行方も! 神戸のあれこれも、入江くんの卒業式のその後も(千夜夢様とのコラボも素敵です)、原作では描かれてない琴子ちゃんの卒業式も(水玉様とのコラボも素敵です)、欲しかったスキマが『Swinging Heart』の中に完璧に存在しているのです。もう感涙。

お話だけでなく、イラストも本当にその構図も色彩も美しくて! あまーい二人が並んでいるだけでうっとりでございます。
そしてあの名作漫画『彼女がBDに着替えたら』。合同本をお持ちの方は、夜な夜な家族にばれないようこっそり覗いていることでしょう(//∇//)あ、私もねf(^_^)


先日久しぶりに新しいイリコトのお話を更新されていて。待ってましたと狂喜乱舞されたぴくもん様ファンも多かった筈(^^)あ、私もですf(^_^)
期待を裏切らないきゅんとするお話に、ぶしつけにもリンクを申し出てしまった私です。
そうしたらもうその日の夜にはリンクのバナーを作って下さっていて! 驚きの早業! 感激です! 感動ですっ お忙しいのに申し訳有りませんでしたm(__)m
私のわがままを聞いて下さり本当にありがとうございました。


黒バスの方は再放送の追っかけで、まだまだ赤司くんの姿は一瞬だけで実の処よく分からないナゾなヒトのままですが……もういつその俺様な赤司くんの全貌がわかるのか、わくわくして待っているのですよ♪


ぴくもん様。
願いを叶えて下さってありがとうございます。
今後ともどうぞ宜しくお願いいたします(^^)




『10年目の同窓会』あとがきです♪



やっとこ同窓会終了しました。
実をゆーと、去年の今ごろ、自分の高校の同窓会がほぼ同じような段取りで執り行われてました。総会→懇親会→学年の同窓会みたいな流れで。で、地元に家を買ってた私は10年前の時点で幹事を任命され、半年前くらいから幹事会に駆り出されて。
他所の高校がそんなことをしているかどうかは知りませんが、うちの高校は周年学年が招待されて、(創設が古いのでかなりの年齢の方々まで参加してました^-^;)年に一回5月に行うのが恒例のようです。
久しぶりの懐かしい顔ぶれ、色んな職業についてそれぞれの人生ーー感慨深いものがありました。意外と、ナース率が高くて、しかも医者と結婚率が高い!みんなやるなぁ(^^)結構驚きでした (^.^)
そんな同窓会を手伝いながらずっとイリコト変換していた私……^-^;

同窓会で、夫婦二人で鮮やかに救命し、究極の見せつけー!というのはずっと書きたかったのですが、書き出せなかったのはやっぱり救命シーンに自信がなかったからです。
医療ドラマフェチなんで、浅薄な知識ならあるんですが。
どんな症状にしようかとずっと悩んでて。
例えばその辺の工事用ドリルで頭蓋骨孔を開けて脳血腫を取り除くとか(^^)そりゃねーだろー…大蛇森センセーならできるんやろうか……?なんて(^.^)
結局『肺気胸』に落ち着きました。緊張性気胸は一刻を争う病なので、救命関連の情報番組でよく紹介されるようです。
実は日キス2で琴子ちゃんが初めて処置の介助をするシーン、原作では虫垂炎でしたがドラマでは『気胸』でしたね。この時既に気胸を決めてあれこれ調べてたので、お?と思いました。琴子ちゃん、気胸、既に経験済みねっ(途中リタイアだけど)みたいな^-^;
とりあえず倒れる人間の既往歴を知っている人が欲しいと、幼馴染みのコンビを決めたのですが、思いの外、二人がどんどんヤな女になってしまって……扱いにくかったー(^^;特に高階優梨子さん。本当は佐藤さんのほうがキツい女の筈だったのに予想外に彼女のほうがまともな人に……
途中でフラグを優梨子さんに立てちゃったんで、一瞬フラグ立て間違えたかと焦りました^-^;
こんな性格の女は生死の境をさ迷わなければきっとなかなか変われないでしょう。ましてや救ったのが散々馬鹿にしてた琴子ちゃんともなれば……ね。
なのでまあこれでよかったのかな?と。
あれこれ伏線を引いていたのですが(ずっと前のお話から張っておいたものや、今回のお話も細かい所でこの救命シーンの為だけに)気がついて下さった方もいて、嬉しかったです(^.^)何とか回収できて良かった~~(^^;

と、まあ、そんなこんなでブログ開設当初から書きたかったお話が書けて少し満足だったりします。
入江くんの手伝いをしたいが為に看護婦になった琴子ちゃん。この頃にはしっかり入江くんのフォローができるんじゃないかな、というちょっとした願望です。
思ったより長くなってしまったけれど、お付き合いいただいてありがとうございました♪


さて、今後の予定ですが。
一本小ネタをアップしてから、キミゴゴ書こうかな、と思ってます。あのお話をお待ちいただいている皆様、すみませんm(__)m
ただアレは不定期更新シリーズのつもりなんで……教室えろ書きたくなったら書く、みたいな(^^;何とか琴子ちゃんに授業をさせるまでは書こうと思ってるのですよ。あと、一度はヤらしてあげないとね、野獣高校生に……^-^;

気がつきゃもう6月も後半ですね。
5月が同窓会月間、6月が教生月間のつもりだったのに、6月終わっちゃうよー(T.T)


そして、今頭の中には二つの夏のお話が行ったり来たりしてます。

ひとつは神戸の夏休み。うちの神戸は隣にかをる子さんという腐女子なお隣さんがいます。神戸は彼女目線で書いてたのですが、今回は三人称でないと書けない(きっと入江くんがDIYで壁の防音完璧にしてるので)夏休みの話、さてどうしよう? また医療ネタ出てきそうです……(^^;

もうひとつは九州の夏休み。こっちは完全パラレルで、小6から中学生くらいの思春期の時代に、九州で夏休みの期間だけイリコト二人が出会ってたら……というオリジナル要素な話です。
どっちもネックは方言ですが(^^;
………どっちが読みたいですか……?
多分ひとつ書いてるうちに夏は終わります……きっと気がつきゃ正月だ。
ああっ1年が早すぎるっ(°Д°)






20010514 ~同窓会……二人だけの後夜祭

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20010513 ~10年目の同窓会 (終)





「はい、琴子、入江くん」

理美とじんこから差し出されたのは、琴子のバッグと直樹の上着だった。

「ありがとう」

にっこりと笑って受けとった琴子だが、少しふらついて直樹の腕にがしっと掴まる。

「何~~なんかヨロヨロしてるけど。さっきのキスで腰砕け~?」

理美もじんこもにやにやと含み笑いを浮かべていた。
ぼんっ! と一瞬のうちに火を吹くように真っ赤になった琴子だが、隣の直樹は何処吹く風の全くの無表情である。

「べっ別に……ちょっと今頃になって、さっきの緊張感が押し寄せて、ドキドキしちゃってるだけよ!」

琴子の言葉に、理美はふふっと笑って、「うん、でも、カッコ良かったよー琴子! あんた本当にナースやってるんだねー」と、抱きついてきた。

「そうそう。あの緊迫した中でめちゃめちゃしっかりテキパキ対応してたからさ、何かが取り憑いたかと思っちゃったよ」

じんこも琴子の肩にがしっと手を置いた。

「何かって何よー!?」

「ナイチンゲール様!?」

ぎゃはははっと3人で笑い合う。

「もう、あたしだってやる時はやるんだからねー」

膨れたように話す琴子に、「うん、よおぅく分かったよ。少なくともあっちで小さくなってるABC組出身のドクター&ナースよりは断然出来る子だってことがね!」と、理美はにやっと笑って端っこに固まっている集団を指差した。

「まあ、みんな酔っぱらってたからねー」

「酔っぱらってるにしろ情けなさすぎでしょ? 見てるだけなんて」

これ見よがしのじんこも言葉に、壁際で立つ瀬がないように縮こまっていた集団はさらに小さくなる。
そして、意を決したように一人が琴子の方にすたすた歩いてきた。
塩谷芽衣子だった。

「相……入江さん、ごめんなさい。さっきは酷いこと云って。やっぱり外科で頑張ってるだけあると思った。あたし現実にあんな場面に遭遇したの初めてだったし、ずっと内科で毎日おんなじような処置の繰り返しで、酔ってなくてもあなたみたいな対応出来たか自信がないわ。ーーほんとに、感心した……そして、すっごく恥ずかしい」

そうして頭を下げる芽衣子に倣って他のナースたちも神妙な顔をして頭を下げた。

「そ、そんな……あたしは何にも……結果的には入江くんが来なきゃどうにもならなかったし……」

つい謙遜してしまう琴子に理美とじんこは目を合わせて肩を竦める。

「俺たちもごめん」

T大K大のドクター二人も琴子に頭を下げ、そして直樹にも「やっぱ、おまえってすげぇや……」と賞賛の眼差しを送った。

「病理だからって逃げてて、こんな時に役に立たないって情けないよな ……」
と、自嘲気味に頭をかく池沢に、「 全くだな」と、直樹は容赦なかった。

「入江くん……もう少しオブラートに包んであげないと~~」

琴子の言葉に「何で? 事実だろ?」とばっさりである。

直樹の近くにいた渡辺は、(こいつ、もしかして池沢が琴子ちゃんに絡んだこと知ってるのか? やっぱり超能力かっ?)と、思ったくらいだーー。

「確かに病理には病理の仕事がある。病理医師のお陰でオペ中の迅速病理診断ができて、おれたち外科医は安心して腫瘍切除が出来る。感謝してるよ。だが、せっかく医師免許持ってるのに、必要最低限の救命スキルを維持しないと宝の持ち腐れだ。この先どんな大規模な災害や事故に遭遇するかもしれないのに、研究者だから、病理だから、精神科だからといって、何も出来ないのは大きな後悔を招くことになるぞ」

ごもっともな直樹の言葉に皆しゅんと打ちひしがれる。

「わかればいい。では、解散! さあ琴子、さっさと部屋に行くぞっ」

ぐっと琴子の手を握って引っ張ろうとする直樹を、「ま、待って……! 入江くん」琴子は踏ん張って制する。

「もう、同窓会終わるから……一応締めまでいないと……」

「は?」

何を云ってるんだか、というような瞳を向けたものの、琴子はステージの方を指して、「ほら……」とにっこり笑っている。


ステージでは幹事の日比野が閉会の挨拶を始めたようだった。

「えー、終盤にハプニングが起きましたが………そろそろ斗南高校第25回生同窓会を締めたいと思います。それでは学年主任だった永江先生に最後の挨拶をお願いしたいと思いますので……永江先生、どうぞ」


しかめっ面の直樹をよそに、琴子はにこやかにたいしていい思い出もない学年主任に向けて拍手している。

おまえ、おれがT大受験ばっくれたことで散々嫌味云われたの忘れたのかよ……

まあ、忘れてるんだろうな。
ある意味幸せな鳥頭。
でも負の想いをいつまでも引きずらないのが琴子の琴子たる由縁なのだ。

しかし、元学年主任ーー彼も随分上機嫌に酔いが回っているようだった。

「いやー本当に今日は楽しかった! 卒業して10年、みんな成長したなー。それぞれの分野で活躍している様子が伺えて嬉しいよ! そして、特に! A組入江とF組旧姓相原の夫婦の活躍は素晴らしかった! あの相原が立派に看護婦としての職務を全うして、夫たる入江のサポートをする。まさに夫唱婦随の連携、いや素晴らしい!」

学年主任の思わぬ賛辞に、再びスポットライトが入江夫妻に当たり、琴子はまたまた頬に手を当てて顔を真っ赤に染める。

「それ、意味が違いますよ。『夫唱婦随』。夫の唱えることに妻が一歩下がって付き従う。夫婦円満の秘訣のように使われるが、おれたちはそんな前時代的な夫婦じゃない」

意外なことに直樹からクレームが起き、永江は「え?」という顔をした。

「さっきご覧になったように、琴子はおれがいない時でも十分自分の意思で一人で動けるし、黙っておれの云うがままにおれの後をついてくるような女じゃない。おれたちは対等だし、いつだっておんなじ立ち位置で同じ目標を持っているーーいや」

ふっと笑って琴子を一度見ると、
「どっちかというと、放っておいたら、こいつの方がおれを置いて猪突猛進でとんでもない所にぶっ飛んでいっちまうから、こうやってちゃんと手を繋いでないと危なくってしょうがない」そう云って琴子の手をしっかりと繋いだ。

「……い、入江くん……」

琴子は驚いたように隣の直樹を見上げた。

「……というわけで、言葉の意味は正確にお願いします。いくら担当が英語とはいえ、曲がりなりにも教師なんだから」

この男、恩師相手にも容赦なかった。

「あ、あ、ああ、すまん、そうだな……」

永江は決まり悪そうに頭を掻きながら、ゴニョゴニョと何か言い淀んでいた。
だが、ふっと何か思い出したように、にやっと笑った。

「うん、まあ。夫婦円満なのはいいことだ。何といっても今年の卒業式の日に、二人で学校に篠崎先生のビデオ撮りに来たあと……校庭で白昼堂々と接吻するわ、その後でラブホ行くわ……ってか、ラブホに斗南高校の封筒落としてったの、相原の方だろ? あの後ホテルから学校に連絡あって大騒ぎだったぞー」(※ 10年目のFirst kiss 路地裏のキス編より)

えええーっ

周囲がどよめく。
再び視線が一斉に入江夫妻に注がれる。

「やーん、そんなこと、ここで云う!?」

琴子もさらに真っ赤になって直樹の陰に隠れた。

「……おい。封筒落としたって何のことだよ?」

直樹が怪訝そうに琴子の顔を見る。
途端にしまった! という顔をしてさらに身体を直樹の後ろに隠した。
ホテルに斗南の職員の住所録の入った封筒を落として、学校から連絡があったことは直樹には内緒で、琴子一人でこっそりと謝罪と受け取りに行ったのである。
何にせよ、個人情報の入った物を落としたのは琴子の失態であった。

「……ったく。そんなことがあったのか」

呆れたように琴子の頭を軽く拳骨でぐりぐりとする。

「でも、でも、あの日、ラブホに誘ったの、入江くんなんだからねっ」

「おまえっ……そんな、でけぇ声で……」

「あ……」

もう、今さら、である。
何を聴いても驚くまい……周囲のギャラリーは既にそんな境地に陥っていた。

「……学校から預かった大切な個人情報を落としたというのは、確かに大きな失態でした。謝罪します」

直樹が深々と頭を下げた。
琴子も慌ててそれに倣う。

「……でも、ここでわざわざそれを露呈するのは大人気がないですね」

にっこりと笑いつつ、永江を見る目の色は笑ってない。

「……い、いや……まあ……その……」

直樹の氷のような眼差しにしどろもどろになっている永江を無視して、
「琴子……おまえ、そろそろ限界じゃないか?」と、琴子の方を見る。

「え……?」

「足。パンプス合ってなかったろう? もうかなりヨタってるぞ」

確かに歩くのもしんどいくらいの痛みが履きなれない靴の中で走っていて、かなり直樹に寄りかかる状態だった。でもあと少しくらいは我慢出来ると踏んでいたのだがーー。

直樹が琴子の前に跪いて、「脱いで」と左のパンプスに手をかける。
琴子も戸惑いつつも直樹の肩に手をやり、直樹のなすがままにパンプスを脱いだ。
ふかふかの絨毯の上にきつめの靴から解放された足を置く。少し心地よい。
親指は血でまみれて痛々しかったけれど。

ちなみに直樹が琴子の前に跪ずくというレアな光景も、皆の瞠目を集めている。

「さっき見た時よりだいぶ酷くなってる」

直樹が少し呆れたような口調で云うので「ご、ごめんね」と琴子はつい謝ってしまった。

「謝らなくていいけど」

直樹はそう言いながら立ち上がり、片方のパンプスを琴子に持たせる。

「ーーというわけで」

直樹がくるりと周囲を見渡して、高らかにそう告げた瞬間に、琴子の身体がふわっと浮き上がった。

「妻の足が限界なので、このままホテルの部屋に行きます。では、失礼します。どうぞ皆さんは二次会なり三次会なり、ご自由に」

直樹は琴子を横抱きにーーつまりはお姫様抱っこをして、さっさと周りに背を向けて扉の方へ向かっていく。

その光景に皆、一瞬は何も口を挟めずぼかんとした表情をしたままあっけにとられていた。

「い、入江くん~~~」

琴子の声は、あっさりとワンテンポ遅れてやって来た周囲の悲鳴のような声に掻き消された。


入江くん~~~

やーん、うらやましい……!

いいなあ~~~っ

どんだけあっついの~~!

めっちゃラブラブじゃん…!

ってか、バカップル!?


元学年主任の締めのお言葉は、なし崩しにうやむやになったまま、みんなの言葉を背に受けて、さっさと会場から出ようと扉から出て行こうとした時ーー

「あー、皆さん! 良いお知らせです! たった今、佐藤さんから連絡ありまして、救急車で運ばれた高階さん、無事病院で処置を受けて、事なきを得たそうです!」

日比野のその言葉に、今度は「おおっ」という歓声と、拍手が沸き起こった。

それを聴いて、琴子が「良かったね」と嬉しそうに直樹を見上げて笑った。

「ああ」

直樹も琴子の瞳を見て同じように優しい笑みを返す。今日1日どんな人と会話をしても、この笑みを琴子以外に返したことはなかった。

「……楽しい同窓会だったね」

しかし、このセリフには思わず眉間に皺を寄せる。

「……楽しかったか?……おまえ、ほんとに………」

「えー? 楽しかったよー? 色んな懐かしい人たちと話せて」

妬みや嫉みからあれこれ云われたことや、突然の急病人で逼迫した状況下にあったことなど、後から起きた幸せなあれこれのお陰ですっかり上書きされ帳消しになったらしい。

「……全く、おまえらしいよ、奧さん」

ふふっと笑い合う直樹たちの後ろでは二次会の説明をしている日比野の声が、微かに聴こえた。

「へへへっ最後に入江くんに抱っこされて、部屋まで運んで貰えるなんて、もうチョー幸せ」

エレベーターを待つ間、そう云って直樹の首にかじりつくように腕を絡ませる琴子の唇を掠めとった後、「もっと幸せな夜にしてやるから、覚悟しとけよ」そう耳元に囁くのだった。













* * *


後日談その1




それは同窓会翌日の朝だった。
佐藤美智子が前日会場に忘れたままになっていた優梨子のバッグを受け取りに、大日本ホテルへと赴いた時だ。

フロントで受け渡して貰っているとき、ちょうど入江夫妻がエレベーターホールからやって来て、何だか随分ヨレヨレと足元の覚束無い妻をソファーに座らせると、直樹はチェックアウトの為にフロント方へやって来た。

「………おはよう」

美智子が会計を済ませた直樹におずおずと声をかけると、一瞬眉を潜めた直樹が「ああ」と思い出したように彼女を見た。

「優梨子の荷物を取りに……」

「昨夜ずっとついてたのか? 彼女の容態は?」

興味を感じて質問を投げ掛けるのは医師として、緊急処置をしたものとしての責任からだ。それは美智子にもよくわかった。

「優梨子の家族、なかなか連絡とれなくて。結局一晩付き添ったのよ。まあ、あの娘んち、昔から複雑で、そんなことしょっちゅうだけど。
………容態は安定してるわ。救命のお医者さんもストロー刺さってるのみてびっくりしてたけど、凄く感心してた。あれがなかったら、優梨子は間違いなく命を落としてたって……」

「そうか」

特にそれ以上直樹は興味はないようだった。

二人揃って座っている琴子の方へ行くと、
「あー誰かと思った! 佐藤さんだ。高階さんは大丈夫?」琴子も真っ先に優梨子の様子を訊く。
美智子に説明されて、琴子はそれこそ満面の笑みを浮かべて「良かった~」と胸を撫で下ろした。

「……多分、退院したらまず真っ先にあなた方ご夫婦のところにお礼に行くと思うから」

「え~? 別にいいのに。当たり前のことしただけだよ、あたしたち。ナースとドクターとして」

「でも、あなたたちが居なかったら恐らく死んでた。それはよーく分かってるから、あの娘も。
性格は破綻してるけど、それすらも分からない馬鹿じゃないから……」

「はは……高階さんの口から嫌味以外の言葉が出てきたら逆に戸惑っちゃうかも~~」

照れたように笑う琴子に「そうね」と返し、「そういえば、どうしたの? 何だか歩き辛そうだったけれど」と訊ねた。

「え? えーと、昨日パンプスで靴擦れしちゃって……」

そういって誤魔化す琴子の顔は妙に赤いし、第一辛そうなのは足というより腰のようだったが………

「………そう、お大事に」

美智子は深く言及せずに、「そろそろタクシー来るぞ」と、琴子を抱えて立たせる直樹の所作を(……全く何をしてもカッコいいわよねー)とこっそり見惚れていた。

「じゃあ」

そう云ってホテルの回転扉をくぐり抜けていく二人の背中を見送りながら、美智子は大きくため息をついた。

ーー絶対! ギョーカイで彼以上のいい男見つけてやるんだからぁーー!!

そう、心に誓いながら。


ーーそんな彼女が、顔見知りになった某T大助教授に「おれ、君の番組でコメンテイターやってもいいけど?」とやたらとアピールされるようになり辟易した日々を過ごすこととなるのはまた別の話だ。





* * *


後日談 その2

その日に行われた二次会や三次会が荒れまくったというか盛り上がったというか、とにかくクラス毎やらグループ毎やらに分散しつつも、それぞれが後々にクラス会を執り行う約束が交わされ、実際にその年は何度かクラス会が開かれたという。

そして、どういうわけかその年以降に結婚する同級生同士カップルが続出したとかしないとか。
何でもその日の夜、それまでは交流がなかったのに勢いでホテルへ行ってしまったカップルが何組もあったという話だ。
いわゆる、朝起きたら、何であんたが隣に!……というような出来事があっちこっちであったらしい。そのうちの一組の結婚式に参加した琴子が、きゃーなんかドラマみたいっ素敵~~と妙にテンション高く喜んだというのも、また別の話だ。


さて、以下は同窓会会場の受付口に置いてあった『今日の感想ノート♪みんな自由に書いてねー♪』(←琴子発案)より抜粋である。




絶対、絶対、絶対、結婚してやるー!

うん、結婚します(渡辺)

サヨナラ初恋

ま、なかなか面白かったわねー(理美)

とりあえずあんたが切迫流産にならなくて良かったわよ(じんこ)

未だに悪寒がするのは何故だろう?(by桐田)

結婚っていいなー

もう、彼に二度と年賀状は出しません。(後藤陽子)

あたしだって、仕事と恋愛、両方勝ち取ってやるんだからぁ

次は子連れ参加よー格差なんかに負けないわ(by真弓)

やっぱ、再婚したくなっちゃったー。今度はいい男見つけよう。(理央)

身の丈にあった恋を見つけます。(倉持ちぶさ)

とりあえず、今は仕事頑張ります。ナースとしてスキルアップ目指します!(塩谷)

あーおれも……もう一度精進し直します(池沢理男)

目指せ! A組既婚率70%[10年後目標](元A組担任より)

なかなか貴重な体験をさせていただきました(笑)by北見

出来ればもう10年後は幹事やりたくないんですが。(日比野)

みんなー10年後もまた会おうねー♪ 25回生全員ハッピーになってるといいなー(by ことこ)











※※※※※※※※※※※※※



と、いうわけで同窓会は終了です^-^;

……そうですよね。これじゃあ、直樹さん納得しませんよね。寸止めの挙げ句すっ飛ばして、もう朝なんて………(-.-)

はい、次は後夜祭?(二人きりの二次会とでも書くべきなんでしょうが、プロローグを前夜祭と銘打ったので、後夜祭で締めときます)……ってことで久しぶりのえろか!?
キングサイズベッドのお部屋での詳細云々はまた後程……この部屋、お風呂が凄いんですよ(←って何を書く気でしょう、アタシ)今のところ鍵つきのつもりですが、どうなることやら、なので余り期待はしないでくださいませねっf(^_^)




20010513 ~10年目の同窓会 8






琴子が人垣の出来ている会場の端の方に向かうと、立ち塞がる人々の脚の狭間から、緋色の絨毯の上に横たわる白い脚が見えた。

10センチヒールのホワイトレザーのパンプスは、理美のものではない。
妊娠中の理美はあんな高いヒールを履いていなかった。
あのパンプスーー何処かで見た記憶が……

琴子が人垣を掻き分けて、やっとのことで前に出た。

「………高階さん……!」

倒れていたのはーー高階優梨子だった。

その顔の傍らで言語聴覚士の北見が膝をついて、彼女の様子を伺っていた。

「えっと……北見さん…?」

「意識はあるわ。呼吸が酷く苦しそうだけれど」

琴子も慌てて優梨子の傍に近寄って容態を確認する。

「高階さん! 高階さん! あたし……わかる? わかりますか!?」

琴子は優梨子の耳元で声かけをする。

一瞬琴子の方を見て、優梨子は顔をしかめた。

「……大丈夫よ。ほっとい……て、あんたなんかに……」

切れ切れだが何とか答えられる状態に、少し琴子は安堵した。

「憎まれ口を叩けるなら大丈夫ね? 息が苦しいの? 他には? 痛いところ、ある?」

琴子の言葉に、ぷいと横を向いたが、「……肩が……突然痛くなって……胸も……」と苦しげに呟く。

「肩と……胸?」

軽く頷いたが、また酷く顔を歪ませて、息苦しそうに「はあっはあっ」と荒い呼吸を繰り返していた。

「高階さん! 高階さん!」

吐く息からはアルコール臭はない。
急性アルコール中毒の可能性は少ないと直感したが、とりあえず回復体位を取らせる。
身体を横向きにして顎を反らせて気道を確保し、脈拍を取る。

「確か、ドクター何人かいたよね?」

琴子は北見に確認する。

「ええ……でも、みんなかなり飲んでたわよ?」


直樹はまだ戻っていないのだろうか?
人垣をぐるりと確認する。
渡辺や理美やじんこたちも心配そうに様子を見ているようだった。
あの池沢というT大医学部もいたが、いまひとつぼんやりしている。相当酩酊していたから使い物にはならないだろう。

ナースを含めた医療者集団たちも、近付いた方がいいだろうか迷っているかのようで、微妙な立ち位置で様子を見ていた。何にせよ、みんなかなり飲んでいたから、いくら先輩ナースでも頼りにはならない。

琴子は脈動が異常値であることを確認して、身体所見を行うためにブラウスのボタンを外した。
その瞬間、優梨子の手がぐっと琴子の腕を掴み、呼吸はさらに荒くなった。

「高階さん? 高階さん!」

今度は声をかけても反応しない。

「意識レベル低下してる! 北見さん! 救急車呼んで!」

琴子が叫ぶと、すぐに北見は携帯から電話をかけた。

「過換気症候群じゃないのか?」

様子見をしていた中の一人がおずおずと近付く。
確か久瀬とかいう親が経営するクリニックで働いているという医者だ。

「救急車呼ばなくても、ペーパーバッグ法で沈静化させて……おい、紙袋みたいなの、ないか?」

「ただの過呼吸じゃないと思う……」

琴子がそう云うと、「なんだよ、たかがナースが何えらそうに診立ててるんだよ」と、忌々しそうに腕を捲って近付いてくる。

「優梨子!」

しかしその久瀬をどんっと押し退けて、優梨子の前に来たのは、佐藤美智子だった。

「どうしたの? 一体ーー」

「佐藤さん! ちょうどよかった! 佐藤さん、高階さんと幼馴染みなんだよね?
彼女、何かアレルギーとかある?」

「アレルギー? 子供の頃、卵が駄目だったけど……もう治った筈よ。普通にプリンとかケーキとか食べにいってたもの
……あとダニとかで喘息も少しあったけど、大人になって治まったって聴いてるわよ」

「喘息ーー今日、少し咳き込んでたけど、風邪引いたとか聞いてる?」

「知らないわよ、今日、久々に会ったんだもの」

そう言いながらも少し不安気に優梨子の方に近付いて顔色を見る。

「……真っ青じゃない……大丈夫なの?」

「アナフィラキーショックか? 何かアレルゲンを摂取したのか……」

久瀬がやっと優梨子の傍に膝をついて顔色を見た。近寄っただけで酒臭い。この医者も相当飲んでる、と琴子は不安を覚えた。

「琴子さん、救急車、少し時間がかかるそうよ。このホテル周辺の道、まだトレーラーの事故のせいで渋滞してるって」

電話で話をしていた北見が琴子に知らせた。

「……あ……」

直樹が来るときそう言っていたのを思い出した。

その間にさらに優梨子の呼吸は浅く、速くなっていった。
意識は完全に混濁状態となっている。

「誰か、彼女が倒れる前の様子を知ってる人、いませんか?」

琴子の声に、周囲の一人が「ここに倒れる前は、ずっと椅子に座っていたわ。少し苦しそうに背凭れに寄り掛かって肩を押さえてたの。てっきり飲みすぎで辛いのかと……」と、答えた。

「何も食べていなかったのね?」

「ええ」

アナフィラキーショックの可能性は薄い。摂食直後に発作が起きることが多いからだ。

「優梨子は基本、アルコール弱いからあまり飲まないわよ…? 飲んだらすぐ赤くなるから丸わかりだし」

美智子の言葉に、琴子も「アルコール中毒じゃないと思う」と答えた。

「佐藤さん、高階さんの既往歴、知らない? 何か手術したことがあるとか入院したことがあるとか……」

琴子の問いに少し考える美智子だが、「この子、病気なんて……健康そのものよ、ずっと……あ…」唐突に何か思い出したようだった。

「あたしがアメリカにいる時だから、6年くらい前よ。なんか女には珍しい病気になって入院したって聞いたことがある……何だっけ……肺……」

「女には珍しい……?」

琴子を含め、北見や他の看護婦も顔を見合わせた。

「 肺気胸か……!」

久瀬が叫び、琴子はすぐに胸の偏位を確認する。

「左肺下がってます」

頚部に手をあて、「頚静脈の怒張もあります」とりあえず目の前の医師に伝える。

「すみません、ホテルに常備されてる医療キッドありますか?」

琴子は近くで心配そうに様子を伺っていたホテルのスタッフに訊ねる。

「探してきます」というスタッフの背中を見送ってから、もう一度優梨子の状態を確認する。
呼吸状態は先程より悪化している気がした。救急車が来るまで持つだろうか?

「医療キッドって……ここで胸腔穿刺をするつもりか?」

久瀬の問いに、北見が「医者がそんなことをいうの? 緊張性気胸の場合処置を急がないと血圧が急激に下がって心停止するわ」と、叫ぶ。

気胸とは、胸腔内で気体が肺を圧迫し、肺が外気を取り込めなくなった状態をいう。
胸腔の中の肺に穴が開き萎むと、漏れた空気で胸腔内圧が高まる。するといくら呼吸しても肺は元の大きさには戻らない。漏れた空気によって心臓が圧迫され、脱気する以外緊急処置法はない。
だがそれを行えるのは医師免許を持つものだけだ。

「しかし、こんなところで医療道具だって……それに、おれ、耳鼻咽喉科だから、そんな処置、やったことないし……」

「おれも病理だから、顕微鏡とシャーレしか……」

「救急車が来るまで待った方が……」

「それに、まだ気胸って確定したわけじゃないだろ?」

酔いつつも医者の自覚があるのか加わった池沢ともに、どうにも自信の無さげな医師免許所持者二人がぶつぶつと云っている。

「……全く情けないわね! 研修医時代は少しは臨床に関わったんでしょう?」

北見の叫びに面目なさげに二人は身体を小さくする。


呼吸状態はさらに悪くなっていた。

そして、偏位の見られていた胸部の偏りがなくなっていることに気がついた。

「あ………」

「呼吸が……」

ーーそして。
優梨子の呼吸が止まった。

「呼吸が停止しました! 早くーー!」

琴子の叫びに、美智子が真っ青になって「うそぉー優梨子ーー!」とすがり付こうとするのを琴子が制止する。

「待って!」

ホテルの従業員が救急箱を持って走ってきた。

「すみません……普通の常備薬くらいしか……」

「注射針はないのか!」

久瀬が箱を確認する。一般的な市販薬しか入っていない。せめて飛行機に常備されている程度の医療キッドがあればーー

「心拍はまだあるわ! とにかく人工呼吸を……!」

北見が琴子に云うと、「ダメ! 脱気するまで人工呼吸はNGよ」琴子が青冷めて意識を失っている優梨子の顔を見る。

「……死んじゃうの……? 優梨子……」

美智子が半泣きで傍らにしゃがみこむ。
死ぬーーこのままでは、多分……間もなく心停止する。

「……入江くん……」

琴子が呟いた。
ずっとずっと、心のなかで呼び続けた名前……

入江くん
入江くん
入江くん!

「入江くん、入江くんーー入江くん、助けてぇーー!」

琴子がありったけの声を張り上げて叫んだ。



「琴子!」

まるで琴子の叫び声が一瞬の内に届いて連れてきたかのように、直樹が人垣を掻き分けて琴子の前に現れた。

「いっい……入江くん……!」

倒れている優梨子を見て、スーツの上着を脱ぎ捨てる。

「状態は?」

「い、今、呼吸停止したばっかりなの。緊張性気胸だと思うのだけれど、左肺に偏位があったのに、今は患肺と健肺に差異は見られなくなって……」

琴子の説明の間に、直樹は頚部に手をあて、身体をチェックする。
そして、優梨子の着ていたブラウスを引き裂いて、胸部を露出させた。
周囲からざわっとどよめきが上がる。

「特発性緊張性気胸だ。偏位がなくなったのは両肺やられたせいだな。片方に過度の負担がかかったんだ。呼吸が止まったのもそのせいだ。すぐに処置する」

「処置って……何も道具がないのにどうやって……!」

久瀬と池沢が慌てふためいて直樹の横にたつ。

直樹は近くのホテルマンに「ボールペン持ってないですか?」と訊ねる。
だが差し出されたのは金属製のもので、思ったものとは違ったのか直ぐに返却する。
そして「ああ、そういえばここのカクテルに付いてた青と白のまだら模様のストロー……ビニール製じゃなくて硬質プラスチックだったよな? それを持ってきてくれないか? それとなるべく度数の強い酒を」従業員に頼む。

「おい、入江くん、何をするつもりだ?」

どういうわけかノコノコとついてきたT大助教授の恒松が大きな声で待ったをかけた。

「まさかそんなもので胸腔穿刺するつもりじゃないだろうな! だいたいCTもとらずに気胸かどうかなんて……」

「現場を知らねー奴がごたごた云うな! こんなとこにCTがあるか! あったってCT掛けてる時間なんてねーよ!」

直樹は差し出されたストローをばきりと半分に折った。
そして、琴子にウォッカの瓶を渡し「これと患者の胸部に」と、一言いうと琴子はすぐに二つになったストローの割れて尖った尖端にウォッカをかけて、さらに優梨子の頚部から胸部に、その液体をぶちまける。アルコールが揮発して鼻をついた。

「琴子! 身体を押さえて!」

直樹が叫ぶと琴子はすぐさま両肩を押さえる。

「琴子さんは左肩を! あたしが右肩押さえるから!」

北見が恐らくこれからの事態を察して手伝いをかって出た。

「や、やめたまえ! 入江くん! もし気胸でなければ肺に孔をあけてしまうぞ? もし、医療過誤で訴えられでもしたら……」

まだ後ろでごたごた云っている恒松を無視して、直樹は左鎖骨の下から胸部上位に手をあてて、その一点に向けて、一分の迷いもなくストローを突き刺した。

「ひいいっ」

悲鳴のような声がしたのは周囲からだった。
優梨子の身体は激しくしなって躍り上がる。琴子と北見は身体ごとのし掛かり必死に押さえ込んだ。
僅かな血液が一瞬飛び散って、琴子のワンピースの衿に一滴だけ付着した。

さらには反対側の右胸にも同じようにストローを突き刺した。

周囲は静まりかえっていた。
一瞬の処置に、何が起きたのかさえ分かっていない者も多かったに違いない。

直樹はストローに顔を近付けて、その小さな孔から空気が流れ出るのを確認すると、「琴子! 人工呼吸を!」と叫んだ。

「はい!」

琴子は躊躇いもせず、優梨子の顔に手を当てて、顎を引いて唇を開かせ、自らの口を当てて深く息を送り込んだ。
何度かそのその動作を繰り返すと、胸が微かに上下し始める。
そしてぴくりっと優梨子の指が動き、鼻から「……ふう……くっ」と息が抜けて嗚咽のような声が聴こえた。

「高階さん! 高階さん! 大丈夫 ?」

琴子の呼び掛けに、優梨子の目蓋がひくっと動いた。微かに瞳が開く。

「優梨子! 優梨子!」

佐藤美智子も泣きながら優梨子にすがりついた。

「……あたし………どうして……?」

ぼんやりと虚空を眺めるように高階優梨子が呟いた。

「琴子さんと……入江くんがあんたを助けたのよ……」

「………え?」

美智子の言葉に優梨子はぼうっとしながらも、琴子の方を見た。

そして、周囲から安堵の声やざわめきが聴こえはじめ、誰ともなく拍手が沸き起こった。


「アンビが来たぞ!」

久瀬の声に、それまでの緊張が一挙に取れたように琴子は虚脱した。

救急車の音が漸く近付いてきた。






ストレッチャーで運ばれた高階優梨子に続き、琴子に指名された佐藤美智子が付き添う為に救急車に乗り込んだ。

「……なんで、あたしが……」

と、一瞬躊躇っている美智子に、「あんなに泣き叫んでいたのに」と、琴子がくすっと笑う。

「佐藤さんがいて……高階さんのことよく知ってる幼友達がいて、助かった」

ふふっと微笑む琴子に、美智子は奇妙な気まずさと気恥ずかしさを感じてそっぽをむく。

「高階さんもね。なんだかんだ、あなたがテレビに出てることがとっても嬉しそうで自慢気だったのよ。幹事会の度にあなたのこと話してたもん」

琴子の声に一瞬立ち止まったが、そのまま振り返らずに救急車に乗り込んだ。
そしてちらっと琴子の方を見てペコッと軽く頭を下げた。
入れ替わりに救急隊員に状況を説明をしていた直樹が下りてきて、琴子の前に立つ。

「入江くんは付いていかなくて大丈夫?」

「搬送先は斗南じゃないからな。病院に着いてからERで胸腔トレナージすれば大丈夫だろう」

そう云ってから琴子の頭をくしゃっと撫でて、「……よくしっかり状況を見極めて対応したな。立派だった」と、優しく笑った。

「……入江くんも……ありがとう。入江くんが来てくれなかったら、高階さん……きっと……」
あの時の不安と緊張感を思い出したのか、少し苦し気な顔をする琴子を引き寄せて、ぎゅっと強く抱き締める。

「大丈夫だよ。琴子。もう、大丈夫だから……」




そして二人はとりあえず同窓会場に戻った。直樹はこのままホテルの部屋に行ってしまいたい気分だったが、荷物とか置きっぱなしだからと琴子に説得されたのだ。
そういえば脱ぎ捨てたジャケットもそのままだ。



会場の扉を開けた途端に、入場した新郎新婦よろしく唐突に二人に向けてスポットライトが当たり、拍手喝采が沸き起こった。

「な、何……!?」

呆気にとられている琴子とは別に、直樹は特にその状況を気にもせずに、近くにいたホテルスタッフに「おしぼりとウォッカを」と要求した。

「またウォッカ……?」

琴子が目を向くと、直樹はおしぼりに少しウォッカを浸して、琴子の唇の周りを拭った。

「ひやーん、臭い。これ、お酒じゃないよーアルコール原液そのままみたい」

「 度数50度だからな」

琴子の唇には、琴子には似合わない真っ赤なルージュがベッタリと付いていた。高階優梨子に人工呼吸を施した時に移ったのだろう。
それを丁寧に拭い取ると、「さて、再消毒」と、今度は直樹が琴子の唇を塞いだ。

無論、スポットライトは当てられたまま。
会場中の視線は全てこの二人に向けられたこの状況でーー

直樹はたっぷり、舌を絡めとるような濃厚なキスを妻に繰り返しーー同窓会会場を再び阿鼻叫喚の渦に叩き込んだのであった。








※※※※※※※※※※※





えーと、ご承知だとは思いますが、医療行為に関しては全くのど素人なんで、もっともらしく書いてあるナンダカンダはすっぱり読み流して下さいませ。
因みに気胸を患っている方は周りにはいませんので、救命シーンは某医療ドラマのほぼパクりでございます^-^;あ、あとド●ターGとか、仰●ニュースとか……。
ぐーぐる様、今日もありがとう^-^;


とにかく!
書きたかったのですよ。
颯爽と鮮やかな手技で救命しちゃう入江くん! 夫婦揃っての息のあった連携プレイを同級生の面々に見せつける!
ええ、その為だけの同窓会開催でございました(^w^)

けれど、この回を書きたかっただけなのに、なぜ8話もかかってしまったのかしら……? 全てはおかしなオリキャラたちのせいですね……(-.-)


あと、エピローグのみです。
入江くんはさっさと部屋に行きたくて行きたくてたまらないでしょうが、そこはきっちりと同窓会を締めないとね(^^;
まだオアズケ(へっへっへー)



20010513 ~10年目の同窓会 7





「ーーつまりだ。精神疾患は輪郭がはっきりしない。生化学的に異常を確認できるものもあれば、そうではないものもある。だから、薬が効くこともあれば、効かないこともある。
数値で具現化できる外科や内科的なアプローチに比べてこの領域の難しいところはーー」

延々と続くこのT大医学部助教授の話に、流石にうんざりしてきた。いや、こういう専門的な話ならまだいい。

「つまりは、精神臨床学と外科的臨床学の融合を考えると、君のような才能ある外科医はぜひわれわれ日本の最高峰学府であるT大において共に実践すべきであって……」

気がつくといつの間にやら話がすり変わり、あの手この手で直樹をT大の研究室に引き抜こうと目論んでいるらしい。

あの研究はどうの、学閥がどうの、教授同士の派閥がどうのーー話がどうでもいい方面に流れていく度に、直樹は話の腰を折って立ち去ろうとするのだが、流石に精神科医の話術、直樹の興味の引きそうな症例を持ち出しては彼を引き留める。
お陰で、もう30分ほど会場に戻れない。
この間に琴子に何かあったらどうしてくれよう。
直樹は内心イラつきながらも、恒松助教授の相手をしていた。

すると。

「恒松くん!」

T大助教授を君づけにするのは恐らく彼の同級生だろう。
一人の女性がひどく焦って彼のいる方に駆けつける。
内心、直樹はこれで解放されるーーとほっとしていたーーが。

「会場で鈴木さんがひどく具合が悪そうなの。すぐ来てもらえる?」

そのため医師の彼を捜していたらしい。

「分かった、すぐ行こう」

ふっとニヒルに微笑むと「君も来てくれ、入江くん!」と有無を云わさず直樹の肩をぐっと掴んだ。

「は……? はい……?」

あんたが行けば十分だろうーー?
一瞬そう思った直樹だが、やはり病人がいると聞けば放っておくこともできず、仕方なく恒松の後を追って15回生たちのいる高砂の間の会場に入っていったのだったーー。






そして、その頃。

琴子たち幹事は始まったビンゴゲームの為に、裏方に徹していた。
カードを配ったあとは、景品を手渡すだけだが、何となくみんなステージ横に集まっている。

「あれ? 高階さんは?」

幹事の一人である高階優梨子の姿が見えない。

「別にいいよ、人手足りてるし」

「彼女いない方がうっとおしくなくって。あの娘、人の悪口ばっかだもん」

いないとなると結構みんなも辛辣である。確かに毒を孕む優梨子の言葉は、常に神経を逆なでしてくれたが。

「高校時代と変わらないよね、全然」

「そうそう。適当に話し合わせるし、人の所に寄ってくるから孤立してることはなかったけど、クラスメートに友達らしい友達っていないんじゃない?」

「佐藤さんくらい?」

「ま、あの二人も仲いいんだか悪いんだか」

「高階さんの毒に付き合えるのって佐藤さんしかいないのよ。彼女も変わってるし」

「マスコミで活躍してるってもまだ殆ど知名度0だし」

「そんな華やかになったわけでも無いよね。まあ元々目立ってなかったからギャップ激しいだけで」

「高階さんだって、会う人会う人の評伝やったら煩く云ってたけど、本人そーんなに綺麗になってないよね。服のセンスなんてイマイチだし」

「ほんと。彼女、とにかく他人にケチつけないと気が済まないんだよね」

そんな会話をしている他のクラスの幹事の女子たちに、琴子が口を挟む。

「………でも、高階さん、幹事の仕事、一度もサボったことはないよ」

ひとつ頼めば倍の文句が返ってきた。
やれ段取りが悪いだの、これは本当に私たちがやらなきゃいけないことなのかしらーー等々と。とはいえ罵詈雑言を発しつつも何だかんだ動いてくれていた。
そして、月に1度の幹事会もずっと皆勤だったのは彼女だけだった。

「……暇だったんでしょ? 友達いないから……あたしたちは忙しかったもの」

何故、一番弄られていた琴子が彼女を庇うようなことを?ーーと云いたげに、他のクラスの幹事女子が、後ろめたそうに言い繕う。

「皆勤だったのは自分のいないところで自分の悪口云われるのがイヤだからだよ。ほら、あーゆータイプは自分は人のことばっかりあげつらってるクセに自分のこと陰口叩かれるのはスゴく恐れてるんだよね」

「自分が云った分だけ返ってくるのにねぇ」

「嘘っぽい自慢話も多いし、他人の話は毒まみれだし、話した後はめっちゃ気分悪くなるもんね」

くすくすと笑う他のクラスの幹事女子の話を聴いて、(みんな結構楽しそうに高階さんの噂話に乗ってたのになー)と琴子は少し眉を潜めた。
看護婦という女ばかりの集団にいるから、いかにも女に有りがちな、その場に居ないものに対する集中砲火というのは、高階優梨子だけでなく誰もが罪の意識を持たないまま行ってしまうのだと分かってはいるのだが。




「……あ……高階さん……」

琴子は自分達の後ろに高階優梨子が立っているのに気がついた。
少しうつ向きがちで表情が見えない。
だが彼女たちの話を聴いてしまったのは間違いないだろう。
彼女の噂話をしていた女子たちは、きまり悪そうに顔を背けた。

「ふんっほんと、女って鬱陶しい生き物よね」

そう吐き捨てる優梨子に、「はあ? 何……あなたにそんなこと…… 」と、幹事女子の一人が呆れ返ったように言い返そうとしたが、すでにくるりと踵を返し高階優梨子はその場から逃げるように立ち去っていった。

「高階さんっ待って!」

追いかけようとした琴子に、「ほっときなよ」と理美もじんこも止める。

「あんたも色々云われてたじゃん。気にすることないよ。自分がかけた唾は自分に返ってくるっていい見本」

珍しく理美が的を得たことを云っていたが、琴子はやはり放ってはおけなかった。
ビンゴで盛り上がっている人の波を抜けて、琴子は優梨子の姿を捜した。

……いない。
どこに言っちゃったんだろ……

きょろきょろと辺りを見回すがもう何処にもいない。

確かに彼女には散々嫌な想いをさせられたけれど、だからって同じように傷つけるのはどうなのかな、と思う。
あんな風に虚言や攻撃で自分を守っている患者さんはたまにいる。
ハリネズミのように相手を威嚇して棘を出しまくって、自分を傷つけないように防衛本能だけはすさまじい。

苦手だけれど、逃げてはいけないのだと思う。
そういう患者さんにも、彼女にもーー。


「あれーきみ、相原さんじゃん」

ウロウロしていたら、突然後ろから肩を掴まれた。

うわーっ酒臭い!

アルコール臭がぷんと鼻につくほど間近に男の顔があった。
さっき集まっていた医療者グループの中にいた一人だ。

誰だっけ……?

「おれさー結構、君のこと可愛いなーって思ってたんだよなー。……入江ってば教室じゃ全然気のないフリしてさ、結局同居しててデキちゃったってことだろ? どっちが先に夜這いしたわけ? 女子たちは絶対君が入江の寝込みを襲って既成事実作ったなんて言ってたけどさー。おれは絶対、アイツの方が君を無理矢理襲ったんじゃないのかなーって思ってたんだよ。そんな、一つ屋根に高校生の男女が暮らしてて何もないわけないよなー。めっちゃ不細工な女ならともかく、君、可愛いし。どう? 当たってるだろー。絶対アイツ、ムッツリだしぃー」

にへらにへら笑う男の顔が近付いて気持ち悪い。
思わず琴子は後ずさる。

「そ、そんな……入江くんはそんなこと……」

「うそうそ。高校時代からやりまくってたんだろ? で、相原さんは入江しか男知らないよね。でも入江の方は絶対他に女いるぜ。あんな風に嫁と人前で仲良しアピールしていちゃいちゃしてんの、浮気してるって証拠だって! そんな、10年も一人の女としかやってないなんて、男にはあり得ないって。特に医者なんてねーみんな肉食だぜぇ? うちのT大の先生方なんて愛人何人いることやら……」

「う……うそ……」

信じてた訳ではないが、少し青くなる。
優しくなると浮気している証拠だという話は散々幹や真里奈から吹き込まれているが、どうやら世間一般の共通認識らしい。

「だからさー相原さんもおれと浮気してみない? おれ、今回の同窓会で結構いい出会いあるかもって期待してたのに、女子は相変わらず入江命だし、君とのキスシーン見せつけられてからは、みんなぶっ壊れてやけ酒で……ったく、女も怖いよねー。結婚してること知ってるくせにみんなどんだけ同窓会よろめきドラマを期待してたんだか……」

「は、離して……えーと」

名前が出てこない。

「なーんだ、名前も覚えてくれてないんだー。おれ、池沢理男。入江さえいなければ、いつも学年首位だったんだぜ? だいたいlQ200もあるやつが普通の高校行ってんな、って話だよ。さっさと飛び級してシンクタンク(頭脳集団、研究機構)でも入ってりゃいいものを……」

「な、なんで入江くんがタンクに入らなきゃなんないのよーっ」

よく意味がわからない琴子はとりあえずタンクローリーみたいなものを想像してみた。
っていうか、なんでこの人に彼の進路をあーだこーだ言われなきゃならないんだ!

だんだん腹が立ってくる。

「あいつのせいでおれは万年二番でさ……」

ん? そのセリフ、なんだか妙に耳馴染みがあるわよ?…… と琴子は思わず男の顔をみる。
顔はいまいちインパクトがない。ぺらっとした薄い顔つきである。

名字は金之助と同じだが、中味は船津かー?

「……でも君には感謝してるよ。君のお陰で入江がT大来なくって……もう入江と比較されることはなくなったって喜んでたんだ……それに斗南大のアイツよりおれの方が学歴じゃ勝ったしね」

あんたなんか比較にもなんないわよー
と、内心思うが、変に昂らせても酔っ払いを煽るだけだと口をつぐむ。

「それなのに、まさかあいつが医者になるなんて……医学部に転籍するなんて……T大にいてもアイツの噂ばっかり入ってくるんだ……論文書けばすぐに話題になるし……くそぉ。せっかくアイツのいない世界で一番になれると思ったのに」

前言撤回。
船津の方が遥かにましだ。
万年二番で僻んでいるような船津だが、同じ土俵に乗るためにわざわざ追いかけて、常に戦って追い抜こうと努力してる。
同じ土俵に乗ることすら嫌がって逃げているらしいこの人が、直樹に勝てる筈がないーー。

「でも、君を奪ったらアイツどう思うかな……」

うわーっその発想は、船津くんといっしょー!

いつの間にか壁際に追いやられて、何だか腕で行く手を阻まれている。
ちょっとこの構図はヤバイんじゃない? と、琴子ははたと我に返る。
そして酒臭い男の顔がどんどんアップになって迫ってくる。
気持ち悪い。

いやーっダメー!!

「入江くーーんっ 助け………」

琴子はぎゅっと目を瞑って顔を背けた。

すると、突然目の前にあった影がすうっと消えたと思うと、がたんっと床に倒れ伏した。

ーー入江くん!?

と、思ったらーー。

「琴子ちゃん、大丈夫?」

「渡辺さん!?」

「いってぇ……」

酔っ払いの池沢理男は床に突っ伏して呻いている。

「おい、池沢! おまえ、おれが入江じゃなくて良かったな。こんなんじゃすまないぞ?」

確かに渡辺が凄んでも余り迫力がない。そんなに腕っぷしの強くない渡辺が軽く肩を引いただけで足元がふらついて倒れたのも、相当酒が過ぎていたせいだろう。

「………良かったよ、無事で……」

「渡辺さん、ありがとう」

琴子の青ざめた表情が少し安堵の色をなす。
助けてくれたのが直樹ではなく渡辺だったのはちょっと残念だが、そうそう少女漫画のようにピンチの度に王子さまが飛んでくる筈がない。

「今、入江じゃなくてがっかりしてたでしょ?」

「えー? そ、そ、そんなこと」

渡辺のにやっという笑いに、どうやら思いっきり分かりやすい顔をしていたことに自分で気がつく琴子である。

「いや、しかしすごいなー入江……あいつ、エスパーか?」

「え? 何?」

「あ、いや……」

渡辺は片手に携帯を持ったまま、琴子に問いかける。

「琴子ちゃん、携帯は?」

「え? あ! バッグに入れたままでそのバッグ、理美たちのとこに置いてきちゃった!」

「はは、やっぱりね。入江が、琴子ちゃんと連絡とれないからって俺んとこ電話してきたの。こっちになかなか戻れそうにないから、琴子の様子を見てきてくれって。それで琴子ちゃん捜したら、こんなことになってたんだ」

と、床に転がっている酔っ払いを足でつつく。

「入江くんが……? え? 入江くんどうしたの? なんで戻れないの?」

琴子が心配そうに渡辺を見つめる。

「ああ、なんか隣の15回生の会場で急病人が出たらしくて、入江も対応してるらしいんだ」

「えーー? 大丈夫なのかな……」

途端に不安そうに扉の向こうを見つめる琴子に、渡辺はふっと笑うと「大丈夫だよ」と応える。

「そんな大したことなかったらしいから。少し休めば回復する程度の目眩かなんかで」

「ああ、そう。良かった………」

心底ほっとした表情の琴子に、渡辺は目を細める。看護婦としての表情(かお)をして、ただ純粋に具合が悪いだろう誰かのことを心配しているその姿に感心するも、少し意地悪なことを云ってみる。

「あいつが15回生の妙齢のお姉様方に取り囲まれてるかも、という心配はしないんだ」

「え? えーー!」

一瞬にしてその様子を想像したのか、琴子の顔があわあわと落ち着きがなくなり青冷める。

「はは、冗談だよ。あいつのことだから何処の集団に紛れても如才なく振る舞って、纏わりつく者には一刀両断、ばっさり……だろう?」

君以外の女性に対しては全く興味も関心もないのだから。

言外にそんな意図を含ませた渡辺の言葉だったが、分かっているのかいないのか、琴子は軽く微笑んで、会場の外へ出て直樹を捜しに行こうかと少し逡巡しているようであった。
因みに琴子の頭の中では、最初に誰を捜して会場を彷徨(うろつ)いていたのかは、きれいさっぱり忘却の彼方にある。


おおーっやったあー


会場のあちこちで沸き上がる声から、ビンゴゲームが最高潮に盛り上がっていることがわかる。

「いててて……」

寝っ転がっていた池沢理男が漸くむっくりと起き出した。

「おい、気がついたか? おまえ命が惜しけりゃ、二度と琴子ちゃんに近付くなよ? でないと例え天下のT大医学部だろうが、おまえ今後、日本の医学界に生息出来なくなるぞ? 」

「ひ……そんな、大袈裟な……」

うん、まあ大袈裟だけどね。
でもあいつのことだから、今さっきおまえが琴子ちゃんにしてたことを知った日にゃ、完膚なきまで叩きのめされるだろうよ。
よかったよな、俺で。

ふらふらと青ざめて「……ご、ごめん、相原さん、おれ酔ってて……」と、とりあえず謝る池沢に、「『入江さん』だろうが」と、渡辺が突っ込む。

「あ、うん。入江さん……。でも、高校ン時、入江さんのこと気になってたのは本当で……」

まだ云うか!
と、渡辺が睨み付けようとしたとき。


会場の端の方から悲鳴のような声が聴こえた。

「……誰か……! きてぇ! 人が……倒れてる……!」

途端にざわっと会場がどよめき、視線がそちらに集中した。


「……ったく、みんな相当飲んでたからなー」

渡辺は酒の飲みすぎで誰かが急性アルコール中毒でぶっ倒れたのだろうと真っ先に考えたようだった。
特に琴子と直樹のキス写真が上映された後の女性陣の酒量は格段に増加していたからだ。
まさに大荒れに荒れているといった体の同窓会会場である。

しかし、琴子はまず理美の姿を捜した。

妊娠中の理美はまだ安定期に入っていない。
特にこの大日本ホテルは彼女にとって鬼門かもしれない。
もし、また切迫流産にでもなっていたりしたらーー

イヤな想像が頭の端を掠めて、琴子は思わず声がした方に向かって駆け出していたーー。









※※※※※※※※※※※※※※


池沢理男ーー琴子が掲示板に載った試験で学年2番だった人です^-^;

そして、やっと同窓会、終盤に差し掛かってまいりましたー(^^;
波瀾万丈の同窓会です……f(^_^)
次が最終回になるかどうかは……ちょっと微妙です。クライマックスなのは間違いないですが。
もう一話くらい増えるかな?
一番書きたいとこにやっとこさ辿り着いたので、なるべく早くお届けしたいと思っております(←あくまで希望)





リンクのご報告です♪



この度、またまた敬愛する素敵サイト様とリンクさせていただくこととなりました。




『HAPPY ☆ SMILE』を運営されるnarack様です!





もちろん皆様ご存知ですよね(^.^)素敵なイラストやお話に日々きゅんきゅんされていることとは思います♪

もう、私はnarack様の神戸の話にがつーんとやられちゃってます。
ええ、うちの同窓会の「見せつけ」なんて目じゃない、神戸での入江くんの琴子ちゃんLOVEの見せつけが半端ない『王子さまシリーズ』。甘くて幸せなバカップルぶりに身悶えします(^w^)
琴子ちゃんが神戸の入江くんの誕生日に会いに行くものの、ぐっと堪えて会わずに帰るというお話、『好き……だからこそ』。琴子ちゃんの健気さに涙してしまいました。
そしてnarack様の神戸で忘れてはならないのがオリキャラ和尚さんこと安田尚輝くん! ほっこりさせてくれるこの癒し系キャラが大好きなんですの。彼の関西弁にとっても癒されます♪

ーーと、まあ素敵な神戸のお話が盛り沢山で、お陰で私、神戸のお話の妄想があまり浮かびません(笑)

他にもあの名作漫画『CANDY MAGIC』。あまりの甘さに顔がにやけて周囲に要注意状態になってしまいます。合同誌を手にとって真夜中にこっそりと見ているアナタ……私も同じです^-^;

そうそう、初期の頃の話だけでなく、最新作もお忘れなく! 久しぶりのnarack様のイリコトに思わず感涙。変わらず溢れかえってる幸せな微笑みにほっこりさせられました。

そんな素敵な数々の作品を紡ぎだしているnarack様とリンクさせていただけて本当に幸せでございます。



実はnarack様とも少しばかりご縁を感じております。
まずは県は違えど赤だしとモーニングを愛する同じ文化圏の住人であることとか。(なのにお互い家の味噌汁は合わせ味噌。そして、そうそう、コメダのモーニングは物足りないのです)
地元テレビ局の番組編成にイラっとすることとか。(ここって、一部地域なのかっとーー地元局制作番組が妙に幅をきかして全国ネットの番組がやってなかったり)
narack様が別館で呟いておられたあれこれについ共感してしまいました(笑)
他にも、子供の夏休みのポスター制作についつい口やら手やらを出してしまいたくなる美術部魂……なども同じだったりして^-^;

あと、何故かスマホ版もPC版もよくテンプレートが被ります^-^;(PC版なんて種類が豊富なのに!)どうも好みが似ているようです。

それと!
これ、凄い偶然なんですが!
narack様のブログバースディと私のリアルバースディが同じ日だったりします♪
もうすぐ4周年ですねー\(^o^)/前倒しでおめでとうございます♪
その4日前がnarack様のリアルバースディだそうです。つまりお互い誕生日がとっても近かった! 同じ双子座同士でございます(^.^)いえ、年はだいぶ……かなり、私の方が上ですがf(^_^)
そして、共に自分の誕生日にブログ開設を目指していたという事実にびっくりでした。でもnarack様は4日後。私は結局迷走して3ヶ月以上かかったという……^-^;(うちのブログバースディは琴子ちゃんのバースディイヴです)

というようなあれこれからずっと密かにご縁を感じてましたが、これからは公にご縁を語れて嬉しいです♪
この度はリンクをご了承いただいて本当にありがとうございます(^.^)


まだまだnarack様の足元にも及ばないひよっこでございます。とてもじゃないけどたすきは受け取れませんっ(笑) 周回遅れでこっそりと付いていきますので、今後とも末長く宜しくお願い致します♪







20010513 ~10年目の同窓会 6




本日、2話分アップしてます。未読の方は前話からお読みくださいませ。






※※※※※※※※※※※※※



さて。こちらは琴子の方である。
じんこに連れられて、ビンゴのグッズを控え室に探しに行き、それらを持って会場に入った途端ーーー


きゃああああーーーっ


女たちの耳をつんざくような悲鳴が聴こえた。

「な、何!?」

琴子とじんこがお互いしがみつくように抱き合って、きょろきょろと辺りを見回す。

「琴子、あれ……」

じんこが先に気がついて、正面ステージのスクリーンを指差した。
スクリーンには、ずっと高校時代のアルバムが編集されてエンドレスに流されていた筈だか、いつのまにか今日の会場の様子の写真に変わっていたらしい。
そういえば、プロのカメラマンをしているというE組の富樫が、みんなの写真を撮影していた。最後に各クラスで集合写真を撮るとか云っていたっけーー
いや、そんなことより。

何が映っていたのか。
スクリーンの写真は数秒毎に変わっていくから、みんなが楽しく歓談したりふざけたりしている写真が流れているだけだ。

なのに、たくさんの女たちが腑抜けたようにスクリーンを見つめたままフリーズしている。

「琴子…………あんた、さっきロビーで入江くんとキスしてたでしょ」

「え? えええーっ?」

琴子の素頓狂な声が辺りに響いて、スクリーンを見つめていたみんなの視線が琴子に集まった。

「どうもばっちり撮られてたみたいで今、流れてたみたいね。変わる瞬間、ちらっと見えたんだけれど」

と、じんこはスクリーンを指す。

「な、な、な、なんでっ! 今撮ったばかりのをそんなすぐに見せられるの!?」

「そりぁもう。時代は進化しているのよ」

達観したようなじんこのセリフも上の空で、琴子はただ口をぱくぱくしながら、どうやら一身に注目を集めているらしい我が身をどこぞに隠そうかと視線をあちこちに泳がせる。

「あ、また映った」

「え……」

きゃああああーーー

再び、阿鼻叫喚。

どうやら、たまたま男子トイレから出てきたところを見かけて、ばっちり撮ってしまいました、という感じのアングルだった。

ソファに腰掛けている琴子に覆い被さるようにキスをしている直樹ーー二人の横顔がしっかり映っていた。

「ちょっとおおーー」

琴子は慌てて投影している所を探して見つけると、そちらに向かって駆け出す。

「何映してんのよーー!」

投影機にタックルしようとしたが「入江さん!」と、日比野に手を掴まえられ止められる。

「こ、これ、ここの備品だから壊さないで~~」

「日比野くんっ! 何であんな写真!」

真っ赤になって強烈な剣幕で怒る琴子にびびりながら、「ごめん、富樫が勝手に……」と、後ろでパソコンを弄っているエディターをにらんだ。

「えー、だっていい写真じゃん。めっちゃ綺麗で。二人ともすごくいい感じだし。なあ?」

と、一眼レフのデジカメを抱えて、日比野に同意を求める。

「うん、まあ。でも流石に、前もって知ってたら……」

日比野は困ったように言い淀む。

「でも、まあ相手が違ってたらマズイけど、夫婦なんだからいーじゃん。あんなとこで大胆にキスしてたんだから、別に見られてもいいってことじゃ………」

よくなーい!

そう叫びたかったが後の祭りである。
とりあえず直樹は見てないだろうか、と会場を見回すが、まだ中に入っていないようだ。ほっとする。絶対機嫌が悪くなる。
写真のデータは後で富樫から返してもらう約束を取り付けた。
見せてもらったけれど確かに抹消するには惜しいくらいいい写真だ。……いやいや。

背中に……視線がーー。
視線が痛い…。

何だかあっちこちで、ひそひそ囁かれているような気がする。

入江直樹と結婚したというだけで嫉妬と羨望を常に集める注目の我が身なのに、余計な視線をさらに集めてしまったと、琴子はこめかみを押さえながらふらふらと理美たちの方に戻ろうとしていた。

ーーが。

「相原さーん」

彼女らのところに辿り着く前に、再び琴子の方にも障害が立ちふさがる。
唐突に声を掛けてきた女を見て、一瞬身構えた。

「ちょっとこっち来ない? 医療関係者グループで集まってんのー」

そう云って琴子一人を連れ去っていったのは元C組の塩谷芽衣子だった。
斗南の看護科卒の先輩でもある。実習時代は内科にいて、結構きっつく虐められたのを思い出していた。
外科病棟に正式に配属されたあとは、一度も芽衣子と仕事上の接点はなかったが、院内ですれ違うことは何度か会った。同期でもある元同級生たちとヒソヒソ何やらこちらをみて囁かれてイヤな気分になったこともある。

そして、彼女に引っ張られて行った先には10人程の同級生たちが輪を作って話し込んでいた。

「でさードラマみたいに放送が入ったわけだよ。『お客様の中に、医師もしくは看護婦の方はお見えになりませんか?』ーーって奴」

「 えーマジ? あたし、1度も飛行機や新幹線でそんなアナウンス聞いたことないよ」

「で、池沢くん、結局どうしたの? ちゃんと私は医者です、って、手を挙げたの?」

「そんなの当たり前だよ。まあ、ただの過呼吸でたいしたことなくてね。飛行機引き返すとかしなくて済んで良かったよ。……っていうか、そんな判断おれに任されても困るし……」

そんな自信なさげな医者でどうすんのよーーと呆れながらも、どうやら真面目に仕事について語っているようだと少しほっとする。
悪いけど、突然救急患者にぶち当たるのはあたしの得意技よーーと妙な自慢を心の中で思ったりする。


「ほらーみんな。相原さん、連れてきたわよ。斗南の看護婦の中でもっとも有名なナースなんだから」

芽衣子がにやにやと笑いながら琴子を前に押し出す。

「相原さんじゃなくて、入江さんでしょ? 芽衣子、わざとらしく間違えないでよ」

そう云ったのは、やはり斗南の看護科卒の同級生だ。確か、皮膚科。

「ああ、ごめんなさい。あんなに入江くんと仲がいいなんて、本当に羨ましいわー」

「おかしいわよね。病院じゃ入江くん奥さんに冷たいって評判なのに」

「えーそうなのー?」

驚いたように訊ねたのは、確かにA組の女子。

「陽子は、薬学部を出て、製薬会社の研究員をしてるのよ」

ぽそっと芽衣子が琴子に耳打ちする。
そうそう、後藤陽子! 毎年高校時代の同級生からの直樹宛の年賀状は減ってきているのに、10年欠かさず送り続けてる女だ。
どうやら彼女に病院での夫婦の様子を説明しているらしい。

「奥さんがどじばっかりで、迷惑かけられっぱなしで、本当入江くん可哀想って話……」

「もう、注射はまともにできない、点滴のルート確保も失敗ばかり、病院の中でしょっちゅう迷子になっては患者さんを変なところに連れていき……もう、彼女の噂は内科まで響き渡っていたわよね」

「やだっそんなんでよく看護婦やってるわねー」

うーん、これは……。
つるし上げ?
流石に鈍い琴子でも分かる。
さっきの衝撃スライド上映のショックから、琴子にあれこれ云いたくなってしまったってヤツだろう。
ちょっとした鬱憤の捌け口だ。

「医者の旦那さん掴まえてるんだから、もう看護婦やめちゃえば?」

「あーあたしも早く医者をゲットしたーい」

「あ、おれはどう? まだフリーだけど」

「えー池沢くん、病理でしょ? ずっと大学病院だよね? 出世コース乗れるのー?」

「いーじゃん。おれ、T大理Ⅲだぜ? 入江より格は上だろ?」

「格はともかく、顔はねー」

ぎゃはははと笑いが起きる。

「久瀬くんはナースと結婚したんだよねー?」

「親の病院継いで安泰だよな」

「小さな耳鼻咽喉科クリニックだぜ? まあ今、アレルギー患者が多くてそこそこ儲かっているけど」

「えー? 儲かってるってどれくらいー?」


みんな、酒が入っているにしろ、明け透けに本音を吐露しすぎている。
琴子は話を聴いてるだけで胸焼けしそうにだった。

「あ、あたし……理美たちの方へ」

こそっと立ち去ろうとした琴子の腕を、芽衣子ががしっと掴まえる。

「いいじゃない、同じ医療者同志なんだしー。病院じゃ滅多に会わないんだから。ゆっくり話しましょ」

「そうそう、彼女、オペで先生の手を傷つけたって凄い武勇伝があるのよねー」

「やだあ、先生の手をオペしちゃったのー?」

いったいいつの話を持ち出してんだか……
弁解する気力も沸き起こらない。
けらけら笑っている人たちの前で深くため息をつく。
斗南に勤めている者もいれば、他所の病院にいる者もいる。事情を知らない者たちに面白可笑しく琴子の失敗列伝を語ってくれている。
皆事実だから否定はできないが、殆どナース1年目の出来事だ。
ストレスが溜まる仕事だと分かっているけれど、人を話の肴にされては堪らない。


「なーんで、そんな人が入江くんの奥さんやってられるのかしら。彼は入局4年目にして年間手術回数は外科のトップなのよ。学会から注目される難易度の高いオペも成功させてるの。なのに、彼女は……」

はいはい、どうせ入江くんに相応しいビシバシ出来るナースじゃありませんよ。

余計なことは云うまい、どうせ酔っ払いだーーと琴子は耳に栓をしてやりすごそうと決めた。ーーが。

「塩谷さん、情報古い。琴子さんの失敗話、それかなり昔の話でしょ。ナースになりたての頃の。みんな、1年目2年目は色んな失敗するのは当たり前よ」

そう云ったのはーー誰だろう。
琴子の知らない女性だった。

「ああ、あたし元C組の北見です。斗南大学医学部の作業療法科を出て、斗南のリハビリテーション科で言語聴覚士をしているの」

「あ、そうなんだ。ごめんなさい、知らなかった」

「何度か会ったことはあるのよ? 外科の患者さんが、うちにリハビリに来ることもあったから」

「あーそういえば、何となく。あ、でも、なんで同級生って教えてくれなかったんですか?」

病院で出会う元同級生の看護婦たちは必ずそれをアピールして直樹のことをあれこれ訊いてきたのに。

「別に、同級生とかどうとかなんて仕事にはなんの関係もないでしょ?」

眼鏡をかけて少しキツそうな顔立ちはしているが、きっぱりした言い方は妙に清々しい。

「産休とるまでの琴子さんの評判、そんなに悪くないわよ。どちらかというと、患者さんにはとっても人気があるわ。
注射や点滴のミスなんて最近訊いたこともないし。いったいいつの時代の話よ、って云ってやれば?」

北見の言葉に、琴子を馬鹿にしていた看護婦たちは、少しバツが悪そうな顔をして唇を噛む。

「北見さん、ありがとう」

にこっと微笑む琴子に、特に表情も変えることもなく「別に。あなたを庇ったわけではないわよ。事実を歪曲した話を目の前で展開されるのがイヤなだけ」と、あっさり言う。

そういえば、と思い出した。
事故のショックで失声症となった琴子の担当の患者を彼女に預けたことがあった。
一見無愛想で怖いと感じたが、面と向かって話始めると、真っ直ぐ目を見て優しく語りかけてくると、言葉を取り戻した患者が嬉しそうに話していたっけ。

「外科の清水主任は、私の中学の時からの先輩で、尊敬してるの。その彼女があなたのこと、誉めてたから」

「えー? そうなの? 知らなかった。うれしい」

「……病院に働いていれば、入江先生が奥さんのこと溺愛してるのはみんなわかっているよのね。ただ認めたくないだけ。あなたが妊娠したこと知ってショックで早退した職員、うちの科にもいるのよ」

「ははは………」

「だいたい、あなたたち、割と病院で平気でいちゃいちゃしてるでしょ。キスの目撃談なんて、今更って気がするんだけど」

平気でいちゃいちゃ………
そうか、そう見られていたのか。
いや、確かに直樹は、全く見られていることに無頓着なキライはあるけれど……
琴子は思わず引きつった笑いを返す。

「どうせ、この酔っ払いたち、医療従事者として参考になる話題はたいしてないから、さっさと友達のとこ行けば?」

「ありがとう」

北見に促されて琴子は、そそくさとその輪から抜け出して、ようやく理美たちの方に戻る。
どっと疲れを感じつつ。


「おかえり。大丈夫だった? 変な集団に捕まってたけど」

理美に云われて「まあね」と、琴子は肩を竦めて苦笑いを返す。

「そのうえ、素敵な写真もアップされていたわね」

「…………………」

にやにやと理美に笑われて、返す言葉もない。

「 そろそろ締めのビンゴだね。……あれ? そういえば入江くんは?」

「あれ?……いない……?」

琴子はぐるりと会場中を見渡して、愛する夫の姿を探していた。






その頃直樹は。
いまだに鬱陶しい、T大助教授に掴まったままだったーー。









※※※※※※※※※※※※



何だか同窓会狂想曲……といった様相で、あっちゃこっちゃでドタバタしております(^.^) 何じゃこりゃ……?

えーと、あと1話か2話で終わる予定です……






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ののの

Author:ののの
管理人の、のののです。イタズラなキスにはまって、二次創作を始めました。

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