2014.10.08 (Wed)
月が、みている。
今夜は皆既月食。
雲が多かったけれど、狭間から時折うすぼんやりとした赤褐色の月が見えました。そして、その月を見ながら変な妄想が………短いですが(^^;
※※※※※※※※※※※※※※※
頭上にはブラッディムーン。
仄赤い月が時折雲に見え隠れしながら重なり合う二つの影を見下ろしていた。
「入江くん………はあっ……だめっ……あっ」
どうしてこんなことになったのだろう?
琴子はベランダの手摺に掴まり、ともすれば悦楽の波に流され我を忘れて声を出しそうになるのを踏みとどまりながら、ぼんやりと思う。
今日は皆既月食ということで、二人でベランダに出て月を眺めていた。
満月の夜は随分と明るく、鳥目の琴子でも、部屋から一歩でたベランダに肘を掛けて空を見上げる直樹の端正な顔もはっきりと視認できる。
しかしやがて下方から赤褐色の影がゆっくりと神々しい光を脅かす。
「あー隠れてきたね」
ワクワクと子供のように天空を見つめる琴子。
しかしいつまで見つめているのだろう?
二時間あまりの天体ショー。
ずっと見続けるには首が痛くなるだろうし、第一風邪をひく。まだ昼日中は半袖でも大丈夫とはいえ、やはり朝晩はめっきりと冷え込んできた。
「琴子、そろそろ……」
1時間後くらいに見れば完全な赤い月になるだろう。その頃もう一度ベランダに出れば……
そう思って声を掛けようと思ったのに、琴子は次から次へと喋り続ける。
「入江くんが神戸に居たときも、こうやってよくベランダに出て月を見ながら電話してたなあ……。二人の距離は離れてても、今見ている月は同じなのよねぇっとか」
辛かった出来事も喉元過ぎれば遠距離恋愛という少し切ないロマンティックな想い出となるらしい。
「あん、雲が……」
雲が一瞬にして月を隠し、辺りを琴子の苦手な闇色に染める。
不安そうに彷徨う手を取り自分の方に引き寄せると、琴子は恥ずかしそうにその胸に顔を埋める。
「そろそろ中に入らないと風邪引くぞ」
「え……でも、もうちょっとこのままでいたいな……だめ?」
上目遣いで甘えるように囁く琴子。
雲が流れ、月が再び二人を照らす。しかし半分程遠欠けてきた月は、先ほどまでの目映さは薄れていた。
明るすぎもせず、暗すぎもせず、逢魔が時のような黄昏色に包まれている。
光と闇の狭間に揺らいで。
囚われる--。
「おまえが悪い」
「え?」
「中に入ろぅってのに、誘うから」
「え? え?」
唇が落ちてくる。
そして----。
「だ……だめっ…こんなとこで……」
キスを交わしているうちに月は完全な食に入った。
新月の闇夜とは違う仄暗い闇の中で、半裸にされた琴子が、ベランダの手摺によすがを求めるようにすがり付く。
寒いからとさすがに全部は脱がされなかったが、直樹は全く服を乱していないのだからズルいと思う。
無論、こんな格好だが寒さなんて感じない。
寧ろ、暑くて、熱くて--。
「大丈夫、今はもう月さえも見ていない」
そう云いながら後ろから抱きすくめ、琴子の項に唇を落とす直樹は確信犯だ。
月が完全に姿を消すのはほんの一瞬。
今はほら、もう--。
月が、みている。

※※※※※※※※※※※※※※※※
娘と二人、ベランダで皆既月食を眺めていて、こんな話を考えているあたしって………(._.)
「すべF」パート2、明日更新出来るといいなっ N様、お待ちくださいませ♪
雲が多かったけれど、狭間から時折うすぼんやりとした赤褐色の月が見えました。そして、その月を見ながら変な妄想が………短いですが(^^;
※※※※※※※※※※※※※※※
頭上にはブラッディムーン。
仄赤い月が時折雲に見え隠れしながら重なり合う二つの影を見下ろしていた。
「入江くん………はあっ……だめっ……あっ」
どうしてこんなことになったのだろう?
琴子はベランダの手摺に掴まり、ともすれば悦楽の波に流され我を忘れて声を出しそうになるのを踏みとどまりながら、ぼんやりと思う。
今日は皆既月食ということで、二人でベランダに出て月を眺めていた。
満月の夜は随分と明るく、鳥目の琴子でも、部屋から一歩でたベランダに肘を掛けて空を見上げる直樹の端正な顔もはっきりと視認できる。
しかしやがて下方から赤褐色の影がゆっくりと神々しい光を脅かす。
「あー隠れてきたね」
ワクワクと子供のように天空を見つめる琴子。
しかしいつまで見つめているのだろう?
二時間あまりの天体ショー。
ずっと見続けるには首が痛くなるだろうし、第一風邪をひく。まだ昼日中は半袖でも大丈夫とはいえ、やはり朝晩はめっきりと冷え込んできた。
「琴子、そろそろ……」
1時間後くらいに見れば完全な赤い月になるだろう。その頃もう一度ベランダに出れば……
そう思って声を掛けようと思ったのに、琴子は次から次へと喋り続ける。
「入江くんが神戸に居たときも、こうやってよくベランダに出て月を見ながら電話してたなあ……。二人の距離は離れてても、今見ている月は同じなのよねぇっとか」
辛かった出来事も喉元過ぎれば遠距離恋愛という少し切ないロマンティックな想い出となるらしい。
「あん、雲が……」
雲が一瞬にして月を隠し、辺りを琴子の苦手な闇色に染める。
不安そうに彷徨う手を取り自分の方に引き寄せると、琴子は恥ずかしそうにその胸に顔を埋める。
「そろそろ中に入らないと風邪引くぞ」
「え……でも、もうちょっとこのままでいたいな……だめ?」
上目遣いで甘えるように囁く琴子。
雲が流れ、月が再び二人を照らす。しかし半分程遠欠けてきた月は、先ほどまでの目映さは薄れていた。
明るすぎもせず、暗すぎもせず、逢魔が時のような黄昏色に包まれている。
光と闇の狭間に揺らいで。
囚われる--。
「おまえが悪い」
「え?」
「中に入ろぅってのに、誘うから」
「え? え?」
唇が落ちてくる。
そして----。
「だ……だめっ…こんなとこで……」
キスを交わしているうちに月は完全な食に入った。
新月の闇夜とは違う仄暗い闇の中で、半裸にされた琴子が、ベランダの手摺によすがを求めるようにすがり付く。
寒いからとさすがに全部は脱がされなかったが、直樹は全く服を乱していないのだからズルいと思う。
無論、こんな格好だが寒さなんて感じない。
寧ろ、暑くて、熱くて--。
「大丈夫、今はもう月さえも見ていない」
そう云いながら後ろから抱きすくめ、琴子の項に唇を落とす直樹は確信犯だ。
月が完全に姿を消すのはほんの一瞬。
今はほら、もう--。
月が、みている。

※※※※※※※※※※※※※※※※
娘と二人、ベランダで皆既月食を眺めていて、こんな話を考えているあたしって………(._.)
「すべF」パート2、明日更新出来るといいなっ N様、お待ちくださいませ♪
スポンサーサイト
| HOME |