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個別記事の管理2017-03-31 (Fri)


大変ご無沙汰しております……
更新ペースが亀の歩みどころか蝸牛のようになってます。

自分で書いた話に足引っ張られてなかなか進まないという……(((^^;)
いっそのこと最終回まで書いてしまってからアップしようかとも思ったりしたんですが(あとから色々手直しや変更がきくかな、と)、半年くらい更新できなくなりそうな予感がするので、結局アップします(((^^;)

続きからどうぞ。








※※※※※※※※※※※



「おふくろっ……… なんで来たんだ……」

思わずひしっと抱き合い再会の涙にむせている妻と実母に、直樹はこめかみを押さえつつ、気を取り直して訊ねた。

「なんでって……ほら。書類早く届けた方がいいかと思って」

にこっと笑って、ヴィトンのキャリーバッグから長四封筒を取り出す。

「朝イチの新幹線で来ちゃった。思ったより早く着いたわねー。さすが『のぞみ』ね。飛行機なら一時間だけど、手続きとか飛行場までの移動が面倒でやめたわ」

「わざわざ届けてくれなくてもよかったんだが……」

「何いってんのよ。あなたが私に電話するなんて余程のことがあるに違いないじゃない。そしたら案の定!! 琴子ちゃんが入院してたなんて……! そんな重大な事実を隠蔽してたなんて!」

よよよと、目頭にハンカチを押しあてる母に、思わず深くため息をつく。

「あー、お義母さん、そんなたいしたことなかったんです。ちょっと熱中症にかかっちゃって。大袈裟にしたくなくってあたしが連絡しなくていいって頼んだんです」

「ああ、なんて健気なんでしょう。隠さなくってもいいのよ。ここに来るまでにすでに院内の情報はかき集めたの。一時は心停止したっていうじゃないのー。もう、それを聞いたとき卒倒しそうになったわ……。それなのに、みんなに心配かけまいとしてくれたのね。そうよ、そうなの。琴子ちゃんっていつも周りのこと考えてくれるのよ。でもね、家族なんだから困った時はいつでも頼ってちょうだい!」

ぎゅっと琴子の手を握りしめ、ほろほろと涙を流し琴子に訴えかける。
琴子も紀子の涙につられたのか瞳を潤ませながらもにっこりと笑う。

「ありがとうございます。でも、ほんとにもうすっかり大丈夫なんですよー。今日もう午後から退院なんです」

「まあ、そうなの? でも本当に大事にならなくてよかったわー。じゃあ退院の準備しないとね。手伝うわよっ」

和気藹々とベッドの横のボストンバッグを取り出して机回りの小物類を片付け始める。

「 で、おふくろ。書類は?」

「ああ、忘れるとこだったわ」

と、母は持っていた封筒を直樹に手渡す。

「………ってか、本当に調べられたのか? 電話してから半日くらいだろ?」

いくらなんでも早すぎるだろう、と
書類を片手に訝しむ。どんな迅速を売りにしている調査会社だとしてとも、数日はかかるだろう。

「私を誰だと思ってるの? 」

きらりと瞳を光らせて不敵に微笑む母に、いったい誰だよと天を仰ぎたくなる。

「というか、あなたが調べさせた会社、色々いわくあるみたいで、丁度色んな企業から信用調査依頼が殺到してたみたいなの。だから速かったのよ」

なるほど。
だがそれだけその会社の経営不振の噂は広まっているということなのだろう。
直樹は納得するも、即日資料として提出させるのは調査会社にかなりの無理を強いたのではと思われる。
いくらパンダイの社長夫人だからといってそこまで融通させることは不可能だろう。いったいどんな人脈やコネクションがあるのか、全くもって我が母ながら謎だ。

「………調査って……なんのこと?」

琴子が不思議そうな顔をして訊ねる。

「直樹に頼まれてある企業の信用調査をお願いしてあったのよ」

「??? そーなんですか……?」

琴子はまるでピンと来ていないようだ。
まさか圭子の別れた夫ーー広大の実父の経営していた会社のことを調べてもらっていたとは思いもよらないだろう。
直樹は特に説明する気もないようで、おまえには関係ないとばかりに封筒を受け取って開きもせずに小脇に抱える。

「退院は午後からだろ? 手続きのころ、もう一度くるから。おふくろを頼むな」

「え? あたしがお義母さんを?」

「……互いの相乗効果で変な行動しないように見張りあってくれ」

「んまぁっ何て失礼な息子でしょう! どーして、こんな子にこんな可愛いお嫁さんが来てくれたのかしら~~神様に感謝ね!」

「……云ってろ……」

呆れたように肩を竦めて、直樹は部屋を出ていった。

紀子がいれば、琴子は直樹が帰宅できない日々が続いても寂しい想いをしなくてすむかもしれない。
だが、確実に二人っきりで過ごせる時間は減るということでーー

「………いつまでいるつもりだ、あのひとは……」

客用布団なんてねーぞ、と独り言ちつつもーー
予定外の状況に少々不機嫌な面持ちで医局に戻ろうとエレベーターの前で待っていた時。

扉が開いたとたんに、何か小さいものが飛び出して直樹の長い脚に激突した。

「いったぁーー」

「大丈夫か?」

直樹にぶつかった弾みで尻餅をついたその小さなものーー幼い少年をひょいと抱き起こした。
そして、ここ数日の間に何度か見かけた見知った顔に思わず驚く。
こんな時間にここにいるべきでない少年だったーー。

「君はーー何故、ここに?」

「あ! 琴子の『入江くん』やー」

梨本広大が、ヤンチャそうな顔を直樹に近づけて、にかっと笑ったーー。







* * *




「ったく、遅刻しそうになったじゃないのぉーー」


あたしは始業ギリギリの時間に事務室にあるタイムレコーダーにカードを差し込んだ。
打刻された時間は始業を1分過ぎていた。うわーやば。ったく。

別に寝坊したわけでも何でもない。
無遅刻を信条とするあたしがこんな状況になったのは、そもそもーーー。
朝、出勤したら、職員通用口から事務室までの数十メートルの短い間に、何人かの職員に声を掛けられたーーというか、噂の真相を問い質されたのが原因なのだ。

「ね、ね、森村さんって、入江先生とその奥さんと親しいんですって?」

まずはそんな風に声を掛けられる。
どうやらあたしが、入江先生の嫁を助けて救急車を呼んだことが既に知れ渡ったらしい。
つまり嫁が熱中症で運び込まれたことも周知の事実というわけだ。
一部ではあたしが入江先生の隣人ということもバレたようだった。それについては昨日さんざん突っつかれた。何とかシラを切り通したけどね。


とにかく昨日は1日、琴子さんの噂が院内を席巻していて、今朝になったら少しは落ち着くかと思いきや、今度はまさかのーー

「入江先生と奥さん、病室で大喧嘩してたらしいわよ」

「もう離婚も間近って本当かしら?」

「入江先生が病室で奥さんを叱りつけてたらしいわよ。そりゃそうよねー。この数日間でかなりトラブル起こしてるんですってね。森村さんも知ってるの?」

ーーなんじゃそりゃ。

琴子さんが運び込まれてあの入江先生がどんだけ周章狼狽していたか。
動画撮って見せつけてやりたいくらいだったわよ。

そりゃ、大事に至らなかったとはいえ彼女の迂闊さを叱ったりはするだろうけど、それが瞬く間に噂として広がるっての、思わず内科病棟のナースの資質を疑うわね。これは人事管理もしている事務長にさりげなーくチクっとこ。

まあとにかく朝から聞きたくもない噂を耳にして、若干げんなりしていたところだった。
琴子さんもこんな噂が広がってるってことは落ち込んでるかもしれない。
きっと入江先生に叱責されたのは事実なんだろうーーでも、それは恐らくほんの一場面に違いない。偶然垣間見たナースが誤解して尾ひれをつけて触れ回ったのだ。実に想像しやすい展開だわ。

これはあとで病室に様子を見に行かねばーーと、あたしは琴子さんが心配で猛然と午前の仕事を片付けていた。
そんなとき、この滅多に人の訪れない僻地の事務室に、一人の職員が訪れてきた。
MSW(メディカルソーシャルワーカー)の金江田さんだった。
うちの病院は医療福祉相談室に3名の常勤 MSW がいて、他所と比べて充実している方だと思う。身寄りのない高齢者や生活保護者の退院支援が主な仕事だ。治療費を払えないものから入院中のペットの世話の問題まで、よろず相談室みたいなものね。
そしてあたしは依頼されて行政に対する書類の作成をしたりするので、病棟ナースよりは顔見知りだったりする。

「森村さん……今少しいいかしら? あなた一昨日入院した梨本圭子さんと知り合いで、お子さんの広大くんを一晩預かったんですよね?」

「はい……?」

そういえば彼女が梨本さんの担当だったっけ。

「………実は、昨日やっと梨本さんが息子さんを施設に一時預かりすることを納得してくれて、昨夜からお子さんをそちらに引き渡したんですけど……」

「はい。きいてます」

実をいうと、一晩共に過ごして結構広大くんとは気があった(………というと何だか5歳児と同レベルかよと突っ込まれそうだけど、確かに趣味嗜好は似てるかも……)ものだから、退院するまで預かってもいいかな? ーーなどと思わぬ母性を自覚して、ちょっと申し出たりしたのだけれど、この金江田さんによってあっさり一蹴された。
保育資格も子育て経験もない人が預かって万一のことがあったとき責任取れるの? と問われたら、やはり取れるとは断言できない。
それに一晩くらいは広大くんも聞き分けのよいいい子だったけれど、長く過ごせばやはりそれなりに不満やイライラが増えてくるかもしれない。

「その広大くんが、いなくなったらしいの」

「ええっ?」

「ずっとお母さんとこ行くって泣いてたらしくて。あまり眠れていないようだったから保育園はお休みしましょうか、と話していたら絶対に行くというから連れていったら、いつの間にか保育園から脱走したらしいの」

無理もない。
前の夜は殆ど面識のないあたしの家で、次の日から施設に預けられ、お母さんは入院したままでーーどんなに不安なことかーー。

「保育園からならそう遠くないけれど、ちゃんとここまで来れるのかしら」

もちろん、彼の目指す場所はこの病院だろう。

「そろそろ着いてる頃じゃないですかね? お母さんのところにはまだ?」

「ええ、さっき覗いてみたけどまだいなかったわ。ちゃんと無事に辿り着けるといいけれど。やっぱり警察に通報した方が……」

「あの子ならちゃんと着きそうな気がします」

琴子さんよりは安心かも……と、彼女に対して随分失礼なことを思う。

「そうね。院内をくまなく捜して見つからなかったら警察に届けるように保育園と施設の園長にはいってあるの」

「わかりました。でも、見つけたあとどうするんですか? また施設に連れ戻すんですか?」

「………身寄りがない以上、どうしようもないわね」

「本当に他にも方法はないんですか? 子供は母親の傍にいるのが一番でしょう?」

逃げ出すほど子供は嫌がっているのに。

「それはそうだけど、病室に寝泊まりさせるわけにはいかないでしょう? 梨本さんはまだしばらく身動きとれないんだし」

困ったように肩を竦める金江田さん。

「ええ、でもうちにはつぼみルームがあるじゃないですか! 夜勤スタッフの為に託児所は夜間でも預けられます。そこで預けられないんですか? 広大くんは病児保育の利用者だからつぼみルームのスタッフとも顔見知りなのでは?」

「でも、夜間保育は常にやってる訳じゃないし、ここに勤務している職員のための託児所よ。患者さんのお子さんを預かるのは前例がないわ」

そんなことは、事務員であるあたしが一番知ってる。でもねーー世の中には臨機応変って言葉があるのよ。
前例なんてのは作ればーー

「前例なんて作ればいいのよ!」

あ、あたしのセリフまるっと取られたーーと思ったら、見知らぬおばさんと見慣れた琴子さんが事務室の扉のところに立っていた。
見知らぬおばさんーー上品そうな服装に、綺麗な顔立ちーーこの容貌、どっかで見たことある。

「お、お義母さん……」

琴子さんが、つかつかと部屋に入ってくるおばさんの後ろを慌ててついてくる。

あーー入江先生に似た面差しをしてるんだわ。

「話は琴子ちゃんから全部聞きました! あー、あなたがお隣のかをる子さんね。いつもお世話になるっている上に、うちの大事なお嫁さんを助けてくれてありがとう! どうしてもお礼をいいたくて。そして、その梨本さんところの事情も伺いましたわ。あなたの案はとってもいいわ! そうよ、子供は何より母親の傍にいることが一番なんです。もっとも近いところに託児施設があるなら利用しない手はないじゃない。何を迷うことがあるの?」

「えーと、でも……」

「でも、なんて云ってる場合じゃないでしょ。あなたはまず子供を探す‼ そして最良の方法をどうすれば実現できるか、各所に掛け合う! それがあなたの仕事です!」

「は、はい!」

あら、金江田さん、目を白黒させつつもこの謎のおばさんの言葉に圧倒されて、思わず従っちゃってるわー。
このひと凄いかも………
さすが入江先生の母(多分)………


「かをる子さん、ほんとにナイスアイデアだわー。これなら広大くん、退院までお母さんと一緒にいられるわね」

琴子さんに手をがっつり握りしめられて、にこにこ顔で賞賛される。
病室で寝ていた昨日と比べて顔色も全然いいし、噂のことなんて気にもしてないようなきらきら笑顔に、少しほっとする。
ちゃんと入江先生のフォローがあったのかしら。それともこのお義母さんのお陰かな?

とはいえ、絶賛されたこの思い付きの案だけど、果たして承認されるかどうかは自信がない。

「いや、現実問題、そんな特例、認められない気もするけどね……」

勢いあまって云ったものの、組織の手続きの煩わしさはあたしが一番よく知ってる。そう簡単には話は進まないだろう。

「それって……特例じゃなくしちゃえばいいんじゃないかしら」

琴子さんが、いかにも『いいこと思いついたー!』 と、ばかりにぱあっと顔を輝かせる。

「特例とかじゃなくて、そもそも利用者の規約を変更しちゃえばいいんじゃない? 職員専用の夜間保育じゃなくて患者さんも利用が出来れば、患者さんも安心して治療が受けられるんじゃないかしら? 」と、なかなか突拍子もないことを仰る。

いやいや、それは今回のみの特例よりもずっと難しい気が………


「例えば上の子が入院していて、お母さんが付き添って下の子の面倒が見れないとか、色々なパターンがあるでしょう? いろんな家族のいろんな状況に応じて24時間いつでも子供を預けられたら、助かる人たちはたくさんいると思うの。利用者が多ければ保母さんも増やすこともできるんじゃないかしら? それってまさにあたしの卒論で提唱したいテーマなんです!」

「まあ、とってもいい考えだわ、琴子ちゃん。こんな素敵な案は即実行させなくっちゃね。さあ、それはどこに掛け合えばいいのかしら? 私に任せなさい!」

きらりと光る瞳。
不敵に微笑む自信に満ちた顔。
えーと、入江先生のおかあさま。
さすがにそんな簡単な問題では………







ーー簡単だったらしい。

どんな魔法を使ったんだ、このひとは。

わずか1時間後にはあっさり、つぼみルームの利用規約が変更され、病院夜勤スタッフだけでなく、入院加療中の患者の子供も夜間保育を受けられることになったのだった。







* * *







「広大! あんた、なんで……!」

「お、おがあぢゃーーーんっっ」

わあっーーっと母のベッドにダイブしようとして、広大が直樹にがっしりと掴まえられる。

「だめだろ。お母さん手術したばっかだから勢いよく抱きついたら傷が痛いぞ」

「あ、ごめん……」

「いいんや、広大。おいで。でもどうして……施設からどうやってきたん?」

嬉しそうに母のベッドに乗り上がり、傍らに潜り込む。
流石に5歳児はスペースに余裕があるな、と昨夜のことを思い出して苦笑いを浮かべる直樹である。

「保育園から来たんや。おれちゃんと道覚えとるさかい」

「あかんやろ? みんなどんだけ心配してると思うん?」

息子の顔をじっと見て優しく諭す。

「………ごめんなさい………」

しゅんとした息子をどうしたものかと困惑したように「………そんなにイヤやった? 施設にお泊まりするの。誰かにいじめられたん?」と訊ねる。

「別にイヤやったわけやないけど。でも病院からめっちゃ遠かったん。あそこからは自由にかあちゃんとこ行かれへん思うたから、保育園に連れてってもらったあとで来たんや」

「……広大……でもたった一晩で……どないすればいいんやろ……」

頭を抱えて呻く母に、「ここで寝ればいいやん」と屈託なく笑う。
「おれ、ここで寝て、ここから保育園いくでええよ」

「とにかく、施設や保育園は大騒ぎだと思うので、すぐに連絡しておきます。広大くん、お母さんのそばでおとなしく待ってるんだぞ?」

「………また、あそこに連れてかれるんか?」

心配そうに直樹を見つめる広大に、「どうしてもイヤなのに首に縄をつけて引っ張ってくこともできないからな。違う方法を考えよう」
そう、ふっと優しく笑って広大の髪を撫でた。


「ああーいたーっ。やっぱりいましたよ、ここに!」

聞き覚えのある甘ったるい声に振り向くと、そこには病室で退院準備をしている筈の妻がいた。

「琴子?」

「あれ? 入江くん………なんで?」










「…………と、いうわけでお義母さんのお陰で、なんだかうまく話がついて、広大くん、今夜から病院の託児施設に預かってもらうことになったの!」

意気揚々と話す琴子に思わず直樹も感心するやら呆れるやらである。
圭子にとっても息子が近くにいる方が安心して療養できるだろう。

「本当に……広大もここにおられるん?」

圭子も半信半疑のように呆然としていた。

にしても、紀子が来たとたんに事態が急変するこの状況に思わず舌を巻く。我が母ながら侮れない。

「て、おまえは退院の手続きはすんだのか?」

「あ、まだ……会計の計算書を持ってきてくれるって云ってたのに、部屋空けちゃってたから……捜してるかな? 一応お昼御飯までは出してくれるらしいけど、病院食美味しくないからなぁ」

「ほんまに」

同意しあう二人に、「飯が食えるようになっただけでもありがたく思えよ」と琴子の額をつつく。

「お兄ちゃん、一緒に帰れるのかしら?」

「多分、無理だな。夜には帰れると思うが」

紀子が来なければ退院時はマンションまで送るつもりではあった。自宅が近いのでとんぼ返りになったであろうが。

「……なんとも言えないよね。大丈夫、わかってるから」

「もー琴子ちゃん、ものわかりよすぎよ? もっと文句云っていいのよ?」

「いえ、お義母さん、入江くんはお医者さんなんですから。患者さんを優先するのは当たり前です」

「もう、本当になんていい嫁なの~~あんな子に勿体ない」

オーバーアクションで嫁の手をとって泣き伏す姑の姿に、圭子は呆気にとられているようだった。

「………素敵なお嫁さんとお姑さん……羨ましいわ。うちは結局実母とも姑とも上手いこといかへんかったから……」

自分のせいなんやけどね……身の丈にあわん人と結婚したりしたから……

ぽつりと寂しそうに呟いた圭子に、
「この二人は特殊事例ですから」と直樹が苦笑気味に告げる。

「あたしだって入江くんとは何から何まで全然釣り合ってないって言われてきましたよー」

「でも、あんたは味方がたくさんいたんよね。うちはあかん。人付き合いも苦手やし」

「圭子さんには広大くんがいるじゃありませんか。広大くんが大きくなったら守ってくれるし、家族も増やしてくれる。味方はどんどん増えていきますよ、きっと」

にっこりと笑う琴子に、「あんたの前向きさにほんまにそうなるような気いがしてくるわ」と、傍らで眠ってしまった息子の髪を撫でた。


こんこん、とノックの音とともに扉が開かれた。

「かをる子さん!?」


かをる子の後ろには、ソーシャルワーカーの金江田もいた。
かをる子と金江田とは分かれて広大を捜していた。見つからなかったので此処に来たのだと、琴子は単純に思った。

「……ああ。やっぱり広大くん、ここに来てたのね」

一瞬安心したかのような表情を見せたものの、かをる子も金江田も何故か表情が固い。
少し困惑したような緊張気味の二人の様子から、何か違和感を感じて怪訝そうな瞳を二人に向ける。

「すみません、梨本さん。今、病院に警察の方がきてーー」

金江田が言葉を選びつつ、眠っている広大の様子も窺いながら話しかける。

「え? 広大がいなくなったことで……?」

「いえ、その件は結局通報してはなかったんです。それとは別件でーー未成年者略取の訴えが警察に寄せられたということで…………」

「え………」

圭子の顔が一瞬で真っ青になった。








※※※※※※※※※※※※※




ギリギリ3月中に、アップです。
そして、今回むじかくさまには大変お世話になりました。春休みの忙しい時に申し訳ない………北に足を向けて寝られません……
むじかくさまのバックアップのお陰で更新できたようなものなので、感謝感激なのでした~~いつもいつもありがとうございます(^_^)



うん、しかしあと2、3話じゃ絶対終わらないな……まだ夏休み10日あるもんな……
(今、8月20日です。8月31日まで頑張ろう……)





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* Category : 1日で終わらない西暦シリーズ
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* by なおちゃん
さすが紀子ママですねやること行動力は凄い。何を勘違いしてるのか?嫉妬はひどいナースじゃ?入江君がいつ琴子ちゃんと別れる話をしたんだか、むしろ離れられないのは入江君のほうなんですけど?まあ琴子ちゃんも同じではあるけど?でも、ママが色々調べてくれたことで、なんかいろいろ分かったこと真相が広大君のことや、わかってきそうですね。

Re.マロン様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

短編挟んでも相変わらずスランプ気味の私です……(((^^;) あかん、別の話ばかり書きたくなって、また思考が止まってます。

紀子ママに丸投げで気がつきゃさくっと解決していましたーーという風に力業で押し通したい気もしますが、それじゃ直樹さんも立つ瀬がないので、頑張っていただきたいところです。

声援ありがとうございます。ほんと、ゴールはすぐそこなんですけどねぇ。なんで、なかなか辿り着けない……(((^^;)
いや、何が何でも終わらせますよー。

Re.heorakim様 * by ののの
拍手コメントありがとうございました♪

コメントいただいて既に一週間たったので、すっかり春めいてまいりましたよ。やっと桜も咲いてきましたが、雨続きで愛でることも叶わぬ週末です。
救世主出現でなんとかポンポンポーンと片付けて、ゴールにまっしぐらと行きたいところです。
紀子さんの人脈とパワー頼りですね~~

はい、ストレス溜めないよう頑張ります♪

Re.紀子ママ様 * by ののの
コメントありがとうございました。
こちらこそ続きを待っていていただいて嬉しいです。

紀子ママは原作でもパワフルで、(ベクトルの向きがおかしいけど)ものすごい行動力な人なので、とりあえず使える伝は全て利用しなんとか解決に導いてくれることを、願ってます。うん、でも直樹さんにも奮闘してもらわないとねー。やはり彼には一番の格好いい役割を振りたいのですが(←無計画)

さて、今度こそ解決したいですっっ(果てない希望)

Re.なおちゃん様 * by ののの
コメントありがとうございました♪

ほんと、紀子ママはすごいですよねっ
困った時の紀子ママ頼みで神戸に登場させてしまいましたが、なんとか解決に導きたいと思います。
そうそう、入江くんの方が絶対琴子から離れられないですよね(^w^)

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