彼女は美しい夢を見る。 (8)















「………本当に、ただ眠ってるだけなんだよなぁ」

重雄はこんこんと眠ってる琴子の枕元で、頬に張り付いた長い髪の一筋を払いながら呟いた。
主治医の説明で理解できたことは、琴子は眠ってるだけ、ということ。そして目覚めない原因は現段階では不明であるということ。 

「とにかく直樹くんが居てくれて助かったよ。専門的なことは何も分からないからなぁ。検査の同意書も俺一人なら言われるままにサインしてたよ」

何にせよ原因を究明しなくては治療方針が定まらない。医師の説明は受けたものの、直樹の補足がなければ何の検査か分からないままだったろう。
検査の中には骨髄の髄液を調べるというものもあった。髄液の中に睡眠薬と同じ成分が生成されてしまう病もあるらしい。世の中には変わった病があるものだと驚きを隠せない。それにしたって、ずっと眠りっぱなしなどという症例は聴いたことがないのだという。

「いいえ、お義父さん…俺のほうこそ……俺のせいで琴子がこんな目に…」

幾度となく謝る直樹に、
「君のせいじゃないだろう。階段から落っこちるなんてそそっかしいよなぁ」
そう云って笑う。

恐らく重雄は、琴子の身体には傷のひとつもなく命に別状はないと知り、安堵しているのだろう。
眠ってるだけなら明日にでも目覚めるかもしれない。そう思っているに違いない。
しかし直樹は異常もないのに5日間1度も覚醒していないという症状に不安を感じずにはいられなかった。未発見のウィルスや、隠れた部分の腫瘍の存在などあらゆる可能性を考えてしまう。

紀子は琴子の着替えや、入院に必要なものを取りに一旦家に帰った。
裕樹と重樹が入れ違いに見舞いに来たが、つい先程帰っていった。

重雄と二人きりで、ぼんやりと琴子の寝顔を見つめていた。

ベッドの傍らに付いているネームプレートに名前が入った。
「相原琴子」と。
検査の同意書もすべて重雄のサインだ。戸籍上赤の他人の自分には何の権利もないのだと思い知らされた。
――俺の判断は間違っていたのか?

眠っている琴子の顔を見つめながら、直樹は鉛を抱えているかのように重い心をもて余していた。

「相原さん」

その時看護師が入ってきた。

「警察の方がお見えになってますけど」

「警察…?」

「хх署のものですがーー」



二人ペアで来た私服の警察官は、琴子が転落した駅の所轄の刑事だった。

「琴子の事故のことですよね?」

「はい」

「どういう状況だったのか、俺も訊きたかったんです。青アザ一つないのがどうにも不可解で」

「失礼ですが、貴方は?」

「入江です。琴子の夫です」

刑事はちらりと手元の資料らしきものを見た。

「確か怪我をされたのは相原琴子さんで
は?」

「まだ、入籍していないので。先月末に式を挙げたばかりです」

いちいちこんな説明を繰り返さねばならないのかと、軽い苛立ちを覚える。

「そりゃ、新婚さんなのに大変ですね」

「それより琴子はどういう状況で階段から落ちたんですか? 全く無傷のようですが」

直樹の質問に、刑事二人は一瞬顔を見合わせる。

「ええとですねぇ。琴子さんは5日前の午後5時頃、××駅のホームへ続く階段の最上部から三段目あたりに立っていたようなんです。そこから最下部まで約30段を一気に落下したらしいですが……どうもはっきりした目撃証言はないんです」

「え…?……その時間は夕方のラッシュ時ですよね? 目撃者が誰もいないんですか?」

直樹は眉を潜めて刑事二人を窺う。

「階段の途中で立ち止まっていて、誰かと言い争っていたようだ、という証言はあるのですが、誰も落ちていく瞬間を目撃していないんです。不思議なことに」

「『きゃあっ』という叫び声を聴いた、という証言が幾つか。琴子さんが背中から後ろに倒れていく瞬間を見たような気がする、という人が一人。あとは気がついたら階段下の床の上に倒れていた、と」

刑事たちが交互に状況を説明する。

「ちょっと待って下さい。背中を下に向けて、後方に落下したんですよね? そんな落ち方して、どうして全く外傷がないんですか?」

それはどう考えても最悪の落ち方だ。頭部を打つ可能性が最も高い。

階段を上っている所で足を踏み外すかよろけるかして、背中から落下して、階段の途中で臀部と背中を打ち付けそのまま頭部も打って下に転がり落ちるという最悪なシーンがイメージできた。そしてある程度混雑した時間なら、下から歩いてくる人など巻き込んでしまう可能性もある状況だ。それなのに、誰もその瞬間を目撃していず、そして全く外傷がない、というーー不可解としか言いようがない。いったいどんな奇跡が起こったというのだろう?
天才の頭脳を持ってしても物理的に何が起こったのか全く絵図が想像出来なかった。

「訊いてもいいですか? 下に何かクッションになるものがあったとか、誰かを巻き込んで下敷きにしてしまったとかないですよね?」

「それはないです。琴子さんは階段下の磁器タイルの床の上で仰向けに倒れていたんです」

「………仰向け」

ぞっとする。
だが何故後頭部に何もダメージがないのかーー

「その日、下から突風が吹きあげたとかは?」

有り得ないと思いつつあらゆる条件を想定してみる。

「実は目撃証言の中に、ふわりと身体が浮かんだとか、宙で止まった気がしたとかーー信じられない証言も幾つかありまして、我々も気象予報士に確認したんです」

「……吹いたんですか? 突風!」

思わず叫んでしまう。

「いえ、ないです。気象条件的にも、周囲の物理的条件においても階段下から上に人の身体を持ち上げる程の強風が吹き上げるようなことは有り得ないと」

「我々も数少ない目撃情報と、怪我の状況が一致しないのでどうにも納得出来ないんです。意識がすぐに回復してくれていれば、外傷もないことだし、すぐに事故なのか事件なのかはっきりしたと思うんですが」

直樹の眉がぴくりと跳ねた。

「……事件って……ただの事故じゃないんですか?」

「それが…」

刑事たちが一瞬言い淀む。黙って横で聞いていた重雄が不審げに彼らの顔を窺う。

「琴子さんは、誰かに階段から突き落とされたのかもしれないんです」

「……!」

「そんな…!」

重雄は信じられないと言いたげに顔を歪めた。

「実際突き落とすところを見た人はいないんです。ただ、階段を登り詰めたところで、同じくらいの年頃の女性と言い争っていたという目撃情報が幾つもありまして。
それに琴子さんが落下したところ助ける訳でもなく逃げていく女性を見た、という話も」

「そんな、琴子が…」

「それで…刑事さんが」

直樹は漸く、ただの転落事故に私服の捜査員が来たのかが理解できた。
しかも被害者は意識不明。

「…はい。事故だけでなく、過失致傷ーーもしくは殺人未遂…などの可能性を考えて捜査しています」

「そんな、琴子は人に恨まれるような娘じゃありません!」

重雄はにわかには信じられないように叫んだ。

「お嬢さんはそうかもしれませんか…」
刑事は言いづらそうに一度ちらりと直樹を見た。

「失礼ですが、琴子さんもご主人もストーカーの被害にあわれたことはありませんか?」

「…ストーカーですか?」

「はい。ストーカーとまでいかなくても、つきまといレベルでもいいですが」

「俺も琴子もそんなのありません」
きっぱりと直樹が否定する。

「本当に?……失礼ですがご主人のその容姿ならば女性から一方的に慕われたりしませんか? 女性関係でトラブルとかは?」

義理の父が隣にいるというのに、随分ズケズケと聞いてくるものだと内心うんざりと思う。

「ありません」

一瞬かつての婚約者の顔が思い浮かんだが、彼女がそのようなことに関わるとは思えなくて敢えて言い募ることはなかった。

「これだけモデル並みの容姿を持った人が旦那さんだと、知らないうちに横恋慕した女の妬みを買う、なんて普通にありそうですがね」

「普通にありませんよ」

苛立ちを隠せず、眉間に皺を寄せてしまう。

「でも」

刑事は鞄の中から、赤い紙の入ったビニール袋を出す。

「これ、封筒なんですがね、琴子さんのジーンズのポケットに入ってたんです。あ、ちなみに反対側のポケットには、この小銭が…」

お札と硬貨の入り交じったビニール袋をご丁寧に見せてくれる。

「それ見せて下さい」

直樹はビニール袋を受け取って中身を見る。どこかで禍々しさを感じる真紅の封筒の外に、ピンクのカードが一枚。パソコンで打ったらしい短い文章が書かれていた。

『夢から醒めた気分はいかが?
あなたの夢はこれでおしまい。これからがあなたの現実よ』

……どういう意味だ?

「どういう意味かわかりますか?」

直樹の思ったことをそのまま問われて、
「わかりません」と答えるしかなかった。

「なんとなく、意地悪さを感じませんか?」

「……感じます」

直樹も思ったことだった。送り主は女性で間違いないだろう。

「今までこんな手紙を受け取ったという話は奥さんから聞いていませんか?」

ちらりと重雄の顔を伺うと、重雄も首を横に振った。

「聞いてないです」

直樹がきっぱりとそう答えたとき。

「あ~! ここよ! ここ! 琴子の部屋!」

廊下からばたばたと聞き覚えのある声が響いて来た。
ノックをして入って来たのは、言わずと知れた理美とじんこである。

「あ、入江くん。琴子、大丈夫なの?」
理美の問いに、
「とりあえず命に別状はない」
と答えるしかない。

「失礼ですが、相原琴子さんのご友人ですか?」

手帳を見せながら前に歩み寄る刑事二人に、理美とじんこは目を丸くする。

「警察……?」

「この封筒に見覚えはありませんか?」

「「あーっ!それっ!」」

刑事の持っていたビニール袋を奪い取り、二人揃って叫ぶ。

「それ知ってるのか?」

「琴子んとこに届いたヤツでしょ?  入江くん聞いてない? 琴子にはちゃんと相談しろっていったんだけと」

「いつ届いたんだ?」

「見せられたのは、琴子がいなくなった日の午後だけど。届いたのは前日くらいじゃない?」

思い出すように天井を仰ぐじんこに刑事が続けて訊ねた。

「この手紙、どういう意味かわかりますか?」

「どういうって…そりゃ…」

二人は顔を見合わせた後、直樹の顔をちらっと窺う。

「とにかく、大学中、二人の噂でもちきりだったわけよ」

「噂?」

今度はちらっと重雄の顔を見て、躊躇いがちに口を開く。

「…入江くんが入籍拒んでるとか、家に帰らないとか。で、もう結局これは偽装結婚だったんじゃないかとか、入江母の悪ふざけだったとか、いやもうハネムーンで琴子に幻滅してソッコー離婚とか、みんな好き放題臆測してるわけ」

「なんだよ、それ…」

「なんだよ、って何よ! それこっちのセリフ! 自分が琴子にどんな仕打ちしたか自覚あるの?」

「この手紙だって、相談しろって言ったんだけど、どうせ琴子に会ってもなかったんでしょ? 相談なんかできるわけないよね?」

「…それで、この手紙の意味は……」

直樹に対して容赦なく口撃を始めた二人におそるおそる刑事が口を挟む。

「ああ、つまりね。琴子は、長年片想いして漸くこの王子様と結婚出来たわけ。で、本人もずっと夢みたい! とか云ってたんだけど。で、結果今、二人に破局説が流れて、ほうら、やっぱりただの夢、そしてこれが現実、あんたなんかが入江くんの奥さんなんてなれるわけないのよ、ザマアミロって言いたいんじゃないの? たぶんね」

「あ~ザマアミロってのも前あったよね?」

「前って…何度も届いてるのか? そんな手紙」

直樹はかすれた声で問いかけた。

「ザマアミロは、入江くんが例のお嬢様と婚約したって話が出たときだよね?」

「けっこー凹んでたよね、琴子。自分は入江くんとの掲示板が貼り出される度にあれこれ陰口叩かれてたのに、あの婚約者なら文句ないってこと? って」

「いったい、いつから、こんな手紙来てたんだ?」

直樹の問いに、理美は思い出すように眉間に指を当てる。

「いつからだっけ?」

「けっこう前からだよね?」

「ああ、そう!  琴子が入江くんちに同居したのがみんなにバレた時からよ!」

「……それって」

直樹は、呆然と呟いた。

「高校の時からってことか……」

一緒に暮らして3年半……全く気付かなかったことに愕然とした。

「あまり、琴子、深く気にしてなかったしね」

「そうそう。ある意味、こんなアイドルと一緒に住むことになった以上、そういう洗礼は当たり前みたいな」

「実際面と向かってあれこれ云ってくる子たちには負けてなかったんだけどね~」

「ただ、手紙は誰だか分かんないからね。この赤い封筒の子以外にも色々来てたみたいだし。でも、琴子はこういうことする子の気持ちも分かるって、妙なこと云ってたんだよね」

「気持ちが分かるって?」

「うん、多分、片想いのやるせない、どろどろした感情? みたいな?」

「そうそう、で、あたしたち云ったんだよね! だからってあんたはこんな人を不快にさせるような行動はしないでしょ! って」

「でも、あの娘、そんなの分かんないって、不安そうに云ってたよね」

「それらの手紙は、残ってませんか?」

刑事の問いに、二人はあっさり否定する。

「全部燃やしたって云ってたよ。手紙を出した子達のもやっとした黒い感情を浄化するんだって」

「そうですか」

残念そうな刑事二人に、漸く理美とじんこは問いかけることが出来た。

「で、なんで刑事さんがここに?」



琴子の転落が事故ではないかもしれないと聴かされた二人は、目を剥いて驚いたが、刑事の質問には的確に答えた。
琴子が言い争っていたという女性や、手紙を出した人物に心当たりはないかという質問に、即答は控えつつもあれこれ詮索を披露する。

「まあ、入江ファンは山程いるからね~」

「でもさ、その逃げたって娘、琴子と同じような髪型してたって話だよね?」

「それってあの娘じゃない?」

「心当たり、あるのか?」

直樹の怒ったような表情に一瞬怯んだが、すぐに立ち直り話し始めた。

「イッコ下の学年で、速川萌未って娘。昔、ショートのくせっ毛だったのに、最近大学で見かけたら、琴子みたいなストレートのロングになってたんだよね。後ろからみたら琴子そっくり」

「高2くらいの時、やたら琴子になついてたんだけど、いつの間にか離れたみたいよね」

「何かあったのか?」

「何って…ああ、ファンクラブ騒動! あの娘、琴子にファンクラブの会長になれとか言ったのよね」

「琴子は断ったの。入江くんの嫌がることはしたくないって」

「それからは交流なくなったって」

「なんか、人のいい琴子を矢面に立たせて自分は裏で、って感じが露骨にしてさ、あたしらはあんまし好きじゃなかったな。それにあの手紙もあの娘が煽動して他の入江ファンに書かせてんじゃないのかなーって気がしてたの。何の証拠もないから云わなかったけど、何となく、女の直感ってやつ?」

わかりました、少し調べますと、刑事は云い、今度は直樹に向き合う。

「入江さん、先程、婚約してたとおっしゃってましたよね? 失礼ですがその婚約者の方は今、どちらに?」








「ふう……やっと二人きりになれたな、琴子」

騒がしい来客たちがばたばたと帰っていき、重雄も店があるからと部屋をあとにした。
漸く直樹は眠っている琴子の傍らに落ち着いて座ることか出来た。

元婚約者である沙穂子のことに関心を示した刑事たちだったが、彼女が大泉家の者であると知った途端怯んだようだった。確か大泉会長は、警察官僚にも強いパイプがあると聞いたことがある。下手につつくと不味いと思ったのだろう。恐らくこれ以上大泉家を詮索するようなことはしまい。
実際沙穂子は関係ないだろう。そんなことをする女性ではないし、確か今は海外に行っている筈だった。

警察も医師から説明を受けてかなり戸惑っているようだ。怪我は殆どないのに意識が戻らないその原因が、転落の為ではなく、病気の可能性もあると聴かされたからだろう。たとえ言い争っていたという女が見つかっても事件としては成立しないかもしれない。

理美とじんこは、散々琴子の耳元に、ガールズトークを鳴り響かせ、容赦なく鼻を摘まんだり頬をぴちゃぴちゃ叩いてみたりしてみたが、一向に目覚める気配のない琴子の様子に随分と肩を落としていた。
しかし帰り際二人はキッと、直樹を睨みつけ、深い混迷の中にいる親友の想いを伝えることを忘れなかった。

「入江くん! こんなことになったの、自分のせいだって分かってる?」

「金ちゃんから、会社乗り込んだ時、入江くんが琴子に何云ったか、あたしたち聴いたからね!」

詰め寄るじんことは対照的に、理美はぼつりと呟いた。

「琴子…結婚式も披露宴もずっと幸せそうだった。披露宴で少し話した時も夢みたい、夢みたいって、何度もほっぺたつねらされてさ。『ねえ、入江くんがあたしのことずっと好きだったなんて信じられる? ねえ、いったいいつからあたしのこと好きになったと思う? 』何度も嬉しそうにあたしたちに訊ねてた」

「それなのに……」

「ハネムーンから帰った後の琴子の落ち込みようったら、あの幸せな結婚式からは想像も出来ないくらいだったんだよ?
やっばり全部夢だったのかな?って……」

「…もし琴子が…夢から醒めたくないから……眠ったままだとしたら……」

じんこがしっかり瞳を閉じて目覚める気配のない親友の顔を見つめてから、キッと直樹を睨み付ける。

「入江くんが…現実だって、ちゃんと分からせてよ……プロポーズしたのも結婚したのも紛れもない現実だって…!」

「入江くん、ちゃんと琴子のこと好きなんでしょう? 好きだから結婚したんでしょう? みんながあれこれ云ってるのなんて、嘘でしょう?」

理美の懇願するような問いに、
「ああ。周りが何ていってるか知らないが、おれは琴子が好きだよ。琴子を愛してるから結婚した。それに嘘偽りはない」きっぱりと宣言するように告げた。

二人は思いもかけずストレートな直樹の言い様に少し顔を赤らめ、
「……じゃあそれをちゃんと琴子に伝えて」もう一度懇願するように訴える。


「分かってる……心配してくれてありがとう」

深々と頭を下げる直樹に二人は目を丸くした。

「こいつがいなくなった時も色々捜すの手伝ってくれてありがとな。また来て、横で騒いでやってくれ。きっとちゃんと琴子に届いてるから」

「……うん」





二人が去ってから、直樹は眠る琴子の傍らでぽつりぽつりと話しかける。こんこんと眠る琴子の手をぎゅっと握りしめながら。


いつからおまえのこと、好きになったのかって?
まったく、難解な問題だよな。
おれ自身もはっきりした答が見つからないんだから。
もしかしたら案外同居が始まってすぐだったのかもな。LOVEではなかったけれど初めからおまえはとてつもない存在感を持っておれの前に現れたんだ。
あまりの図々しさや、はちゃめちゃさに、振り回されっばなしで…イライラしたり腹を立てたりもしたけれど、気がついたらそういう生活が当たり前になってた。
おまえに勉強教えるのもテニス教えるのも最初はともかく、だんだん嫌じゃなくなったな。飲み込みは悪いけれど、絶対諦めないから、教えがいはあったな。

卒業式の夜のキスも。
おまえがおれのこと忘れるなんて言うからすっごくムカついたんだ。忘れさせてなんてやらない、と思ったキスだった。
呆れるよな。
そんな感情、好きなやつにしか抱かないよな、フツー。

なあ、琴子。あのキス、おまえにとってファーストキスだろうけど。
おれにとっても、初めて自分からしたキスだったんだーー。


そう云って、直樹は琴子の頬を何度も擦り、キスを繰り返す。
頬に、額に、鼻先に、閉じた瞼に、そして唇に――。

何度も何度も。



「目を覚ませよ、琴子。眠り姫は王子のキスで目を覚ますのがセオリーだろ?」

そして、もう一度口付ける――。










※※※※※※※※※※※※※※※


                                             
更新、お待たせしてスミマセン。
何とか日常に戻りつつあります。
初稿が突っ込み処満載だったのでかなり直していたのですが、そうたいして変わらないかも………(^^;

刑事二人、実は初稿では名前があったのですよ。『滑川』と『竹田』。わかります? これ最初に書いてたの去年の5月くらいで、その時にやっていた佐●健くん主演の刑事ドラマに出ていたあの方の役名でした(^^;
旦那と一緒にドラマフリークなので色々観てはいるのですが、殆ど創作のBGM状態で、最近はきちんと観てません。旦那に『ちゃんと観てる?』とよく突っ込まれ(何せずっとスマホいじってますからね)『観てるよー』と答える適当な奥さんです。前クールは『オオカミ少女と黒王子』くらいしか真面目に観てなかったな……(ドラマじゃなくてアニメだし)
そうそう、滑川刑事。別にこの話の刑事に名前いらねーな、とさくっと消してしまいましたとさ。ごめんよふるぽん。







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管理人の、のののです。イタズラなキスにはまって、二次創作を始めました。

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