個別記事の管理2014-10-31 (Fri)



東京での暮らしは、山で暮らしていたのとたいして変わりませんでした。
何故なら、やはり滅多に外に出ない生活をしていたからです。
違うのはおうちが広くなり、部屋が沢山あって、家の中でかくれんぼができたことでしょうか。母とよく家の中で遊び、花瓶や置物を壊して父に叱られたものです。

父は時折出掛けることがありました。
母に聞くと新しく出来た大学というところで、教えたり教えられたりしているのだと言っていました。
「あたしも学校というところに行ってみたい」というと母は少し困った顔をして、「父様に聞いてみるね」と言いました。

けれど、翌月にはあっさりと東京女子師範の予科に行くことが決まったのです。
そして私は初めての学校生活を送ることとなりました。
生徒たちは華族や士族のお嬢さま方でしたが、私は父からきちんと作法をならっていたし、母からは人と対話する術を習っておりました。私は決して大勢の人の中で萎縮することはありませんでした。山の中の隔絶した世界で暮らしていた割には、随分早く都会での学校生活に順応出来たと思います。
実際学校というものが出来たばかりということもありましたし、私が父からあらゆる知識を伝授されていた為に、直ぐに教室の中でも一番の成績を取ることが出来たせいもあるでしょう。

何人かの仲のよい友だちも出来て、楽しい学校生活を送っておりました。

けれどその頃、父と母はよく言い争いをしていました。
何の話かわかりませんが、私が原因のように思えました。

「……みーちゃんにとって一番の幸せを考えて……あたしたちとこのままずっと一緒にいられる訳がないわ……」
母は泣いていました。

このまま一緒にいられない……ずっと一緒に……どういう意味だろう?
私にはわかりませんでした。
お嫁に行くということだろうか?
華族のお嬢さん方は、小さい頃から許嫁がいらっしゃる方が多かったのです。でも私はそんな話を聞いたこともなかったし、父や母が勝手にそんな話を決めてしまうとは思いませんでした。

「……琴美が俺たちと共に行くと言っても?」

「ええ。決して連れて行ってはいけないわ。あの娘には人間として幸せになって欲しいの」

扉の外でこっそりと父と母の会話を聞いていて、心臓がドキドキしていました。
聞いてはいけないことを聞いてはしまったのだと思いました。

人間として幸せになって欲しい――
どういうことだろう?

いいえ、私は心の何処かでわかっていたのだと思います。特に、東京に来て学校に行って、色々な人と触れあう度に、自分たち――父と母が異質であるという事実を。

二人が少しも年を取らないこと。
全く食べ物を食べないこと。
怪我をしてもすぐ治ってしまうこと。
太陽が嫌いで月の光が好きなこと。
満月の夜は空を飛んだり手を使わずに物を動かしたり出来ること。

でも、私はどんどん成長して、もうすぐ母の背を追い越しそうでした。
大人になって来ても私は相変わらずお腹がすいて、食べ物を口にします。
私はおひさまもお月さまも大好きです。
私は父や母のように簡単に怪我が治らないし、風邪もよく引きました。
私は父と母とは違うのです。
違うから――置いていかれる。
私は悲しくなって泣き出してまいました。

私が扉の外で泣いているのに気がついて、母は私を抱き締めて一緒に泣いてくれました。
「ごめんね……みーちゃん……」

父も悲しそうに私たちを見つめていました。
そして云ったのです。

「…琴美……俺たちはおまえの本当の両親ではない」

「入江くんっ」

「おまえの本当の両親が見つかった。おまえは本当の親のもとに帰りたいか? それともこのまま俺たちと共に行くか?」

「入江くん、そんなことみーちゃんに選ばせないで!」
母が叫びました。

あたしは即答でした。
「あたしの父様と母様は、二人だけよ!
ずっと二人といたいの」

「駄目よ、みーちゃん。あたしたちはずっと一緒にはいられない。あたしたちは長いこと一つ場所に居られないから、あなたも仲良くなった人とすぐ別れなければならないの……」

私は一瞬言葉につまりました。学校生活や、新しく出来た友だち……そうしたものを手放すことが出来るのか……考えてしまったのです。
それに実を云うと、その頃私は、里で知り合った十也と再会しておりました。
十人兄弟の末子で、口べらしで奉公に出た先で、余りに優秀なのを認められて大学に通っていたのです。偶然街で出会い、再会と、こうやって互いに高等教育を受けられる幸運を喜びあったばかりでした。

そうしたものを全て置いて、根なし草のように生きていくことに私は確かに躊躇いを感じていたのです。
私の逡巡を見てとったのでしょう。
父も母もそれ以上何も言いませんでした。



それから暫くして、父と母は私をある屋敷に連れていきました。
そこは「入江」と表札が掲げられ――父と同じ姓だと思いました。

「不思議な縁だな。まさか俺の一族の傍系とは。直系の人ならぬ者の系譜は俺しか残らず、傍系の人として生きた一族は、こうして子孫を遺し繁栄しているとは――皮肉としか思えない」
父は自嘲気味に笑うと、その大きな門扉の屋敷に入っていったのです。


私たちの住んでいた世田谷の屋敷よりも大きな和風の屋敷でした。お城のようと思いました。
そこには一人の和装の女性が立っていて――私を見るなり駆け寄って泣き出しました。


父はその女性に、一枚の古い産着を渡しました。芙蓉の紋様の入った真っ白い絹の産着――

「間違いありません。小夜の産着です。昔、元官軍の賊に襲われ拐かされた娘です」

その家――入江家は公家の一族で、維新の折りには薩長軍の為に尽力し、それ故に元官軍に恨まれていたようでした。当時の当主であった私の父、母、そして生まれたばかりの私を乗せた馬車が襲われ、父は暗殺され、母は重傷を負ったものの生き延び、そして私はそのまま行方不明となっていたとのことでした。

「私は15年前、道端で泣いているこの娘を拾い、そのまま連れて育てていました」
父はそう説明し、私のこれまでの暮らしを話していました。
母と私はぼんやりとその話を聞いていただけでした。



そして、その日から私は新しい家で暮らすこととなったのです。
実の母という人は、出自は武家だけあって、気骨のある女丈夫といった人でした。夫亡きあとは、外国との貿易を始め、会社を作りどんどん業績を伸ばしているということでした。
強いだけでなく、優しさもある人で、私の名前を育ての親のつけてくれた琴美のままでよいと言ってくれました。そして、そのまま女学校にも通わしてもらいました。

私はその時は思いもしませんでした。もう、二度と父と母に会えなくなるなんて。
一緒に暮らせなくても、世田谷の屋敷に行けばまた会うことはできるのではないかと思っていたのです。実の母は、育ての親への感謝を忘れず、何時でも会いにいき、孝行してらっしゃいと言ってくれました。


だから――私は学校の帰りにでも毎日会いに行くつもりだったのです。
あの屋敷から二人が消えてしまうなんて――いずれは出ていくのかもしれないと思っていたけれど、それはまだずっと先の未来のことだと思っていたのです。



私が何日かぶりに屋敷を訪れた時――そこはもぬけの殻でした。
誰もいない、広い家。
母とかくれんぼをしたことを思い出し、母の隠れた場所を隈無く探しました。
でも居ませんでした。
私はとうとう置いていかれたのです。
ついていく道を選ばなかったから――人であることを捨てられなかったから――。


居間の机の上に一枚の写真が置かれていました。実母の家に赴く前の日に、三人で初めて撮った写真でした。初めに撮った一枚は何故だか母の姿が写らずに、もう一度撮り直したものでした。
にっこりと微笑む優しい母。
珍しく口角をあげて薄い笑みを浮かべている美しい父。



やっぱりついていけば良かった。
その時は本当にそう思いました。
私は写真を見つめていつまでも泣いていました。



――その後。
学校を卒業した私は、数年間の留学から帰ってきた十也と結婚しました。十也は入江家に婿入りし、私と共に実母の始めた事業を拡大することに力を注いで来ました。その甲斐あって、私共の会社は業績を上げ、一大財閥となりました。
私は世田谷の屋敷を買い取り、夫ともにその家で暮らしました。そこで子供を五人生み、育て、生涯をその屋敷で過ごしたのです。
何処かで待っていたのかもしれません。
いつか父と母がここに来るのではないのかと。
いつか、またここに――。
――きっと、また会えると――








「おばあさま。お客様がお見えですよ。昔、この家でおばあさまにお世話になった方のお孫さんだという方ですけど……」

孫の琴音が、そう言って二人の男女を祖母の枕辺に連れてきた。
琴音は、随分綺麗な男の人だな、と少し顔を赤らめる。でも、彼には奥さんがいるようだ。美人ではないけれど、愛らしい顔立ちだ。
本当に祖母を知っているのだろうか。
琴音は祖母とともにずっとこの屋敷に住んでいる。この者たちが祖母と関わった記憶はない――が、何となく見覚えがある気もする。


「……琴美……」
女の人は、祖母の手をとり、はらはらと涙を流した。
そして、祖母も。
「………会いたかった……母様……」
夫を亡くした時と、子供と孫を戦争で失った時以外は一度も涙を流したことがないと言われた女傑が、子供のようにおいおいと泣く姿を、琴音は初めて見たのだった。

「あっ……」

琴音はふと思い出して、居間に飾られた写真の処に走っていく。
そうだ、この写真――。
子供の祖母と写っている二人の男女。今、祖母の元を訪れている二人ではないだろうか?
昔、一度だけこの写真の二人が誰かを訊ねた時、祖母が語ってくれた不思議な物語。本当の話なのか、作り話なのか、よくわからなかったけれど――


「おばあさま!」

琴音が写真を持って祖母の部屋に駆け込んだ。
すると、そこにはもう二人の姿はなく。

――――祖母は幸せそうに微笑んで、安らかな眠りについていた。
すべての人に等しく訪れる永遠の眠りに――――。




開け放たれたガラスの扉から、ただそよそよと風がカーテンを揺らしているだけだった。




――――第二夜 マイ・リトル 了――――

※※※※※※※※※※※※※※※

なんとか、連日アップで第二夜、終わりました。元ネタ『〇〇〇森の中』ぽーの中の珠玉の名作……短くすっきり感動的なお話をなんかぐだぐだにしてしまったような。スミマセンm(__)m

さて、第三夜、ハロウィン当日までにアップできるのでしょうか?



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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

ハロウィンは最終夜のつもりですが、なんとか一話で終わらしたいと………今から頑張ります(^^;

はじめまして * by みかん★2
こんにちは、はじめましてみかん★2と申します。
今回、むじかく様のお話のりんくのお知らせで、ののの様の作品を知りお邪魔させていただきました。
私のイタキスとの出会いは学生の頃のマンガ本でした。入江君の冷たい態度の裏に隠れた優しさと、琴子ちゃんの何にでも一生懸命な所が大好きでした。その後の結婚後のお話の琴子ちゃんが妊娠したのでは?!という所で、残念ながら連載がストップしてしまい悲しかった思い出があります。
その後暫くイタキスは、遠ざかっていましたが、レンタル屋さんでイタキスのDVDを見つけ、再びイタキスに火がつき、二次小説の世界を知り、色々な方達の作品を読ませて頂いていました。
ののの様のお話も沢山読ませていただきました!どの作品も素敵でした。『月下の一族』のマイ・リトルでは年老いた琴美ちゃんが亡くなる少し前に若いままの両親に、出会えた所は、感動して涙が出てしまいました。
長々と読みにくい文章ですみません。
今後も、ののの様のお話を読みにお邪魔させていただきますが、宜しくお願い致します。

Re.みかん★2様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

私も日キスでイタキス熱再燃、です(^^)一緒に二次の世界も満喫しましょう(^^)v

どの作品も素敵だなんて、本当に嬉しいです♪趣味に走り過ぎてるのでは、とおそるおそるアップしてたので……マイ・リトル、ラストシーンで涙、なんて私の方が泣いてしまいそうに嬉しいです。ありがとうございます!
またそんなお話を書けるよう、精進しますね(^^;これからもよろしくお願いします!

No title * by 枝豆子
はじめまして
イタキスもポーの一族も大好きなので、このお話を読んで本当にニヤニヤしてしまいました(笑)
とても面白かったです
読み終えてから、さきほど某通販サイトでポーの一族の文庫版を購入しました、単行本は色褪せてきてしまっていたので。
これからも頑張ってください

Re. 枝豆子様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

まあ、同じようにポーを好きな方がイタキス好きにおられて嬉しいです♪
私の話を読んで買っていただけたなんて~~(^w^)うちのも、かなり古びてますが結婚しても連れてきました。時折読み返したくなりますよね(^w^)

個別記事の管理2014-10-30 (Thu)



本当に、仲のよい夫婦でした――そう思うようになったのは、私が大人になってから日本の一般的な、夫に従属する妻、という家長絶対支配の家庭というものを知ってからでした。
父と母はどちらかが優位ということはなかったように思います。
一見すると母が父の言うこと全てに従い、依存しているようにも思えましたが、母は思ったことは全部はっきりいう人で、後々知った奥ゆかしい日本女性とは全く違う資質の持ち主でした。父と意見が違う時は食ってかかります。でも理論的な父と感情的な母とでは言葉では敵うはずもなく、よく喧嘩をしていました。

そんな夜は拗ねた母が父に背中を向けて私を抱き締めて眠るのですが、大抵目が覚めた時には、母は父の腕の中にいました。
因みに、普段喧嘩もせずに仲良く寝床に就くときは、私を間に挟んで川の字で眠るのですが、やはり朝になると父は母を抱き締めて眠っているのです。

二人はよく私の前でも平然と唇を合わせていました。
私にもいっぱい頬っぺにチュッとしてくれました。
私もお口にチュッってして欲しいとおねだりすると、
「みーちゃんにも大人になったら、お口にチュッってしてくれる人が現れるわよ」
そう言って父も母も私にはしてくれなかったのです。
そしてやはり大人になってから、この国の夫婦は決して人前ではそういうことはしないのだと知りました。



母は背も小さく、少し幼げで、父がいないと何も出来ないような無器用な人でしたが、父が3、4日帰らなくても意外に平気でした。とにかく私を守らねば、という気概に燃えていたのでしょう。何とか料理も作り、薪も割り、水を汲み上げ、お湯を沸かしてお風呂にも入れ、きちんと日々を過ごしていたのです。
けれどどうやら父がいないことに耐えられるのは4日が限度のようでした。それを過ぎると目に見えてやつれていくのです。
「父様帰ってこないね。どうしちゃったのかしら……」
父が外に出るのは里に降りて食べ物を交換したり、何か買いに行くときだけでした。だいたい1日2日で帰ってきていました。
一度だけ一週間程帰れなかった時――本当にこのまま母は父を恋しがって死んでしまうのかもしれないと思いました。
実際7日目には、母はほとんど起き上がれないくらいやつれて、「ごめんね、みーちゃん、母様、父様がいないと駄目なの……」そう言って泣いてばかりでした。その頃には私も随分色々時自分のことが出来るようになっていて、母と子が逆転したように私が母の世話をしていました。

そして、父が漸く戻った時――どうやら何か事故があって……父が怪我をしていたのではなく、怪我をしていた人たちを助けていて帰れなかったようでした――母は顔は土気色で、このまま死んでしまうのではないかと思うくらい瀕死の状態でした。

「ごめん、琴美、しばらく母様と二人きりになるから」
父様はそう言って奥の部屋に籠り、一晩出て来ませんでした。
母のぐったりした様子を見たときの父の悲愴な表情といったら! 父も、母がいなくなったら生きていけない人なのだろうと思いました。
そして、翌朝には母はすっかり治り、元の可愛らしいツヤツヤなお肌になり、さらに若々しくなっていたのです。

父は本当に不思議な魔法を使っているのだと、私はずっと信じておりました――。








私が初めて山を降り、森の奥の世界から広い田畑の穂の波を見たのは、恐らく十歳の頃だったと思います。
そして、その時初めて家族三人以外の他人――人間を見たのです。

その里は、父が時折食べ物を交換して貰っていた集落だったのでしょう。父が里の入り口に立つと、田畑で野良作業をしていた村の若い娘たちが色めきたっていましたが、後ろに私と母がいるのを認めるとあからさまにガッカリとしているのです。滅多に里に降りることはありませんでしたが、どうやら父はここの娘たちに随分慕われていたようでした。父は妻子がいると言っていたのに、みな信じていなかったようなのです。
母は父が女たちから慕われるのはいつものことなのよ、と少し剥れ気味に言っていました。
慣れているんだけどね、とも。
でも、私には母の可愛いらしさに敵う娘は誰一人いないように思いました。
初めてみる人間たちは随分父や母とは違うものでした。そこが農村で、男も女も子供たちも陽に焼け泥と汗にまみれた黒い顔をしていたからでしょうか。
父も母も色白ですし、山で小さな菜園を作り木を刈ったり薪を割ったり狩りをしたりと動き回っていましたが、汗一つかいているのを見たことはありませんでした。泥まみれになって働いた後でも、私たちはいつも一日の終わりに必ず湯を沸かし身体を洗っていましたし、特に父は母の長い髪を念入りに洗ってあげていました。
後に村の者たちは滅多にお風呂に入らないときいてびっくりしました。
そうしたことも要因でしょうか、私たちは村の者とは全然違う人種のように思われました。
ただ父が私たちを村に連れてきたのは、恐らく私に人間というものの暮らしに慣れさせる為なのだと今なら思えます。
でも初めの頃、私はなかなか村人たちとは馴染めませんでした。
母が村の子供と遊ぶよう促したけれど、あたしは直ぐには彼らの輪には入れません。
気がつくと母が率先して子供たちと鬼ごっこをはじめ、いつの間にか私も仲間に入っていました。
母は長いこと私としか遊ぶことがなかったのに、あっという間に沢山の子供たちの大将のようになっていました。
でもお陰で私もすっかり仲良くなり友達ができたのです。
一番仲良くなったのは、十也(とうや)という十番目の子供という私と同じ年の少年でした。頭もよく、この村の寺子屋で一番始めに読み書きを覚えたということでした。私は彼に父から習った色々なことを教えました。計算や歴史や空のこと、風のこと、星のこと……彼はしっかり覚えてくれて、私に寺小屋の先生になればいいと言ってくれました。
父は父で、この村でやはり色々なことを教えていたようです。
薬草の作り方や、肩凝りや腰痛に苦しむ老人や、妊婦たちに対しての処方をあれこれ伝授していたようです。
村の人たちは父を尊敬の念で見ていました。

けれど村の人たちとのささやかな交流は僅か半年ばかりで終わってしまいました。

ことの発端は、父が偶然、山犬に襲われた村人を助けたことでした。
助けられた筈の村人が、父の瞳が赤くなりまるで化け者のように妖かしの術を使って山犬を一撃で倒したと言い触らしていたのです。

「……どうして……」
母は悲しそうに私たちの住んでいた小屋を見つめていました。
村人たちに火をつけられたのです。

「助けた奴は催眠が効かない性質だったようだな。村人全員の記憶を消して回るのも面倒だ。どのみちここもそろそろ潮時と思っていたところだ。ここを出よう」

燃え盛る炎を見つめてあたしは悲しくなりました。

化け物。

火を放つとき村人たちが言っていた言葉。
あんなに父に助けられたクセに。
父のお陰で病が治った人たちがこの村には沢山いるのに。
どうして……?

十也も化け物と思ったのかしら。

私は彼に会うこともなく、そのままその土地から追われるように出ていったのです。







私たちが新しく暮らし始めた場所は、新しく都となってまだ十数年しか経っていない東京でした。
どういう経緯か分かりませんが、欧米の商人が建てたという洋館を借りることか出来たということでした。
森の中の一軒家のようなその洋館は、どこかあの懐かしい山小屋を思い出させてくれました。無論しっかりした石造りの建物は、あのボロボロの山小屋とは比べ物にはなりませんが、森の中にぽつりとあって、町の中なのに世間と隔絶している感じが何処となく似ていたのです。


其処で私たちはまた元の三人だけの生活を始めました。
文明開化の足音か聞こえつつあった帝都、東京で――。





※※※※※※※※※※※※※※※


本当は大正あたりを舞台にしたかったのに、第一夜で琴美ちゃんを大変長生きに設定した為に、逆算したら明治初期の生まれになっちゃったんですね~(^^;

さて、次で終わりたいと思ってます……(^_^)




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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

何処にいっても直樹さんは不死身で、元気(?)です♪

個別記事の管理2014-10-29 (Wed)

とりあえず第二夜明治編、続けます。二話くらいでさくさくっと終わらせたいのですが……


※※※※※※※※※※※※※※※※




時は明治。
まだご維新から僅か数年しか経っておらず、政情は不安定で、内乱や暗殺があちこちに蔓延っていた時代に私は生まれたようです。
無論赤ん坊の頃のことなど覚えていませんし、私はそうした浮き世とは隔絶したところで幼少時代を過ごしていました。

私が育ったところ――今となっては其処が何処だっだのかさっぱりわかりません。
森の中の一軒家。
周囲には家もなく、集落も有りませんでした。

恐らく元は木こりか杣人(そまびと)の山小屋あたりだったのでしょうか。炭を焼く大きな窯もあったので、炭焼き小屋かもしれません。

私はそこで、父と母と三人で暮らしておりました。
当時の年代を考えますと恐らく世間の庶民たちはまだ、髷に和装という姿が一般的であったのだろうと、今になって思うのですが、父は西洋の人のように衿もとの長さ程の短髪で、母は長い髪を結うこともなく、風にたなびかせておりました。共に衣服は粗末な木綿の和装でしたが、背の高い父はそれは美しい顔立ちで、どのような衣服を纏っていてもその美しさが損なわれることはありませんでしたし、母は母で、それは愛らしい人で父が選んで来たらしい何枚かの着物や浴衣を喜んで身に付けておりました。

私はそれこそ物心ついてから、父と母以外の人間を見たことがありませんでした。私の友達は山のなかの鳥や鹿や栗鼠や猿たちだけでした。
山には熊や狼など危険な獣の遠吠えなど聞こえましたが、私たちの山小屋が襲われることはありませんでした。どういうわけかあの周囲は何かの力で守られているように思いました。

私は父から様々なことを教わりました。文字や言葉だけではありません。空を見ながら星や月や太陽の動きの理(ことわり)を学び、風や雨や雲の流れを見て自然の営みの理を学びました。
あらゆる草や樹木の名前を教わり、その薬性や毒性についても学びました。
物の数え方から数学の知識を身に付けて、必要だからと、英語やオランダ語も教わったのです。

母からはここにはいない人間の暮らしについて教わりました。教わった――というよりは、ただ絶え間なくおしゃべりをしていただけと思います。
くるくると表情を変えて、笑ったり泣いたり本当に忙しなかったのですが、母の話す物語は本当に楽しくて、私たち三人以外の人々がどこか別の世界に住んでいるということはすんなりと受け入れられました。
神社のお祭りの夜店の楽しかったことや、隅田川の花火の話、京でお花見をしたことや、長崎で西洋の方にかすてらやパンの焼き方を教わったことなど、話はとりとめもなくあちこちに移りました。この山の麓の村の田畑を耕す人の話も聞きました。農家の人たちがそれはそれは汗水流してこのお米や野菜を作っているのよ、と。どうやら私の食べるものはその農村で分けて貰っていたようです。
おそらく焼いた炭や、薪、山菜や茸などと交換していたのでしょう。
ただ、そうした食事をしていたのは私だけで、父と母は初めは私に物を食べるということを教える為に食べ物を口にしているだけでした。私が食べる楽しみを知るようになると、全く食事に手をつけることなく、ただ調理をして私に出すだけなのです。

「どうして父様と母様はごはんを食べないの?」そう訊ねると、

「父様と母様は食べなくても生きていけるのよ。でも、あなたはちゃんと食べるのよ。食べないと大きくなれないから!」
そう言っていたので、私は大人になったらもうごはんを食べなくてもいいのだと思っていました。

もっぱら料理するのは父の方でした。
お米を炊くのも野菜を煮るのも父の方が断然上手だったのです。
母も時々作っていましたが、大抵材料を駄目にしてしまうので、よく父から怒られていました。
焦げたり煮崩したり、御飯はたいていお粥になっていたり。それでも母が一生懸命作ってくれた料理も私は好きでした。しょっぱかったり薄かったりしましたが二人が喧嘩をしながらも一緒に料理をしている様を見るのも好きだったのです。

二人はそれは仲のよい夫婦でした。
喧嘩もしましたが、たいてい二人一緒にいることが多かったのです。
太陽が苦手で余り外に出るのことはなかったのですが、子供はお日さまの下で遊んだ方がいいと、なるべく自分たちは木陰にいて、私が外で遊ぶのを見守っていました。
満月の時期なら外に出ても大丈夫だと、母は一緒に鬼ごっこや石蹴りにも付き合ってくれました。
後々思えば二人とも本当は昼間は眠り、夜に起きる生活が合っていたのに、私を育ててる間は無理をして、昼に起きている生活をしていたようでした。

私が少し大きくなって夜遅くに起きていられるようになると、月光浴を楽しむようになりました。
二人は月の光が好きなようでした。

満月の下で、父は本当に美しく、私はいつもうっとりと眺めていました。
すると母が、「だめよ、みーちゃん、父様は母様の旦那様なんですからね」と、茶目っ気たっぷりに笑うのです。

本当に――仲のよい夫婦でした。



※※※※※※※※※※※※※

短くてスミマセン。しかも淡々とした琴美ちゃん語り。これでは二話では終わらないかな~?

ハロウィンまでに終わらせられるのか? このシリーズ……(._.)



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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

そうなんです、琴子ちゃんはいつの時代も琴子ちゃんです。400年も生きててもまともに料理はしてなかったしね、食べないから。いえ、多分400年料理していても調理器具の進化の度に躓くことでしょう(^^;彼女の料理音痴はいつの時代でも健在です♪

個別記事の管理2014-10-27 (Mon)


「すべF」放送始まりましたね。評判はいまいちのようで。確かに犀川先生、ガリレオの湯川先生と比べて変人っぷりが弱いかも。いや、あれを実写化しようとしたことがスゴいと思うんですが。
でも、ミステリーとしては次の展開がとっても気になる「Nのために」の方が視聴率いいようで…………

と、いうわけで「すべF」タイトルパロ第3弾! 琴子ちゃんもFに(?)、直樹もF(?)に、というN様のリクにお応えしてみました(^^)v

サブタイトルは「N様のために」(爆)です♪


★少々下ネタありです。限定にする程じゃないとあたしの感覚では思ってるんですが。キライな方、パスしてね(^^;



※※※※※※※※※※※※※※※※※

病院中の女性の胸がみんなFカップになるという、奇妙キテレツな夢を見た翌日。
おれは朝から琴子のAカップを堪能した後、スッキリと病院に行き、そしてみんなの胸が元に戻っているのを確認して安心した。

いったいなんであんな夢を見たんだか。
夢は自己願望の表れというが、おれは琴子の胸がでかくなることなど望んでいない。
あいつは昔おれが適当に言った戯れ言をいまだに信じていて、おれがせめてCカップくらいになって欲しいと望んでいると思い込んでいる。おれがささやかなあいつの胸を愛する度に申し訳なさそうにするのも、可愛いと思ってしまうのだが、それ故にあいつの誤解を糺してやらない。

「あら入江先生。おはようございます。今日は琴子は夜勤ですね」
桔梗がにこやかに近付いて来る。
大丈夫、胸はない。
夢とはいえ、なんでお前までFカップになるんだ? 全く意味不明だ。

「どうせ今日は昼まで起きられないだろうな」

「え?」

どうも夢見が悪かったせいで、つい余計なことを言ってしまう。察しのいい桔梗は、一瞬目を見張ったが直ぐに元の涼しい顔に戻った。

「そうですか~きっと夕べは蚊にでも刺されて眠れなかったんでしょうねぇ」

「……まあな」



あっさり去っていった桔梗を尻目に、おれは仕事に戻る。さて、今日はオペだ。予想では8時間以上。その後の経過観察もあるから今日はいつ帰れることやら。
夕べ抱いておいてよかった。次はいつ琴子を抱けるのだろう……?






「……りえくん…入江くん」

琴子の甘えたような声が耳元を擽った。

――ここは何処だろう? 仮眠室か?

いつ眠ったのだろう?

おれがぼんやり目を開けると、目の前に琴子の胸が………

「………………!!!!」

おまえ、いつの間にそんなにデカくなったんだ――!

………エフ…だな。

目の前の琴子の胸ははち切れんばかりのFカップだった。

「おまえ、その胸、どうした? なんでそんなにデカく…」

パジャマの前釦を全開して、殆どはだけた状態の胸をおれの顔面に押し付けてくる。

「……どうしたって……妊娠して出産したから大きくなったんでしょう?」

は?

おまえ、いつ子供産んだんだ?


――そうか、夢だな。
おれは今度はあっさりとこれが夢だと確信した。
何故ならここはおれたちの寝室だ。家に帰った記憶がないのに何故この極甘ピンクの寝室にいるんだ?

そして昨日まで一緒に仕事をしていたおまえがなんで妊娠出産してるんだ?

それに、妊娠でそこまで大きくなるか?
せいぜいCカップだろう?

いくら夢でもなかなか無理のある設定に笑えてくる。

しかし、出産ってことは授乳中か。なるほどパンパンに脹れているな。血管の青い筋がくっきりと浮かび上がっていた。

「入江くん、はいどうぞ。今日のミルクは朝霧高原の成分無調整牛乳よ。左はカルシウムを添加した加工乳。イライラにいいわよ」

そういって、ぷるんと、おれの前に胸を差し出す。

………って、飲むのはおれかよっ!!
しかも出るのは牛乳かよっおまえいつから牛になった?

「ほらほら飲んで~今日のおっぱいは自信あるの!」

どんな自信だーっ!!!!

むにゅっと押し付けてられて、胸の頂きの赤い実を口に含む。母乳を大人が飲むと腹壊すとか云うけれど――。
手で少し揉みながら吸い上げると………
マジかよ……本当にミルクが出てきた。普通の牛乳……少し温いのが難点だか、立派な牛乳だ。琴子……おまえ本当に牛になったのか?

そして左の胸も。うん、こちらは少し薄めの加工乳だな。……だがなんで右と左が違うのが出てくるんだ。しかも日替わり!?

「あ……ん」

激しく吸い上げると、琴子が甘い声を出し始めた。

「入江くん……明日はタウリン配合するね……疲れてるみたいだから……」

タウリン配合の牛乳って……!?

「……別に疲れてなんか……」

おれは琴子の胸を貪りながらそのままベッドに押し倒す。まあ、夢だし……きっと最後までやらせてもらえねーだろうな、と妙に冷静なおれ。

「…疲れてるよ。だって……入江くん、まだFサイズになってない…」

そういって、琴子がおれの脚の間にすっと手を持っていき、ぎゅっと握る。

おまえーっ夢とはいえなんて大胆な!
現実では滅多にお目にかかれない積極的な行動に、おれは驚くと同時にこれはもう夢だろうがなんだろうが構うものかという気になって、琴子のデカイ胸を揉みしだく。いまいち手に余る大きさでしっくりこない。

「……待てよ…すぐFサイズに……」

しかしFサイズってなんだ?
Freeか? Fullか?

ま、どっちでもいいか…

おれは琴子のFに顔を埋め………



「……りえくん、入江くん!」

ふがっ

顔にふわふわの物体が押し付けられていて息苦しさの余りに目が覚めた。

目の前に茶色い物体……茨城非公認ゆるキャラ〇ばーるくんがおれの顔面に………!

「なんだよっこれっ!」

がばっと飛び起きた――ここは?

そうか、病院のおれの部屋だ。
最近おれは自分の個室を与えられていた。その片隅にあるソファベッドの上にいたのだった。

そして何故かこの部屋にも少しずつゆるキャラのぬいぐるみコレクションが、琴子の手によって増え始めていた。足元にはぐ〇まちゃんが………

「大丈夫? 夜食を一緒に食べようと持って来てみたら、入江くんね〇ーるくん抱き締めて呻いてるんだもの……」

ナース服の琴子はいつもの通りのAカップだった。おれは心なしか安心した。

「おまえ、休憩時間?」

「うん、そう。入江くんもお疲れさま。大変なオペだったんでしょ?」

「まあな」

そうだ、おれは結局10時間かかったオペの後、患者の容態が落ち着いたのを確認してこの部屋に来て、そのまま眠ってしまったらしい。

そう、おれは疲れている。
疲れているからあんな荒唐無稽な夢を見るんだ…

疲れているから。

「琴子……癒やしてよ」

「え? え? え?」

おれはぐいっと琴子を引き寄せる。ねばー〇くんをぽいっと床の上に投げ捨てる。

「あたし、まだ仕事が……」

「休憩時間中に終わらせるから」

おれは琴子のナース服の釦を外し、そのささやかな胸の膨らみを求めて手を彷徨わせる。

「あ……だめ」

そう、これだよこれ。この感じ――。

おれは琴子の手を充分フルサイズのおれの中心に導き――

「ああ、入江くんってばもうFサイズ……」


ああ、そうだよ。おまえを前にしたらもうおれは自由(フリー)で満杯(フル)なんだ――




――――すべてはFサイズになる――――




※※※※※※※※※※※※※※※※

こんなんでよかったでしょーか、N様?

ふと、鍵つけなくてよかったのだろうかと悩むあたし……(-.-) いやあ、どのレベルで限定記事にしていいのか、加減がわからなくって。自分はたいしたえろは書けないと思っているので。
こ、これくらい大丈夫ですかね?(^^;




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お粗末様でした(^^;
こんなのでよかったでしょうか?
私は妊娠しても2サイズくらいしかアップしなかったので、Fはでかくなりすぎだろうと思ったんですが、アリでしたかね(^_^)
いつもコメントありがとうございます♪

個別記事の管理2014-10-27 (Mon)

本日10月27日にて、ブログを開設してちょうどひと月になります。

琴子ちゃんのバースデーイヴを狙って(きっと忘れないだろうと……ええ、自分が、です)はや1ヶ月。
自分でも意外にマメに更新したもんだと、感心しております。初めのご挨拶で『亀の更新』と予測してましたが、おそらくせいぜい2,3日に1回くらいの更新ペースだろうと。下手すりゃ週1くらいかと踏んでおりました。
それがこんなにハイペースで更新できるとは! 自分にビックリ(°Д°)
それもこれも何故か初めてお話をアップしてすぐに初コメ初拍手をくれたN様のお陰です。こんな、なんの宣伝もリンクもしていない僻地のサイトに訪れる人は当分いないものだと思っておりました。
けれど毎日必ず拍手していただいて、訪問してくれる方がいるのだと思うと随分と励みになりました。
私は本当にPC音痴で、相変わらすスマホで更新してるのですが、やはり複雑な設定はパソコンからでないと出来ないようで、どうしても設定できないのがアクセス解析。登録はできているのに、マニュアル見ても貼り付ける画面にたどり着けなくて、結局できないまま。なので、実質どれくらいの方が訪問されているのかさっぱり分からない。その為拍手だけが唯一の訪問者がいるのだという証のようで、凄く嬉しいのです。
N様から毎日の拍手と最近はコメントもいただき、すっかりお互いのブログを行き来する間柄に。もはや茶飲み友だちの気分です。ありがとうございます、N様!
そして、最近拍手をしていただいてる方も、ありがとうございます(^_^)本当に嬉しいです♪
いつまで続けられるかわかりませんが、とりあえずしばらくは頑張れそうです。


さて。ちょっと真面目なお話。
実は、1ヶ月前のこの日はある悲しい災害と重なってしまいました。
O嶽山の噴火です。
私は行ったことはないのですが(何せ山登りとは無縁なインドアな家族なので。20代の富士登山が最後かも……)私の住む東海域では紅葉スポットとしても有名な処です。
あの日、昼の速報で一報を知ったときこんなに犠牲者が出るとは思いもしませんでした。
夜、11時頃、必死で初めてのお話をアップしようと打ち込んでいる時、頭上でヘリコプターの音がしました。こんな夜中にヘリコプター? どきりとしました。うちは東名高速のすぐ近くにあり、一番の渋滞域だったりするので、よく連休中や事故があったときは報道ヘリが飛ぶのですが――旋回しているわけではないので、これはもしかして、と思いました。市内に陸自の駐屯地があるのです。これはおそらくあの山に向かっているのだろうと。

身近な人で犠牲になられた方はいませんでしたが、旦那の会社でも身近で被害者はいないか確認があったそうです。後々には、友人のご主人の同僚の方とか、私の勤めている会社の取引先の会社の方とか被害に遭われていたことを知りました。被害に遭われた方の多くが馴染みのある近隣の市の方たちでした。
まだ6名の方が山頂に残されたまま、捜索は年内は打ちきりとなってしまい、遺されたご家族の心中を思うと心が痛みます。
早く春が来て一刻も早くご家族の元に戻れるよう祈るばかりです。

あの日あんなに天気が良くなければ、台風がもう一週間早く来てくれていたら、せめて噴火が夜だったなら――あれこれ思っても時は戻りません。
今夏は、広島の土砂災害を初め、あちこちで天災による被害がありました。
日本に生まれた以上天災とは隣合わせの生活は仕方のないことなのかもしれません。何度も大きな災害を乗り越えてきた先祖の、静かな諦念と不屈の精神と他者と助け合う気風がDNAに刻み込まれているようにも思います。
私は阪神も東日本の震災も全く影響のない地域で、大きな天災に遭ったことがありません。ただ東海大地震や南海トラフ地震の予測地で30年の間に絶対来るといわれてはや10年以上。いつ来るかいつ来るかと時折思い出して備えるものの普段はすっかり忘れているのが実情です。災害だけでなく明日何があるかはわかりません。事故や事件に巻き込まれないとも限らない。私はついあれこれ考えてしまう悲観主義的なところもあるし、まあなるようになるさと開きなおる楽観主義的なところもあります。
ただ平穏で当たり前の日常が明日も続きますように。
そう祈るばかりです。
日本中すべての人に祈りが届くかどうかわかりませんので、とりあえずは私の周囲とせめてこのブログを覗いて下さる皆様に祈りが届きますように。


いとおしい日常がずっとずっと続きますように。


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いつも本当にコメントありがとうございます♪こちらこそずっとコメント友だちでいてくれるとうれしいです。あたしもコミュニケーション能力の低い口べたな奴なのでリアルな友だち少ないです(._.)これからもよろしくお願いします(^^)v

個別記事の管理2014-10-26 (Sun)




さようならって、なんだよ!


僕は一枚残されただけの手紙を握りしめたまま、屋敷中の部屋を確認した。彼らはリビングと寝室以外殆ど使っていなかったけれど、無駄に広い屋敷の中を走り回って、一つ一つ部屋を見て回り――そしてここに誰かが棲んでいた気配の欠片さえ残っていないことを知る。

もう一度リビングに戻った後、離れの診療所に持ち込まれていた猫足のアンティークソファがここに戻されていたのに気がついた。
そして机の上には〇ンケル1ダース………

僕はぼうっとしたまま外に出て、ぼうっとしたまま玄関の鍵をかけ、ぼうっとしたまま何も考えずに散歩コースのひとつの公園に向かった。


みゃう。

公園の入り口に来ると、見覚えのある黒猫が僕の足元にすり寄ってきた。ただその猫の首には、この前見たときにはなかった派手な蛍光ピンクの首輪がついていた。そして黒猫は中に入れと言うように、僕を公園の中に導こうとする。
すると。

「チビ」

聞き慣れた鼻にかかった甘い声の方に、黒猫が走り寄って行く。
声のした方に視線を向けると、そこには。

「琴子ちゃん! 入江!」

さよならと置き手紙一つで姿を消した二人がジャングルジムの横に立っていたのだ。

「渡辺さん、ごめんなさい。突然出ていってしまって。佳菜子ちゃんの様子とか気にはなったのだけれど、やっぱり入江くんと話し合ってそろそろここを離れた方がいいと思ったの。好きな人たちが沢山増えてくると余計に離れたくなくなるし。このまま黙って行ってしまおうかとも思ったけれど、渡辺さんにはあんなにお世話になってたのに、それじゃあまりに不義理過ぎるという気がして……で、ここに居れば会えるかもって。それに、これ」

渡されたのはこの家の鍵。

「そんなの、事務所に送ればいいと言ったんだが」

おまえ、つめてーぞ。

「いつか、また戻ることがあるのかもしれないけれど……その時渡辺さん生きてるかわからないし」

うっ……

「渡辺さん、佳菜子ちゃんの様子時々見てあげてね?」

「うん。僕も気になっているからね」

「ありがとう」

「連れて行かなくていいのか? 本当に。あの娘、親が捕まってこれから生きていくのに辛いぞ。この人間の世界で」

入江のセリフに、琴子ちゃんが首を振る。

「……もう、言わないで。どんなに辛くたって人間として生きていく方が幸せに決まってる」

あ、また入江の顔が曇った。

「……入江くん、誤解しないでね? あたしは一度も後悔してないから。入江くんと同じ不死の一族になったこと、一度も後悔してないから。人間でなくなったことも全然後悔してないんだからっ」

琴子ちゃんが入江に向き直り、きっぱりと宣言した。

「じゃあなんで琴美を仲間に入れなかった?」

「だって、あたしには入江くんがいるけれど……琴美にはこの先、人間であることをやめてまであの娘と一緒になってくれる人が現れるかわからなかったじゃない。あたしは入江くんと一緒なら人間じゃなくなっても平気だった。永遠に共に過ごせるなら望むところだった。
でも琴美は?
どんなに琴美を愛しててもあたしにとって一番は入江くんだし、入江くんだってそうでしょ……? 琴美のことを世界で一番愛してくれる人が傍にいない限りあの娘は永遠に孤独になってしまうと思ったの」

それにね………琴子ちゃんは少し目を伏せて、小声で呟いた。

「本当は半分ヤキモチなの、ただの。だって仲間に入れるには、ある程度大人になってからじゃ駄目じゃない? 子供だとそれこそ1、2年で住む場所変えなくてはならないもの。大人になって、あたしと同じくらいの年になった琴美に入江くんを、とられるんじゃないかって何処か心配だったと思うの……あたし、そんなこと思う時点で親失格だったのよ」

「そんなことない」

入江が琴子ちゃんを抱き寄せる。

「おまえはちゃんと母親だったし、琴美もおまえのことを母親として愛してた。俺たちが人ならぬ者だと知った後も。琴美は人として天寿を全うして幸せだったはずだ……」

「いりえくーんっ」
琴子ちゃんが入江にしがみついて泣きじゃくる。入江が優しく抱き寄せて……うーん、二人の世界に入り始めているぞ。僕は少々所在無げに空を仰ぐ。

まあ、琴子ちゃんにそんなこと言われちゃ、今後こいつが女の子を一族に入れることはないだろう。自分がヤキモチやくから男を仲間に入れることもないだろうし。つまりこの二人は永遠に二人だけで生きていくのだ。


「……じゃあね。渡辺さん、お元気で」

みゃう、と琴子ちゃんの胸で黒猫のチビが鳴いた。この子、連れて行っていいって言ってくれたから、と琴子ちゃんは嬉しそうに笑っていた。



――そして彼らは僕の世界から消えていった。



その後僕は淡々と日々の業務をこなし、平穏で平和な日常を過ごした。
尤も仕事柄、殺伐とした事件やらと関わることも多く、人間の方がはるかに狂気と猟奇に満ちた生き物だと思わざるを得ないことも多かった。
そんな僕を癒してくれる女性に出逢い、僕は彼女と生涯をともにしたいと心から望むようになっていた。あの二人のように、互いが互いを埋め合わせるような一対となりたいと。
何年か付き合い、彼女も僕を好きと言ってくれて、当然プロポーズはOKかと思いきや、あっさり振られてしまった。
僕はショックで立ち直れないかと思ったが、どうにも諦められなくて何度もチャレンジした。
そうして漸く彼女が断った理由を知った。
彼女は、病気で子供を産めないのだと、涙ながらに語ってくれた。
だから一生結婚しないのだと。
僕は、ほっとしたんだ。
僕が嫌いなわけではないのだと知って。
子供が欲しいから結婚したい訳じゃない。
欲しいのはキミなのだと。僕は何度も何度も彼女にプロポーズして、漸く彼女と結ばれることが出来た。
このまま二人だけで人生を過ごすのも悪くない。子供が欲しいなら養子をとるという手もある。選択肢も0ではない。未来は自分の意思で選べばいい。

そして僕らは結婚し、やがて僕は勤めていた事務所を辞めて小さな法律事務所を始めた。大きな事件を扱うことはないが、市井の人々のささやかな日常を守る仕事をしているのだという自負を持ってそれぞれの相談に対峙してきた。

やがて僕らはそろそろ子供を持ちたいという話になり、養子をとろうということになった。
僕たち夫婦が引き取ったのは佳菜子ちゃんだった。そう、虐待されていた少女だ。僕は琴子ちゃんに頼まれていたこともあって、佳菜子ちゃんいるの施設に何度も訪ねていた。僕の妻も一緒にきて、気が合うようだった。
佳菜子ちゃんの父親は出所後も彼女を引き取ることはなく、別の女性と再婚したと聞いた。
佳菜子ちゃんは入江が記憶操作をしたせいか、父親から虐待されていたことも、あの新月の夜のショッキングな出来事も覚えていなかった。それが幸いして、施設育ちでありながら僻むことも嫉むこともなく、真っ直ぐに育っていた。
犯罪者の娘、虐待された娘、そしてその頃小学生で性格も出来上がっている娘を引き取ることにあれこれいう連中を無視し、僕らは佳菜子ちゃんを養子にした。
その後、もう一人男の子を特別養子縁組し、僕は二人の子供の父親となって、子育てと仕事に忙しい日々を過ごし、幸福で充実した時を駆け抜け――

気がつけば20年という年月がそれこそ矢のように過ぎ去っていた。

その間に起きたちょっとした事件といえば、世田谷の入江家のあの屋敷が売りに出されたということだった。バブル崩壊でどうにも持ち直すことが出来なくて巨大複合企業だった入江財閥は解体され、それぞれの企業が独立した。本家本丸は、いくつもある資産の維持管理ができず、世田谷の家も手離すことにしたらしい。確かに固定資産税は半端ない。
無論家を管理していた事務所を辞めていた僕がどうこうできる訳もなく、その後IT企業の社長が購入し、古く耐震性もなかった洋館は解体されたということだった。

もう彼らがあの家に戻ることは二度とないのだと――そう思うと彼らに会うことはもう二度と叶わないのかも知れないと考えることもあった。これまで何度も――例えば余りにも美しい満月が夜空を支配している晩など、何処か心の片隅に残っていた彼らとの想い出がふっと沸き上がることがあった。

彼らは月の住人で、もしかしたら月に還ったのかも……そんな風に思いながら家のベランダから望遠鏡で月を見つめることもあった。


そしてーー2014年10月のある日。
その夜は日本全国で見られる皆既月食で、夕方6時台から8時台という比較的見やすい時間だということで、朝からその天体ショーの話で情報番組は持ちきりだった。
その日珍しく家族の時間が折り合って、結婚し嫁にでた佳菜子も子供を連れて来るというので、近くの公園でみんなで月を見ようと集まっていた。そこからはちょうどスカイツリーと月が並び、雲さえ遮ることがなければそれは美しい光景が見られるだろう。

「じいじ、お月様、隠れてくねー」
孫を膝にのせ、ゆっくりと欠けていく月を見つめる。

「じいじ、お月様大好きだものね」
佳菜子が笑う。
書斎のカレンダーは常に月齢カレンダーで、月球儀や月の地図など飾っているため、僕は無類の月マニアと思われているようだった。

やがて月は幻想的な赤銅色に染められていき――



みゃう。

「あーネコちゃんだーっ」

空を見るのに飽きていた孫が、チリチリと鈴を鳴らしながら近づいてきた黒猫に駆け寄る。黒猫は、まだ小さくて子猫だと思われた。

あの…… 首輪は――!

派手な蛍光ピンクの首輪――だいぶ色褪せてはいるが、どこか見覚えのある、それは………僕は呆然とその猫を見つめた。


「チビ、おいで」


そして、目の前に現れたのは――。
20年前と少しも変わらない二人の姿………。

「綺麗ですね」

琴子ちゃんが、変わらぬ屈託のない笑みを僕ら家族に向けた。
隣には相も変わらず、その月よりも美しい端麗な顔をした入江が面白そうに僕たち家族を見ていた。

「本当に……」

佳菜子が少し不思議そうな顔をして二人を見た。
けれどすぐに公園の遊具に走り出した孫を追いかけていく。


「よかった……幸せそうだね」

琴子ちゃんが黒猫を抱いて小声で囁いた。

「うん、幸せだよ」
僕も応える。

「すごいね、渡辺さんの家族、みんな渡辺さんと同じ、優しくてあったかい生気を持ってるよ」

「血は繋がってないんだけど……」
僕が怪訝な顔をして云うと、
「血ではないのよ。遺伝子の問題じゃないの。生気の質は、育まれた環境にのみ左右されるの。貴方の家族は、まごうことなき、貴方の家族だわ」

そして、また極上の笑みを浮かべて傍らの入江の顔を見つめる。
少しも変わらないお互いを愛しく見つめる様子に、20年以上の時が流れ去ったことなどまるで感じられなかった。

「ああ、そうだよ。僕の家族だよ」
君たちのように永遠に生きていく訳ではないのだけれど、僕の思いや生き方を受け継いだこの子たちは連綿とその思いを繋げてくれるだろう。
そして、いつの時代でもきっと君たちは見つけてくれるに違いない。


そう、いつの時代でも、どんな時代でも。
たとえ地球が滅んでも。

君たちはこの世界が終焉を迎えてもきっと二人でいるのだろう。

この世界に二人きりになっても。
永遠に互いだけを見つめて。

それでも、時折僕のことを思い出してくれれば僕はそれで十分だから。




やがて月食が終わり、月が元の美しい満月となり夜空に煌々と耀きを放ち始めた時、彼らの姿も、その子猫の姿のままだったチビももう居なかった。



――僕はこの先も決して忘れないだろう。
月下の恋人たちのことを――――






―――第一夜 不思議なふたり 了 ――

※※※※※※※※※※※※※※※※


やっと終わりましたあ! 第一夜!

エドガー直樹とメリーベル、時々アランな琴子………?

そう、ぽーなお話でした。

なんか、シリアスなんだかギャグなんだか分からない話でスミマセン。

ヴァンパイア系の話は好きですが吸血鬼ネタというよりも不死ということ、悠久の時の流れの中に生きているということにひかれます。
これぞ永遠の愛! まんまやん……





果たして第二夜 明治編、第三夜 戦国編は続くのか? 予定ではハロウィンまでに終わる筈だったのだけれど(^^;
ちょっとフツーのイリコト書きたい気分です。



追記…今年のお祭りアイテムらしい黒猫ちょっといれてみました(^^)僻地で密かなお祭り参加♪



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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

はい、佳菜子ちゃんを救おうと思ったらサクッと終わらせる筈の渡辺さんのその後の話が長くなりました。こんな妙なテイストの話、最後まで読んで頂きありがとうございました‼

個別記事の管理2014-10-25 (Sat)
★今回のお話は少しホラーな表現があります。(一応ハロウィン企画ということを思い出して)苦手な方はさらっと読み流していただけたらと………絶対無理というかたは読まないで下さいねm(__)m


※※※※※※※※※※※※※※※※※




「よくも……よくも入江くんに……」

琴子ちゃんが震える声で長谷川を睨み付けた。
あ。琴子ちゃんの瞳も赤くなってる。
そしてその華奢な体からなんか凄い気が溢れ放たれてるような………

初めてだった。
琴子ちゃんがこんな風に……ヒトではないものに変わるところを見るのは。

そしてふわりと音もなく移動し、呆然と倒れた入江の傍らで立ち尽くす長谷川の首を掴んだ。

「琴子ちゃん!」

首を絞めている訳ではない。首の付け根辺りに触れているだけだ。
でも、琴子ちゃんがあんな恐い顔をして人を睨み付けているのは初めて見た。
長谷川はただ触れられているだけなのにまるで金縛りに合ったかのように固まったままだった。
顔だけがひくひくと驚愕に震えている。

長谷川の身体から血の気が失せていくのがわかった。腕が干からび土気色に変わっていく。

琴子ちゃん、ちょっと待って!
さっき君が入江に云ったこと思い出してよ!

「パパ……」

僕の足元にしがみついていた佳菜子ちゃんの呟きに、琴子ちゃんはっとなった。
彼女が手を下ろすと長谷川はどさりと崩れ落ちた。

「あ、あたし………」

すうっと瞳の色が元の黒褐色に戻った。
おどおどしたような、頼りなげな……いつもの琴子ちゃんの姿だった。

「パパっ」

佳菜子ちゃんが倒れている父親の元に駆け寄った。

「大丈夫……死んでないよ。ちょっと加減がわからなくて…」

琴子ちゃん……人間から生気取ったことないって言ってたっけ。

「あ……入江くん…」

入江はさっきから微動だにしていない。胸にハサミが刺さったまま………シュールだ……

でも、なんでこいつ倒れたままなんだよ?

「――入江くんっ入江くんっ死んじゃいやぁ!」

琴子ちゃんが泣き叫んで、倒れている入江にすがり付く。

え? 死ぬの? 死なないんだよね? こいつ、不死なんだよね?
いや、でも今新月期たし、ヤバいのかなあ?
琴子ちゃんの尋常でない慌てように僕も焦る。救急車呼んだほうがいいのか?

あー琴子ちゃん、ハサミ抜いちゃ駄目だよっ血が吹き出すって………いや、吹き出さない……心臓動いてないんだもんな。他人に聞かせる時だけ心臓動かしたり脈振れさせたりするって言ってたっけ。

琴子ちゃんは抜いたハサミを少し離れた処に放り投げ、傷があるだろう胸の辺りに手をそっと置く。
入江は元々白い顔がさらに白くなっていて、瞳は固く閉じたままだ。やっぱり新月期はダメージが大きいのか。

「……大丈夫? 琴子ちゃん…こいつ」

「うん、傷はもう塞がったから。ちょっとさっき力を使い過ぎたせいだと思う……」

琴子ちゃんが入江の頭を抱いて膝に乗せる。髪や頬――そして唇を優しくなぞる。
その唇にふんわりと口付ける。
それからチュッチュッっと啄むように何度も口付けて――

入江の手がすっと琴子ちゃんの背中に回った。そしてぎゅっと強く自分に引き寄せる。
そして――。

「琴子。どうせならもっと激しいのがいい」

おいっ!

「い……入江くんっ! 気がついたの?」

琴子ちゃんががしっと入江の身体にしがみつく。

「もう……驚かせないでよ~」
涙が滝のように溢れているよ、琴子ちゃん。

「わりぃ」

そのまま再び二人は深く唇を合わせて……

ああ、それ、エナジィ補給バージョンね? 結構濃厚な奴ね?
僕は慌てて佳菜子ちゃんの目を両手で塞いだ。

「目を塞ぐくらいなら外で待っててくれないか? 急速充電するから」

きゅーそくじゅーでん? 何ですか、それ。


そして、僕らは外に追い出された。
琴子ちゃんに「絶対に中を覗かないでね」って念押しされながら。うーん、機織りでもするんですか?


で、30分。僕は佳菜子ちゃんとぽつぽつ話をしていた。佳菜子ちゃんのパパがよく女の人を連れ込んで外に追い出されて、扉の前で待つことが多いのだということ。叩かれたりつねられたり煙草を押し付けられたりすること………
僕は小さな少女の話を涙を流しながら聴いていた。何とかしなければっ!この娘を救えなくて何のための弁護士バッジた!




「わるい、待たせたな」
僕がめらめらと燃え上がる正義感の熱い想いに浸っていると、扉があっさりと開き、すっきり爽快な顔をした入江がぐったりとした琴子ちゃんを抱き上げて出てきた。

「めっちゃ元気そうだな?」
ホントに何ともないんだな。深々とハサミが突き刺さっていた様子が思い出される。あれは夢だったのだろうか?

「これくらいで死ねるんだったら900年くらい前に死んでるな」

「入江くん、昔、首を切り落とされたことあったよね?」

ぎえーっそれで死なないのかよっ!

「おまえ落ちた俺の生首いつまでも抱いて離さないし、キスしてるし」

うーん、サロメ?
いや……でもホラーだよな……かなり。
想像したくない……。

どうも一つでも細胞が残っていれば大概再生できるらしい。バラバラにされても生き返れるのか……ホラーだな、やっぱり。

「あたし…入江くんのいない世界でなんて生きていけない」

「知ってるよ」

そして彼は彼女を抱いたまま闇に満ちた夜に消えていった。



その後僕はぶっ倒れた長谷川を病院に連れていき、警察にも連絡した。
長谷川はただの貧血ということで、点滴だけで帰されたが、その夜の記憶は綺麗さっぱり消えていた。どうやら入江がきっちり記憶を操作したようだ。

そして僕は警察に彼の娘が日常的に虐待やネグレクトを受けていたことを訴えて、捜査してもらうように依頼し、佳菜子ちゃんは児童相談所で一時保護をしてもらうことになった。
後々、彼のそれまでの罪――強制猥褻罪だの結婚詐欺だの余罪がわしゃわしゃ出てきてお縄となる。そして佳菜子ちゃんは結局児童養護施設に預けられることとなった。

そんな雑務をあれこれ処理している間にすっかり新月期も過ぎ、そろそろ診療所も始まるだろうと僕は久しぶりに屋敷を訪れた。


「………え?」

屋敷の門扉には一枚の貼り紙が張り出されていた。

「都合により、当院は閉院いたします。長い間ありがとうございました」


僕は慌てて屋敷の方へと走り出す。
玄関の鍵を開けて、居間の扉を勢いよく開くと――室内は妙に整然と片付いていて、静まりかえっていた。
誰もいない。
気配さえもない。

そして、テーブルの上には一枚の置き手紙が。

「今までありがとう。渡辺さんのエナジィ、だいすきだったよ。さようなら」






※※※※※※※※※※※※※※※※

ちよっと生首は衝撃的だったでしょうか? イメージは耽美(?)とギャグ(??)なんですけど(^^;
どーにもエグい映像が思い浮かんだ方はピアズリーやギュスターヴ.モローの耽美なサロメを検索して上書きしてください………m(__)m




絶対! 次こそは! 第一夜完!………のはず(^^;


※注意書き10/25加筆しました。
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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪

えーと、えぐかったでしょうか?真夜中のノリで、この話がハロウィン向け企画だったことを思い出してつい書き足してしまったのですが、一晩たったら若干ドン引きされたり不快感感じる人がいたらどうしよう、削除しようか、などと悩んでいる小心者です。イメージはサロメなのですが半分はギャグのつもりなのだけどっ! とりあえず、注意書などいれてみよう………

個別記事の管理2014-10-23 (Thu)



「佳菜子ちゃん、琴子……病院の看護婦さん知らないかな?」

入江は努めて優しい声で訊ねる。膝を曲げて屈んで少女に目線を合わせて。

「お姉ちゃん……部屋の中…」

少女はおどおどと応えた。

「パバは?」

「パバはお姉ちゃんとお話があるからって……一緒に……あたしは外で待ってろって」

「おいっ入江! まずいんじゃないか?」

俺は焦ってドアのノブを回す--が、当然のように鍵がかかっていた。

「琴子ちゃんっ琴子ちゃん!」

俺はドンドン扉を叩いて叫んだ。

「いやあっ離してっ……!」

「琴子ちゃんっ」

琴子ちゃんの叫び声に入江が弾けたように立ち上がり、目をすっと細めるとドアノブを睨み付けた。

かちゃん、と音がした。
ひねると簡単に開いた。

「これくらい新月期でもなんとかなる」

飛び込んだ入江に続いて中に入る--と。

玄関の脇に小さな台所。そしてその奥に六畳程の居間。
そこには男に組み敷かれて暴れている琴子ちゃんの姿が――

「いやぁ入江くんっ助けて!」

僕の前にいた入江の姿がふわりと宙に浮いた。
一瞬にして奴の背後に立ち、その襟首を掴んで琴子ちゃんから引き剥がす。そして勢いそのまま、奴は壁に叩きつけられた。

……うーん、新月期でも侮れないな、彼の能力。

「………ったく何やってんだよ! ワキが甘いにも程がある! あんな奴にのこのこ付いていきゃあがって!」

うん、まあうかつだよな。……でも。

「だって……長谷川さん、佳菜子ちゃんのアレルギーことで相談したいって……」

そう言われて琴子ちゃんが断れる筈がない。

「だいたい相談されておまえが答えられるわけないだろうが」

「失礼ねっあたしだってずっと入江くんの近くで見てるんだから少しはアドバイスとかできるわよ!」

なんか口喧嘩はじめてるし。

「……何をごちゃごちゃと……」

壁に叩きつけられて気を失っていた長谷川が意識を取り戻したようだった。
むくりと起き上がり、入江に突進してきた。
しかし入江はあっさりかわし、逆にそのまま胸ぐらを掴むと壁に押しつけた。

「おまえ……よくも琴子に……」

「まだ何もしてないっ…」

いやーしてなくて良かったね。してたら殺されるって、あんた。とにかく琴子ちゃん押し倒した時点で終わってるけどね。ほら、もうあいつ瞳が赤くなってる。

「な、なんだ、その眼……」

長谷川は結構筋肉質タイプの頑強な体躯の男だ。そんな男がどちらかというと線の細いタイプの入江の腕一本で、身動き出来なくさせられているのが理解しがたいようだった。
じわじわと恐怖が沸き起こっているようだ。驚愕に目を瞠って、自分を射殺しそうな赤い瞳を見つめていた。

入江の指は彼の首を押さえつけていた。多分このまま、締め付けて窒息させることも頚椎をへし折ることも簡単だろう。

「……ぐっ……離せ…化け物…」

「そう。化け物だが、何か?」

くっくっと入江が笑う。禍々しい笑みだ。間近で見たら背筋がさぞゾッとするだろう。
そしてさらに指の力を込めて………

「ダメっ入江くん! 殺しちゃダメ!」

琴子ちゃんが叫んだ。

「おまえに触れた。生かしとく理由もない」

いや、それはあまりに……

「どんな人でも、その人は佳菜子ちゃんのパパなの! 佳菜子ちゃんからパパを奪わないで」

琴子ちゃんの言葉で、入江はすうっと手を下ろした。

玄関の入口で佳菜子ちゃんが、怯えた瞳から涙を溢れさせてぼんやりと立っていた。

みんなの視線が佳菜子ちゃんに注がれた瞬間――長谷川が入江を突き飛ばしてテーブルの上に置いてあった大きな裁断バサミを手に取り、そのまま入江に切っ先を向けて飛び掛かる。

「くたばれ! 化け物!」

「入江くん、危ないっ」

琴子ちゃんが顔を手で覆い叫んだ時には、そのハサミは既に入江の胸に、深々と突き立てられていた。

どさっと。
鈍い音をたてて、入江が崩れ落ちる。

「いやぁぁぁ――!」

琴子ちゃんの悲鳴が部屋中に響き渡った。



※※※※※※※※※※※※※※※※

短い上に終らなくてごめんなさい。しかもまた、こんなところで!!

ラストまで書いてから更新しようかとも思いましたが、キリがいい(?)のでアップしちゃいます(^^;


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Re.にゃんこ様 * by ののの
コメントありがとうございます♪
キズつけちゃってご免なさいm(__)m
大丈夫ですよ(多分)不死のヒトですから♪
何とか今日中に綺麗に復活させてあげれるかな~?

個別記事の管理2014-10-22 (Wed)



その日は新月期で診療所は休みだった。
新月期は彼らの力が低減する。僕はだからこの時期には、1日1回彼らに生気を提供するためにこの屋敷を訪れているのだが--よくよく考えたらなんてお人好しなんだっ! と自分で突っ込まずにはいられない。
ばっかじゃないか? よく自問自答する。僕がここに来なかったら彼らはどうするのだろう? 僕を探しに来るのだろうか?
それとも、新しい補給源を手に入れるだけなのだろうか?
僕に会う前は、とりあえず体力の有りそうな奴からこっそり生気を頂いていたのだという。またそうすればいいことなんのだから、僕限定でなくてもいい筈--とは思うが、結局僕の方が彼らに会いに行きたいだけなのかもしれない。
初めはただ僕が彼らに気に入られ、なつかれたのだと思っていた。けれど本当は僕の方がすっかりこの奇妙な夫婦に魅了されてしまったのだ。

それに、琴子ちゃんの
「渡辺さんのエナジィだと安心なの」という瞳をきらっきらさせて言う言葉に抵抗することなんて出来る訳がない。

「それに……もし、入江くんがスッゴい美人の患者さんからエナジィ貰ってきたら……それをあたしが貰うのなんか嫌で……」

うん、まあわかるけどね。
想像するだけで絵になる感じだけどさ。
この古びた洋館で入江が美しい貴婦人の首に牙をたてている--なんてね。
でもあいつは実際女は襲わない(色々面倒だから、なんて言ってるけど、琴子ちゃんがヤキモチやくの分かってるからだよな)。牙もないし、血も吸わない。

でも琴子ちゃん、ヤキモチ焼くの、琴子ちゃんだけじゃないよ。
たまに診療所に顔を出すとけっこうお父さんが子供を連れてきてる場合も多い。この前なんて、琴子ちゃん、シングルファザーのパパさんににマジで言い寄られていたもんな。
その時の入江の顔ったら! 患児がいたからいつもの嫌味の応酬はなかったけど、あいつボールペン三本はへし折ってたな。………ってか、400年も一緒にいてその独占欲凄くね?


僕は勝手知ったる玄関を勝手にあけて--鍵もちゃんと預かっているのだ--広いロビーから廊下を抜けてリビンクを目指す。
この時間なら大丈夫だろうな。もうすぐ夕暮れ時だ。真っ昼間は彼らは寝ていることが多い。いや、流石に棺桶で眠ってる訳じゃないケドね。
たまに、リビンクのソファでそのまま寝ていることもあるし。大抵入江が琴子ちゃんを抱え込んで眠ってるんだ。まるで幼子を自分の懐にすっぽり包んでいるみたいに。そんな様子はなんかほのぼのあったかい気持ちになるんだけどね。
たまぁに(おもに満月期)二人とも素っ裸でリビンクの絨毯の上に転がってる時もあるから--いや、一応シーツにはくるまってるけど--この部屋に入るのにはとりあえずノックは必須行動なんだ……(寝室に行けよっ//////)



「入江くんのばかっ」

リビンクをノックしようとした途端に、逆にドアを引かれて思わず転げそうになる。その横をすり抜けるように涙を溜めた琴子ちゃんがバタバタと駆け出して、そのまま僕と入れ替わるように外へ飛び出して行った。

珍しいな、喧嘩なんて。

いや、時々下らない言い争いをしてはいるけど。

僕がリビンクに入ると、部屋の中はなかなかの惨状だった。
サイドボードに飾ってあった皿や花瓶が割られて床に落ちていた。

遮光カーテンの引かれた窓は薄暗く、その窓辺に佇んでいる入江は珍しく苦渋に満ちた顔をしていた。
カーテンの隙間から琴子ちゃんが出ていくのを見ていたのだろう。

「入江、大丈夫なのか? 琴子ちゃんあまり一人じゃ外に出たことないんだろ? いいのか? 追っかけなくて!」

僕は焦って入江に問い掛ける。

だって、まだ陽は出ている。もうすぐ日が暮れる時間だけど、まだ太陽は出ているだろう? しかも新月期で--大丈夫だろうか?

「大丈夫だ。そうすぐにどうなるわけでもないし、そんなに遠くに行きはしないさ」

「いったい何で喧嘩なんか……」

「おまえには関係ない……」
そう言い掛けた入江をキッと睨むと、
「……わけじゃないか」と、自嘲気味に笑った。

「……そろそろこの街を出ようという話をしてたんだ。もう5年。俺たちは一つところに5年以上住むのは難しいからな」

「…………え?」

僕は茫然と彼を見つめた。

「琴子はここが気に入っていたからな。出ていくのが辛いのはわかっていたんだ。……だから言い出しにくかったし、まだもう一年くらいはいいかも、と思ってたりもした。いや、俺も結構今の生活が気に入ってたんだよな」

「…じゃあ、なんで?」

彼らがずっとこのままここにいることは難しいだろうとは思っていた。5年といえば、零歳児だって幼稚園に通うようになる。母親たちだって、歳をとっていく。
以前と少しも変わらない風貌の琴子ちゃんは、最近とみにその美容法やどんな化粧を使っているのかを訊ねられているようだった。今はただ元から童顔だからとか思われているだけだろうけど、いずれは不審に思われるに違いない。
少しも歳をとらないこの夫婦のことを。



ことの発端は、例の琴子ちゃんに言い寄った長谷川とかいうシングルファザーだと言う。

「おまえ、まさかそいつから琴子ちゃんを遠ざけたいから出て行こうなんて」

「違うよ。………琴子が先に気づいたんだ。長谷川の子供……佳菜子ちゃん……アレルギーで時々受診してるんだが--虐待受けてるんじゃないかって」

「……え?」

長谷川とかいう男--妻に逃げられたというその男は見かけは柔和そうで愛想がいいのだか、何処となく抜け目がない感じがしたのを覚えていた。
その娘はまだ三歳くらいで、瞳がくりっとした随分可愛い子で、琴子ちゃんに凄くなついていた。

「あの娘の体のあちこちに痣があったんだ。背中や腹といった医者に見せるような箇所は上手く除いて、腕とか足の付け根とか……。妙に怯えたところがあって琴子が気にかけていて、俺も痣や煙草を押し付けたような火傷を見つけて確信した。虐待だとは思ったが警察に通報してもなかなか家庭の中には立ち入れないからな」
この頃はまだ、余程事件にもならない限り、警察や児相も簡単には動いてくれなかった。

「だから……俺が琴子に言ったんだ。あの娘を連れてこの街から出ようかって」

「そりゃ誘拐だろう?」
僕は驚いた。そんな短絡的なことを言い出したのが琴子ちゃんではなく彼の方ってことに!

「別に拐ったって、あの父親は煩わしい足枷が居なくなったと思うだけさ。警察には届けるだろうが、捜査の網を潜り抜けることなんか造作もないこと………」
彼の能力を持ってすれば周囲を騙して生きていくことは簡単だろう。元々そうやって生きてきたのだから。


--あの娘は琴美に似てるんだ。だから、琴子は余計あの娘のことが気にかかって仕方がないんだ。

「琴子ちゃんはなんて?」

「連れて行かないって。連れて行ってもずっと一緒にいられる訳じゃない。いつかは別れなくちゃならない。だから……いやだって」

--琴美は拾った子供だった。初めての子育てで、琴子はそれは精一杯愛情を注いで育てたんだ。でも、成長して色々解ってくれば親が歳をとらないのがおかしいって思うだろ? いつかはきちんと親が不死の者だと伝えるのか、或いは何も云わずに別れるのか--決めなくてはならなくて。
結局、琴美の本当の家が見つかって、その家に返すことにした。それを決めたのは琴子だ。
俺は琴子に提案したんだがな。
琴美を仲間にしようって。
俺たちと同じ、不死の一族にしようって。
そうすれは俺たちは一生家族でいられる。永遠に別れることのない家族に。

でも、琴子は言ったんだ。

--琴美を人間でなくしてしまう権利はあたしたちにはないでしょう?

たとえあの娘が望んだとしても、それは分かってないだけよ。自分がみんなと違う時間を生きているということがどんなに悲しいか。知り合った人たちがみんなどんどん遠いところに行ってしまうのよ? どんなに大好きになっても必ず別れなくてはならないのよ……!


--琴子……おまえは後悔しているのか?
不死の一族となったことを。
俺と同じ時間を生きることを。
おまえの隣には俺しかいない世界にいることを。

俺は600年の孤独の末に琴子を手に入れた。でももしかしたら俺は琴子の人間としての幸せを滅茶苦茶にしたのかもしれない。当たり前だ。人間として生まれた以上人間としてその生を真っ当するのが本当の幸せだ。
俺は自分の欲のために琴子の幸福を奪ったのだろうか。

……ずっと何処かで恐れていた。琴子から、後悔していると言われることを。
不死の身となったことを後悔していると……


「とりあえず、喧嘩の原因は、それを言っちゃったってことなんだな?」


--子供を拐うなんて入江くんらしくない!

--だって、おまえ、寂しいんだろ? 琴美育ててる時、本当に幸せそうだったろう?

--だからって、ずっと一緒にいられる訳じゃないわ‼

--ペットだって同じだろう? 人間たちは家族と思ってペットを育ててるが必ず見送る日が来る。辛いけれどみんな乗り越えていることだ。

--人間とペットを一緒にしないで!

--そうだな。俺は元々人間じゃねーからな。人間の気持ちなんかわからないな。おまえ、本当は人間じゃなくなったこと後悔してるんだろ?
俺と離れたくても仲間は俺しかいないから離れるわけにもいかねーもんな。俺から生気貰わねーと生きていけないし。万一他に好きな奴ができてもそいつとは一緒に生きていくことはできないしな。

--本気でそんなこと思ってるの?

--ああ。

そして、癇癪を起こしたように皿やら花瓶やらをサイドボードから払い落とし。

--入江くんの、ばかぁ!!


そして、出ていった、と言うわけね。

そしてまたこいつのどんよりしてること……新月期だからテンションも低くて、こいつの周りから負のオーラが渦巻いてるぞ。

「……捜しに行くぞ」
ため息ひとつついて彼の肩を叩く。

「多分、この先の公園だ」

なんだ、家出した時の行先分かってるわけね。



で、俺たちは近くの公園に来たわけだが、すっかり日が暮れた公園には流石に誰もいない。砂場に置き忘れたシャベルやバケツがあって、少し前まで子供たちが遊んでいた気配が残っていた。

「……誰もいないぞ」

「いつもならここにいるんだが」

そう言って、小山の中をトンネルとして通れる土管を覗く。
土管の中にも誰もいない--が。

みゃお

土管の奥の闇の中に金色に光る2つの目があった。

「…ネコ?」

一匹の黒猫が土管の中から出てきた。
まだ子猫だった。

「そういえば琴子が公園で猫を餌付けしてるとか云ってたな……」


前足に怪我をしているようで、血が滲んだハンカチが足に巻き付いていた。

「このハンカチ、琴子のだ」

「……え? じゃあここには居たんだ」

するとその黒猫がみーみーと、何かを訴えるかのように入江のズボンの裾をくわえて引っ張っている。

「何だろう……?」

俺たちが顔を見合わせた時--突然、はっとしたように公園の入口の方を見つめた。

「……どうした?」

「琴子の悲鳴が聴こえた……」

「え? 嘘っ俺には何も………」

「琴子の声なら新月期でも一キロ位先でもは聴こえる」


すると突然黒猫が此方へ来いと謂わんばかりに走り出した。そして入江もその黒猫を追い掛けて走り始める。

「……待って」
僕も慌てて追いかける。
こいつ、満月期なら何キロ先まで聴こえるのかな?



「………ここは」

そこは随分なおんぼろアパートだった。安普請な二階建て。
黒猫は真っ直ぐ一階の一枚の扉の前で止まった。
そして、その扉の前にはもう一人……。

「佳菜子ちゃん?」

入江が目を見張る。

表札を見ると、『長谷川』だった。
琴子ちゃんにちょっかいをかけ、娘を虐待していたかもしれない男の家。

少女は、自分の家の玄関扉の前で、膝を抱えて震えて座っていたのだった--。



※※※※※※※※※※※※※※※

次こそっ! 終わる筈……?








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Re.にゃんこ様 * by ののの
いつもコメントありがとうございます♪
42番目拍手も………(*^^*)
まあ、しにがはちの8は末広がりで縁起がよいといういうことで……♪

お話、変なとこで続きでごめんなさい。期待外れだったらどうしよう? トラブルメーカー琴子ちゃん、活躍の予定です。次こそ一夜目を終わらせたいと思ってます(^^;


個別記事の管理2014-10-20 (Mon)



彼らがこの屋敷に暮らし始めて3ヶ月ほどたった頃、突然この屋敷の門扉に看板が掛けられた。

『いりえ夜間こども診療所 』

診察時間 4月~9月 19時~5時
10月~3月 18時~6時
診療科目 小児科 小児外科
診察日 月齢3~12日及び月齢18~27日
院長 入江直樹



なんだよっ! こりゃ?
僕は唖然とその看板を見つめていた。
きーてないぞっ
だいたいなんだ? この月齢に添った診察日って!

「そりゃ、新月期はゆっくり寝たいし、満月期は琴子とまったりしながら、月の力をチャージしたいし」

そして彼はいつの間にか勝手に診療所に改装した離れで、いつの間にか一式揃えた医療品を丁寧に棚に並べていた。
隣の待合室では琴子ちゃんが甲斐甲斐しく床の上に掃除機をかけている。

「あー渡辺さん! よかった! ソファを運ぶの手伝って」

一度は置いたらしいソファを別の場所に配置したかったようだ。二人で運んだけど、このソファ、猫脚のアンティーク高級家具。待合室には勿体無くないか?

「さあてだいたい良し」

にっこり笑った琴子ちゃん、鼻の頭に埃がいっぱいついてるけど、可愛いよ。

「だいたいおまえ、医師免許持ってるのかよ?」
僕の問いに、琴子ちゃんが答える。

「試験は制度が変わる度に何度か受けているのよ。戸籍誤魔化して。ただ前回がもう30年近く前のだから免状飾るわけにはいかなくて。勉強も江戸の頃は蘭学のお医者さんから学んで小石川の療養所で働いたりもしてたし、明治の頃は帝大で現代医学も学んだし。ロンドンに行ったときもオックスフォードの研究室に入ってちゃんと今の時代にそった医術を勉強してるのよ!」
どうだ、と言わんばかりに僕に説明する琴子ちゃん。

どうやら彼は漫然と千年という時を過ごして来たわけではなく、こうして時折医療を介して人間の世界と関わりを持ち、ひそやかに生きてきたらしい。

「医術は面白い。初めは俺たちと人間の違いを知りたくて始めた勉強だったが、学んでいくうちに奥の深さにはまりこんでね。とくに近代に入ってここ数十年の医学の進歩は目覚ましい。時折象牙の塔にて新しい知識を得るのが楽しくてね。そして得た知識は有効活用してみたくなるものだ」

そう言って黒い服ばかり来ていた男は、ばさりと白衣を羽織った。
悔しいが白衣も似合う……。

「渡辺さん、見て、見て~」

そして琴子ちゃんは看護婦さんの格好。薄ピンクのナース服は、なんかコスプレっぽい。でも、可愛い。

「格好だけだがな。こいつは資格はとってないから、注射とか射たせられない」

「包帯巻いたり、赤チン塗ったりできるもの。あと、泣いてる子供あやしたりとか。長年入江くんの傍でおてつだいしてきたのよ? 任しといてよ」

楽しそうだ。
いまいち怪しげな診療所で、流行るのかどうか疑問だが、まあ、彼らがここで何かを始めようということは、ここに根を下ろそうとしているのかと、ちょっと嬉しい。
しかし日没後しか開かない夜の診療所って人がくるのかなぁ?



そして、僕の心配は全くの杞憂だった。
子供というのはたいてい夜に具合が悪くなるものらしい。夜間救急に駆け込むのには気が引ける程度の症状の患者さんが実に多いことを知った。
そのうえ医師がこのアイドル張りの容姿の持ち主だ。子供の母親たちが色めきたって、大した病気でもないのに何度も通う親子が後を断たない。
院長の傍でにこやかに子供をあやしている看護婦が院長の妻だと知られるのは、あっという間のことだった。最初は母親たちや、あるいは女の子の患者さんから軽い嫉妬を抱かれたようだったけれど、少しドジだけれどいつもにこやかで明るい看護婦さんはいつの間にかみんなの人気者になっていた。
それにここの院長は顔だけでなく腕もいいと評判だ。一見して大した病状ではなかった子供の隠れた大病を見つけて、直ぐに大きな病院に搬送させ事なきを得た。または、緊急を要する処置が必要だった時、たいした設備もないこの診療所で緊急オペを行い命を救ったこともある。
実際彼は人の生気だけで病気がわかるからな。僕も何度か体調不良を指摘され、病院で検査を受けたら、まだ痛くもない結石が見つかったり、胃のポリープを早期に見つけられたりもした。
彼らの診療所は、この街になくてはなら
ないものとなっていったのだ。

そして僕は相変わらず時折彼らのもとを訪れて、彼らにエナジィをあげていた。最近はすっかり慣れて、ちよっとやそっとじゃ疲労感は感じなくなっていたしね。


--そして。
彼らがこの地に来て、5年の月日が流れ過ぎた--。




※※※※※※※※※※※※※※※

ごめんなさい短いですm(__)m
なんか、インフルの予防接種射ったら妙に体調不良。副作用!?
しかし今日の会社に来てくれたドクター(イケメンに非ず)は嘘のように痛くなかった! 神の手か?
去年の看護師さんは琴子ちゃんのように下手っぴで痛かった………(^^;

明日こそは終われるかな……?自信はないですが……(..)


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